JPWO2007040162A1 - 培養細胞による組換えヒトトロンビンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

組換えヒトトロンビンの製造方法を提供する。(1)ヒトプロトロンビン遺伝子をコードする遺伝子断片が組み込まれた発現ベクターをCHO細胞に導入することによりヒトプロトロンビンを産生する形質転換細胞を取得する、(2)陰イオン交換法により前記形質転換CHO細胞の培養液からヒトプロトロンビンを精製する、(3)精製したヒトプロトロンビンにエカリンを作用させて該ヒトプロトロンビンをヒトトロンビンに変換する、及び(4)ベンズアミジン及び陽イオン交換法を用いた親和力に基づく方法より前記エカリン処理液からヒトトロンビンを精製する、からなる工程による組換えヒトトロンビンの製造方法、及び該製造方法により得られたヒトトロンビン、及びヒトプロトロンビン産生CHO細胞。

Description

本発明は、遺伝子組換え技術により得られるヒトトロンビン及びその製造方法に関する。より詳細には、ヒトプロトロンビンを産生するCHO細胞を取得し、該細胞の培養物から陰イオン交換クロマトグラフィーによりヒトプロトロンビンを精製した後、得られたヒトプロトロンビンをエカリン処理してヒトトロンビンに変換し、ベンズアミジン及び陽イオン交換法を用いた親和性クロマトグラフィーにより該ヒトトロンビンを精製する工程からなる組換えヒトトロンビンの製造方法及び当該方法により得られるヒトトロンビンに関する。本発明のヒトトロンビンは、医療用医薬品の分野に属し、止血剤として使用される。また、本発明は、ヒトトロンビンの製造過程において得られる、ヒトプロトロンビン産生細胞、ヒトトロンビンの製造方法及び該製造方法により得られるヒトトロンビンに関する。
トロンビンは止血血栓の形成や創傷治癒などの生命の維持進展に不可欠な作用を有するトリプシン様セリンプロテアーゼである。トロンビンにはメイゾトロンビン、α−トロンビン、β−トロンビン、γ−トロンビンが存在するが生理的にはα−トロンビンが重要である。トロンビンの前駆体であるプロトロンビンはビタミンK依存的に肝細胞で生合成され、その血中濃度は100-150μg/mlである。ビタミンK依存性凝固因子はN末にGlaを含む領域(Glaドメイン)を有し、Ca2+イオンを介してリン脂質と結合する性質を有する。このGlaドメインがCa2+と結合するとタンパク全体の高次構造の変化が起こり、補助因子と相互作用する重要な機能を発現することがわかっている。
プロトロンビンは細胞膜リン脂質上でのFXa-FVa複合体により活性化反応を受け、プロトロンビンのArg320-ILe321結合が限定分解を受け、Glaドメインやクリングルドメインをもったメゾトロンビンが形成される。次いでArg271-Thr272結合が限定分解されα−トロンビンが生成され細胞膜から遊離し、多くの血漿タンパクや種々の細胞膜のトロンビン受容体を限定分解して多様な生理活性を示す。α−トロンビンはA鎖とB鎖からなる2本鎖分子であるが、酵素活性に重要なB鎖がさらに自己消化されるとβ−トロンビン、γ−トロンビンとなりフィブリノーゲンや血小板の活性化能を失う。
生成されたトロンビンの多くはフィブリン血栓に結合して局所におけるより大きな血栓の形成に関わる。α−トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンに変換させる酵素であるとともに、FXIIIを活性化してフィブリンを架橋結合させる引き金でもある。さらに、それぞれFIXやFXaの補助因子であるFVIIIやFVを活性化して凝固を進行させる凝固促進機能をもつ。このように、トロンビンは止血作用においては重要な役割を果たすことから止血剤としては極めて有用なタンパクである。
一方、トロンビンは血管内皮細胞上のトロンボモジュリンと結合するとその基質特異性が変化して、プロテインCを活性化することにより抗凝固を促進するようになる。このトロンビンの酵素活性を利用して、抗凝固剤である活性化プロテインCをつくるためのプロセスエンザイムとしても利用されている有用なタンパクである。さらに、α−トロンビンは強力に血小板を凝集、活性化させるほか、マイトジェン作用も有する。このようにα−トロンビンは多彩な生理作用を有することから、種々の研究分野の試薬としても利用されており、今後もその利用度は一層増加していくものと考えられる。
このような機能を有するトロンビンは止血剤、プロセスエンザイム、研究用試薬としてこれまで広く利用されている。例えば、上部消化管出血に対しては血液由来のトロンビンが内視鏡的に出血患部に散布されたり、経口的に投与されたりして止血効果が認められている。さらに、組織の接着剤として使用されているフィブリン糊には、フィブリノーゲンやFXIII因子とともに血液由来のトロンビンが含まれている。
しかしながら、これらのトロンビンはヒト血液またはウシ血液から分離されたトロンビンであるため、それらの原料となる血液中に由来する因子で、ヒトに悪影響を及ぼすと考えられる様々な危険因子が含まれている。例えば、HAV、HBV、HCV、HEV、TTVなどの肝炎を引き起こすウイルス、HIVなどの免疫不全症を引き起こすウイルス、CJDなどを引き起こす異常プリオンなどが含まれる危険性が存在する。事実、これらの危険因子が混入した血液製剤による薬害は大きな社会問題となった。更にこれらヒトまたはウシ由来の血液は生体材料であることから、常に安定に供給される保証はない。このことは、特に医薬品としては極めて重要で深刻な問題であり、早急に解決すべき課題と考えられる。
また、従来の方法はトロンビンの前駆体を血液由来のFXaで活性化してトロンビンをつくる方法であるため、この活性化の過程で血液由来の酵素FXaを使用している。トロンビンの前駆体を組換え技術でつくっても、その活性化酵素に血液由来のFXaを使っては、血液成分から危険性を逃れることは出来ない。更にFXaを組換え技術でつくるためには、その前駆体であるFXを組換え技術でつくり、それをFIXaで活性化しなければならない。そのFIXaを組換え技術でつくるには、その前駆体であるIXを組換え技術でつくり、それを活性化しなければならない。このように凝固反応のカスケード反応に関わる上流の酵素まで遡って組換え技術で作製しなければ、血液由来の危険性を排除したトロンビンは得ることが出来ない。
これら従来のトロンビンおよびその活性化酵素の原料となる血液に由来する危険性と限界とを考慮すれば、より安全で安定な供給が可能な原料や方法が期待される。そのような背景を下に、これまでに微生物や動物細胞を宿主としたトロンビンの発現が報告されている。
しかしながら、それら従来の方法では、例えば、大腸菌では発現されたトロンビンはインクルーションボディという凝集体を形成してしまい回収が困難である。つまり、凝集体を可溶化させ、それを機能的なタンパクとして再構成(リフォールディング)させる効率は極めて低く、産業上のメリットはない(例えば、非特許文献1参照)。又、培養細胞で各種トロンビン前駆体を発現させた報告では、発現量が最大で25μg/mLと低いため工業的には実用的ではなかった(例えば、特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6参照)。
本発明者らは、トロンビン前駆体遺伝子、シグナルペプチド、発現プラスミド、宿主細胞、培養用培地などに関して鋭意研究を重ねた結果、WO2003/004641で示したように、SP2/0細胞及びCHO細胞を宿主として用いてトロンビン前駆体を高発現させる方法を見出した。この方法を利用し、組換えSP2/0細胞では無血清培地を用いた250mlスピナーフラスコ浮遊培養で100μg/ml、CHO細胞では10%血清を含む培地を用いた静置培養で110μg/mlのトロンビン前駆体を発現する高発現株の取得に成功した。又、トロンビン前駆体からトロンビンへの活性化に用いる酵素エカリンをも遺伝子組換えにより生産する方法を見出した。さらに、トロンビン前駆体を含む培養液2000mlから、最終精製収率40%で高純度のトロンビンを精製する方法を開発した。しかしながら、工業的なスケール、すなわち培養液量数百リットル以上で安定的に低コストで組換えトロンビンを製造するという点では、さらなる生産技術の開発が必須であり、継代安定性が高く生産に適した製造株の確立、血清を含まない安価な培地の選択とその培地への細胞馴化、付着性細胞の浮遊化、数百リットル以上のタンク培養における各種制御条件の設定、より高収率で低コストの精製法の開発が求められていた。
糖鎖を有する蛋白の中には、糖鎖の種類や量によってその蛋白の有する生物学的活性が影響されることがある。例えば、EPO蛋白を大腸菌で発現させると糖鎖は付加されない。これを酵母で発現させると多量のマンノース型N結合糖鎖が付加される。何れも、生体内においては、生物学的活性が低下することが報告されている(例えば、非特許文献7参照)。前述のWO2003/004641で示したトロンビン製法の、プレトロンビンをSP2/0細胞で発現しトロンビンを得る方法で得られたトロンビンは、その後の研究で、N-グリコリルノイラミン酸が付加された糖鎖を持つことが明らかになったが、A. Noguchiらは、N-グリコリルノイラミン酸がヒトに対して抗原性や免疫原性を有すること指摘している(例えば、非特許文献8参照)。このように遺伝子組換え技術により医療・医薬用蛋白を生産する場合には、生産量を上げてその製造コストを低減するだけでなく、生物学的活性の保持やヒトに投与した場合の安全性を考慮した宿主の選択が重要となってくる。
WO93/013208 J. Biol. Chem. 270, 163-169, 1995 J. Biochem. 262, 6792-6734(1987) J. Biochem. 266, 13796-13803(1991) J. Biochem. 266, 9598-9604(1991) Proc Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88, 6775-6779(1991) Protein. Exp. Purif. 10, 214-225(1997) Gene 79, 167-180, 1989 J. Biochem. 117, 59-62(1995)
ヒトトロンビンは、止血剤として医療用医薬品分野において有用な蛋白である。上述したように、血液に含まれる可能性のある種々の危険因子を排除し、安全且つ安定的に低コストで供給できるヒトトロンビンの生産方法、製造方法の開発が望まれている。
本発明者らは既出願特許WO2003/004641において、安全且つ安定的に低コストで供給できるヒトトロンビンの生産方法を確立したが、その後の研究により、数百リットルを超える大規模工業生産スケールで製造するためには、更なる技術開発が必要であることが判明した。
本発明は、製造株の作出、培養および精製方法の改良を含む各種技術の特異的組み合わせによる、組換えヒトトロンビンの工業的製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、SP2/0細胞で発現しトロンビンを得る方法で得られたトロンビンはN-グリコリルノイラミン酸が付加された糖鎖を持っていたが、CHO細胞を宿主とした場合、血漿由来ヒトトロンビンに見られる糖鎖と同じシアル酸であるN-アセチルノイラミン酸を持つ糖鎖が付加されることを発見した。さらに、前述のWO2003/004641で示したCHO細胞は付着性の性質を有しており浮遊培養が出来ず工業的には実用的でなかったが、ヒトプロトロンビンを発現するよう形質転換したCHO細胞で浮遊培養可能な形質転換体を見出し、無血清、完全浮遊で大量スケールでの培養を可能とした。またこの形質転換体は128μg/mLと発現量も高く、血漿由来ヒトトロンビンに見られる糖鎖と同じシアル酸であるN-アセチルノイラミン酸を持つ糖鎖が付加されることも確認された。さらに最適な精製法を組み合わせることにより、培養規模500Lを超える工業的スケールで、低コストかつN-グリコリルノイラミン酸によるより生態適合性の高い組換えヒトトロンビンの工業的製法を完成させるに至った。
したがって、本発明は、以下に示す組換えヒトトロンビンの製造方法を提供するものである。
1.組換えヒトトロンビンの製造方法であって、下記(1)〜(4)の一連の工程を含むことを特徴とする前記製造方法:
(1)ヒトプロトロンビン遺伝子をコードする遺伝子断片が組み込まれた発現ベクターを動物細胞に導入することによりヒトプロトロンビンを産生する形質転換細胞を取得する工程、
(2)陰イオン交換法により前記形質転換細胞の培養液からヒトプロトロンビンを精製する工程、
(3)精製したヒトプロトロンビンにエカリンを作用させて該ヒトプロトロンビンをヒトトロンビンに変換する工程、及び
(4)ベンズアミジン及び陽イオン交換法を用いた親和力に基づく方法より、前記エカリン処理液からヒトトロンビンを精製する工程。
2.動物細胞が、CHO細胞である、上記1の製造方法。
3.ヒトプロトロンビン遺伝子が、配列番号3記載の塩基配列からなる、上記1又は2の何れかの製造方法。
4.組換えヒトプロトロンビンの製造方法であって、下記(1)〜(2)の一連の工程を含むことを特徴とする前記製造方法:
(1)ヒトプロトロンビン遺伝子をコードする遺伝子断片が組み込まれた発現ベクターを動物細胞に導入することによりヒトプロトロンビンを産生する形質転換細胞を取得する工程、及び
(2)陰イオン交換法に基づく方法により前記形質転換細胞の培養液からヒトプロトロンビンを精製する工程。
5.動物細胞が、CHO細胞である、上記4の製造方法。
また、本発明は、上記の1ないし3の何れかの製造方法により得られたヒトトロンビン、上記4又は5の何れかの製造方法により得られたヒトプロトロンビン、及びヒトプロトロンビンを産生するCHO細胞を提供するものである。
本発明の方法に従えば、血漿由来のヒトトロンビンと同じN-アセチルノイラミン酸からなる糖鎖構造を有する組換えヒトトロンビンの製造方法が提供される。
本発明は、(1)ヒトプロトロンビン遺伝子をコードする遺伝子断片が組み込まれた発現ベクターを動物細胞に導入することによりヒトプロトロンビンを産生する形質転換細胞を取得する工程、(2)陰イオン交換法に基づく方法により前記形質転換細胞の培養液からヒトプロトロンビンを精製する工程、(3)精製したヒトプロトロンビンにエカリンを作用させて該ヒトプロトロンビンをヒトトロンビンに変換する工程、及び(4)ベンズアミジン及び陽イオン交換法を用いた親和力に基づく方法より、前記エカリン処理液からヒトトロンビンを精製する工程からなる組換えヒトトロンビンの製造方法及び上記(1)〜(2)の工程からなる組換えヒトプロトロンビンの製造方法によって特徴付けられる。
ヒトプロトロンビン遺伝子は、ヒト肝臓から抽出された全RNA、mRNA又はゲノムDNAを出発材料として、Sambrookらが述べている一般的な遺伝子組換え技術(Molecular Cloning, A Laboratory Manual Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 1989)に従って調製することができる。今日では、種々のキットが市販されているのでこれを使用すれば良い。例えば、RNAの抽出には、TRIzol試薬(インビトロジェン社)、ISOGEN(ニッポンジーン社)、StrataPrep Total RNA Purification Kit(東洋紡)などの試薬、mRNAの精製には、mRNA Purification Kit(アマシャムバイオサイエンス社)、Poly(A) Quick mRNA Isolation Kit(東洋紡)、mRNA Separator Kit(クロンテック社)などのキット、cDNAへの変換には、T-Primed First Strand Kit(アマシャムファルマシア社製)、SuperScript plasmid system for cDNA synthesis and plasmid cloning(インビトロジェン社)、cDNA Synthesis Kit(宝酒造)、SMART PCR cDNA Synthesis & Library Construction Kits(クロンテック社)、Directionary cDNA Library Construction systems(ノバジェン社)、GeneAmp PCR Gold(アプライドバイオシステムズ社)などが使用される。より具体的には、ヒト肝臓由来のmRNA(サワデーテクノロジー社)を鋳型としてT-Primed First Strand Kit(アマシャムファルマシア社製)を用いてcDNAを合成し、プロトロンビン遺伝子の配列をもとに設計したプライマーPT1(配列番号1)及びPT2(配列番号2)を用いてPCRを行なうことよりプロトロンビン遺伝子の増幅が行なわれる。PT1及びPT2にはSal制限酵素認識配列が付加される。
動物細胞を宿主とした発現ベクターには特段の制約はないが、斯かる発現ベクターは、外来遺伝子に適当なプロモーター等の発現調節領域、終止コドン、ポリA付加シグナル配列、Kozak配列、分泌シグナルなどを付加した核酸断片と定義される。当該発現ベクターに含まれるプロモーターは、宿主として用いる動物細胞との組み合わせにより、SV40初期、SV40後期、サイトメガロウイルスプロモーター、ニワトリβアクチンなど、最終的に外来遺伝子が発現するものであれば如何なるものでも良い。好ましくは、ニワトリβ−アクチンプロモーター系発現プラスミドpCAGG(特開平3-168087)が使用される。選択や遺伝子増幅のマーカー遺伝子として、neo遺伝子やジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子、ピューロマイシン耐性酵素遺伝子、グルタミン合成酵素(GS)遺伝子など一般に知られる選択や遺伝子増幅用のマーカー遺伝子が利用できる。例えば、市販品を利用することも可能である。動物細胞で発現させる場合はpSI、pCI-neo(プロメガ社)、酵母ではpPICZ(インビトロジェン社)、pESP-1(ストラタジーン社)、昆虫細胞ではBacPAK6(クロンテック社)、pBAC(ノバジェン社)、細菌ではpET(ストラタジーン社)などが挙げられるが、これらは、目的に合わせて適宜使用される。本発明では、ニワトリβ−アクチンプロモーター系発現プラスミドpCAGGに、SalI制限酵素認識部位、選択遺伝子としてneo遺伝子とジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子を付加したpCAGG改変ベクターを使用した。
本発明で用いる宿主としては、各種哺乳類由来の培養細胞を広く利用することができ、好適にはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト由来293細胞またはトリ由来細胞等N-グリコリルノイラミン酸からなる糖鎖構造が付加されず、糖鎖N-アセチルノイラミン酸からなる糖鎖構造が付加される細胞が例示される。動物細胞への遺伝子導入方法にも特段の制約はなく、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、リポフェクチン系のリポソームを用いる方法、プロトプラストポリエチレングリコール融合法、エレクトロポレーション法などが利用でき、使用する宿主細胞により適当な方法を選択すればよい(Molecular Cloning (3rd Ed.), Vol. 3, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001))。培養に用いる培地として、その形状から寒天培地、液体培地、その種類からYMM-01、DMEM、RPMI、αMEMなどが使用されるが、細胞や培養目的、或は培養段階に応じて適宜選択すれば良い。それぞれの培地のプロトコールに従って、血清、アミノ酸、ビタミン、糖、抗生物質、pH調整用緩衝液などを添加したものが使用される。培地のpHは6-8、培養温度は30℃〜39℃の範囲が設定される。培地の量、添加物及び培養時間は、培養スケールに合わせて適宜調節される。例えば、リン酸カルシウム法により本発明のpCAGG改変ベクターをCHO細胞に導入し、この細胞をGeneticin(GIBCO-BRL社)及びメトトレキセート(和光純薬)含有培地で培養を継続することにより薬剤耐性細胞が得られる。該薬剤耐性細胞は、限外希釈法等によりクローン化される。
ヒトプロトロンビン産生細胞は、抗トロンビン抗体を用いた特異反応を利用した検出方法、例えば、ドットブロット、ウェスタンブロット、サンドイッチELISAなどの方法により、クローン化された薬剤耐性細胞の培養液中のヒトプロトロンビンを検出することにより取得することができる。こうして得られたヒトプロトロンビン産生細胞は、無血清培地に順応化させた後、工業生産レベルの大量培養が行なわれる。大量培養の方法としては、フェドバッチ培養、バッチ培養などが一般に用いられるが、何れの方法で行なっても良い。
斯かるプロトロンビン産生細胞からヒトプロトロンビンを精製する際には、一般的に、蛋白質化学において使用される精製方法、例えば、塩析法、限外ろ過法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換クロマト法、ゲルろ過クロマト法、アフィニティークロマト法、疎水クロマト法、ハイドロキシアパタイトクロマト法などの方法が用いられる。実際には、細胞由来の多種類の夾雑物が混在するため、上記方法の組み合わせにより行われることもある。
本発明では、陰イオン交換体を用いるのが好ましい。陰イオン交換体として、ジエチルアミノエチル(DEAE)基型、四級アミノエチル(QAE)基型等が例示される。DEAE基型としては、DEAE-アガロース(商品名DEAE-セファロース、アマシャム社製)、DEAE-デキストラン(商品名DEAE−セファデックス、アマシャム社製)、DEAE-ポリビニル(商品名DEAE−トヨパール、東ソー社製)等が例示される。また、QAE基型としては、QAE-アガロース(商品名QAE-セファロース、アマシャム社製)、QAE-ポリビニル(商品名QAE−トヨパール、東ソー社製)等が例示される。本発明においては、支持体について特に制限する必要はないが、QAE-セファロース(アマシャム社製)を使用するのが好ましい。当該陰イオン交換に使用する緩衝液の種類については特に制限されないが、中性領域を中心として緩衝能力を保持するものであれば使用可能である。pH範囲としては6-8、濃度は0.10M以下であれば良く、例えば、リン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、ピロリン酸及びその塩、炭酸及びその塩、グリシン、トリスアミノヒドロキシアミノメタン並びにそれらの酸及び塩の組み合わせが適宜採用できる。また、緩衝液に添加する塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、リン酸ナトリウム等を単品または組み合わせて用いることができる。より具体的には、ヒトプロトロンビンをカラムに接触させるときのpHは、7〜8の範囲、好ましくはpH7.4が使用される。塩濃度は、0.05M〜0.2Mの範囲、好ましくは、0.1Mである。ヒトプロトロンビンをイオン交換体から溶出するときの塩濃度は、0.3〜0.5Mの範囲、好ましくは、0.35Mが使用される。こうして得られたヒトプロトロンビンは、不純物を含まない高純度のものである。
また、B. Fischerらの方法に従って、Pseudoaffinityを行なうことにより容易に且つ効果的に精製できる(特開平7-64823)。Gla配列を持つカルシウム結合性たん白質は、カルシウム等の2価のカチオンと結合することにより、立体構造や表面荷電、親水性等のキャラクターが変化し、抗体との親和性や、イオン交換、疎水等のクロマトグラフィーでの挙動が変化する。この変化を利用し、カルシウムを添加または除去することでGla配列を持つカルシウム結合性たん白質を特異的に精製する方法がPseudoaffinityである。
例えばイオン交換の例を挙げると、プロトロンビンを陰イオン交換体としてQ-Sepharose-FF (Amersham)を用いて20mM Tris-HCl, pH7.4の条件でクロマトグラフィーを実施する場合、プロトロンビンは0.3M以上のNaCl濃度でカラムから溶出されるが、10mMのカルシウムを添加した場合プロトロンビンは約0.15Mと低いNaCl濃度で溶出されるように変化する。これを利用し、0.15Mより高い塩濃度でプロトロンビンを陰イオン交換体に吸着・洗浄後、10mMのカルシウムを含む0.15M NaClの溶媒でプロトロンビンを溶出させることで、プロトロンビンと同じ等電点を持つ不純物や、通常のイオン交換クロマトグラフィーで分離されない不純物を分離・除去することが可能となり、簡単に高純度のプロトロンビンを調製することが出来る。
ヒトプロトロンビンのヒトトロンビンへの変換には、組換えエカリンを用いるのが好ましい。組換えエカリンは、特許公報(WO2003/004641)に記載の方法に従って調製することができる。簡単には、Nishidaらの方法に従って、蛇毒エカリンcDNAを調製し(S. Nishida et al., Biochemistry, 34, 1771-1778, 1995)、これを本発明で使用したニワトリβ−アクチンプロモーター系発現プラスミドpCAGGに組み込む。得られた発現ベクターを動物細胞、例えば、CHO細胞に導入し、組換えエカリン産生細胞を得る。組換えエカリンは、陽イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過を行うことにより精製することができる。
こうして精製された組換えエカリンを、精製ヒトプロトロンビン液に添加し、変換反応が十分に行なわれる時間反応させる。反応温度は、35〜38℃、好ましくは、37℃、反応時間は、1-4時間、好ましくは、2時間である。エカリン処理により変換されたヒトトロンビンは、ベンズアミジンカラム及び陽イオン交換カラムを用いたクロマトグラフィーにより精製される。こうして精製された組換えエカリンをヒトプロトロンビンに作用させ、ヒトトロンビンへの変換が行なわれる。反応条件は、通常の酵素反応と同じ条件が使用される。例えば、ヒトプロトロンビン1000μg/mLに終濃度2-8Unit/mLのエカリンを添加し、36-38℃で1-4時間反応させることによりヒトプロトロンビンのヒトトロンビンへの変換は完了する。
ヒトトロンビンは、エカリン処理液を上記の蛋白精製方法に供することにより精製される。好ましくは、ベンズアミジンカラムと陽イオン交換クロマトグラフィーの組合せによる精製方法が用いられる。緩衝液は、陰イオン交換と同様に、中性領域を中心として緩衝能力を保持するものであれば使用可能である。pH範囲としては7〜9、好ましくは、8、緩衝液の濃度は0.1M以下、好ましくは、0.01Mである。ヒトトロンビンをカラムに吸着させるときは、これに0.3-0.7Mの塩を含有させる。好ましくは、0.5MNaClが使用される。ヒトトロンビンは、同緩衝液で洗浄した後、吸着及び洗浄に使用された緩衝液に0.1Mのベンズアミジン塩酸塩を添加した緩衝液により溶出される。
ヒトトロンビンを高度に精製するために、更に陽イオン交換クロマトグラフィーに供される。陽イオン交換体として、スルホプロピル基型、カルボキシメチル基型などが挙げられるが、適宜選択して使用すれば良い。本発明では、SPトヨパール550C(東ソー)が使用される。吸着、洗浄、溶出の条件は、一般に陽イオン交換クロマトグラフィーに使用される範囲のものが使用される。例えば、pHは、6から8、好ましくは、6から7、緩衝液の濃度は、5から200、好ましくは、10mMである。より具体的には、10mMクエン酸緩衝液に0.2MのNaClが添加されたものが使用される。ヒトトロンビンを溶出するときは、塩濃度を上げることにより行なわれる。好ましくは、0.6M NaClが使用される。斯かる方法により、高純度のヒトトロンビンを取得できる。
こうして得られたヒトトロンビンについて、クロッティング活性、合成基質(S-22338)切断活性等の酵素化学的性質、及び糖鎖分析が行なわれる。クロッティング活性値は、フィブリノーゲンがクロッティングする時間を標準品の検量線と比較して求められる相対値を表したもので、斯かる標準品として、日本薬局方標準品及びWHO国際標準品(NIBSC社)のトロンビンが用いられる。また、S-2338切断活性は、トロンビンとその特異的な基質との反応を利用したもので、合成基質S-2238をトロンビンが切断することで遊離してくるp-ニトロアニリン量をOD405/650の吸光度変化で測定することにより行なわれる。
また、シアル酸の測定には、標準物質として、N-Acetylneuraminic AcidとN-Glycolylneuraminic Acidが用いられ、これらのイオン交換クロマトグラフィーカラムからの溶出時間と被検物質の溶出時間とを比較することにより行なわれる。すなわち、標準物質の各濃度におけるピーク面積からそれぞれの回帰式を作成し、これに被検物質の測定値を外挿し、シアル酸濃度が求められる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。なお、以下に示す調製例及び実施例では、特に断りのない限り、アマシャム、バイオラッド、和光純薬、宝酒造、東洋紡およびNew England BioLabs社製の試薬を使用した。
(発現プラスミドの構築)
(1)発現プラスミドpCAGG-S1(Sal)の構築
ニワトリβ−アクチンプロモーター系発現プラスミドpCAGG(特開平3-168087)を制限酵素EcoRIで消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化した後、リン酸化XhoIリンカー存在下、T4 DNAリガーゼで連結環状化したpCAGG(Xho)を構築した。このpCAGG(Xho)を制限酵素SalIで消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化した後、T4 DNAリガーゼで連結環状化したpCAGG-Pv2を構築した。このpCAGG-Pv2を制限酵素XhoIで消化した後、S1ヌクレアーゼ処理を行うことでXhoI認識配列近傍の塩基を若干削り込んだ。ヌクレアーゼ処理の後、dNTP存在下、T4 DNAポリメラーゼで一本鎖部位を修飾した後、リン酸化SalIリンカー存在下、T4 DNAリガーゼで連結環状化したpCAGG-S1(Sal)を構築した。
(2)発現プラスミドpCAGG-S1(Sal).dhfrの構築
DHFR遺伝子を持つ発現プラスミドpSV2-dhfr (S. Subramani et al., Mol. Cell. Biol., 1, 854-864, p.1981)を制限酵素BglIIで消化した後、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化し、T4 DNAリガーゼで連結環状化したpSV2-dhfr-Bgnを構築した。さらにこのpSV2-dhfr-Bgnを制限酵素PvuIIで消化した後、リン酸化BglIIリンカー存在下、T4 DNAリガーゼで連結環状化したpSV2-dhfr-BgBを構築した。このpSV2-dhfr-BgBを制限酵素BglII及びBamHIで消化した後、アガロースゲル電気泳動により約1.7kbpの断片を取得した。上述のpCAGG-S1(Sal)を制限酵素BamHIで消化した後、この1.7kbp断片とT4 DNAリガーゼで連結環状化したpCAGG-S1(Sal).dhfrを構築した。
(3)発現プラスミドpCAGG-S1(Sal).dhfr.neoの構築
アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neo)の発現プラスミドpMC1neo-polyA (K. R. Thomas et al., Cell, 51, 503-512, p.1987)を制限酵素XhoIで消化した後、リン酸化BamHIリンカー存在下T4 DNAリガーゼを用い連結環状化したpMC1neo-2Bを構築した。このpMC1neo-2Bを制限酵素BamHIで消化し、アガロースゲル電気泳動により約1.1kbpの断片を取得した。上述のpCAGG-S1(Sal).dhfrを制限酵素BamHIで消化した後、この約1.1kbpの断片とT4 DNAリガーゼで連結環状化したpCAGG-S1(Sal).dhfr.neoを構築した。
(ヒトプロトロンビン遺伝子の調製)
ヒト肝臓mRNA(サワデーテクノロジー社)を鋳型に常法によりオリゴdTをプライマーとして逆転写酵素を用いた1st strand cDNA合成を行った(T-Primed First Strand Kit;アマシャムファルマシア社製)。このcDNAをもとに以下のプライマーを設計しPCR反応に用いた。プライマーは以下のプロトロンビンN末端側に相当する遺伝子のプライマーとして5'-ACGCGTCGACGTCGCCGCCACCATGGCGCACGTCCGAGGCTTGCAGCTGCCTGGCTGC(PT1;配列番号1)、C末端側に相当する遺伝子のプライマーとして5'-GCCGACGTCGACGCGTCTACTCTCCAAACTGATCAATGACCTTCTG(PT2;配列番号2)を用いた。PCR反応はPyrobest DNA polymeraseを用い、本酵素の取扱い説明書に準じた方法で30サイクルで遺伝子増幅を行なった。
(ヒトプロトロンビン発現プラスミドの構築)
実施例1のpCAGG-S1(Sal).dhfr.neoに、実施例2で得られたプロトロンビン構造遺伝子を挿入した。pCAGG-S1(Sal).dhfr.neoを制限酵素SalIで消化した後、仔ウシ小腸由来アルカリホスファターゼで脱リン酸化した。この脱リン酸化したプラスミドと実施例2で得られたプロトロンビン構造遺伝子を制限酵素SalIで消化した断片とをT4 DNAリガーゼで連結環状化しpCAGG-S1.dhfr.neo.A-11を構築した。このプラスミドの制限酵素SalIサイトを含むプロトロンビン構造遺伝子の塩基配列を常法により確認した(塩基配列番号3)。
(動物細胞を用いたヒトプロトロンビンの発現)
実施例3のプロトロンビン発現プラスミドpCAGG-s1.dhfr.neo.A-11を用いてCHO K1(G. Urlaub et al., Somatic Cell. Mol. Genet., 12, 555-566, p.1986、以下CHO)細胞をリン酸カルシウム法変法(C. Chen et al., Mol. Cell. Biol., 7, 2745-2752, p.1987)で形質転換した。形質転換に用いた発現プラスミドは制限酵素PvuIで消化することであらかじめ線状化した。また、ここでのプロトロンビンの定量は抗ヒト−トロンビン抗体を用いたサンドイッチELISA法で行った。
(1)CHO細胞を用いた産生能評価
CHO細胞は以下のようにして形質転換から形質転換体の選択を行った。
形質転換の前日に細胞を10cmディッシュに5×104 cells/ディッシュの細胞密度で10%ウシ胎児血清(FCS、GIBCO-BRL社製)を含むYMM-01(インシュリン・トランスフェリン・エタノールアミン・亜セレン酸ナトリウムを含むアミノ酸・ビタミンを強化した核酸不含MEMアルファ培地)を用い播種した。37℃で一夜培養の後、20μgの線状化した発現プラスミドpCAGG-s1.dhfr.neo.A-11を用い形質転換を行った。35℃、3%CO2培養装置で一夜培養した後、ダルベッコPBS(-)で細胞を洗浄し、10%透析FCS及び500μg/mLのGeneticin(GIBCO-BRL社製)、supplyment、200nmol/Lメトトレキセート(MTX、和光純薬工業製)を含むYMM-01培地に培地交換し、37℃、5%CO2培養装置で培養した。出現した形質転換体をプール・拡張し、クローニングを行った。細胞を同様の培地で96wellプレートに2.5個/mLの濃度で200μL/wellずつ播種することで限界希釈を行い、得られたクローン毎に産生能評価を行った。各クローンを2×105 cells/mLの密度で10%透析FCS、supplymentを含むYMM-01培地で播種し一夜培養後、透析FCSを含まないYMM-01培地へ培地交換し無血清培地への馴化を行った後、250mLシェーカーフラスコに播種し計14日間のバッチ培養を行った。培養上清中に発現したプロトロンビン濃度を測定したところ、クローンA-36は128μg/mLのプロトロンビンを培養上清中に発現していた。
(プロトロンビン産生細胞の大量培養)
実施例4に示したプロトロンビン産生細胞A-36を無血清培地に順応化させた後、600lファーメンターに播種し自家調製無血清培地で計10日間の培養を行った後、培養上清中に発現したプロトロンビン濃度を測定したところ110μg/mlのプロトロンビンの発現が確認できた。
(組換えヒトトロンビンの精製)
(1)陰イオン交換クロマトグラフィー
プロトロンビン産生CHO細胞の培養上清3200mlに、2倍量の20mMリン酸バッファー(pH7.4)を加え0.22μmフィルター濾過したものを試料とした。この試料を0.1MのNaClを含む10mMリン酸バッファー(pH7.4)で平衡化したQセファロースファーストフロー(アマシャム)80mlカラムに6.6ml/minの流速でアプライした。1600mlの上記バッファーでカラムを洗浄後、0.35MのNaClを含む10mMリン酸バッファー(pH7.4)450mlで6.6ml/minの流速で溶出を行った。
(2)トロンビンの活性化
陰イオン交換クロマトグラフィー溶出液360mlに、精製組換えエカリンを最終濃度4U/mlになるように添加し、37℃で2時間反応させた。
(3)ベンズアミジンカラムを用いた精製
(2)で得られたエカリン処理後の反応液を、0.5M NaClを含む10mM Tris-HCl(pH8.0)バッファーで平衡化したベンズアミジンファーストフロー(アマシャム)40mlカラムに対して、2.5ml/minでアプライした。800mlの上記バッファーでカラムを洗浄後、100mMベンズアミジン塩酸塩を含む10mM Tris-HCl+0.5M NaCl(pH8.0)バッファー360mlで溶出を行った。
(4)陽イオン交換クロマトグラフィー
(3)で得られたベンズアミジンカラム溶出液160mLに、2.5倍量の10mMクエン酸バッファー(pH7.0)を加えたものを試料とし、0.2M NaClを含む10mMクエン酸バッファー(pH7.0)で平衡化したSPトヨパール550C(東ソー)40mlカラムに対して、6.6ml/minでアプライした。800mlの上記バッファーでカラムを洗浄後、0.6M NaClを含む10mMクエン酸バッファー(pH7.0)120mlで溶出を行った。以上のステップを経ることで、最終精製収率70%の高い収率で高純度の精製組換えヒトトロンビンを得た。
(組換えヒトトロンビンの分析)
実施例6に示した方法で得られた精製組換えヒトトロンビンの酵素化学的性質及び糖鎖について、クロッティング活性、合成基質S-2238切断活性の測定、シアル酸の測定を行った。陽性コントロールとして、プラズマ由来の精製ヒトトロンビン(HTI社から購入)を用いた。その結果、精製組換えヒトトロンビンは表1に示すようにプラズマ由来の精製ヒトトロンビンと同等の値を示した。
(1)クロッティング活性
トロンビン検体を1.0%BSAを含んだ生理食塩水で希釈し、100μLをポリプロピレン製試験管に入れ37℃で2分以上加温した後、同様に37℃で加温した0.1%フィブリノーゲン溶液(化血研製)900μLを泡立てないように加え、軽く撹拌後、トキシノメーター(和光純薬工業ET-201)の測光ウェルにセットし凝固時間を測定した。トロンビン標準品として日本薬局方標準品およびWHO国際標準品(NIBSC製)を用い、検量線を作成後サンプルの測定値を外挿しクロッティング活性値を求めた。結果を表1に示す。
(2)合成基質S-2238切断活性
ファルコン社製2008チューブに検体20μlと50mM Tris-HCl(pH8.5)+50mM NaClバッファー60μl、0.1%PLURONIC F-68を20μl加え、37℃で3分間インキュベーションした。その反応液にテストチーム発色基質S-2238(1mM:第一化学薬品工業)を100μl添加し攪拌混合し、37℃で5分間の反応後、0.1Mクエン酸溶液を800μl加えて反応を停止した。反応液200μlを96ウェルプレートに移し、OD405/650を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2007040162
(3)シアル酸分析
トロンビン検体10μLと150mM酢酸ナトリウム10μL、1U/mL Neuraminidase 10μLを混和し、37℃で3時間反応させた後、精製水で希釈、0.45μmフィルターでろ過したものを分析に用いた。分析装置はDIONEX ION CHROMATOGRAPH、分離カラムとしてCarboPac PA1 (4×250mm) (DIONEX)を用いた。標準物質として段階希釈したN-Acetylneuraminic AcidとN-Glycolylneuraminic Acidを用い、その溶出時間を検体と比較し、検体のシアル酸を同定した。また標準物質の各濃度におけるピーク面積から各々の回帰式を作成後、サンプルの測定値を外挿し、それぞれのシアル酸含量比を計算した。結果を表2に示す。
Figure 2007040162
ウイルス、プリオンなどの血液由来危険因子を排除し、かつ糖鎖の点でヒトに対する生体適合性が高い安全なヒトトロンビンを工業的な規模で安価に供給することができる。
【0005】
非特許文献8:J.Biochem.117,59−62(1995)
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0014]
ヒトトロンビンは、止血剤として医療用医薬品分野において有用な蛋白である。上述したように、血液に含まれる可能性のある種々の危険因子を排除し、安全且つ安定的に低コストで供給できるヒトトロンビンの生産方法、製造方法の開発が望まれている。
[0015]
本発明者らは既出願特許WO2003/004641において、安全且つ安定的に低コストで供給できるヒトトロンビンの生産方法を確立したが、その後の研究により、数百リットルを超える大規模工業生産スケールで製造するためには、更なる技術開発が必要であることが判明した。
[0016]
本発明は、製造株の作出、培養および精製方法の改良を含む各種技術の特異的組み合わせによる、組換えヒトトロンビンの工業的製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0017]
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、SP2/0細胞で発現しトロンビンを得る方法で得られたトロンビンはN−グリコリルノイラミン酸が付加された糖鎖を持っていたが、CHO細胞を宿主とした場合、血漿由来ヒトトロンビンに見られる糖鎖と同じシアル酸であるN−アセチルノイラミン酸を持つ糖鎖が付加されることを発見した。さらに、前述のWO2003/004641で示したCHO細胞は付着性の性質を有しており浮遊培養が出来ず工業的には実用的でなかったが、ヒトプロトロンビンを発現するよう形質転換したCHO細胞で浮遊培養可能な形質転換体を見出し、無血清、完全浮遊で大量スケールでの培養を可能とした。またこの形質転換体は128μg/mLと発現量も高く、血漿由来ヒトトロンビンに見られる糖鎖と同じシアル酸であるN−アセチルノイラミン酸を持つ糖鎖が付加されることも確認された。さらに最適な精製法を組み合わせることにより、培養規模500Lを超える工業的スケールで、低コストかつN−グリコリルノイラミン酸によるより生体適合性の高い組換えヒトトロンビンの工業的製法を完成させるに至った。

Claims (8)

  1. 組換えヒトトロンビンの製造方法であって、下記(1)〜(4)の一連の工程を含むことを特徴とする前記製造方法:
    (1)ヒトプロトロンビン遺伝子をコードする遺伝子断片が組み込まれた発現ベクターを動物細胞に導入することによりヒトプロトロンビンを産生する形質転換細胞を取得する工程、
    (2)陰イオン交換法により前記形質転換細胞の培養液からヒトプロトロンビンを精製する工程、
    (3)精製したヒトプロトロンビンにエカリンを作用させて該ヒトプロトロンビンをヒトトロンビンに変換する工程、及び
    (4)ベンズアミジン及び陽イオン交換法を用いた親和力に基づく方法より、前記エカリン処理液からヒトトロンビンを精製する工程。
  2. 動物細胞が、CHO細胞である、請求項1記載の製造方法。
  3. ヒトプロトロンビン遺伝子が、配列番号3記載の塩基配列からなる、請求項1又は2の何れか一項記載の製造方法。
  4. 組換えヒトプロトロンビンの製造方法であって、下記(1)〜(2)の一連の工程を含むことを特徴とする前記製造方法:
    (1)ヒトプロトロンビン遺伝子をコードする遺伝子断片が組み込まれた発現ベクターを動物細胞に導入することによりヒトプロトロンビンを産生する形質転換細胞を取得する工程、及び
    (2)陰イオン交換法により前記形質転換細胞の培養液からヒトプロトロンビンを精製する工程。
  5. 動物細胞が、CHO細胞である、請求項4記載の製造方法。
  6. 請求項1ないし3の何れか一項記載の製造方法により得られたヒトトロンビン。
  7. 請求項4又は5の何れか一項記載の製造方法により得られたヒトプロトロンビン。
  8. ヒトプロトロンビンを産生するCHO細胞。
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