JPWO2007015546A1 - 間葉系幹細胞誘導剤及び組織再生促進剤並びに間葉系幹細胞の調製方法 - Google Patents
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Abstract
本発明の間葉系幹細胞誘導剤は、BMP−2を含み、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴とする。また、本発明の組織再生促進剤は、BMP−2を含み、全身性に投与されるものであって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴とする。さらに、本発明の間葉系幹細胞の調製方法は、BMP−2を非ヒト動物に投与するステップと間葉系幹細胞を含む血液を採取するステップと採取した血液から間葉系幹細胞を単離するステップとを備えることを特徴とする。
Description
本発明は、間葉系幹細胞誘導剤及び組織再生促進剤並びに間葉系幹細胞の調製方法に関する。
間葉系幹細胞は、自己複製能と間葉系組織への多分化能を有する体性幹細胞である。生体組織では、骨髄並びに真皮・骨格筋・脂肪組織等の結合組織に存在し、結合組織の恒常性維持や修復に機能している。間葉系組織の再生プロセスでは、損傷を受けた部位で、間葉系幹細胞が必要とされる細胞に分化し、増殖することが知られている(非特許文献1)。しかしながら、体内を循環する末梢血中には、間葉系幹細胞及び間葉系前駆細胞は極僅かにしか検出されない。
一方、骨形成因子−2(以下、BMP−2)は、異所性の骨形成を誘導する因子として発見された。BMP−2は、間葉系幹細胞及び間葉系前駆細胞に直接作用して、Smadやp38 MAP kinase等の細胞内シグナル伝達経路の活性化を介して、骨や軟骨への分化を誘導すると考えられている(非特許文献2及び3)。最近では、ヒトBMP−2遺伝子がクローニングされ、遺伝子組換え型ヒトBMP(rhBMP)の大量生産が可能となったため、骨欠損の修復及び再生医療への利用に期待されている。
Jiang,Y.ら、Nature、2002年、418:41−49
Fujii,M.ら、Mol. Biol. Cell、1999年、10:3801−3813
Nakamura,K.ら、Exp. Cell Res.、1999年、250:351−363
しかしながら、骨欠損の修復及び再生医療にBMP−2を利用するには、直接、罹病患部にBMP−2を局所投与するか、in vitroで間葉系幹細胞を分化させるために、骨髄液から分離した間葉系幹細胞にBMP−2を直接加える必要がある。
前者の場合には、罹病患部には内出血が生じ、周辺組織に腫れや痛みが伴うので、罹病患部への局所投与は被検動物にさらなる痛みを付加することになる。さらに、損傷部位の治癒過程は、炎症期、修復期、リモデリング期の3段階が少しずつ重なり合いながら進行するので、投与部位や投与のタイミングによっては、治癒過程の進行を遅らせることもある。一方、後者の場合には、間葉系幹細胞を骨髄から採取するため、被検動物への肉体的・時間的・経済的負担が大きく、得られる間質系幹細胞の量にも限りがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、極わずかにしか検出されない血液中の間葉系幹細胞を増加させる間葉系幹細胞誘導剤を提供することを目的とする。また、罹病患部に局所投与をすることなく、全身性の投与で損傷部位の再生を導く組織再生促進剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、骨髄液の採取を伴わず、被検動物に対して負担の軽い末梢血から間葉系幹細胞を調製する方法を提供することを目的とする。
本発明の間葉系幹細胞誘導剤は、BMP−2を含み、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴とする。
上記間葉系幹細胞誘導剤を動物に投与すれば、該動物の骨髄から血液中に間葉系幹細胞を動員することができ、血液から間葉系幹細胞を採取することが可能となる。また、血液から間葉系幹細胞を採取することができると、骨髄から骨髄間質細胞を採取することが不要となり、被験動物の負担が肉低的・時間的・経済的に大きく軽減される。
上記間葉系幹細胞誘導剤は、間葉系幹細胞がCD45陰性細胞であることが好ましい。
上記間葉系幹細胞誘導剤を動物に投与すれば、該動物の骨髄から血液中にCD45陰性の間葉系幹細胞を動員することができ、血液からCD45陰性の間葉系幹細胞を採取することが可能となる。こうして得られたCD45陰性の間葉系幹細胞は、組織の再生に利用することができ、損傷を受けた組織に局所投与することでin vivoでの組織再生を促進したり、in vitroの細胞培養で、目的とする細胞や組織への分化を誘導することができる。
本発明の組織再生促進剤は、BMP−2を含み、全身性に投与されるものであって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴とする。
上記組織再生促進剤を動物に全身性に投与すれば、該動物の骨髄から血液中に間葉系幹細胞を動員することができ、損傷を受けた罹病患部に間葉系幹細胞をリクルートすることができる。
上記組織再生促進剤は、組織が骨、脳、肝臓、皮膚又は血管内皮であることが好ましく、骨であることが特に好ましい。
間葉系幹細胞は、in vitroの細胞培養系で、上記組織に分化させることが可能であり、上記組織に損傷が生じた場合には、間葉系幹細胞を骨髄から血液中に動員し、上記組織の再生を促進することができる。
例えば、骨折の治療においては、上記組織再生促進剤を全身性に投与することで、血液を通じて間葉系幹細胞を骨折部位にリクルートメントすることができ、骨折部位で該間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化することで骨折の治療を促進することができる。
本発明の間葉系幹細胞の調製方法は、BMP−2を非ヒト動物に投与するステップと、間葉系幹細胞を含む血液を採取するステップと、採取した血液から間葉系幹細胞を単離するステップと、を備えることを特徴とする。
上記の間葉系幹細胞の調製方法によれば、非ヒト動物の血液から間葉系幹細胞を調製することが可能となる。また、上記調製方法によれば、被検動物への肉体的負担が軽いため、同一個体から繰り返し間葉系幹細胞を調製することができ、骨髄液から調製するよりも頻回かつ簡便に間葉系幹細胞を得ることができる。
上記の間葉系幹細胞の調製方法は、間葉系幹細胞を培養するステップを更に含むことが好ましい。
間葉系幹細胞を培養するステップを含むことにより、採取した血液が少量の場合であっても、間葉系幹細胞を必要量まで増やすことができる。
上記の間葉系幹細胞を培養するステップでは、間葉系幹細胞を骨髄細胞と共培養することが好ましい。間葉系幹細胞を骨髄細胞と共培養すれば、間葉系幹細胞の分化を抑制することができる。
本発明の間葉系幹細胞誘導剤を動物に投与すれば、該動物の骨髄から血液中に間葉系幹細胞を動員することができ、血液から間葉系幹細胞を採取することが可能となる。また、血液から間葉系幹細胞を採取することができると、骨髄から骨髄間質細胞を採取することが不要となり、被験動物の負担が肉体的・時間的・経済的に大きく軽減される。
本発明の組織再生促進剤を動物に投与すれば、該動物の骨髄から血液中に間葉系幹細胞をリクルートメントして増やすことができ、損傷を受けた罹病患部に間葉系幹細胞をリクルートすることができる。また、BMP−2を全身性に投与することによって血液から間葉系幹細胞を採取することができると、局所注入用に骨髄から骨髄間質細胞を採取することが不要となり、被験動物の負担が肉体的・時間的・経済的に大きく軽減される。
本発明の間葉系幹細胞の調製方法によれば、非ヒト動物の血液から間葉系幹細胞を調製することが可能となる。また、本方法では、各ステップを繰り返すことで、同一個体から繰り返し間葉系幹細胞を調製することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(間葉系幹細胞誘導剤)
本発明の間葉系幹細胞誘導剤は、BMP−2を含むものであって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴としている。
本発明の間葉系幹細胞誘導剤は、BMP−2を含むものであって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴としている。
間葉系幹細胞誘導剤とは、動物に投与することにより、血液中に間葉系幹細胞を動員し、血液中に含まれる間葉系幹細胞の数を増やすものをいう。
間葉系幹細胞とは、自己複製機能と複数の間葉系細胞に分化する多分化能を有する細胞のことをいう。
ここで、細胞系譜解析においては、間葉系幹細胞は、間葉系細胞に分化する前段階として、間葉系前駆細胞と区別されるが、本発明の間葉系幹細胞誘導剤は、血液中に間葉系幹細胞の数を増加させるだけでなく、間葉系前駆細胞の数を増加させる作用を有するものである。現在、間葉系幹細胞を特異的に識別するマーカーが存在せず、再生医療の分野においては、骨髄間葉系細胞、骨髄間質細胞及び間葉系前駆細胞を含めて間葉系幹細胞と呼ばれている。したがって、本発明の「間葉系幹細胞」とは、間葉系細胞に分化する能力を備えた未分化の細胞のことを意味する。尚、本発明の間葉系幹細胞誘導剤が、血液中の間葉系前駆細胞の数を増加させた場合には、その前段階である間葉系幹細胞の数も増加させているため、細胞系譜解析の立場に立っても、間葉系幹細胞誘導剤として機能したと判断しても矛盾がない。
「間葉系幹細胞を動員する」とは、間葉系幹細胞が存在している骨髄から、血液中に運び出されることをいう。
BMP−2は、前述の通り、異所性の骨形成を誘導する因子として発見されたタンパク質であり、生体においては、間葉系幹細胞及び間葉系前駆細胞に直接作用して、骨芽細胞への分化を誘導し、骨や軟骨の形成を誘導する作用を有している。
間葉系幹細胞誘導剤としてのBMP−2は、タンパク質(例えば、リコンビナントタンパク質、組織由来の精製タンパク質等)として動物に投与して使用されるが、該タンパク質を動作可動に翻訳できるようにBMP−2遺伝子を組み込んだ発現ベクター等であってもよい。発現ベクターとしては、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等が挙げられるが、動物に投与してBMP−2を発現できるものであれば、BMP−2のmRNAやその鋳型となるDNAそのものも含まれる。
BMP−2の起源となる動物種については、ヒト又は非ヒト動物が挙げられ、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギが例示できるが、投与する動物と同じ動物種であることが好ましい。
本発明の間葉系幹細胞誘導剤の使用方法としては、被検動物に適した用量を該動物に投与すればよいが、投与経路としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、皮下注射、腹腔内注射、経口投与、皮膚投与、眼投与、鼻腔投与等が挙げられる。好ましい投与路経路は静脈内注射又は筋肉内注射である。注射のための無菌組成物は、注射用蒸留水などの注射用水溶液を用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80TM、HCO?50と併用してもよい。また、徐放化するために、適当な担体、例えば多穴性コラーゲン・ディスクの様な担体に染込ませて移植することもできる。
また、本発明の間葉系幹細胞誘導剤は、血液中で増加する間葉系幹細胞がCD45陰性細胞であることを特徴としている。
CD45陰性細胞とは、CD45抗原を細胞の表面に発現していない細胞であって、非造血系の未分化細胞が該当し、間葉系幹細胞及び間葉系前駆細胞は原則としてCD45陰性細胞である。
CD45抗原は、チロシンホスファターゼであり、白血球共通抗原(LCA)としても知られている。CD45は、赤血球、血小板及びそれらの前駆細胞を除いた、総てのヒト造血系由来細胞に存在し、T細胞及びB細胞活性化に必須のタンパク質である。
(組織再生促進剤)
本発明の組織再生促進剤は、BMP−2を含み、全身性に投与されるものであって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴としている。
本発明の組織再生促進剤は、BMP−2を含み、全身性に投与されるものであって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴としている。
組織再生促進剤とは、動物の組織が損傷を受けた場合に、その修復を誘発したり、既に修復が開始された組織の修復作業を促進して組織の再生を導くものをいう。
「全身性に投与される」とは、損傷を受けた患部に局所投与するのではなく、血管等を通じて投与することによって、体全体に組織再生促進剤を循環させることをいう。例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、皮下注射、腹腔内注射、経口投与、皮膚投与、眼投与、鼻腔投与等が挙げられるが、好ましい投与路経路は静脈内注射又は筋肉内注射である。
上記の組織再生促進剤が組織の再生を促進する組織は、主に骨、脳、肝臓、皮膚又は血管内皮であるが、骨格筋、軟骨、脂肪、靭帯、腱等の間葉系組織の再生をも促進できる。
(間葉系幹細胞の調製方法)
次に、本発明の間葉系幹細胞の調製方法について説明する。
次に、本発明の間葉系幹細胞の調製方法について説明する。
本発明の間葉系幹細胞の調製方法は、BMP−2を非ヒト動物に投与する投与ステップと、間葉系幹細胞を含む血液を採取する採取ステップと、採取した血液から間葉系幹細胞を単離する単離ステップとを備えることを特徴とする。
投与ステップでは、BMP−2をヒト又は非ヒト動物に投与すればよく、ここで「非ヒト動物」とは、例えば、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギが例示できるが、投与するBMP−2の起源は投与する動物と同じ動物種であることが好ましい。また、投与の方法としては、上記の通り、被検動物に適した用量を適した投与経路で投与すればよいが、好ましい投与路経路は静脈内注射又は筋肉内注射である。
採取ステップでは、上記の投与ステップによって間葉系幹細胞が動員された血液を採取すればよいが、採血の方法は無菌的であれば特に制限されない。例えば、注射器、真空採血管、採血用キャピラリー等を用いて、静脈、動脈、目又は心臓等から採血することができる。
採血時期は、BMP−2の投与後、血液中での間葉系幹細胞濃度が高められた一定の時期であることが好ましい。この時期は、動物種、投与したBMP−2濃度及び投与経路に依存して異なるが、経時的に採血を行い、フローサイトメーターで末梢血中のCD45陰性細胞数を分析することにより決定することができる。尚、BMP−2の投与によるCD45陰性細胞数の増加は、間葉系幹細胞の増加を意味する。
単離ステップでは、まず、採取した血液から末梢血単核細胞を、フィコール・コンレイ(フィコール・ハイパック)比重遠心法、リンフォクイック法又はナイロンカラム法で単離し、その後、フローサイトメーター又は免疫磁気ビーズ法でCD45陰性細胞を分離することができる。尚、単離ステップでは、用途に応じて、末梢血単核細胞を分離するのみでもよい。
さらに、上記の間葉系幹細胞の調製方法は、更に間葉系細胞を培養する培養ステップを含めることができる。
培養ステップでは、上記の方法により調製した間葉系幹細胞を、当該細胞培養の分野で公知の適する方法で培養することができるが、次のような方法で行うことが好ましい。
まず、分離した間葉系幹細胞を、約2×106個となるように、10%FBS含有DMEM培地を含む基底膜細胞外基質でコートしたプレート(直径10cm)に播種し、3日目に非接着細胞を除くために培地を換え、以後3日に1回培地を交換して培養する。
その後、上記の初代培養がコンフルエントになったところで、トリプシン(0.05%)+EDTA(0.2mM)で細胞を剥がし、1×103〜5×103細胞/cm2の密度になるように、bFGF(1ng/ml)を予め含む上記培地に細胞を播種することを繰り返して継代培養する。
上記間葉系幹細胞は、増殖しないように処理した骨髄細胞をフィーダーとして共培養することにより、培養中に分化することを抑制することが可能である。骨髄細胞を増殖しないように処理する方法としては、グルタルアルデヒド処理、放射線処理等が挙げられるが、グルタルアルデヒド処理が好ましい。
本発明を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(骨髄移植)
移植用の骨髄細胞は、C57BL/6マウスにGreen Fluorescence Protein(GFP)遺伝子が導入されたGFPトランスジェニックマウス(8〜10週間齢)の骨髄から無菌的に調製した。尚、このGFPトランスジェニックマウスは、大阪大学微生物病研究所遺伝子機能解析分野の岡部勝教授より分与されたものである。GFPは、緑色の蛍光性のタンパク質であり、GFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞には、GFPが恒常的に発現している。したがって、該骨髄細胞を骨髄移植に用いれば、GFPを指標に移植した骨髄細胞を追跡できる。
移植用の骨髄細胞は、C57BL/6マウスにGreen Fluorescence Protein(GFP)遺伝子が導入されたGFPトランスジェニックマウス(8〜10週間齢)の骨髄から無菌的に調製した。尚、このGFPトランスジェニックマウスは、大阪大学微生物病研究所遺伝子機能解析分野の岡部勝教授より分与されたものである。GFPは、緑色の蛍光性のタンパク質であり、GFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞には、GFPが恒常的に発現している。したがって、該骨髄細胞を骨髄移植に用いれば、GFPを指標に移植した骨髄細胞を追跡できる。
レシピエントマウスには、8〜10週齢のC57BL/6マウスを用い、10Gyの放射線を照射後、5×106個のGFP骨髄細胞を尾静脈から注入することにより骨髄移植を実施した。
尚、CD45ネガティブ/GFPポジティブの骨髄細胞を移植する際には、GFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞を、8℃で20分間、抗マウスCD45抗体マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社製)と反応させ、磁気細胞ソーター(MACS;Miltenyi Biotec社製)でCD45ポジティブ細胞を分離し、CD45ネガティブ細胞を精製して用いた。
(BMP−2含有コラーゲン・ペレットの作成と移植)
1)BMP−2含有コラーゲン・ペレットの作成
まず、リコンビナント・ヒトBMP−2(rhBMP−2;アステラス製薬)を、1μg/μlになるように、5mmol/lのグルタミン酸、2.5%グリシン、0.5%サッカロース及び0.01%Tween−80を含有する緩衝液に縣濁した。その後、3μlのrhBMP−2懸濁液を22μlのリン酸塩緩衝液(PBS)で希釈し、多穴性コラーゲン・ディスク(直径6mm、厚さ1mm;エティコン社、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)に染み込ませ、凍結乾燥してBMP−2含有コラーゲン・ペレットを作成した。
1)BMP−2含有コラーゲン・ペレットの作成
まず、リコンビナント・ヒトBMP−2(rhBMP−2;アステラス製薬)を、1μg/μlになるように、5mmol/lのグルタミン酸、2.5%グリシン、0.5%サッカロース及び0.01%Tween−80を含有する緩衝液に縣濁した。その後、3μlのrhBMP−2懸濁液を22μlのリン酸塩緩衝液(PBS)で希釈し、多穴性コラーゲン・ディスク(直径6mm、厚さ1mm;エティコン社、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)に染み込ませ、凍結乾燥してBMP−2含有コラーゲン・ペレットを作成した。
対照群に用いるリン酸緩衝液(PBS)含有コラーゲン・ペレットは、rhBMP−2縣濁液の代わりにPBSを用いて、同様に作成した。
総ての手順は無菌的に行い、作成したコラーゲン・ペレットは、使用するまで−20℃に保存した。
2)コラーゲン・ペレットの移植
BMP−2含有コラーゲン・ペレット又は対照群に用いるPBS含有コラーゲン・ペレットは、上記の骨髄移植マウス、C57BL/6マウス又はヌードマウス等の背中の筋膜下に移植した。異所性の骨の蛍光写真は、移植3週間後に、デジタル顕微鏡(マルチビューアー・システムVB−S20;キーエンス社)で撮影した。
BMP−2含有コラーゲン・ペレット又は対照群に用いるPBS含有コラーゲン・ペレットは、上記の骨髄移植マウス、C57BL/6マウス又はヌードマウス等の背中の筋膜下に移植した。異所性の骨の蛍光写真は、移植3週間後に、デジタル顕微鏡(マルチビューアー・システムVB−S20;キーエンス社)で撮影した。
(脛骨骨折モデルマウス)
脛骨骨折モデルマウスは、以下のようにして作成した。まず、膝前面の皮膚に縦切開を入れ、脛骨近位(脛骨粗面近位)から30Gの注射針を髄内に刺入し脛骨遠位部まで挿入した。その後、3点ベンディング法で閉鎖的に脛骨骨幹部に骨折を作製し、創痍を縫合した。こうして作成した脛骨骨折モデルマウスは、一定期間の飼育を行った後、実験に用いた(Hiltunen A.、Vuorio E.、Aro H.T.、A standardizedexperimental fracture in the mouse tibia.、J. Orthop. Res.、1993年、11(2):305−12)。
脛骨骨折モデルマウスは、以下のようにして作成した。まず、膝前面の皮膚に縦切開を入れ、脛骨近位(脛骨粗面近位)から30Gの注射針を髄内に刺入し脛骨遠位部まで挿入した。その後、3点ベンディング法で閉鎖的に脛骨骨幹部に骨折を作製し、創痍を縫合した。こうして作成した脛骨骨折モデルマウスは、一定期間の飼育を行った後、実験に用いた(Hiltunen A.、Vuorio E.、Aro H.T.、A standardizedexperimental fracture in the mouse tibia.、J. Orthop. Res.、1993年、11(2):305−12)。
(脈管構造の観察)
血管を染色するために、マウスにBMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植した日から3週間目に、FITCアルブミン(シグマ社)を尾静脈から注入した。その後、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを摘出し、ティッシュテックOCTコンパウンドに包埋し、クライオスタット(Leica Microsystems社)で厚さ6μmに薄切し、顕微鏡で観察した。
血管を染色するために、マウスにBMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植した日から3週間目に、FITCアルブミン(シグマ社)を尾静脈から注入した。その後、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを摘出し、ティッシュテックOCTコンパウンドに包埋し、クライオスタット(Leica Microsystems社)で厚さ6μmに薄切し、顕微鏡で観察した。
(免疫組織化学)
異所性に形成された骨又は骨折部位の骨は外科的に摘出し、4℃で48時間、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、4℃で6日間、EDTA溶液で脱灰した。EDTA溶液は、1日おきに新しい液に取り変えた。脱灰した骨は、12時間15%のサッカロースを含むPBSに浸漬し、引き続き12時間30%のサッカロースを含むPBSに浸漬した。その後、骨は適当な大きさにカットし、ティッシュテックOCTコンパウンド(サクラファインテックジャパン社)に包埋し、ドライアイス上で急速凍結した。
異所性に形成された骨又は骨折部位の骨は外科的に摘出し、4℃で48時間、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、4℃で6日間、EDTA溶液で脱灰した。EDTA溶液は、1日おきに新しい液に取り変えた。脱灰した骨は、12時間15%のサッカロースを含むPBSに浸漬し、引き続き12時間30%のサッカロースを含むPBSに浸漬した。その後、骨は適当な大きさにカットし、ティッシュテックOCTコンパウンド(サクラファインテックジャパン社)に包埋し、ドライアイス上で急速凍結した。
免疫蛍光染色を行うための凍結切片は、クライオスタット(Leica Microsystems社)で厚さ6μmに薄切した。スライドガラス上の切片は、洗浄後、健常ヤギ血清に1時間浸すことにより非特異的吸着をブロックし、抗マウス・オステオカルシン・ポリクローナル抗体(タカラバイオ社)と反応させた。その後、切片はAlexa Fluor546でラベルした抗ウサギIgG抗体(Molecular Probes社)と2時間反応させ、洗浄後、4,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)と室温で10分間反応させ、顕微鏡で観察した。
組織中のGFPを検出するためには、スライドガラス上の切片を抗GFPポリクローナル抗体(MBL社)で反応させ、洗浄後、ジアミノベンジジン(diaminobenzidine;DAB)で検出した。対比染色は、ヘマトキシリンとエオジン(以下、HE染色)で行った。
BMP−2含有コラーゲン・ペレットの周辺組織と内皮前駆細胞の免疫染色は、スライドガラス上の切片を、健常ヤギ血清に1時間浸すことにより非特異的吸着をブロックし、引き続き抗マウスCD31モノクローナル抗体(BD Biosciences Pharmingen社)と反応させた。その後、切片は、Alexa Fluor546でラベルした抗ラットIgG抗体(Molecular Probes社)と2時間反応させ、洗浄後、DAPIで染色し、顕微鏡で観察した。
(in vitro分化)
BMP−2で誘導された末梢血単核細胞中のCD45ネガティブ細胞は、骨髄細胞(フィーダーとして使用)を2%のグルタルアルデヒドで固定したシャーレを用い、10%FCS、100U/mlストレプトマイシン/ペニシリン及び300ng/mlのBMP−2を含むDMEM培地で、3週間培養した。これにより、細胞の分化が観察された。
BMP−2で誘導された末梢血単核細胞中のCD45ネガティブ細胞は、骨髄細胞(フィーダーとして使用)を2%のグルタルアルデヒドで固定したシャーレを用い、10%FCS、100U/mlストレプトマイシン/ペニシリン及び300ng/mlのBMP−2を含むDMEM培地で、3週間培養した。これにより、細胞の分化が観察された。
(全RNAの抽出とRT−PCR)
全RNAは、RNeasyキット(Qiagen社)を用い、製造元のプロトコルに従って調製した。逆転写反応は、スーパースクリプト逆転写酵素(Invitrogen社)を用いて行い、PCRによる増幅は、以下のプライマーセットを使って行った。CBFA1:5’−CCGCACGACAACCGCACCAT−3’(フォワード)及び5’−CGCTCCGGCCCACAAATCTC−3’(リバース)、オステオポンチン:5’−TCACCATTCGGATGAGTCTG−3’(フォワード)と5’−ACTTGTGGCTCTGATGTTCC−3’(リバース)、ALP:5’−CGCCAGAGTACGCTCCCGCC−3’(フォワード)と5’−TGTACCCTGAGATTCGT−3’(リバース)とオステオカルシン:5’−TCTGCTCACTCTGCTGAC−3’(フォワード)と5’−GGAGCTGCTGTGACATCC−3’(リバース)。
全RNAは、RNeasyキット(Qiagen社)を用い、製造元のプロトコルに従って調製した。逆転写反応は、スーパースクリプト逆転写酵素(Invitrogen社)を用いて行い、PCRによる増幅は、以下のプライマーセットを使って行った。CBFA1:5’−CCGCACGACAACCGCACCAT−3’(フォワード)及び5’−CGCTCCGGCCCACAAATCTC−3’(リバース)、オステオポンチン:5’−TCACCATTCGGATGAGTCTG−3’(フォワード)と5’−ACTTGTGGCTCTGATGTTCC−3’(リバース)、ALP:5’−CGCCAGAGTACGCTCCCGCC−3’(フォワード)と5’−TGTACCCTGAGATTCGT−3’(リバース)とオステオカルシン:5’−TCTGCTCACTCTGCTGAC−3’(フォワード)と5’−GGAGCTGCTGTGACATCC−3’(リバース)。
(フローサイトメトメーターによる分析)
分離した末梢血単核細胞と間葉系幹細胞は、フルオレセイン・イソチオシアン酸塩(FITC)と結合した抗マウスCD45抗体、フィコエリトリン(PE)と結合した抗マウスCD11b、CD31、CD34、CD44、Flk−1、Sca−1抗体(BD Biosciences Pharmingen社)、ビオチンと結合した抗マウスGr−1、CXCR4、精製した抗マウスCD140a抗体(PDFGRa、BD Biosciences Pharmingen社)、精製した抗ヒトBMPR−II抗体(R&D Systems社)を含んでいる100μlのPBSに縣濁し、30分間、4℃の暗所でインキュベートした。
分離した末梢血単核細胞と間葉系幹細胞は、フルオレセイン・イソチオシアン酸塩(FITC)と結合した抗マウスCD45抗体、フィコエリトリン(PE)と結合した抗マウスCD11b、CD31、CD34、CD44、Flk−1、Sca−1抗体(BD Biosciences Pharmingen社)、ビオチンと結合した抗マウスGr−1、CXCR4、精製した抗マウスCD140a抗体(PDFGRa、BD Biosciences Pharmingen社)、精製した抗ヒトBMPR−II抗体(R&D Systems社)を含んでいる100μlのPBSに縣濁し、30分間、4℃の暗所でインキュベートした。
その後、細胞は、4℃の暗所で30分間、ストレプトアビジンPE、ストレプトアビジンPerCP(BD Biosciences Pharmingen社)、抗ラットIgG抗体又は抗ヤギIgG抗体(Molecular Probes社)と反応させた。フローサイトメーターによる分析は、FACScan(Becton Dickinson社)で、CellQuestソフトウェアを用いて行った。
(実施例1)BMP−2による骨髄由来間葉系前駆細胞のリクルートメントと異所性の骨の形成:
10Gyの放射線を照射したC57BL/6マウス(8〜10週齢、雌)に、GFPトランスジェニックマウス(C57BL/6、8〜10週間齢、雄)から無菌的に採取した骨髄細胞を尾静脈から注入し、その後、このマウスの背中にBMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植した。
10Gyの放射線を照射したC57BL/6マウス(8〜10週齢、雌)に、GFPトランスジェニックマウス(C57BL/6、8〜10週間齢、雄)から無菌的に採取した骨髄細胞を尾静脈から注入し、その後、このマウスの背中にBMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植した。
その結果、BMP−2含有コラーゲン・ペレットの移植3週間目には、移植したBMP−2含有コラーゲン・ペレット(図1A)にGFPの蛍光を認め(図1B)、そこに異所性の骨の形成を確認した(図1C、図1D)。図1Cは、BMP−2含有コラーゲン・ペレットのX線写真を示し、図1Dは、BMP−2含有コラーゲン・ペレットの組織切片をHE染色した像である。
さらに、オステオカルシンとGFPの免疫蛍光染色により、新しい骨に沿って存在する裏打ち細胞が骨芽細胞であり(図1E)、この骨芽細胞はGFPを同時に発現していることが判明した(図1F)。尚、図1Gは、DAPIで染色した核を示し、図1Hは、オステオカルシン、GFP及びDAPIで三重染色した像を示す。
これらの結果より、多数の骨髄由来間葉系前駆細胞が異所性に形成された骨及びその周辺部にリクルートメントされることが判明し、このリクルートメントには、形成された骨及びその周囲に十分な脈管構造ネットワークが形成される必要のあることが示唆された。
(実施例2)異所性の骨及びその周囲に形成された脈管構造とその役割:
異所性の骨及びその周辺部に形成された脈管構造を可視化するために、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植したマウスに、FITCでラベルしたアルブミンを静脈注射し、血管の内腔を染色した。
異所性の骨及びその周辺部に形成された脈管構造を可視化するために、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植したマウスに、FITCでラベルしたアルブミンを静脈注射し、血管の内腔を染色した。
図2Aの左の写真は、異所性の骨のHE染色像を示し、右の写真はFITC染色像を示す。また、図2Bは、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植した場合とPBS含有コラーゲン・ペレットを移植した場合における、移植3日目の各コラーゲン・ペレットのHE染色像、並びにCD31とDAPIの免疫蛍光染色及びこれらの二重染色を示す。
その結果、異所性の骨とその周囲には脈管構造を示す有意な蛍光が認められ、機能的な脈管ネットワークが構築されることが示唆された(図2A)。このことは、脈管内皮細胞のマーカーであるCD31の発現が異所性の骨及びその周囲で認められ、コントロールのPBS含有コラーゲン・ペレットでは認められなかったことからも支持される(図2B)。
次に、BMP−2含有コラーゲン・ペレット及びその周囲に誘導された脈管構造が、間葉系幹細胞をリクルートメントするためのルートとして機能するか否かを確認した。
まず、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植したヌードマウスに、GFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞から分離したCD45ネガティブ/GFPポジティブの骨髄細胞(以下、GFP間葉系幹細胞)を2週間毎日尾静脈から注入し、その後のBMP−2含有コラーゲン・ペレットを組織学的に解析した。
尚、静脈注射したGFP間葉系幹細胞は、表面マーカーのフローサイトメーターによる分析の結果と、アリザリンレッド染色及びオイルレッドO染色の結果より、Sca−1、CD34及びCD44を強く発現し(図3A)、骨芽細胞と脂肪細胞に分化する能力を備えていることを確認している(図3B)。
この結果、GFP間葉系幹細胞は、ヌードマウスのBMP−2含有コラーゲン・ペレットに形成された異所性の骨に沿って線形的に配置することが判明した(図4A−E)。尚、図5Aは、該BMP−2含有コラーゲン・ペレットの組織切片のHE染色像、図5B〜Eは、それぞれ該組織切片のオステオカルシン、GFP及びDAPIによる染色像、並びにこれらの三重染色像を示す。
以上の結果を合わせると、BMP−2により誘発される異所性の骨形成には、新しく形成された脈管構造による機能的脈管ネットワークと骨髄由来間葉系前駆細胞のリクルートメントが大きく寄与していることが示唆された。
(実施例3)BMP−2刺激による骨髄から血液中への骨髄由来間葉系細胞の動員:
BMP−2による刺激が、骨髄から抹消血中への骨髄由来間葉系細胞の動員を誘導するか否かについて調べた。
BMP−2による刺激が、骨髄から抹消血中への骨髄由来間葉系細胞の動員を誘導するか否かについて調べた。
まず、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植したGFPトランスジェニックマウスから末梢血単核細胞を7日間毎日分離し、その日ごと、1×106個の該末梢血単核細胞を、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植したヌードマウスの尾静脈から注入した。該末梢血単核細胞を最後に注入した日から2週間経過した後、移植したBMP−2含有コラーゲン・ペレットを回収して組織学的に調べた。
図5Aは、上記の末梢血単核細胞を7日間毎日移植したヌードマウスのBMP−2含有コラーゲン・ペレットの組織切片のHE染像、図5B〜Eは、それぞれ該組織切片のオステオカルシン、GFP及びDAPIにより染色像、並びにこれらの三重染色像を示す。
その結果、注入した末梢血単核細胞由来のGFPポジティブ骨芽細胞は、異所性の骨に沿って線形的に配置することが判明し(図5)、筋肉組織におけるBMP−2刺激が骨髄由来間葉系細胞を末梢血中に動員する引き金になっていることが示唆された。
(実施例4)BMP−2により誘発される異所性の骨形成におけるCD45ネガティブ細胞の寄与:
骨芽細胞が非造血系血統の間葉系幹細胞を起源とするため、骨髄中のCD45ネガティブ間葉系幹細胞がBMP−2により誘発される異所性の骨形成に寄与するか否かについて調べた。
骨芽細胞が非造血系血統の間葉系幹細胞を起源とするため、骨髄中のCD45ネガティブ間葉系幹細胞がBMP−2により誘発される異所性の骨形成に寄与するか否かについて調べた。
まず、10Gyの放射線を照射したマウスに、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植し、2種類の骨髄細胞プール(CD45ネガティブ/GFPネガティブ細胞及びCD45ポジティブ/GFPポジティブ細胞)を混ぜて移植した。末梢血単核細胞のフローサイトメーターによる分析の結果、骨髄細胞の移植が成功したことを示され、GFPトランスジェニックマウス由来の骨髄細胞を移植した対照群と比較して、CD45ネガティブ/GFPネガティブ細胞の増加(4.0に対して8.6%)とCD45ネガティブ/GFPポジティブ細胞の顕著な減少(2.2%に対して0.7%)が認められた(図6)。
そこで、これらの骨髄移植マウスのBMP−2含有コラーゲン・ペレットにおける異所性の骨形成に及ぼすCD45ネガティブ細胞の影響について調べた。その結果、CD45ネガティブ/GFPポジティブ細胞の割合が減少したマウスにおいても異所性の骨は形成されたが、GFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞をそのまま移植したマウスと比べて、GFPポジティブ骨芽細胞の数が顕著に減少していた(図6Cと図6Gの点線で囲まれた部分の比較)。
尚、異所性の骨のX線写真(図6D、図6H)及びHE染色像(図6E、図6I)は、いずれの骨髄細胞を移植したマウスにおいても異所性の骨が形成されていることを示す。図6F及び図6Jは、オステオカルシン、GFP及びDAPIの三重染色像を示すが、CD45ネガティブ/GFPネガティブ細胞とCD45ポジティブ/GFPポジティブ細胞を混ぜて移植したマウスに形成された骨(図6F)は、対照群であるGFP骨髄細胞をそのまま移植したマウスに形成された骨(図6J)よりも、GFPポジティブ細胞の数が顕著に少ないことを示された。
このことは、CD45ポジティブ骨髄細胞ではなくCD45ネガティブ骨髄細胞が、BMP−2による異所性の骨を形成する骨芽細胞の主要な起源であることを示唆している。すなわち、これらのデータは、BMP−2に依存して骨髄から血液中へ動員される間葉系前駆細胞が、CD45ネガティブ細胞であることを強く示唆している。
また、末梢血単核細胞の中のCD45ネガティブ細胞の増加は、BMP−2含有コラーゲン・ペレット移植後の最初の7日以内に起こったが、この増加は、急激であるが時間的に制限されるものであった(図7A)。図7Aには、フローサイトメーターで経時的に分析された異なる5つの個体のデータを示すが、CD45ネガティブ細胞の占有率は、ピーク時において60〜80%であった。
さらに、CD45ネガティブ細胞の割合が顕著に高められた末梢血単核細胞(図7Aの実験1の3日目)をフローサイトメーターで分析した結果、BMPR−IIネガティブ細胞及びSca−1ネガティブ細胞の割合が高められた(図7B)。これらの結果より、末梢の筋肉組織でのBMP−2刺激が骨髄から血液中へのCD45ネガティブ細胞の動員を誘発することが示唆された。
CD45ネガティブ細胞においてBMPR−IIの発現が減少したことは、CD45ネガティブ細胞を末梢の筋肉組織にリクルートメントする際に、BMP−2以外の他の因子が関与している可能性を示唆している。また、Sca−1は、間葉系幹細胞を含むさまざまな幹細胞のマーカーであるため(図3A)、Sca−1の発現が減少したCD45ネガティブ細胞は、骨髄に存在する無刺激の間葉系幹細胞と比較して異なる性質を有している可能性を示唆している。
(実施例5)BMP−2刺激で血液中に動員されるCD45ネガティブ細胞の特徴についての検討:
BMP−2刺激で血液中に動員されるCD45ネガティブ細胞の特徴について検討するため、磁気細胞ソーター(MACS)でCD45ネガティブ細胞を濃縮し、マウス骨髄細胞をグルタルアルデヒドで固定したフィーダー細胞上で培養し、骨芽細胞特異的マーカー遺伝子の発現をRT−PCRで調べた(図8左)。その際、BMP−2刺激による該CD45ネガティブ細胞の形態的変化についても調べた(図8右)。
BMP−2刺激で血液中に動員されるCD45ネガティブ細胞の特徴について検討するため、磁気細胞ソーター(MACS)でCD45ネガティブ細胞を濃縮し、マウス骨髄細胞をグルタルアルデヒドで固定したフィーダー細胞上で培養し、骨芽細胞特異的マーカー遺伝子の発現をRT−PCRで調べた(図8左)。その際、BMP−2刺激による該CD45ネガティブ細胞の形態的変化についても調べた(図8右)。
図8の左側は、RT−PCRの結果を示す電気泳動写真であって、レーン1は培養をする前の細胞、レーン2は培養後無処理の細胞、レーン3は培養後BMP−2(300ng/ml)で刺激した細胞を示している。また、図8の右側は、培養後、BMP−2(300ng/ml)の刺激の有無における、CD45ネガティブ細胞の形態的変化を比較した写真である。
この結果、CD45ネガティブ細胞は、in vitroでの培養を開始する前において、転写調節因子であるCbfa1を発現し、BMP−2刺激の有無にかかわらず、オステオポンチンを発現していることが判明した(図8)。また、培養したCD45ネガティブ細胞をBMP−2(300ng/ml)で処理すると、アルカリホスファターゼやオステオカルシンのような骨芽細胞特異的マーカー遺伝子の発現が効率的に誘導され、細胞の形態変化が引き起こされることが判明した(図8)。これらのデータは、骨髄から血液中に動員されたCD45ネガティブ細胞が、末梢組織で骨芽細胞を提供する能力を有することを示している。
さらに、BMP−2含有コラーゲン・ペレットを移植したマウスの末梢血単核細胞について、野生型マウスの末梢血単核細胞を対照群として、発現している細胞表面マーカーをフローサイトメーターで分析した結果、CD45ネガティブ細胞には間葉系細胞マーカーであるCD44の有意な発現が認められた(図9、図10)。
しかしながら、CD45、CD11b及びGr−1のような造血系血統マーカー並びにCD34、Flk−1及びCD31のような内皮細胞血統マーカーは、いずれも検出されなかった(図9)。
興味深いことに、循環する骨髄由来間葉系幹細胞は、ケモカインである間質細胞由来因子(SDF−1)のレセプター、CXCR4を顕著に発現していた(図9)。SDF−1ケモカインは、骨髄でCXCR4ポジティブ幹細胞に作用し、SDF−1を発現する末梢組織にCXCR4ポジティブ幹細胞をリクルートメントすることが知られている。SDF−1の発現は、BMP−2を注入した局所の周辺組織で上昇することが明らかになったので(データ非表示)、血液中を循環している骨髄由来間葉系幹細胞をBMP−2含有コラーゲン・ペレットにリクルートメントするために、SDF−1が寄与している可能性が示唆された。
(実施例6)脛骨骨折マウスの骨折治癒における骨髄由来間葉系幹細胞の役割:
脛骨骨折マウス(ヌードマウス)に、14日間、GFP間葉系幹細胞を尾静脈から注入した結果、GFP間葉系幹細胞が骨折した損傷部位にリクルートされ、骨の再生が促進されることが確認された(図11)。
脛骨骨折マウス(ヌードマウス)に、14日間、GFP間葉系幹細胞を尾静脈から注入した結果、GFP間葉系幹細胞が骨折した損傷部位にリクルートされ、骨の再生が促進されることが確認された(図11)。
図4の上段は、GFP間葉系幹細胞を注射したヌードマウスの骨折部位の組織切片を、下段は対照群としてPBSを注射したヌードマウスの骨折部位の組織切片を示す。それぞれ、左からGFP、DAPI及びこれらの二重染色の免疫蛍光染色像、並びにGFPをDABで発色させた免疫化学染色像を示す。
次に、脛骨骨折マウスの末梢血中へのCD45ネガティブ細胞の動員について、フローサイトメーターで経時的に分析した。その結果、末梢血中のCD45ネガティブ細胞の数は一時的ではあるが顕著に上昇することが再現性よく確認された(図12A)。また、末梢血中のCD45ネガティブ細胞数の増加は、CXCR4ポジティブ細胞の増加と相関していた(図12B)。このことは、骨折による誘発される細胞の性質とBMP−2刺激で誘発された骨髄由来間葉系幹細胞の性質が顕著に類似することを示唆している。
そこで、脛骨の骨折で誘発されたCD45ネガティブ細胞が骨髄由来間葉系幹細胞の特徴的機能を有するかどうかを調べるために、脛骨を骨折させたGFPトランスジェニックマウスの末梢血単核細胞(以下、GFP末梢血単核細胞)を、14日間毎日、脛骨を骨折させたヌードマウスに尾静脈から注入した。
図13の上段は、上記のGFP末梢血単核細胞を14日間毎日注入された上記ヌードマウスの骨折部位の組織切片を、下段は対照群としてのPBSを注射したヌードマウスの骨折部位の組織切片を示す。それぞれ、左からGFP、DAPI及びこれらの二重染色の免疫蛍光染色像、並びにGFPをDABで発色させた免疫化学染色像を示す。
その結果、上記のGFP末梢血単核細胞を移植されたヌードマウスの骨折部位には、GFPポジティブ骨芽細胞が顕著に蓄積されていることが示された(図13)。一方、対照群としてPBSを移植したヌードマウスの骨折部位には、GFPポジティブ骨芽細胞は検出されなかった。すなわち、骨折で誘発された末梢血単核細胞中のCD45ネガティブ細胞は、骨髄由来間葉系前駆細胞の特徴を持ち、骨折部位にリクルートされて骨芽細胞に分化することが示された。
本発明の間葉系幹細胞誘導剤を動物に投与すれば、該動物の骨髄から血液中に間葉系幹細胞を動員することができ、血液から間葉系幹細胞を採取することが可能となる。また、血液から間葉系幹細胞を採取することができると、骨髄から骨髄間質細胞を採取することが不要となり、被験動物の負担が肉体的・時間的・経済的に大きく軽減される。
Claims (8)
- 骨形成因子−2を含む間葉系幹細胞誘導剤であって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴とする間葉系幹細胞誘導剤。
- 前記間葉系幹細胞は、CD45陰性細胞である、請求項1に記載の間葉系幹細胞誘導剤。
- 骨形成因子−2を含む全身性に投与される組織再生促進剤であって、血液中の間葉系幹細胞を増加させることを特徴とする組織再生促進剤。
- 前記組織は、骨、脳、肝臓、皮膚又は血管内皮である、請求項3に記載の組織再生促進剤。
- 前記組織は、骨である、請求項3に記載の組織再生促進剤。
- 骨形成因子−2を非ヒト動物に投与するステップと、
間葉系幹細胞を含む血液を採取するステップと、
採取した血液から間葉系幹細胞を単離するステップと、
を備える、間葉系幹細胞の調製方法。 - 更に、間葉系幹細胞を培養するステップを含む、請求項6に記載の間葉系幹細胞の調製方法。
- 前記間葉系幹細胞を培養するステップは、間葉系幹細胞を骨髄細胞と共培養するステップである、請求項7に記載の間葉系幹細胞の調製方法。
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US70517105P | 2005-08-04 | 2005-08-04 | |
US60/705171 | 2005-08-04 | ||
JP2006077243 | 2006-03-20 | ||
JP2006077243 | 2006-03-20 | ||
PCT/JP2006/315406 WO2007015546A1 (ja) | 2005-08-04 | 2006-08-03 | 間葉系幹細胞誘導剤及び組織再生促進剤並びに間葉系幹細胞の調製方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JPWO2007015546A1 true JPWO2007015546A1 (ja) | 2009-02-19 |
Family
ID=59053824
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007529532A Withdrawn JPWO2007015546A1 (ja) | 2005-08-04 | 2006-08-03 | 間葉系幹細胞誘導剤及び組織再生促進剤並びに間葉系幹細胞の調製方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPWO2007015546A1 (ja) |
-
2006
- 2006-08-03 JP JP2007529532A patent/JPWO2007015546A1/ja not_active Withdrawn
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