JPWO2006095748A1 - 株式ポートフォリオ選択装置、株式ポートフォリオ選択方法及び株式ポートフォリオ選択プログラム - Google Patents

株式ポートフォリオ選択装置、株式ポートフォリオ選択方法及び株式ポートフォリオ選択プログラム Download PDF

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Abstract

株式ポートフォリオを選択する際に、知的資産関連指標を含む複数の企業評価指標関連データを取得し(ステップS1〜S6)、取得された企業評価指標関連データを用いて分析を行い、所定の少なくとも一つの指標に対応した企業ランキングを作成し(ステップS7〜S13、及びS19)、作成された企業ランキングから所定数の企業を選択し(ステップS14)、選択された各企業に対して投資比率を選定し(ステップS15)、得られた投資比率の配分結果に基づいて、選択された企業に対応した株式ポートフォリオを作成して出力する(ステップS16、S17)。これにより、知的資産関連指標を含む企業評価指標を用いて企業を総合的に評価した結果に基づいてより好ましい株式ポートフォリオを自動的に選択する装置を提供する。

Description

本発明は、企業評価指標に基づいて株式ポートフォリオを選択する株式ポートフォリオ選択装置に関する。更に本発明は、株式ポートフォリオ選択方法及び株式ポートフォリオ選択プログラムに関する。
株式ポートフォリオを作成する場合には、高リターンが期待される銘柄をポートフォリオに組み込みながら、リターンが変動するリスクを低減させ得るようなポートフォリオの組み合わせを作成することが望まれる。そのため、株式ポートフォリオを作成する場合には、銘柄の選択とともに、選択した銘柄に対する最適な投資比率をも考慮したポートフォリオの組み合わせを探っていくことが求められる。その際、高リターンが期待される銘柄については、金融機関や証券アナリスト等が、その知識、経験、及び定量分析によって該当する銘柄を判断するケースが多い。また、判断材料となるデータとしては、例えば、金利動向の推移、日経平均・TOPIXの推移、及び企業の設備投資動向等、官公庁や東証等が公表するマクロ的なデータを利用するのが一般的である。また、ミクロ的なデータとしては、企業の過去の株価推移や財務諸表等を判断材料として利用するのが一般的である。つまり、このような銘柄の選択は、上記のように公表されたマクロデータや財務諸表に表れるオンバランスの資産に対する評価を基本にして行われていたのである。
しかしながら、現在では、企業の収益や企業価値は、技術や研究開発、及びブランドといったオフバランスの無形資産に大きく左右されながらその決定がなされている。そして、この点に着目して、財務諸表等には表れない企業の潜在的な技術力を、特許等の知的資産関連指標を用いて評価し、将来高リターンが期待される銘柄を選択する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
米国特許第6175824号明細書
しかしながら、上記米国特許第6175824号では、企業評価の算定に用いられる指標として、特許等知的資産の公開情報から得られる指標のみしか用いられていない。また、そのような指標の選択がいかなる方法に基づいてなされているのかが、必ずしも明確ではない。
たしかに、上述のように企業の収益や企業価値は、オフバランスの無形資産に大きく依存する。しかし、設備等の有形固定資産の活用や、機会費用を減少させる資金の活用等といった財務戦略的な要素を全く考慮せずには、企業評価を適切に行うことはできない。また、上記米国特許第6175824号では、被引用回数や特許登録件数等の指標を用いてモンテカルロ法等による解析を行っている。しかし、本当にそれらの指標によって評価をすることが妥当であるのか否かの判断根拠は定かではない。さらには、上記米国特許第6175824号では、銘柄を選択するのみである。選択した諸銘柄を、どのように組み合わせれば最適なポートフォリオが出来上がるのかについては触れられていない。
そこで、本発明は、オフバランスの無形資産を代表する特許から得られる指標を使用し、これとともに、企業の経営財務に関する情報から得られるデータをも加味する。そして、各々の企業が事業戦略、研究開発戦略、及び知的財産戦略の三位一体による経営戦略をいかに構築・運用して、企業価値の増大を図っているのかを総合的に評価する。更に、それを株式ポートフォリオ組入れ銘柄を選択する際の判断基準にする。また、株式ポートフォリオ組入れ銘柄を選択する場合と同様の基準に基づいて最適な投資比率まで決定し、出力できるようにする。これにより、利便性の高い株式ポートフォリオ選択装置、株式ポートフォリオ選択方法、及び株式ポートフォリオ選択プログラムを提供する。
上記課題を解決するために本発明は、次の構成を備えている。なお、何れかの請求項に係る発明の説明にあたって行う用語の定義等は、その性質上可能な範囲において他の請求項に係る発明にも適用があるものとする。
(1)本発明は、企業評価指標に基づいて株式ポートフォリオを選択する装置であって、以下の手段を備えている。すなわち、知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを取得するデータ取得手段と、前記企業評価指標関連データを用いて企業評価を行い企業ランキングを作成する企業ランキング作成手段と、前記企業ランキングから所定数の企業を選択して株式ポートフォリオ組入れ銘柄とする株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段と、前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業に対して投下する資金の投資比率を選定する投資比率選定手段と、投資比率選定手段により選定された投資比率に基づき株式ポートフォリオ組入れ銘柄に対応した株式ポートフォリオを作成する手段である。
これによれば、研究開発活動によって蓄積されてきた知的資産や、知的資産を生み出す組織や人材としての潜在的競争力を適正に評価することができる。また、前記知的資産や組織及び人材の戦略的な活用によって、顕在的競争力や収益力を高めていくことが期待される企業を適切に選び出すことができる。そして、前記企業を選び出す場合と同様の基準に基づいて、選択した株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業に対する投下資金の配分比率をも選定することができる。これにより、株式の売買銘柄や投資比率の情報を、容易かつ的確に取得できるようになる。
(2)上記の株式ポートフォリオ選択装置において、更に、業種及び/又は企業を選択する業種企業選択手段を備えることが望ましい。
これによれば、上記の作用効果に加え、投資家にとって関心のある業種及び/又は企業を任意に指定することができ、その上で、最適な株式ポートフォリオを選択することができる。
なお、ここで「業種」とは、一般に使われている業界をさす場合に限られず、任意の企業群をいうものとする。例えば、技術、製品、商品等の種類によって分類された群、或いは特許分類である国際特許分類(IPC)、FI、Fターム、及び米国特許分類(UPC)、或いは米国標準産業分類(SIC)によって分類された群等である。
(3)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、企業ランキング作成手段として、データ取得手段により取得された企業評価指標関連データから少なくとも1の知的資産関連指標が含まれるように所定数の企業評価指標を選択する指標選択手段と、該指標選択手段により選択された企業評価指標を用いて主成分分析を行い、企業ごとの主成分得点を算出する主成分分析手段と、を備えることが望ましい。
これによれば、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の選択にあたり、企業評価指標関連データから少なくとも1の知的資産関連指標が含まれるように選択する。従って、上記の各作用効果に加え、研究開発活動によって蓄積されてきた知的資産や、知的資産を生み出す組織や人材による潜在的競争力を適正に評価することが可能となり、収益力を高めていくことが期待される企業を適切に選び出すことが可能となる。
又、主成分分析により企業ランキングをつけるので、恣意によらず客観的に株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる企業を選択できる。
(4)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、企業ランキング作成手段として、データ取得手段により取得された企業評価指標関連データを用いて因子分析を行い、抽出された因子に基づき企業評価指標を集約する因子分析手段と、因子分析手段により抽出された因子と知的資産関連収益等の諸収益を表す収益関連指標とを用いて重回帰分析を行い、収益関連指標に対し統計的有意を示す因子の企業評価指標を選択する重回帰分析手段と、重回帰分析手段により選択された企業評価指標を用いて主成分分析を行い企業ごとの主成分得点を算出する主成分分析手段と、を備えても良い。
これによれば、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の選択にあたって、知的資産関連収益等の収益関連指標に対し統計的有意を示す因子を選択して企業評価を行う。従って、何が企業の知的資産関連収益等の諸収益に対して寄与しているのか、その構造を明らかにした上で、指標を総合化していくことになる。このため、上記の各作用効果に加え、恣意を排した客観的な企業評価指標に基づき株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる企業を選択できる。
(5)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、企業ランキング作成手段として、知的資産関連指標を観測変数とする共分散構造分析を行うことにより各企業ごとの企業評価を行う共分散構造分析手段を備えていても良い。
これによれば、上記の各作用効果に加え、共分散構造分析を用いて直接観測できない抽象的な要素間の因果構造の把握や評価を行うことができる。さらに、知的資産関連指標等の様々な指標を観測変数とすることで、そのような知的資産の経営戦略化を押し進め、それを企業の収益力の向上へと結び付けている企業を、総合的に評価することができる。また、観測変数を構成する指標ごとに、企業を多面的に評価することが可能となる。
(6)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、共分散分析構造分析手段として、「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「知的財産戦略経営」因子をそれぞれ潜在変数とし、前記知的資産関連指標を含む複数の企業評価指標をそれぞれ観測変数とし、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない前記各観測変数の独自因子と、前記「知的財産戦略経営」因子を規定する要因のうち、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない変動要因と、をそれぞれ誤差変数とし、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子の各々が、前記「知的財産戦略経営」因子に影響する係数をそれぞれ潜在変数間係数とし、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の各々が、前記複数の企業評価指標のいずれかに影響する係数をそれぞれ潜在変数−観測変数間係数とした因果モデル情報を入力する入力手段と、入力手段により入力された因果モデル情報に基づき、因果モデルを表す行列方程式を生成する因果モデル生成手段と、行列方程式に含まれる観測変数の分散共分散行列を、因果モデル情報で仮定された前記係数の関数により表す共分散構造を生成する共分散構造生成手段と、データ取得手段により取得された企業評価指標関連データに基づき分散共分散行列を算出する企業評価指標関連デー分散共分散行列算出手段と、共分散構造を企業評価指標関連データ分散共分散行列に最も近似させることにより係数の推定値を算出する係数推定値算出手段と、係数推定値算出手段により算出された各係数の推定値と企業評価指標関連データ分散共分散行列とに基づき所定の適合度指標の値を算出し、当該適合度指標の値に基づき因果モデルの適合度を検定する適合度検定手段と、適合度検定手段による検定の結果、因果モデルと企業評価指標関連データとの乖離が許容範囲内にあると判断した場合に、行列方程式を確定する因果モデル確定手段と、確定した行列方程式に含まれる各係数と、各観測変数と、に基づいて「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の因子得点を算出する因子得点算出手段と、を備えても良い。
これによれば、上記の各作用効果に加え、直接観測できない抽象的な要素である「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「知的財産戦略経営」因子のそれぞれの因子間の因果構造について仮説を構築して共分散構造分析を行うことにより、上記因果構造の把握や評価を行うことができる。そして、上記因果構造の検証を経たうえで、企業評価を行うことで、知的資産の経営戦略化を押し進め、それを企業の収益力の向上へと結び付けている企業をより精確に評価することが可能となる。
そして、各企業の「特許戦略」因子得点と「知的財産戦略経営」因子得点との差に基づいて企業評価を行うことにより、企業に対する市場での評価に表れていない潜在的競争力を企業評価に反映させることが可能となる。
(7)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、企業ランキング作成手段として、「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「知的財産戦略経営」因子をそれぞれ潜在変数とし、前記知的資産関連指標を含む複数の企業評価指標をそれぞれ観測変数とし、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない前記各観測変数の独自因子と、前記「知的財産戦略経営」因子を規定する要因のうち、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない変動要因と、をそれぞれ誤差変数とし、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子の各々が、前記「知的財産戦略経営」因子に影響する係数をそれぞれ潜在変数間係数とし、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の各々が、前記複数の企業評価指標のいずれかに影響する係数をそれぞれ潜在変数−観測変数間係数とした因果モデル情報に基づいて共分散構造分析を行い、前記「特許戦略」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の因子得点を算出する共分散構造分析手段を備え、
前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段として、前記共分散構造分析手段により算出された各企業の前記「特許戦略」因子得点と前記「知的財産戦略経営」因子得点との得点差を算出し、及び/又は、前記共分散構造分析手段により算出された各企業の前記「特許戦略」因子得点と前記「研究開発投入性向」因子得点との和の全企業平均値に対する大小関係と、前記各企業の前記「知的財産戦略経営」因子得点の全企業平均値に対する大小関係とをそれぞれ算出する、得点差及び/又は因子得点全企業平均値大小関係算出手段と、前記「知的財産戦略経営」因子得点を前記「特許戦略」因子得点から減算した得点差が第1の所定値以上の企業、及び/又は過小評価、前記「特許戦略」因子得点と前記「研究開発投入性向」因子得点との和が全企業平均値より大きく、且つ、前記「知的財産戦略経営」因子得点が全企業平均値より小さい企業を、過小評価企業として抽出する過小評価企業抽出手段と、前記過小評価企業抽出手段により抽出された企業群を第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補とする株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補決定手段と、を備えていても良い。
これによれば、上記の各作用効果に加え、共分散構造分析を用いて直接観測できない抽象的な要素である「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「知的財産戦略経営」因子得点の因果構造の把握や評価を行うことができる。そして、各企業の「特許戦略」因子得点と「研究開発投入性向」因子得点の和と、「知的財産戦略経営」因子得点とに基づいて、企業評価を行うことにより、企業に対する市場での評価に表れていない潜在的競争力を企業評価に反映させることが可能となる。
「知的財産戦略経営」因子得点は、知的財産のみならず各企業の財務戦略や市場評価をも考慮したランキングになっている。他方、「特許戦略」因子得点は、各企業の知的財産戦略の一端を確実に反映したランキングになっている。各企業の知的財産活動は将来の企業価値向上に向けた長期的な視点に立った活動であり、各企業の将来キャッシュフローおよび企業価値向上の源泉となるものである。従って、「特許戦略」因子得点と「知的財産戦略経営」因子得点との得点差に着目することにより、各企業の現在までの成果に対する評価と将来的な潜在成長力に対する評価とのギャップが明らかとなり、これに基づき、各企業に対する現在の評価が過小評価であるか否かについて判断することが可能となる。
また、各企業の特許・ノウハウを生み出すための投入要素である研究開発活動をもさらに加味することにより、各企業の将来的な潜在成長力の評価を行うことができる。さらに、各企業の「特許戦略」因子得点と「研究開発投入性向」因子得点の和と、「知的財産戦略経営」因子得点との、全企業平均値に対する相対的な評価が各々正反対になされている企業を抽出することで、各企業の現在評価に対する将来的な潜在成長力の評価のギャップを明らかにしており、各企業に対する現在評価が過少であるか否かについて一層多面的な判断が可能となる。
(8)上記の株式ポートフォリオ選択装置において、株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段として、前記「知的財産戦略経営」因子得点を前記「特許戦略」因子得点から減算した得点差が第2の所定値以下の企業、及び/又は、前記「特許戦略」因子得点と前記「研究開発投入性向」因子得点との和が全企業平均値より小さく、且つ、前記「知的財産戦略経営」因子得点が全企業平均値より大きい企業を、過大評価企業として抽出する過大評価企業抽出手段を更に備え、
株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補決定手段は、前記過小評価企業抽出手段により抽出された企業群及び前記過大評価企業抽出手段により抽出された企業群の両者を前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補とすることとしても良い。
このように、現在評価が過少である企業とともに、その逆の傾向を示すいわば過大評価企業を併せて選択することにより、ポートフォリオにリスクヘッジ機能を持たせることができる。
(9)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段として、各企業について、当該企業が保有する知的資産の属する所定の技術分野における出願件数全体若しくは有効特許件数全体に占める当該企業の件数シェアと、所定期間における所定の技術分野の特許出願件数全体若しくは有効特許件数全体の成長率に対する当該企業の特許出願件数若しくは有効特許件数の成長率の差を示す超過成長率と、各企業の所定期間の特許出願件数若しくは有効特許件数全体に占める所定の技術分野ごとの特許出願件数若しくは有効特許件数のシェアを指数化し当該企業の技術開発分野の集中・多角化度合いを示す特許集中度と、被異議申立比率、他社引用回数比率、及び不服審判件数比率を含む経過情報を用いて算出した個別特許ごとの他社牽制力及び権利化意欲度合いに基づき各企業の保有する特許全体に占める優位特許の割合を示す優位特許比率と、全て若しくは少なくともいずれか一つを用いて企業別技術評価値を算出する企業別技術評価値算出手段と、を備えていてもよい。
これによれば、上記の各作用効果に加え、評価対象企業の特許出願件数だけではわからない分野ごとのシェアの大きさを基本とし、成長率を加味することで先行指数としての意味合いを持たせ、更に特定分野への集中度を加味することで企業規模の影響を小さくしているので、評価対象企業の潜在的競争力を適切に評価することが可能となる。
(10)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段として、前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補に含まれる各企業について、当該企業が保有する知的資産の属する所定の技術分野における出願件数全体若しくは有効特許件数全体に占める当該企業の件数シェアと、所定期間における所定の技術分野の特許出願件数全体若しくは有効特許件数全体の成長率に対する当該企業の特許出願件数若しくは有効特許件数の成長率の差を示す超過成長率と、各企業の所定期間の特許出願件数若しくは有効特許件数全体に占める所定の技術分野ごとの特許出願件数若しくは有効特許件数のシェアを指数化し当該企業の技術開発分野の集中・多角化度合いを示す特許集中度と、被異議申立比率、他社引用回数比率、及び不服審判件数比率を含む経過情報を用いて算出した個別特許ごとの他社牽制力及び権利化意欲度合いに基づき各企業の保有する特許全体に占める優位特許の割合を示す優位特許比率と、の全て若しくは少なくともいずれか一つを用いて企業別技術評価値を算出する企業別技術評価値算出手段と、前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補から、前記過大評価企業のうち前記企業別技術評価値の上位所定数の企業を除外し、かつ前記過小評価企業のうち前記企業別技術評価値の下位所定数の企業を除外する第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補足切り手段と、を備え、
前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補決定手段は、前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補足切り手段による除外の対象外となった残りの企業群を第二次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補とするものであってもよい。
これによれば、各企業の保有する知的資産を特許出願件数や有効特許件数等の定量的なデータだけなく、特許の属性や質等も含めて分析・評価することが可能となる。それにより、第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択では考慮しきれなかった特許情報を付加したうえで、各企業の潜在成長性の評価を行い、更なる過大/過小評価企業の抽出を行うことができる。
(11)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、企業別技術評価値算出手段として、前記企業が保有する知的資産の属する各技術分野における出願件数全体若しくは有効特許件数全体に占める前記企業の技術分野別出願件数若しくは有効特許件数シェアを、前記企業の保有する知的資産の属する全ての技術分野について算出する企業別技術分野別件数シェア算出手段と、前記企業別技術分野別件数シェアを全技術分野について総計したものを当該技術分野の数で除すことにより件数シェアの全技術分野平均値を算出する全技術分野件数シェア平均値算出手段と、所定期間における所定の技術分野の特許出願件数全体若しくは有効特許件数全体の成長率に対する当該企業の特許出願件数若しくは有効特許件数の成長率の差を示す超過成長率を算出する企業別超過成長率算出手段と、前記全技術分野件数シェア平均値を前記企業別超過成長率で乗じることにより企業別修正相対件数シェアを算出する企業別修正相対件数シェア算出手段と、前記企業の所定期間の特許出願件数若しくは有効特許件数全体に占める所定の技術分野ごとの特許出願件数若しくは有効特許件数のシェアを二乗し、当該二乗したシェアを前記企業の保有する知的資産の属する全ての技術分野について加算して当該企業の特許集中度を算出する企業別特許集中度算出手段と、前記企業別修正相対件数シェアを前記企業別特許集中度で乗ずることにより特許評価指数を算出する企業別特許評価指数算出手段と、を備えていてもよい。
これによれば、上記の作用効果に加え、各企業の保有する特許の他社特許との比較により自社の位置付けを導き出すことができる。それと同時に、自社内での技術開発分野の集約度合いをも考慮することで、各企業の保有する特許の質的側面をより多面的に評価することが可能となる。
(12)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、投資比率選定手段として、株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業の株式に対して均等に投下資金を配分することが望ましい。
株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の選択の段階で、企業評価指標関連データから少なくとも1の知的資産関連指標を含んで企業の潜在的価値を適正に評価をしている。従って、投下資金を均等に配分してやることで、上記の各作用効果に加え、簡明かつ収益性の高い株式ポートフォリオを作成できる。
(13)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、投資比率選定手段として、以下の手段を備えることが望ましい。
すなわち、株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業の株式ごとの理論株価を算出する理論株価算出手段と、理論株価に基づいて前記各企業の株式ごとの市場株価に対する理論超過収益、市場株価の変動に対する前記各企業の株式ごとの理論感応度、及び前記各企業の株式ごとの独自の値動きを示す理論残差の各パラメータを算出する第1のパラメータ算出手段と、算出された第1のパラメータに基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄の期待リターンを算出する期待リターン算出手段と、算出された第1のパラメータに基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄のリスクを算出するリスク算出手段と、期待リターンの値を一定としてリスクの値を最小とするような株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を、各期待リターンの値に対して算出して効率的フロンティアを導出する効率的フロンティア導出手段と、無リスク資産のリスクフリーレートデータを取得する無リスク資産リスクフリーレートデータ取得手段と、無リスク資産のリスクフリーレートを定点とすると共に効率的フロンティアに接する資本市場線を導出する資本市場線導出手段と、効率的フロンティアと資本市場線との接点における株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を算出する最適保有比率算出手段と、最適保有比率に基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄をなす各企業ごとの株式に対する資金投下比率を算出する資金投下比率算出手段である。
これによれば、株式ポートフォリオ組入れ銘柄の各企業の株式ごとの期待リターンとリスクとを算出することで、上記の各作用効果に加え、資本市場線と効率的フロンティアとの接点において投資比率を選定することができる。さらに、理論株価によって企業の潜在的競争力を適正に評価する結果、企業の本来有する資産価値とは無関係な市場動向等の恣意による現実株価の歪みを極力排除し得ることが期待できる。その結果、理論株価に基づく株式ポートフォリオは、現実株価に基づく株式ポートフォリオに比べて、相対的なリスクの低減、及び/又は相対的に高い期待リターンを達成することができる。すなわち、より好ましい投資比率を選定することができる。
(14)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、投資比率選定手段として、以下の手段を備えることが望ましい。
すなわち、株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業の株式ごとの理論株価を算出する理論株価算出手段と、株価インデックスの値動きデータを取得する株価インデックスデータ取得手段と、前記各企業の株式ごとの株価の値動きデータを取得する個別株式データ取得手段と、株価インデックスの値動きと前記各企業の株式ごとの株価の値動きとの比較分析を行い、株価インデックスの収益に対する前記各企業の株式ごとの超過収益、株価インデックスの値動きに対する前記各企業の株式ごとの株価の感応度、及び株価インデックスの値動きとは独立した前記各企業の株式ごとの独自の株価の値動きを示す残差の各パラメータを算出する第2のパラメータ算出手段と、理論株価に基づきパラメータを補正する補正手段と、補正されたパラメータに基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄の期待リターンを算出する期待リターン算出手段と、補正されたパラメータに基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄のリスクを算出するリスク算出手段と、期待リターンの値を一定としてリスクの値を最小とするような株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を、各期待リターンの値に対して算出して効率的フロンティアを導出する効率的フロンティア導出手段と、無リスク資産のリスクフリーレートデータを取得する無リスク資産リスクフリーレートデータ取得手段と、無リスク資産のリスクフリーレートを定点とすると共に効率的フロンティアに接する資本市場線を導出する資本市場線導出手段と、効率的フロンティアと資本市場線との接点における株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を算出する最適保有比率算出手段と、最適保有比率に基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄をなす各企業ごとの株式に対する資金投下比率を算出する資金投下比率算出手段である。
これによれば、株式ポートフォリオ組入れ銘柄の各企業の株式ごとの期待リターンとリスクとを算出することで、上記の各作用効果に加え、資本市場線と効率的フロンティアとの接点において投資比率を選定することができる。さらに、株価インデックスの値動きと前記各企業の株式ごとの株価の値動きとの比較分析によって算出されたパラメータを理論株価によって補正し、企業の潜在的競争力をより適正に評価することによって、企業の本来有する資産価値とは無関係な市場動向等の恣意による現実株価の歪みを極力排除し得ることが期待できる。その結果、理論株価による補正に基づく株式ポートフォリオは、現実株価に基づく株式ポートフォリオに比べて、相対的なリスクの低減、及び/又は相対的に高い期待リターンを達成することができる。すなわち、より好ましい投資比率を選定することができる。
(15)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、投資比率選定手段として、以下の手段を備えることが望ましい。
すなわち、前記第二次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補として選択された企業のうち、所定の基準を満たす組入推奨企業を選定する組入推奨企業選定手段と、全ての組入推奨企業についての保有比率の合計が投資総額の100%未満となる範囲内において最低組入比率を各組入推奨企業の株式ごとに設定する最低組入比率設定手段と、株価インデックスの値動きデータを取得する株価インデックスデータ取得手段と、前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる各企業の株式ごとの株価の値動きデータを取得する個別株式データ取得手段と、前記株価インデックスの値動きと前記各企業の株式ごとの株価の値動きとの比較分析を行い、前記株価インデックスの収益に対する前記各企業の株式ごとの超過収益、前記株価インデックスの値動きに対する前記各企業の株式ごとの株価の感応度、及び前記株価インデックスの値動きとは独立した前記各企業の株式ごとの独自の株価の値動きを示す残差を含む第2のパラメータ群を算出する第2のパラメータ算出手段と、前記第2のパラメータ群に基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄の期待リターンを算出する期待リターン算出手段と、前記第2のパラメータ群に基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄のリスクを算出するリスク算出手段と、少なくとも前記各最低組入比率の組入推奨銘柄を保有しつつ、前記期待リターンの値を一定として、且つ前記リスクの値を最小とするような、前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を、各期待リターンの値に対して算出して効率的フロンティアを導出する効率的フロンティア導出手段と、無リスク資産のリスクフリーレートデータを取得する無リスク資産リスクフリーレートデータ取得手段と、前記無リスク資産のリスクフリーレートを定点とすると共に前記効率的フロンティアに接する資本市場線を導出する資本市場線導出手段と、前記効率的フロンティアと前記資本市場線との接点における前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を算出する最適保有比率算出手段と、前記最適保有比率に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄をなす各企業の株式ごとの資金投下比率を算出する資金投下比率算出手段と、である。
これによれば、潜在成長力や技術力が高く評価された組入推奨企業を選定し一定比率を組入れたうえで、株式ポートフォリオ組入れ銘柄の最適保有比率を算出し得る。このことにより、組入推奨企業を組入れた株式ポートフォリオは、全ての株式ポートフォリオ組入銘柄について効率的フロンティアに基づき投資比率を選定した株式ポートフォリオに比べて、相対的なリスクの低減、及び/又は相対的に高い期待リターンを達成することができる。すなわち、より好ましい投資比率を選定することができる。
(16)上記の各株式ポートフォリオ選択装置において、理論株価算出手段が、以下の手段を備えることが望ましい。
すなわち、知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを用いて企業の税引後総事業利益理論値を算出する税引後総事業利益理論値算出手段と、企業評価指標関連データを用いて企業の投下資本コストを算出する投下資本コスト算出手段と、前記税引後総事業利益理論値から前記投下資本コストを控除して理論経済的超過利益を算出する理論経済的超過利益算出手段と、企業評価指標関連データを用いて企業の現在価値の導出のための割引率を算出する割引率算出手段と、前記理論経済的超過利益を割引率で除して理論市場付加価値を算出する理論市場付加価値算出手段と、企業評価指標関連データを用いて企業の自己資本を算出する自己資本算出手段と、前記理論市場付加価値と自己資本とを加算して企業の推定時価総額を算出する推定時価総額算出手段と、推定時価総額を発行済み株式総数で除して理論株価を算出する理論株価算出手段である。
これによれば、上記の各作用効果に加え、研究開発費関連指標及び知的資産関連指標を用いて、企業の潜在的競争力を適正に反映した理論株価を算出することができる。この結果に基づき、所定の企業の現在株価は、当該企業の有する潜在的な企業価値に比して割安であるのか割高であるのかを判断することができる。
(17)また本発明は、上記各装置によって実行される処理と同じステップを備えた株式ポートフォリオ選択方法、及び上記各装置が備える機能と同じ機能をコンピュータに実現させる株式ポートフォリオ選択プログラムを記録した記録媒体にも関係する。
第1の実施の形態の株式ポートフォリオ選択装置を用いた株式ポートフォリオ選択システムの構成例を示す図である。 株式ポートフォリオ選択装置30の構成を示すブロック図である。 株式ポートフォリオ選択装置30の処理手順を示すフローチャートである。 事業・経営関連指標(その1)を例示する図表である。 事業・経営関連指標(その2)を例示する図表である。 研究開発関連指標を例示する図表である。 知的資産関連指標(その1)を例示する図表である。 知的資産関連指標(その2)を例示する図表である。 知的資産関連指標(その3)を例示する図表である。 業種、企業、指標を選択する画面の例を示す図である。 主成分分析を行う処理手順を示すフローチャートである。 主成分分析の固有ベクトルを示す図表である。 主成分1に対応する集中型ランキングである。 主成分2に対応する多角型ランキングである。 因子分析処理のフローチャートである。 因子負荷量・固有値・累積寄与率を示す図表である。 因子一覧を示す図表である。 重回帰分析処理のフローチャートである。 重回帰分析結果一覧を示す図表である。 指標と因子の関係を示す図である。 主成分分析結果一覧を示す図表である。 主成分分析結果に基づく総合指標ランキングである。 共分散構造分析処理のフローチャートである。 共分散構造分析の考え方の概略を説明するためのパス図の一例である。 知的財産戦略経営企業の評価のために共分散構造分析を行った結果を表すパス図の一例である。 評価値を算出するために各指標にかける重み付けを示す図表である。 知的財産戦略経営モデルの分析結果のランキングを示す図表である。 知的財産戦略経営モデルの分析結果のランキングを示す図表である。 知的財産戦略経営モデルの分析結果のランキングを示す図表である。 知的財産戦略経営モデルの分析結果のランキングを示す図表である。 知的財産戦略経営モデルの分析結果のランキングを示す図表である。 知的財産戦略経営モデルの分析結果の散布図である。 知的財産戦略経営モデルの分析結果の散布図である。 知的財産戦略経営企業の評価のために共分散構造分析を行った結果を表すパス図の他の一例である。 過大/過小評価企業の選出に基づくポートフォリオ作成手順を説明するフローチャートである。 過小評価企業の第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表である。 過大評価企業の第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表である。 過小評価企業の第二次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表である。 過大評価企業の第二次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表である。 投資比率の選定動作を示すフローチャートである。 インデックスの値動きデータを示す図である。 個別銘柄の値動きデータを示す図である。 算出されたα、β、εの例を示す図である。 理論株価を算出する処理手順を示すフローチャートである。 税引後総事業利益理論値を算出する処理手順を示すフローチャートである。 因子分析及び重回帰分析の結果の例を示す図である。 重回帰分析の結果の例を示す図である。 因子に対するROAβの回帰直線の結果の例を示す図である。 算出された理論株価の例を示す図である。 理論株価の算出結果の一覧表である。 α、β、ε及びα’、β’、ε’の例を示す図である。 効率的フロンティア及び資本市場線の例を示す図である。 効率的フロンティア及び資本市場線の例を示す図である。 接点における株式ポートフォリオの各株式の理論組入比率の例を示す図である。 理論組入比率から決定した実組入比率の例である。 主成分1に対応する株式ポートフォリオの例を示す図である。 主成分2に対応する株式ポートフォリオの例を示す図である。 株価の騰落率の比較例を示す図である。 リターンの例を示す図である。 第2の実施の形態における投資比率の選定動作を示すフローチャートでる。 第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補のうち、「特許戦略」因子得点と「知的財産戦略経営」因子得点との因子得点差の大きい順に過小評価企業を並べたリストである。 株式ポートフォリオの各株式の理論組入比率の例を示す図である。 理論組入比率から決定した実組入比率の例である。 リターンの例を示す図である。
符号の説明
10 通信ネットワーク
20 データベースサーバー
20A 外部データベース
30 株式ポートフォリオ選択装置
30A 内部データベース
31 プリンタ
100 株式ポートフォリオ選択システム
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 記録媒体装着部
305 記録媒体
306 記録媒体インターフェース
307 カレンダ時計
308 送受信手段
309 通信回線
310 入力手段
311 入力インターフェース
312 表示手段
313 表示インターフェース
314 記録手段インターフェース
315 HDD
316 プリンタインターフェース
317 バス
(1.構成)
本発明の実施の形態を図1乃至図2を参照しながら説明する。図1に示すのは、本発明の第1の実施の形態としての株式ポートフォリオ選択装置30を含む株式ポートフォリオ選択システム100の構成を示す図である。
当該株式ポートフォリオ選択システム100は、株式ポートフォリオ選択装置30と、と、外部データベースサーバー20と、からなる。株式ポートフォリオ選択装置30は、外部データベースサーバー20と、例えばインターネット等の通信ネットワーク10を介して接続されているか、或いは外部データベースサーバー20から外部データを適当な記録媒体を通じてオフラインにて取り込むことが出来る。
また、外部データベース20Aには、例えば業種毎や50音別に企業名を記録する業種企業データベース、事業・経営関連指標や研究開発関連指標又は知的資産関連指標等の企業指標、企業指標の分類、各種の定数や閾値及び該閾値に基づく妥当性の判定結果、区分等の各種情報、さらには各企業の株価が記録されている。
株式ポートフォリオ選択装置30は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等のコンピュータからなり、内部データベース30Aを有している。
図2に示すのは、株式ポートフォリオ選択装置30の構成を示すブロック図である。図2に示すように、株式ポートフォリオ選択装置30は、CPU301、ROM302、RAM303、記録媒体装着部304、記録媒体305、記録媒体インターフェース306、カレンダ時計307、送受信手段308、通信回線309、入力手段310、入力インターフェース311、表示手段312、表示インターフェース313、記録手段インターフェース314、ハードディスク(HDD)等の記録手段315、プリンタインターフェース316、及びバス317を備えている。
CPU301は、株式ポートフォリオ選択装置用プログラム情報に従ってRAM303をワークエリアとして使用しながら、株式ポートフォリオ選択装置30の全体の動作を制御する。
なお、総ての処理をCPU301が実行しても良いし、複数の専用の処理装置を設けて、それぞれの処理装置に処理を分担させて実行するようにしても構わない。
記録媒体305は、記録媒体装着部304に着脱可能に装着されている。また、記録媒体装着部304は、記録媒体305に対して各種情報を記録したり読み出したりする記録媒体インターフェース306を介してバス317に接続されている。なお、記録媒体305とは、メモリーカード等の半導体や、MO、磁気ディスク等に代表される磁気記録式、若しくは光記録式等の着脱可能な記録媒体のことである。記録媒体305は、内部データベース30Aを格納することが可能である。なお、記録媒体305は、外部データベースサーバー20から外部データをオフラインにて取り込むことも出来る。
カレンダ時計307は、計時手段として用いられ、バス317に接続されている。
送受信手段308は、通信回線309で外部データベースサーバー20と接続されている。そして、通信ネットワーク10を介して外部データベースサーバー20と通信を行い、外部データベースサーバー20の外部データベース20Aから企業評価用指標、企業の株価データ等を取得する。取得したデータは、内部データベース30Aとして、HDD315、又は記録媒体305等に記憶される。なお、株式ポートフォリオ選択装置30においては、外部データベース20Aから企業評価用指標、企業の株価データ等を取得する際に、自動又は手動で指標データを選択することが可能である。
入力手段310は、キーボードやマウス、タブレット又はタッチパネル等で構成され、入力インターフェース311を介してバス317に接続されている。この入力手段310は、表示手段312に表示された各種指示選択画面(図示せず)で、データ更新か否かの選択、業種・企業の選択、及び分析方法の選択を行う。
表示手段312は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等からなり、表示インターフェース313を介してバス317に接続されている。この表示手段312は、入力手段310から入力されたデータや操作指示の選択肢等を画面上に表示する。また、表示手段312は、算出した理論株価の結果を画面上に表示する。
HDD(ハードディスク)315は、株式ポートフォリオ選択装置30の処理に関する各種定数やネットワーク上の通信機器に通信接続する際の属性情報、URL(Uniform Resource Locators)、ゲートウェイ情報、DNS(Domain Name System)等の接続情報、企業の経営に関する経営財務情報、特許に関する技術文献、特許情報、市場価値情報、及び企業価値を判定する閾値及び該閾値に基づく妥当性の判定結果等の各種情報を記録する記録手段である。
また、HDD315に記録されている情報は、記録手段インターフェース314を介して読み出すことができ、またHDD315に情報を書き込むことができる。HDD315には、各種データが記録されている内部データベース30Aが格納されている。
プリンタ31は、プリンタインターフェース316を介してバス317に接続されている。このプリンタ31は、印刷手段として、株式ポートフォリオ選択装置30により作成された株式ポートフォリオに関する図表等を紙等の媒体に印刷する。
本発明の実施の形態における株式ポートフォリオ選択システムによれば、知的資産関連指標等を含む企業評価指標を用いて企業の総合的な評価を行うことができる。そして、株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる企業を選び出し、さらに、最適な投資比率まで出力できるようにした株式ポートフォリオを作成できる。また株式の売買銘柄や投資比率の情報を、容易かつ的確に取得できるようになる。
(2.処理手順)
次に、株式ポートフォリオ選択装置、方法、及びプログラムによる、株式ポートフォリオ作成の処理手順を、図3乃至47を参照しながら説明する。図3に示すのは、株式ポートフォリオ選択システム100に基づく株式ポートフォリオ選択の処理手順を表すフローチャートである。この処理は、株式ポートフォリオ選択プログラムに内蔵された情報に基づいてCPU301の制御により実現される。
(2−1.データの取得)
株式ポートフォリオ選択システム100は、先ず、ステップS1で、内部データベース30Aから必要なデータを取得する。例えば、事業・経営関連指標や研究開発関連指標、及び知的資産関連指標等の企業評価指標、あるいは、各企業の株価等のデータである。図4及び図5に示すのは、事業・経営関連指標の一覧表であり、例えば設備投資額、設備投資効率等の指標がある。図6に示すのは、研究開発関連指標の一覧表であり、例えば、研究開発費、研究開発費比率α等の指標がある。図7乃至図9に示すのは、知的資産関連指標の一覧表であり、例えば、特許出願件数、審査請求件数、あるいは総有効特許件数、出願請求項数等の指標がある。
内部データベース30Aには、外部データベース20Aから取得した生のデータと、標準化した加工データ等が格納されている。
次に、ステップS2で、データ更新が必要か否かを判断する。例えば、毎日の所定時刻をデータ更新時刻として設定し、この時刻になると更新処理を行うようにする。又は、外部データベース20Aに新しいデータが追加等される度にデータ更新を行うようにしてもよい。
更新が必要だと判断した場合は、ステップS3で、外部データベース20Aから更新分データを取得し、内部データベース30Aに書き込みを行う。そして、ステップS4で、外部データベース20Aから取得したデータに対して、下記の式1に従いデータの標準化を行う。データの標準化を行う理由は、主として、業種間や指標間の単位やスケールの違いに伴って生じる数値の格差を取り除くためである。
(データ−平均値)/標準偏差 ・・・(式1)
そして、業種毎の標準化されたデータを内部データベース30Aに格納する。データを標準化した後、再びステップS1に戻り、更新されたデータを取得する。次いで、ステップS2で、データ更新が必要でないと判断した場合には、ステップS5の業種・企業選択へと進む。
ステップS5で、業種及び/又は企業が選択されるか否かを判断する。ここで、利用者が、業種及び/又は企業の選択が必要だと判断し、業種及び/又は企業の選択を行う旨の指示を入力した場合には、ステップS6で、希望の業種や特定の企業の選択を受け付ける。例えば、図10に示すように、表示画面に表示された業種や企業名の入力部に、利用者が業種名や企業名を入力して希望の業種や特定の企業を選択することができる。また、例えば、利用者が表示画面に表示された業種名や企業名の選択肢を選択することによって、希望の業種や特定の企業を選択することも可能である。なお、ある業種と別の業種との組み合わせを望む場合や、特に指定の企業を組入れたい希望があれば、それらの業種や企業を指定して株式ポートフォリオの作成を行うことも可能である。
(2−2.企業評価処理)
次に、ステップS7で、指標が選択されるか否かの判断をする。利用者が指標選択を行う旨の指示を入力した場合には、ステップS8で、希望する指標の選択を受け付ける。例えば、図10に示すように、利用者が表示画面に表示された指標の選択肢から希望する指標を選択することができる。
なお、選択する指標には、図4乃至図9に示した事業・経営関連指標、研究開発関連指標、及び知的資産関連指標のうち、研究開発関連指標及び知的資産関連指標を原則各1〜3個含むようにすることが望ましい。そうすることで、研究開発活動によって蓄積されてきた知的資産や、知的資産を生み出す組織や人材としての潜在的競争力を適正に評価することが可能となる。さらに、それらの知的資産や潜在的競争力を収益力へと高めていくことが期待される企業を適切に選び出すことが可能となる。指標選択後、ステップS12で主成分分析を行う。
(2−2−1.選択した指標による主成分分析)
図11に示すのは、主成分分析を行う処理手順を表すフローチャートである。ここで、主成分分析とは、観測変数に共通な成分を取り出して合成変数を作り出す分析手法のことである。主成分分析を行う目的は、数多く存在する指標を総合化して、1つ又は2つの総合指標を作成し、この総合指標に基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる企業の評価を行うことにある。
ステップS120で主成分分析処理を開始すると、ステップS121で、指標データを取り込む。本発明の実施形態では、利用者が指定した評価用指標として、総資産研究開発費比率、総資産営業利益率、被異議申立件数比率、平均登録所要年数、及び特許多角化指数を選択する。なお、選択する指標は上記のものには限られず、分析する目的や性質に応じて任意の指標を設定することが可能である。
ここで、総資産研究開発費比率とは、企業の各年度における研究開発費の総額の総資産に対する比率のことである。総資産研究開発費比率は、企業の資産規模(ストック)から見た研究開発費の規模を測定するものである。総資産研究開発費比率を加えることによって、知的資産のみならず、企業が潜在的に保有する包括的な無形資産の貢献度を測定することが可能となる。総資産研究開発費比率は、下記の式2に示す算定式によって算出される。
総資産研究開発費比率=研究開発費/総資産 ・・・(式2)
次に、総資産営業利益率とは、企業の各年度の営業利益つまり企業の製造・販売活動から得られた会計上の事業収益の総資産に対する比率のことである。これは、知的資産を含む総資産がどれだけ収益に貢献したのかを表す指標である。総資産営業利益率は、下記の式3に示す算定式によって算出される。
総資産営業利益率=営業利益/総資産 ・・・(式3)
次に、被異義申立件数比率とは、企業の各年度の特許1件あたりに対し、特許異義の申立若しくは無効審判請求がなされた件数の比率である。これは、各企業の取得した特許の質を表す指標である。本発明の実施の形態では、企業規模の影響を排除するため、特許1件あたりの件数を用いた。被異義申立件数比率は、下記の式4に示す算定式によって算出される。
被異義申立件数比率=各年度で企業が異義申立若しくは無効審判請求を受けた特許件数/同年の企業の特許登録件数 ・・・(式4)
次に、平均登録所要年数とは、企業の各年度に登録された特許について、出願から登録までに要した平均年数を表す指標のことである。平均登録所要年数を用いることによって、企業が特許を取得する目的や、取得した特許の性質を知ることが可能となる。例えば、早期に特許権利化すべき戦略的な出願に関しては、比較的短期間で審査請求がなされることが多い。従って、ある特許の出願から登録までに要した平均年数が短ければ、その特許は有効に活用され、事業へと結実している可能性が高いと判断することができる。平均登録所要年数は、下記の式5に示す算定式によって算出される。
平均登録所要年数=Σ(特許登録年月日−特許出願年月日)/(特許登録件数/年間日数) ・・・(式5)
次に、特許多角化指数とは、企業の各年度の特許出願における出願請求項数全体に占める、国際特許分類(IPC)サブクラス別の出願請求項数の構成比(シェア)のことである。特許多角化指数を用いることによって、企業の技術開発分野の集中・多角化度合いを測定することが可能となる。特許多角化指数は、下記の式6に示す算定式によって算出される。
特許多角化指数=1−Σ(当該企業の国際特許分類サブクラス別の出願請求項
/当該企業の出願請求項数の合計) ・・・(式6)
指標を選択した後、選択した指標を組み合わせて総合指標を作成することを目的として、主成分分析を行う。まずは、ステップS122で、選択した指標xを合成する線形結合の係数αと、主成分Zとを算出する。ここで、主成分Zとは、分散が最大になるように算出された係数αに基づき算出される情報量のことである。具体的には、選択した指標xの線形結合Zを考え、その線形結合Zの分散が最大になるように各指標xの係数αを決定する。この場合、分散が無限に発散することを防ぐため、係数αの2乗和が1であるという制約のもとでZの分散が最大になるように係数αの値を算出する。具体的には、以下の式7に示す通りである。
Z=α+α+α+・・・α
(制約条件)α +・・・α =1 ・・・(式7)
上記式7によって、係数α(i=1・・・n)を算出し、算出した係数に基づいて主成分Zを求める。係数α(i=1・・・n)の値は、分散共分散行列又は相関行列を用いて、上記式7の線形結合の固有値と固有ベクトルとを算出することにより求められる。この場合、固有ベクトルが係数を表し、固有値が主成分の含む情報量を表す。
続けて、採用する主成分を選択する。主成分分析においては、変数の数だけ主成分が算出される。また、主成分分析により得られた主成分は、固有値が大きいほど情報量が大きい。そこで、通常は情報量の大きい順に主成分1、主成分2、主成分3、・・・主成分nとする。本発明の実施の形態においては、固有値が1以上で累積寄与率が50%を超える主成分までを残すこととする。無論、閾値は上記のものには限られず、分析の種類や性質に応じて任意に設定することができる。
ここで、固有値が1以上であるということは、採用した主成分が、選択した指標のもつ情報量の平均と少なくとも同じだけの情報量を含んでいることを意味する。また、寄与率とは、各主成分が指標全体をどの程度説明し得ているのかを表す割合のことである。寄与率は、各主成分の固有値を、全主成分の固有値の総和で除すことによって算出する。そして各主成分の寄与率を大きい順に足し合わせたものを累積寄与率という。累積寄与率は、指標全体が有する情報量を、採用した主成分全体がどの程度説明し得ているのかを表す割合のことである。
そして、固有値が1を超える主成分のうち、固有値の値が最も大きく、かつ寄与率が最大となる主成分を第1主成分とする。また、固有値が1を超え、累積寄与率が50%以上を占める主成分までを選択し、これを第2主成分とする。
図12に示すのは、主成分分析の固有ベクトルと固有値、及び寄与率と累積寄与率とを表す一覧表である。本発明の実施の形態においては、固有値の値が1を超える主成分のみを抽出している。分析結果によると、第1主成分である主成分1は、寄与率が29%以上である。また、第2主成分である主成分2は、寄与率が24%以上である。
次に、ステップS123で総合指標の決定を行う。図12の一覧表において指標ごとに算出された数値(固有ベクトル)は、各指標の係数の値を表している。まず、主成分1については、「総資産研究開発費比率」、「総資産営業利益率」、及び「被異議申立件数比率」の係数がプラスを、「登録所要年数の平均」及び「特許多角化指数の平均」の係数がマイナスを示している。この結果から分かることは、研究開発費の総資産に対する比率は平均的でも、技術・特許が集中しており、登録までの所要年数も短く、かつ総資産営業利益率は高い傾向にある企業が高く評価されるということである。つまり、主成分1は、特許を含む知的資産をある一つの分野に集中させている傾向にある企業の特徴を表している。この結果に基づき、主成分1については、「知的資産集中型」を表す総合指標として決定する。
主成分2については、全ての指標の係数がプラスを示している。この結果から分かることは、技術・特許が多角化傾向にあり、登録までの所要年数が長く、かつ総資産営業利益率は低い傾向にある企業が高く評価されるということである。つまり、主成分2は、特許を含む知的資産ストックの規模の拡大を追求している企業の特徴を表している。この結果に基づき、主成分2については、「知的資産多角型」を表す総合指標として決定する。
次に、ステップS124で、主成分1と主成分2とに関する企業ごとの総合得点を算出する。企業ごとの総合得点は、下記の式8及び式9で示される算定式に基づいて算出する。
=0.1633×総資産研究開発費比率+0.6718×総資産営業利益率+0.5328×被異議申立件数比率−0.0491×登録所要年数−0.4855×特許多角化指数 ・・・(式8)
式中におけるZは、主成分1の「知的資産集中型」の主成分得点であり、各指標の前に置かれた数値は、図12に示した主成分1における各指標の係数の値である。
=0.6213×総資産研究開発費比率+0.0623×総資産営業利益率+0.1736×被異議申立件数比率+0.6342×登録所要年数+0.4216×特許多角化指数 ・・・(式9)
式中におけるZは、主成分2の「知的資産多角型」の主成分得点であり、各指標の前に置かれた数値は、図12に示した主成分2における各指標の係数の値である。
図13に示すのは、主成分1の「知的資産集中型」に対応する企業評価のランキング表であり、図14に示すのは、主成分2の「知的資産多角型」に対応する企業評価のランキング表である。
(2−2−2.因子分析、重回帰分析および主成分分析)
(2−2−2−1.因子分析)
再び図3に示す株式ポートフォリオ選択の処理手順を表すフローチャートに戻って、ステップを再開する。まず、ステップS7で、指標が選択されないと判断する場合には、ステップS9で、分析方法として共分散構造分析を行うか、因子分析及び重回帰分析を行うかの判断をする。ステップS9で、利用者が因子分析及び重回帰分析を行う旨の指示を入力した場合には、ステップS10へ進み、因子分析を行う。
ここで、図15に示すフローチャートを用いて因子分析処理について説明をする。因子分析とは、ある観測データの背後に潜んでそれらを規定する共通因子を探り出す手法のことである。因子分析を行う目的は、諸々の指標を規定している潜在因子を明示することによって、それらの指標の有する特性及び構造を明らかにし、さらに、明示された幾つかの因子に指標を集約することにある。
まず、ステップS100で、因子分析処理を開始し、ステップS101で、内部データベース30Aから指標に関するデータを取得する。但し、図4及び図5の事業経営関連指標に含まれる収益関連指標は除外する。これは後に述べる重回帰分析において、これらの収益関連指標を目的変数として使用するためである。
次に、ステップS102で、指標の絞り込みを行うか否かの選択をする。利用者が指標の絞り込みを行う旨の指示を入力した場合には、ステップS103で、それぞれの指標毎に相関行列を算出する。そして、ステップS104で、関係が薄く共通性のない指標を取り除き、関係が深く結び付きの大きい指標を抽出する。その後、ステップS105で因子負荷量の算出へと進んでいく。
ステップS102で予め指標の絞り込みを行わない場合には、直接ステップS105の因子負荷量の算出へと進む。ここで、因子負荷量とは、因子の観測変数に対する影響の強さを示す値のことである。因子分析においては、この因子負荷量を算出することが最大の目的になる。因子負荷量の算出方法としては、主因子法や最尤法、最小二乗法、一般化された最小二乗法等が知られている。本発明の実施の形態においては、主因子法を用いる。主因子法とは、各因子の因子寄与が最大になるように第一因子から順に因子負荷量を算出する方法のことである。なお、因子負荷量の算出方法は、観測の目的や性質に応じて任意のものを選ぶことができる。
次に、ステップS106で、算出された因子負荷量に基づき因子の解釈を行うことが困難であるか否かの判断を行う。利用者が、因子の解釈が困難であると判断しその旨を入力した場合には、データを最もよく解釈することが可能な解を探すため、ステップS107で因子軸の回転を行う。回転の方法には直交回転と斜交回転とがあるが、観測の目的や性質に応じて任意の方法を選ぶことができる。本発明の実施の形態においては、直交回転の一つであるバリマックス回転を用いている。バリマックス回転とは、因子毎の因子負荷量が0に近いものと絶対値が大きいものとをそれぞれ多くするように因子軸を回転させ、因子の貢献度を探る回転法のことである。そして、因子軸を回転させた後、ステップS105に戻って回転後の因子負荷量を算出する。なお、ステップS106で、因子の解釈を行うことが困難でないと判断された場合には、因子軸の回転は行わず、算出された因子負荷量の初期解をそのまま用いる。
次に、ステップS108で、算出された因子負荷量に基づき、因子毎の固有値、因子寄与、因子寄与率、及び累積寄与率を算出する。固有値とは、因子負荷量の初期解を算出するときに出てくる数値のことである。固有値は、指標の数と同じ数だけの因子があるものとして因子毎に算出される。その結果、採用する因子数を決定するときの基準として任意の最小固有値が選ばれることになる。また、因子寄与とは、ある因子がデータを説明し得る量のことであり、各指標の因子負荷量の二乗和によって因子毎に算出される。なお、因子負荷量の初期解を算出する時点においては、固有値と因子寄与の値とは同一である。また、因子寄与率とは、ある因子がデータ全体を説明する割合のことであり、因子寄与を指標の数で除すことによって算出される。最後に、累積寄与率とは、因子が増えるごとに因子寄与率を累積していった値のことであり、幾つまでの因子によってデータをどの程度説明し得るのかを示す指標のことである。
次に、ステップS109で、算出された固有値、因子寄与率、及び累積寄与率に基づき、因子数を決定する。理論的には、因子数は指標の数だけ表れる。そこで、本発明の実施の形態においては、因子数を決定する際の基準として、固有値が1以上であり、累積寄与率が70%以上であることを判断基準とした。その結果、本発明の実施の形態においては、5つの因子が選ばれることとなった。
図16に示すのは、本発明の実施の形態において選択された5つの因子についての因子負荷量、固有値、因子寄与率、及び累積寄与率の一覧表である。なお、判断基準は上記のものに限られず、観測の目的や性質に応じて任意に設定することができる。
次に、ステップS110で、因子内容を決定する。具体的には、ステップS519で選択された5つの因子の持つ意味を、因子1から5について指標毎に算出された因子負荷量に基づき解釈していく。因子1から5までの各因子の持つ意味と因子名とについての解説は、図17の一覧表に示す通りである。
まず、因子1について見てみると、因子1を構成する指標のうち、因子負荷量が大きい指標は、累計審査請求率、累計特許登録率、平均有効特許残存年数、平均出願経過年数、及び平均登録所要年数の5つであることが分かる。このことから因子1の持つ意味を解釈すると、因子1は、審査請求までの年数及び特許登録までの年数を短縮することで、累計審査請求率及び累計特許登録率を向上させ特許の有効期間を長くする因子であるといえる。つまり、因子1は、特許を早期に権利化し、維持する因子であると解釈できる。この解釈結果に基づき、因子1の因子名を、「特許のタイムマネジメント」と命名する。
このようにして、因子2から因子5についても、上記手続きに沿って各因子の持つ意味と因子名とが決定される。重複を省くため説明は省略するが、詳細の内容については、図17の一覧表に示す通りである。なお、各々の指標の定義及び算出式については、図4乃至図9の一覧表に示す通りである。
(2−2−2−2.重回帰分析)
再び図3に示す株式ポートフォリオ選択の処理手順を表すフローチャートに戻ると、ステップS10で因子分析を行った後、ステップS11で重回帰分析処理を行う。以下に、重回帰分析処理について説明する。
図18に示すのは、重回帰分析の処理手順を表すフローチャートである。ここで重回帰分析とは、ある目的変数と複数の説明変数とから構成される予測式に基づいて、この目的変数の値をどの程度説明し得るのかを分析する手法のことである。なお、目的変数と説明変数とは、分析を行う目的に応じて、従属変数及び独立変数として設定される場合もある。
重回帰分析を行う目的は、上記因子分析を行った結果明らかになった5つの因子が、実際に企業の収益拡大に寄与しているのかを検証することにある。さらに、そのなかで、収益に対する寄与率の高い因子及びそれらの因子を構成する指標が何であるのかを特定することにある。
ステップS111で重回帰分析処理に入る。まず、ステップS112で、内部データベース30Aに格納されている収益関連指標データ一覧から収益関連指標データを取り込み、目的変数となる収益関連指標を決定する。収益関連指標データの種類及び定義についての一例は、図4及び図5の事業経営関連指標に含まれる収益関連指標一覧に示す通りである。なお、図4及び図5に示す収益関連指標は主として企業の業績や成果に関わるものであるが、収益関連指標はこれらに限られるものではなく、分析の目的や性質に応じて任意の指標を設定することができる。
本発明の実施の形態においては、収益関連指標をROAに代表させている。ROAは、Return On Assetの略称であり、総資産利益率ともいう。ROAとは、当期利益を総資産で除した比率で、総資産からどれだけの利益を上げたかを測定する指標のことである。企業の業績を総合的に評価する指標をROAに代表させた理由は、ROAが企業の一年間の資産効率を表すのに適切な成果指標だからである。同種の指標にROE(株価収益率)も存在するが、本発明の実施の形態においてはROEを採用しなかった。その理由は、ROEは自己資本当たりの収益を測定するものであるが、実際に企業が収益を上げるためには、自己資本のみならず他人資本をも活用していることから、企業の真の資産効率はROEでは測定することが困難であると判断したからである。
さらに、本発明の実施の形態においては、通常のROAではなく、各企業の各年度における「営業利益」に「特許料等ロイヤルティ収入」を加算した金額の総資産比率(以下、「ROA・δ」という)を目的変数として設定している。ROA・δの算出式は下記の式10に示す通りである。
ROA・δ=(営業利益+特許料等ロイヤルティ収入)/総資産 ・・・(式10)
目的変数にROA・δを用いた理由は、第一に、特許等知的資産は企業が保有する資産の一部であることから、有形資産とともに特許等の知的資産を活用してどれだけの収益を上げたのかを測定するのにふさわしい指標であるからである。第二に、企業の潜在的競争力を適切に評価し、かつ、その潜在的競争力がいかに顕在的競争力や収益に結びついているのかを測定するためには、研究開発の結果生み出された特許等知的資産による収益を取り込む必要があったからである。なお、特許料等ロイヤルティ収入は、会計上、営業外収入に計上されるものであるが、企業によっては、営業外収入に当該勘定科目が存在しない場合もある。その場合には、既に営業利益に組み込まれているか、若しくは財務諸表上重大な影響を与える金額ではないため表記していないか、いずれかであると判断し、営業利益には加算していない。
次に、ステップS113で、ステップS10で行った因子分析の結果抽出された5つの因子を内部データベース30Aから読み込む。本発明の実施の形態においては、図19に示すように因子1(特許タイムマネジメント)、因子2(生産性)、因子3(特許・技術シェア)、因子4(研究開発)、因子5(特許・技術の集中)の5つの因子が採用されている。
次に、ステップS114で、収益関連指標ROA・δを目的変数とし、上記因子1から5を説明変数として重回帰分析を行い、各因子(説明変数)の偏回帰係数、標準偏回帰係数、及びt値を算出する。
具体的には、まず、各因子(説明変数)の情報を用いてROA・δ(目的変数)の値を算出するため、下記の式11で表される重回帰方程式を仮定する。
=α+β1j+β2j+・・・β5j+ε
(j=1・・・N) ・・・(式11)
式中のYは目的変数であり、xij(i=1・・・5)は説明変数である。また、αとβ(i=1・・・5)とは、説明変数xijの観測データから推定しようとしているパラメータであり、αは定数項で、βは偏回帰係数である。ε(j=1・・・N。ここでNは標本数とする。)は、目的変数Yの観測値と理論値との残差であり、説明変数xijによっては説明されない部分を表す。なお、説明変数xijについては、指標の単位やスケールに関して指標間の格差の影響を除き適正な分析を行うため、標準化したデータを用いることが望ましい。データの標準化は、前記式1を用いて行なわれる。
次に、上記式11に含まれる定数項αと偏回帰係数βとの値を、最小二乗法と呼ばれる推定法により算出する。最小二乗法は、観測値と理論値との残差の2乗和を最小にする方法である。上記式11の場合、まず、説明変数xijの値が与えられたときに、目的変数Yの理論値はα+Σi=1 (βij)となることから、理論値と観測値との差である残差εは、下記の式12によって算出される。
ε=Y−{α+Σi=1 (βij)} ・・・(式12)
次いで、残差の二乗和を下記の式13を用いて算出する。
Q=Σj=1 [{Y−α−Σi=1 (βij)}
] ・・・(式13)
式中のQは、残差の二乗和として算出される値である。最小二乗法は、残差の二乗和を最小にする方法であるから、定数項αと偏回帰係数βを算出するためには、上記式13のQの値を最小化する必要がある。そして、定数項αと偏回帰係数βの値は、上記式13を、αとβとでそれぞれ偏微分し、それを0と置いた連立方程式を解くことにより求められる。具体的には下記の式14及び式15に示す通りである。
∂Q/∂α=−2Σj=1 {Y−α−Σi=1 (βij)}=0 ・・・(式14)
∂Q/∂β=−2Σj=1 [xij{Y−α−Σi=1 (βij)}]=0 ・・・(式15)
なお、偏回帰係数の値は、説明変数の単位やスケールを変更すると大きく変化する。従って、本発明の実施の形態においては、説明変数xijに用いる指標のデータを標準化したことに伴い、標準化された説明変数に対応する偏回帰係数(以下、「標準偏回帰係数」という)を別途算出する必要がある。
偏回帰係数(及び標準偏回帰係数)βを算出した後、ステップS115で、説明変数xijに用いられる各因子の有意性を検定する。具体的には、まず、説明変数xijが目的変数Yの予測に全く役に立たないという仮説(以下、「帰無仮説」という)を設定する。この帰無仮説は、偏回帰係数(及び標準偏回帰係数)βが0であるということによって示される。なお、検定に用いる仮説としては、帰無仮説の他に、説明変数が目的変数の予測に役立つことを前提に検定を行う対立仮説がある。これらの仮説は、分析の目的と性質に応じていずれを用いてもよい。また、両方の仮説に基づく検定を行っていずれかの仮説を採択するようにしてもよい。
次いで、偏回帰係数(及び標準偏回帰係数)β=0の仮説が成立するかどうかの検定を行うために、t値をβ=0に基づき算出する。t値とは、算出した説明変数の値の統計的信頼度を示す数値のことである。
t値を算出した後は、算出したt値がt分布上のどの位置を占めるのかを特定する。ここで、t分布とは、ある有限な標本データ数からその母集団の平均値の範囲を推定する確率密度変数のことである。
次いで、β=0の仮説を採択するか棄却するかを決定する境界線をt分布上に設定する。この境界線のことを有意水準という。有意水準は、算出したt値がt分布上で起こり得る確率によって表す。本発明の実施の形態においては、有意水準を5%に設定している。これは、算出したt値がt分布上で起こり得る確率が5%の範囲である場合には仮説を棄却するということを示している。この有意水準を基準にして仮説を受け入れる領域を採択域といい、仮説を棄却する領域を棄却域という。
そして、検定の結果、β=0の仮説に基づき算出されたt値が、有意水準5%の範囲内の位置を占めると特定された場合には、β=0という仮説は棄却される。つまり、この場合、説明変数xijに係る偏回帰係数βは統計的に有意であり、説明変数xijに用いられる因子は目的変数Yの説明に寄与していると判定される。なお、説明変数の有意性を判断する基準は、t値のみに限定されるものではなく、t値が有意水準を越える確率を絶対値により表すp値によっても判断することが可能である。
次に、ステップS116で、各因子(説明変数)の目的変数Yに対する寄与率を算出する。寄与率は、ステップS114で算出した各因子の標準偏回帰係数を、全因子の標準偏回帰係数の総計で除すことによって算出する。そして、その後、算出した値を百分率で表示する。
最後に、ステップS117で、本発明の実施の形態の分析に用いた重回帰方程式の適合度を検定する。重回帰方程式の適合度を検定する尺度には決定係数を用いる。決定係数とは、目的変数の観測値の変動を、与えられた重回帰方程式がどの程度説明し得るのかを表す指標のことである。ここで変動とは、各点の平均値からのばらつきのことである。決定係数はRで表され、重回帰方程式によって導出される目的変数Yの理論値の変動を、Yの観測値の変動で除して算出する。具体的には、下記の式16に示す通りである。
決定係数R=Yの理論値の変動/Yの観測値の変動 ・・・(式16)
ただし、重回帰方程式の適合度を表す決定係数Rの値は、説明変数を増やせば増やすほど大きくなる。これは、見かけのあてはまりが良くなっているだけで、必ずしも重回帰方程式の説明力が高いことを意味してはいない。そこで、この決定係数Rの欠点を補うために、自由度調整済み決定係数R2’を用いて重回帰方程式の適合度を検定する。自由度調整済み決定係数R2’とは、重回帰方程式を決定する説明変数のみならず、標本として取り出された変数の数をも考慮し、決定係数Rを調整して得た値のことである。また、自由度とは、標本から算出された平均値を標本の数から差し引いた値のことである。例えば、標本の数がN個あった場合、平均値が一つ決まれば、N個のうち最後の1個は自動的に値が決定され、取り出した標本のなかで自由に選択できる値はN−1個ということになる。
図19に示すのは、重回帰分析結果の一覧表である。一覧表は、抽出した5つの因子毎に算出した偏回帰係数、標準偏回帰係数、t値、及び寄与率の値によって構成されている。
まず、分析を行うにあたり採用した重回帰方程式の適合度を見てみる。自由度調整済み決定係数R2’は、0.7572となっており、採用した重回帰方程式は高い説明度を有していることを示している。
次に、それぞれの因子が統計的に有意であるかどうかを見てみる。t値の算出結果によると、因子3(生産性)、因子4(特許・技術の集中)、及び因子5(研究開発)が統計的に有意であることが分かる。しかも、上記の因子は、有意水準1%で検定した場合においても、統計的に有意であることを示している。
そして、ステップS118で、上記の分析結果に基づき、収益関連指標ROA・δと統計的有意を示す因子との関係、及び前記因子と当該因子を構成する諸指標との関係、を示す関係図を作成する。作成した関係図は30Aの内部データベースに格納する。
図20に作成した関係図を示す。関係図には、ROA・δと、統計的有意を示す因子、及び各因子を構成する指標が記載されており、標準偏回帰係数に基づく寄与率と、因子負荷量とが矢印上に付記されている。関係図によると、ROA・δに対する因子の寄与率は、因子3(生産性)が74%と圧倒的に高いことが分かる。また、因子3(生産性)を構成する指標のなかでは、「労働分配率」は、生産性を下げる働きをすることが分かる。従って、生産性を向上させるためには、「労働分配率」を適度に抑制し、「全要素生産性」に示される技術革新の促進、及び経営効率の改善を図る必要があることが分かる。
また、ROA・δに対する寄与率が15%と、因子3(生産性)に次いで高いのが因子4(特許・技術の集中)である。また、因子4(特許・技術の集中)を構成する指標としては、「特許集中度」に関する指標の因子負荷量が大きいことが分かる。このことは、例えば、「特許出願の集中度」が、技術開発の選択と集中の進展度合いを反映していることを示していると考えられる。また、因子4(特許・技術の集中)に対し「特許集中度」の因子負荷量が大きいということは、「特許出願の集中度」を上げることが、他社の模倣を防止し、特許の資産価値を向上させることにつながり、収益の拡大に寄与するということが分かる。
そして、ROA・δに対する寄与率が11%と3番目に高い値を示しているのが因子5(研究開発)である。また、因子5(研究開発)を構成する指標のなかで高い因子負荷量を示しているのは、「1期前の研究開発投入」である。この結果は、1期前の研究開発費の成果のみを表すものではなく、長期にわたって継続している研究開発が、結果として当期のROA・δに成果として反映されているものと考えられる。また、この結果は、研究開発から製品化・事業化までの期間を短縮し、研究開発費を早期に回収する等、研究開発費の費用対効果を改善することが企業の収益拡大につながるということを示している。
上記分析結果によると、企業が、研究開発を促進し、かつその効率を上昇させ、それと同時に、事業の生産性を向上しようと取り組むことが収益の拡大に寄与することが分かる。また、それと同時に、技術・知的資産の「選択と集中」を押し進めようとする姿勢も、収益の拡大に寄与することが分かる。そして、そうした企業の取り組みは、各因子を構成する指標に数字となって表れてくることが示されている。
(2−2−2−3.主成分分析)
再び図3に示す株式ポートフォリオ選択の処理手順を表すフローチャートに戻ると、ステップS11で重回帰分析を行った後、ステップS12で主成分分析処理を行う。主成分分析においては、重回帰分析の結果得られた有意性のある因子を構成する指標と、目的変数に設定されたROA・δとを用いて総合指標を作成して、企業評価を行う。なお、主成分分析の処理方法に関しては、前述した通りであり説明は省略する。
図21に示すのは、主成分分析の固有ベクトルと固有値、及び寄与率と累積寄与率とを表す一覧表である。第1主成分の寄与率が47.57%と充分高く、因子分析及び重回帰分析の結果との整合性も有している。また、第2・第3主成分のような、指標に係る係数の絶対値の偏りもないことから、第1主成分である主成分1を総合指標として選択することができる。図22に示すのは、主成分1に対応する企業評価のランキング表である。
(2−2−3.共分散構造分析)
再び図3に示す株式ポートフォリオ選択の処理手順を表すフローチャートに戻ると、ステップS9で共分散構造分析を選択した場合には、ステップS19で共分散構造分析処理をして企業評価を行い、ステップS13で企業ランキングを作成する。
(2−2−3−1.共分散構造分析の概略)
以下、共分散構造分析の処理手順について説明する。ここで、共分散構造分析とは、観測できない要因である潜在変数(構成概念)と観測できる要因である観測変数(実際の数値)との間、又は潜在変数間の複雑な因果関係を定量的なモデルによって把握し、かつ、そのようにして把握されたモデルに基づいて格付け等の評価を行う手法のことである。その際、パス図を利用することで視覚的に観測変数と潜在変数との関係を分析することが可能となる。
基本的な流れとしては、先ず、変数間の因果関係についての仮説を立てる。仮説は、現象間の関係がよく知られている場合には、直接仮説モデルを作成する。現象間の関係がよく知られていない場合には、因子分析により因子を抽出した後に仮説モデルを作成する。
次に、仮説モデルに基づきパス図を作成する。そして、パス図に従って、母数の推定を行う。ここで、母数とは、母集団分布の様子を表す数値のことであり、パラメータのことである。母数の推定方法としては、一般に、最小二乗法や最尤推定法等が用いられる。その後、サンプルデータに最も適合するように、パス図の表す変数間の関係を実際に数値化する。
次に、構築した仮説モデルがデータに適合しているか否かを検証する。仮説モデルを検証するために参照すべき指標として、適合度指標(GFI:Goodness of Fit Indexや、AGFI:Adjusted Goodness of Fit Index)と呼ばれる統計量を用いる。GFIは、分析者が構築した仮説モデルがデータをどの程度説明し得たかという、モデルの「説明力」の基準となるものである。そして、GFIの値が1に近いほど仮説モデルの当てはまりが良いと判断する。なお、複雑なモデルの場合には、GFIだと母数の推定値の安定性が悪くなる。その場合には、GFIの説明力から母数の不安定性を割り引いて示すAGFIを指標に用いてモデルの適合度を検証する。仮説モデルを検証した結果、データに適合していなければ、モデル図の作成に戻り母数の推定を繰り返し行う。
本発明の実施の形態においては、知的財産戦略経営(三位一体経営)モデルを仮説モデルとして構築する。ここで、知的財産戦略経営(三位一体経営)モデルとは、事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略を連関させ、それによって全要素生産性や企業価値評価の向上に結び付けている企業を包括的かつ総合的に評価するモデルのことである。企業を評価する際には、労働生産性等の生産性指標や、ROA、ROE等の収益関連指標を分析することは、非常に重要な要素となるが、それらだけを見て企業の価値を評価することは経営を誤った方向に導く恐れがある。なぜなら、それらの指標は、あくまで企業経営における現在の業績の一断面を示すものに過ぎないからである。実際、企業価値向上のためには、研究開発投入等によって創出される技術・ノウハウ等、知的資産を含む無形資産に大きく依存することになる。このことから、企業評価においては、研究開発と知的財産に対する分析・評価が不可欠である。ここに、知的財産戦略経営(三位一体経営)モデルを構築する理由が存在する。そこで、本発明の実施の形態においては、「研究開発」―「特許(知的財産)」−「事業(経営・財務)」の3つの潜在変数(構成概念)の関連(相関関係)を仮定することとした。
以下、図23に示すフローチャートに基づいて、共分散構造分析の処理手順について説明する。
(2−2−3−2.因果モデルの設定)
共分散構造分析に当っては、観測変数と潜在変数との関係についての仮説を構築する必要がある。
観測変数と潜在変数の因果関係が分かっていない場合には、複数の観測変数から潜在変数を発見するために、例えば因子分析により因子を抽出し、仮説モデルを作成することができる。なお、因子分析による因子数の決定は、予め設定されている累積寄与率や固有値に基づいて行う。例えば、累積寄与率が70%以上、固有値が1以上を基準として因子を決定する。なお、判断基準は上記のものに限られず、観測の目的や性質に応じて任意に設定することができる。
次に、観測変数と潜在変数との関係についての仮説を構築する。事業戦略、研究開発戦略及び特許戦略の3つの戦略と知的財産戦略経営との関係を実証する際、これらはいずれも直接観測することができない抽象的な概念である。そこで共分散構造分析では、これらを「潜在変数」ベクトルfで表して定量的分析を可能にする。潜在変数ベクトルfのベクトル要素は、個々の因子を記述する潜在変数である。この潜在変数として、本件発明の実施形態では次のものを用いる。
: 事業戦略評価値
: 研究開発戦略評価値
: 特許戦略評価値
: 知的財産戦略経営
一方、「PBR」、「発明者1人当出願請求項数」、「全要素生産性」など、各企業から提供されている有価証券報告書や特許電子図書館等により入手可能な情報に基づいて観測することができる指標を、「観測変数」ベクトルvとして表す。
観測変数として用いる指標には種々のものが考えられ、その一例が図4乃至図9の79指標として示されている。その何れを用いるかは、ユーザが複数通りの指標の組合せを抽出して各組合せにつき分析し、適合度の高いものを選ぶことになる
図24に示すように、変数間の因果関係を示す図を「パス図」という。図24のパス図では、変数間の因果関係を次のように仮定している。
まず、潜在変数f(事業戦略評価値)から図示左側に流れる1方向矢印に着目する。ここでは、潜在変数fで表される企業の事業戦略が、観測変数v(売上高営業利益率)を規定していると仮定している。その影響力は係数λで表される。ただ、観測変数v(売上高営業利益率)は、潜在変数f(事業戦略評価値)という原因だけでは説明できない独自の原因にも依存してその決定がなされている。そのような独自の原因による変動分を誤差変数eとおくことができる。このため、誤差変数eから観測変数v(売上高営業利益率)にも1方向矢印が引かれている。
同様に、潜在変数f(研究開発戦略評価値)から図示左側に流れる1方向矢印では、企業の研究開発戦略が、観測変数v(研究開発費比率)及び観測変数v(発明者1人当研究開発費)を規定していると仮定している。その影響力はそれぞれ係数λ及びλで表される。潜在変数f(研究開発戦略評価値)という原因だけでは説明できない独自の原因による変動分は、それぞれ誤差変数e及びeとおかれている。
同様に、潜在変数f(特許戦略評価値)から図示左側に流れる1方向矢印では、企業の研究開発戦略が、観測変数v(発明者1人当出願請求項数)を規定していると仮定している。その影響力は係数λで表される。潜在変数f(特許戦略評価値)という原因だけでは説明できない独自の原因による変動分は、誤差変数eとおかれている。
同様に、潜在変数f(知的財産戦略経営)から図示右側に流れる1方向矢印では、当該企業の企業価値が、観測変数v(PBR)及び観測変数v(全要素生産性)を規定していると仮定している。その影響力はそれぞれ係数κ及びκで表される。潜在変数f(知的財産戦略経営)という原因だけでは説明できない独自の原因による変動分は、それぞれ誤差変数e及びeとおかれている。
潜在変数同士の関係については、潜在変数f乃至fが、潜在変数f(知的財産戦略経営)を規定していると仮定している。その影響力はそれぞれ係数γ乃至γで表される。ただ、潜在変数f(知的財産戦略経営)は、潜在変数f乃至fという原因だけでは説明できない独自の原因にも依存して決定されている。そのような独自の原因による変動分は、誤差変数dとおかれている。
(2−2−3−3.方程式の成立)
このように潜在変数と観測変数の因果関係及び潜在変数同士の因果関係について仮定した因果モデルを構築すれば、これらの関係を連立1次方程式で表すことができる。すなわち、個々の観測変数v乃至vについて、
観測変数 = 係数×原因となる潜在変数+誤差変数
で表すことができ、潜在変数同士の関係について、
影響を受ける潜在変数 = 係数×原因となる潜在変数+誤差変数
で表すことができる。但し、より多くの潜在変数が原因となると仮定した場合は、その潜在変数の分だけ「係数×原因となる潜在変数」の和をとる。
なお、外生変数とは、モデルの方程式で左辺にくる変数(目的変数)とならないものをいう。これに対するのが内生変数で、モデルの方程式の少なくとも1つの式で左辺にくる変数(目的変数)となるものをいう。
図24に示す例を連立1次方程式で表すと以下の式17のようになる。
1i=λ×f1i+e
2i=λ×f2i+e
3i=λ×f2i+e
4i=λ×f3i+e
5i=κ×f4i+e
6i=κ×f4i+e
4i=γ×f1i+γ×f2i+γ×f3i+d ・・・(式17)
ここで添え字iは、観測変数ベクトルv及び潜在変数ベクトルfが企業ごとに異なる値であるので、区別のために付した。標本数をNとすればi=1,2,・・・,Nである。
上述のような因果関係を示す連立1次方程式は、次の式18のように行列方程式を用いて表すことができる。
t=At+u ・・・(式18)
ここでtは「構造変数ベクトル」である。構造変数ベクトルtは、潜在変数ベクトルfと観測変数ベクトルvとからなるので、t=[f,v]′と表現する(「′」は転置行列を示すものとする)。
f: 潜在変数ベクトル。ベクトル要素は個々の因子を記述する潜在変数。
v: 観測変数ベクトル。ベクトル要素は観測可能な個々の指標で、vの期待値E[v]=0となるよう標準化されているとする。
また、uは「外生変数ベクトル」である。外生変数ベクトルuは、fに関する誤差変数ベクトルdと、vに関する誤差変数ベクトルeとからなるので、u=[d,e]′と表現する(「′」は転置行列を示すものとする)。
d: 誤差変数ベクトル。ベクトル要素は、fのベクトル要素に関する誤差変数又はfのj番目の要素fが外生変数のとき、f自身。
e: 誤差変数ベクトル。ベクトル要素は、vのベクトル要素に関する誤差変数又はvのk番目の要素vが外生変数のとき、v自身。
また、ここでAは「係数パラメータ行列」である。係数パラメータ行列Aは、係数行列Aと、係数行列Aと、係数行列Aと、係数行列Aと、からなるので、以下のように表現する。
Figure 2006095748
: 潜在変数fから潜在変数fj’への規定力を表現する係数γをj’j要素に配した係数行列。
: 潜在変数fから観測変数vへの規定力を表現する係数λおよびκをkj要素に配した係数行列。
: 観測変数vから潜在変数fへの規定力を表現する係数(図24に示すパス図上には存在せずゼロとなる)をjk要素に配した係数行列。
: 観測変数vから観測変数vk’への規定力を表現する係数(図24に示すパス図上には存在せずゼロとなる)をk’k要素に配した係数行列。
図24の例には、観測変数から観測変数への単方向の矢印と、観測変数から潜在変数への単方向の矢印はないから、
=0、 A=0 ・・・(式20)
となる。また、潜在変数から潜在変数への単方向の矢印と、潜在変数から観測変数への単方向の矢印とを図24の例から表現すると、以下のようになる。
Figure 2006095748
図24の例では、次の式22のようになる。式22を式18に代入したものが、式17と等価になる。
Figure 2006095748
こうして生成された係数パラメータ行列Aと、外生変数ベクトルuとによって観測変数vの分散共分散行列を構造化する。そして、観測変数vを構造化した表現である係数パラメータ行列Aと外生変数ベクトルuとの分散共分散行列の各要素の値を所定の最適化方法により推定する。その後、このように図24で仮定したパス図のモデル適合度の値が許容範囲内であると判断することができれば、係数パラメータ行列Aと、外生変数ベクトルuとの各要素の値が確定し、この確定した値から、当該企業の潜在変数ベクトルf={f,f,f,f}の因子得点をそれぞれ求めることができる。
以上が本実施形態で共分散構造分析を用いるときの考え方の概略である。以下では、一般化された式18を用いて、具体的処理手順について説明する。
(2−2−3−4.共分散構造分析の具体的手順(図23))
図23は、上記企業評価支援装置における処理動作を説明するフローチャートである。この処理は、図1の企業評価支援装置30のCPU301によって実行される。
この処理を実行するにあたっては、各企業についての観測可能な個々の指標(例えばPBR、発明者1人当たり出願請求項数、全要素生産性など)を、上記外部データベース又は内部データベースに予め用意する。
(2−2−3−4−1.因果モデル情報の入力:S1)
まず、ステップS191において、因果関係について仮定した因果モデル情報が入力手段310から入力されたことを判定する。この因果モデル情報は、例えば図24のようなパス図に基づいて上記のような連立1次方程式で表現される。
(2−2−3−4−2.ベクトルの生成:S2)
因果モデル情報が入力されると、ステップS192において、因果モデル情報に基づき、潜在変数ベクトルf、外生変数ベクトルd、外生変数ベクトルe、係数パラメータ行列Aを生成する。また、外部データベース又は内部データベースの関係する観測変数を参照して期待値E[v]=0となるよう標準化した観測変数ベクトルvを、標本数N個だけ生成する。
(2−2−3−4−3.母数の推定:S3、S4)
次にステップS193において、生成された潜在変数ベクトルf、外生変数ベクトルd、外生変数ベクトルe、係数パラメータ行列A、観測変数ベクトルvに基づいて、母数の推定を行う。ここで母数とは、外生変数ベクトルd、外生変数ベクトルe、係数パラメータ行列Aの各要素を指す。母数の推定について概略を説明すると次の通りである。
分散共分散行列 まず、観測変数に関する分散共分散行列を母数によって表現することが前提となる。
Oを0行列、Iを単位行列としたとき、式18は、次のように変形できる。
(I−A)t=u
この式は、I−Aが逆行列Tを持つ場合、更に次の式23のように変形できる。
t=Tu ・・・(式23)
この式は、v=Gtを満たす[O,I]の形の行列Gを、左から両辺にかけると、更に次の式24のように変形できる。こうすることで、観測変数の分散共分散行列のみ取り出すことが可能となる。
v=GTu ・・・(式24)
一方、一般にベクトルvの各要素に対する期待値を要素とする期待値ベクトルE[v]を用いて、vの分散共分散行列Σvを次の式25のように表せることが公知である。
Σv=E[(v−E[v])(v−E[v])′]
=E[vv′] ・・・(式25)
よって観測変数についての分散共分散行列Σvは、式25及び式24より、以下の式26のように母数で表すことができる。
Σv=E[GTuu′T′G′]
=GT(Σu)T′G′ ・・・(式26)
なお、Σu=E[uu′]である。fの要素の分散を1と仮定しておけば、Σuは標本iに依存せず一意に定まるので、観測変数についての分散共分散行列Σvは一意に定まる。
I−Aが逆行列Tを持たない場合、式23の式を得られない。この場合、ステップS194にて母数の推定不能と判定され、ステップS191に戻って新たな因果モデル情報が入力されるのを待つ。
分散共分散行列が求められたら、最尤推定法を用いて母数を推定する。
まず、係数パラメータ行列Aと、式26中のE[uu′]とを要素とするベクトルをθとする。式26の分散共分散行列Σvは、θでも表現できるので、これをΣ(θ)とする。
一般に、変数vが多変量正規分布に従っている場合、変数vのデータ行列が観測される確率F(X|θ)は、次の式27のように表せることが公知である。
F(X|θ)
=Π(i; 1≦i≦N)(2π)(-n/2)
|Σ(θ)| (-1/2) exp[(-1/2)v′Σ(θ)(-1)
] ・・・(式27)
ここで、
n: ベクトルvの次元
N: 標本数
|Σ(θ)|: 分散共分散行列Σ(θ)の行列式
Σ(θ)(-1): 分散共分散行列Σ(θ)の逆行列
である。[(−1/2)v′Σ(θ)(-1)v]は、iに依存するスカラー量となる。
確率F(X|θ)は、個々の標本が観測される確率(2π)(−n/2)|Σ(θ)|(−1/2)exp[(−1/2)v′Σ(θ)(-1)v]を、i=1からi=Nまでのすべての標本について掛け合わせたものである。
そこで、この確率F(X|θ)を最大にするθを母数の推定値とする。実際には式27の両辺の自然対数を取って整理した次の関数Fmlを用い、Fmlを最大にするθを求める。対数化することで、単調増加関数として扱うことができ、最大化が行い易くなるためである。
Fml = tr(Σ(θ)(−1)S)− ln |Σ(θ)(−1)S| −n ・・・(式28)
ここで、
S: 観測変数のデータ行列を用いた分散共分散行列Σv
tr(B): 行列Bの対角成分の和
である。
関数Fml(或いは確率F(X|θ))を最大にするθを求める際、解が収束しない場合がある。この場合はステップS191で入力された連立1次方程式の解が不定ということになる。従って、ステップS194にて母数の推定不能と判定され、ステップS191に戻って新たな因果モデル情報が入力されるのを待つ。
なお、この場合、同じパス図に基づく因果モデル情報であって係数パラメータの拘束条件を課したものを入力し、再度母数の推定を行っても良い。係数パラメータに拘束条件を課すことにより、連立1次方程式の解を一意に求めることができる。
なお、母数の推定方法は、最尤推定法に限られるものではない。他にも最小二乗法や、一般化最小二乗法、楕円最小二乗法、楕円一般化最小二乗法、楕円再重みつき最小二乗法等の手法を用いて行うことができる。
(2−2−3−4−4.適合度及び有意性の検定:S5)
母数が推定されたら、次に、ステップS195で、仮説モデルの適合度及び有意性の検定を行う。
まず、ステップS195において、因果モデルの適合度を検定する。適合度の検定には、公知の適合度指標であるGFI(Goodness of Fit Index)若しくはAGFI(Adjusted
Goodness of Fit Index)又はその両方を用いる。GFIは、設定された因果モデルがデータ(観測変数についての分散共分散行列Σv)を何%説明したかを示す指標である。GFIの値が1に近いほど、説明力のあるモデルと評価される。AGFIは、GFIの欠点(因果モデルが複雑になると母数の安定性が悪くなるにも拘らず、GFIが向上する)を補うため、GFIから母数の不安定度を割り引いたものである。GFI及び/又はAGFIがそれぞれ所定の閾値以上であれば、適合度ありと判定する。
なお、別の因果モデルについて既にGFIやAGFIを求めた場合には、これより劣る結果が出たときは、適合度なしと判定しても良い。また、適合度の検定には他の指標を併せて用いても良い。
更に、ステップS195では、個々の母数について有意性の検定を行う。具体的には、パス図における任意の一方向矢印で結ばれる2変数に対応する1次線型方程式を回帰式とみなし、母集団の真の係数行列をΓとし、
(θ−Γ)/(diag(Σ(θ)))1/2
但し、(diag(C))1/2は行列Cの対角要素の平方根を対角要素とする対角行列
を考える。この量は標準正規分布に漸近的に従う。従って、Γ=0を代入した値が一定値以上であれば、Γ=0の仮説(母数の有意性が認められない)が棄却されるので、母数の有意性を認めることができる。
適合度及び有意性の何れかが認められなかった場合は、ステップS191に戻り、新たな因果モデル情報が入力されるのを待つ。適合度及び有意性が認められた場合は、次のステップS196に進んで評価値を算出する。但し、適合度及び有意性が認められた場合でも、更に他の因果モデルを検証して最も適合度が高いものを選んでも良い。
(2−2−3−4−5.評価値の算出及び出力:S6)
まず、得られた母数に基づいて、各企業についての観測変数ベクトルvから潜在変数ベクトルfを算出し、評価値とする。
このためには、まずf=YvなるYを求めればよい。両辺に右からv′をかけると、
fv′=Yvv′
である。ここで
S=Σv
=vv′/(N−1)
であるから、
fv′=(N−1)YS
よって、
Y=fv′S(−1)/(N−1)
一方、f=Ktを満たす[O,I]の形の行列Kを用いると、式23及び式24より、
fv′=Ktv′
=KTuv′
=KTuu′T′G′
よってYは、
Y=KTuu′T′G′S(−1)/(N−1)
であり、Σu=uu′/(N−1)であるから、次の式でYが求められる。
Y=KT(Σu)T′G′S(−1) ・・・(式29)
ステップS196で評価値を算出したら、結果を出力して終了する。そして、図23に戻り、ステップS13で「企業ランキング」を作成する。
(2−2−3−5.具体例)
(2−2−3−5−1.パス図)
図25に示すのは、知的財産戦略経営企業の評価のために共分散構造分析を行った結果を表すパス図の一例である。図25に示すパス図は、仮説を構築した後、仮説モデルを何度か検定した後の結果を表すものである。
図からわかるように、知的財産戦略経営モデルは、「財務・収益力」因子(経営)、「特許戦略」因子(patent)、「研究開発投入性向」因子(R&D)の3つの戦略が連関している構造を示している。同モデルに基づき、「知的財産戦略経営企業」(black)の評価を行った結果、「知的財産戦略経営企業」モデル(black)に対する各因子の影響力(寄与率)は、各々、「財務・収益力」因子が約26%、「研究開発投入性向」因子(R&D)が約17%、「特許戦略」因子(patent)が46%であることがわかる。また、各因子間の相関係数について見てみると、「財務・収益力」―「特許戦略」間が0.17、「特許戦略」―「研究開発投入性向」間が0.12、「研究開発投入性向」―「財務・収益力」間が0.34となっており、それぞれ弱い連関を示していることがわかる。
さらに、「知的財産戦略経営企業」を外部から評価している指標は、「MVA(時価総額と株主資本の差額)」、「PBR(株価純資産倍率)」(市場評価指標)、及び「全要素生産性」の3つである。ここで、「知的財産戦略経営企業」は、これら3つの外部指標と、「財務・収益力」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「特許出願戦略」因子との間に存在する潜在因子として設定されている。外部評価指標として市場評価指標を用いた理由は、簿価を上回る時価は、各企業のノウハウや知的財産等のオフバランスの無形資産に対する評価に相当するからである。逆に、時価が簿価を下回っているならば、市場は、当該企業がオフバランスの無形資産をほとんど保有していないか、又はそれを収益の源泉とする能力がないと評価していると考えることができる。
しかしながら、市場評価指標から得られる無形資産評価には制約もある。なぜなら、そこには、マクロ経済環境や、企業と市場の間に存在する情報の非対称性等によって、時価が不当に低くなったり高くなったりして、無形資産の評価に無関係なノイズが含まれるからである。そこで、市場評価指標に加えて、「全要素生産性」を、「知的財産戦略経営」評価のための外部指標として使用している。ここで、「全要素生産性」とは、各企業の各年度における「付加価値額」の増減率から、「設備」と「労働力」との増減率を差し引くことによって得られる、「技術進捗率」を測定する指標のことである。
本発明の実施の形態においては、「知的財産戦略経営企業」を、事業、研究開発、及び知的財産の3つの因子と、MVA、PBR、及び全要素生産性の外部評価指標との間に存在する、未知の潜在因子から成り立つ構造であると定義した。その上で、その構造に最も適合する指標を図4乃至図9に記載する全指標から選択し決定することによって、モデルを構築した。この適合モデルの構築によって選択し決定された各因子を構成する指標は、以下の通りである。
まず、「財務・収益力」因子を構成する指標として最もモデル適合度が高かったのは、「設備投資効率」、「自己資本比率」、「売上高原価率」、及び「売上高営業利益率」の4つであった。次に、「研究開発投入性向」因子を構成する指標として最もモデル適合度が高かったのは、「研究開発費比率δ」、「発明者1人当研究開発費」、及び「特許出願生産性」の3つであった。最後に、「特許戦略」因子を構成する指標として最もモデル適合度が高かったのは、「出願1件当請求項数」、「発明者1人当出願請求項数」、「特許多角化指数」、「規格化競争力指数」の4つであった。なお、「特許戦略」因子を構成する指標としては、他にも、「権利化意欲」、「他社牽制力」、及び「総有効特許件数シェア」等がある。各々の指標の定義及び算出式については、図4乃至図9の一覧表に示す通りである。
図25に示した上記の指標の組合せは、最もモデル適合度が高かったものである。具体的には、カイ2乗検定ではχ=366.906(自由度df=70、p値=0.000)であった。更にRMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)=0.094、GFI=0.907、AGFI=0.861であった。
(2−2−3−5−2.重み付け)
また、上記評価値の算出ステップS196によって各評価値を算出するために各指標にかける重み付け(行列Yの成分)は、図25の例では図26の通りである。10−5の位は四捨五入している。
図26によれば、
(1)事業戦略評価値(経営)を算出するための重み付けが大きい指標は、
0.6015である「売上高営業利益率」、
0.1236である「自己資本比率」、
0.0717である「設備投資効率」、
0.0394である「MVA」、
0.0325である「PBR」
である。また重み付けが絶対値の大きな負の値となっている指標として
-0.2579である「売上高原価率」
がある。
(2)研究開発戦略評価値(R&D)を算出するための重み付けが大きい指標は、
0.2351である「研究開発費比率α」、
0.2117である「発明者1人当研究開発費」、
0.0648である「発明者1人当出願請求項数」
である。また重み付けが絶対値の大きな負の値となっている指標として
-0.2228である「特許出願生産性」
がある。
(3)特許戦略評価値(patent1)を算出するための重み付けが大きい指標は、
0.7769である「発明者1人当出願請求項数」、
0.1425である「出願1件当請求項数」、
0.0626である「特許出願生産性」
である。
(4)知的財産戦略経営(black)を算出するための重み付けが大きい指標は、
0.3285である「MVA」、
0.2704である「PBR」、
0.1199である「発明者1人当出願請求項数」、
0.0540である「売上高営業利益率」、
0.0454である「全要素生産性」
である。
(2−2−3−5−3.ランキング)
図27乃至図31に示すのは、上記共分散構造分析により「知的財産戦略経営企業」を評価した企業ランキングの一覧表である。図27に示すのは、「知的財産戦略経営企業」の総合評価ランキングと、「財務・収益力」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「特許戦略」因子についてのそれぞれの企業得点とから構成される一覧表である。なお、「知的財産戦略経営企業」の総合評価ランキングは、全体の「総合得点」を算出し、それぞれの最高点の企業を100点、或いは1000点とした規格化を行い、各企業の「総合得点」を高い順に並べて表示している。
図28乃至図31に示す一覧表には、前記3つの外部指標、及び各々の因子を構成する各指標ごとに、それぞれ企業ランキングを掲載している。このように、共分散構造分析においては、企業全体の総合評価を表すランキングを作成するのみならず、因子毎の多面的な評価を表す企業ランキングを作成することが可能となる。
さらには、因子ごとに企業評価を行うのみならず、業種別又は製品別に企業評価を行うこともできる。また、さらには、国際特許分類(IPC)のセクション別、クラス別、サブクラス別、及びメイングループ別の企業評価や、米国特許分類(UPC)、あるいは米国標準産業分類(SIC)別の企業評価を行うこと等も可能である。
例えば、図32B及び図33Bに示すのは、電機業界に属する企業が任意のIPCサブグループ別に保有する特許を、特許特性を表す複数の指標に基づいて評価し、その結果を企業ランキングとして表示したものである。このような企業評価方法を採用することで、各企業の潜在的価値をより詳細に、かつ、より精緻に評価していくことが可能となる。
なお、図32A及び図33Aに示すのは、図32B及び図33Bに示した企業ランキングから作成された散布図の一例である。例えば、図32Aに示すのは、電機業界主要4社が任意のIPCサブグループにおいて保有する特許を、「権利化意欲」と「総有効特許件数シェア」との2つの指標に基づいて評価した結果を因子得点としてプロットして表した散布図の一例である。同じく、図33Aに示すのは、電機業界主要4社が任意のIPCサブグループにおいて保有する特許を、「他社牽制力」と「総有効特許件数シェア」との2つの指標に基づいて評価した結果を因子得点としてプロットして表した散布図の一例である。図32A及び図33Aに示すような散布図を用いることで、各企業が保有する特許について技術分野別に比較を行ったり、競合他社との比較を行ったりすることが可能となる。さらには、上記手続きとは逆に、例えば、図32A及び図33Aにプロットされている因子得点を加算して集計したり、各象限の領域別に予め得点を設定しておき、各々の範囲にプロットされているドットの数を集計したりしてもよい。こうすることで、IPCサブグループ別に、かつ、特許特性を表す複数の指標毎に、企業ランキングを作成していくことも可能である。
図34に示すのは、知的財産戦略経営企業の評価のために共分散構造分析を行った結果を表すパス図の他の一例である。
図25と同様に、図34でも、知的財産戦略経営モデルは、「財務・収益力」因子(経営)、「特許戦略」因子(patent)、「研究開発投入性向」因子(R&D)の3つの戦略が連関している構造を示している。同モデルに基づき、「知的財産戦略経営企業」(black)の評価を行った結果、「知的財産戦略経営企業」モデル(black)に対する各因子の影響力(寄与率)は、各々、「財務・収益力」因子が約28%、「研究開発投入性向」因子(R&D)が約25%、「特許戦略」因子(patent)が36%であることがわかる。
図25と同様に、図34でも、「知的財産戦略経営企業」を外部から評価している指標は、「MVA(時価総額と株主資本の差額)」、「PBR(株価純資産倍率)」(市場評価指標)、及び「全要素生産性」の3つである。ここで、「知的財産戦略経営企業」は、これら3つの外部指標と、「財務・収益力」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「特許出願戦略」因子との間に存在する潜在因子として設定されている。
図34では、「財務・収益力」因子を構成する指標として最もモデル適合度が高かったのは、「特許収益性δ」、「設備投資効率」、「有利子負債比率」、及び「売上高営業利益率」の4つであった。次に、「研究開発投入性向」因子を構成する指標として最もモデル適合度が高かったのは、「発明者1人当研究開発費」、「研究開発費比率α」、及び「特許出願生産性」の3つであった。最後に、「特許戦略」因子を構成する指標として最もモデル適合度が高かったのは、「出願1件当請求項数」、「発明者1人当出願請求項数」、「特許多角化指数」、「規格化競争力指数」の4つであった。各々の指標の定義及び算出式については、図4乃至図9の一覧表に示す通りである。
(2−2−4.他の企業評価方法)
以上のように、本発明の実施の形態においては、企業評価を行う方法として、指標を選択して主成分分析を行う方法と、因子分析と重回帰分析とを行った後に主成分分析を行う方法と、共分散構造分析を行う方法と、の3つの方法を説明した。しかし、企業評価を行う方法は上記の方法に限定されるものではない。例えば、因子分析を行わずに重回帰分析を行い、目的変数に対する寄与率の高い指標を選択した上で、主成分分析を行ってもよい。また、他の企業評価の方法として、線形計画法や非線形計画法等を用いてもよい。このように、複数の企業評価方法に基づき、複数種類の企業ランキングを作成することができる。従って、異なる視点により、複数の株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる企業群を作成することが可能となる。
(2−3.株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の選択)
また図3に戻り、次に、ステップS14で、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業を選択するため、ステップS13の企業評価に基づく総合ランキングからN個の企業(以下、N社と略す)を選択する。N社の選択方法としては、(1)単純にランキングの上位N社を選ぶ方法、(2)主成分1での標準化得点が1以上である企業を選ぶ方法、(3)主成分1及び主成分2の標準化得点が2以上である企業を選ぶ方法、(4)企業評価に基づく総合ランキングとその他の企業評価因子のランキングとの相違が所定の範囲を超える企業を過大/過小評価企業として選ぶ方法、等がある。
(2−3−1.過大/過小評価企業の抽出)
ここで(4)の方法を図35に基づいて具体的に説明する。まず、ステップS301で共分散構造分析を行い、ステップS303で「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子、「知的財産戦略経営企業」因子のそれぞれの因子得点を算出する。そして、ステップS305で過大/過小評価企業を算出する。ステップS301と303に関しては既に説明を行っているため、ここでの説明は省略する。そこで。まず、第1の過大/過小評価企業について説明する。
図23以降で説明した共分散構造分析によって算出された各企業のスコアのうち、各企業の「特許戦略」因子得点と「知的財産戦略経営」因子得点との得点差を下記の式で算出する。
(因子得点差)=(「特許戦略」因子得点)−(「知的財産戦略経営」因子得点) ・・・(式30)
因子得点差が正の値の企業のうち絶対値が大きい順に例えば上位20社の企業を第1の過小評価企業とする。因子得点差の正の値が大きい企業は、市場での評価に比して潜在的競争力が高い企業であると期待できる。また、因子得点差が負の値の企業のうち絶対値が大きい順に例えば下位20社の企業を第1の過大評価企業とする。因子得点差の負の値が大きい企業は、市場での評価に比して潜在的競争力が低い企業であると想定できる。
次に、第2の過大/過小評価企業について説明する。
ここでは、共分散構造分析によって算出された各企業のスコアのうち、各企業の「特許戦略」因子得点、「研究開発投入性向」因子得点、および「知的財産戦略経営」因子得点をそれぞれ標準化し、各企業の標準化「特許戦略」因子得点、標準化「研究開発投入性向」因子得点、および標準化「知的財産戦略経営」因子得点として過大/過小評価企業の抽出を行っていく。標準化すると平均値が0になるため、測定対象となる企業の算出値と平均値との大小関係を正負の関係として表すことができる。
次に、各企業の標準化「特許戦略」因子得点と標準化「研究開発投入性向」因子得点との和を算出し、全企業の平均値との大小関係を算出する。この場合、上記の通り因子得点の標準化を行っているため平均値は0となり、因子得点の和は正若しくは負の値となる。
そして、次に、各企業の標準化「知的財産戦略経営」因子得点を算出し、全企業の平均値との大小関係を算出する。この場合も、因子得点の標準化を行っているため平均値は0となり、各企業の標準化「知的財産戦略経営」因子得点は正若しくは負の値となる。
ここで、「特許戦略」因子得点と「研究開発投入性向」因子得点との和が全企業の平均値を上回っているにもかかわらず、「知的財産戦略経営」因子得点が全企業の平均値を下回っている企業を、第2の過小評価企業とする。この場合、標準化「特許戦略」因子得点と標準化「研究開発投入性向」因子得点との和が正であり、同時に標準化「知的財産戦略経営」因子得点が負である企業が第2の過小評価企業となる。以上を式で表すと下記の式31のように示すことが出来る。
(標準化「特許戦略」因子得点)+(標準化「研究開発投入性向」因子得点)>0(平均値)
且つ(標準化「知的財産戦略経営」因子得点)<0(平均値) ・・・(式31)
他方、「特許戦略」因子得点と「研究開発投入性向」因子得点との和が全企業の平均値を下回っているにもかかわらず、「知的財産戦略経営」因子得点が全企業の平均値を上回っている企業を、第2の過大評価企業とする。この場合、標準化「特許戦略」因子得点と標準化「研究開発投入性向」因子得点との和が負であり、同時に標準化「知的財産戦略経営」因子得点が正である企業が第2の過大評価企業となる。以上を式で表すと下記のように示すことが出来る。
(標準化「特許戦略」因子得点)+(標準化「研究開発投入性向」因子得点)<0(平均値)
且つ(標準化「知的財産戦略経営」因子得点)>0(平均値) ・・・(式32)
以上より、ステップS307で、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄候補の選択を行う。具体的には、第1の過小評価企業若しくは第2の過小評価企業、又は両企業群の組み合わせをもって、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補とし、この中から78社の株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業を選択する。
或いは、第1の過大/過小評価企業として抽出した企業群若しくは第2の過大/過小評価企業として抽出した企業群、又は両企業群の組み合わせをもって、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補とし、この中から株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業を選択することもできる。
このように、過小評価企業に加え、その逆のいわば過大評価企業も併せて選定することで、ポートフォリオにリスクヘッジ機能を持たせることができる。
図36及び図37に示すのは、過小評価企業及び過大評価企業の第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表である。図中に示す「過小評価企業抽出基準」及び「過大評価企業抽出基準」の欄には、「過小1」、「過小2」、「過小12」、及び「過大1」、「過大2」、「過大12」という表記が含まれている。このうち、「過小1」は、第1の過小評価企業として抽出された企業を表し、「過小2」は、第2の過小評価企業として抽出された企業を表す。また、「過小12」は、第1の過小評価企業及び第2の過小評価企業双方により抽出された企業を表す。他方、「過大1」は、第1の過大評価企業として抽出された企業を表し、「過大2」は、第2の過大評価企業として抽出された企業を表す。また、「過大12」は、第1の過大評価企業及び第2の過大評価企業の双方により抽出された企業を表す。また、一覧表は、(「特許戦略」因子得点)−(「知的財産戦略経営」因子得点)の因子得点差の値が大きい企業から降順に並べて記載している。
なお、本件発明の実施形態においては、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補として、過小評価企業を78社、過大評価企業を41社選択した。
(2−3−2.組入銘柄企業の選定)
株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の選択は、ステップS309で示すように、企業別特許評価指数を各企業について算出し、この企業別特許評価指数の算出結果に基づいて行っても良い。
更に好ましくは、上記第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補のうち、上記企業別特許評価指数の算出結果に基づいて、一定数の企業を第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補の中から除外する。その結果、除外の対象外となった残りの企業群をもって組入推奨企業として優先的に株式ポートフォリオ組入銘柄企業とする。このような足切りをすることで、企業別特許評価指数による評価の高い企業を優先的に株式ポートフォリオに組み入れることができる。
上記第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補として、上記の「過小評価企業」に加え、上記の「過大評価企業」も選定する場合には、上記の「過小評価企業」のうち、上記の企業別特許評価指数が所定値より「低い」企業を除外するとともに、逆に上記の「過大評価企業」のうち、上記の企業別特許評価指数が所定値より「高い」企業を除外し、残りを組入推奨企業とする。このように、過小評価企業に対する足切りと逆の評価方法によって過大評価企業に対する足切りを行うことで、ポートフォリオのリスクヘッジ機能を強化させることができる。
ここで、企業別特許評価指数を用いる理由は、各企業の保有する特許を他社特許と比較することにより、自社の位置付けを導き出すと同時に、自社内での技術開発分野の集約度合いをも考慮することにより、第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補の選択では考慮しきれなかった特許情報を付加したうえで、各企業の潜在成長性の評価を行い、更なる過大/過小評価企業の抽出を行うことが可能となるからである。
まず、取得した知的資産関連指標等の企業評価指標データの中から、全企業の特許出願データを抽出する。そこから各種特許出願件数を算出する。
具体的には、最初に、特許出願件数を算出するにあたり、入手し得る最新年度の特許出願データを抽出する。特許公開公報の発行時期が特許出願日から1年6月であることから、最新年度の特許出願データの入手可能時期は、現時点から3年度前となる。よって現時点から3年度前の年度が入手可能な最新年度となり、この最新年度のことを当期と定義することにする。
次に、各種特許出願件数を算出することにする。まず第1に、当期IPCサブクラス別全企業特許出願件数を算出する。そして第2に、当期企業別総特許出願件数を算出する。そして、第3に、当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数を算出する。
さらに、第4に、(当期−1)年度(以下、「前期」と呼ぶこととする)IPCサブクラス別全企業特許出願件数を算出する。そして第5に、前期企業別IPCサブクラス別特許出願件数を算出する。これら5種類の特許出願件数の算出結果を用いて、以下、企業別特許評価指数を算出していく。
最初に、各企業の総累計特許出願件数上位3IPCサブクラスについて修正特許出願相対シェアの平均値を算出する。ここで、修正特許出願相対シェアとは、各IPCサブクラスの累計特許出願件数全体に占める各企業の特許出願件数の単純相対シェアを、超過成長率で重み付けして修正したものである。ここで、超過成長率とは、各IPCサブクラスにおける全企業の成長率に対する各企業の成長率の超過の度合いを表すものである。各企業の現在から将来にわたっての成長性という時間的要素を加味してやることで、単純相対シェアよりも先行指数的要素を強めることにしたものである。
まず、特許出願件数の当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数のうち、特許出願件数の多い順に上位3つのIPCサブクラス別特許出願件数を各企業について抽出する。各企業の総累計特許出願件数上位3つのIPCサブクラスについて企業別特許評価指数を算出することで、各企業の保有する技術の特徴が上位3つのIPCサブクラスに集約されていると仮定して企業の技術的特徴をより強調できるようにするためである。
次に、抽出した上位3つのIPCサブクラスについて当期IPCサブクラス別全企業特許出願件数を算出する。そして、当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数を当期IPCサブクラス別全企業特許出願件数で除すことにより、上位3つのIPCサブクラス別に特許出願件数の単純相対シェアを算出する。以上を式で表すと下記のように示すことができる。
上位3IPCサブクラス別単純相対シェア=当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数/当期IPCサブクラス別全企業特許出願件数
次に、上位3つのIPCサブクラス別に各企業の超過成長率を算出する。具体的には、第一に、上位3つのIPCサブクラス別に各企業の成長率を算出する。各企業の成長率を算出するにあたっては、まず、当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数を前期企業別IPCサブクラス別特許出願件数で差し引くことにより2期間における特許出願件数の増減値を算出する。次に、算出した2期間における特許出願件数の増減値を前期企業別IPCサブクラス別特許出願件数で除すことにより2期間における特許出願件数の成長率を算出する。このようにして算出した2期間におけるIPCサブクラス別の各企業の特許出願件数の成長率をもって、各企業の成長率とする。
以上を式で表すと下記のように示すことができる。
各企業の成長率=(当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数−前期企業別IPCサブクラス別特許出願件数)/前期企業別IPCサブクラス別特許出願件数
第二に、上位3つのIPCサブクラス別に全企業の成長率を算出する。全企業の成長率を算出するにあたっては、まず、当期IPCサブクラス別全企業特許出願件数を前期IPCサブクラス別全企業特許出願件数で差し引くことにより2期間における特許出願件数の増減値を算出する。次に、算出した2期間における特許出願件数の増減値を前期IPCサブクラス別全企業特許出願件数で除すことにより2期間における特許出願件数の成長率を算出する。このようにして算出した2期間におけるIPCサブクラス別の全企業出願件数の成長率をもって、全企業の成長率とする。以上を式で表すと下記のように示すことができる。
全企業の成長率=(当期IPCサブクラス別全企業特許出願件数−前期IPCサブクラス別全企業特許出願件数)/前期IPCサブクラス別全企業特許出願件数
第三に、上位3つのIPCサブクラス別に各企業の超過成長率を算出する。各企業の超過成長率を算出するにあたっては、各企業の成長率を全企業の成長率で差し引くことにより、全企業の成長率に対する各企業の成長率の増分を算出する。この増分の値が上位3つのIPCサブクラス別の各企業の超過成長率となる。式で表すと下記のように示すことができる。
各企業の超過成長率=各企業の成長率−全企業の成長率
この増分の値が正であれば、各IPCサブクラスにおける各企業の成長率はそのIPCサブクラスの全体的な成長率を上回ることを示している。逆に、増分の値が負であれば、各IPCサブクラスにおける各企業の成長率はそのIPCサブクラスの全体成長率を下回ることを示している。
そして、このようにして算出した上位3IPCサブクラス別単純相対シェアを各企業の超過成長率で重み付けすることにより、各企業の修正特許出願相対シェアを算出する。具体的には、上位3IPCサブクラス別単純相対シェアに、各企業の超過成長率に1を加算した値を乗じることにより算出する。各企業の超過成長率に1を加算したのは、各企業の超過成長率の値が正負いずれの場合においても、1を加算することで負の値となるのを防止でき、重み付けにより上位3IPCサブクラス別単純相対シェアの値が正から負に転換することを回避し得るからである。以上を式で表すと下記のように示すことができる。
上位3IPCサブクラス別修正特許出願相対シェア=上位3IPCサブクラス別単純相対シェア×(1+超過成長率)
そして、上位3IPCサブクラス別に算出した当期修正特許出願相対シェアの値から一意の値を得るため、上位3IPCサブクラス当期平均修正特許出願相対シェアを算出する。具体的には、上位3IPCサブクラス別に算出した修正特許出願相対シェアの値を上位3IPCサブクラスのIPCサブクラス数である3で除すことにより平均値を算出して求める。以上の手順をもって、各企業の総累計特許出願件数上位3IPCサブクラスについての修正特許出願相対シェア平均値が求まった。
次に、各企業の特許集中度を算出する。特許集中度とは、各企業の所定期間の総特許出願件数に占めるIPCサブクラスごとの特許出願件数シェアを算出し、これを用いて当該企業の技術開発分野の集中・多角化度合いを測定する指標のことである。
まず、各企業のIPCサブクラス別特許出願件数シェアを算出する。具体的には、各企業の当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数を当期企業別総特許出願件数で除すことにより算出する。式で表すと下記のように示すことができる。
企業別IPCサブクラス別特許出願件数シェア=当期企業別IPCサブクラス別特許出願件数/当期企業別総特許出願件数
次に、算出した企業別IPCサブクラス別特許出願件数シェアの値を二乗する。さらに、二乗した企業別IPCサブクラス別特許出願件数シェアを各企業が特許出願を行った全てのIPCサブクラスについて算出した後、これらを全て加算した合計値を各企業の特許集中度として算出する。ここで、企業別IPCサブクラス別特許出願件数シェアの値を単純加算せず、二乗した値を加算した理由は、どのIPCサブクラスにも浅く手広く特許出願している企業の値を低く抑え、特定のIPCサブクラスに集中特化した特許出願を行っている企業の値を高くするようにして、その結果を反映させるようにしたためである。以上を式で表すと下記のように示すことができる。
企業別特許集中度=Σ(企業別IPCサブクラス別特許出願件数シェア)
最後に、各企業の総累計特許出願件数上位3つのIPCサブクラスについての修正特許出願相対シェア平均値に特許集中度を乗じることにより、企業別特許評価指数を算出する。企業別特許評価指数においては、修正特許出願相対シェア平均値に特許集中度を乗じることにより、企業規模の大きさがそのまま値の大きさに反映してしまう影響度を減殺している。
以上を式で表すと下記の式33のように示すことができる。
企業別特許評価指数=企業別特許出願件数上位3IPCサブクラス修正特許出願相対シェア平均値×特許集中度 ・・・(式33)
更に、ステップS311で、上記の通り算出された企業別特許評価指数に基づいて、一定数の企業を第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補の中から除外する。まず、第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補のうち、過小評価企業群の中から、企業別特許評価指数が5以下の企業を除外する。また、第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補のうち、過大評価企業群の中から、企業別特許評価指数が5以上の企業を除外する。そして、第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補から、除外の対象となった除外企業を除いた、残りの企業群を、第二次株式ポートフォリオ組入銘柄候補とする。
図38及び図39に示すのは、過小評価企業及び過大評価企業の第二次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表である。図中に示す「過小評価企業抽出基準」及び「過大評価企業抽出基準」の欄には、「過小1」、「過小2」、「過小12」、及び「過大1」、「過大2」、「過大12」という表記が含まれている。これらの表記の意味するところは、図36及び図37の第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表に関する説明で述べた通りである。
また、(「特許戦略」因子得点)−(「知的財産戦略経営」因子得点)の因子得点差の値が大きい企業から降順に並べて一覧表を記載している点も、図36及び図37の第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧表と同様である。さらに、図38及び図39においては、企業別特許評価指数を各企業について算出した値を記載している。このうち、図38の過小評価企業については、企業別技術評価指数の値が5以上の企業は、第二次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧に記載され、企業別技術評価指数の値が5以下の企業は、除外企業群の一覧に記載されている。また、図39の過大評価企業については、企業別技術評価指数の値が5以下の企業は、第二次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の一覧に記載され、企業別技術評価指数の値が5以上の企業は、除外企業群の一覧に記載されている。
更に、企業別特許評価指数は、
当該企業の全IPCサブクラス修正特許出願相対シェア平均値×特許集中度 ・・・(式34)
としてもよい。ここで「当該企業の全IPCサブクラス修正特許出願相対シェア平均値」は、評価対象企業の特許出願をIPC(国際特許分類)のサブクラスおよび出願時期で分類し、各期に評価対象企業が特許出願を行った全てのIPCサブクラスについて、各IPCサブクラスの修正特許出願相対シェア
(相対シェア)×[1+(超過成長率)]
=(相対シェア)×[1+(成長率)−(全企業の成長率)]
を算出し、その平均値を算出したものである。
また、企業別特許評価指数は、「優位特許比率」を加味した指数であってもよい。この「優位特許比率」とは、被異議申立比率、他社引用回数比率、及び不服審判件数比率を含む経過情報を用いて算出した個別特許ごとの他社牽制力及び権利化意欲度合いに基づく、各企業の保有する特許全体に占める優位特許の割合のことである。
「優位特許比率」を算出するには、まず、評価対象企業のあるIPCサブクラスの特許出願件数(N)を母集団(P)として設定する。そして、企業別IPCサブクラス別の特許出願件数(N)全体に占める優位特許の割合を母比率とする。これに対して、経過情報から得られる被異議申立比率、他社引用回数比率、及び不服審判件数比率等をもって測られる企業別IPCサブクラス別の特許出願件数全体に占める優位特許の割合を標本比率(p)とする。前記の母比率(P)をなす真の優位特許の割合は測定することができないため、標本比率(p)をもってこの母比率(P)を推定する。具体的には、母比率(P)に対する区間推定を行い、信頼度95%の信頼区間として、
p−1.96√p(1−p)/特許出願件数(N)≦P≦p+1.96√p(1−p)/特許出願件数(N)
が、母比率(P)に対する信頼区間として求まる。この信頼区間の下限値p−1.96√p(1−p)/特許出願件数(N)をもって、「最小プレミアム」と定義する。そして、各IPCサブクラスの最小プレミアムから0を除いた値の平均値をもって、「平均最小プレミアム」と定義する。この「平均最小プレミアム」を加味して企業別特許評価指数を算出することも可能である。
また、企業別特許評価指数は、「優位特許比率」を加味した指数であってもよい。この「優位特許比率」は、被異議申立比率、他社引用回数比率、及び不服審判件数比率を含む経過情報を用いて算出した個別特許ごとの他社牽制力及び権利化意欲度合いに基づく、各企業の保有する特許全体に占める優位特許の割合である。
なお、ここでは上記第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補のうち、式33又は式34により算出される指数が所定値より低い企業を除外し、残りを組入推奨企業として選定することとしたが、これに限られるものではない。
例えば、上記第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補について、上記式33又は式34で算出した指標と、その他の知的資産関連指標を含む所定数の指標とを用いて主成分分析を行い、企業ごとの主成分得点に基づいて組入推奨企業を選定してもよい。
また、上記第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補について、上記式33又は式34で算出した指標と、その他の知的資産関連指標を含む所定数の指標とを用いて因子分析を行い、抽出された因子に基づき指標を集約し、抽出された因子と収益関連指標とを用いて重回帰分析を行い、収益関連指標に対し統計的有意を示す因子の企業評価指標を選択した後、主成分分析を行い、企業ごとの主成分得点に基づいて組入推奨企業を選定してもよい。
また、上記第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補について、上記式33又は式34で算出した指標と、その他の知的資産関連指標を含む所定数の指標とを観測変数として用いて共分散構造分析を行い、組入推奨企業を選定してもよい。
これらの選択方法は予めプログラム中に組み込まれ、自動で、若しくは利用者の選択により実行することが可能である。本発明の第1の実施の形態においては、図13乃至図14に示すランキングからそれぞれ上位10社、及び20社を選択することとする。
(2−4.第1の投資比率の選定)
次に、ステップS15で、選択した株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業に対する株式の投資比率の選定を行う。図4035に示すのは、投資比率選定の処理手順を表すフローチャートである。先ずステップS151で、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業データを内部データベース30Aから取得する。
(2−4−1.パラメータの導出)
そして、ステップS152で、インデックスを選定し、公開されているインデックスの値動きデータを取得する。ここで、インデックスとは、市場全体の動向を示す株価指数のことである。インデックスには、例えば、日経平均やTOPIX、S&P500等がある。図41に示すのは、選定したインデックス*の値動きデータの集合{TD*}を表す一覧表である。本発明の実施の形態においては、過去2年間の値動きデータを取得しているが、データを取得する期間はこれに限られず、任意の期間を設定することができる。
次いで、図40のステップS153で、インデックスの期待リターンとリスクとを算出する。ここで、期待リターンとは、投資から得られることが期待される収益率のことである。一般に、資産xの収益率をRxとすると、期待リターンはE(Rx)で表される。ここで期待リターンは、一定期間のインデックスの価額動向から決まる収益率を平均する方法により算出することができる。具体的な算出法としては、確率密度による算術平均法や、最近年側により重み付けした加重算術平均法、幾何平均法、移動平均法などが存在し、市場動向等に応じてこれらのうち適切な方法を採用することができる。本発明の実施の形態においては、このうち最近年側により重み付けした加重算術平均法を選択することとする。さらに、リスクとは、一般に価値が実現されない可能性のことであるが、なかでも、投資のリスクは、期待リターンの変動性で測られ、分散を尺度に用いて測定される。リスクの値は、分散の正の平方根である標準偏差(σ)によって示される。図41には、インデックス*の期待リターンE(R*)とリスクσR*とが示されている。
次に、ステップS154で、株式ポートフォリオ組入れ銘柄を構成する個別企業の株式(以下、「個別銘柄」とよぶ)ごとに、値動きデータを取得する。図42に示すのは、個別銘柄i(i=1・・・N。ここでNは選択企業数。)の現実株価の値動きデータの集合{TD}を表す一覧表である。
次に、ステップS155で、個別銘柄ごとに、現実株価の値動きに基づく超過リターン(α)、感応度(β)、及び残差(ε)を算出する。ここで、超過リターン(α)とは、個別銘柄の収益率がインデックスの収益率をどれだけ上回ったか、あるいは下回ったかを示すものである。感応度(β)とは、インデックスの値動きに対する個別銘柄の株価の値動きの関係を示す係数のことである。残差(ε)とは、個別銘柄の対象となる企業独自の要因に基づいて発生する値のことである。
個別銘柄毎のα、β、ε(i=1・・・N)の算出は、図42に示す個別銘柄の値動きデータ{TD}と、図41に示すインデックス*の値動きデータ{TD*}との比較分析により行う。また、本発明の実施の形態においては、比較分析は回帰分析に基づいて行う。図43に示すのは、算出したα、β、εの値を表す図表である。図43の図表には、「回帰統計」、「分散分析表」、「残差出力」、及び「確率」の4種類の表と、「観測値グラフ」及び「正規確率グラフ」の2つのグラフとが出力表示されている。
(2−4−2.理論株価の算出)
次に、ステップS156で、個別銘柄ごとの理論株価を算出する。ここで理論株価を算出する目的は、研究開発費関連指標及び知的資産関連指標を用いて企業の潜在的競争力を適正に反映した株価を算定し、個別銘柄ごとのパラメータを補正することである。これにより、より適切な期待リターンとリスクの推定を可能にする。本発明の実施の形態における理論株価は、事業活動によって得た利益から、資金提供者の要求するリターンを控除した残余利益の現在価値の総和に、企業の自己資本を加算して得た額を推定時価総額として、その推定時価総額を発行済み株式総数で除すことによって求められる。図44に示すのは、理論株価を算出する処理手順を表すフローチャートである。先ず、ステップS1561で、選択した株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の評価用指標データおよび株価データ等を内部データベース30Aから取得する。
次に、ステップS1563で、取得した企業評価指標関連データを用いて税引後総事業利益理論値を算出する。ここで、総事業利益とは、費用処理された研究開発費を営業利益に足し戻すことによって求められる利益額に、特許等ロイヤリティー収入を加算したものである。営業利益ではなく総事業利益を用いる理由は、第一に、研究開発費控除前に企業が確保していた利益を把握するためである。第二に、研究開発の結果生み出された特許等知的資産による収益を取り込むことによって、企業の潜在的競争力を適切に評価し、かつ、その潜在的競争力がいかに顕在的競争力や収益に結びついているのかを把握するためである。
図45に示すのは、税引後総事業利益理論値を算出するための処理手順を表すフローチャートである。まず、ステップS15631で、内部データベース30Aから知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを取得する。
次に、ステップS15633で、因子分析処理を行うか否かの選択をする。因子分析処理を行うことを選択する場合には、ステップS15635で、取得した指標データに関する因子分析を行い、主要な因子を抽出する。そして、抽出した因子毎に各指標を集約する。因子分析の処理手順については、株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる企業の評価をする過程で行った手続きと同様であるため、説明は省略する。図46に示すのは、因子分析結果を表す一覧表である。因子分析を行った結果、因子1(知的資産ストック)、因子2(生産性)、及び因子3(特許・技術の集中)の3つの因子が抽出された。
図45のステップS15637で、因子分析処理で抽出した因子を説明変数とし、収益関連指標としてROA・βを目的変数に用いて重回帰分析を行う。ここで、ROA・βとは、各企業が各年度に生み出した総事業利益の総資産に対する比率のことである。ROA・βの算出式は下記の式35に示す通りである。
ROA・β=総事業利益/総資産 ・・・(式35)
なお、目的変数に用いる収益関連指標は、ROA・βに限られるものではなく、分析の目的や性質に応じていずれの収益関連指標を用いることもできる。
なお、偏回帰係数と標準偏回帰係数の算出、t値による各係数の検定、及び自由度調整済み決定係数R’を用いた重回帰方程式の適合度の検定についての処理手順についても、株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる企業の評価をする際に行った手続きと同様であるため、説明は省略する。図46及び図47に示すのは、重回帰分析処理の結果を表す一覧表と関係図である。図47に示すように、重回帰分析を行った結果、統計的に有意な因子は因子1(知的資産ストック)と因子2(生産性)であった。また、それぞれの因子のROA・βに対する寄与率は、因子1(知的資産ストック)が60.79%で、因子2(生産性)が39.21%であった。
次いで、図45のステップS15639で、ROA・βの理論値を算出する。そのために、まず、ROA・βに対する寄与率の高かった因子1(知的資産ストック)と因子2(生産性)とを独立変数とし、目的変数に用いられたROA・βを従属変数とする回帰直線を導出する。図48に示すのは、因子1及び因子2とROA・βとの関係を表す回帰直線のグラフである。ROA・βの理論値は、この回帰直線上の点で求められる。
なお、ステップS15633で因子分析を行わない場合には、ステップS15631で取得した指標データに基づき、ステップS15637で重回帰分析を行う。この場合、目的変数ROA・βに対して寄与率の高い指標を選択し、選択した指標を独立変数とし、ROA・βを従属変数として回帰直線を導出する。また、ステップS15639の、ROA・β理論値を算出する方法は、因子分析や重回帰分析のみに限られるものではない。例えば、共分散構造分析を用いることによってROA・βの理論値を算出することも可能である。
次に、ステップS15641で、総事業利益理論値を算出する。総事業利益理論値は、ROA・βの理論値に、企業の総資産を掛け戻してやることによって求められる。
次に、ステップS15643で、総事業利益理論値から控除すべき研究開発費の値を算出する。現在、研究開発費は、会計上費用として一括計上されている。しかし、研究開発はその後の事業化・製品化による収益の拡大を目的として行われるものである。このことから、企業の収益に寄与する研究開発費の部分は、費用ではなく資産とみなすのが適当である。従って、研究開発への資金の投入は、費用ではなく投資とみなし、資産としての機能を果たさない損失部分については、他の固定資産と同様、毎年の償却費用として算出する。そして、算出した償却費用を控除することによって、残りの研究開発費(償却後研究開発費)については資産として算出する。この償却費用の算出方法としては、第一に、インプットとして投入された研究開発資金が、アウトプットしてどのような知的資産を生み出し、さらにその資産がいかなる成果につながっているのかを測定するマクロ的な企業評価に基づくアプローチがある。また、第二の算出方法としては、企業ごとに出願件数やその出願内容の詳細分析を行い、特許・技術開発競争市場における当該企業の競争力を指数化し、その技術開発特性を推量する、ミクロ的な特許情報解析に基づくアプローチがある。なお、本発明の実施の形態においては、研究開発に伴う損失は発生しないものと仮定し、償却費用の控除は行っていない。
次に、ステップS15645で、営業利益理論値を算出する。なお、ここでの営業利益理論値は特許料等ロイヤルティ収入を含んだ値の理論値である。営業利益理論値は、総事業利益理論値から、ステップS15643で算出した研究開発費を控除することによって求められる。本発明の実施の形態においては、費用計上された研究開発費全額を総事業利益理論値から控除している。図45に示すのは、特定企業の年度別のROA・β、総事業利益、及び特許料等ロイヤルティ収入を含む営業利益の実績値及び理論値の算出結果を表す一覧表である。
次に、ステップS15647で、税引後営業利益理論値を算出する。税引後営業利益理論値は、特許料等ロイヤルティ収入を含んだ営業利益理論値から法人税を控除することによって算出する。具体的には、下記の式36に示す通りである。
税引後営業利益理論値=営業利益理論値(特許料等ロイヤルティ収入を含む)×(1−法人税率) ・・・(式36)
最後に、ステップS15649で、税引後総事業利益理論値を算出する。税引後総事業利益理論値は、税引後営業利益理論値に、ステップS15643で算出した研究開発費を加算することによって求める。なお、本発明の実施の形態における税引後総事業利益理論値には、税引後営業利益理論値(特許料等ロイヤルティ収入を含む)及び研究開発費の3期平均値を用いている。しかし、採用する期間の長さはこれに限られるものではなく、任意に設定することが可能である。
税引後総事業利益理論値を算出した後、再び図44に戻り、ステップS1565で、企業の投下資本コストを算出する。投下資本コストは、加重資本コスト(WACC)に基づき算出する。加重資本コスト(WACC)とは、Weighted Average Cost Of Capitalの略称で、資金提供者が要求する最低限のリターンの額を表す。また、加重平均とは、企業の資金調達源泉である負債と、株主資本との各々に生じるコストを調達額で重み付けして平均化することをいう。WACCの計算式は、下記の式37に示す通りである。
投下資本コスト(WACC)=有利子負債の市場価値/企業の市場価値×負債コスト×(1−法人税率)+株式の市場価値/企業の市場価値×株主資本コスト ・・・(式37)
なお、資本コストを算出する手法は、上記式37に限られるものではない。例えば、企業の運転資本と有形固定資産とを加算した値をWACCで掛けることによって算出する方法もある。これらの手法は、分析の目的や対象の性質に応じて任意に選択することができる。
次に、ステップS1567で、税引後総事業利益理論値から、ステップS1565で算出した投下資本コストを控除して理論経済的超過利益を算出する。ここで、理論経済的超過利益とは、税引後総事業利益理論値から投下資本コストを控除した後の残余利益の理論値のことである。理論経済的超過利益の算出式は下記の式38に示す通りである。
理論経済的超過利益=税引後総事業利益理論値(3期平均値)−投下資本コスト ・・・(式38)
次に、ステップS1569で、割引率を算出する。割引率とは、企業の将来収益を現在の価値に戻して計算するための金利の一種である。割引率は、資本資産評価モデル(CAPM)を用いて算出する。資本資産評価モデル(CAPM)とは、Capital Asset Pricing Modelの略称で、リスク資産と期待収益率との間に需給を均衡させる数量的関係があることを示すモデルである。CAPMは、株式市場の収益率から無リスク資産のリスクフリーレートを控除した値に、個別企業の株式変動幅を表す係数(β)を乗じて得た値と、無リスク資産のリスクフリーレートとを加算して算出する。CAPMの算出式は、下記の式39に示す通りである。
割引率(CAPM)=無リスク資産のリスクフリーレート+β×(株式市場の収益率−無リスク資産のリスクフリーレート) ・・・(式39)
次に、ステップS1571で、理論経済的超過利益を割引率で除して理論市場付加価値を算出する。理論市場付加価値は、将来期間における理論経済的超過利益の割引現在価値の総和に等しい。理論市場付加価値は、企業のオフバランス資産の市場における評価額についての理論値である。つまり、理論市場付加価値は、企業の潜在的な市場価値と自己資本との差額であり、企業に投下された資本を上回って創造されたとみなされる価値を表す。理論市場付加価値の算出式は、下記の式40に示す通りである。
理論市場付加価値=理論経済的超過利益/割引率 ・・・(式40)
次に、ステップS1573で、企業の自己資本を算出する。自己資本は、株主資本つまり企業の純資産額であり、本発明の実施の形態においては3期平均値を用いる。
次に、ステップS1575で、推定時価総額を算出する。推定時価総額は、理論市場付加価値に、ステップS1573で算出した自己資本の3期平均値を加算することによって算出する。推定時価総額の算出式は、下記の式41に示す通りである。
推定時価総額=理論市場付加価値+自己資本(3期平均) ・・・(式41)
次に、ステップS1577で、理論株価を算出する。理論株価は、算出した推定時価総額を発行済み株式総数で除して算出する。理論株価の算出式は、下記の式42に示す通りである。
理論株価=推定時価総額/発行済み株式総数 ・・・(式42)
なお、理論株価の算出方法は、本発明の実施の形態に限られるものではない。例えば、企業の将来収益の割引現在価値から負債額を控除して推定時価総額を算出し、これを発行済み株式総数で除して理論株価を算出する方法もある。又は、株式の配当をベースに理論株価を算出することも可能である。これらの方法は、理論株価の算出目的や算出対象の性質に応じて任意に選択することができる。なお、算出した理論株価は、内部データベース30Aに格納する。
次に、ステップS1579で、理論株価の算出結果を現実株価と共に表示画面に表示する。また、必要に応じて、理論株価の算出結果と現実株価の値動きデータの一覧表やグラフをプリンタ31に出力する。
図50に示すのは、理論株価の算出結果の一覧表である。一覧表には、企業名、年度、現実株価の実績及び理論株価が表示されている。算出した理論株価は、現実株価より高い値を示しているものが多い。これは、経営・財務関連指標のみならず、研究開発費関連指標及び知的資産関連指標を用いて、企業の創出した知的資産の概要や、知的資産の企業収益に対する寄与等を評価した結果、企業の潜在的競争力を適正に反映した株価を算定し得たことに基づく。この結果から、図50に示す所定の企業の現在株価の多くは、当該企業の有する潜在的な企業価値に比して割安であると判断できる。また、このことから、当該企業の本業に基づく事業活動以外の部分に問題がないのであれば、将来的に株価が上昇する期待が大きいと判断することができる。
(2−4−3.投資比率の決定)
再び、図40に示す、投資比率選定の処理手順を表すフローチャートに戻る。まず、ステップS157で、現実株価に基づいて算出した個別銘柄ごとのパラメータ(α、β、ε)を、理論株価によって補正する。ここでは、個別銘柄i(i=1・・・N)の現実株価の値動きデータの集合{TD}が、現在の理論株価、1年前の理論株価、2年前の理論株価を通るよう、若しくは、これらの理論株価の集合値と重なるよう、現実株価に時系列に応じた係数を乗じて理論株価の値動きデータの集合{TD}’を求める。
そこから改めて、理論株価の値動きデータの集合{TD}’と、インデックス*の値動きデータの集合{TD*}との比較分析を行う。そして、個別銘柄ごとに、理論超過収益(α’)、理論感応度(β’)、及び理論残差(ε’)を算出する。図51に示すのは、個別銘柄ごとの超過収益(α)、感応度(β)、及び残差(ε)と、理論超過収益(α’)、理論感応度(β’)、及び理論残差(ε’)との算出結果を表す一覧表である。
なお、個別銘柄のパラメータを補正する方法は、上記のものに限られない。例えば、理論株価を算出した後、直接インデックスと比較を行うことによって理論超過収益(α’)、理論感応度(β’)、及び理論残差(ε’)を算出することも可能である。又は、現実株価に基づいて算出した超過収益(α)、感応度(β)及び残差(ε)を、理論株価によって補正することなく、そのまま理論超過収益(α’)、理論感応度(β’)、及び理論残差(ε’)としても良い。さらに、他の補正方法としては、理論株価の入力情報を利用した統計解析や非線形解析法等、幅広い解析方法の適用が可能である。
次に、ステップS158で、算出した理論超過収益(α’)、理論感応度(β’)、及び理論残差(ε’)に基づいて個別銘柄ごとの期待リターンとリスクとを算出する。まず、個別銘柄の期待リターンはE(R)(i=1・・・N)で表し、以下の式43に基づき算出する。
期待リターンE(R)=理論超過収益(α’)+理論感応度(β’)×インデックス*のリターン+理論残差(ε’) ・・・(式43)
次いで、個別銘柄のリスクを算出する。リスクはσRi(i=1・・・N)で表し、個別銘柄の期待リターンの分散σを算出して求める。具体的には、以下の式44に示す通りである。
個別銘柄の分散σRi =Σi=1 [{E(R)−E(R*)}]/N−1 ・・・(式44)
なお、リスクσRiは、分散σRi の正の平方根である。
次に、ステップS159で、個別銘柄ごとに算出した期待リターンとリスクとに基づいて、株式ポートフォリオ全体の期待リターンとリスクとを算出する。まず、株式ポートフォリオ全体の期待リターンを算出する。株式ポートフォリオ全体の期待リターンは、E(Rp)で表し、以下の式45に基づき算出する。
期待リターンE(Rp)=α’+β’×E(R*) ・・・(式45)
ここで、α’は、株式ポートフォリオ全体の理論超過収益(α’)を表す。β’は、株式ポートフォリオ全体の理論感応度(β’)を表す。E(R*)は、インデックス*の期待リターンを表す。株式ポートフォリオ全体の理論超過収益(α’)は、個別銘柄のα’を保有比率で加重平均したものである。また、株式ポートフォリオ全体の理論感応度(β’)は、同じく個別銘柄のβ’を保有比率で加重平均したものである。
次いで、株式ポートフォリオのリスクを算出する。株式ポートフォリオ全体のリスクはσRpで表し、株式ポートフォリオ全体の分散σRp を算出して求める。具体的には、以下の式46に示す通りである。
株式ポートフォリオ全体の分散σRp
=β’ σR* +Σi=1 (X σεi ) ・・・(式46)
ここで、β’ は、株式ポートフォリオ全体の理論感応度(β’)の分散を表す。σR* は、インデックス*の分散を表す。X(i=1・・・N)は、個別銘柄の保有比率を表す。σεi は、個別銘柄の予想残差(ε’)の分散を表す。なお、株式ポートフォリオ全体のリスクσRpは、分散σRp の正の平方根である。
このとき、右辺第1項は、インデックス*の分散と、株式ポートフォリオ全体のβ’の分散とを掛け合わせたものであるから、その値はインデックスの値動きによって影響を受ける。それに対して、第2項は、個別銘柄の予想残差(ε’)の標準偏差(σεi)と、個別銘柄の保有比率(X)とによって決まり、インデックス*のリスクとは関係がない。このことから、右辺第1項をシステマティック・リスク(市場リスク)とよび、第2項をアンシステマティック・リスク(非市場リスク)とよぶ。つまり、株式ポートフォリオ全体のリスクは、インデックス*の値動きに起因する要素と、株式ポートフォリオ独自の出来事に起因する要素とから成り立っている。
次に、ステップS160で、算出した株式ポートフォリオの期待リターンとリスクとに基づいて効率的フロンティアを導出する。具体的には、まず、株式ポートフォリオの期待リターンを一定にした場合、リスクを最小化する株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率(以下、「最小リスク保有比率」という)を算出する。次いで、株式ポートフォリオの期待リターンを様々な値に変化させることによって、それぞれの期待リターンに対応した最小リスク保有比率を算出する。そして、このようにして得られた期待リターン別の最小リスク保有比率の集合を効率的フロンティアとして導出する。ここで、「フロンティア」とは、ポートフォリオの外縁という意味で、保有銘柄のあらゆる組合せ及び比率の中で、同等の期待リターンでこれよりリスクの小さな組合せ及び比率は存在しないことを示している。
次に、ステップS161で、無リスク資産のリスクフリーレートに関するデータを取得する。ここで、無リスク資産とは、国債のように確実な収益が保証されている資産のことをいう。リスクフリーレートとは、無リスク資産のリターンのことである。例えば、日本の場合、長期金利の指標となる10年物の国債リスクフリーレートが、米国の場合は、30年債のリスクフリーレートが、無リスク資産のリスクフリーレートの指標となる。
次いで、ステップS162で、資本市場線を導出する。資本市場線とは、株式等のリスク資産と無リスク資産とを組み込んだポートフォリオのリスクとリターンとの関係を表す直線のことである。資本市場線は、まず、無リスク資産のリスクフリーレートを定点として、そこから効率的フロンティアへ向けて接線を引くことによって導出する。
いずれの投資家も、金融資産を株式だけで保有していることはあり得ず、値下がりリスクの無い安全な資産をも同時に保有している。そのため、株式ポートフォリオの投資比率の選定を行う意思決定と、無リスク資産と株式等リスク資産との組合せの投資比率の選定を行う意思決定とは完全に分離して行われる。その結果、効率的フロンティアの中で投資家にとって最適なポートフォリオは、資本市場線と接する一点において決定されることになる。このことが、効率的フロンティアに加え、資本市場線をも導入する理由である。
次に、ステップS163で、効率的フロンティアと資本市場線との接点において、株式ポートフォリオ組入れ銘柄の最適保有比率を決定する。図52に示すのは、効率的フロンティアと資本市場線とが接点において最適保有比率を実現している例を表すグラフである。
以上が、株式ポートフォリオの最適な投資比率を選定する一般的な処理手順である。しかし、本発明の実施の形態においては、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業ごとに理論株価を算出することによって、各企業の潜在的競争力を適正に評価してパラメータ(α’、β’、ε’)を補正している。この結果、現実株価と比較した理論株価の期待リターンE(R)の値は相対的に上昇する可能性が高い。又は、或いは同時に、現実株価と比較した理論株価のリスクσRiの値は低減する可能性が高い。
従って、例えば、図53に示すように、期待リターンの上昇とリスクの低減とがともに生じる場合には、効率的フロンティアは、(1)から(2)へと左上方にシフトする。それに伴い、資本市場線と効率的フロンティアとの接点も左上方にシフトし、株式ポートフォリオの最適保有比率が変更される。また、図示しないが、期待リターンのみが上昇する場合には、効率的フロンティアは上方へとシフトする。さらに、リスクの低減のみが生じる場合には、効率的フロンティアは左方へとシフトする。そして、いずれの場合にも、資本市場線と効率的フロンティアとの接点が変わり、株式ポートフォリオの最適保有比率が変更される。
次に、ステップS164で、株式ポートフォリオの個別銘柄ごとの組入比率を決定する。まず、図53に示す効率的フロンティア(2)と資本市場線(2)との接点において最適保有比率を特定する。次に、この接点において、株式ポートフォリオ個別銘柄ごとの各組入比率の算出を行う。図54に示すのは、効率的フロンティアと資本市場線との接点における、個別銘柄ごとの理論組入比率の例を表す図表である。
なお、算出された理論組入比率のままでは、投資比率を配分することができない場合がある。つまり、最低必要投資金額や1株当たりの実際の現実株価等に応じて、実際に配分可能な実組入比率を決めることが必要な場合がある。図55に示すのは、理論組入比率から決定した実組入比率の例である。そして、実組入比率を決定した後、投資比率の選定作業を終了する。
なお、投資比率選定方法は、上記のものに限られない。投資比率は、予め定められた任意の基準により選定することができる。例えば、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業に、単純に均等株数を配分する方法や、均等な金額を配分する方法がある。あるいは、企業得点に比例配分する方法や、主成分分析に基づく企業ランキングで標準化値1又は2以上の企業に配分する方法等もある。又は、リニアプログラミング等の線形計画法を用いて、投資比率を選定する方法もある。これらの方法のいずれかを用いて、あるいは、これらの方法を組合せることによって、各企業に対して投資比率を選定することが可能である。
また、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の選択を予め行うことなく、全ての企業、若しくは任意の企業群からなる株式ポートフォリオ組み入れ銘柄について、投資比率を選定することもできる。例えば、対象となる全ての企業について、各々リスクとリターンとを算出してやり、その結果導出される効率的フロンティアと資本市場線との接点において最適保有比率を決定する等の方法で投資比率を選定することもできる。
(2−5.ポートフォリオの作成)
再び図3に示す株式ポートフォリオ選択の処理手順を表すフローチャートに戻る。投資比率選定作業を終了した後、ステップS16で、株式ポートフォリオを作成し、内部データベース30Aに格納する。
そして、ステップS17で、作成した株式ポートフォリオの株価騰落率やリターンの推移を演算し、かつ、必要に応じてそれらを視覚的に表示する一覧表やグラフを出力して終了する。
(2−6.第1の投資比率の選定による株式ポートフォリオの株価騰落率及びリターンの推移結果)
次に、株式ポートフォリオの株価騰落率及びリターンの推移結果の一例をあげる。この例では、株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補企業の選択のために行った主成分分析で、主成分1と主成分2とに基づく企業ランキングを行った結果、各々で選択された上位10社、20社、及び30社についての株価推移を示している。また、投資比率は全て均等配分にしている。
図56に示すのは、主成分1に対応する上位10社、20社、及び30社の株式ポートフォリオの株価騰落率及びリターンの推移を表す一覧表である。図57に示すのは、主成分2に対応する上位10社、20社、及び30社の株式ポートフォリオの株価騰落率及びリターンの推移を表す一覧表である。また、図58に示すのは、株価の騰落率の比較例を表すグラフである。図59に示すのは、株式のリターンの比較例を表すグラフである。図59においては、株式ポートフォリオ組入れ銘柄を構成する各企業に均等な金額(=100万円)を配分する場合のリターンの比較例を示している。
図58に示す、株価の騰落率の比較例を見ると、図56に示す、主成分1に対応する「知的資産集中型」の株式ポートフォリオの方が、図57に示す、主成分2に対応する「知的資産多角型」の株式ポートフォリオより株価のばらつきが大きい。これは、主成分1には専業タイプの企業が多く、主成分2の多角型企業群と比較して利益率の変動が大きいことが反映しているためであると考えられる。
図59に示す、株式ポートフォリオのリターンの比較例を見ると、主成分1に対応する「知的資産集中型」の株式ポートフォリオも、主成分2に対応する「知的資産多角型」の株式ポートフォリオも、ともに、上位10社、20社、及び30社の3種類全てにおいて、日経平均あるいはTOPIXよりも大きなリターンを得ていることが分かる。
(2−7.第2の投資比率の選定)
次に、ステップS313で、上記第1の投資比率の選定に代わる、第2の投資比率の選定について、図60乃至図64を参照しながら説明する。第2の投資比率の選定は、上記第1の実施の形態における図1、図2の構成と同様の構成を用い、図3、図11、図15、図18、図23の処理と同様の処理を行うので、これら共通点についての図示と詳細な説明は省略する。
第2の投資比率の選定では、第1の投資比率の選定における図40の投資比率選定処理の代わりに、図60に示す投資比率選定処理を行う。第2の投資比率の選定では、第1の投資比率の選定における図44、図45の理論株価算出及び税引後事業利益理論値算出の処理は、行わなくてよい。
図60は、第2の投資比率の選定における投資比率の選定動作を示すフローチャートであり、上記第1の投資比率の選定における図40と同様のステップには同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第2の投資比率の選定では、ステップS155までは図40と同様の処理を行うが、それと併行して組入推奨企業の選定を必ず行い(ステップS257)、組入推奨企業の最低組入比率を設定する(ステップS259)点で、第1の投資比率の選定と異なる。
まず、ステップS251で、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補企業のデータを読み込む。次いで、ステップS253で、投下資金総額のうち組入推奨企業の銘柄を組み込む一定枠を決定する。本発明の実施の形態においては、投下資金総額の50%を組入推奨銘柄の組入枠として設定する。なお、予め組入枠を設定することなく、個々の組入推奨銘柄の最低保有比率のみ設定することもできる。
次に、ステップS255で、第二次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補企業のデータを読み込む。そして、ステップS257で、第二次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補企業の中から組入推奨企業を選定する。本発明の実施の形態においては、企業別特許評価指数の値が5以上の企業のうち、第1の過大/過小評価企業の抽出基準である「特許戦略」因子得点と「「知的財産戦略経営」因子得点との因子得点差が正の値を示す過小評価企業の中で得点差の大きい上位10社の企業を選定する。
なお、組入推奨企業の選定基準として、第1の過大/過小評価企業の抽出基準である因子得点差ではなく、第2の過大/過小評価企業の抽出基準である因子得点平均値差を用いることもできる。ここで、因子得点平均値差ではなく因子得点差を優先させたのは、後者の方が各企業の現在までの成果に対する評価と将来的な潜在成長力に対する評価とのギャップをより直接的に反映していると考えられるためである。
なお、組入推奨企業の選定は、過小評価企業のみならず、過大評価企業から、もしくは過大/過小評価企業いずれからも行うことができる。短期的な株式の売買を目的として株式ポートフォリオの運用を行うのであれば、過大/過小評価企業双方を組入れることが望ましい。あるいは、株式ポートフォリオの長期的な運用を目的とするのであれば、潜在成長性の高い過小評価企業のみを組入れることが望ましい。
図61には、上記第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補のうち、「特許戦略」因子得点と「知的財産戦略経営」因子得点との因子得点差の大きい順に過小評価企業を並べたリストの一部を示している。また、企業別特許評価指数の値が5以上で、かつ因子得点差の大きい上位10社の企業のところで線引きがなされており、これらの企業が組入推奨銘柄企業となることを示している。
組入推奨企業を選定したら、ステップS259において、株式ポートフォリオ選択システム100は、組入推奨企業の株式ごとに最低組入比率を設定する。最低組入比率の設定法としては、(1)各組入推奨企業に最低組入比率を均等に配分する方法、(2)上記ステップS257までに得られた組入推奨企業のランキングや総合得点に応じて比率を配分する方法等がある。最低組入比率の全組入推奨企業についての合計は、100%未満であればよい。本発明の実施の形態においては、ステップS253で、組入推奨銘柄の組入枠を50%に設定しているため、この枠内で、各組入推奨企業に対する最低組入比率を5%に設定し、これを均等に配分する。
次に、ステップS261で、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補のうち過小評価企業(78社)の個別銘柄ごとに、期待リターンとリスクとを算出する。本第2の投資比率の選定では、理論超過収益(α’)、理論感応度(β’)、及び理論残差(ε’)を算出しなくても良く、現実株価に基づく超過収益(α)、感応度(β)、及び残差(ε)を用いて期待リターンとリスクを算出すれば良い。まず、個別銘柄の期待リターンはE(R)(i=1・・・78)で表し、以下の式47に基づき算出する。
期待リターンE(R)=超過収益(α)+感応度(β)×インデックス*のリターン+残差(ε) ・・・(式47)
次いで、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補の個別銘柄のリスクを算出する。リスクはσRi(i=1・・・78)で表し、個別銘柄の期待リターンの分散σを算出して求める。具体的には、以下の式48に示す通りである。
個別銘柄の分散σRi =Σi=1 78[{E(R)−E(R*)}]/(78−1) ・・・(式48)
なお、リスクσRiは、分散σRi の正の平方根である。
次に、ステップS263で、ステップS257において選定した組入推奨企業10社についてステップS259で設定した最低組入比率5%を、投資比率選定に先立ってあらかじめ組入れる。
ステップS265で、ステップS263で設定した組入推奨企業10社の最低組入比率5%を与件としつつ、個別銘柄ごとのα、β、ε(i=1・・・78)に基づいて、株式ポートフォリオ全体の期待リターンとリスクとを算出する。まず、株式ポートフォリオ全体の期待リターンは、E(Rp)で表し、以下の式49に基づき算出する。
期待リターンE(Rp)=α+β×E(R*) ・・・(式49)
ここで、αは、株式ポートフォリオ全体の超過収益(α)を表す。βは、株式ポートフォリオ全体の感応度(β)を表す。E(R*)は、インデックス*の期待リターンを表す。株式ポートフォリオ全体の超過収益(α)は、個別銘柄のα(i=1・・・78)を組入比率で加重平均したものである。また、株式ポートフォリオ全体の感応度(β)は、同じく個別銘柄のβ(i=1・・・78)を組入比率で加重平均したものである。
次いで、株式ポートフォリオのリスクを算出する。株式ポートフォリオ全体のリスクはσRpで表し、株式ポートフォリオ全体の分散σRp を算出して求める。具体的には、以下の式50に示す通りである。
株式ポートフォリオ全体の分散σRp
=β σR* +Σi=1 78(X σεi ) ・・・(式50)
ここで、β は、株式ポートフォリオ全体の感応度(β)の分散を表す。σR* は、インデックス*の分散を表す。X(i=1・・・78)は、個別銘柄の保有比率を表す。σεi は、個別銘柄の残差(ε)の分散を表す。なお、株式ポートフォリオ全体のリスクσRpは、分散σRp の正の平方根である。
このとき、右辺第1項は、インデックス*の分散と、株式ポートフォリオ全体のβの分散とを掛け合わせたものであるから、その値はインデックスの値動きによって影響を受ける。それに対して、第2項は、個別銘柄の残差(ε)の標準偏差(σεi)と、個別銘柄の保有比率(X)とによって決まり、インデックス*のリスクとは関係がない。このことから、右辺第1項をシステマティック・リスク(市場リスク)とよび、第2項をアンシステマティック・リスク(非市場リスク)とよぶ。つまり、株式ポートフォリオ全体のリスクは、インデックス*の値動きに起因する要素と、株式ポートフォリオ独自の出来事に起因する要素とから成り立っている。
次に、ステップS267で、組入推奨銘柄の最低組入比率を考慮し、株式ポートフォリオの期待リターンとリスクとに基づいて効率的フロンティアを導出する。具体的には、まず、第一次株式ポートフォリオ組入銘柄選択候補で構成される株式ポートフォリオの期待リターンを一定にした場合、上記組入推奨銘柄についてはそれぞれ設定された最低組入比率を下回らず、且つリスクを最小化する株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率(最小リスク保有比率)を算出する。次いで、株式ポートフォリオの期待リターンを様々な値に変化させることによって、それぞれの期待リターンに対応した最小リスク保有比率を算出する。そして、このようにして得られた期待リターン別の最小リスク保有比率の集合を効率的フロンティアとして導出する。
上述の第1の投資比率の選定においては、保有銘柄のあらゆる組合せの中で、最小のリスクとなる保有比率を求めていた。これに対し第2の投資比率の選定においては、「組入推奨銘柄の保有比率は最低組入比率を下回らない」という制約の中で、最小のリスクとなる保有比率を求めている。従って、第2の投資比率の選定における最小リスクは、第1の投資比率の選定における最小リスクより大きくなる場合もある。しかし、第2の投資比率の選定は、組入推奨銘柄を優先的に組入れると同時に、他の銘柄と組み合わせることによって、リスクを最小化するものである。
ステップS161以降の処理は、第1の実施の形態についての図40と同様である。
図62に、効率的フロンティアと資本市場線との接点において算出された株式ポートフォリオ組入れ銘柄の最適保有比率を示している(S161〜S163)。またこれら組入れ銘柄のα、β、残差εの分散σεi 及び標準偏差σεi、ポートフォリオ全体の期待リターンE(Rp)及び分散σRp 、リスク分散σRpを示している。この図からわかるように、組入推奨企業として10社が選ばれ、その他の組入れ企業として7社が選ばれている。しかし、上記その他の組入れ企業7社のうち2社は、最適保有比率が0に極めて近い値となっている。
図63に、株式ポートフォリオ組入れ銘柄の各々について決定された実組入比率を示している(S164)。上記最適保有比率が0.5%に満たない上記2社は、実際にはポートフォリオに組み入れないことが、この図から明らかである。これで、ステップS315のポートフォリオの作成が完了した。
なお、第2の投資比率の選定方法はこれに限られるものではない。例えば、効率的フロンティアと資本市場線との接点において最適保有比率を算出することなく、組入推奨銘柄のみに全ての投下資金を配分して株式ポートフォリオを形成することも可能である。
(2−8.第2の投資比率の選定による株式ポートフォリオの株価騰落率及びリターンの推移結果)
次に、ステップS317で、ポートフォリオの推移を演算し必要に応じて出力をする。図64に、株式ポートフォリオの株価騰落率及びリターンの推移結果の一例を挙げる。この例では、組入推奨企業に最低組入比率を均等配分する方法により組入推奨企業全体での株式ポートフォリオへの組入比率を50%としたものと、組入推奨企業の組入比率を0%としたものについての株価推移を示している。
この図に示すのは、株式ポートフォリオの2004年度1年間の実績リターンと、同時期のTOPIX動向との比較を表すグラフである。実績リターンを比較すると、組入推奨企業に組入比率を均等配分する方法により組入推奨企業全体での組入比率を50%としたものも、組入推奨企業の組入比率を0%としたものも、いずれもTOPIXより大きなリターンを得ていることがわかる。
また、組入推奨企業に組入比率を均等配分する方法により組入推奨企業全体での組入比率を50%としたものの方が、組入推奨企業の組入比率を0%としたものよりも、時間推移に従って実績リターンの伸びが大きいことが判る。これは、潜在的競争力の評価により特に抽出した組入推奨企業を株式ポートフォリオに一定比率組入れることにより、企業の有する成長性に基づく株価の上方修正力の恩恵を享受できたものと評価できる。
このように本発明に係る株式ポートフォリオ選択装置によれば、オフバランスの無形資産を代表する特許から得られる指標を使用するとともに、企業の経営財務に関する情報から得られるデータをも加味する。また、各々の企業が事業戦略、研究開発戦略、及び知的財産戦略の三位一体による経営戦略をいかに構築・運用して、企業価値の増大を図っているのかを総合的に評価する。従って、そのような企業評価に基づいて、より好ましい株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業の選択を行うことができる。さらに、株式ポートフォリオ組入れ銘柄企業を選択する場合と同様の基準に基づいて理論株価を算出することによって、期待リターンのより高い、及び/又はリスクをより低減した投資比率をも選定することができる。
従って、本発明に係る株式ポートフォリオ選択装置を用いることにより、インデックスに連動しながら、これまでよりも収益性の高い株式ポートフォリオを構築する新たなサービスシステムを投資家等に提供することが可能となる。また、新たな株式ポートフォリオ選択方法をサービスとして提供することも可能になる。さらには、株式ポートフォリオ選択システムを制御するプログラムそのものを提供することで、各クライアントが個人的にこのシステムを活用して、収益性の高い株式ポートフォリオを実現することも可能になる。
この発明に係る株式ポートフォリオ選択装置、株式ポートフォリオ選択方法及び株式ポートフォリオ選択プログラムは、研究開発費関連指標と、経営・財務関連指標と、知的資産関連指標とを含む企業評価指標に基づき企業を総合的に評価し、その評価結果に基づいて、収益性の高い株式ポートフォリオを提供する目的に適用する。

Claims (18)

  1. 企業評価指標に基づいて株式ポートフォリオを選択する装置であって、
    知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを取得するデータ取得手段と、
    前記企業評価指標関連データを用いて企業評価を行い企業ランキングを作成する企業ランキング作成手段と、
    前記企業ランキングから所定数の企業を選択して株式ポートフォリオ組入れ銘柄とする株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段と、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業に対して投下する資金の投資比率を選定する投資比率選定手段と、
    前記投資比率に基づき前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄に対応した株式ポートフォリオを作成する株式ポートフォリオ作成手段と、を備える
    ことを特徴とする株式ポートフォリオ選択装置。
  2. 業種及び/又は企業を選択する業種企業選択手段を更に備える
    ことを特徴とする請求項1記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  3. 前記企業ランキング作成手段は、
    前記データ取得手段により取得された企業評価指標関連データから少なくとも1の知的資産関連指標が含まれるように所定数の企業評価指標を選択する指標選択手段と、
    前記指標選択手段により選択された企業評価指標を用いて主成分分析を行い前記企業ごとの主成分得点を算出する主成分分析手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  4. 前記企業ランキング作成手段は、
    前記データ取得手段により取得された企業評価指標関連データを用いて因子分析を行って因子を抽出し、該因子に基づき前記企業評価指標を集約する因子分析手段と、
    前記因子分析手段により抽出された因子と知的資産関連収益等の諸収益を表す収益関連指標とを用いて重回帰分析を行い、前記収益関連指標に対し統計的有意を示す因子の企業評価指標を選択する重回帰分析手段と、
    前記重回帰分析手段により選択された企業評価指標を用いて主成分分析を行い企業ごとの主成分得点を算出する主成分分析手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  5. 前記企業ランキング作成手段は、
    前記知的資産関連指標を含む企業評価指標を観測変数とする共分散構造分析を行うことにより各企業ごとの企業評価を行う共分散構造分析手段を備える
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  6. 前記共分散構造分析手段は、
    「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「知的財産戦略経営」因子をそれぞれ潜在変数とし、
    前記知的資産関連指標を含む複数の企業評価指標をそれぞれ観測変数とし、
    前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない前記各観測変数の独自因子と、前記「知的財産戦略経営」因子を規定する要因のうち、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない変動要因と、をそれぞれ誤差変数とし、
    前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子の各々が、前記「知的財産戦略経営」因子に影響する係数をそれぞれ潜在変数間係数とし、
    前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の各々が、前記複数の企業評価指標のいずれかに影響する係数をそれぞれ潜在変数−観測変数間係数とした
    因果モデル情報を入力する入力手段と、
    前記入力手段により入力された因果モデル情報に基づき、前記因果モデルを表す行列方程式を生成する因果モデル生成手段と、
    前記行列方程式に含まれる前記観測変数の分散共分散行列を、前記因果モデル情報で仮定された前記係数の関数により表す共分散構造を生成する共分散構造生成手段と、
    前記データ取得手段により取得された前記企業評価指標関連データに基づき分散共分散行列を算出する企業評価指標関連データ分散共分散行列算出手段と、
    前記共分散構造を前記企業評価指標関連データ分散共分散行列に最も近似させることにより前記係数の推定値を算出する係数推定値算出手段と、
    前記係数推定値算出手段により算出された前記各係数の推定値と前記企業評価指標関連データ分散共分散行列とに基づき所定の適合度指標の値を算出し、当該適合度指標の値に基づき前記因果モデルの適合度を検定する適合度検定手段と、
    前記適合度検定手段による検定の結果、前記因果モデルと前記企業評価指標関連データとの乖離が許容範囲内にあると判断した場合に、前記行列方程式を確定する因果モデル確定手段と、
    前記確定した行列方程式に含まれる各係数と、前記各観測変数と、に基づいて前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の因子得点を算出する因子得点算出手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項5記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  7. 前記企業ランキング作成手段は、
    「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子、及び「知的財産戦略経営」因子をそれぞれ潜在変数とし、
    前記知的資産関連指標を含む複数の企業評価指標をそれぞれ観測変数とし、
    前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない前記各観測変数の独自因子と、前記「知的財産戦略経営」因子を規定する要因のうち、前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子では規定されない変動要因と、をそれぞれ誤差変数とし、
    前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子の各々が、前記「知的財産戦略経営」因子に影響する係数をそれぞれ潜在変数間係数とし、
    前記「財務・収益力」因子、「特許戦略」因子、「研究開発投入性向」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の各々が、前記複数の企業評価指標のいずれかに影響する係数をそれぞれ潜在変数−観測変数間係数とした
    因果モデル情報に基づいて共分散構造分析を行い、
    前記「特許戦略」因子及び前記「知的財産戦略経営」因子の因子得点を算出する共分散構造分析手段を備え、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段は、
    前記共分散構造分析手段により算出された各企業の前記「特許戦略」因子得点と前記「知的財産戦略経営」因子得点との得点差を算出し、及び/又は、前記共分散構造分析手段により算出された各企業の前記「特許戦略」因子得点と前記「研究開発投入性向」因子得点との和の全企業平均値に対する大小関係と、前記各企業の前記「知的財産戦略経営」因子得点の全企業平均値に対する大小関係とをそれぞれ算出する、得点差及び/又は因子得点全企業平均値大小関係算出手段と、
    前記「知的財産戦略経営」因子得点を前記「特許戦略」因子得点から減算した得点差が第1の所定値以上の企業、及び/又は過小評価、前記「特許戦略」因子得点と前記「研究開発投入性向」因子得点との和が全企業平均値より大きく、且つ、前記「知的財産戦略経営」因子得点が全企業平均値より小さい企業を、過小評価企業として抽出する過小評価企業抽出手段と、
    前記過小評価企業抽出手段により抽出された企業群を第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補とする株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補決定手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  8. 前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段は、
    前記「知的財産戦略経営」因子得点を前記「特許戦略」因子得点から減算した得点差が第2の所定値以下の企業、及び/又は、前記「特許戦略」因子得点と前記「研究開発投入性向」因子得点との和が全企業平均値より小さく、且つ、前記「知的財産戦略経営」因子得点が全企業平均値より大きい企業を、過大評価企業として抽出する過大評価企業抽出手段を更に備え、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補決定手段は、前記過小評価企業抽出手段により抽出された企業群及び前記過大評価企業抽出手段により抽出された企業群の両者を前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補とする
    ことを特徴とする請求項7記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  9. 前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段は、
    各企業について、当該企業が保有する知的資産の属する所定の技術分野における出願件数全体若しくは有効特許件数全体に占める当該企業の件数シェアと、
    所定期間における所定の技術分野の特許出願件数全体若しくは有効特許件数全体の成長率に対する当該企業の特許出願件数若しくは有効特許件数の成長率の差を示す超過成長率と、
    各企業の所定期間の特許出願件数若しくは有効特許件数全体に占める所定の技術分野ごとの特許出願件数若しくは有効特許件数のシェアを指数化し当該企業の技術開発分野の集中・多角化度合いを示す特許集中度と、
    被異議申立比率、他社引用回数比率、及び不服審判件数比率を含む経過情報を用いて算出した個別特許ごとの他社牽制力及び権利化意欲度合いに基づき各企業の保有する特許全体に占める優位特許の割合を示す優位特許比率と、
    の全て若しくは少なくともいずれか一つを用いて企業別技術評価値を算出する企業別技術評価値算出手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか一項記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  10. 前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段は、
    前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補に含まれる各企業について、
    当該企業が保有する知的資産の属する所定の技術分野における出願件数全体若しくは有効特許件数全体に占める当該企業の件数シェアと、
    所定期間における所定の技術分野の特許出願件数全体若しくは有効特許件数全体の成長率に対する当該企業の特許出願件数若しくは有効特許件数の成長率の差を示す超過成長率と、
    各企業の所定期間の特許出願件数若しくは有効特許件数全体に占める所定の技術分野ごとの特許出願件数若しくは有効特許件数のシェアを指数化し当該企業の技術開発分野の集中・多角化度合いを示す特許集中度と、
    被異議申立比率、他社引用回数比率、及び不服審判件数比率を含む経過情報を用いて算出した個別特許ごとの他社牽制力及び権利化意欲度合いに基づき各企業の保有する特許全体に占める優位特許の割合を示す優位特許比率と、の全て若しくは少なくともいずれか一つを用いて企業別技術評価値を算出する企業別技術評価値算出手段と、
    前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補から、前記過大評価企業のうち前記企業別技術評価値の上位所定数の企業を除外し、かつ前記過小評価企業のうち前記企業別技術評価値の下位所定数の企業を除外する第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補足切り手段と、を備え、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補決定手段は、
    前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補足切り手段による除外の対象外となった残りの企業群を第二次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補とする
    ことを特徴とする請求項7又は8記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  11. 前記企業別技術評価値算出手段は、
    前記企業が保有する知的資産の属する各技術分野における出願件数全体若しくは有効特許件数全体に占める前記企業の技術分野別出願件数若しくは有効特許件数シェアを、前記企業の保有する知的資産の属する全ての技術分野について算出する企業別技術分野別件数シェア算出手段と、
    前記企業別技術分野別件数シェアを全技術分野について総計したものを当該技術分野の数で除すことにより件数シェアの全技術分野平均値を算出する全技術分野件数シェア平均値算出手段と、
    所定期間における所定の技術分野の特許出願件数全体若しくは有効特許件数全体の成長率に対する当該企業の特許出願件数若しくは有効特許件数の成長率の差を示す超過成長率を算出する企業別超過成長率算出手段と、
    前記全技術分野件数シェア平均値を前記企業別超過成長率で乗じることにより企業別修正相対件数シェアを算出する企業別修正相対件数シェア算出手段と、
    前記企業の所定期間の特許出願件数若しくは有効特許件数全体に占める所定の技術分野ごとの特許出願件数若しくは有効特許件数のシェアを二乗し、当該二乗したシェアを前記企業の保有する知的資産の属する全ての技術分野について加算して当該企業の特許集中度を算出する企業別特許集中度算出手段と、
    前記企業別修正相対件数シェアを前記企業別特許集中度で乗ずることにより特許評価指数を算出する企業別特許評価指数算出手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項9又は10記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  12. 前記投資比率選定手段は、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業の株式に対して均等に投下資金を配分することを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  13. 前記投資比率選定手段は、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業の株式ごとの理論株価を算出する理論株価算出手段と、
    前記理論株価に基づいて前記各企業の株式ごとの市場株価に対する理論超過収益、市場株価の変動に対する前記各企業の株式ごとの株価の理論感応度、及び前記各企業の株式ごとの独自の値動きを示す理論残差を含む第1のパラメータ群を算出する第1のパラメータ算出手段と、
    前記第1のパラメータ群に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の期待リターンを算出する期待リターン算出手段と、
    前記第1のパラメータ群に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄のリスクを算出するリスク算出手段と、
    前記期待リターンの値を一定として前記リスクの値を最小とするような前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を、各期待リターンの値に対して算出して効率的フロンティアを導出する効率的フロンティア導出手段と、
    無リスク資産のリスクフリーレートデータを取得する無リスク資産リスクフリーレートデータ取得手段と、
    前記無リスク資産のリスクフリーレートを定点とすると共に前記効率的フロンティアに接する資本市場線を導出する資本市場線導出手段と、
    前記効率的フロンティアと前記資本市場線との接点における前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を算出する最適保有比率算出手段と、
    前記最適保有比率に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄をなす各企業ごとの株式に対する資金投下比率を算出する資金投下比率算出手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  14. 前記投資比率選定手段は、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択手段により選択された各企業の株式ごとの理論株価を算出する理論株価算出手段と、
    株価インデックスの値動きデータを取得する株価インデックスデータ取得手段と、
    前記各企業の株式ごとの株価の値動きデータを取得する個別株式データ取得手段と、
    前記株価インデックスの値動きと前記各企業の株式ごとの株価の値動きとの比較分析を行い、前記株価インデックスの収益に対する前記各企業の株式ごとの超過収益、前記株価インデックスの値動きに対する前記各企業の株式ごとの株価の感応度、及び前記株価インデックスの値動きとは独立した前記各企業の株式ごとの独自の株価の値動きを示す残差を含む第2のパラメータ群を算出する第2のパラメータ算出手段と、
    前記理論株価に基づき前記第2のパラメータ群を補正する補正手段と、
    補正された前記第2のパラメータ群に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の期待リターンを算出する期待リターン算出手段と、
    補正された前記第2のパラメータ群に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄のリスクを算出するリスク算出手段と、
    前記期待リターンの値を一定として前記リスクの値を最小とするような前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を、各期待リターンの値に対して算出して効率的フロンティアを導出する効率的フロンティア導出手段と、
    無リスク資産のリスクフリーレートデータを取得する無リスク資産リスクフリーレートデータ取得手段と、
    前記無リスク資産のリスクフリーレートを定点とすると共に前記効率的フロンティアに接する資本市場線を導出する資本市場線導出手段と、
    前記効率的フロンティアと前記資本市場線との接点における前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を算出する最適保有比率算出手段と、
    前記最適保有比率に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄をなす各企業ごとの株式に対する資金投下比率を算出する資金投下比率算出手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  15. 前記投資比率選定手段は、
    前記第二次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補として選択された企業のうち、所定の基準を満たす組入推奨企業を選定する組入推奨企業選定手段と、
    全ての組入推奨企業についての保有比率の合計が投資総額の100%未満となる範囲内において最低組入比率を各組入推奨企業の株式ごとに設定する最低組入比率設定手段と、
    株価インデックスの値動きデータを取得する株価インデックスデータ取得手段と、
    前記第一次株式ポートフォリオ組入れ銘柄候補となる各企業の株式ごとの株価の値動きデータを取得する個別株式データ取得手段と、
    前記株価インデックスの値動きと前記各企業の株式ごとの株価の値動きとの比較分析を行い、前記株価インデックスの収益に対する前記各企業の株式ごとの超過収益、前記株価インデックスの値動きに対する前記各企業の株式ごとの株価の感応度、及び前記株価インデックスの値動きとは独立した前記各企業の株式ごとの独自の株価の値動きを示す残差を含む第2のパラメータ群を算出する第2のパラメータ算出手段と、
    前記第2のパラメータ群に基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄の期待リターンを算出する期待リターン算出手段と、
    前記第2のパラメータ群に基づいて株式ポートフォリオ組入れ銘柄のリスクを算出するリスク算出手段と、
    少なくとも前記各最低組入比率の組入推奨銘柄を保有しつつ、前記期待リターンの値を一定として、且つ前記リスクの値を最小とするような、前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を、各期待リターンの値に対して算出して効率的フロンティアを導出する効率的フロンティア導出手段と、
    無リスク資産のリスクフリーレートデータを取得する無リスク資産リスクフリーレートデータ取得手段と、
    前記無リスク資産のリスクフリーレートを定点とすると共に前記効率的フロンティアに接する資本市場線を導出する資本市場線導出手段と、
    前記効率的フロンティアと前記資本市場線との接点における前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄の保有比率を算出する最適保有比率算出手段と、
    前記最適保有比率に基づいて前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄をなす各企業の株式ごとの資金投下比率を算出する資金投下比率算出手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項10記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  16. 前記理論株価算出手段は、
    前記知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを用いて企業の税引後総事業利益理論値を算出する税引後総事業利益理論値算出手段と、
    前記企業評価指標関連データを用いて企業の投下資本コストを算出する投下資本コスト算出手段と、
    前記税引後総事業利益理論値から前記投下資本コストを控除して理論経済的超過利益を算出する理論経済的超過利益算出手段と、
    前記知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを用いて企業の現在価値の導出のための割引率を算出する割引率算出手段と、
    前記理論経済的超過利益を前記割引率で除して理論市場付加価値を算出する理論市場付加価値算出手段と、
    前記知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを用いて企業の自己資本を算出する自己資本算出手段と、
    前記市場付加価値と前記自己資本とを加算して企業の推定時価総額を算出する推定時価総額算出手段と、
    前記推定時価総額を発行済み株式総数で除して理論株価を算出する理論株価算出手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項13又は14記載の株式ポートフォリオ選択装置。
  17. 企業評価指標に基づいて株式ポートフォリオを選択する株式ポートフォリオ選択方法であって、
    知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを取得するデータ取得ステップと、
    前記企業評価指標関連データを用いて企業評価を行い企業ランキングを作成する企業ランキング作成ステップと、
    前記企業ランキングから所定数の企業を選択して株式ポートフォリオ組入れ銘柄とする株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択ステップと、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択ステップにより選択された各企業に対して投下する資金の投資比率を選定する投資比率選定ステップと、
    前記投資比率に基づき前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄に対応した株式ポートフォリオを作成する株式ポートフォリオ作成ステップと、を備える
    ことを特徴とする株式ポートフォリオ選択方法。
  18. 企業評価指標に基づいて株式ポートフォリオを選択するためのプログラムであって、
    知的資産関連指標を含む企業評価指標関連データを取得するデータ取得機能と、
    前記企業評価指標関連データを用いて企業評価を行い企業ランキングを作成する企業ランキング作成機能と、
    前記企業ランキングから所定数の企業を選択して株式ポートフォリオ組入れ銘柄とする株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択機能と、
    前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄選択機能により選択された各企業に対して投下する資金の投資比率を選定する投資比率選定機能と、
    前記投資比率に基づき前記株式ポートフォリオ組入れ銘柄に対応した株式ポートフォリオを作成する株式ポートフォリオ作成機能と、を
    コンピュータに実現させる
    ことを特徴とする株式ポートフォリオ選択プログラム。


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