JPWO2006093222A1 - インスリンの多量体形成阻害剤 - Google Patents

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Abstract

インスリン溶液にインスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質を添加して、インスリンの二量体形成および/又は六量体形成が阻害された超速効型インスリン製剤を提供する。

Description

本発明は、インスリンの二量体形成及び/又は六量体形成を阻害する方法に関する。さらに、インスリンの二量体形成及び/又は六量体形成を阻害する物質、及び当該物質が添加されてなるインスリン製剤に関する。
糖尿病は慢性の全身性代謝障害を引き起こす疾患であり、その発症原因はインスリン分泌不全またはインスリン抵抗性によることが知られている。糖尿病疾患者数は、全世界において2003年の時点で約2億人であるが、2025年には3億人を超えると予想されている。また、糖尿病治療薬の市場は、全世界において2000年の時点で約9000億円であるが、2006年には2兆円を超えると予想されている。このように、糖尿病をターゲットした市場規模は非常に大きく、これまで世界各地で盛んに研究が行われてきた。
糖尿病治療薬は、インスリン製剤および経口剤に大別でき、そのうちインスリン製剤は売り上げの約半分を占める。インスリン製剤として以前は野生型インスリンを用いていたが、投与してから薬効を示すまでに30分以上の時間を要するという難点があった。これは、野生型インスリンが溶液製剤中でまず二量体を形成し、さらに六量体を形成する性質を持っており、毛細血管へ容易に吸収され得る単量体へ解離するまでに時間を要することが原因である。そこで、野生型インスリンに部位特異的変異を導入して六量体化を妨げる試みが行われた。その結果として、短時間で薬効を示す超速効型のインスリン製剤、例えばリスプロインスリン(イーライリリー社)、アスパルトインスリン(ノボ・ノルディスク社)、およびアピドラインスリン(アベンティス・ファーマシューティカルス社)が開発された。このようなインスリンアナログは、製剤中で安定な六量体構造を形成しにくいため、投与後速やかに毛細血管へ吸収されて薬効を示す。しかし、部位特異的変異を導入したインスリンアナログは、野生型インスリンとはアミノ酸配列が異なることから、様々な問題点も生じている。例えば、インスリンアナログは野生型インスリンと比べて凝集しやすい性質があり、不安定であることが挙げられる(特許文献1又は2参照)。これは、二量体あるいは六量体形成により覆い隠されていたインスリンアナログの疎水面が、単量体化することによって溶媒へ露出してしまうことによる。
このような背景の中、より安定なインスリンアナログを開発する試みは今でも行われているが、インスリンの変異体を用いている限り、六量体形成を阻害することは実現できても、変異体の示す未知の副作用や物性に関しては、その危惧が消えることはない。
Bakaysa, D.L. et al., 米国特許第5,474,978号明細書 Michael, R. et al., 米国特許公開第20030104983号明細書
本発明者らは、野生型インスリンそのものを用いて超速効型インスリン製剤を開発することを目的に研究を開始した。まず、インスリンとインスリン受容体の相互作用を損なうことなく、二量体及び/又は六量体形成を阻害することを試みた。さらに、野生型インスリンに二量体及び/又は六量体形成を阻害する物質を添加することによって、超速効型インスリン製剤を実現することが可能であると考えた。
すなわち、本発明の課題の一つは、野生型インスリンの二量体形成および/又は六量体形成を阻害する方法を提供することである。また、本発明の別の課題は、野生型インスリンの二量体形成および/又は六量体形成を阻害する物質を提供すること、及びそのような物質を用いて超速効型インスリン製剤を製造することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、インスリンのレセプター結合活性を損なわずに、インスリンの二量体および六量体形成を阻害できる物質を見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
(1)インスリン溶液に、インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質を添加することにより、インスリンの二量体形成および/又は六量体形成を阻害する方法。
(2)インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質が、化合物、ペプチド又はタンパク質であることを特徴とする、(1)の方法。
(3)インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質が、インスリンとインスリンレセプターとの結合を阻害することなく二量体形成及び/又は六量体形成を阻害するものである、(1)又は(2)のいずれかの方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかの方法に用いられるインスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質からなるインスリン単量体形成促進剤。
(5)インスリンの二量体および/または六量体形成を阻害する活性を有するペプチドであって、以下の(a)〜(d)のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド:
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において、第1,4,5,8,9,12及び16位のアミノ酸残基以外の1若しくは数個のアミノ酸残基に置換、欠失、挿入及び/又は付加を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号1または2記載のアミノ酸配列、又は
(d)配列番号1または2記載のアミノ酸配列において、第2、3、6、7、10、11、13、14及び15位のアミノ酸残基のうちの1若しくは数個のアミノ酸残基に置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列。
(6)配列番号2記載のアミノ酸配列において、第2、3、6、7、10、11、13、14及び15位のアミノ酸残基のうちの1若しくは数個のアミノ酸残基に置換、欠失、挿入および/または付加を有し、第1、4、5、8、9、12及び16位のアミノ酸残基のうちの少なくとも5残基が保持されてなる、インスリンの二量体および六量体形成を阻害するペプチド。
(7)(5)または(6)のペプチド及びインスリンを含む医薬組成物。
(8)インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用を有し、インスリン単量体形成を促進する物質を選択する方法であって、以下の工程を含む方法:
1)候補物質を、インスリン二量体又はインスリン六量体と接触せしめ、インスリン単量体形成を測定する工程、
2)配列番号2記載の配列を含むペプチドまたはそのアナログとインスリン二量体又はインスリン六量体を接触せしめ、インスリン単量体形成の被検対照とし、前記工程1)のインスリン単量体形成と比較する工程、及び
3)候補物質から、配列番号2記載の配列を含むペプチドまたはそのアナログと同程度以上のインスリン単量体形成能を有する物質を選択する工程。
(9)インスリン含有製剤を製造する方法であって、(8)の方法を用いてインスリン単量体形成能を有する物質を同定する工程、並びに、該物質をインスリンを含有する溶液に添加する工程を含む方法。
設計したペプチドの配列。インスリンB鎖のアミノ酸配列のうち、B鎖αへリックス領域でインスリン二量体界面に存在する残基を一重下線で示した。また、αへリックスを形成しやすいように組み込んだグルタミン酸残基とリジン残基を二重下線で示した。 INHD1ペプチドまたはINDH2ペプチドによるインスリン六量体形成の阻害を示したゲル濾過クロマトグラムである。対照として、INHDペプチド非存在下の結果も示している(Insulin)。5μMのインスリン溶液の場合、六量体がメインピーク(溶出量約12〜13mlのピーク)として観測されるが、INHD1ペプチドを添加したことにより、インスリン六量体が大幅に減少している。 BIACORE2000による、インスリンとインスリンレセプターの相互作用解析。Fc融合ヒトインスリンレセプターを固定化し、インスリン溶液を時間ゼロのときに添加した。全測定においてインスリンの濃度は5μM である。(a) ZnCl2存在下、非存在下におけるインスリンのインスリンレセプター結合実験。インスリンはZnCl2存在下では六量体を形成し、非存在下では単量体として存在する。(b) INHD1およびINHD2ペプチド存在下、非存在下におけるインスリンのインスリンレセプター結合。溶媒にはZnCl2を添加しているため、ペプチド非存在下ではインスリンは六量体を形成している。ペプチドを添加することにより、六量体形成が阻害され、インスリンとインスリンレセプターの相互作用が向上している。
以下、本発明を具体的に説明する。
<インスリン多量体形成阻害剤>
本発明のインスリンの二量体形成および/又は六量体形成を阻害する方法に用いる物質は、インスリン二量体又は六量体形成面と相互作用し、該二量体形成および/又は六量体の形成を阻害する物質である。本明細書においては、このような物質を、インスリン多量体形成阻害剤、インスリン二量体および/又は六量体形成阻害剤、またはインスリン単量体形成促進剤などと呼ぶ。
インスリン多量体形成阻害剤は、低分子化合物、ペプチド又はタンパク質から選択される物質であることが好ましい。
インスリン二量体および六量体の立体構造についてはすでに報告されており、インスリン同士が相互作用する二量体および六量体形成面が明らかになっている(Blundell, T.L. et al., Nature 231, 506-511 (1971)、Baker, E.N., Philos. Trans. R. Soc. London 319, 369-456 (1998)、Derawenda, U. et al., Nature 338, 594-596 (1989)、Badger, J. Acta Crystallogr., Sect. B 47, 127-136 (1991))。インスリン二量体形成面とは、B鎖αへリックスとそれに続くβストランドからなる残基から構成され、B鎖(配列番号3)の第5、8、9、12、13、16、20−29位のアミノ酸残基が関与している。一方、インスリン六量体形成面とは、A鎖(配列番号5)の第7、8、9、10、13位のアミノ酸残基とB鎖の第3、7、10、11、14、17位のアミノ酸残基から構成されている。B鎖のαへリックスは二量体形成にも六量体形成にも重要であるが、関与している面は異なる。
本発明のインスリン多量体形成阻害剤は、インスリンの二量体形成面と六量体形成面のいずれかと相互作用する物質、または、両方の面と相互作用する物質のいずれであっても良いが、二量体形成面と相互作用することが好ましい。インスリンは六量体を形成する前段階として、まず二量体を形成する。言い換えれば、インスリン同士では、六量体形成面における相互作用よりも二量体形成面おける相互作用の方が強い。つまり、インスリンの二量体形成面に相互作用する物質は、効果的にインスリンの二量体および六量体形成を阻害することができる。
インスリン多量体形成阻害剤として、インスリンの六量体形成面と相互作用するものを設計することも可能である。
インスリンとインスリンレセプターとの相互作用については、カイネティックス解析によって、インスリンレセプターに対して2分子以上のインスリンが結合すること、および、インスリンはインスリンレセプターに対して2つの結合面(結合面1および2)を持つことが知られている。インスリンのインスリンレセプターに対する結合面については、部位特異的変異法や化学修飾法などを用いて研究されており、結合面1には、A鎖Leu13とB鎖Leu17の両残基が、結合面2にはA鎖Gly1、A鎖Ile2、A鎖Val3、A鎖Tyr19、A鎖Asn21、B鎖Val12、B鎖Tyr16、B鎖Gly23、B鎖Phe24、B鎖Phe25、およびB鎖Tyr26の各残基が含まれることが知られている(De Meyts, P. et al. Nat. Rev. Drug. Discov. 1, 769-783 (2002))。
インスリンは、まず結合面1においてインスリンレセプターと相互作用(一次結合)した後、結合面2において相互作用(二次結合)することによって、生理機能を発現すると考えられている。インスリンの機能発現には結合面2における相互作用が必須であるが、一次結合を形成していない結合面2における単独の相互作用においては非常に微弱なインスリン活性しか示さないことから、インスリンが効果的な機能発現を行うためには、結合面1を介した一次結合が重要であることがわかる。また、インスリンの効果的な機能発現に留まらず、インスリンとインスリンレセプターとの親和性の向上、および他のレセプター、例えばインスリン様成長因子レセプターとインスリンレセプターとの選択性においても、結合面1が重要な役割を果たしていることが明らかとなっている(Schlein, M. et al. Biochemistry 40, 13520-13528 (2001)、Pillutla, R.C. et al. J. Biol. Chem. 277, 22590-22594 (2002)、Schaffer, L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 4435-4439 (2003))。
そこで、本発明に用いるインスリン多量体形成阻害剤としては、インスリンの二量体形成および六量体形成を阻害し、かつ、インスリンとインスリンレセプターとの相互作用を大きく損なわない物質が好ましい。当該物質が、多量体形成面と同時に、インスリンとインスリンレセプターの結合面にも相互作用を有する場合は、インスリンの結合面1よりも結合面2とより高い相互作用を有する物質であれば、より好ましい。これは、上記で述べたように、インスリンが効果的な機能発現を行うためには、インスリンがインスリンレセプターに対して、まず結合面1において相互作用することが必須であることによる。
当該物質が多量体形成を阻害することはゲルろ過実験などによって分子量を測定することにより判定することができ、また、インスリン受容体結合を阻害しないことはBIACORE等入手可能な市販の装置やキットを用い、インスリンとインスリン受容体の相互作用実験により容易に判定することができる。
インスリン二量体の立体構造において、インスリンB鎖のαへリックスは、もう一方のインスリンB鎖のαへリックスと相互作用し、また、C末領域もそれぞれβストランドを形成することによって相互作用している。したがって、結合面1と相互作用することなく、インスリンの二量体形成面に対して相互作用する物質は、インスリンB鎖αヘリックスおよびそれに続くC末端領域に対応するペプチド又は当該ペプチドと類似の構造を有する物質であることが好ましい。
<インスリン多量体形成阻害剤の製造方法>
本発明に用いるインスリン多量体形成阻害剤を製造するには、上記の特性を備えた物質を適宜選択、又は、設計すればよい。当該化合物を設計、選択する方法としては、後述するインスリン多量体形成阻害剤のスクリーニング方法に従い、以下に述べるインスリン多量体形成阻害剤の設計方法により設計される化合物をリファレンス化合物とし、インスリン単量体形成能を検定することにより、効率的にスクリーニングを実施することが出来る。
(1)インスリン多量体形成阻害剤の設計
前述のとおり、本発明のインスリン多量体形成阻害剤は、インスリンB鎖αヘリックスおよびそれに続くC末端領域に対応するペプチド又は当該ペプチドと類似の構造を有する物質であることが好ましい。かかる物質を設計するには、インスリンの立体構造情報をプロテインデータベース(www.rcsb.org/pdb/)等のデータベースから入手し、当該領域の分子座標情報を利用することにより、適切な目的化合物の構造を設計することができる。例えば、二量体界面に含まれるB鎖Val12のメチル基、B鎖Glu13のカルボキシアミド基、およびB鎖Tyr16の芳香環の3つの官能基を模倣した化合物を設計する場合、各官能基の原子間距離をインスリン立体構造上において算出する。これら官能基と原子間距離の条件に合致する低分子化合物を、Available Chemical Database(MDL Information System Inc., San Leandro, USA)などの化合物データベースにおいて、Sybyl(Tripos Inc., St. Louis, USA)やIsis/Base(MDL Information System Inc., San Leandro, USA)などの検索ソフトを用いて探索し、候補化合物を抽出する。得られた候補化合物群がインスリンの多量体形成を阻害することをゲルろ過実験などで評価することによって、二量体界面を模した低分子化合物を合理的に得ることができる。二量体界面を模倣した化合物を設計する上で、選択する官能基は上記の組み合わせに限定されるものではなく、例えば、B鎖His5、Gly8、Ser9、Val12、Glu13、Tyr16、Gly20の側鎖から選択される任意の3つ、もしくはそれ以上の官能基の組み合わせであっても良い。ただし、用いる官能基は、上記各アミノ酸残基のいずれかに必ずしも限定されるものではない。
(2)インスリン多量体形成阻害活性を有するペプチドの設計
インスリン多量体形成阻害剤として、インスリンB鎖αヘリックスおよびそれに続くC末端領域に対応するペプチド又は当該ペプチドと類似の構造を有するペプチドを選択する場合、当該ペプチドはインスリンB鎖のαへリックスと容易に相互作用させるために、よりαへリックスの構造をとりやすくするように改変されたものでもよい。例えば、αへリックスを形成し易くするために、該ペプチドにおいて3残基間隔でグルタミン酸残基とリジン残基を組み入れることができる。
なお、αへリックスを形成するペプチドを作製する方法としては、ペプチドをリンカーによって環化する方法(Judice, J.K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 13426-13430 (1997))や、金属イオンをキレートさせる方法(Kelso, M.J. et al., J. Am. Chem. Soc. 122, 10488-10489 (2000))などが確立されている。また、αへリックスを形成するタンパク質を鋳型として必要な残基を組み込む方法(Zondlo, N.J. et al., J. Am. Chem. Soc. 121, 6938-6939 (1999)、Schepartz, S.A. et al., U.S. Patent Application 20030166240)なども報告されており、いずれもインスリンの二量体および六量体形成を阻害するペプチドを設計する方法として適用することができるが、該方法に限定されるものではない。
インスリンB鎖のアミノ酸配列としては配列番号3のアミノ酸配列が挙げられる。このうちのインスリン二量体界面に位置する残基が六量体形成や二量体形成の阻害に重要と考えられる。配列番号3に記したインスリンB鎖では第5、8、9、12、13、16、20位のアミノ酸残基が二量体界面に対応する。したがって、第5〜20位のアミノ酸配列(配列番号4)を有するペプチドを本発明のインスリン多量体形成阻害剤として用いることができる。
さらに、配列番号4のアミノ酸配列を改変したアミノ酸配列を有するペプチド(配列番号1または2など)を用いることもできる。これらの配列は、配列番号4のアミノ酸配列において、3残基ごとにグルタミン酸残基とリジン残基を導入し、さらに、第9位のグルタミン酸をグルタミンに置換したものである。
この配列番号1または2に記したペプチドでは第1、4、5、8、9、12、16位のアミノ酸残基が二量体界面に対応する。
インスリンB鎖(配列番号3)の第13位はグルタミン酸であるが、静電的な反発のため、六量体形成に好ましくない残基として知られている(Bentley, G.A. et al., J.Mol.Biol.228, 1163-1176 (1992))。したがって、配列番号3の第13位(配列番号4の第9位)に対応するアミノ酸残基は、本発明において改変し、設計したペプチド(配列番号2)ではグルタミン残基へと置換した(図1)。
なお、配列番号1,2または5のペプチド、それらの改変体などは通常のペプチド合成法に従って作製することができる。また、これらのペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いた遺伝子組換え法によって作製してもよい。遺伝子組換え法を利用する場合、上記ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、インスリンをコードする塩基配列(例えば、GenBank Accession No.J00265などに登録されている塩基配列)に基づいて設計されたプライマーを用いたPCR法によって得ることができる。また、上記ペプチドが野生型の配列に対してアミノ酸置換を含む場合は、そのような置換が生じるように部位特異的変異法によってポリヌクレオチドを改変すればよい。さらに、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドをコードするセンス鎖と、その相補配列を有するアンチセンス鎖をそれぞれ合成し、それらをアニーリングさせることによっても得ることができる。上記のようにして得られたポリヌクレオチドを大腸菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞などの適当な宿主細胞において発現させ、精製することによって目的ペプチドを得ることもできる。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入は通常の手段によって行うことができ、例えば、プラスミドを用いる方法やウイルスベクターを用いる方法などが挙げられる(Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., “Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition”, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989).)。
インスリンB鎖(配列番号3)のうち、二量体界面を形成する第5、8、9、12、13、16、20位(配列番号4の第1、4、5、8、9、12、16位)のアミノ酸残基が六量体形成や二量体形成の阻害に重要であると考えられるため、それ以外の残基に1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を有するアミノ酸配列であっても良い。
また、配列番号3または4の配列はN末端側及び/またはC末端側に1または複数のアミノ酸が付加されたものであってもよい。ただし、二量体形成及び六量体形成阻害剤の分子量が大きくなりすぎるとインスリンとの複合体の分子量が大きくなり、血管へ取り込まれにくくなる恐れがあることから、付加するアミノ酸残基はN末端及び/又はC末端側に合計20残基以下であることが望ましい。また、より小さい分子とするためには、付加するアミノ酸残基はN末端及び/又はC末端側に合計5残基以下であることがより望ましい。さらに、配列番号3の配列における、第5、8、9、12、13、16、20位(配列番号4の第1、4、5、8、9、12、16位)、および改変したアミノ酸配列を有するペプチドにおけるこれらに対応する部位においても、1乃至は2残基のアミノ酸の置換や類似したアミノ酸への置換があっても良く、該配列に限定されるものではない。
なお、上記置換は保存的置換が好ましく、保存的置換としては、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換などが挙げられる。
インスリンB鎖αへリックスに対応するペプチド(配列番号1または2)の場合、二量体界面を形成する第1、4、5、8、9、12、16位が六量体形成や二量体形成の阻害に重要であると考えられ、それ以外の部位に1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加を有するアミノ酸配列であっても良い。
また、配列番号1または2の配列はN末端側及び/またはC末端側に1または複数のアミノ酸が付加されたものであってもよい。二量体形成及び六量体形成阻害剤の分子量が大きくなりすぎるとインスリンとの複合体の分子量が大きくなり、血管へ取り込まれにくくなる恐れがあることから、付加するアミノ酸残基はN末端及び/又はC末端側に合計30残基以下であることが望ましい。また、より小さい分子とするためには、付加するアミノ酸残基はN末端及び/又はC末端側に合計10残基以下であることがより望ましい。さらに、第1、4、5、8、9、12、16位においても、1乃至は2残基のアミノ酸の置換や類似したアミノ酸への置換があっても良く、該配列に限定されるものではない。なお、アミノ酸残基の置換は上述したような保存的置換が好ましい。
<インスリン多量体形成阻害剤のスクリーニング方法>
インスリン多量体形成阻害剤としては、上述した製造方法以外の方法によっても目的とする物質を得ることができる。
すなわち、候補物質を、インスリン二量体又はインスリン六量体と接触せしめ、インスリン単量体形成を測定する工程、配列番号2記載の配列を含むペプチドまたはそのアナログとインスリン二量体又はインスリン六量体を接触せしめ、インスリン単量体形成の被検対照とし、前記工程1)のインスリン単量体形成と比較する工程、および候補物質から、配列番号2記載の配列を含むペプチドまたは置換・欠失等を有するそのアナログと同程度、好ましくはそれらの10%以上のインスリン単量体形成能を有する物質を選択する工程を実行することによって、インスリン多量体形成阻害剤をスクリーニングすることもできる。
なお、インスリン単量体、二量体および六量体の形成は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーなどによって検出することができる。
選択された物質がインスリンの二量体および/または六量体形成面と相互作用するか否かについては、例えば、後述する実施例4に記載の方法に従って、BIACORE等入手可能な市販の装置やキットを用いて評価することができる。
インスリン多量体形成阻害剤は、インスリンと弱い相互作用をする物質であっても良い。その場合、インスリンとの解離定数が0.1nM以上を示す化合物であることが好ましい。これは、生理機能を発現するインスリンの血中濃度が0.1〜10nMであることによる。解離定数が0.1nM以上の物質では、インスリンへの結合部位に関わらず、インスリンの受容体結合を阻害することはない。一方で、製剤中のインスリン濃度は、例えば100U/mL(約600μM)と非常に高濃度であり、弱い相互作用をする物質であってもインスリンの六量体形成を阻害し得る。
なお、インスリンは結合面1においてインスリンレセプターと相互作用した際に構造変化を誘起することが知られており、この構造変化に伴ってインスリンの二量体または六量体形成面に相互作用をしていたインスリン多量体形成阻害剤がインスリンと解離することが期待される。
なお、インスリン多量体形成阻害剤を作用させる野生型インスリンとしては、ヒトインスリン、ウシインスリン、ブタインスリン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、およびアピドラインスリンなど、特に限定されるものではないが、ヒトに適用する場合は副作用低減の観点などからヒトインスリンが好ましい。また、プロタミン、亜鉛イオン、コバルトイオンなどが含まれていても良い。
本発明のインスリン多量体形成方法を通常のインスリン製剤の製剤工程のいずれかの段階で適用することによって、インスリンの二量体および六量体形成を阻害することが可能となり、結果として、製剤中でインスリンを単量体型で安定化することができる。つまり、本発明のインスリン多量体形成阻害剤をインスリンに配合することによって、インスリンが皮下に投与された後、直ちに作用する、超速攻型インスリン製剤を作製することができる。本発明のインスリン多量体形成阻害剤及びインスリンは、希釈剤、安定剤、保存剤、緩衝剤等の薬学的に許容され得るキャリアと組合わせて配合してもよい。
本発明のインスリン製剤の剤形は、特に限定されるものではないが、例えば、注射剤や、経鼻投与剤、経肺吸収剤、経皮・経粘膜適用製剤として用いることができる。また、肺や皮膚などからインスリンを直接吸収させる場合においてもインスリンは単量体であることが望ましいと報告されており、本発明のインスリン製剤は注射剤以外の剤型として用いることもできる。したがって、本発明には汎用性がある。さらに、インスリン単量体を安定的に保存することにも利用できる。インスリン製剤に関しては、(株)日本臨牀社 日本臨牀 増刊号 「新時代の糖尿病学3」 2002年 P179−309等に詳細が記述されており、本発明のインスリン多量体形成阻害剤が添加された、本発明の超速効型インスリン製剤も同様に製剤化することが可能である。
本発明の超速攻型インスリン製剤は、糖尿病の予防や治療などに用いられる医薬組成物として有用である。本発明の阻害剤をインスリン溶液に添加する場合、インスリンに対し、0.1〜10000倍の濃度で添加することが好ましい。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]インスリン二量体及び六量体形成を阻害するペプチドの設計(図1)
インスリン六量体の特徴として、B鎖αへリックスとそれに続くC末領域が二量体形成面を構築していること、およびB鎖Glu13の静電的な反発により六量体形成界面が非常に弱い相互作用をしていること、が挙げられる。そこで、B鎖第5〜29位に対応するペプチドを以下に示すように一部改変した。
(1)3残基間隔でグルタミン酸残基とリジン残基を組み込み、αへリックスを形成しやすくした。配列番号1に設計したペプチドのアミノ酸配列、配列番号3にインスリンB鎖の配列を示す。インスリンB鎖のαへリックス領域の配列のうち、図1で一重下線にて表示したHis5、Gly8、Ser9、Val12、Glu13、Tyr16、およびGly20が主にインスリン二量体界面に存在している。そこで、これらの残基を除き、3残基間隔でグルタミン残基やリジン残基を導入した。
(2)B鎖Glu13に対応する部位に関してはGlnへと置換し、静電的な反発を抑制するようにデザインした。
(3)B鎖Leu17に対応する部位に関しては立体障害を生じにくいAlaへ、B鎖Cys19に関しては酸化されないようにSerへと置換した。以下、当該ペプチドをInsulin Hexamer Disruptor(INHD1)ペプチドと呼ぶ(配列番号1)。さらに、INDH1ペプチドのうち重要な部位を特定するため、インスリンB鎖のαへリックスに対応する部位(5〜20番)のみを切り出したペプチドを設計し、INDH2と名付けた(配列番号2)。
[実施例2]インスリンの六量体形成
インスリン六量体と単量体を別々に検出するために、ゲルろ過クロマトグラフィーを行った。当該実験濃度(5μM)において六量体を形成させるため、溶媒としてPBSに100μMのZnClを添加したものを用いた。これは、亜鉛イオンがインスリン六量体を安定化することによる。図2に結果を示す。5μMのインスリン溶液の場合、六量体がメインピークとして観測されており、単量体の比率は極めて低い。
[実施例3]INDHペプチドによるインスリン六量体形成の阻害
INDHペプチドによりインスリン六量体形成が阻害されることを示すために、INDHペプチド存在下におけるインスリン溶液のゲルろ過クロマトグラフィーを行った。5μMのインスリン、および500μMのINDH1ペプチドを混合した際の実験結果を図2に示す。INDH1ペプチド存在下においてはインスリン六量体のピークが大幅に減少しており、INDH1ペプチドによりインスリン六量体形成が阻害されていることが明らかとなった。
さらに、INHD2ペプチドについても、INHD1ペプチドに比べ六量体形成阻害活性が若干低いものの、同様な結果が得られた(図2)。以上の結果、配列番号2に示すペプチド配列のうち、第1、4、5、8、9、12位のアミノ酸残基が重要であることが示すことができた。
[実施例4]ペプチド存在下におけるインスリンとインスリン受容体の相互作用
(1)Fc融合ヒトインスリンレセプターの構築
Fc融合ヒトインスリンレセプター(Bass, J. J. Biol. Chem. 271, 19367 (1996))をコードする遺伝子配列を構築し、ベクターpEF−BOS(Nucleic Acids Res. 1990 September 11; 18(17): 5322.)へ組み込んだ。哺乳細胞FreeStyle293−F細胞を37℃において培養し、細胞濃度1×10(個/mL)に調製した。セルフェクチン(Invitrogen)とインキュベートしたインスリンレセプター発現プラスミドを添加し、さらに2日間培養した。得られた培養上清をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、Fc融合ヒトインスリンレセプターを得た。
(2)相互作用解析
市販のインスリン(シグマ社製)及び(1)の方法により得たFc融合インスリン受容体を用いて、インスリンとインスリンレセプターの相互作用解析を行った(BIACORE2000、BIACORE社製)。まず、PBSに100μM ZnCl2を添加した溶媒と添加していない溶媒を用いて、5μMのインスリン溶液を作成した。ゲルろ過実験により、ZnCl2存在下ではインスリンは主に六量体として存在し(図2)、ZnCl2非存在下では主に単量体として存在することが知られている。それぞれのインスリン溶液を用いて、インスリンレセプターとの相互作用を観測したところ、ZnCl2存在下では相互作用するインスリン量が低下していることが判明した(図3a)。これは、亜鉛イオン存在下においてインスリンが六量体を形成し、インスリンレセプターとの相互作用が抑制されたためと考えられる。
続いて、ZnCl2存在下において六量体を形成しているインスリンに対し、500μMのINDH1およびINDH2ペプチドを添加し、インスリンレセプターとの相互作用を観測した。両者ともに受容体結合が大幅に増加し、インスリン単量体とほぼ同レベルになることが明らかとなった(図3b)。INHD1およびINHD2ペプチドを添加することにより、インスリンの六量体形成が阻害されたためと考えられる。
また、当該ペプチドによってインスリンとインスリンレセプターの結合が阻害されていない。インスリンには2つのレセプター結合部位がそれぞれ独立に存在するため、六量体形成を阻害しても、レセプター結合が損なわれないことがわかった。
本発明によれば、インスリンのレセプター結合活性を損なわずに、インスリンの二量体形成および六量体形成を阻害することが可能になる。さらに、野生型インスリンを用いた超速効型インスリン製剤を作製することができる。

Claims (9)

  1. インスリン溶液に、インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質を添加することにより、インスリンの二量体形成および/又は六量体形成を阻害する方法。
  2. インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質が、化合物、ペプチド又はタンパク質であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質が、インスリンとインスリンレセプターとの結合を阻害することなく二量体形成及び/又は六量体形成を阻害するものである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法に用いられるインスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用する物質からなるインスリン単量体形成促進剤。
  5. インスリンの二量体および/または六量体形成を阻害する活性を有するペプチドであって、以下の(a)〜(d)のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド:
    (a)配列番号4記載のアミノ酸配列、
    (b)配列番号4記載のアミノ酸配列において、第1,4,5,8,9,12及び16位のアミノ酸残基以外の1若しくは数個のアミノ酸残基に置換、欠失、挿入及び/又は付加を有するアミノ酸配列、
    (c)配列番号1または2記載のアミノ酸配列、又は
    (d)配列番号1または2記載のアミノ酸配列において、第2、3、6、7、10、11、13、14及び15位のアミノ酸残基のうちの1若しくは数個のアミノ酸残基に置換、欠失、挿入および/または付加を有するアミノ酸配列。
  6. 配列番号2記載のアミノ酸配列において、第2、3、6、7、10、11、13、14及び15位のアミノ酸残基のうちの1若しくは数個のアミノ酸残基に置換、欠失、挿入および/または付加を有し、第1、4、5、8、9、12及び16位のアミノ酸残基のうちの少なくとも5残基が保持されてなる、インスリンの二量体および六量体形成を阻害するペプチド。
  7. 請求項5または6記載のペプチド及びインスリンを含む医薬組成物。
  8. インスリンの二量体形成面又は六量体形成面と相互作用を有し、インスリン単量体形成を促進する物質を選択する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (i)候補物質を、インスリン二量体又はインスリン六量体と接触せしめ、インスリン単量体形成を測定する工程、
    (ii)配列番号2記載の配列を含むペプチドまたはそのアナログとインスリン二量体又はインスリン六量体を接触せしめ、インスリン単量体形成の被検対照とし、前記工程1)のインスリン単量体形成と比較する工程、及び
    (iii)候補物質から、配列番号2記載の配列を含むペプチドまたはそのアナログと同程度以上のインスリン単量体形成能を有する物質を選択する工程。
  9. インスリン含有製剤を製造する方法であって、請求項8に記載の方法を用いてインスリン単量体形成促進能を有する物質を同定する工程、並びに、該物質をインスリンを含有する溶液に添加する工程を含む方法。
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