JPWO2006085697A1 - 脳血管疾患に対するアドレノメデュリンと間葉系幹細胞の併用療法 - Google Patents

脳血管疾患に対するアドレノメデュリンと間葉系幹細胞の併用療法 Download PDF

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Abstract

本発明は、脳血管疾患の予防又は治療のための方法及び医薬キット、具体的には、間葉系幹細胞及びアドレノメデュリンとを併用する方法及び医薬キットに関する。また本発明は、該医薬キットの製造方法に関する。

Description

本発明は、脳血管疾患の予防又は治療用の医薬キット、及び脳神経機能の改善用の医薬キットに関する。また本発明は、該医薬キットの製造方法に関する。さらに本発明は、脳血管疾患の予防又は治療方法に関する。
脳血管疾患には、動脈硬化を起こして細くなった脳血管の血流が途絶える脳血栓と、心臓内で凝固した血液の固まりが脳血管に詰まる脳塞栓などがある。脳血栓は、高齢者に起こりやすく、知覚、運動、意識障害などが徐々に進行するが、脳塞栓は、突然に半身麻痺や言語障害によって始まることが多い。血栓又は塞栓により血流が途絶えた部分の脳細胞は短時間で壊死し、致命的な場合が多いが、救命されても脳細胞壊死は回復不能であり、後遺症が一生残る。現在の医療及び外科手術の発展にもかかわらず、脳梗塞は依然として発病及び死亡の主要因である。
間葉系幹細胞(MSC)は多分化能を有し、移植したMSCにはレシピエントの脳において神経細胞及び内皮細胞に分化するものもある(Chen J,Li Y,Wang L,Zhang Z,Lu D,Lu M,Chopp M.Stroke.32:1005−1011,2001年)。最近の研究では、MSCが、特に損傷部位において血液脳関門を通過することができることが示されている(Chen J et al.,2001年(前掲)、Chen J.et al.,Circ Res.92:692−699,2003年、Chopp M,Li Y.Lancet Neurol.1:92−100,2002年)。さらに、実験脳梗塞動物の脳へのMSCの移植は、神経学的機能の回復を改善することが示されている(Chen J et al.,2001年(前掲)、Chopp M et al.,2002年(前掲))。MSC移植の効果は、移植したMSCの数に依存する(Chen J et al.,2001年(前掲))。しかしながら、移植後のMSCの生存能は比較的低い(Mangi AA.et al.,Nat Med.9:1195−1201,2003年)。従って、脳梗塞の再生処置に対するMSC治療の適用に関して、MSC移植の効果を高める新しい手法が望まれている。
一方、アドレノメデュリン(AM)は、ヒト褐色細胞腫から最初に単離された強力な血管拡張性ペプチドである(特開平7−196693号公報、Kitamura K.et al.,Biochem Biophys Res Commun.192:553−560,1993年)。最近の研究では、アドレノメデュリンDNAの筋肉内投与により、後肢虚血モデルにおいて、治療となりうるAktの活性化を介した血管形成が誘導されたことが示されている(Tokunaga N.et al.,Circulation.109:526−531,2004年)。さらに、AMは種々の細胞に対して抗アポトーシス作用を発揮することが示されている(Kato H.et al.,Endocrinology.138:2615−2620,1997年)。また、PI3K/Akt経路による心筋虚血/再潅流傷害におけるAMの抗アポトーシス作用が示されている(Okumura H.et al.,Circulation.109:242−248,2004年)。別の報告では、内因性AMは、代償機構により虚血脳において低酸素によりアップレギュレートされることが示されている(Serrano J.et al.,Neuroscience.109:717−731,2002年)。以前の報告では、AMによる前処理によって、ラット脳梗塞モデルにおいて脳傷害が低減し、神経障害が改善したことが示されている(Watanabe K.et al.,Acta Neurochir(Wien).143:1157−1161,2001年)。
そこで、本発明は、述した実状に鑑み、脳血管疾患を効果的に予防又は治療するための方法及び手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、1)アドレノメデュリン(AM)注入又は間葉系幹細胞(MSC)移植により、脳虚血境界領域において、血管形成が誘導され、神経細胞のアポトーシスが阻害されたこと、2)AMの注入によって、MSC移植の血管形成能及び抗アポトーシス作用が増大したこと、3)AMにより、移植されたMSCそれ自体のアポトーシスが阻害され、生着MSC数が増大したこと、並びに4)AM及びMSCの併用療法により、AM注入又はMSC移植単独よりも神経学的機能に顕著な改善が誘導されたことを確認し、AMとMSCとの併用が脳血管疾患の予防又は治療に有効であるという知見を得、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、間葉系幹細胞を含有する組成物、及びアドレノメデュリンを含有する組成物を異なる容器に含むことを特徴とする脳血管疾患の治療用又は予防用医薬キットに関する。
上記医薬キットにおいて、間葉系幹細胞を含有する組成物は静脈内投与されることが好ましい。また、アドレノメデュリンを含有する組成物は静脈内投与されることが好ましい。
上記医薬キットにおいて、間葉系幹細胞は、投与対象の患者に由来することが好ましい。また、間葉系幹細胞を含有する組成物、及びアドレノメデュリンを含有する組成物は、同時に投与される、又は別々に投与されるものである。
上記医薬キットに関して、脳血管疾患は、限定されるものではないが、例えば急性脳梗塞又は慢性脳梗塞である。
また本発明は、間葉系幹細胞を含有する組成物、及びアドレノメデュリンを含有する組成物を異なる容器に含むことを特徴とする脳神経機能の改善用医薬キットに関する。
本発明はまた、間葉系幹細胞を含有する組成物及びアドレノメデュリンを含有する組成物を含む医薬キットの製造方法であって、
(a)被験体から採取した骨髄液由来の間葉系幹細胞(MSC)を希釈又は培養するステップ、
(b)培養したMSCを薬学的に許容される担体中に懸濁するステップ、
(c)アドレノメデュリンを薬学的に許容される担体と混合するステップ、
を含む、上記方法に関する。
さらに本発明は、有効量の間葉系幹細胞及び有効量のアドレノメデュリンを被験体に投与することを含む、脳血管疾患の治療又は予防方法に関する。
本発明により、脳血管疾患の治療若しくは予防又は脳神経機能の改善に有用な医薬キット、及び脳血管疾患の治療又は予防方法が提供される。かかる医薬キットは、従来の間葉系幹細胞の移植又はアドレノメデュリンの投与の単独処置と比較して効果的に脳血管疾患を治療し、脳神経機能を改善するものである。従って本発明は、医療又は薬学分野において有用である。
図1は、移植したMSCの生着及び分化を示す写真である。赤色蛍光(PKH26)標識したMSCは脳虚血境界領域で高頻度に観察された。PKH26陽性MSC(赤色)には、神経マーカー(NeuN)(緑色)を発現(A)、星状細胞マーカー(GFAP)(緑色)を発現(B)、又は内皮細胞マーカー(vWF)(緑色)を発現(C)するものがあった。バー=20μm。
図2は、対照群(白丸)、MSC群(白四角)、AM群(黒丸)、及びMSC+AM群(黒四角)における、1日目、7日目及び14日目の神経学的スコアを示す。データは平均±SEMである。*P<0.05、対照群に対して、†P<0.05、MSC群に対して、‡P<0.05、AM群に対して。
図3は、脳虚血境界領域(上)及び対側非虚血性組織(下)におけるフォン・ビルブラント因子(vWF)染色の代表的な顕微鏡写真である。バー=25μm。
図4は、脳虚血境界領域(上)及び非虚血性組織(下)におけるvWF染色を用いた血管形成の定量分析を示すグラフである。
図5は、Ki67染色の代表的な顕微鏡写真である。バー=50μm。
図6は、Ki67陽性微細血管数の定量分析を示すグラフである。データは平均±SEMである。*P<0.05、対照群に対して、†P<0.05、MSC群に対して、‡P<0.05、AM群に対して。
図7は、脳虚血境界領域におけるTUNEL染色の代表的な顕微鏡写真である。MSC+AM群におけるTUNEL陽性細胞数(DAB、褐色)は他の3つの群よりも顕著に低減した。
図8は、TUNEL陽性細胞数の定量分析を示すグラフである。データは平均±SEMである。*P<0.05、対照群に対して、†P<0.05、MSC群に対して、‡P<0.05、AM群に対して。バー=20μm。
図9は、移植後のMSCアポトーシスの代表的な顕微鏡写真である。移植したMSCは赤色蛍光(PKH26)で標識した。TUNEL陽性細胞(緑色)は脳虚血境界領域で高頻度に観察された。AMの注入によりTUNEL陽性MSCは低減した(二重陽性細胞、重ね合わせ(Merged))。
図10のAは、3日目におけるTUNEL陽性MSC数の定量分析を示すグラフである。図10のBは、14日目における生着MSC数を示すグラフである。図10のCは、TUNEL陽性非MSC数の定量分析を示すグラフである。データは平均±SEMである。*P<0.05。バー=100μm。
以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2005年2月14日に出願された日本国特許出願第2005−36419号の優先権を主張するものであり、上記特許出願の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
本発明は、特定の理論に限定されるものではないが、以下の知見に基づくものである。すなわち、脳梗塞発症後のアドレノメデュリン(AM)注入によってラットの神経学的機能が改善したことが示され、またAMの注入によって脳虚血境界領域において新生血管形成が誘導された。一方、AMはPI3K/Akt経路を介して種々の細胞に対して強力な抗アポトーシス作用を有することが示されており(Kato H.et al.,Endocrinology.138:2615−2620,1997年及びOkumura H.et al.,Circulation.109:242−248,2004年)、本明細書に記載の実験では、AMの短期間にわたる注入によってTUNEL陽性細胞が顕著に低減したことが確認された。これらの結果は、アドレノメデュリン(AM)が脳虚血境界領域における血管形成の誘導及び神経細胞アポトーシスの阻害によって、少なくとも部分的に神経学的機能を改善することを示唆している。
また、本明細書に記載の実験では、間葉系幹細胞(MSC)が多量の血管形成因子であるVEGFを分泌することが示された。実際、MSCは脳虚血境界領域において血管形成を誘導し細胞アポトーシスを阻害することがin vivoで証明された(図3〜8)。さらに、移植したMSCの一部は神経細胞及び内皮細胞に分化した。従って、MSCは、その分化を介してだけではなく、その血管形成因子及び抗アポトーシス因子の分泌能により神経防御作用を有すると考えられる。しかしながら、移植したMSCの大部分は3日目においてTUNEL染色に陽性(アポトーシス細胞)であった。興味深いことに、AMの注入によりアポトーシス細胞数が有意に低減した。また、MSC移植とAM注入を行った場合には、MSC移植のみを行った場合と比較して生着MSC数が顕著に多かった。さらに、AMにより非MSCのアポトーシスが阻害されたが、このことは、AMの脳虚血境界領域に対する直接の防御作用を示唆している。さらに、AM注入とMSC移植の併用によって、MSC移植又はAM注入単独と比較して神経学的機能が顕著に改善された。
脳虚血の処置のためのMSCの移植は、最近研究されている(Chen J,Li Y,Wang L,Zhang Z,Lu D,Lu M,Chopp M,Stroke.32:1005−1011,2001年、Chen J.et al.,Circ Res.92:692−699,2003年、Chopp M,Li Y.Lancet Neurol.1:92−100,2002年、Mangi AA.et al.,Nat Med.9:1195−1201,2003年)。本発明者は、以前に鬱血性心不全患者におけるAM注入の安全性を実証している(Nagaya N.et al.,Circulation.2000;101:498−503)。従って、AM注入とMSC移植を用いた併用療法は、脳血管疾患の治療若しくは予防のため又は脳神経機能の改善のために新規で有望な治療方法となりうる。また、同様の病態を示す他の心血管疾患や肺、腎、肝疾患などの血流障害の病態にも有効な可能性が推測される。
1.間葉系幹細胞(MSC)の調製
本発明において使用する、間葉系幹細胞は、当技術分野で公知の方法により調製することができる(例えば、Pittenger MF et al.,Science.1999;284:143−147参照)。間葉系幹細胞は、好ましくは骨髄から得られる。本発明においては、移植後の拒絶反応を回避するため、間葉系幹細胞の投与対象となる被験体と同種の動物から、好ましくはその被験体から骨髄液などを採取し、同種動物又は該被験体由来の間葉系幹細胞を得ることが好ましい。特に、本発明の医薬キットを使用する対象の被験体に由来する間葉系幹細胞、すなわち自己由来の間葉系幹細胞を利用することが好ましい。ここで、被験体は、間葉系幹細胞を調製することができる動物であれば特に限定されるものではないが、哺乳動物、例えばヒト、ペット動物(ネコ、イヌなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヤギなど)などである。
骨髄には主に造血幹細胞と間葉系幹細胞が含まれる。例えば、骨髄液少量(数ml)を分離することなくそのまま培地(15%牛胎児血清を含むα−MEM)に入れて37℃で培養する。それにより、接着系細胞である間葉系幹細胞が増殖し、浮遊系細胞である造血幹細胞は排除され、1〜3週間で間葉系幹細胞が得られる。
また、得られた細胞が間葉系幹細胞であるか否かは、公知の細胞マーカーを利用して、例えば、CD29若しくはCD90の存在、又はCD34若しくはCD45の不在を検出することにより、確認することができる。
調製した間葉系幹細胞は、通常の方法に従って薬学的に許容される担体と混合するか、又は薬学的に許容される担体中に希釈若しくは懸濁することにより、該細胞の投与に適した組成物とすることができる。適切な担体の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラル油などが挙げられる。また、組成物には、医薬において通常用いられる賦形剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等などが含まれてもよい。また、間葉系幹細胞は、凍結乾燥した無菌の乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として供給し、その投与の前に、粉末又は濃縮物を適切な媒質に希釈又は懸濁することもできる。
間葉系幹細胞を含む組成物は、移植に適した投与剤形をとることができる。特に限定されるものではないが、例えば注射又は注入(静脈内注射、脳動脈への注射、開頭による脳実質への注入など)により間葉系幹細胞を含む組成物を投与する場合、投与剤形は、滅菌注射剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤などの形態であり、特に滅菌注射剤が好ましい。
2.アドレノメデュリン(AM)の調製
アドレノメデュリンとは、血管新生作用、血管拡張作用及び血圧降下作用などを有する公知のペプチドである(特開平7−196693号公報)。アドレノメデュリンの精製手法、並びにそのアミノ酸配列及び塩基配列を用いた作製方法も公知である。また、アドレノメデュリンの活性(例えば、血管形成作用、アポトーシス阻害作用など)を有する限り、使用するアドレノメデュリンのペプチドに、アミノ酸残基の欠失、置換若しくは付加、又は他の基若しくは物質の結合、修飾などが含まれていてもよい。このような望ましい活性を保持する改変型ペプチドの調製も当技術分野では周知である。
本発明においては、アドレノメデュリンは、通常の方法に従って薬学的に許容される担体と混合するか、又は薬学的に許容される担体中に溶解することにより、投与に適した組成物とすることができる。適切な担体の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラル油などが挙げられる。また、組成物には、医薬において通常用いられる賦形剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等などが含まれてもよい。アドレノメデュリンもまた、凍結乾燥した無菌の乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として供給することができる。そして、その投与の前に、粉末又は濃縮物を適切な媒質(例えば、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液など)に希釈又は懸濁し、液状組成物として投与することができる。
アドレノメデュリンを含む組成物は、投与経路に応じて適切な投与剤形をとることができる。例えば、静脈内経路、脳動脈への投与又は開頭による脳実質への注入により注射剤として投与される場合には、アドレノメデュリンを含む組成物の投与剤形は、滅菌注射剤、溶液剤などの形態であり、特に滅菌注射剤が好ましい。また、吸入投与により投与される場合には、噴霧剤を含有する溶液剤、懸濁剤などの形態でありうる。
3.脳血管疾患の治療又は予防
本発明は、間葉系幹細胞とアドレノメデュリンとを用いた脳血管疾患の治療又は予防に関する。また本発明の医薬キットは、間葉系幹細胞を含有する組成物とアドレノメデュリンを含有する組成物とを異なる容器に含むものである。本発明の医薬キットを用いて、脳血管疾患の治療若しくは予防、又は脳神経機能の改善のために、間葉系幹細胞とアドレノメデュリンの併用療法を行うことが可能となる。
本発明において対象となる被験体は、脳血管疾患を患う若しくは患うリスクのある被験体、又は脳神経機能が低下した被験体であれば特に限定されるものではない。例えば、動物、特にヒト、ペット動物(ネコ、イヌなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヤギなど)を挙げることができる。
本発明により治療又は予防することができる脳血管疾患又は障害は、脳血管の損傷などに起因するものであれば特に限定されるものではないが、虚血性疾患又は障害、例えば、脳虚血、脳梗塞(急性期脳梗塞及び慢性期脳梗塞)、脳血栓、脳塞栓及び脳卒中;並びに出血性疾患又は障害、例えば、脳内出血、脳血腫及びクモ膜下出血などを含む。本発明において「脳血管疾患」とは、このような疾患若しくは障害、又はその症候を意味する。
また、本発明により改善することができる脳神経機能は、特に限定されるものではないが、感覚、運動、反射、思考、行動、記憶、意識などが挙げられる。脳神経機能は、例えば、改変神経学的重篤度スコア(Chen J.,Stroke.2001;32:1005−1011)を用いて評価することができ、このスコアの低下は脳神経機能の改善を示す。また本発明によって意識障害を軽減し、生命予後を改善させる可能性がある。
本発明において、各組成物は、異なる容器に含まれる。例えば、バイアル、チューブ、シリンジ、アンプルなどの密閉可能な容器に、単回用量又は分割用量の各組成物を入れることができる。各組成物の用量は、投与経路、投与回数、剤形などに応じて異なるが、当技術分野で慣用の手法を用いて適宜決定することができる。
本発明において、各組成物は、当技術分野で一般的な方法に従って被験体に投与することができる。例えば限定されるものではないが、間葉系幹細胞を含有する組成物及びアドレノメデュリンを含有する組成物は、非経口的に、例えば静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、及び動脈内経路などにより投与することができ、好ましくは静脈内投与する。あるいは、一定期間にわたり持続注入するため、各組成物は、点滴、カテーテル、経皮パッチ又は埋込型浸透圧ポンプなどの当技術分野で公知の持続注入手段を用いて投与することも可能である。
本発明においては、有効量の間葉系幹細胞及び有効量のアドレノメデュリンを投与する。ここで「有効量」とは、対象の被験体において、脳血管疾患の治療若しくは改善、その症状の軽減、脳血管疾患の予防を行うのに十分な量であり、当業者であれば、種々の要因を考慮して適宜決定することができる。間葉系幹細胞を含有する組成物は、例えば1×10〜1×10細胞/投与、好ましくは1×10〜1×10/投与の投与量で、必要に応じて繰り返し投与することができる。また、アドレノメデュリンを含有する組成物は、例えば0.1〜4.0mg/日、好ましくは1.0〜2.0mg/日の投与量で、1時間〜7日、好ましくは12時間〜3日にわたり投与することができる。しかしながら、投与量は、組成物の投与経路、投与回数、患者の病状、年齢及び体重などを考慮して決定すべきである。
間葉系幹細胞を含有する組成物とアドレノメデュリンを含有する組成物は、同時に投与してもよいし又は別々に連続して若しくは一定期間をおいて投与してもよい。好ましくは、間葉系幹細胞を含有する組成物とアドレノメデュリンを含有する組成物を同時に投与し、その後、アドレノメデュリンを含有する組成物を、1時間〜7日、好ましくは12時間〜3日にわたり、持続投与する。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において得られた全てのデータは平均±SEMで表した。Student’s unpaired t−testを用いて、2つの群の差を比較した。4群におけるパラメータの比較は、one−way ANOVAにより、続いてニューマン−クールズ検定により行った。神経学的スコアの時間経過の比較は、two−way ANOVAにより反復測定値について行い、続いてニューマン−クールズ検定により行った。確率値<0.05で統計学的に有意とみなした。
〔実施例1〕
(1)脳梗塞モデルの作製
体重230〜236gの雄ルイスラット(Japan SLC Inc.,Hamamatsu,Japan)を全ての実験で使用した。中大脳動脈閉塞(MCAO)を、既に記載されているように管腔内糸により実施した(Chen J.et al.,Circ Res.2003;92:692−699)。この実験プロトコールは、国立循環器病センターの動物取扱委員の承認を得た。
(2)MSCの調製
間葉系幹細胞(MSC)の増殖は、既に記載されている方法に従って行った(Pittenger MF et al.,Science.1999;284:143−147)。簡単に説明すると、雄ルイスラットを犠牲にし骨髄を採取した。骨髄細胞は、100mmディッシュに入れ、10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したα−MEN中で培養した。非接着性造血細胞を培地の取り換えにより取り出した後、紡錘形の接着細胞は5〜7日までに可視できる対称的なコロニーを生じた。これらを約4〜5回の継代により5×10細胞以上になるまで増殖させた。これらの接着細胞を0.05%トリプシン及び2%EDTA(GIBCO)を用いて37℃にて3分かけて回収した。これらの細胞は、既に記載されているように蛍光活性化セルソーティング(FACS)により分析した(Nagaya N.et al.,Am J Physiol Heart Circ Physiol.2004;287:H2670−2676)。培養接着細胞の大部分はCD29(98±1%)及びCD90(99±1%)に陽性であり、CD34(2±1%)及びCD45(1±1%)に陰性だった。接着細胞の主要な集団がMSCであることを確認した。MSCは、培養の24時間後に、大量の抗アポトーシス因子及び血管形成因子(血管形成誘導因子(VEGF)を含む)を分泌した(960±14pg/10細胞)。
(3)MSC移植及びAM注入
(1)で行った2時間のMCAOの直後に、ラットをランダムに以下の4つの群に分けた:1)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)注射+ビヒクル注入(対照群、n=22)、2)MSC注射+ビヒクル注入(MSC群、n=28)、3)PBS注射+AM注入(AM群、n=22)、並びに4)MSC注射+AM注入(MSC+AM群、n=28)。PBSに懸濁したMSC(1×10細胞)又はPBS単独を尾静脈に注射した。4匹のラットに管腔内糸を用いないで擬似手術を行った。アドレノメデュリン(0.05μg/kg/分)又はビヒクルを、頸部皮下領域に埋め込んだミニ浸透圧ポンプ(Alzet,Palo Alto)を用いて7日間注入した。この試験に使用したAMの量は、顕著な低血圧を起こすことなく抗アポトーシス作用を有する(Okumura H.et al.,Circulation.2004;109:242−248)。
〔実施例2〕
本実施例においては、虚血性脳半球におけるMSCの分化を検出した。すなわち、赤色蛍光標識したMSCを、既に記載されているように移植して、MSCの分化を調べた(Jean S.et al.,Acta Histochem.2000;102:273−280)。
簡単に説明すると、懸濁したMSCを蛍光標識(PKH26赤色蛍光細胞リンカーキット、Sigma Chemical Co.)で標識した。標識の3分後に、FBSを1分間かけて添加して反応を停止させ、細胞をPBSで洗浄した。最近の研究では、PKH26による細胞標識の感度及び特異性がほぼ100%であり、移植細胞は宿主の脳において移植後少なくとも4ヶ月まで検出可能であることが示されている(Jean S.et al.,Acta Histochem.2000;102:273−280)。MCAOの14日後にラットを過剰量のペントバルビタールで麻酔した。凍結切片の調製のため、ラットを正常生理食塩水を用いて経心臓で潅流し、直後に脳を取り出した。ブレグマ−1〜1mmで解剖学的座標に対応するブロックを得て、液体窒素中で急速凍結した。一連の6μm薄の切片を得た。PKH26陽性細胞の数を盲目試験で計数し、5つの切片の平均として表した。MSCの分化を検出するために、免疫組織学的染色を行った。切片は、抗vWFポリクローナル抗体(1:200、DAKO)、ウサギ抗GFAP(1:500、DAKO)及びマウス抗NeuN(1:200、Chemicon)と共にインキュベートした後、それぞれフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合ウサギ免疫グロブリン抗体(DAKO)及びFITC結合マウス免疫グロブリン抗体(BD Pharmingen)と共にインキュベートした。
結果を図1に示す。静脈内投与したMSCは脳虚血境界領域に生着した。ある程度のMSCは神経マーカーであるNeuN及びGFAP陽性であった(図1A及びB)。他のMSCは血管内皮マーカーであるvWF陽性であった(図1C)。分化したMSCの数は、MSC群及びMSC+AM群において有意差がなかった。対側非虚血組織においてMSCはわずかにしか観察されなかった。
〔実施例3〕
本実施例においては、神経学的評価を行った。この神経学的評価は、改変神経学的重篤度スコアを用いて1、7及び14日目に実施した(Chen J.,Stroke.2001;32:1005−1011)。
簡単に説明すると、このスコアは、片側不全麻痺(ラットの尾による逆立て又は平面上でのラットの配置に対する応答)、感覚障害(配置、固有感覚)、竿秤試験(細い竿上での配置及び姿勢に対する応答、並びに落下前の時間)、無反射(耳介、角膜、驚愕)、並びに異常行動(発作、ミオクローヌス、筋張力障害)について動物を評価することにより得る。仕事の実施不能力について又は試験した反射の欠損について1ポイントを与える。
結果を図2に示す。1日目の神経学的重篤度スコアは4つの群において有意差がなかった(図2)。神経障害は全ての群において段階的に改善された。7日目及び14日目の両方でAM群及びMSC群には有意差がなかったが、7日目及び14日目におけるMSC群及びAM群のスコアは対照群よりも低かった(P<0.05)。興味深いことに、7日目及び14日目のスコアは4つの群のなかでMSC+AM群が最も低かった。従って、MSC移植とAM注入の併用により、脳神経機能が改善することが示された。
〔実施例4〕
本実施例においては、梗塞の大きさを測定した。
ラットは、1日目(各群、n=8)及び14日目(各群、n=8)に安楽死させた。パラフィン包理切片の調製のために、ラットを4%パラホルムアルデヒドで経心臓で潅流した。脳は等間隔(2mm)の7つの解剖学的ブロックに切断し、各切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。梗塞の大きさは、既に記載されているように「間接法」により測定し(Chen J.,Stroke.2001;32:1005−1011)、完全対側半球の大きさの割合(パーセンテージ)として表した。
結果を表1のa及びbに示す。MSC群又はAM群における1日目の梗塞の大きさは、対照群よりも有意に小さかった(P<0.05、表1a)。さらに、MSC+AM群における梗塞の大きさは4つの群のなかで最も小さかった。MSC群、AM群及びMSC+AM群における体重の増大率(%)は、対照群のものよりも高かった(P<0.05、表1b)。興味深いことに、体重の有意な増加は、処置後の神経学的スコアの低いラットにおいて観察された。以前の報告では、脳梗塞後の体重はビヒクル処置ラットよりもbFGF処置ラットにおいて高かったことが示されている(Jiang N.et al.,J Neurol Sci.1996;139:173−179)。これらの結果は、神経障害の早期回復により脳梗塞後の食物摂取障害が回復したことを示唆している。
対照:ビヒクル注入を行ったラット
MSC:MSC移植を行ったラット
AM:AM注入を行ったラット
MSC+AM:MSC移植とAM注入を行ったラット
データは平均±SEMである。
*P<0.05、対照群に対して
†P<0.05、MSC群に対して
‡P<0.05、AM群に対して
〔実施例5〕
血管形成は、14日目(各群、n=8)に分析した。ブレグマ−1〜1mmで解剖学的座標に対応するパラフィン切片を選択した。切片は、抗vWF抗体と共にインキュベートし、続いてビオチニル化抗ウサギ免疫グロブリン及びストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合体(DAKO)と共にインキュベートした。HRP反応は、ジアミノベンジジン(DAB)で検出した。血管形成を定量するために、既に記載されているようにして脳虚血境界領域及び対側非虚血性組織から8つの視野をランダムに選択し(Chen J.et al.,Circ Res.2003;92:692−699)、画像(×100倍率)を顕微鏡(ZWISS AXIOVERT 135)及びデジタルカメラ(ZWISS AXIO cam)を用いて取得した。各画像における抗vWF免疫反応領域を、既に記載されているように、ソフトウエア(Win Roof 5.0 Microsoft)を用いた画像解析により測定した(Sun Y.et al.,J Clin Invest.2003;111:1843−1851)。総褐色領域に相当する値は、100μm当たりの染色血管領域の平均%として表した。新たに形成された血管を検出するため、モノクローナル抗Ki67抗体(DAKO)を用いて、細胞増殖に関するマーカーであるKi67について組織切片を染色した。Ki67陽性微細血管の数を計数し、8視野における平均として表した。
結果を図3〜6に示す。擬似手術と比較して、脳虚血境界領域における血管形成はMCAO後に観察された(図3)。さらに、MSC移植又はAM注入により、脳虚血境界領域に血管形成が誘導され、特に、MSC移植及びAM注入の併用療法(MSC+AM)後に血管形成効果が顕著であった。定量分析により、MSC群及びAM群におけるvWF染色の領域が対照群のものよりも高いことが示された(対照群に対してP<0.05、図4)。MSC群とAM群とに有意差はなかった。興味深いことに、MSC+AM群におけるvWF染色の領域は、4つの群で最も高かった(MSC群及びAM群に対してP<0.05)。全ての群において非虚血性組織の新生血管形成には有意差はなかった(図3及び4)。
細胞増殖マーカーであるKi67の免疫染色の代表的な顕微鏡写真により、AM注入及びMSC移植によって脳虚血境界領域における新たに形成されたKi67陽性の微細血管の数が増大したことが示された(図5及び6)。
〔実施例6〕
本実施例においては、神経細胞及び移植MSCに対するAMの抗アポトーシス作用を検出した。
脳虚血境界領域に対するAMの抗アポトーシス作用を、MCAOの24時間後に調べた(各群、n=8)。パラフィン包理切片を、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介dUTP−ビオチンニック末端標識(TUNEL)アッセイのために調製した。TUNEL染色は、市販のキット(ApopTag Plus,Serological Corporation)を用いて行った。視野当たりのTUNEL陽性細胞数を計数し、8視野における平均として表した。
また、虚血性脳における移植MSCのアポトーシスを評価するため、さらに12匹のラット(MSC群、n=6;MSX+AM群、n=6)を3日目に安楽死させた。TUNEL染色(ApopTag Fluorescein kit)には凍結切片を使用した。TUNEL及びPKH26陽性細胞数を計数し、切片5つにおける平均として表した。
結果を図7〜10に示す。1日目に脳虚血境界領域においてTUNEL陽性細胞が高頻度に観察された(図7)。定量分析により、処置群におけるTUNEL陽性細胞数が対照群よりも低いことが示された(対照群に対してP<0.05、図8)。興味深いことに、MSC+AM群におけるTUNEL陽性細胞数はMSC群及びAM群よりも有意に少なかった(MSC群及びAM群に対してP<0.05)が、MSC群とAM群には有意差はなかった。
移植したMSCの大部分は3日目にTUNEL染色について陽性であった(図9)。脳虚血境界領域ではAMの注入によりTUNEL陽性MSCが減少した。定量分析により、MSC+AM群におけるアポトーシスMSCの数はMSC群よりも有意に少なかったことが示された(P<0.05、図10A)。結果として、14日目にMSC+AM群において生着したMSCの数は、MSC群よりも顕著に高かった(P<0.05、図10B)。神経細胞を含むTUNEL陽性非MSCの数もまたAM注入により低減した(図10C)。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
本発明により、脳血管疾患の治療若しくは予防又は脳神経機能の改善に有用な医薬キット、及び脳血管疾患の治療又は予防方法が提供される。かかる医薬キットは、従来の間葉系幹細胞の移植又はアドレノメデュリンの投与の単独処置と比較して効果的に脳血管疾患を治療し、脳神経機能を改善するものである。従って本発明は、医療又は薬学分野において有用である。

Claims (9)

  1. 間葉系幹細胞を含有する組成物、及びアドレノメデュリンを含有する組成物を異なる容器に含むことを特徴とする脳血管疾患の治療用又は予防用医薬キット。
  2. 間葉系幹細胞を含有する組成物が静脈内投与されるものである、請求項1記載の医薬キット。
  3. アドレノメデュリンを含有する組成物が静脈内投与されるものである、請求項1又は2記載の医薬キット
  4. 間葉系幹細胞が自己由来のものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬キット。
  5. 間葉系幹細胞を含有する組成物、及びアドレノメデュリンを含有する組成物が、同時に投与される、又は別々に投与されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬キット。
  6. 脳血管疾患が、急性脳梗塞又は慢性脳梗塞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬キット。
  7. 間葉系幹細胞を含有する組成物、及びアドレノメデュリンを含有する組成物を異なる容器に含むことを特徴とする脳神経機能の改善用医薬キット。
  8. 間葉系幹細胞を含有する組成物及びアドレノメデュリンを含有する組成物を含む医薬キットの製造方法であって、
    (a)被験体から採取した骨髄液由来の間葉系幹細胞(MSC)を培養するステップ、
    (b)培養したMSCを薬学的に許容される担体中に希釈又は懸濁するステップ、
    (c)アドレノメデュリンを薬学的に許容される担体と混合するステップ、
    を含む、上記方法。
  9. 有効量の間葉系幹細胞及び有効量のアドレノメデュリンを被験体に投与することを含む、脳血管疾患の治療又は予防方法に関する。
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