JPWO2006062094A1 - 新規癌抗原ペプチド及びその用途 - Google Patents

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Abstract

要約癌の治療及び/又は予防剤として有用な新規ペプチド及びその医薬用途が記載されている。これらのペプチドは、脳腫瘍細胞表面に発現するYKL-40抗原の特定の領域、すなわち、aa10-19、aa49-61、aa74-83、aa96-117、aa152-161、aa177-185、aa202-211、aa246-261又はaa326-354の領域内の連続するアミノ酸配列を有し免疫誘導活性を有するペプチドである。これらのペプチドは、生体に投与することにより癌の治療及び/又は予防に有用であり、また、生体外でT細胞を刺激して癌細胞に対する細胞障害活性を発揮するT細胞を誘導するのに有用である。

Description

本発明は、ヒトの癌に特異的なタンパク質、その部分ペプチド及びそれらの用途に関する。さらに本発明は、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、上記ペプチドによって刺激され誘導された活性化T細胞、該ペプチドとHLA分子の複合体を含む抗原提示細胞、該ペプチドに対する抗体、及び該ペプチド又は抗体を含む医薬に関する。
癌は全死亡原因の第一位を占める疾患であり、現在行われている治療は手術療法を主体に放射線療法と化学療法を組み合わせたものである。近年の新しい手術法の開発や新たな抗癌剤の発見にも関わらず、一部の癌を除いて、癌の治療成績はあまり向上していないのが現状である。
近年、分子生物学や癌免疫学の進歩で癌に反応する細胞障害性T細胞により認識される癌抗原や癌抗原をコードする遺伝子が同定されてき、抗原特異性免疫療法への期待が高まっている(非特許文献1を参照)。1991年、ベルギーLudwig研究所のBoonらは自己癌細胞株と癌反応性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法によりCD8陽性T細胞が認識するヒトメラノーマ抗原MAGE1を単離した(非特許文献2を参照)。Boonの報告後CD8陽性T細胞の認識する抗原としてtyrosinase(非特許文献3を参照)、MART1/MelanA(非特許文献4を参照)、gp100(非特許文献5を参照)などの単離が行われた。
免疫療法においては、副作用を軽減するため、その抗原として認識されるタンパク質は、正常細胞には少なく、癌細胞に過剰に存在していることが望ましい。また抗原タンパク中に、抗原を発現した腫瘍を直接障害する抗原特異的細胞障害性T細胞を誘導できるペプチド部分に加えて、細胞障害性T細胞の活性を補助する抗原特異的ヘルパーT細胞を誘導できるペプチド部分も含まれていることが望ましい。
最近、YKL−40がヒト悪性脳腫瘍に関連する血清中の腫瘍マーカーとして活用できる可能性が示唆されている。本タンパク質は、大部分のヒト悪性脳腫瘍に過剰に発現していると報告されている一方、本タンパク質は正常脳組織にはほとんど発現していない(非特許文献6を参照)。
秋吉毅,「癌と化学療法」、1997年、第24巻、p551−519 Bruggen P. et al., Science, 254:1643−1647(1991) Robbins P.F. et al., Cancer Res., 54:3124−3126(1994) Kawakami Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91(9):3515−3519(1994) Kawakami Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:6458−6462(1994) Meena K. et al.,Cancer Res., 62:4364−4368(2002)
本発明の目的は、癌の治療及び/又は予防剤として有用な新規ペプチドを提供することである。また、本発明の目的は、該ペプチドの癌の治療及び/又は予防剤としての用途並びに抗原提示細胞を処理する処理剤としての用途を提供することである。さらに本発明の目的は、該ペプチドとHLA分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞、及びペプチドとHLA分子の複合体を選択的に結合する単離T細胞並びにそれらの癌の治療及び/又は予防剤の用途を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する上記YKL-40中の特定の領域に存在する部分ペプチドが、抗原提示細胞により提示されて、該ペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を活性化及び増殖させる能力(免疫誘導活性)を有し、このため、該ペプチドが癌の治療及び/又は予防であり、また、該ペプチドと接触した抗原提示細胞や、該抗原提示細胞と接触したT細胞が癌の治療及び/又は予防であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、配列表の配列番号2で表されるアミノ酸配列中の7個以上の連続したアミノ酸から成るペプチドであって配列番号2のaa10-19、aa49-61、aa74-83、aa96-117、aa152-161、aa177-185、aa202-211、aa246-261又はaa326-354の領域内の連続するアミノ酸配列を有し免疫誘導活性を有するペプチド、又はこれらのいずれかのペプチドと80%以上の同一性を有し免疫誘導活性を有する7〜30アミノ酸残基のペプチド、又は前記いずれかのペプチドを部分配列として含み、アミノ酸残基数が8〜31であり、免疫誘導活性を有するペプチドを提供する。また、本発明は、上記本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドを有効成分として含有する医薬を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドの、癌の治療及び/又は予防剤を製造するための使用を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドの有効量を個体に投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドを含む、抗原提示細胞の処理剤を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドの、抗原提示細胞の処理剤の製造のための使用を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドと抗原提示細胞とを接触させることを含む、抗原提示細胞の処理方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドとHLA分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の単離抗原提示細胞をT細胞と接触させることを含む、T細胞の活性化方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドとHLA分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の単離抗原提示細胞又は上記本発明の単離T細胞を有効成分として含有する医薬を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の単離抗原提示細胞又は上記本発明の単離T細胞を有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の単離抗原提示細胞又は上記本発明の単離T細胞の有効量を投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のペプチドと抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の抗体又はその抗原結合性断片を含む癌の診断剤を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の抗体又はその抗原結合性断片を含む癌の治療及び/又は予防剤を提供する。さらに、本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質又は該アミノ酸配列と80%以上の同一性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質であって免疫誘導活性を有するタンパク質を有効成分として含有する癌特異的免疫誘導剤を提供する。
本発明により、癌の治療及び/又は予防や、そのための抗原提示細胞やT細胞の誘導に有用な新規なペプチド及び医学分野における該ペプチドの各種用途が提供された。下記実施例において具体的に示されるように、本発明のペプチドにより活性化されたCD8陽性T細胞は、YKL−40を発現する癌細胞に対して優れた細胞障害活性を示す。従って、本発明のペプチドは、これをヒトに投与することにより、又はこれを用いてインビトロで活性化T細胞をヒトに投与することにより、癌の治療及び/又は予防に有効である。
ペプチド特異的CD8陽性T細胞が該ペプチドとHLA−A0201との複合体を認識してIFN−γを産生することを示す図である。 ペプチド特異的CD8陽性T細胞の癌細胞に対する障害活性を示した図である。 ペプチド特異的CD4陽性T細胞が該ペプチドとHLA−DRB1*04との複合体を認識してIFN−γを産生することを示す図である。 ペプチド特異的CD4陽性T細胞が癌細胞のライセートを貪食した樹状細胞に反応して増殖していることを示す図である。 ペプチド特異的CD8陽性T細胞が該ペプチドとHLA−A0201との複合体を認識してIFN−γを産生することを示す図である。 ペプチド特異的CD8陽性T細胞の癌細胞に対する障害活性を示した図である。 ペプチド特異的CD8陽性T細胞の癌細胞に対する障害活性を示した図である。
上記の通り、本発明のペプチドとしては、まず、配列表の配列番号2で表されるアミノ酸配列(YKL-40のアミノ酸配列)中の7個以上の連続したアミノ酸から成るペプチドであって配列番号2のaa10-19、aa49-61、aa74-83、aa96-117、aa152-161、aa177-185、aa202-211、aa246-261又はaa326-354の領域内の連続するアミノ酸配列を有し免疫誘導活性を有するペプチド(以下、便宜的に「免疫誘導性部分ペプチド」と言うことがある)が挙げられる。
ここで、「aa」は、アミノ酸配列のN末端から数えて何番目のアミノ酸残基かを示す。例えば「aa10」は、N末端から数えて10番目のアミノ酸残基であることを示し、「aa10-19の領域」は、N末端から数えて10番目のアミノ酸残基から19番目のアミノ酸残基までの10個のアミノ酸残基から成る領域を示す。また、「免疫誘導活性」は、YKL-40を発現する癌細胞に反応するT細胞を活性化および増殖させる能力を意味し、具体的には、下記実施例に詳述する方法により測定される、ペプチドで刺激されたT細胞のIFN-γ産生能力及び/又はYKL-40発現癌細胞に対する細胞障害活性が、ペプチドで刺激していない対照のT細胞よりも高く、かつ、ペプチドで刺激されたT細胞が、ペプチドで刺激していない対照のT細胞よりもよく増殖することを意味する。増殖は、目視観察、顕微鏡下での細胞数計測、フローサイトメトリー、培地中のトリチウムチミジンの細胞内への取り込み量等により確認することができる。なお、下記実施例で採用したIFN-γ産生能力の測定は、例えばJ.Immunol.,154,p2257,1995に記載されており、また、細胞障害活性の測定は、Int.J.Cancer,58:p317,1994)に記載された51Crリリースアッセイと呼ばれる公知の方法に準拠している。
上記本発明のペプチドの好ましい例として、配列番号3から配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを挙げることができる。これらのペプチドの配列番号、アミノ酸配列、配列番号2中の位置を下記表1に示す。なお、本発明において、「アミノ酸配列を有する」とは、アミノ酸残基がそのような順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド」とは、Phe Gly Ser Gln Arg Phe Ser Lys Ile Ala Ser Asn Thr Gln Ser Arg Argのアミノ酸配列を持つ17アミノ酸残基のサイズのペプチドを意味する。また、例えば、「配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチド」を「配列番号3のペプチド」と略記することがある。
Figure 2006062094
上記本発明のペプチドにおいて、1個ないし数個のアミノ酸残基が置換し、欠失し及び/又は挿入され、元のペプチドと80%以上、好ましくは90%以上の同一性を有し、かつ、免疫誘導活性を有する7〜30アミノ酸残基のペプチド(以下、便宜的に「免疫誘導性修飾ペプチド」と言うことがある)も上記本発明のペプチドと同様に癌の治療及び/又は予防等に用いることができ、本発明の範囲に含まれる。ここで、アミノ酸配列の「同一性」とは、両者のアミノ酸配列残基ができるだけ多く一致するように(必要ならばギャップを挿入する)両アミノ酸配列を整列させ、不一致のアミノ酸残基を、全アミノ酸残基数(両者の配列で全アミノ酸残基数が異なる場合には短い方の配列の全アミノ酸残基数)で除したものを百分率で表したものであり、BLASTのような周知のソフトにより容易に算出することができる。なお、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換であればペプチドの性質が変化しないことが多いことが知られている。従って、上記本発明の免疫誘導性部分ペプチド中のアミノ酸残基を置換する場合には、これらの各グループの間で置換することにより、免疫誘導活性を維持できる可能性が高くなる。
上記した本発明のペプチド(免疫誘導性部分ペプチド及び免疫誘導性修飾ペプチド)を部分配列として含み(すなわち、本発明のペプチドの一端又は両端に他のペプチドが付加されたもの)、アミノ酸残基数が8〜31であり、免疫誘導活性を有するペプチド(以下、便宜的に「免疫誘導性付加ペプチド」と言うことがある)も上記本発明のペプチドと同様に癌の治療及び/又は予防等に用いることができ、本発明の範囲に含まれる。
上記した本発明のペプチドは、市販のペプチド合成機を用いて常法により容易に調製することができる。
本発明は、上記本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドはDNAでもRNAでもよい。YKL-40をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号1に示すように公知である。従って、本発明の免疫誘導性部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1に示される塩基配列のうち、該免疫誘導性部分ペプチドをコードする領域の塩基配列を有するものであってよい。あるいは、その保存的置換塩基配列(コードするアミノ酸配列が同じで塩基配列が異なるもの)を用いることができる。なお、各アミノ酸をコードするコドンは公知であるから、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は容易に特定することができる。従って、本発明の免疫誘導性修飾ペプチド及び免疫誘導性付加ペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列も容易に特定することができる。これらのポリヌクレオチドは、市販の核酸合成機を用いて常法により合成することができる。
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含み、細胞中で該ポリヌクレオチドを発現することができる組換えベクターをも提供する。細胞は、哺乳動物細胞であっても、大腸菌や酵母菌のような原核又は真核微生物であってもよい。哺乳動物細胞に遺伝子導入するためのベクターとしては、プラスミドベクターでもウイルスベクターでもよく、これら自体は周知であり、種々のものが市販されているので、市販のベクターを利用することができる。市販のベクターのマルチクローニング部位に上記した本発明のポリヌクレオチドを挿入することにより本発明の組換えベクターを得ることができる。
哺乳動物細胞に遺伝子導入するためのベクターに本発明のポリヌクレオチドを組み込んだ組換えベクターは、癌の治療及び/又は予防のための遺伝子ワクチンとして利用することがきる。遺伝子ワクチンの投与経路は、好ましくは筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与経路であり、投与量は、抗原の種類等に応じて適宜選択することができるが、通常、体重1kg当たり、遺伝子ワクチンの重量で0.1μg〜100mg程度、好ましくは1μg〜10mg程度である。
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス等のRNA ウイルスまたはDNA ウイルスに本発明のDNA を組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
本発明のペプチドをコードする遺伝子を実際に医薬として作用させるには、遺伝子を直接体内に導入するin vivo方法、およびヒトからある種の細胞を採取し体外で遺伝子を該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo方法がある(日経サイエンス,1994年4月,p20−45、月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23−48、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号、およびこれらの引用文献等)。in vivo方法がより好ましい。
in vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することが出来る。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明のDNA を含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、本発明のDNA を含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
一方、大腸菌や酵母菌などの微生物用のベクターも周知であり、種々のものが市販されている。微生物用のベクターに本発明のポリヌクレオチドを組み込んだ組換えベクターは、本発明のペプチドを遺伝子工学的に大量生産するために用いることができる。微生物への組換えベクターの組み込みは周知の方法により行なうことができる。
下記実施例に具体的に記載されるように、本発明のペプチドは、免疫誘導活性を示す。すなわち、本発明のペプチドで刺激したT細胞は、YKL-40を発現する癌細胞に対して細胞障害活性を示し、増殖する。従って、本発明のペプチドを生体に投与することにより、癌の治療及び/又は予防を行なうことができる。すなわち、本発明は、上記本発明のペプチドを有効成分として含有する医薬並びに上記本発明のペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤を提供する。
本発明の癌の治療及び/又は予防剤による対象の癌としては、YKL-40を発現している癌を挙げることができ、脳腫瘍、頭、首、肺、子宮又は食道の扁平上皮癌、メラノーマ、肺または子宮の腺癌、腎癌等を挙げることができる。また、投与対象は、哺乳動物であり、特にヒトが好ましい。
本発明のペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤の投与経路は、経口投与でも非経口投与でもよいが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。また、投与量は、癌の治療及び/又は予防に有効な量であればよく、症状、使用目的等に応じて適宜選択されるが、通常、0.0001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg 〜1000mgであり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
本発明のペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤は、各投与形態に適した、薬理学的に許容される担体及び/又は希釈剤を用いて製剤することができる。製剤方法及びそのための各種担体は、医薬製剤の分野において周知である。薬理学的に許容される担体又は希釈剤は、例えば、生理緩衝液のような緩衝液や、賦形剤(砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等)であってよく、結合剤(シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド、トラガント等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク、シリカ等)等が適宜混合されていてもよい。投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などによる経口剤、吸入剤、注射剤、座剤、液剤などによる非経口剤などを挙げることができる。これらの製剤は一般的に知られている製法によって作ることができる。
上記した本発明のペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤は、ワクチンの形態であってよく、この場合には該有効成分に加えてアジュバントを含むことが好ましい。アジュバントは、抗原の貯蔵所(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、かつ特定組のリンパ球を刺激することにより、免疫学的応答を強化し得る。多数の種類のアジュバントが、当業界で周知である。具体例としては、MPL(SmithKline Beecham)、サルモネラ属のSalmonella minnesota Re 595リポ多糖類の精製および酸加水分解後に得られる同類物;QS21(SmithKline Beecham)、Quillja saponaria抽出物から精製される純QA−21サポニン;PCT出願WO96/33739(SmithKline Beecham)に記載されたDQS21;QS−7、QS−17、QS−18およびQS−L1(ソ(So)、外10名、「モレキュルズ・アンド・セル(Molecules and cells)」、1997年、第7巻、p.178−186);フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;ビタミンE;モンタニド;ミョウバン;CpGオリゴヌクレオチド(例えば、クレイグ(Kreig)、外7名、「ネイチャー(Nature)」、第374巻、p.546−549)を参照);ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールのような生分解性油から調製される種々の油中水エマルションが挙げられる。好ましくは、ペプチドは、DQS21/MPLの組合せと混合されて投与される。DQS21対MPLの比は、典型的には約1:10〜10:1,好ましくは約1:5〜5:1、さらに好ましくは約1:1である。典型的には、ヒト投与に関しては、DQS21およびMPLは、約1μg〜約100μgの範囲でワクチン処方物中に存在する。その他のアジュバントが当業界で既知であり、本発明に用いられ得る(例えば、ゴッディング(Goding)著,「モノクローナル・アンチボディーズ:プリンシプル・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」、第2版、1986年を参照)。ペプチドおよびアジュバントの混合物またはエマルションの調製方法は、予防接種の当業者には周知である。
対象の免疫応答を刺激するその他の因子も、対象に投与され得る。例えばその他のサイトカインも、リンパ球刺激特性の結果として、予防接種プロトコルに有用である。このような目的のために有用な多数のサイトカインは当業者に既知であり、その例としては、ワクチンの防御作用を強化することが示されているインターロイキン−12(IL−12)、GM−CSF、IL−18およびFlt3リガンドが挙げられる。投与される場合、本発明の治療用組成物は、製薬上許容可能な調製物中で投与される。このような調製物は、製薬上許容可能な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、相溶性担体、補助免疫増強剤、例えばアジュバントおよびサイトカイン、ならびに任意にその他の療法的作用物質をルーチンに含有し得る。
下記実施例において具体的に記載されるように、本発明のペプチドと、抗原提示細胞をインビトロで接触させることにより、本発明のペプチドを抗原提示細胞に提示させることができる。すなわち、本発明は、上記本発明のペプチドを含む、抗原提示細胞の処理剤をも提供する。ここで、抗原提示細胞としては、HLAクラスI又はHLAクラスII分子を保有する樹状細胞又はB細胞を好ましく用いることができる。種々のHLAクラスI及びHLAクラスII分子が同定されており、周知である。HLAクラスI分子としては、HLA-A、HLA-B、HLA-Cを挙げることができ、より具体的には、HLA-A1, HLA-A0201, HLA-A0204, HLA-A0205, HLA-A0206, HLA-A0207, HLA-A11, HLA-A24, HLA-A31, HLA-A6801, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B2705, HLA-B37, HLA-Cw0401, HLA-Cw0602などを挙げることができる。HLAクラスII分子としては、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPを挙げることができる。
HLAクラスI又はHLAクラスII分子を保有する樹状細胞又はB細胞は、周知の方法により末梢血から調製することができる。例えば、骨髄、臍帯血あるいは患者末梢血から、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とIL-3(あるいはIL-4)を用いて樹状細胞を誘導し、その培養系に腫瘍関連ペプチドを加えることにより、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導することができる。この樹状細胞を有効量投与することで、癌の治療に望ましい応答を誘導できる。用いる細胞は、健康人から提供された骨髄や臍帯血、患者本人の骨髄や末梢血等を用いることができるが、患者本来の自家細胞を使う場合は、安全性が高く、重篤な副作用を回避することも期待できる。末梢血または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料のいずれでもよい。末梢血は、全血を培養してもよいし、白血球成分だけを分離して培養してもよいが、後者の方が効率的で好ましい。さらに白血球成分の中でも単核球を分離してもよい。また、骨髄や臍帯血を起源とする場合には、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これから単核球を分離して培養してもよい。末梢血やその白血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が含まれている。用いられるサイトカインは、安全性と生理活性が確認された特性のものであれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生産手法については問わないが、好ましくは医療用に用いられる品質が確保された標品が必要最低量で用いられる。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞が誘導される濃度であれば特に限定されず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度である。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、ヒトの体温である37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5%COを通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要数の細胞が誘導される期間であれば特に限定されないが、通常3日〜8週間の間で行われる。細胞の分離や培養に供される機器は、適宜適当なものを用いることができるが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置については、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わらず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用いることができる。
本発明のペプチドと抗原提示細胞をインビトロで接触させる方法自体は周知の方法により行なうことができ、下記実施例にも具体的に記載されている。すなわち、抗原提示細胞を、本発明のペプチドを含む培養液中で培養することにより行なうことができる。培地中のペプチド濃度は、特に限定されないが、通常、1μg/mlないし100μg/ml程度、好ましくは5μg/mlないし20μg/ml程度である。培養時の細胞密度は特に限定されないが、通常、10細胞/mlから107細胞/ml程度、好ましくは5x10細胞/mlから5x106細胞/ml程度である。培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。
上記したペプチドの共存下において抗原提示細胞を培養することにより、ペプチドが抗原提示細胞のHLA分子に取り込まれ、抗原提示細胞の表面に提示される。本発明は、このような、本発明のペプチドとHLA分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞をも提供する。このような抗原提示細胞は、生体内又はインビトロにおいて、T細胞に対して該ペプチドを提示し、該ペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させる。
上記のようにして調製される、本発明のペプチドとHLA分子の複合体を含む、抗原提示細胞をT細胞をインビトロで接触させることにより、該ペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。これは、上記抗原提示細胞とT細胞とを液体培地中で共存培養することにより行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を液体培地に懸濁して、マイクロプレートのウェル等の容器に入れ、これにT細胞を添加して培養することにより行なうことができる。共存培養時の抗原提示細胞とT細胞の混合比率は、特に限定されないが、通常、細胞数の比率で1:1〜1:100程度、好ましくは1:5〜1:20程度である。また、液体培地中に懸濁する抗原提示細胞の密度は、特に限定されないが、通常、100〜1000万細胞/ml程度、好ましくは10000〜100万細胞/ml程度である。共存培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、通常、2日〜3週間、好ましくは4日〜2週間程度である。また、共存培養は、IL-2、IL-6、IL-7及びIL-12のようなインターロイキンの1種又は複数の存在下で行なうことが好ましい。この場合、IL-2及びIL-7の濃度は、通常、5U/mlから20U/ml程度、IL-6の濃度は通常、500U/mlから2000U/ml程度、IL-12の濃度は通常、5ng/mlから20ng/ml程度であるが、これらに限定されるものではない。上記の共存培養は、新鮮な抗原提示細胞を追加して1回ないし数回繰り返してもよい。例えば、共存培養後の培養上清を捨て、新鮮な抗原提示細胞の懸濁液を添加してさらに共存培養を行なうという操作を、1回ないし数回繰り返してもよい。各共存培養の条件は、上記と同様でよい。なお、本明細書において、上記のように、本発明のペプチドを抗原提示細胞の表面に提示されるためにペプチドを抗原提示細胞の培養液に加えることを、「ペプチドで細胞をパルスする」と呼ぶことがある。また、本発明のペプチドを提示する抗原提示細胞とT細胞を接触させることを、「ペプチドでT細胞を刺激する」と呼ぶことがある。
上記の共存培養により、該ペプチドに特異的な細胞障害性T細胞が誘導され、増殖される。本発明は、このような、本発明のペプチドとHLA分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞をも提供する。
上記本発明のペプチドを提示する上記抗原提示細胞は、生体内においても該ペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができるので、これを生体に投与することにより癌の治療及び/又は予防を行なうことができる。また、本発明のペプチドとHLA分子の複合体を選択的に結合する、T細胞は、YKL-40を発現する癌細胞に対して細胞障害活性を示すので、該T細胞を生体に投与することによっても癌の治療及び/又は予防を行なうことができる。従って、本発明は、上記本発明の抗原提示細胞を有効成分として含有する医薬、並びに癌の治療及び/又は予防剤、並びに上記本発明のT細胞を有効成分として含有する医薬、並びに癌の治療及び/又は予防剤をも提供する。治療対象となる癌の例としては、当然ながら、本発明のペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤の対象として上記した癌を挙げることができる。
生体に投与する抗原提示細胞又はT細胞は、これらの細胞を異物として攻撃する生体内での免疫応答を回避するために、治療を受ける患者から採取した抗原提示細胞又はT細胞を、上記のように本発明のペプチドを用いて調製したものであることが好ましい。
抗原提示細胞又はT細胞を有効成分として含む癌の治療及び/又は予防剤の投与経路は、静脈内投与や動脈内投与のような非経口投与が好ましい。また、投与量は、症状や投与目的等に応じて適宜選択されるが、通常1個〜10兆個、好ましくは100万個〜10億個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。製剤は、例えば、細胞を生理緩衝食塩水に懸濁したもの等であってよく、他の抗癌剤やサイトカイン等と併用することもできる。また、製剤分野において周知の1又は2以上の添加剤を添加することもできる。
本発明はさらに、上記本発明のペプチドを対応抗原とする抗体及びその抗原結合性断片を提供する。ここで、抗原結合性断片とは、抗体分子中に含まれるFab断片やF(ab')2断片のような、抗原との結合能を有する抗体断片を意味する。抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、免疫測定等のためには、再現性の高いモノクローナル抗体が好ましい。ペプチドを免疫原とするポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の調製方法は周知であり、常法により容易に行なうことができる。例えば、ペプチドをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やカゼイン等のキャリアタンパク質に結合させたものを免疫原とし、アジュバントと共に動物に免疫することにより該ペプチドに対する抗体を誘起することができる。免疫した動物から採取した脾細胞やリンパ球のような抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを調製し、本発明のペプチドと結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択し、これを増殖させて培養上清から本発明のペプチドを対応抗原とするモノクローナル抗体を得ることができる。なお、上記の方法は周知の常法である。
本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、YKL-40を発現する細胞や本発明のペプチドを提示する抗原提示細胞を検出又は定量する免疫測定用試薬として用いることができる。免疫測定自体はこの分野において周知であり、反応様式で分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法等があり、フローサイトメトリーも免疫測定の1種と考えることができる。また、標識で分類すると、放射免疫測定、蛍光免疫測定、酵素免疫測定、ビオチン免疫測定等があり、本発明の抗体又はその抗原結合性断片はこれらのいずれにも用いることができる。YKL-40を発現する細胞の検出又は定量に用いる場合には、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、癌の診断剤として機能する。癌の診断剤として用いる場合、操作が簡便で大掛かりな装置等を必要としないサンドイッチELISAや凝集法が好ましい。なお、上記本発明のペプチドは、該ペプチドを発現する細胞を競合法で検出又は測定する場合の免疫測定用試薬として用いることもできる。
なお、下記実施例において、本発明のペプチドにより刺激されたT細胞が、YKL-40を発現する癌細胞に対して細胞障害活性を示すことが明らかになったので、YKL-40は、癌特異的免疫誘導剤として生体に投与することができる。すなわち、本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質又は該アミノ酸配列と80%以上の同一性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質であって免疫誘導活性を有するタンパク質を有効成分として含有する癌特異的免疫誘導剤をも提供する。この場合、生体への投与経路、投与量、製剤等は、上記したペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤の場合と同様でよい。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。
実施例1:YKL−40由来ペプチドエピトープ反応性CD8陽性T細胞の誘導
(1)ヒトYKL−40タンパク質のアミノ酸配列の情報をGenBankから得た。HLA−A0201結合モチーフ予測のため、公知のBIMASソフト(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/で利用可能)を用いたコンピューター予測プログラムを用いてヒトYKL−40タンパク質のアミノ酸配列を解析し、HLAクラスI分子に結合可能と予想されるペプチドを選択した。
(2)HLA−A0201陽性の健常人から末梢血を分離し、Lymphocyte separation medium(OrganonpTeknika, Durham, NC)に重層して1,500rpmで室温で20分間遠心分離した。PBMCを含有する画分を回収し、冷リン酸塩緩衝液中で3回(またはそれ以上)洗浄し、末梢血単核球(PBMC)を得た。得られたPBMCをAIM−V培地(Life Technololgies, Inc., Grand Island, NY)20mlに懸濁し、培養フラスコ(Falcon)中に37℃、5%COの条件下で2時間付着させた。非付着細胞はT細胞調製に用い、付着細胞は樹状細胞を調製するために用いた。
一方、付着細胞をAIM−V培地中でIL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(1000U/ml)の存在下で培養した。6日後にIL−4(1000U/ml)、GM−CSF(1000U/ml)、IL−6(1000U/ml、Genzyme, Cambridge, MA)、IL−1β(10ng/ml、Genzyme, Cambridge, MA)およびTNF−α(10ng/ml、Genzyme, Cambridge, MA)を添加したAIM−V培地に交換してさらに2日間培養した後得られた非付着細胞集団を樹状細胞として用いた。
(3)調製した樹状細胞をAIM−V培地中に1×10細胞/mlの細胞密度で懸濁し、選択したペプチドを10μg/mlの濃度で添加し、96穴プレートを用いて37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、X線照射(3000rad)し、AIM−V培地で洗浄し、10%ヒトAB血清(Nabi, Miami, FL)、IL−6(1000U/ml)およびIL−12(10ng/ml、Genzyme, Cambridge, MA)を含有するAIM−V培地で懸濁し、24穴プレート1穴当りにそれぞれ1×10細胞づつ添加した。さらに調製したT細胞集団を1穴当りそれぞれ1×10細胞添加し、37℃、5%COの条件下で培養した。7日後、それぞれの培養上清を捨て、上記と同様にして得た各ペプチドで処理後X線照射した樹状細胞を10%ヒトAB血清(Nabi, Miami, FL)、IL−7(10U/ml、Genzyme, Cambridge, MA)およびIL−2(10U/ml、Genzyme, Cambridge, MA)を含有するAIM−V培地で懸濁し(細胞密度:1×10細胞/ml)、24穴プレート1穴当りにそれぞれ1×10細胞づつ添加し、さらに培養した。同様の操作を7日間おきに4〜6回繰返した後刺激されたT細胞を回収し,フローサイトメトリーによりCD8陽性T細胞の誘導を確認した。
HLA−A0201陽性CD8陽性T細胞を刺激するYKL−40由来細胞障害性T細胞抗原エピトープの決定
(1)上記で誘導した各穴のT細胞の内、本発明のペプチドである配列番号3に示すアミノ酸配列を有するペプチドで刺激されたT細胞が増殖していることが顕微鏡下における細胞数計測により確認された。本T細胞の配列番号3のペプチドに対する特異性を調べるために、ペプチドでパルスされた、HLA−A0201分子を発現するT2細胞(文献及び入手先:Salter RD et al.,Immunogenetics, 21:235−246(1985)、ATCCより購入)(10μg/mlの濃度でAIM−V培地中各ペプチドを添加し、37℃、5%COの条件下で4時間培養)5×10個に対して、5×10個のT細胞を添加し、10%ヒトAB血清を含むAIM−V培地中で96穴プレートにて24時間培養した。培養後の上清を取って、IFN−γの産生量をELISA法により測定した。その結果、ペプチドをパルスしていないT2細胞を用いた穴の培養上清に比べて、配列番号3のペプチドをパルスしたT2細胞を用いた穴の培養上清において顕著なIFN−γ産生が確認された。(図1)。従って、配列番号3のペプチドは特異的にHLA−A0201陽性CD8陽性T細胞を増殖刺激させ、IFN−γ産生を誘導する能力を有するT細胞エピトープペプチドであることが判明した。同様にして、特異的にHLA−A0201陽性CD8陽性T細胞を増殖刺激させ、IFN−γ産生を誘導する能力を有する配列番号4から配列番号17に記載の14種のペプチドを同定した(図5)。
なお、図1中、縦軸の参照番号1は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するペプチドについての結果を示す。参照番号2はYKL−40由来ペプチドの1つであるが本発明の範囲外のペプチドLQCCSAYKL(配列番号19)についての結果を示す(比較例1)。参照番号3はペプチドを添加せずに上記処理を行なった場合についての結果を示す(比較例2)。また、図5中、横軸の参照番号12から25は、それぞれ、配列番号4から配列番号17に示されるアミノ酸配列を有するペプチドについての結果を示す。さらに、横軸の参照番号26はYKL−40由来ペプチドの1つであるが本発明の範囲外のペプチドである配列番号19のペプチドについての結果(比較例3)、横軸の参照番号27はペプチドを添加せずに上記処理を行なった場合についての結果を示す(比較例4)。
(2)次に、本発明のペプチドの1つである配列番号3のペプチドが、HLA−A0201陽性でYKL−40を発現する腫瘍細胞上のHLA−A0201分子上に提示されるものであるか、また本ペプチドで刺激されたCD8陽性T細胞がHLA−A0201陽性でYKL−40を発現する腫瘍細胞を障害することができるかを検討した。YKL−40の発現が確認されている悪性脳腫瘍細胞株、T98G(文献及び入手先:Stein GH et al.,J. Cell Physiol., 99:43−54(1979)、ATCCより購入)を10個50ml容の遠心チューブに集め、100mCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%ヒトAB血清を含むAIM−V培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり10個づつ添加し、さらにこれに後10%ヒトAB血清を含むAIM−V培地で懸濁された10、5x10、2.5x10および1.25x10個の配列番号3のペプチドで刺激されたHLA−A0201陽性のCD8陽性T細胞をそれぞれ添加して、37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定することによって、配列番号3のペプチドで刺激されたCD8陽性T細胞細胞の細胞障害活性を算出した。その結果、本ペプチドで刺激されたHLA−A0201陽性のCD8陽性T細胞がT98Gに対する細胞障害活性を有することが判明した(図2)。従って、本発明のペプチドの1つである配列番号3のペプチドは、HLA−A0201陽性でYKL−40を発現する腫瘍細胞上のHLA−A0201分子上に提示されるものであり、さらに本ペプチドは、このような腫瘍細胞を障害することができるCD8陽性細胞障害性T細胞を誘導する能力があることが明らかになった。同様にして、配列番号4から配列番号17に記載の14種のペプチド各々で刺激されたHLA−A0201陽性のCD8陽性T細胞はT98Gに対して細胞障害活性を示した(図6)。さらに、配列番号3から配列番号17に記載の15種のペプチド各々で刺激されたHLA−A0201陽性のCD8陽性T細胞は、YKL−40の発現が確認されている別の悪性脳腫瘍細胞株、U87 MG(Beckman G et al.,Hum.Hered., 21:238−241(1971)、ATCCより購入)に対して細胞障害活性を示した(図7)。
なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明の各ペプチドで刺激誘導されたCD8陽性T細胞10個とクロミウム51を取り込ませた10個の悪性脳腫瘍細胞株T98G又はU87 MGとを混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により算出したCD8陽性T細胞のT98G又はU87 MGに対する細胞障害活性を示した結果である。式:細胞障害活性(%)=CD8陽性T細胞を加えた際のT98G又はU87 MGからのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100
なお、図6中、横軸の参照番号28〜41は、それぞれ、配列番号4から配列番号17のペプチドについての結果を示す。さらに、横軸の参照番号42はYKL−40由来ペプチドの1つであるが本発明の範囲外のペプチドである配列番号19のペプチドについての結果(比較例5)、横軸の参照番号43はペプチドを添加せずに上記処理を行なった場合についての結果を示す(比較例6)。また、図7中、横軸の参照番号44〜58は、それぞれ、配列番号3から配列番号17のペプチドについての結果を示す。さらに、横軸の参照番号59はYKL−40由来ペプチドの1つであるが本発明の範囲外のペプチドである配列番号19のペプチドについての結果(比較例7)、横軸の参照番号60はペプチドを添加せずに上記処理を行なった場合についての結果を示す(比較例8)。
YKL−40由来ペプチドエピトープ反応性CD4陽性T細胞の誘導
(1)CD4陽性T細胞抗原エピトープ予測のため、SYFPEITHI アルゴリズム(ラメンセー著(Rammensee),外4名,「イムノジェネティクス(Immunogenetics)」、1999年、第50巻、p.213−219)、ProPred アルゴリズム((シン(Singh),外1名、「バイオインフォマティクス(Bioinformatics)」、2001年、第17巻、p.1236−1237)、およびRANKPEP アルゴリズム((レイチェ(Reche),外2名,「ヒューマン・イムノロジー(Human immunology)の3つのコンピューター予測プログラムを用いてヒトYKL−40タンパク質のアミノ酸配列を解析し、HLAクラスII結合ペプチドであると予想されるペプチドを選択した。
(2)HLA−DRB1*04陽性の健常人から末梢血を分離し、Lymphocyte separation medium(OrganonpTeknika, Durham, NC)に重層して1,500rpmで室温で20分間遠心分離した。PBMCを含有する画分を回収し、冷リン酸塩緩衝液中で3回(またはそれ以上)洗浄し、末梢血単核球(PBMC)を得た。得られたPBMCをAIM−V培地(Life Technololgies, Inc., Grand Island, NY)20mlに懸濁し、培養フラスコ(Falcon)中に37℃、5%COの条件下で2時間付着させた。非付着細胞はT細胞調製に用い、付着細胞は樹状細胞を調製するために用いた。
一方、付着細胞をAIM−V培地中でIL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(1000U/ml)の存在下で培養した。6日後にIL−4(1000U/ml)、GM−CSF(1000U/ml)、IL−6(1000U/ml、Genzyme, Cambridge, MA)、IL−1β(10ng/ml、Genzyme, Cambridge, MA)およびTNF−α(10ng/ml、Genzyme, Cambridge, MA)を添加したAIM−V培地に交換してさらに2日間培養した後得られた非付着細胞集団を樹状細胞として用いた。
(3)調製した樹状細胞をAIM−V培地中に1×10細胞/mlの細胞密度で懸濁し、選択したペプチドを10mg/mlの濃度で添加し、96穴プレートを用いて37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、X線照射(3000rad)し、AIM−V培地で洗浄し、10%ヒトAB血清(Nabi, Miami, FL)、IL−6(1000U/ml)およびIL−12(10ng/ml、Genzyme, Cambridge, MA)を含有するAIM−V培地で懸濁し、24穴プレート1穴当りにそれぞれ1×10細胞づつ添加した。さらに調製したT細胞集団を1穴当りそれぞれ1×10細胞添加し、37℃、5%COの条件下で培養した。7日後、それぞれの培養上清を捨て、上記と同様にして得た各ペプチドで処理後X線照射した樹状細胞を10%ヒトAB血清(Nabi, Miami, FL)およびIL−2(10U/ml、Genzyme, Cambridge, MA)を含有するAIM−V培地で懸濁し、24穴プレート1穴当りにそれぞれ1×10細胞づつ添加し、さらに培養した。同様の操作を7日間おきに4〜6回繰返した後刺激されたT細胞を回収し,フローサイトメトリーによりCD4陽性T細胞の誘導を確認した。
HLA−DRB1*04陽性CD4陽性T細胞を刺激するYKL−40由来ヘルパーT細胞抗原エピトープの決定
(1)上記で誘導した各穴のT細胞の内、本発明のペプチドである配列番号18のペプチドで刺激されたT細胞が増殖していることが確認された。本CD4陽性T細胞の配列番号18のペプチドに対する特異性を調べるために、各ペプチドでパルスされた、HLA−DRB1*04分子を発現するT2DR4細胞(10μg/mlの濃度でAIM−V培地中各ペプチドを添加し、37℃、5%COの条件下で4時間培養)5×10個に対して、5×10個のCD4陽性T細胞を添加し、10%ヒトAB血清を含むAIM−V培地中で96穴プレートにて24時間培養した。培養後の上清を取って、IFN−γの産生量をELISA法により測定した。その結果、配列番号18のペプチドをパルスしたT2DR4細胞を用いた穴の培養上清において、1000pg/ml以上のIFN−γが産生されていた(図3)。一方、他のペプチドおよびペプチドをパルスしていないT2DR4細胞を用いた穴の培養上清においては、ほとんどIFN−γが産生は認められなかった(図3)。従って、配列番号18のペプチドは特異的にHLA−DRB1*04陽性CD4陽性T細胞を増殖刺激させ、IFN−γ産生を誘導する能力を有するT細胞エピトープペプチドであることが判明した。
なお、図3中、縦軸の参照番号4は配列番号18の本発明のペプチドについての結果を示す。さらに、縦軸の参照番号5はYKL−40由来ペプチドの1つであるが本発明の範囲外のペプチドである配列番号19のペプチドについての結果(比較例7)、縦軸の参照番号6はペプチドを添加せずに上記処理を行なった場合についての結果を示す(比較例8)。
(2)次に、HLA−DRB1*04陽性T細胞を増殖刺激させる能力を有する本ペプチドが、YKL−40タンパク質が抗原提示細胞内でナチュラルにプロセスされてHLA−DR上に提示されるエピトープであるかどうかについて検討した。YKL−40の発現が確認されている悪性脳腫瘍細胞株、T98Gのライセートを未成熟樹状細胞に添加して消化させ、樹状細胞を成熟化させた後、本ペプチドで刺激されたT細胞が本樹状細胞によって刺激されるかを調べた。1.5×10個のT98G細胞のペレットを液体窒素および湯浴を用いて7回凍結融解を繰り返し、細胞ライセートを作製した。一方、HLA−DRB1*04陽性の健常人から末梢血を分離し、Lymphocyte separation mediumに重層して1,500rpmで室温で20分間遠心分離した。PBMCを含有する相間を収穫し、冷リン酸塩緩衝液中で3回(またはそれ以上)洗浄し、PBMCを得た。得られたPBMCをAIM−V培地20mlに懸濁し、培養フラスコ(Falcon)中に37℃、5%COの条件下で2時間付着させ、付着細胞をAIM−V培地中でIL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(1000U/ml)の存在下で6日間培養し、未成熟樹状細胞を作製した。作製した各細胞ライセートを5×10個の未成熟樹状細胞に添加し、IL−4(1000U/ml)、GM−CSF(1000U/ml)、IL−6(1000U/ml)、IL−1β(10ng/ml)およびTNF−α(10ng/ml)を添加したAIM−V培地中で2日間培養した。また同時に、未成熟樹状細胞に配列番号18のペプチドを添加したもの、および未成熟樹状細胞にPBMCの細胞ライセート(1.5×10個の細胞ペレットから作製)を添加したものをそれぞれ作製し、IL−4(1000U/ml)、GM−CSF(1000U/ml)、IL−6(1000U/ml)、IL−1β(10ng/ml)およびTNF−α(10ng/ml)を添加したAIM−V培地中で37℃、5%COの条件下で2日間培養した。培養後の各樹状細胞をX線照射(3000rad)し、AIM−V培地で洗浄後、10%ヒトAB血清を含有するAIM−V培地で懸濁し、96穴プレート1穴当りにそれぞれ3.3×10個づつ添加した。これらに5×10個のYKLペプチドで刺激されたT細胞を添加し、37℃、5%COの条件下で72時間培養した。なお、培養開始から48時間後にそれぞれの培養液に1mCiづつのトリチウムチミジンを添加した。培養後、細胞ハーベスターにて細胞をガラス濾紙上に回収し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターにて測定した。その結果、図4に示すように、配列番号18のペプチドで刺激されたT細胞は,T98G細胞のライセートを添加した樹状細胞の刺激によって増殖していることが確認された。さらに、これらの反応は抗HLA−DR中和抗体の添加によって阻害されていることから、配列番号18の本発明のペプチドが、YKL−40タンパク質が抗原提示細胞内でナチュラルにプロセスされてHLA−DR上に提示されるエピトープであることが明らかになった。
なお、図4中、縦軸の参照番号7は配列番号18の本発明のペプチドがパルスされたHLA-DRB1*04陽性の樹状細胞をX線照射したものと該ペプチドで刺激誘導されたHLA-DRB1*04陽性のCD4陽性T細胞を混合して10%ヒトAB血清を含むAIM-V培地中で48時間培養後にトリチウムチミジンを加えさらに24時間培養した後のCD4陽性T細胞におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示した結果を示す。参照番号8は、悪性脳腫瘍細胞株T98GのライセートをHLA-DRB1*04陽性の樹状細胞に取り込ませたものをX線照射したものと配列番号18の本発明のペプチドで刺激誘導されたHLA-DRB1*04陽性のCD4陽性T細胞を混合して10%ヒトAB血清を含むAIM-V培地中で48時間培養後にトリチウムチミジンを加えさらに24時間培養した後のCD4陽性T細胞におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示した結果を示す。参照番号9は、悪性脳腫瘍細胞株T98GのライセートをHLA-DRB1*04陽性の樹状細胞に取り込ませたものをX線照射したものと配列番号18の本発明のペプチドで刺激誘導されたHLA-DRB1*04陽性のCD4陽性T細胞を混合して10%ヒトAB血清と抗HLA-DR抗体を含むAIM-V培地中で48時間培養後にトリチウムチミジンを加えさらに24時間培養した後のCD4陽性T細胞におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示した結果を示す。参照番号10は、HLA-DRB1*04陽性の健常人から分離した末梢血単核球のライセートをHLA-DRB1*04陽性の樹状細胞に取り込ませたものをX線照射したものと配列番号18の本発明のペプチドで刺激誘導されたHLA-DRB1*04陽性のCD4陽性T細胞を混合して10%ヒトAB血清を含むAIM-V培地中で48時間培養後にトリチウムチミジンを加えさらに24時間培養した後のCD4陽性T細胞におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示した結果を示す。参照番号11は、X線照射したHLA-DRB1*04陽性の樹状細胞と配列番号18の本発明のペプチドで刺激誘導されたHLA-DRB1*04陽性のCD4陽性T細胞を混合して10%ヒトAB血清を含むAIM-V培地中で48時間培養後にトリチウムチミジンを加えさらに24時間培養した後のCD4陽性T細胞におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示した結果である。
本発明のペプチドは、癌の治療及び/又は予防剤の有効成分として有用であり、また、癌の治療及び/又は予防剤として利用できる抗原提示細胞やT細胞の誘導に有用である。

Claims (27)

  1. 配列表の配列番号2で表されるアミノ酸配列中の7個以上の連続したアミノ酸から成るペプチドであって配列番号2のaa10-19、aa49-61、aa74-83、aa96-117、aa152-161、aa177-185、aa202-211、aa246-261又はaa326-354の領域内の連続するアミノ酸配列を有し免疫誘導活性を有するペプチド、又はこれらのいずれかのペプチドと80%以上の同一性を有し免疫誘導活性を有する7〜30アミノ酸残基のペプチド、又は前記いずれかのペプチドを部分配列として含み、アミノ酸残基数が8〜31であり、免疫誘導活性を有するペプチド。
  2. 配列表の配列番号2で表されるアミノ酸配列中の7個以上の連続したアミノ酸から成るペプチドであって配列番号2のaa10-19、aa49-61、aa74-83、aa96-117、aa152-161、aa177-185、aa202-211、aa246-261又はaa326-354の領域内の連続するアミノ酸配列を有し免疫誘導活性を有するペプチド又は前記いずれかのペプチドを部分配列として含み、アミノ酸残基数が8〜30であり、免疫誘導活性を有する請求項1記載のペプチド。
  3. 配列表の配列番号2で表されるアミノ酸配列中の7個以上の連続したアミノ酸から成るペプチドであって配列番号2のaa10-19、aa49-61、aa74-83、aa96-117、aa152-161、aa177-185、aa202-211、aa246-261又はaa326-354の領域内の連続するアミノ酸配列を有し免疫誘導活性を有する請求項2記載のペプチド。
  4. 前記配列番号2のaa49-61の領域内の連続するアミノ酸配列を有するペプチドが配列番号8、配列番号10又は配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のペプチド。
  5. 前記配列番号2のaa96-117の領域内の連続するアミノ酸配列を有するペプチドが配列番号3又は配列番号18に示されるアミノ酸配列を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のペプチド。
  6. 前記配列番号2のaa246-261の領域内の連続するアミノ酸配列を有するペプチドが配列番号11又は配列番号13に示されるアミノ酸配列を有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のペプチド。
  7. 前記配列番号2のaa326-354の領域内の連続するアミノ酸配列を有するペプチドが配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のペプチド。
  8. 配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17又は配列番号18に示されるアミノ酸配列を有する請求項3記載のペプチド。
  9. 配列番号3又は配列番号18に示されるアミノ酸配列を有する請求項8記載のペプチド。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  11. 請求項11記載のポリヌクレオチドを含み、細胞中で該ポリヌクレオチドを発現することができる組換えベクター。
  12. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含有する医薬。
  13. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤。
  14. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの、癌の治療及び/又は予防剤を製造するための使用。
  15. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの有効量を個体に投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法。
  16. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドを含む、抗原提示細胞の処理剤。
  17. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドの、抗原提示細胞の処理剤の製造のための使用。
  18. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドと抗原提示細胞とを接触させることを含む、抗原提示細胞の処理方法。
  19. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドとHLA分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞。
  20. 請求項19記載の単離抗原提示細胞をT細胞と接触させることを含む、T細胞の活性化方法。
  21. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドとHLA分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞。
  22. 請求項19記載の単離抗原提示細胞又は請求項21記載の単離T細胞を有効成分として含有する医薬。
  23. 請求項19記載の単離抗原提示細胞又は請求項21記載の単離T細胞を有効成分として含有する癌の治療及び/又は予防剤。
  24. 請求項19記載の単離抗原提示細胞又は請求項21記載の単離T細胞の有効量を投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法。
  25. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のペプチドを対応抗原とする抗体又はその抗原結合性断片。
  26. 請求項25記載の抗体又はその抗原結合性断片を含む癌の診断剤。
  27. 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質又は該アミノ酸配列と80%以上の同一性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質であって免疫誘導活性を有するタンパク質を有効成分として含有する癌特異的免疫誘導剤。

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