JPWO2006051665A1 - 位相折り返し展開方法とこの方法を用いた磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Abstract
本発明に係る位相折り返し展開方法では、最初に位相データのグループ分けを行い(S1)、次にグループを対象とした位相折り返し展開を行ったのち(S2)、対象グループの合併を行う(S3)という手順を繰り返し適用する。折り返し展開処理が進むほどグループが大きくなっていき、その分グループ間の位相差に関する情報が増えるため、折り返し展開失敗のもとになりやすい位相データの影響が次第に小さくなり、従来法よりロバスト性が高い結果が得られる。また、1度折り返し展開したグループは合併により作られる新たなグループで引き続き折り返し展開を行っていくため、1度位相を確定しても他のグループとの位相で整合をとるべく何度でも折り返し展開される。この結果、連鎖的な折り返し展開失敗の発生を防ぐことができ、従来法より折り返し展開の失敗も減り、安定性が向上する。
Description
本発明は複数の位相データの位相をそれぞれ2πの範囲に折り返し展開して位相を確定する位相折り返し展開方法に関するもので、例えば、MRI(磁気共鳴イメージング)装置におけるデータ処理で位相マップ作成時に適用される技術に関する。
周知のように、MRI装置では磁場の不均一成分を補正するシミング処理を行うために、磁場の不均一性による位相の変動量の分布を表した位相マップが作成される。このとき、2πの範囲に折り返されて求められる位相φの真の値φ+2nπ(n:整数)を求める、位相折り返し展開を行う必要がある。
位相折り返し展開の従来例として、まず、文献“Radiology 1994;192:555−561”に記載されている方法があげられる。この文献に記載される方法は、ある1点の位相データの位相を確定し、以降確定した位相データの位相を参照して、値のまだ確定していない位相データのどれか1つに対して折り返し展開を行って位相を確定する手順を繰り返すという手法である。すなわち、この方法は、近傍の位相データ同士では位相変化は急峻でないことを前提として、位相を確定したデータの近傍に存在する未確定位相データの真の位相の推測を行う点に特徴がある。
しかしながら、実際には、組織の境界に位置する位相データや、ノイズを含む位相データなど、周囲に比べて位相変化が急峻であるデータが存在する場合がある。このような位相データに対して上記の方法に沿って処理した場合には、近傍の確定データを参照して位相折り返し展開を行うことになるため、真の位相を誤推測してしまうおそれが高くなる。また、確定した位相データの位相は正しいものとして処理を進めてしまうため、1度折り返し展開に失敗して真の位相を誤推測したまま位相を確定してしまうと、誤推測された位相データを参照する以降の折り返し展開で、連鎖的に真の値の誤推測が発生してしまう。
図1は、組織の境界に位置する位相データやノイズを含む位相データなど、周囲に比べて位相変化が急峻であるデータが存在する場合に、従来の位相折り返し展開方法ではノイズの影響によって折り返し展開が失敗する例を示している。
この例から明らかなように、従来方法では、位相データに対して、近傍の確定データを参照して位相折り返し展開を行うため、真の位相を誤推測するおそれが高い。また、確定した位相データの位相は正しいものとして処理を進めるため、1度折り返し展開に失敗して真の位相を誤推測したまま位相を確定してしまうと、誤推測された位相データを参照する以降の折り返し展開で、連鎖的に真の値の誤推測が発生してしまう。このように、従来方法では1つ1つのデータ間で位相の整合をとるべく逐次的に位相折り返し展開を行うため、先に挙げた周囲に比べ位相変化が急峻なデータが1つあっただけで、広範囲に渡って位相折り返し展開の失敗が発生してしまうという問題がある。
そこで、このようなデータが及ぼす影響を最終的に小さくするために、1つ1つ位相折り返し展開を行うのではなく、複数の位相データ間で位相の整合をとるべく、分断された領域間で位相折り返し展開を行うという方法が日本特許出願公開2002−306445公報に提示されている。
但し、この文献に記載される方法では、領域間で位相折り返し展開を行う前に、まず各領域内で位相折り返し展開を行うことが前提となっており、領域内部の折り返し展開をどのように行うかについては言及されていない。このことから、各領域の内部においては先に挙げた逐次的な位相折り返し展開の方法と同じ問題が解消されずに依然として存在すると推測される。
本発明の課題は、真の値を誤推測しやすい位相データの影響を抑制することができ、ロバスト(robust)で安定性の高い位相折り返し展開を行うことのできる位相折り返し展開方法と、この方法を用いて理想的な位相マップを作成し、磁場の不均一成分を適切に補正することのできる磁気共鳴イメージング装置を提供することにある。
本発明に係る位相折り返し展開方法は、対象領域における複数の位相データの位相をそれぞれ折り返し展開して位相を確定する位相折り返し展開方法において、所定の条件のもとで前記位相データのグループ分けを行う第1の手順と、前記第1の手順で分けられた少なくとも2つ以上のグループ間で位相の整合をとる第2の手順とを具備し、前記第2の手順は、前記グループ分けされた任意のグループ内の全位相データの位相を所定量シフトしてグループ単位で折り返し展開を行った後に他のグループとの間で位相の整合をとるようにしたものである。
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、磁場の不均一成分を補正することを目的としてシミング処理を行う装置において、前記磁場の不均一性による位相の変動量の分布を表した位相マップの各位相データを所定の条件のもとでグループ分けするグループ分け手段と、前記グループ分け手段で分けられた少なくとも2つ以上のグループ間で位相の整合をとる位相整合手段とを具備し、前記位相整合手段は、前記グループ分けされた任意のグループ内の全位相データの位相を所定量シフトしてグループ単位で折り返し展開を行った後に他のグループとの間で位相の整合をとるようにしたものである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明で提案する位相折り返し展開方法は、大きく分けると図2に示すように3つの手順からなる。1つ目は、位相折り返し展開処理を行う前に、位相データのグループ分けを行う手順S1である。2つ目は、グループ分けされたグループのうち2つ以上の任意のグループを対象に、グループ間で位相の整合をとるべく位相折り返し展開を行う手順S2である。そして3つ目は、折り返し展開の対象としたグループの一部または全部を合併する手順S3である。
本手法の処理順序を説明する。まず、位相データのグループ分けを最初に行う。次に、先に説明したグループを対象とした位相折り返し展開を行ったのち、対象グループの合併を行うという手順S1〜S3を、判断手順S4により終了条件を満たすまで繰り返し適用するという流れになる。
大きく3つに分けた手順それぞれについて説明を行う。
初めは位相データのグループ分けの手順に関する説明である。以下にまだ所属グループの決まっていない位相データがあるグループに含めるかどうかを決めるときのルールに関して説明を行う。
(1)あるグループに属する位相データとまだ所属グループの決まっていない位相データとの位相差がある閾値以内であれば、未所属データを同じグループとし、閾値を越える場合には未所属データは別のグループとする。
(1−1)この閾値は、データ間の差がこれより大きければ位相折り返しが起こっているものとする指標として一般に用いられる180[deg]より小さな値に設定することが最低条件である。この閾値が小さければ小さいほどグループ分けが細かく行われるわけであるが、例として30〜90[deg]に設定するのが望ましい。但し、先に挙げた最低条件を満たせばこの限りではないことは言うまでもない。また、未所属位相データと位相差をとる相手となる所属確定済み位相データは、未所属データの近傍に位置するデータにすることが望ましい。例えば2次元や3次元において、上下左右あるいは斜めに隣接するデータを差分相手に設定する。
(1−2)上記(1−1)は、グループが同じかどうかを決める閾値が予め設定され、位相差をとる相手も近傍に限られていたが、それとは異なるグループ決めの例を述べる。未所属位相データの差分相手として、例えばグループの重心に位置する位相データなど、近傍に限らず任意の位置のデータを位相差のペアとする。このとき、閾値を(1−1)と同じようにある値に固定して用いてもよいが、閾値として両データの距離に応じて重み付けした値を用いるようにした方がより効果的である。また、位相差を指標としない方法もある。その例として、所属グループデータと未所属グループデータとの間で位相の値でフィッティングした近似直線を引き、近似直線の端に未所属グループデータを含める前後で近似式の傾きの変動がある値以下なら同じグループとし、違えば別グループという条件にしてもよい。
(2)まだ所属グループの決まっていない位相データのグループ決めに、(1)では所属済み位相データを1つ対応させていたが、それ以外の方法として、グループの位相データの平均値と未所属位相データの位相との差がある閾値以内であれば同じグループ、違えば別グループとする条件にしてもよい。この場合の閾値は、(1)と同様に、180[deg]より小さな値に設定することはもちろんであるが、例えば30[deg]以下とするなど、(1)で望ましいとされる閾値よりは小さめに設定した方が望ましい。また、グループの位相データの平均値はそのグループに属する全位相データの平均をとってもよいし、例えば未所属位相データの近傍に位置するデータに限定するなど、グループの一部の位相データで平均をとってもよい。
(3)他の方法として、仮に未所属位相データをグループに含めた場合に、その前後でグループ内における位相データの位相分散の変動が例えば10%以内など、ある範囲内にあればそのグループに含めるという条件にしてもよい。この場合も、(2)と同様、分散をとる範囲をそのグループ全部に設定してもよいし、例えば未所属位相データ近傍に限定するなど、グループの一部の位相データで分散をとってもよい。
実際のグループ分け手順の例としては、初めは所属グループの決まっている位相データは1つも無いので、任意の位置にある位相データを始点として設定し、始点の位相データに最初のグループIDを与えることから始める。次に、始点と2次元または3次元において上下左右あるいは斜めに隣接する未所属位相データについて、始点のグループと同じか別かを、先にあげた(1)から(3)の条件のどれかを用いて決定する。その後は同じように所属グループの決まった位相データのどれかに隣接する未所属位相データのグループ決めを(1)から(3)のどれか1つの条件を用いて決定する。以上の作業を全位相データのグループが決まるまで繰り返していく。
尚、始点をどこに設定してどのような順番でグループ分けを進めていくかは、例えば中央の位相データを始点にしてそこから螺旋状に辿っても、端を始点にして軸方向に1行1行辿ってもよく、特に指定するものではない。但し、グループ決めを行う順番は位相データにグループ分けで漏れが出ないように設定しなければならない。
また、グループ分けの条件を(1)から(3)のどれにするかは終始同じ条件に固定するようにしてもよいし、処理の途中で条件を変えてもよく自由である。但し、グループに属する位相データが少ないうちは(1)の(1−1)の条件を使う方が望ましい。
ここまでは位相データの位相を利用したグループの分けの方法を説明したが、他のグループ分けの例として、例えば上記と同様のグループ分けを位相データの位相ではなく絶対値に基づいて行ってもよい。他に、位相データの情報を利用しない全く別のグループ分けの例として、位相データを例えば2次元なら矩形、3次元なら直方体というように任意の形状に区分けしてもよい。
また、位相データのグループ分けを行うのに、必ずしも最初に得られる位相データそのものを対象に行う必要はなく、位相データに何らかの加工を行ったものを対象にしてグループ分けを行ってもよい。加工の内容としては、例えば、微分フィルタや平滑化フィルタなど任意のフィルタ処理を行ったり、任意の算術演算を行ったり、背景など信号値の小さい位相データを閾値処理により予め位相データから除外したりするなどが考えられる。
次にグループの合併に関して例を挙げて説明を行う。まず、位相データのグループ分けにより、A、B、C、D、Eの5つのグループができたとする。折り返し展開の対象として2つ以上の任意のグループ、例えばAとBを選択し、両グループ間で位相の整合をとるべく折り返し展開を行う。
そののち、A、B両グループを合併し、Fという新たなグループを作る。この段階で残るグループはC、D、E、Fの4つになる。先と同様に、2つ以上の任意のグループ、例えばC、D、Eを対象に各グループ間で位相の整合をとるべく折り返し展開を行い、グループの合併を行う。このとき、グループの合併はC、D、Eの3グループを一度に合併してもよいし、CとEなど一部のグループだけを合併してもよい。
D、Eの2グループを合併してGという新たなグループを作ったとして話を進めると、この時点で残るグループはCとFとGである。次に、CとFとGを対象に折り返し展開を行い、3グループを合併してHというグループができた時点で位相データのグループはH1つとなり、本手法で提案する位相折り返し展開処理は終了である。
尚、この例では、折り返し展開と合併を繰り返す終了条件はグループが1つになるまでであるが、その条件についてはこの限りではない。例えば、折り返し展開と合併を繰り返す回数や、グループ数、グループの境界数、合併終了時の位相の分散などを指標としたりするなど、終了条件を任意に設定してもよい。また、位相折り返し展開処理の対象として選択するグループを決定する条件も任意に設定もしてよい。対象グループの選択の条件として、例えばグループID(先の例でいうとA、B、…)、所属位相データ数、隣接グループ数などの大小で優先順位を決め、優先順位の最も高いグループおよびそのグループの近傍に位置するグループを対象として選択したり、対象グループ全部あるいはグループ間の位相差や分散が最小となるグループの組み合わせを対象として選択したりするなどが例として挙げられる。
最後に、グループを対象とした位相折り返し展開処理およびグループの合併に関しての説明を行う。以下では、簡単のために図3のように位相データが2次元平面上にaからdまで4つしかなく、図のように2つにグループ分けされているものとする。
本手法による位相折り返し展開処理は、対象グループの位相に基づいて算出した評価値に従って行われる。位相に基づいて算出する評価値が、どのような条件を満たすようにするかについては特に限定するものではないが、以下ではその例をいくつか挙げつつ位相折り返し展開の説明を行うことにする。
(A)グループ間の境界近傍に位置する位相データ同士の位相差の平均を評価値とし、評価値が最小となるようにグループ内の位相データの位相を2nπシフトする。
境界近傍をどう設定するかによって位相差をとるデータの組み合わせの数が変わるが、これも特に限定するものではない。図3で言えば、例えば上下左右の4近傍ならば、グループAとBの位相差をとる組み合わせはaとb、aとcの2組であり、さらに斜めも加えた8近傍ならば、4近傍の組み合わせにaとdを加えた3組となる。
但し、位相差の平均を最小にするnが決まっても、片方のグループを2nπ+C(Cは任意)、もう片方のグループをCだけシフトしてやれば、位相差の平均が最小になるシフト量は、Cのとり方によって無限の組み合わせだけ値を持つことになってしまう。そこで、シフト量はC=0、すなわち、一方のグループの位相シフトは行わないものとする。また、位相シフトを行うグループをA、Bどちらに設定するかによってnの符号が異なり、その値が変わる。このため、位相をシフトするグループは、例えば合併の説明のときに述べたグループの優先順位の大小に従って決めるなどすればよい。
以下では、グループBの位相データの位相をシフトしてAとの平均位相差を最小にするものとし、位相差をとる組み合わせを4近傍として説明を続ける。
位相データpの位相をφpとすると、グループB、A間の評価値αBAは
αBA=((φb−φa)+(φc−φa))/2
である。このときnは次の式によって求める。
n=−int((int(αBA/π)+sign(αBA))/2)…(1)
尚、int(x)はxの小数点以下を切り捨てた整数部分を意味し、sign(x)の値はxが負のとき−1、それ以外では1となることを表している。nが求められた場合には、グループBに属する全位相データの位相(φb、φc、φd)に2nπ加えてφb、φc、φdの値を更新し、グループBをAに合併して、図4に示すように、aからdの4つの位相データを持つ新たなグループCを作る。
αBA=((φb−φa)+(φc−φa))/2
である。このときnは次の式によって求める。
n=−int((int(αBA/π)+sign(αBA))/2)…(1)
尚、int(x)はxの小数点以下を切り捨てた整数部分を意味し、sign(x)の値はxが負のとき−1、それ以外では1となることを表している。nが求められた場合には、グループBに属する全位相データの位相(φb、φc、φd)に2nπ加えてφb、φc、φdの値を更新し、グループBをAに合併して、図4に示すように、aからdの4つの位相データを持つ新たなグループCを作る。
(B)グループに属する一部または全部の位相データの位相の平均値の差を評価値とし、評価値が最小となるようにグループ内の位相データの位相を2nπシフトする。
これは、図3の例において、αBA=(φb+φc+φd)/3−φaとする以外は(A)と同じである。この式ではグループBの位相の平均値を全位相データで算出しているが、全部で無くても、例えば4近傍に限定してαBA=(φb+φd)/2−φaとするなど、一部の位相データの平均にしてもよい。
(C)対象グループの一部または全部の位相データの分散を評価値とし、評価値が最小となるようにグループ内の位相データの位相を2nπシフトする。
これは、(B)で平均の差が少なくなるように位相をシフトした代わりに、分散が最も小さくなるように位相をシフトすることに他ならない。対象グループがAとBである図3の例で言えば、分散を計算する対象となる位相データは全位相データ(aからdの4つ)でも合ってもよい。また、例えば4近傍で隣接するデータ(dを除く3つ)というように、一部のデータのみで計算を行ってもよい。
以上は、図3に示すように、1対1のグループの合併に関する折り返し展開を説明したものであるが、3つ以上のグループを1つのグループに合併させる場合も同様である。例えば位相の差や平均や分散など、位相に基づいて得る評価値がある条件を満たすように各グループの位相シフト量を決定すればよい。
次に、3つ以上のグループを対象として、対象グループの一部のグループに限定して合併を行う方法について説明する。簡単のため、図5に示すように4つの位相データが3つのグループに分かれているとする。
いま、グループAの位相データをシフトしてBかCのどちらかと合併させることを考える。この場合、合併の組み合わせごとに評価値を複数求める。評価値の算出法として、先ほど説明した(A)のやり方を用いるものとし、位相差をとる境界を8近傍とすると、αAB=φa−φb、αAC=((φa−φc)+(φa−φd))/2である。そして、合併先の候補ごとに得られた評価値の中で最適な値を持つものに対してnを計算し、グループAのデータの位相をシフトし、合併する。
何をもって最適とするかの評価値に対する条件については特に限定するものではないが、例えば評価値の絶対値が最小となるものを合併先とする、としてもよい。また、評価値の算出方法は、先で述べたようにどのようなやり方でもよく、例えば位相の平均や分散が最小となる組み合わせについて折り返し展開を行って合併を行ってもよい。
(具体例)
1.位相データ取得結果
簡単のために、2次元平面上で図6(a)に示すような3×3の計9個の位相データが得られたとする。尚、図に記されている値は各データにおける位相の値を表したもので、その単位は[deg]である。位相が−180〜180[deg]の範囲に折り返された図6(a)に示すような位相データを例にして、本発明で提案する位相折り返し展開処理の説明を行う。
1.位相データ取得結果
簡単のために、2次元平面上で図6(a)に示すような3×3の計9個の位相データが得られたとする。尚、図に記されている値は各データにおける位相の値を表したもので、その単位は[deg]である。位相が−180〜180[deg]の範囲に折り返された図6(a)に示すような位相データを例にして、本発明で提案する位相折り返し展開処理の説明を行う。
2.位相データのグループ分け
得られた位相データに対して折り返し展開を行う前に、まず位相データのグループ分けを行う。グループ分けをするに当たり、例えば、上下左右の4近傍に隣接するデータ同士の位相を比較したとき、その差が90[deg]以内であれば同じグループ、超えていれば違うグループというルール(前述の(1−1)に書いてあるルール)を適用するとする。そのルールのもとでグループ分けを行った結果、図6(b)に示すように、位相データは4つのグループA,B,C,Dに分けられることになる。
得られた位相データに対して折り返し展開を行う前に、まず位相データのグループ分けを行う。グループ分けをするに当たり、例えば、上下左右の4近傍に隣接するデータ同士の位相を比較したとき、その差が90[deg]以内であれば同じグループ、超えていれば違うグループというルール(前述の(1−1)に書いてあるルール)を適用するとする。そのルールのもとでグループ分けを行った結果、図6(b)に示すように、位相データは4つのグループA,B,C,Dに分けられることになる。
3.グループ単位の位相折り返し展開
位相データのグループ分けが終わった後に行うグループ単位の位相折り返し展開を、例えば以下のルールを適用するものとして、説明を行う。
位相データのグループ分けが終わった後に行うグループ単位の位相折り返し展開を、例えば以下のルールを適用するものとして、説明を行う。
・あるグループを対象に位相折り返し展開を行うとき、その対象グループと上下左右4近傍で隣接するグループにおいて、境界に位置する位相データ同士の位相差が最も小さくなるように対象グループの全データの位相を2nπシフトする折り返し展開を行ったのち、対象グループと隣接グループを合併する。
・1回の折り返し展開につき1対1のグループの合併を行い、グループが1つになるまで処理を続ける。
・位相折り返し展開の対象グループに対して、上下左右の4近傍で隣接するグループが複数存在する場合、位相折り返し展開実施により境界に位置する位相データ同士の位相差の平均が最も小さくなるグループに対象グループを合併する。
4.折り返し展開の対象グループ指定
まず、折り返し展開の対象グループを指定する。対象グループの指定順については特に指定するものではないが、例えば図6(c)に示すようにグループDを対象グループとする。
まず、折り返し展開の対象グループを指定する。対象グループの指定順については特に指定するものではないが、例えば図6(c)に示すようにグループDを対象グループとする。
5.対象グループ群
対象グループDの合併先の候補となる、4近傍で隣接するグループは、図6(d)に示すようにBとCの2つ存在する。先に取り決めたように、1回の折り返し展開では1対1のグループの合併しか行わないというルールだったため、合併の組み合わせの候補(対象グループ群)が複数存在する場合、DとB、DとCのそれぞれの対象グループ群について評価値を求め、その値が最適な対象グループ群でグループの合併を行う。
対象グループDの合併先の候補となる、4近傍で隣接するグループは、図6(d)に示すようにBとCの2つ存在する。先に取り決めたように、1回の折り返し展開では1対1のグループの合併しか行わないというルールだったため、合併の組み合わせの候補(対象グループ群)が複数存在する場合、DとB、DとCのそれぞれの対象グループ群について評価値を求め、その値が最適な対象グループ群でグループの合併を行う。
6.対象グループ群ごとの評価値の計算
まず、対象グループDを折り返し展開したときの位相シフト量を対象グループ群ごとに求める。
まず、対象グループDを折り返し展開したときの位相シフト量を対象グループ群ごとに求める。
図6(e)に示すDとBから成る対象グループ群1の場合で位相差の計算を行うと、(140−(−150))/1=290なので、(1)式よりn=−1が求められる。したがって、折り返し展開の結果、対象グループのデータは−2πつまり−360[deg]シフトすることになるので、対象グループのデータは140−360=−220[deg]となる。同様に、図6(f)に示すDとCから成る対象グループ群2で折り返し展開を行った場合の計算を行うと、こちらも対象グループのデータは−220[deg]となる。
先に決めたルールでは、対象グループ群ごとに折り返し展開を実施した後の境界データ同士の平均位相差を評価値として、その値が小さい方のペアで1対1の合併を行うというルールであったため、対象グループ群ごとに評価値の計算を行うと、以下のようになる。
対象グループ群1の場合:|−220−(−150)|/1=70
対象グループ群2の場合:|−220−(−140)|/1=80
したがって、対象グループDの合併先は、評価値の小さいBが選択されることになる。
対象グループ群1の場合:|−220−(−150)|/1=70
対象グループ群2の場合:|−220−(−140)|/1=80
したがって、対象グループDの合併先は、評価値の小さいBが選択されることになる。
7.グループの合併
グループDに位相折り返し展開を行い、グループBに合併した時点で、存在する位相データのグループは図6(g)に示すように3つ(A,B,C)である。先に述べたルールでは、グループが1つになるまでグループ単位の折り返し展開を繰り返し適用するということが終了条件としたため、再度対象グループを指定して、同様の処理を続けることになる。そこで、今度はグループCを対象グループとして、説明を続ける。
グループDに位相折り返し展開を行い、グループBに合併した時点で、存在する位相データのグループは図6(g)に示すように3つ(A,B,C)である。先に述べたルールでは、グループが1つになるまでグループ単位の折り返し展開を繰り返し適用するということが終了条件としたため、再度対象グループを指定して、同様の処理を続けることになる。そこで、今度はグループCを対象グループとして、説明を続ける。
8.グループ単位の位相折り返し展開の繰り返し適用
対象グループCに対する対象グループ群は、図6(h),(i)に示すように2つ存在する。CとAから成る対象グループ群3における境界データの平均位相差は
((−140)−140)+((−80)−160))/2=−260
であるので、前述の(1)式よりn=1となる。したがって、対象グループ群3においては、対象グループCの折り返し展開によるデータのシフト量は+360[deg]である。一方、CとBから成る対象グループ群4における平均位相差は
((−140)−(−220))/1=80
であるので、n=0となる。したがって、対象グループ群4においては、対象グループCの折り返し展開による位相シフト量は0、すなわち対象グループCのデータは変動しない。位相折り返し展開後においてそれぞれの対象グループ群で評価値の計算を行うと、対象グループ群3の場合、
|(220−140)+(280−160)|/2=100
であり、対象グループ群4の場合、
|(−140)−(−220)|/1=80
であるため、対象グループ群4が最適となる。したがって、今回はグループCがグループBに合併することになる。
対象グループCに対する対象グループ群は、図6(h),(i)に示すように2つ存在する。CとAから成る対象グループ群3における境界データの平均位相差は
((−140)−140)+((−80)−160))/2=−260
であるので、前述の(1)式よりn=1となる。したがって、対象グループ群3においては、対象グループCの折り返し展開によるデータのシフト量は+360[deg]である。一方、CとBから成る対象グループ群4における平均位相差は
((−140)−(−220))/1=80
であるので、n=0となる。したがって、対象グループ群4においては、対象グループCの折り返し展開による位相シフト量は0、すなわち対象グループCのデータは変動しない。位相折り返し展開後においてそれぞれの対象グループ群で評価値の計算を行うと、対象グループ群3の場合、
|(220−140)+(280−160)|/2=100
であり、対象グループ群4の場合、
|(−140)−(−220)|/1=80
であるため、対象グループ群4が最適となる。したがって、今回はグループCがグループBに合併することになる。
9.提案手法適用による最終結果
この時点でグループは図6(j)に示すようにまだ2つ(A,B)存在しており、処理適用の終了条件を満たさないので、例えばグループBを対象グループとして、さらに処理を続ける。このときの対象グループ群はBとAの1組だけであるため、評価値計算による対象グループ群選択までには至らず、グループBに対して折り返し展開を行い、グループAに合併するとグループは1つとなり、本発明で提案した手法の適用は終了である。
この時点でグループは図6(j)に示すようにまだ2つ(A,B)存在しており、処理適用の終了条件を満たさないので、例えばグループBを対象グループとして、さらに処理を続ける。このときの対象グループ群はBとAの1組だけであるため、評価値計算による対象グループ群選択までには至らず、グループBに対して折り返し展開を行い、グループAに合併するとグループは1つとなり、本発明で提案した手法の適用は終了である。
図6(k)は、グループ単位の位相折り返し展開により最終的に得られた位相マップを表したものである。
尚、ここまでの説明ではグループ分けの条件や位相差分を計算する位相データのペアの取り方、グループ単位の位相折り返し展開処理の終了条件などは、処理中は常に同じ条件であったが、この条件はあくまでも一例であり、条件に関してはこの限りでなく、任意の条件を取り得る。また、処理の途中で条件が変わることもあり得る。
以上が本発明における手順の説明である。この説明から明らかなように、本発明では折り返し展開処理が進むほどグループが大きくなっていき、その分グループ間の位相差に関する情報が増えるため、折り返し展開失敗のもとになりやすい位相データの影響が次第に小さくなり、従来法よりロバスト性が高くなり、より正しい結果が得られる。また、1度折り返し展開したグループは合併により作られる新たなグループで引き続き折り返し展開を行っていくため、1度位相を確定しても他のグループとの位相で整合をとるべく何度でも折り返し展開される。この結果、連鎖的な折り返し展開失敗の発生を防ぐことができ、従来法より折り返し展開の失敗も減り、安定性が向上する。
尚、上記説明において、位相折り返し展開については、簡単のために位相データが2次元上にのみ存在している場合に限定していたが、位相データが3次元上にある場合も同様である。そのときは境界の近傍として見る位相データが3次元方向にも拡張されるだけである。
また、本手法の適用を全位相データに対して一度に行ってもよいし、位相データをある領域に分けて、それぞれの領域で独立して適用したのちに大きな領域で適用する、というように、本手法の適用領域を広げつつ段階的に行ってもよい。例えば、2次元平面単位でまず独立して本手法の適用を行い、2次元平面状で位相の整合がとれたのち、各2次元平面の位相データを1つのグループとしてまとめ、今度は3次元を対象として本手法を適用してもよい。その際、段階ごとに位相折り返し展開で用いる評価値は継続して同じ基準でもよいし、段階によって変えてもよい。
また、ここまでで説明した手法の適用により位相データ間の位相の整合はとれるが、その値は全体にいくつかオフセットが加えられたままになっている可能性がある。位相間で整合をとることだけが目的ではなく、位相に何らかの意味があり、処理によっては適切な値として使うために全体の位相データをある量シフトしてオフセットの調整を行いたいという場合が考えられる。このような場合には、例えば本手法の適用前後で位相の平均値など何らかの評価値を比べ、それが最小となるように全体の位相をシフトするということが考えられる。
他の例として、MRI装置におけるシミング等のデータ処理に本発明を適用する場合、中心周波数を別に求めておき、本手法適用後にその分だけ位相をシフトするなどが考えられる。
以下、本発明が適用されるMRI装置の一実施形態について説明する。
図7は本実施形態によるMRI装置の基本的な構成を示す構成図である。被検体Pを収容できるように円筒状の内部空間を有するガントリ20には、静磁場磁石1、X・Y・Z軸傾斜磁場コイル2、RFコイル3、多チャンネル型シムコイル15が装備される。常電導磁石又は超電導磁石である静磁場磁石1は、静磁場制御装置4から電流供給を受けて円筒内部に通常、Z軸に沿って静磁場を形成可能に構成されている。X・Y・Z軸傾斜磁場コイル2は、X、Y、Z軸それぞれに対応する傾斜磁場電源7,8,9から電流供給を受けて、任意に撮影断面や領域を決めたり、磁気共鳴信号に空間的位置情報を与えたりするためのX、Y、Z各軸の傾斜磁場を作る3組のコイルから構成されている。これら3方向の磁場強度が全て線形に変化する領域内で磁気共鳴信号の収集が可能である。磁気共鳴信号の収集時には、被検体Pは寝台13の天板に載置された状態で、天板のスライドに伴って撮像領域に挿入される。
RFコイル3は、RFパルス(高周波磁場または回転磁場ともいう)を被検体に送信し、被検体からの磁気共鳴信号を受信するためのコイルである。このように送受信にRFコイル3を兼用するのではなく、送信用コイルと受信用コイルとを別体で設けてもよい。送信器5は、対象原子核に固有のラーモア周波数に応じた高周波パルスをRFコイル3に供給して、対象原子核のスピンを励起状態にするためのものである。受信器6は、励起されたスピンが緩和する過程で放出される高周波の磁気共鳴信号をRFコイル3を介して受信し、これを増幅し、直交位相検波し、さらにアナログ/ディジタル変換する機能を有している。
コンピュータシステム11は、受信器6でディジタル化された磁気共鳴信号を取り込み、これを2次元フーリエ変換(2DFT)することにより磁気共鳴画像を再構成する。この画像は表示部12に表示される。シーケンサ10は、送信器5、受信器6、XYZ各軸の傾斜磁場電源7,8,9の各動作タイミングを制御して、シミング値を決めるためのパルスシーケンスやイメージングのためのパルスシーケンスを実行する。
本実施形態では、シムコイルによるシミングと、傾斜磁場にオフセットを与えることによるいわゆるFUC法(Field Uniformity Correction法)と呼ばれるシミングとを併用する。FUC法とは、傾斜磁場Gx,Gy,Gzにオフセットを重畳することにより、静磁場の1次の不均一成分を直接的に補正するものであるが、本実施形態ではこのFUC法を使って、これよりも高次、つまり2次の不均一成分についても間接的に補正することを可能とする。この間接的な補正を実現する原理はシミング値の決定方法にあり、詳細は後述する。
多チャンネル型シムコイル15には、FUC法で直接的及び間接的に補正対象としない高次の不均一磁場成分を補正対象とし、且つ補正対象とする静磁場の不均一磁場成分が各々異なる複数のシムコイルを含んでいる。一般的には、13チャンネルや18チャンネル分のシムコイルが準備されている。本実施形態ではFUC法と同様に、シムコイル各々が直接的に補正する不均一成分以外の成分も間接的に補正することを可能とする。シムコイル電源16は、多チャンネル型シムコイル15の複数のシムコイル各々に独立して電流(シム電流)を供給できるように構成されている。
シムコントローラ14は、受信器6でディジタル化された磁気共鳴信号を取り込み、これに基づいて空間的な磁場分布を求め、この磁場分布に基づいて成分毎にシミング値を求める。そして、多チャンネル型シムコイル15が対象とする不均一成分のシミング値を、データ収集する部分領域の移動に応じて変えながらシムコイル電源16に供給する。シムコイル電源16は、シミング値に応じたシム電流を対応するシムコイルに供給する。
また、シムコントローラ14は、1次の不均一成分のシミング値をオフセット値として、データ収集する部分領域の移動に応じて変えながらシーケンサ10に供給する。シーケンサ10は、このオフセット値を規準値に加算して、この加算値を傾斜磁場電源7,8,9に供給する。傾斜磁場電源7,8,9は、加算値に応じた傾斜磁場電流をX・Y・Z軸傾斜磁場コイル2に供給する。これにより1次成分がシミングされる。シムコントローラ14は、0次成分、つまり共鳴周波数のずれに対するシミング値に応じて、受信器6内における直交位相検波の参照周波数を調整することにより、0次成分をシミングする。
次にシミング値の決定方法について例に説明する。
まず、シミングとは、対象領域の静磁場の均一性を極力向上させるために不均一な磁場成分を補正することをいい、シミング値を求める方法としては、次の方法がある。
(1)対象領域からの磁気共鳴信号を、傾斜磁場を重畳することなく取得し、この信号減衰時定数が最も長いシム電流値を求める。
(2)対象領域からの磁気共鳴信号を、傾斜磁場を重畳することなく取得し、この磁気共鳴信号をフーリエ変換し、その変換データの周波数帯域が最小になるようなシム電流値を求める。
(3)磁場分布を位相マップとして空間的に求め、この磁場分布をシミング対象としている磁場成分毎に展開(分解)し、磁場成分毎に磁場分布が安定的となるような磁場強度を得るに要するシム電流値を求める。
(1)対象領域からの磁気共鳴信号を、傾斜磁場を重畳することなく取得し、この信号減衰時定数が最も長いシム電流値を求める。
(2)対象領域からの磁気共鳴信号を、傾斜磁場を重畳することなく取得し、この磁気共鳴信号をフーリエ変換し、その変換データの周波数帯域が最小になるようなシム電流値を求める。
(3)磁場分布を位相マップとして空間的に求め、この磁場分布をシミング対象としている磁場成分毎に展開(分解)し、磁場成分毎に磁場分布が安定的となるような磁場強度を得るに要するシム電流値を求める。
このうち最良の方法は(3)の方法であり、ここでは(3)の方法を採用するものとする。この方法では、例えば、非常に薄い3mm厚のスライス領域が関心対象であり、スライス方向は最も一般的なZ方向と考えると、Z方向の不均一性を表わす成分z1,z3,z5,…などを薄い1枚のスライス領域だけの磁場分布から求めると、精度低下が懸念される。本実施形態では、広い領域、つまり複数枚のスライス領域全体の磁場分布から求めることでこの懸念を解消する。
本実施形態では、静磁場の不均一成分を補正するにあたり、空間的に異なる部分領域毎にシミング値を求め、部分領域毎に異なるシミング値でもって静磁場の不均一成分を補正する。また広い領域、例えばマルチスライス法では複数スライス領域にわたる広い領域について磁場分布を、補正対象とする静磁場のn次項(FUC法ではn=1)の不均一成分よりも高次の磁場分布(FUC法では2次の磁場分布)を求め、この磁場分布の形状をn次方程式(FUC法では1次方程式)で近似し、このn次方程式に基づいて各磁場成分のシミング値を求める。なお、上述した空間的に異なる部分領域とは、例えば、図8(a)に示すような任意断面領域、図8(b)に示すようなマルチスライス法によるスライス領域のことをいう。
次に0次成分と1次成分のシミング値の決定方法について、マルチスライス法を併用する場合を例に具体的に説明する。
図9は、スライス領域#1〜#3に直交するY−Z面の磁場分布を示す。一般には、スライス領域#1〜#3にわたる全体領域の平均的な1次成分を上記(1)〜(3)等の何らかの方法で求め、全てのスライス領域#1〜#3について同一のシミング値(オフセット値)を用いて補正を行なうが、本実施形態では、スライス領域毎に1次成分のシミング値を求め、スライス領域毎に異なるシミング値を用いて、傾斜磁場にオフセットを与えるものとする。
図10(a)にZ軸方向の磁場分布を示す。この磁場分布bは、例えば放物線様の曲線を示し、スライス領域#1〜#3全体で見ると、2次以上の強度分布を持っているのが観測される。磁場分布についてスライス領域#1〜#3毎に次の(1)式,(2)式,(3)式に示すように1次方程式で直線近似する。
スライス領域#1;C1=c11(Z)+c10+b0…(1)
スライス領域#2;C2=c21(Z)+c20+b0…(2)
スライス領域#3;C3=c31(Z)+c30+b0…(3)
したがって、スライス領域#1に関する0次成分のシミング値が−c10、1次成分のシミング値が−c11、スライス領域#2に関する0次成分のシミング値が−c20、1次成分のシミング値が−c21、スライス領域#3に関する0次成分のシミング値が−c30、1次成分のシミング値が−c31としてそれぞれ与えられる。
スライス領域#1;C1=c11(Z)+c10+b0…(1)
スライス領域#2;C2=c21(Z)+c20+b0…(2)
スライス領域#3;C3=c31(Z)+c30+b0…(3)
したがって、スライス領域#1に関する0次成分のシミング値が−c10、1次成分のシミング値が−c11、スライス領域#2に関する0次成分のシミング値が−c20、1次成分のシミング値が−c21、スライス領域#3に関する0次成分のシミング値が−c30、1次成分のシミング値が−c31としてそれぞれ与えられる。
1次成分のシミングは当該1次成分のシミング値に応じて傾斜磁場にオフセットを与えることで実現され、0次成分、つまり共鳴周波数のずれに対するシミングは受信器6内における直交位相検波の参照周波数を当該0次成分のシミング値に応じて調整することで実現される。
これにより、補正後の磁場分布は図10(b)に示すように、各スライス領域ともに規準磁場強度b0に近似されて均一性の精度が向上していることが分かる。また、FUC法で直接的にシミング可能な1次成分だけでなく、2次成分についても近似的にシミングがなされていることが理解されよう。
図11に一例としてフィールドエコー法にマルチスライス法を併用した場合のパルスシーケンスを示す。図12にパルスシーケンス実行と、シミング値使用の時系列的な対応が示されている。ここで、スライス領域#1〜#3毎に求めたシミング値にしたがって、スライス領域#1〜#3毎に傾斜磁場のオフセットを変化させている。
図13(a)に補正前の2次の磁場分布(説明の便宜上、XYについてのみ示す)が示されており、図13(b)に示すように部分領域R1,R2上でのX2+Y2型の磁場分布の成分が異なっていることが伺える。ここではR1では凹形状を示しているのでX2+Y2成分λ1は負となり、R2では凸形状を示しているのでX2+Y2成分λ2は正となる。したがって、X2+Y2シムコイルに与えるシミング値は部分領域R1では−λ1に応じて、またR2では−λ2に応じて与えられる。
すなわち、上記構成によるMRI装置では、静磁場の不均一成分を補正する場合に、空間的に異なる部分領域毎にシミング値を求め、シミング値各々に基づいて部分領域毎に静磁場の不均一成分を補正するようにしている。この手法によれば、マルチスライス法におけるスライスのような空間的に異なる部分領域毎にシミング値を求め、これら各々に基づいて部分領域毎に静磁場の不均一成分を補正するので、静磁場の均一性が向上し、さらに、求めたシミング値が直接的に補正する不均一成分よりも高次の成分についても補正の効力が及び、静磁場の不均一性の補正をより高精度で行うことができ、これによりエコープラナーイメージング(EPI)、スペクトロスコピー(MRS)、同イメージング(MRS1)、水脂肪分離、脂肪抑制等、高い磁場均一性を要求される撮影であっても、よりアーチファクトの少ない良好な画像を得ることが可能となる。
また、不均一な静磁場の1次成分を傾斜磁場のオフセットにより補正する場合には、空間的に異なる部分領域毎にオフセット値を求め、前記オフセット値各々に基づいて前記部分領域毎に不均一な静磁場の1次成分を補正するようにしている。この手法によれば、マルチスライス法におけるスライスのような空間的に異なる部分領域毎にオフセット値を求め、これら各々に基づいて部分領域毎に不均一な静磁場の1次成分を補正するので、静磁場の均一性が向上し、さらに、2次以上高次の不均一成分についても補正の効力が及び、静磁場の不均一成分の補正をより高精度で行うことができ、これによりエコープラナーイメージング(EPI)、スペクトロスコピー(MRS)、同イメージング(MRS1)、水脂肪分離、脂肪抑制等、高い磁場均一性を要求される撮影であっても、よりアーチファクトの少ない良好な画像を得ることが可能となる。さらに、この効果はオフセット値を部分領域毎に求めるというソフト的な変更のみで対処可能である。
このようなMRI装置において、磁場の不均一成分を補正するためのシミング処理において位相マップを作成するとき、位相折り返し展開が行われている。
この位相折り返し展開において、従来方法では、図1に示したように、組織の境界に位置する位相データや、ノイズを含む位相データなど、周囲に比べて位相変化が急峻であるデータが存在する場合にノイズの影響によって折り返し展開が失敗するおそれが高い。そこで、このシミング処理における位相マップ作成時に本発明による位相折り返し展開方法を適用する。
すなわち、本発明による位相折り返し展開方法を適用した場合、シミングによって得られる位相データを所定の条件のもとでグループ分けするグループ分けを行い、少なくとも2つ以上のグループ間で位相の整合をとる。このとき、グループ分けされた任意のグループ内の全位相データの位相を所定量シフトしてグループ単位で折り返し展開を行った後に他のグループとの間で位相の整合をとる。整合をとるために、グループ毎に、予め中心周波数を別に求めておき、その分だけ位相をシフトする。
以上の処理を実行することにより、シミング処理における位相マップ作成時に、周囲に比べて位相変化が急峻であるデータが存在する場合でも、折り返し展開を確実に行うことが可能となり、ノイズの影響による失敗を極めて低減することが可能となる。
そして、折り返し展開処理が進むほどグループが大きくなっていき、その分グループ間の位相差に関する情報が増えるため、折り返し展開失敗のもとになりやすい位相データの影響をどんどん小さくすることができ、従来法よりロバスト性が高い。また、1度折り返し展開したグループは合併により作られる新たなグループで引き続き折り返し展開を行っていくため、1度位相を確定しても他のグループとの位相で整合をとるべく何度でも折り返し展開されるため、連鎖的な折り返し展開失敗の発生を防ぐことができ、従来法より折り返し展開の失敗も減り、安定性が向上する。
尚、本発明による折り返し展開方法は、その実行後に位相を確定させる処理を加えて行うことも含むものとする。
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明に係る折り返し展開方法は、例えばMRI(磁気共鳴イメージング)装置におけるデータ処理で位相マップ作成時に適用される。
Claims (28)
- 対象領域における複数の位相データの位相をそれぞれ折り返し展開して位相を確定する位相折り返し展開方法において、
所定の条件のもとで前記位相データのグループ分けを行う第1の手順と、
前記第1の手順で分けられた少なくとも2つ以上のグループ間で位相の整合をとる第2の手順とを具備し、
前記第2の手順は、前記グループ分けされた任意のグループ内の全位相データの位相を所定量シフトしてグループ単位で折り返し展開を行った後に他のグループとの間で位相の整合をとる位相折り返し展開方法。 - さらに、前記第2の手順で折り返し展開された対象グループ群のうち任意の数のグループ同士を合併して新たにグループを作る第3の手順を備える請求項1に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記第3の手順は、前記第2の手順の処理によってグループ単位で折り返し展開された少なくとも1つ以上の特定のグループを含むグループ群の組み合わせの候補が複数あるか否かを判断し、複数ある場合には、各グループ間の位相に基づいた評価値をグループ群ごとに求め、最適な評価値を持つグループ群を対象に前記グループ単位で折り返し展開を行ったのち、対象グループ群のうち任意の数のグループ同士を合併して新たにグループを作る請求項2に記載の位相折り返し展開方法。
- さらに、前記第3の手順による前記グループの合併と、前記第2の手順によるグループ単位での折り返し展開を繰り返し実行するルーチンを備える請求項2に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記対象領域を複数領域に分割し、分割領域ごとに独立して前記第1の手順乃至第3の手順による位相折り返し展開を実行し、段階的に領域を広げて前記位相折り返し展開を実行する請求項4に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記位相折り返し展開の実行前後で前記位相データの位相に基づいて算出した評価値の変動が最適になるように、前記位相折り返し展開後の位相データの位相をシフトする請求項3に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記位相折り返し展開の実行後に、別に求めたある値だけ前記位相データの位相をシフトする請求項6に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記位相データのグループ分けの条件を、任意の位相データ同士の位相に基づいて算出した評価値がある閾値以下であれば同じグループとする請求項1に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記位相データのグループ分けの条件を、あるグループの位相データの位相に基づいて算出した評価値と所属グループが未確定の位相データの位相との差がある閾値以下であれば同じグループとする請求項1に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記閾値は、30〜90[deg]の範囲内とする請求項8または9記載の位相折り返し展開方法。
- 前記位相データのグループ分けの条件を、あるグループの位相データの位相に基づいて評価値を算出する際に、所属グループが未確定の位相データをグループに加えたときに生じる前記評価値の変動がある閾値以内であれば同じグループとする請求項1に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記位相データのグループ分けの条件を、任意の形状に区分けする請求項1に記載の位相折り返し展開方法。
- 前記位相データのグループ分けの条件は、
任意の位相データ同士の位相に基づいて算出した評価値がある閾値以内であれば同じグループとする第1の条件、
あるグループの位相データの位相に基づいて算出した評価値と所属グループが未確定の位相データの位相との差がある閾値以内であれば同じグループとする第2の条件、あるグループの位相データの位相に基づいて評価値を算出する際に、所属グループが未確定の位相データをグループに加えたときに生じる前記評価値の変動がある閾値以内であれば同じグループとする第3の条件、
任意の形状に区分けする第4の条件、
の少なくともいずれか複数の条件を任意に組み合わせて適用する請求項1に記載の位相折り返し展開方法。 - さらに、前記第1の手順によりグループ分けが行われ、前記第2の手順により位相の整合がとられた位相データの位相をある値だけシフトする第4の手順を有する請求項1に記載の位相折り返し展開方法。
- 磁場の不均一成分を補正することを目的としてシミング処理を行う磁気共鳴イメージング装置において、
前記磁場の不均一性による位相の変動量の分布を表した位相マップの各位相データを所定の条件のもとでグループ分けするグループ分け手段と、
前記グループ分け手段で分けられた少なくとも2つ以上のグループ間で位相の整合をとる位相整合手段とを具備し、
前記位相整合手段は、前記グループ分けされた任意のグループ内の全位相データの位相を所定量シフトしてグループ単位で折り返し展開を行った後に他のグループとの間で位相の整合をとる磁気共鳴イメージング装置。 - さらに、前記位相整合手段で折り返し展開された対象グループ群のうち任意の数のグループ同士を合併して新たにグループを作るグループ合併手段を備える請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記グループ合併手段は、前記位相整合手段の処理によってグループ単位で折り返し展開された少なくとも1つ以上の特定のグループを含むグループ群の組み合わせの候補が複数あるか否かを判断し、複数ある場合には、各グループ間の位相に基づいた評価値をグループ群ごとに求め、最適な評価値を持つグループ群を対象に前記グループ単位で折り返し展開を行ったのち、対象グループ群のうち任意の数のグループ同士を合併して新たにグループを作る請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- さらに、前記グループ合併手段による前記グループの合併と、前記位相整合手段によるグループ単位での折り返し展開を繰り返し実行するルーチンを備える請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記対象領域を複数領域に分割し、分割領域ごとに独立して前記グループ分け手段、位相整合手段、グループ合併手段による位相折り返し展開を実行し、段階的に領域を広げて前記位相折り返し展開を実行する請求項16に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記位相整合手段は、前記位相折り返し展開の実行前後で前記位相データの位相に基づいて算出した評価値の変動が最適になるように、前記位相折り返し展開後の位相データの位相をシフトする請求項17に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記位相整合手段は、前記位相折り返し展開の実行後に、別に求めたある値だけ前記位相データの位相をシフトする請求項20に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記グループ分け手段は、前記位相データのグループ分けの条件を、任意の位相データ同士の位相に基づいて算出した評価値がある閾値以下であれば同じグループとする請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記グループ分け手段は、前記位相データのグループ分けの条件を、あるグループの位相データの位相に基づいて算出した評価値と所属グループが未確定の位相データの位相との差がある閾値以下であれば同じグループとする請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記閾値は、30〜90[deg]の範囲内とする請求項22または23記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記グループ分け手段は、前記位相データのグループ分けの条件を、あるグループの位相データの位相に基づいて評価値を算出する際に、所属グループが未確定の位相データをグループに加えたときに生じる前記評価値の変動がある閾値以内であれば同じグループとする請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記グループ分け手段は、前記位相データのグループ分けの条件を、任意の形状に区分けする請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。
- 前記グループ分け手段における前記位相データのグループ分けの条件は、
任意の位相データ同士の位相に基づいて算出した評価値がある閾値以内であれば同じグループとする第1の条件、
あるグループの位相データの位相に基づいて算出した評価値と所属グループが未確定の位相データの位相との差がある閾値以内であれば同じグループとする第2の条件、あるグループの位相データの位相に基づいて評価値を算出する際に、所属グループが未確定の位相データをグループに加えたときに生じる前記評価値の変動がある閾値以内であれば同じグループとする第3の条件、
任意の形状に区分けする第4の条件、
の少なくともいずれか複数の条件を任意に組み合わせて適用する請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。 - さらに、前記グループ分け手段によりグループ分けが行われ、前記位相整合手段により位相の整合がとられた位相データの位相をある値だけシフトする位相シフト手段を備える請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。
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