JPWO2006027863A1 - ナノ物質の操作方法およびその利用 - Google Patents

ナノ物質の操作方法およびその利用 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2006027863A1
JPWO2006027863A1 JP2006535025A JP2006535025A JPWO2006027863A1 JP WO2006027863 A1 JPWO2006027863 A1 JP WO2006027863A1 JP 2006535025 A JP2006535025 A JP 2006535025A JP 2006535025 A JP2006535025 A JP 2006535025A JP WO2006027863 A1 JPWO2006027863 A1 JP WO2006027863A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nanomaterial
nanomaterials
light
resonance
manipulating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006535025A
Other languages
English (en)
Inventor
一 石原
一 石原
琢也 飯田
琢也 飯田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Agency, National Institute of Japan Science and Technology Agency filed Critical Japan Science and Technology Agency
Publication of JPWO2006027863A1 publication Critical patent/JPWO2006027863A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82BNANOSTRUCTURES FORMED BY MANIPULATION OF INDIVIDUAL ATOMS, MOLECULES, OR LIMITED COLLECTIONS OF ATOMS OR MOLECULES AS DISCRETE UNITS; MANUFACTURE OR TREATMENT THEREOF
    • B82B3/00Manufacture or treatment of nanostructures by manipulation of individual atoms or molecules, or limited collections of atoms or molecules as discrete units
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y10/00Nanotechnology for information processing, storage or transmission, e.g. quantum computing or single electron logic
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y20/00Nanooptics, e.g. quantum optics or photonic crystals
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y30/00Nanotechnology for materials or surface science, e.g. nanocomposites
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y40/00Manufacture or treatment of nanostructures

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nanotechnology (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Condensed Matter Physics & Semiconductors (AREA)
  • Composite Materials (AREA)
  • Theoretical Computer Science (AREA)
  • Mathematical Physics (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Physical Or Chemical Processes And Apparatus (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)
  • Lasers (AREA)

Abstract

量子ドットや量子ドット対、カーボンナノチューブ等のナノ物質が複数存在している状態において、近接するナノ物質(11a・11b)(これらはナノ物質集団(12)を形成している)に対して、当該ナノ物質(11a・11b)の電子的励起準位に共鳴する共鳴光を照射する。このとき、ナノ物質間に生じる力学的相互作用を制御するために、照射する上記共鳴光の偏光を変化させる。これにより、ナノ物質を集団的に操作することが可能となる。

Description

本発明は、ナノ物質の操作方法およびその利用に関するものであり、特に、量子ドット対の製造(作製)や操作等に好適に用いることができる操作方法とその利用とに関するものである。
光を物質に照射したときにその物質に印加される力は輻射力と呼ばれる。この力は、微小物体の空間的位置や力学的運動を制御する光操作に利用されている。具体的には、流動性媒質中に浮遊する、マイクロメーター領域のサイズを有する微小物体の光操作に利用されているだけでなく、ナノテクノロジーへの応用も期待されている。
しかしながら、従来では、上記輻射力による光操作をナノテクノロジーに応用することは困難であった。具体的には、ナノテクノロジーにおいては、そのサイズが数百ナノメートル以下の物質(物体、粒子、あるいは構造体)であるナノ物質を操作対象とすることになるが、このナノ物質のうち非金属のものは、通常の条件下では誘起分極が小さく、光から受ける輻射力もナノ物質の運動を制御できる程度に大きくならない。これが、ナノ物質の光操作を困難とする原因の一つであった。
他方、対象物質の電子的励起準位に共鳴するような周波数を有するレーザー光(共鳴光)を照射すれば、誘起分極を増強して強い輻射力を得ることができることが知られている。この原理は原子のレーザー冷却や捕捉に用いられている。
さらに、ナノ物質は、マイクロメーター領域のサイズを有する物質や原子とは異なり、サイズ(大きさ)、形状、内部構造、品質等が異なると、その量子力学的性質が変化することに由来した個性を持つことが知られている。
本発明者らは、上述した知見に着目し、共鳴光をナノ物質に照射した場合に生じる輻射力について、量子力学的な効果も含めた理論研究を行ってきた。その結果、以下の知見が明らかになった。
(1)サイズの減少に伴い、電子的共鳴効果を用いることのメリットが著しく増大する。例えば、10nm前後のサイズ領域では、条件によっては共鳴効果を考えない場合の4桁以上力が増強され、線形応答しか起こらないような弱い強度の入射光であっても重力を数桁上回る力が生じる。
(2)数十nm程度の大きさのナノ物質においては、励起エネルギーが熱的吸収過程より速やかに輻射的に散逸するコヒーレントな散乱過程が存在する。このプロセスを利用すれば発熱のほとんど無いマニュピレーションができる可能性がある。
(3)量子サイズ効果により力の周波数スペクトル上のピーク位置が、ナノオーダーのわずかなサイズ変化に対して敏感にシフトする。
そこで、本発明者らは、上記各知見に基づいて、共鳴光を照射したときに生じる輻射力が、個々のナノ物質の量子力学的個性を反映して変化することを利用して、特定の性質のナノ物質を選択的に操作することができる新しいタイプの光操作技術を提案している(非特許文献1、特許文献1参照)。
一方、光操作の対象となるナノ物質の一例として、量子ドットと呼ばれるものが存在する。量子ドットは、その電子的励起準位が原子のように離散的であることから、『人工原子』としばしば呼ばれている。
量子ドットに関する研究はまだ基礎段階であるが、高い量子効率を有することや、半導体等の固有材料で作製可能であるためデバイスとして利用しやすいこと等が知られている。そのため、量子ドットは、高効率発光素子、高速光通信、量子情報通信やバイオテクノロジー等様々な分野での応用が期待されている。特に最近では、電子系を閉じ込めた半導体量子ドットの電気的・光学的性質についての研究が盛んであり、単一の量子ドットを対象とするだけでなく、複数の量子ドット間の量子力学的結合に着目した研究も盛んに行われている。
例えば、2つの量子ドットからなる量子ドット対において、電子励起状態のコヒーレントな結合状態または反結合状態が観測され、このような量子ドット対は『人工分子』または『量子ドット分子』等と呼ばれている(非特許文献2・3参照)。この人工分子は、それぞれの量子ドットに閉じ込められた電子が量子力学的にもつれあった状態を有する。そのため、これら人工分子を多数配列させたデバイスを製造できれば、量子計算機等への応用が期待される。
また、複数の量子ドット間において、エネルギー移動を制御しようとする試みもある(非特許文献4参照)。このようなエネルギー移動の制御は、エネルギー移動の効率を高めることが可能となるため、エネルギー問題の解決に寄与する可能性もある。
上記の各文献は以下の通りである。すなわち、
[特許文献1]日本国特許公開公報「特開2003−200399公報(2003年7月15日公開)」
[非特許文献1]T.Iida,H.Ishihara,Phys.Rev.Let.Vol.90,057403−p.1−4(2003/2/7)
[非特許文献2]M.Bayer,P.Hawrylak,K.Hinzer,S.Fafarad,M.Korkusinsi,Z.R.Wasilewski,O.Stern,A.Forchel,Science Vol.291,451(2001)
[非特許文献3]T.H.Oosterkamp,T.Fujisawa,W.G.van der Wiel,K.Ishibashi,R.V.Hijman,S.Tarucha,L.P.Kouwenhoven,Nature Vol.395,p873−876(1998)
[非特許文献4]S.A.Crooker,J.A.Hollingsworth,S.Tretiak,V.I.Klimov,Phys.Rev.Lett.Vol.89,186802−p.1−4(2002/10/24)
である。
しかしながら、上記従来の構成では、複数のナノ物質を高い自由度で効率的に操作するには不十分であるという問題を生じる。
具体的には、例えば、上記非特許文献2に開示されている技術では、自己組織化法により半導体積層構造中に作製された量子ドット間の量子力学的な結合を観測している。この技術では、MBE法等で異なる半導体材料を積層する際に生じる格子定数の違いによる歪の効果を利用しており、一度に大量の量子ドットを作製することは可能であるが、一旦材料となる物質を特定してしまうと、その配置は自動的に確定してしまう。
また、非特許文献3に開示されている技術では、ガリウム砒素(GaAs)とアルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)の積層構造に、収束イオンビーム注入による絶縁化プロセスを施し、さらに、ショットキーゲートによる電圧印加によって100nm程度の量子ドットを作製している。この技術では、さらに微小な量子ドットを作製したり、それらを大量生成したりすることは困難であると考えられる。
さらに、これら非特許文献2・3等に開示されている技術では、半導体積層構造中に量子ドットが固定されてしまっている。したがって、量子ドットに対して光を照射し、電子励起状態の結合状態または反結合状態のエネルギーを励起しても、当該量子ドットを力学的に操作することはできず、一度作製してしまうと、その量子ドットの位置を自由に制御することができない。
また、非特許文献4に開示されている技術では、有機溶媒中に分散したコロイド状のセレン化カドミウム(CdSe)量子ドットをガラス基板に堆積して固定している。つまり、この技術は、有機溶媒中の量子ドットを力学的に操作しているが、最終的に量子ドットを基板に固定化するため、エネルギー移動において重要となる量子ドットの粒径の制御、または量子ドット間の距離等を制御することは困難となっている。
一方、本発明者らによる上記非特許文献1や特許文献1に開示されている技術を用いれば、選別した特定の量子力学的性質を有するナノ物質を大量に自由空間中に生成し、その運動を制御することができる。ただし、生成されたナノ物質間に光によって力を誘起させることによる運動制御法に関する詳細な議論は今後の課題とされていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、量子ドットや量子ドット対等のナノ物質が複数存在している状態において、ナノ物質を集団的に操作することができる技術を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、自由に浮遊している複数のナノ物質が近接してナノ物質集団を形成している場合で、かつ、近接する2つのナノ物質間に共鳴光を照射する場合に、共鳴光の偏光の切換えにより輻射力を制御することが可能であり、これにより、ナノ物質の空間的配置や運動を良好に制御することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるナノ物質の操作方法は、上記の課題を解決するために、ナノ物質に対して、当該ナノ物質の電子的励起準位に共鳴する共鳴光を照射することにより、共鳴光からナノ物質に力を及ぼして当該ナノ物質を操作するナノ物質の操作方法において、共鳴光の照射対象が、複数個のナノ物質からなるナノ物質集団であるとともに、ナノ物質間に生じる力学的相互作用を制御するために、照射する上記共鳴光の偏光を変化させることを特徴としている。
上記操作方法においては、上記ナノ物質集団は、自由空間中または流動性媒質中に存在していればよい。また、照射する上記共鳴光の強度を変化させてもよい。
上記操作方法においては、近接するナノ物質が有する共鳴エネルギーを、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも低エネルギー側に励起するように、照射する上記共鳴光の偏光を変化させると、ナノ物質の間に引力を生じさせることができる。また、近接するナノ物質が有する共鳴エネルギーを、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも高エネルギー側に励起するように、照射する上記共鳴光の偏光を変化させると、ナノ物質間に斥力を生じさせることができる。また、共鳴光としては、照射条件の異なる共鳴光を複数種類併用してもよい。
上記操作方法の具体的一例としては、ナノ物質集団を構成するナノ物質の集団的な運動および/またはナノ物質の配列を制御するように、上記共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第一ナノ物質操作工程を有する構成を挙げることができる。さらに、運動および/または配列が制御された/または制御中のナノ物質集団において、ナノ物質の重心の位置および/またはナノ物質の運動を制御するように、共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第二ナノ物質操作工程を有していてもよい。
また、上記操作方法においては、上記ナノ物質集団が複数種類のナノ物質を含んでいるとともに、さらに、上記共鳴光の照射により、上記ナノ物質集団から特定のナノ物質を選択する特定ナノ物質選択工程を有していてもよい。加えて、上記ナノ物質集団を形成する集団形成工程を有していてもよい。上記集団形成工程では、集光ビームによりナノ物質集団を形成する例を挙げることができる。
本発明において操作対象となるナノ物質は特に限定されるものではないが、例えば、量子ドットまたは量子ドット対を挙げることができる。この場合、上記ナノ物質集団に、電子的励起準位の異なる複数種類の量子ドット対が含まれていれば、上記特定ナノ物質選択工程では、特定の電子的励起準位を有するナノ物質を選択することができる、また、上記ナノ物質集団には、材質が同一であり、かつ、大きさ、形状、内部構造のうち少なくとも何れかが異なる複数種類の量子ドット対が複数含まれていれば、上記特定ナノ物質選択工程では、大きさ、形状および内部構造が実質的に同一である量子ドット対を選択することができる。
上記集団形成工程において形成されるナノ物質集団は、特定の属性を有する量子ドットが複数近接した量子ドット集団であってもよい。また、上記第一ナノ物質操作工程により、上記量子ドット集団に含まれる量子ドット間の距離を制御して量子ドット対を形成するようになっていてもよい。
上記操作方法においては、上記共鳴光としてレーザー光が用いられることが好ましい。
本発明には、上記ナノ物質の操作方法を用いた量子ドット対の製造方法も含まれる。
また、本発明にかかるナノ物質の操作装置は、共鳴光を照射することによりナノ物質に力を及ぼして当該ナノ物質を操作するナノ物質の操作装置において、ナノ物質に対して、当該ナノ物質の電子的励起準位に共鳴する共鳴光を照射する共鳴光照射手段を備えており、当該共鳴光照射手段は、共鳴光の偏光が変化可能となっていることを特徴としている。
上記操作装置においては、複数個のナノ物質からなるナノ物質集団を存在させ、かつ、操作可能とする内部空間を有する筐体を備えていることが好ましい。また、上記筐体内は、流動性媒質が充填可能となっている例を挙げることができる。
上記操作装置においては、上記共鳴光照射手段は、共鳴光の強度が変化可能となっていることが好ましい。また、上記共鳴光照射手段は複数設けられており、各共鳴光照射手段から照射される共鳴光は、照射条件が異なっていることがより好ましい。
上記操作装置においては、さらに、筐体内に上記ナノ物質集団を形成するナノ物質集団形成手段が備えられていてもよい。また、上記筐体内には、操作されたナノ物質を固定する基板が設置されていてもよい。
本発明にかかるナノ物質の操作方法は、以上のように、ナノ物質に照射する上記共鳴光の偏光(共鳴光における電場振動方向の偏り状態)を変化させるという構成を備えている。そのため、共鳴光の偏光の制御によりナノ物質間に引力または斥力を生じさせることが可能となる。ナノ物質間に引力を生じさせれば、ナノ物質間の距離を接近させる、または凝集させることができ、ナノ物質間に斥力を生じさせれば、ナノ物質間の距離を大きくする、または凝集させないようにすることができる。
したがって、変化可能な偏光である共鳴光をナノ物質対に照射すれば、ナノ物質間に制御可能な輻射力を生じせしめて、ナノ物質集団の空間的配置や運動状態を制御することができる。それゆえ、ナノ物質を集団的に操作することができるだけでなく、従来の操作技術と組み合わせれば、ナノ物質をより一層高い自由度で効率的に操作できるという効果を奏する。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
本発明におけるナノ物質の一例である量子ドット対の構造と、共鳴光により生じる力を示す模式図であり、引力を生じさせる場合を示す。 本発明におけるナノ物質の一例である量子ドット対の構造と、共鳴光により生じる力を示す模式図であり、斥力を生じさせる場合を示す。 本発明にかかるナノ物質の操作装置の一例の概略を示す模式図である。 ナノ物質として立方体の量子ドットを想定した場合の計算の配置図である。 異なる偏光の場合に個々の量子ドットが受ける加速度(力/質量)のx,y成分の周波数依存性を示すグラフである。 異なる偏光の場合に個々の量子ドットが受ける加速度(力/質量)のx,y成分の周波数依存性を示すグラフである。 ナノ物質として球の量子ドットを想定した場合の計算の配置図である。 異なる偏光の場合に個々の量子ドットが受ける加速度(力/質量)のx,y成分の周波数依存性を示すグラフである。 異なる偏光の場合に個々の量子ドットが受ける加速度(力/質量)のx,y成分の周波数依存性を示すグラフである。 定在波トラップを形成する構成例を示す図である。 定在波トラップを形成する構成例を示す図である。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔1〕ナノ物質の操作方法
本発明にかかるナノ物質の操作方法は、自由に移動可能な環境下に存在する複数のナノ物質からなるナノ物質集団に対して、当該ナノ物質の電子的励起準位に共鳴する光(共鳴光)を照射し、ナノ物質間に力を生じせしめてそれらの空間的配置や運動状態を制御するものである。
<ナノ物質・ナノ物質集団>
本発明におけるナノ物質は、そのサイズが数百ナノメートル以下の物質であれば特に限定されるものではなく、どのような形状の物体であってもよい。このナノ物質は、ナノオーダーサイズの微小物体ということができるので、ナノ粒子と呼称してもよいし、その構造に特徴がある場合にはナノ構造体と呼称しても良い。ナノ物質の大きさはナノオーダーであればよいが、半径が100nm以下であることがより好ましい。半径が100nm以下のナノ物質では、光の共鳴現象がある場合に作用する力の大きさを、光の共鳴現象がない場合に作用する力の10〜10程度にまで増強することができる。
上記ナノ物質集団は、2個以上のナノ物質からなる系であれば特に限定されるものではない。特に本発明では、共鳴光の照射により隣接するナノ物質が相互作用を及ぼす程度に集合している集団であればよい。
本発明で特に好ましいナノ物質としては、例えば、量子ドットおよび量子ドット対を挙げることができる。量子ドットとは、典型的には数ナノメートルから数百ナノメートルのサイズで、材質としては、半導体、金属、有機化合物等からなる構造体で、量子力学的な効果が発現する系であれば特に限定するものではない。後述する実施例では、半導体を用いている。半導体が好適である理由としては、例えば、その内部に励起子等の共鳴構造の鋭い電子状態が存在し、それらに対応する周波数のレーザー光を操作することで、大きな輻射力が得られると考えられるためである。
量子ドット対とは、2個の量子ドットにより対を形成してなるものであり、量子ドット間の距離が数ナノメートルから数十ナノメートルとなっている。量子ドット対は、このような量子ドット同士の対構造を有しているものであれば、具体的に限定されるものではなく、人工分子、量子ドット分子、ポラリトニック分子等も量子ドット対に含まれ、量子ドット対の1種である。本発明によれば、上記量子ドットから量子ドット対を作製することもできる。
上記半導体としては、例えば、I−VII族化合物の半導体;II−VI族化合物の半導体;III−V族化合物の半導体;ケイ素(Si)等が挙げられるが特に限定されるものではない。具体的には、I−VII族の半導体としては、例えば、銅化合物が挙げられ、より具体的には、CuCl、CuBr、CuI等のハロゲン化銅を挙げることができる。後述する実施例では、CuClを用いている。II−VI族化合物の半導体としては、例えば、CdS、CdSe等のカドミウム化合物、ZnO等の亜鉛化合物が挙げられる。III−V族化合物の半導体としては、GaAs等のガリウム化合物が挙げられる。
これら化合物の中でも、I−VII族化合物およびII−VI族化合物が好ましく用いられ、I−VII族化合物がより好ましい。一般に、半導体は、電子・正孔が結合して共鳴準位の一例である励起子を構成するが、この励起子の固有エネルギーは量子ドットのサイズに依存する。この効果を利用して、あるサイズの量子ドットに共鳴する共鳴光を選択すれば、当該サイズの量子ドットのみを選択することができる。
また、本発明で特に好ましいナノ物質の他の例としては、カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブ対を挙げることができる。平行に配列するカーボンナノチューブの対に対して、共鳴光を照射することによっても量子ドット対と同様に良好な操作が可能となる。
なお、上記ナノ物質集団の存在環境は、各ナノ物質が自由に移動可能な環境、特に、本発明にかかる操作方法によりナノ物質操作できるような環境であれば特に限定されるものではない。具体的には、自由空間中または流動性媒質中であればよい。
<共鳴光>
本発明において、ナノ物質集団に照射する光は、当該ナノ物質の電子的励起準位に共鳴する光すなわち共鳴光である。
電子的励起準位とは、ナノ物質が有する電子系の量子力学的に取り得るエネルギーを指し、ナノ物質では、この励起準位が離散化されている。その固有エネルギーは、物質のサイズ、形状、内部構造により異なる。ここで、光を物質に照射した場合、輻射力が生じるが、この輻射力における周波数軸上のピークの大きさや位置は、物質のサイズ、形状、内部構造によって異なる。上記共鳴光は、電子的励起準位に共鳴する光であり、輻射力のピーク位置における周波数を中心とし、そのピークの半値半幅の2倍にかかる周波数幅の範囲に入る周波数を有する光である。
このような光(共鳴光)をナノ物質に照射すると、この光は電子的励起準位に共鳴する。つまり、共鳴光がナノ物質に入射すると、当該ナノ物質の電子的励起準位と基底準位との間、あるいは電子的励起準位間のエネルギー差、すなわち遷移エネルギーに共鳴して誘起分極が増大する。一般に、光とナノ物質との相互作用は、当該ナノ物質の誘起分極が大きくなるほど強くなるため、共鳴光の入射によってナノ物質の誘起分極が増大することにより、光とナノ物質との力学的な相互作用が大きくなる。したがって、ナノ物質での強い光散乱および強い光吸収が起こることにより、共鳴光からナノ物質に効率よく力が与えられる。
これにより、光との力学的相互作用が弱いナノ物質であっても、当該光とナノ物質の電子的励起準位との共鳴により、力学的相互作用を高めることができる。つまり、共鳴光を用いれば、ナノ物質と光との間において相互作用を強くすることになり、照射した光がナノ物質に働く力を増大させることができる。その結果、光からナノ物質に及ぼされる力が増強され、光照射によってナノ物質を容易に操作することが可能になる。しかも、本発明では、後述するように、共鳴光の偏光を変化させることで、ナノ物質間に生じる力学的相互作用を制御することができる。この点については後述する。
なお、照射する共鳴光の波長は、ナノ物質の材質が既知である場合には、文献(例えば、H.Ajiki and K.Cho,quot;Longitudinal and Transverse Components of Excitons in a Spherical Quantum Dotquot;,Phys.Rev.B,Vol.62,p.7402−7412(2000))の電子的励起準位に基づいて決定すればよい。また、後述するように、ナノ物質の大きさ、形状、内部構造、品質が異なる場合には、当該ナノ物質の電子的励起準位間の遷移エネルギーも変化する。したがって、操作対象となるナノ物質の材質、大きさ、形状、内部構造等が未知である場合は、分光分析等によりナノ物質が有する電子的励起準位間のエネルギー差、その大きさ、形状、内部構造等を決定し、これらの測定結果に基づいて、共鳴光の波長を決定することが好ましい。
さらに、照射する共鳴光は、波長サイズ程度に絞り込んでからナノ物質に導入し、当該共鳴光のスペクトル線の線幅は、操作対象となるナノ物質の電子的励起準位に共鳴するように設定すればよい。なお、上記ナノ物質に照射する共鳴光の強度は、光照射により微小物体の破壊を引き起こさない大きさとすればよい。
共鳴光の具体的な種類は特に限定されるものではないが、レーザー光を好適に用いることができる。具体的には、光マニピュレーションにて一般的に用いられている約300nm〜1200nm程度のレーザー波長のレーザー光であれば、どのようなものでもよい。
<共鳴光の制御>
上記共鳴光は、電子的励起準位に共鳴する光であり、光マニピュレーションにおける作用・効果は、前記特許文献1に開示されている。本発明者らは、この特許文献1の技術についてさらに鋭意検討した結果、共鳴光の偏光を変化させることにより複数のナノ物質間に働く輻射力の大きさや符号を変化することができることを独自に見出した。すなわち、本発明にかかるナノ物質の操作方法は、特に、共鳴光の照射対象をナノ物質集団として、ナノ物質間に生じる力学的相互作用を制御するために、照射する上記共鳴光の偏光を変化させるものである。
後述する実施例および図1(a)・図1(b)に示すように、2個のナノ物質11a・11bが近い領域に存在する場合(ナノ物質集団12を形成している場合)、それらの内部に誘起される分極が電磁場を介して相互作用する。その結果、これらナノ物質の間では、単一のナノ物質の電子的励起準位とは異なる固有エネルギーに基づく結合状態と反結合状態とが生じることになる。
結合状態では、単一のナノ物質の共鳴エネルギーよりも低エネルギー側に共鳴エネルギーを有し、反結合状態では単一のナノ物質の共鳴エネルギーよりも高エネルギー側に共鳴エネルギーを有する。これら各状態は、異なる偏光を有する入射光により選択的に生じさせることができる。図1(a)・図1(b)に示すような2粒子系において共鳴光を照射した場合、共鳴光により生じる輻射力は、各ナノ物質11a・11bの重心を結んだ直線(便宜上、重心線と称する)を基準として、この重心線に対しての偏光の向きに依存する。具体的には、偏光の平行成分が多いか垂直成分が多いかで、生じる輻射力の性質が変わることになる。例えば、重心線に対し、平行成分は引力を生じさせ、垂直成分は斥力を生じさせる。ただし、重心線に平行な方向から入射する共鳴光については、どのように偏光を変化させても垂直成分しか存在し得ないため、輻射力は偏光の向きには依存しない。
それゆえ、本発明では、照射する上記共鳴光の偏光を変化させるときに、近接するナノ物質が有する共鳴エネルギーを、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも低エネルギー側に励起するように変化させると、ナノ物質間に結合状態を生じさせるようにエネルギーが励起される。その結果、図1(a)に示すように、2個のナノ物質11a・11bの間には、図中一点鎖線の矢印で示す引力を生じさせることができる。
また、近接するナノ物質が有する共鳴エネルギーを、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも高エネルギー側に励起するように変化させると、ナノ物質間に反結合状態を生じさせるようにエネルギーが励起される。その結果、図1(b)に示すように、2個のナノ物質11a・11bの間には、図中二点鎖の矢印で示す斥力を生じさせることができる。
本発明では、このようにして、ナノ物質間において自由に引力または斥力を生じさせることができる。特許文献1に開示している技術では、共鳴光の照射によりナノ物質を操作可能としたが、ナノ物質集団における効率的な操作までは至らなかった。これに対して、本発明では、偏光の制御により、ナノ物質間の距離を接近または凝集させたり、距離の拡大または凝集させないようにしたりすることができる。その結果、ナノ物質集団においてナノ物質の空間的配置や運動状態を制御することが可能になり、ナノ物質を高い自由度で効率的に操作することができる。
ここで、ナノ物質の間に作用する力(引力または斥力)の大きさは、ナノ物質間の距離によって変化し、照射する共鳴光の強度に比例して増大する。例えば、ナノ物質間の距離が数ナノ〜十数ナノメートル程度の場合に、50μW/100μm(=50w/cm)の強度のレーザーを照射した場合には、ナノ物質間に作用する力は、重力の数十倍程度となる。そこで、ナノ物質集団に共鳴光を照射する場合、ナノ物質間の距離を適切な範囲内とするようにナノ物質集団を形成してもよいし、照射する共鳴光の強度を変化させてもよい。
また、共鳴光を照射した場合、図1(a)・図1(b)に示すように、ナノ物質11a・11bの間だけでなく、共鳴光の進行方向(図中二重線の矢印)にも力が生じる。そこで、偏光(振動面)を切り換えることで引力や斥力を生じさせ、例えば、ナノ物質11aおよび11b(ナノ物質集団12)の位置や運動を制御した後、共鳴光の照射により、ナノ物質11aまたは11bの重心の位置や運動を制御することも可能となる。なお、「ナノ物質11aおよび11bの位置や運動を制御すること」と、「共鳴光の照射によりナノ物質11aまたは11bの重心の位置や運動を制御すること」とについては、前者を先に行って後者を後に行うこと、後者を先に行って前者を後に行うこと、前者と後者とを同時に行うこと、前者と後者とを交互に行うこと、のいずれもが可能である。
さらに、本発明では、ナノ物質集団に照射する共鳴光として、照射条件の異なる共鳴光を複数種類併用してもよい。複数種類の共鳴光を併用することで、より多彩で複雑なナノ物質の操作が可能となる。照射条件としては、上述した偏光(振動面)、光の強度、周波数等を挙げることができ、目的に応じて上記照射条件を変更させた共鳴光を複数準備すればよい。また、複数の共鳴光を照射するタイミングも特に限定されるものではなく、同時であってもよいし、照射時間をずらせて交互に照射してもよい。
このように、本発明では、偏光により引力や斥力の所望の力をナノ物質に働かせるが、これについて、より詳しく述べる。
力を光エネルギーの関数としてみると、引力が働く力のエネルギー軸上のピーク位置と、斥力が働く力のエネルギー軸上のピーク位置とは、互いに少しずれている。すなわち、元々の励起子の共鳴準位、すなわち単一のナノ物質が有する共鳴エネルギー(輻射力のピーク)から一方は高エネルギーシフトし、他方は低エネルギーシフトしている。どれくらいずれているかは物質パラメーターによって様々である。
例として、垂直(上下)方向に振動する偏光をナノ物質に照射する場合を考える。両方のピークをカバーするような線幅の太いレーザービームを入射した場合は、水平(左右)方向にあるナノ物質同士には斥力が働き、一方、垂直方向にあるナノ物質同士には引力が働く。一方、どちらかのピークしかカバーしないような線幅の細いレーザービームを当てると、力は、カバーしている側にのみ働く。
例えば、垂直(上下)方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギー(輻射力のピーク)よりも高エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームを当てると、水平方向にあるナノ物質同士には斥力が働くが、垂直方向にあるナノ物質同士には力が何も働かないということも起こる。逆に、垂直(上下)方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギー(輻射力のピーク)よりも低エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームを当てると、垂直方向にあるナノ物質同士には引力が働くが、水平方向にあるナノ物質同士には力が何も働かないということも起こる。
また、ピーク位置の違いを利用すると、以下のように、垂直方向にあるナノ物質同士にも、水平方向にあるナノ物質同士にも、引力を働かせることもできる。その逆に、水平、垂直両方を斥力にしたりすることもできる。
すなわち、レーザービームを2つ用意し、一方は、垂直(上下)方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギー(輻射力のピーク)よりも低エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームとすれば、垂直方向にあるナノ物質同士には引力が働くが、水平方向にあるナノ物質同士には力が何も働かない。他方は、水平方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギー(輻射力のピーク)よりも低エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームとすれば、水平方向にあるナノ物質同士には引力が働くが、垂直方向にあるナノ物質同士には力が何も働かない。したがって、垂直方向にあるナノ物質同士にも水平方向にあるナノ物質同士にも引力を働かせることができる。
また、レーザービームを2つ用意し、一方は、垂直(上下)方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギー(輻射力のピーク)よりも高エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームとすれば、水平方向にあるナノ物質同士には斥力が働くが、垂直方向にあるナノ物質同士には力が何も働かない。他方は、水平方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギー(輻射力のピーク)よりも高エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームとすれば、垂直方向にあるナノ物質同士には斥力が働くが、水平方向にあるナノ物質同士には力が何も働かない。したがって、垂直方向にあるナノ物質同士にも水平方向にあるナノ物質同士にも斥力を働かせることができる。
このように、レーザービームの線幅や中心周波数を制御したり、複数のレーザービームを組み合わせたりすることで、ナノ物質間に生じる引力と斥力とのバランスを制御することが可能になる。
<ナノ物質の具体的操作方法>
本発明にかかるナノ物質の操作方法は、上記のように、照射する共鳴光の偏光を変化させるものであるが、この基本原理を用いた具体的な操作方法について説明する。本発明にかかる操作方法は、ナノ物質を操作するための包括的な方法であって、複数の工程を含む方法である。具体的な工程としては、ナノ物質操作工程、特定ナノ物質選択工程、集団形成工程等を挙げることができる。
上記ナノ物質操作工程としては、(1)ナノ物質集団を構成するナノ物質の集団的な運動および/またはナノ物質の配列を制御するように、上記共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第一ナノ物質操作工程と、(2)運動および/または配列が制御されたナノ物質において、重心の位置および/または個々のナノ物質の運動を制御するように、共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第二ナノ物質操作工程との2種類の工程を挙げることができる。本発明にかかる操作方法では、少なくとも第一ナノ物質操作工程が含まれていればよく、第二ナノ物質操作工程が含まれていることがより好ましい。
上述したように、特定の偏光を有する共鳴光をナノ物質集団に照射して、当該ナノ物質集団中の近接するナノ物質間において引力・斥力を生じさせれば、大量に近接するナノ物質の集団的な運動や配列を制御することができる。これが第一ナノ物質操作工程に相当する。
一方、共鳴光の照射により光の進行方向にも力が生じるので、偏光の変化によりナノ物質の位置や運動を制御した後、共鳴光の照射により、ナノ物質集団を維持しながら、ナノ物質の重心の位置やナノ物質の運動も制御することができる。これが第二ナノ物質操作工程に相当する。
本発明にかかる操作方法では、このように二種類のナノ物質操作工程を、第一・第二ナノ物質操作工程の順に、または、第二・第一ナノ物質操作工程の順に、または、第一・第二ナノ物質操作工程を交互に、または同時に行うことができるので、ナノ物質の操作の汎用性をより広いものとすることができる。そのため、例えば、第一ナノ物質操作工程によって自由空間中で量子ドット対を作製し、作製された量子ドット対を第二ナノ物質操作工程によって基板まで運搬し、固定することが可能となる。
上記特定ナノ物質選択工程は、上記ナノ物質集団が複数種類のナノ物質を含んでいる場合に、上記共鳴光の照射により、上記ナノ物質集団から特定のナノ物質を選択する工程である。このように特定種類のナノ物質を選択することで、上記ナノ物質操作工程と組み合わせることで、ナノ物質の操作の汎用性をより一層広いものとすることができる。
具体的には、例えば、量子ドットからなるナノ物質集団が存在する場合、上記第一ナノ物質操作工程で量子ドット対を作製する。このとき、ナノ物質集団にはさまざまな種類の量子ドット対が含まれるとする。
当該ナノ物質集団に含まれる複数種類の量子ドット対が、電子的励起準位の異なるものであれば、上記特定ナノ物質選択工程では、共鳴光の制御により、特定の電子的励起準位を有するナノ物質を選択すればよい。また、上記ナノ物質集団に含まれる複数種類の量子ドット対が、その材質が同一であり、かつ、大きさ、形状、内部構造のうち少なくとも何れかが異なるものであれば、上記特定ナノ物質選択工程では、共鳴光の制御により、大きさ、形状および内部構造が所定の条件内に入る量子ドット対を選択すればよい。ここでいう所定の条件とは、量子ドット対の大きさまたは形状が、共鳴光の照射によりナノ物質集団から分離可能な範囲内にあること、あるいは、量子ドット対の内部構造が、共鳴光の照射により分離可能に類似していることを指すものとする。便宜上、この所定の条件内に入る量子ドット対を、実質的に同一である量子ドット対と称する。なお、特定ナノ物質選択工程では、特許文献1に開示する操作方法に基づいて、共鳴光を制御すればよい。すなわち、特許文献1に開示の微小物体の操作方法は、本明細書中に参考として援用される。
上記集団形成工程は、上記ナノ物質集団を形成する工程である。ナノ物質集団の具体的な形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、集光ビームによりナノ物質集団を形成する方法を挙げることができる。この場合、前述したように、ナノ物質集団を構成する各ナノ物質の間隔(距離)を所望の範囲内に制御すれば、照射する共鳴光により生ずるナノ物質間の力(引力または斥力)の大きさを制御することができる。また、照射する共鳴光の強度の変化と組み合わせれば、ナノ物質間に生ずる力の大きさをより良好に制御することが可能となる。
上記集団形成工程において、ナノ物質集団を形成する環境は、ナノ物質が自由に移動可能な環境であれば特に限定されるものではないが、上述したように、自由空間内か流動性媒体中であればよい。流動性媒体としては特に限定されるものではないが、超流動ヘリウム等を挙げることができる。
なお、本発明にかかる操作方法には、上記ナノ物質操作工程、特定ナノ物質選択工程、集団形成工程以外の工程が含まれていてもよいし、それぞれの工程の順序を任意に変更してもよいことは言うまでもない。例えば、ナノ物質操作工程、特定ナノ物質選択工程、集団形成工程の順で行ってもよいし、流動性媒質中にバラバラに分散しているナノ物質を特定ナノ物質選択工程で選別した後、集団形成工程である程度の距離まで集め、その後、ナノ物質操作工程でそのナノ物質間の距離を制御するようにしてもよい。
〔2〕ナノ物質の操作装置
本発明にかかるナノ物質の操作方法を実現する操作装置は、共鳴光を照射することによりナノ物質に力を及ぼして当該ナノ物質を操作するものであれば具体的に限定されるものではないが、その構成の一例について以下に具体的に説明する。
まず、図2に示すように、本実施の形態にかかる操作装置は、レーザー光源21a・21b、筐体22、ナノ物質集団生成部23、流動性媒質供給部24、基板固定部25、制御部26を備えている。
レーザー光源21a・21bは、ナノ物質集団12に対して共鳴光としてのレーザー光を照射する共鳴光照射手段であり、共鳴光の照射条件が変化可能となっている。照射条件としては、〔1〕の<共鳴光の制御>でも説明したように、少なくとも共鳴光の偏光が変化可能となっており、波長や強度も変化可能となっていることが好ましい。
照射条件の変化は、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、図示しない外部入力装置(例えばキーボード等)によりナノ物質に関する情報を入力し、この情報に基づいて、制御部26による制御で照射条件を変化するようになってもよい。あるいは、照射対象となるナノ物質の材質、大きさ、形状、内部構造等が未知である場合は、図示しない分光分析装置を設け、これによりナノ物質が有する電子的励起準位間のエネルギー差やナノ物質の大きさ、形状、内部構造等を決定し、その測定結果に基づいて、制御部26の制御により照射条件を変化させればよい。
共鳴光照射手段の数は特に限定されるものではなく、図2に示すように、レーザー光源21aおよび21bの2つが備えられていてもよいし、何れか一方であってもよいし、3つ以上備えられていてもよい。レーザー光源を複数設けることにより、異なる照射条件の共鳴光(レーザー光)を複数種類照射することが可能になる。その結果、より一層多彩かつ複雑な操作が可能となる。
上記レーザー光源21aおよび/または21bの具体的な構成は特に限定されるものではなく、ナノ物質の操作に用いられる公知のレーザー光源を用いることができる。具体的には、例えば、操作対象となるナノ物質がCuClの量子ドットである場合、CuCl電子励起準位が存在する近紫外領域の光を照射するレーザー光源を用いればよい。より具体的には、波長385±1nm、出力3mW、線幅0.05nmの青紫色半導体レーザー素子を用いることができる。他にも、波長可変のレーザー光源として、モードロックチタン・サファイアレーザー(基本波:波長720nm〜900nm、LBOやLiO等の非線形光学結晶を用いた場合、第2高調波:波長360〜450nm)を用いることができる。また、偏光の変化等、照射条件の制御手法についても特に限定されるものではなく、公知のレーザー用光学系、例えば、偏光の変化の場合、波長板を用いればよい。波長板として、例えば、λ/2波長板を用いれば、レーザー光の偏光を90°回転させることができる。
上記筐体22は、ナノ物質集団12を存在させ、かつ、操作可能とする内部空間を有しており、上記レーザー光源21aおよび/または21bによるレーザー光(共鳴光)の照射により、内部のナノ物質集団12を操作する。筐体22の大きさや形状等は特に限定されるものではなく、ナノ物質(ナノ物質集団12)の種類や操作環境に応じて適切な構成のものを採用すればよい。例えば、ナノ物質集団12を超流動ヘリウム等の流動性媒質中で操作する場合には、超流動ヘリウムが充填可能となっているヘリウムクライオスタット等を用いることができる。
上記ナノ物質集団形成部23は、複数のナノ物質からなるナノ物質集団12を形成する形成手段である。この場合、ナノ物質を生産してからナノ物質集団12を形成する構成であってもよいし、すでに生産されたナノ物質を筐体22内に導入してから集光ビーム等によってナノ物質集団12を形成する構成であってもよい。前者の構成であれば、超流動ヘリウム中にて量子ドットを直接生成し、これを集光ビームによってナノ物質集団12とする例を挙げることができる。これについては、日本国特許出願「特願2004−071621(量子ドット操作方法および量子ドット生成操作装置)」に記載の内容を参照して行うことができる。後者の構成であれば、量子ドット生成装置と本発明の操作装置とを、量子ドットを移動可能に連結しておき、量子ドット生成装置で生成された量子ドットを操作装置まで移動させてから、操作装置内でナノ物質集団12を形成する例を挙げることができる。
図2に示す構成では、筐体22内で流動性媒質を充填させる構成となっているので、流動性媒質供給部24を備えている。流動性媒質としては、上記超流動ヘリウム等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。流動性媒質供給部24の具体的構成も特に限定されるものではなく、例えば、ヘリウムクライオスタットで用いられている公知の構成を採用すればよい。
さらに、操作したナノ物質(ナノ物質集団12)を基板30に固定化する場合には、筐体22内には、基板30を固定可能とする基板固定部25が設けられていることが好ましい。基板固定部25の具体的な構成は特に限定されるものではなく、ナノ物質集団12を基板30に固定化する際の動作を妨げないような公知の固定部材を用いることができる。
制御部26は、本実施の形態の操作装置において、その動作を制御するための制御手段であり、図2に示すように、操作装置を構成するレーザー光源21a・21b、ナノ物質集団生成部23、流動性媒質供給部24に制御信号を送信可能となっていればよい。また、図示しない入力手段等から情報や信号が入力可能となっており、それに基づいて上記各手段の動作を制御するようになっていればよい。制御部26の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の演算手段が好適に用いられる。具体的には、コンピュータの中央処理装置(CPU)等を挙げることができ、その動作はコンピュータプログラムにしたがって実行される構成であればよい。
上記制御部26による制御の一例について簡単に説明すると、レーザー光源21a・21bにより異なる照射条件のレーザー光をナノ物質集団12に照射する場合、入力手段からの情報等に基づき、目的に応じて、レーザー光源21a・21bそれぞれから異なる条件のレーザー光を同時に照射させたり、交互に照射させたりするように制御すればよい。これによって、さらに多彩な光操作が可能になる。
なお、本実施の形態の操作装置には、ナノ物質集団12の操作に関する各種情報を操作者に提示するための表示手段(各種ディスプレイ等)といった出力手段、あるいは、基板固定部25に基板30が固定化されているか否かを検知する検知手段等を備えていてもよい。このような手段も公知の構成を用いることができ、その動作も制御部26により制御されていればよい。
〔3〕本発明の利用
本発明の利用分野は、ナノテクノロジー全般であって、どのような種類のナノ物質の操作であっても利用できることは言うまでも無いが、具体的な一例としては、量子ドット対の製造(作製)方法への利用が挙げられる。すなわち、本発明には、上述したナノ物質の操作方法を用いた量子ドット対の製造方法も含まれる。
上記量子ドット対の製造方法について具体的な一例を挙げて説明する。まず、例えば、集団形成工程において、例えば集光ビームにより、特定の属性を有する量子ドットが複数近接した量子ドット集団を形成する。この量子ドット集団は、サイズ、形状、共鳴エネルギー等において特定の属性を有する多量の量子ドットが近接した集団となっているとする。そこで、上記第一ナノ物質操作工程により、上記量子ドット集団に含まれる量子ドット間の距離を制御して量子ドット対を形成する。すなわち、前述したように、共鳴光の偏光を変化させることで、量子ドット間に引力または斥力を生じさせて量子ドット集団の集合態様を制御する。これにより、量子ドット間の距離を変化させ、量子ドット対を形成する。その後、特定ナノ物質選択工程により、特定の量子ドット対を選択してもよいし、選択した量子ドット対を第二ナノ物質操作工程により基板等に固定化してもよい。なお、第一ナノ物質操作工程、第二ナノ物質操作工程、特定ナノ物質選択工程、集団形成工程以外の工程が含まれていてもよいし、それぞれの工程の順序は任意に変更してもよい。
このとき、前述したように、照射条件の異なる共鳴光を複数種類併用してもよい。例えば、特定サイズの量子ドットのみが一方向に運動する条件下で、同時に特定の距離以下の間隔で存在する量子ドット対の距離を制御するように、複数種類の共鳴光を照射する。これによって、任意の量子ドット対からなる新規な構造体を自由空間に作成したり、その構造体を基板に固定したりすることも可能となる。
また、前述したとおり、本発明では、カーボンナノチューブを操作することが可能である。すなわち、平行に並ぶカーボンナノチューブ対に対して共鳴光を照射する場合、共鳴光の偏光を変化させれば、偏光がカーボンナノチューブの長さ方向に対して平行であるか垂直であるかによって輻射力の性質が変わる。そのため、量子ドットと同様に引力・斥力の制御が可能となって、良好な操作を実現することができる。
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
ナノ物質としては、1辺20nmの立方体で材質がCuClの半導体量子ドットを選択した。半導体量子ドットの電子的励起状態はLorentz振動子モデルで近似し、離散化積分方程式により応答場を計算し、それをMaxwellの応力テンソルに代入して量子ドットに及ぼされる力を評価した。具体的な条件は、図3(a)に示すように、2つの立方体量子ドットが8nm間隔という近い領域に存在するとして、その重心をx−y平面上に設定し、z方向においては、CuClのZ励起子のパラメーターを使用した(共鳴エネルギー:3.2022[eV])。照射する共鳴光(レーザー光)の強度は50μW/100μm(=50W/cm)とした。この条件で、偏光の異なる共鳴光を照射した場合、個々の量子ドットが受ける加速度(力/質量)のx,y成分の周波数依存性を、図3(b)・図3(c)に示す。
図3(b)・図3(c)では、単一の量子ドットの電子的励起準位は縦線で示される。立方体形状の半導体量子ドットが近い領域に存在する場合、それらの内部に誘起される分極が電磁場を介して相互作用し、単一の量子ドットの電子的励起準位とは異なる固有エネルギーの結合状態(BS)または反結合状態(AS)を有する量子ドット対の1種である『ポラリトニック分子』が形成されることが分かる。
また、2個の立方体量子ドットが接近すると、各量子ドット間の重心を結ぶ直線(重心線)に垂直な偏光の共鳴光を照射すれば、量子ドット間に反発力(斥力)が生じ、重心線に平行な偏光の共鳴光を照射すれば引力が生じ、距離の減少とともにその大きさが増大した。さらにナノメートル程度の距離まで接近すると、線形応答の範囲のレーザー強度でも、生じる加速度は重力加速度の数十倍となった。また、量子ドットの大きさが、例えば60nm程度に大きくなると、本来、斥力が生じる垂直な偏光の場合でも、条件によって力の成分が負となり、引力が生じる領域が現れた。なお、直方体状の微粒子の場合、長軸と並行な偏光の入射光の方が、そのピーク値が大きく、ピーク周波数の位置は形状・偏光により変わることがわかった。
さらに、ナノ物質として、直径40nmの球で材質がCuClの半導体量子ドットを選択した場合でも、図4(b)・図4(c)に示すように結合状態(BS)または反結合状態(AS)を有する『ポラリトニック分子』が形成されることが分かる。単一の立方体に、共鳴光を照射したときの力のピーク値は、同体積の球と同程度となった。
このように、結合状態および反結合状態は、異なる偏光の入射光により選択的に生じせしめることができる。結合状態となるようにエネルギーを励起すると量子ドット間には引力が、反結合状態となるようにエネルギーを励起すると量子ドット間には斥力が生じる。それゆえ、これを利用すれば、従来にないナノ物質の操作方法を提供することができる。
図5に、複数ビームを使用する例として、定在波を用いる構成例を示す。基板42の鉛直方向上方にサンプルセル41が載置され、基板42の下方にはプリズム43が接合されている。基板42は、量子ドット対などの量子ドット列を最終的に固着するものである。
サンプルセル41の内部には、ナノ物質としての、それぞれ2つの量子ドット40からなる量子ドット対が存在している。すなわち、ここでは、既に、サイズ選択された量子ドット40が集まっているとする。
2つの対向するレーザー光源44から出射されるレーザー光A・Bを、プリズム43の斜め下方から、プリズム43を介して基板42に照射するようになっている。これにより、基板42に平行な、水平方向の定在波Eを形成する。定在波Eは、電場強度に定在波的な濃淡のある近接場である。これにより、量子ドット対をこの定在波E上に集合させ、量子ドット対を周期的に配列する(定在波トラップ)ことができる。
また、このレーザー光によりプリズム43でエバネッセント波(光)Dを発生させる。エバネッセント波は、量子ドット40に対し、重力に抗する輻射力Fを誘起する。これにより、量子ドット40を基板42から一定の高さの位置に保持している。なお、レーザー光A・Bの周波数を切り替えることで、逆に、量子ドット40を基板42に引き付けることも可能である。
このようにして、垂直方向だけでなくプリズム43に平行な方向にも定在波トラップを形成可能である。
ここで、サンプルセル41の上方から、上記量子ドット40に向かって、配列制御光としての共鳴光Cを、図示しない装置から照射するようになっている。これは偏光であり、例えば、同図に示すように、水平方向であって紙面に沿った方向(図中、左右方向)や、あるいは、水平方向であって紙面奥行き方向などに振動面を持っている。
さて、上記のように、量子ドット40を基板42から一定の高さに保持している。この量子ドット40は、定在波E中の、ポテンシャルが最小となる位置に一次元的に集まってくる。しかしながら、量子ドット40の量がある程度多ければ、横方向(水平方向)にも分布を持つことになる。これに対し、上記のように、さらに上から特定の偏光のビームである共鳴光Cを当て、水平方向であって紙面に沿った方向には引力が働くようにすることによって、その方向の広がりを抑えることができる。また、奥行き方向には斥力にて集団が伸びるようにすれば、より一次元性の強い位置分布にすることができる。時間をかければ、原理的には、規則的な配列に近づけていくこともできる。また、近接場や各光の強度をさらに制御すれば、量子ドット40を基板42に固着させることも可能である。すなわち、上記定在波Eの発生位置やエバネッセント波Dの発生位置を調整することで、量子ドット40を基板42上に固着させることができる。
このように、偏光の振動面を制御することで、紙面に平行方向に働く力と垂直方向に働く力とを制御し、横方向、奥行き方向の量子ドットの分布を整形することができ、それにより、量子ドットの配列を制御することができる。
図6に、複数ビームを使用する例として、定在波を用いる別の構成例を示す。レンズ51の鉛直方向上方に基板52が配置されている。基板52は、量子ドット対などの量子ドット列を最終的に固着するものである。
レンズ51と基板52との間には、ナノ物質としての、それぞれ2つの量子ドット50からなる量子ドット対が存在している。すなわち、ここでは、既に、サイズ選択された量子ドット50が集まっているとする。
集光レーザービームである共鳴光Aをレンズ51で集光させることによって、レーザースポットBを形成している。それとともに、共鳴光Aを基板52で反射させることによって、定在波Cを形成している。上記定在波Cは、量子ドット50全体に、重力に逆らう輻射力Dを印加することができる。これにより、集光位置にあるレーザースポットBの面上に上記量子ドット対を集合させ、量子ドット対を周期的に配列する(定在波トラップ)ことができる。
図5の場合同様、この共鳴光Aの偏光の振動面を制御し、偏光を切り換えることによって、量子ドット50の集合(配列)方向を制御でき、例えば線状等に整形することができる。
さらに、レンズ51を上下(図中、a方向またはb方向)させてレーザースポットBの位置を制御し、基板52上にレーザースポットBが来るようにすることで、量子ドット50を基板52に固着させることができる。
このようにして、集光レーザービームでレーザースポットB上に量子ドット50を例えば直線状に配列した後、基板52に固着させることができる。これは、配列量子ドット間のエネルギー移動の制御や量子ドット回路の作成などへの応用が可能である。
さらに、図示しないが、集合系を扱う際に全体が固まらないようにしたり、逆に固まるようにしたりというような操作も可能である。
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
以上のように、本発明では、共鳴光によってナノ物質集団を操作する場合に、従来よりも一層多彩で複雑な操作を可能とする。それゆえ、本発明では、ナノ物質の操作によって新規な性質を有する構造体を製造したり、生体分子の操作や細胞・細胞内小器官の操作に応用したりすることが可能となり、ナノテクノロジーに関わる分野に広く利用することができる。

Claims (42)

  1. ナノ物質に対して、当該ナノ物質の電子的励起準位に共鳴する共鳴光を照射することにより、共鳴光からナノ物質に力を及ぼして当該ナノ物質を操作するナノ物質の操作方法において、
    共鳴光の照射対象が、複数個のナノ物質からなるナノ物質集団であるとともに、
    ナノ物質間に生じる力学的相互作用を制御するために、照射する上記共鳴光の偏光を変化させることを特徴とするナノ物質の操作方法。
  2. 上記ナノ物質集団は、自由空間中または流動性媒質中に存在することを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  3. さらに、照射する上記共鳴光の強度を変化させることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  4. 近接するナノ物質が有する共鳴エネルギーを、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも低エネルギー側に励起するように、照射する上記共鳴光の偏光を変化させることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  5. 近接するナノ物質が有する共鳴エネルギーを、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも高エネルギー側に励起するように、照射する上記共鳴光の偏光を変化させることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  6. 共鳴光として、照射条件の異なる共鳴光を複数種類併用することを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  7. 互いに直交する方向をD1およびD2とするとき、
    共鳴光として、D1方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも低エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームAを照射し、それにより、D1方向にあるナノ物質同士に引力を働かせ、D2方向にあるナノ物質同士には何の力も働かせないことを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  8. 互いに直交する方向をD1およびD2とするとき、
    共鳴光として、D1方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも高エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームAを照射し、それにより、D2方向にあるナノ物質同士に斥力を働かせ、D1方向にあるナノ物質同士には何の力も働かせないことを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  9. 互いに直交する方向をD1およびD2とするとき、
    一方の共鳴光として、D1方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも低エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームAを照射し、それにより、D1方向にあるナノ物質同士に引力を働かせ、D2方向にあるナノ物質同士には何の力も働かせず、
    他方の共鳴光として、D2方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも低エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームBを照射し、それにより、D2方向にあるナノ物質同士に引力を働かせ、D1方向にあるナノ物質同士には何の力も働かせず、
    これにより、D1方向にあるナノ物質同士にもD2方向にあるナノ物質同士にも引力を働かせることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  10. 互いに直交する方向をD1およびD2とするとき、
    一方の共鳴光として、D1方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも高エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームAを照射し、それにより、D2方向にあるナノ物質同士に斥力を働かせ、D1方向にあるナノ物質同士には何の力も働かせず、
    他方の共鳴光として、D2方向に振動する偏光であって、単一のナノ物質が有する共鳴エネルギーよりも高エネルギー側のピークのみをカバーするレーザービームBを照射し、それにより、D1方向にあるナノ物質同士に斥力を働かせ、D2方向にあるナノ物質同士には何の力も働かせず、
    これにより、D1方向にあるナノ物質同士にもD2方向にあるナノ物質同士にも斥力を働かせることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  11. 定在波を発生させて、上記ナノ物質を該定在波上に配列させることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  12. 上記共鳴光とは別の2つの光にて上記定在波を発生させることを特徴とする請求の範囲11に記載のナノ物質の操作方法。
  13. 上記共鳴光を基板に当て、該共鳴光とその基板からの反射光にて上記定在波を発生させることを特徴とする請求の範囲11に記載のナノ物質の操作方法。
  14. 上記定在波の発生位置を調整することで、上記ナノ物質を基板上に固着させることを特徴とする請求の範囲11に記載のナノ物質の操作方法。
  15. 定在波を発生させることによって、上記ナノ物質に、重力に逆らう輻射力を印加することを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  16. 上記定在波の発生位置を調整することで、上記ナノ物質を基板上に固着させることを特徴とする請求の範囲15に記載のナノ物質の操作方法。
  17. エバネッセント波を発生させることによって、上記ナノ物質に、重力に逆らう輻射力を印加することを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  18. 上記エバネッセント波の発生位置を調整することで、上記ナノ物質を基板上に固着させることを特徴とする請求の範囲17に記載のナノ物質の操作方法。
  19. ナノ物質集団を構成するナノ物質の集団的な運動および/またはナノ物質の配列を制御するように、上記共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第一ナノ物質操作工程を有することを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  20. 運動および/または配列が制御されたナノ物質集団において、ナノ物質の重心の位置および/またはナノ物質の運動を制御するように、共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第二ナノ物質操作工程を有することを特徴とする請求の範囲19に記載のナノ物質の操作方法。
  21. 上記第一ナノ物質操作工程にてナノ物質集団の運動および/または配列を制御する前に、ナノ物質の重心の位置および/またはナノ物質の運動を制御するように、共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第二ナノ物質操作工程を有することを特徴とする請求の範囲19に記載のナノ物質の操作方法。
  22. 上記第一ナノ物質操作工程にてナノ物質集団の運動および/または配列を制御するのと同時に、ナノ物質の重心の位置および/またはナノ物質の運動を制御するように、共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第二ナノ物質操作工程を有することを特徴とする請求の範囲19に記載のナノ物質の操作方法。
  23. 上記第一ナノ物質操作工程にてナノ物質集団の運動および/または配列を制御するのと交互に、ナノ物質の重心の位置および/またはナノ物質の運動を制御するように、共鳴光の照射によりナノ物質を操作する第二ナノ物質操作工程を有することを特徴とする請求の範囲19に記載のナノ物質の操作方法。
  24. 上記ナノ物質集団が複数種類のナノ物質を含んでいるとともに、
    さらに、上記共鳴光の照射により、上記ナノ物質集団から特定のナノ物質を選択する特定ナノ物質選択工程を有することを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  25. さらに、上記ナノ物質集団を形成する集団形成工程を有することを特徴とする請求の範囲19に記載のナノ物質の操作方法。
  26. さらに、上記ナノ物質集団を形成する集団形成工程を有することを特徴とする請求の範囲24に記載のナノ物質の操作方法。
  27. 上記集団形成工程では、集光ビームによりナノ物質集団を形成することを特徴とする請求の範囲25に記載のナノ物質の操作方法。
  28. 上記集団形成工程では、集光ビームによりナノ物質集団を形成することを特徴とする請求の範囲26に記載のナノ物質の操作方法。
  29. 上記ナノ物質が量子ドットまたは量子ドット対であることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  30. 上記ナノ物質集団には、電子的励起準位の異なる複数種類の量子ドット対が含まれており、
    上記特定ナノ物質選択工程では、特定の電子的励起準位を有するナノ物質を選択することを特徴とする請求の範囲29に記載のナノ物質の操作方法。
  31. 上記ナノ物質集団には、材質が同一であり、かつ、大きさ、形状、内部構造のうち少なくとも何れかが異なる複数種類の量子ドット対が複数含まれており、
    上記特定ナノ物質選択工程では、大きさ、形状および内部構造が実質的に同一である量子ドット対を選択することを特徴とする請求の範囲29に記載のナノ物質の操作方法。
  32. 上記集団形成工程において形成されるナノ物質集団が、特定の属性を有する量子ドットが複数近接した量子ドット集団であることを特徴とする請求の範囲29に記載のナノ物質の操作方法。
  33. 上記第一ナノ物質操作工程により、上記量子ドット集団に含まれる量子ドット間の距離を制御して量子ドット対を形成することを特徴とする請求の範囲32に記載のナノ物質の操作方法。
  34. 上記共鳴光としてレーザー光が用いられることを特徴とする請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法。
  35. 請求の範囲1に記載のナノ物質の操作方法を用いた量子ドット対の製造方法。
  36. 共鳴光を照射することによりナノ物質に力を及ぼして当該ナノ物質を操作するナノ物質の操作装置において、
    ナノ物質に対して、当該ナノ物質の電子的励起準位に共鳴する共鳴光を照射する共鳴光照射手段を備えており、当該共鳴光照射手段は、共鳴光の偏光が変化可能となっていることを特徴とするナノ物質操作装置。
  37. 複数個のナノ物質からなるナノ物質集団を存在させ、かつ、操作可能とする内部空間を有する筐体を備えていることを特徴とする請求の範囲36に記載のナノ物質操作装置。
  38. 上記筐体内は、流動性媒質が充填可能となっていることを特徴とする請求の範囲37に記載のナノ物質操作装置。
  39. 上記共鳴光照射手段は、共鳴光の強度が変化可能となっていることを特徴とする請求の範囲36に記載のナノ物質操作装置。
  40. 上記共鳴光照射手段は複数設けられており、各共鳴光照射手段から照射される共鳴光は、照射条件が異なっていることを特徴とする請求の範囲36に記載のナノ物質操作装置。
  41. さらに、筐体内に上記ナノ物質集団を形成するナノ物質集団形成手段を備えていることを特徴とする請求の範囲36に記載のナノ物質操作装置。
  42. さらに、上記筐体内には、操作されたナノ物質を固定する基板が設置されていることを特徴とする請求の範囲36に記載のナノ物質操作装置。
JP2006535025A 2004-09-03 2005-03-03 ナノ物質の操作方法およびその利用 Pending JPWO2006027863A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004257017 2004-09-03
JP2004257017 2004-09-03
PCT/JP2005/003637 WO2006027863A1 (ja) 2004-09-03 2005-03-03 ナノ物質の操作方法およびその利用

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2006027863A1 true JPWO2006027863A1 (ja) 2008-05-08

Family

ID=36036159

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006535025A Pending JPWO2006027863A1 (ja) 2004-09-03 2005-03-03 ナノ物質の操作方法およびその利用

Country Status (3)

Country Link
US (1) US7728284B2 (ja)
JP (1) JPWO2006027863A1 (ja)
WO (1) WO2006027863A1 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1748030B1 (en) * 2005-07-07 2016-04-20 Fei Company Method and apparatus for statistical characterization of nano-particles
JP5458300B2 (ja) * 2009-02-09 2014-04-02 公立大学法人横浜市立大学 微細構造物の蒸着装置及び方法
TWI381990B (zh) * 2009-05-15 2013-01-11 Hon Hai Prec Ind Co Ltd 一種奈米碳管膜前驅、奈米碳管膜及其製造方法以及具有該奈米碳管膜之發光器件
JP5523989B2 (ja) * 2010-08-24 2014-06-18 東京エレクトロン株式会社 量子ドット形成方法及びこれを実施するためのプログラムを記憶する記憶媒体並びに基板処理装置
US9529228B2 (en) 2010-11-05 2016-12-27 Yissum Research Development Company Of The Hebrew University Of Jerusalem, Ltd. Polarizing lighting systems

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05168265A (ja) 1991-12-09 1993-07-02 Sanyo Electric Co Ltd マイクロモータ
JP2003200399A (ja) 2001-12-26 2003-07-15 Japan Science & Technology Corp 微小物体の操作方法
US6774333B2 (en) * 2002-03-26 2004-08-10 Intel Corporation Method and system for optically sorting and/or manipulating carbon nanotubes

Also Published As

Publication number Publication date
WO2006027863A1 (ja) 2006-03-16
US20070284544A1 (en) 2007-12-13
US7728284B2 (en) 2010-06-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Staude et al. All-dielectric resonant meta-optics lightens up
Cortés et al. Optical metasurfaces for energy conversion
Kianinia et al. Quantum emitters in 2D materials: Emitter engineering, photophysics, and integration in photonic nanostructures
JP4878550B2 (ja) 量子ドット操作方法および量子ドット生成操作装置
Noda et al. Spontaneous-emission control by photonic crystals and nanocavities
Gibbs et al. Exciton–polariton light–semiconductor coupling effects
Maity et al. Spectral alignment of single-photon emitters in diamond using strain gradient
Cui et al. Light emission driven by magnetic and electric toroidal dipole resonances in a silicon metasurface
Li et al. Tunable open‐access microcavities for solid‐state quantum photonics and polaritonics
Choubani et al. Nonlinear optical properties of lens-shaped core/shell quantum dots coupled with a wetting layer: effects of transverse electric field, pressure, and temperature
Heindel et al. Quantum dots for photonic quantum information technology
JPWO2006027863A1 (ja) ナノ物質の操作方法およびその利用
Pan et al. Nanolasers Incorporating Co x Ga0. 6–x ZnSe0. 4 Nanoparticle Arrays with Wavelength Tunability at Room Temperature
Bao et al. Giant out-of-plane exciton emission enhancement in two-dimensional indium selenide via a plasmonic nanocavity
Munley et al. Visible Wavelength Flatband in a Gallium Phosphide Metasurface
Kumar et al. Single-photon generation engineering
WO2007072806A1 (ja) 近接場光分布伝送素子
Zhang et al. Microcavity exciton polaritons
Ohtsu Historical Review of Dressed Photons: Experimental Progress and Required Theories
Chattaraj et al. On-chip integrated single photon source-optically resonant metastructure based scalable quantum optical circuits
Staude et al. All-dielectric resonant meta-optics goes active
Jarlov Cavity quantum electrodynamics with systems of site-controlled quantum dots and photonic crystal cavities
Avdeev et al. Resonant optomechanical tension and crumpling of 2D crystals
JP2003200399A (ja) 微小物体の操作方法
De Silva et al. Modelling of exciton-polaritons

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070226

A524 Written submission of copy of amendment under article 19 pct

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A527

Effective date: 20070226

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070226

A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A801

Effective date: 20070226

A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20070227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090707

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090904

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090915

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090904

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091201