JPWO2006009297A1 - Es細胞を用いたキメラ作製 - Google Patents

Es細胞を用いたキメラ作製 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2006009297A1
JPWO2006009297A1 JP2006527813A JP2006527813A JPWO2006009297A1 JP WO2006009297 A1 JPWO2006009297 A1 JP WO2006009297A1 JP 2006527813 A JP2006527813 A JP 2006527813A JP 2006527813 A JP2006527813 A JP 2006527813A JP WO2006009297 A1 JPWO2006009297 A1 JP WO2006009297A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell
cells
gene
pluripotent
animal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2006527813A
Other languages
English (en)
Inventor
恭光 長尾
恭光 長尾
拓郎 堀居
拓郎 堀居
Original Assignee
恭光 長尾
恭光 長尾
拓郎 堀居
拓郎 堀居
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 恭光 長尾, 恭光 長尾, 拓郎 堀居, 拓郎 堀居 filed Critical 恭光 長尾
Publication of JPWO2006009297A1 publication Critical patent/JPWO2006009297A1/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K67/00Rearing or breeding animals, not otherwise provided for; New or modified breeds of animals
    • A01K67/027New or modified breeds of vertebrates
    • A01K67/0271Chimeric vertebrates, e.g. comprising exogenous cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/87Introduction of foreign genetic material using processes not otherwise provided for, e.g. co-transformation
    • C12N15/873Techniques for producing new embryos, e.g. nuclear transfer, manipulation of totipotent cells or production of chimeric embryos
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2217/00Genetically modified animals
    • A01K2217/07Animals genetically altered by homologous recombination
    • A01K2217/075Animals genetically altered by homologous recombination inducing loss of function, i.e. knock out

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biodiversity & Conservation Biology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Animal Husbandry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Developmental Biology & Embryology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

同種または異種動物のタンパク質や組織を産生し、または所望の多能性細胞が生殖系列に伝播したキメラ動物ならびに特定の遺伝子を欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞の提供。特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該多能性細胞以外の他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を動物の宿主胚に注入することを含む、キメラ動物の作製方法および該方法により製造されたキメラ動物。

Description

本発明は、生殖細胞形成に関与する遺伝子、免疫系に関与する遺伝子等の特定の遺伝子が変異または欠損した多能性細胞を用いてキメラ動物を作成する方法に関する。
従来より、ノックアウトマウス等のジーンターゲッティングされた遺伝子が改変されたマウスの作製のためにES細胞を用いてキメラマウスを形成し、キメラマウスを交配していた。
これらの遺伝子改変マウスの作製のためには、優良なES細胞を樹立し、ES細胞において効率よく遺伝子改変を行い、遺伝子改変されたES細胞がキメラマウスを形成し、得られたキメラマウスにおいて、ES細胞で行った遺伝子改変が生殖系列に伝播され次世代に伝達される必要がある。
ES細胞の樹立はマウスの系統に大きく依存し、樹立の確立が低く、また樹立できたES細胞は継代を重ねるに従い生殖系列への伝播能を失うため、莫大な労力をつぎ込んで樹立したES細胞も、できる限り、継代を重ねずに使用する必要があった。特に近交系のマウスを用いる場合は、その傾向が大きかった。
ES細胞の遺伝子改変が生殖系列に伝播されることについては、問題が多かった。特にキメラマウスを作製できても、生殖系列への伝播がないことは多かった。実際には、生殖系列への伝播実績があり、継代を重ねていないES細胞を入手して使用していた。
ES細胞からキメラマウスを選択的に作製する方法としてテトラプロイドレスキュー法があった(Nagy A et al.,Development 110,815−821(1990))。該方法においては、ES細胞を4倍体の受精卵に注入し、4倍体細胞は胎盤へと発生し、ES細胞のみが個体へと発生するので、ES細胞の遺伝子改変が生殖系列に伝播し得る。
しかしながら、該方法においては、得られたキメラマウスは呼吸障害や奇形などの障害を発症して長くは生存できず(Eggan K et al.,PNAS 98,6209−6214(2001))生殖系列キメラの有効な作製方法とはなり得なかった。
本発明者は、これらの問題点を解決し、生殖キメラを有効に作製する方法を開発した。一つは、生殖細胞を形成することができない初期胚をc−kit変異マウスの、W/+マウスとW/+マウスとの正逆の交配により得られる受精胚(W/W又はW/W)であって、雌雄両性で生殖細胞を形成することができない(不稔/不妊)マウスの初期胚にES細胞を注入し、ES細胞に由来する生殖細胞のみを有するキメラマウスを作製する方法(特許文献1参照)であった。
また、本発明者らは、ES細胞またはES細胞を注入する初期胚の細胞のミトコンドリアDNAを野生型のミトコンドリアDNAに置換することにより、ミトコンドリアDNAと核DNAを適合させることにより、上記のテトラプロイドレスキュー法においても、呼吸障害や奇形等の障害を発症しない、キメラマウスの作製方法を開発した(特許文献2参照)。
しかしながら、これらの方法によっても、用いるES細胞は、継代を重ねずに増殖能力および未分化状態および分化能を保っている必要があり、ES細胞の調製という面で効率的ではなかった。また、出生するキメラマウスの性比のコントロールは不可能であった。
WO 03/071869号国際公開パンフレット WO 03/072777号国際公開パンフレット
本発明は、特定の遺伝子が変異しまたは欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該機能を有する他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を用いた新規なキメラ動物を作製する方法および該方法により作製された、同種または異種動物のタンパク質や組織を産生し、または所望の多能性細胞が生殖系列に伝播したキメラ動物の提供を目的とする。さらに、本発明は特定の遺伝子を欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞の提供、ならびに該多能性細胞を用いて他の多能性細胞を樹立する方法の提供を目的とする。
上述のように、ES細胞のミトコンドリアを改変し、あるいはW/Wマウス(W/Wマウス)等の生殖細胞を形成できないマウス由来の胚とES細胞を用いることにより生殖系列キメラマウスを効率的に作製する方法が確立されていた。
しかし、W/Wマウス(W/Wマウス)等の生殖細胞を形成できないマウス由来の受精胚を調製することは非常に手間がかかる作業であり困難であった。
また、キメラマウスを作製する場合に用いるES細胞は高い増殖能を有していることが望ましいが、現実的には、高い増殖能を有するES細胞を樹立することは容易ではなく、また樹立したES細胞も継代を重ねると増殖能が低下し、キメラマウスを効率的に作製できなくなるという問題があった。また、従来得られていたES細胞は性染色体が雄XYであるため、ES細胞の寄与が大きいとキメラマウスはほとんどが雄となり、従来の方法では、出生するキメラマウスの性比をコントロールすることはできなかった。
近交系マウスのES細胞は継代を重ねると増殖能が低下するが、F1交雑系マウスの細胞と共培養することにより増殖能が低下しないことが知られていた(Axelrod.Dev Biol 101,225−228,1984)。
本発明者らは、鋭意検討の結果、生殖細胞を形成しえないマウス胚からES細胞を樹立し、該ES細胞を動物の生殖器官由来の細胞と共培養することにより、効率的に生殖器官由来の細胞からES細胞を樹立させることを見出した。このように、生殖細胞を形成しえないマウス胚からES細胞を樹立して宿主胚に所望のES細胞と同時に注入することにより、前述の生殖細胞を形成できないマウス由来の受精胚を調製することの困難性を解消し得る。さらに、前記の生殖細胞を形成しえないマウスから樹立したES細胞を、他のES細胞、例えば遺伝子を改変したES細胞と共培養することにより、他のES細胞の増殖能が改善することができることを見出した。さらに、前記の生殖細胞を形成しえないマウス胚から樹立したES細胞を他のES細胞、例えば遺伝子を改変したES細胞と共に動物の初期胚に注入し発生させることにより、他のES細胞が生殖系列へ伝播されたキメラ動物を作製できることを見出した。このように、生殖細胞の形成に関与する遺伝子に変異を有し生殖細胞を形成しえないマウス胚由来のES細胞と生殖細胞を形成し得るES細胞を動物の初期胚に注入し発生させることにより、生殖細胞を形成し得るES細胞が生殖系列に伝播するので、キメラ個体の子孫は、該生殖細胞を形成し得るES細胞由来となる。
さらに、本発明者らは、免疫不全マウスやリンパ球欠損マウス等の胚に由来するES細胞などの特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子に関連する機能に障害を有する動物由来の多能性細胞および他の多能性細胞を動物の初期胚に注入し発生させることにより、キメラ個体において、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の細胞が機能することを見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該多能性細胞以外の他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を動物の宿主胚に注入することを含む、キメラ動物の作製方法。
[2] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該多能性細胞以外の他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を共培養した後に動物の宿主胚に同時に注入することを含む、キメラ動物の作製方法。
[3] 共培養が動物の初期胚中で行われる[2]のキメラ動物の作製方法。
[4] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞由来の遺伝子が機能するキメラ動物である、[1]から[3]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[5] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞由来の前記変異または欠損した遺伝子に対応する遺伝子が機能するキメラ動物である、[1]から[3]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[6] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が遺伝子改変を受けた細胞である[1]から[5]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[7] 遺伝子改変が外来遺伝子の導入または内在遺伝子のノックアウトである、[6]のキメラ動物の作製方法。
[8] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および/または他の多能性細胞が適合型ミトコンドリアDNAが導入または置換された多能性細胞である、[1]から[7]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[9] 動物の宿主胚が適合型ミトコンドリアDNAを導入した宿主胚である、[1]から[8]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[10] 動物の宿主胚が胚盤胞である、[1]から[9]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[11] 動物の宿主胚がテトラプロイドである、[10]のキメラ動物の作製方法。
[12] 多能性細胞がES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である[1]から[11]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[13] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞が、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞に対して動物分類学上同種である[1]から[12]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[14] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞が、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞に対して動物分類学上異種である[1]から[12]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[15] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞がマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギおよびサルからなる群から選択される動物由来である[1]から[14]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[16] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞がマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サルおよびヒトからなる群から選択される動物由来である[1]から[15]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[17] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞において、変異または欠損した遺伝子が
(a)生殖細胞形成に関与する遺伝子、
(b)免疫系に関与する遺伝子、ならびに
(c)特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子
からなる群から選択される1以上の遺伝子である[1]から[16]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[18] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が、異種間交雑により得られた生殖細胞を形成し得ない多能性細胞である[1]から[16]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[19] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が、生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない多能性細胞であり、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が生殖系列に伝播される[17]のキメラ動物の作製方法。
[20] 生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない多能性細胞がC−kit変異動物由来の生殖細胞を形成できない多能性細胞である[19]のキメラ動物の作製方法。
[21] C−kit変異動物がW/Wマウスである[20]のキメラ動物の作製方法。
[22] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が遺伝子改変を受けた細胞であり、該遺伝子改変を受けた多能性細胞が生殖系列に伝播される[19]から[21]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[23] 遺伝子改変が外来遺伝子の導入または内在遺伝子のノックアウトである、[22]のキメラ動物の作製方法。
[24] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が、免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞である[17]のキメラ動物の作製方法。
[25] 免疫系に関与する遺伝子が変異又は欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞が、抗体をコードする遺伝子が変異又は欠損し、抗体産生能を喪失した多能性細胞である[24]のキメラ動物の作製方法。
[26] 免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞が免疫不全動物由来の多能性細胞である[24]のキメラ動物の作製方法。
[27] 免疫不全動物がnu/nuマウスまたはscidマウスである[26]のキメラ動物の作製方法。
[28] 免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞がリンパ球欠損動物由来の多能性細胞である[24]のキメラ動物の作製方法。
[29] リンパ球欠損動物がRAG−1遺伝子および/またはRAG−2遺伝子が変異または欠損した動物である[28]のキメラ動物の作製方法。
[30] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子が変異または欠損した多能性細胞である[17]のキメラ動物の作製方法。
[31] 製造されたキメラ動物において、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞の前記変異または欠損した遺伝子に対応する遺伝子により、該遺伝子が関与する特定の組織もしくは器官またはタンパク質が産生される[30]のキメラ動物の作製方法。
[32] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損しており、さらに生殖細胞形成に関与する遺伝子、あるいは特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子が変異または欠損している多能性細胞である[17]のキメラ動物の作製方法。
[33] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が、
(a)特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞と該特定の遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種もしくは異種である細胞との融合細胞、または
(b)該特定の遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種または異種である細胞由来の多能性細胞
である[1]から[32]のいずれかのキメラ動物の作製方法。
[34] 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞に対して動物分類学上同種もしくは異種である細胞が組織幹細胞または分化細胞である[33]のキメラ動物の作製方法。
[35] 生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない多能性細胞ならびに
(a)生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない前記多能性細胞と該生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種または異種である細胞との融合細胞、もしくは
(b)該生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種または異種である細胞由来の多能性細胞様細胞
を動物の宿主胚に注入することを含む、前記同種または異種である細胞が生殖系列に伝播し得る[33]または[34]のキメラ動物の作製方法。
[36] 免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞ならびに
(a)免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する前記多能性細胞と該多能性細胞に対して動物分類学上異種である細胞との融合細胞、もしくは
(b)該多能性細胞に対して異種である細胞由来の多能性細胞様細胞
を動物の宿主胚に注入することを含む、前記免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞および前記異種である細胞がキメラ個体の形成に寄与している[33]または[34]のキメラ動物の作製方法。
[37] [1]から[36]のいずれかの方法で製造されたキメラ動物。
[38] [17]から[23]のいずれかの方法で製造されたキメラ動物より、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞由来の生殖細胞を回収することを含む、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞由来の生殖細胞を製造する方法。
[39] [17]から[23]のいずれかの方法で製造されたキメラ動物を交配し遺伝子が改変された動物を子孫として得る遺伝子改変動物の製造方法。
[40] [39]の方法で製造された遺伝子改変動物。
[41] [17]および[24]から[29]のいずれかの方法で製造されたキメラ動物またはその子孫であって、免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞以外の他の多能性細胞由来の抗体をコードする遺伝子を有するキメラ動物またはその子孫に抗原を投与することを含む抗体の製造方法。
[42] [17]、[30]および[31]のいずれかの製造方法により製造されたキメラ動物またはその子孫に、特定の組織もしくは器官を形成させまたは特定のタンパク質を産生させることを含む、特定の組織もしくは器官または特定のタンパク質を製造する方法。
[43] C−kit変異動物由来である、生殖細胞を形成できない多能性細胞。
[44] C−kit変異動物がW/Wマウスである[43]の多能性細胞。
[45] 免疫不全動物由来である、免疫に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞。
[46] 動物がnu/nuマウスまたはscidマウスである[45]の多能性細胞。
[47] リンパ球欠損動物由来である、免疫に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞。
[48] リンパ球欠損動物が、RAG−1遺伝子および/またはRAG−2遺伝子が変異または欠損した動物である[47]の多能性細胞。
[49] ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である、[43]から[48]のいずれかの多能性細胞。
[50] ミトコンドリアDNAとして適合型ミトコンドリアDNAが導入されている[43]から[49]のいずれかの多能性細胞。
[51] 適合型ミトコンドリアDNAが、野生型マウスMus musculus musculusタイプである、[50]の多能性細胞。
[52] 性染色体型が雄XY型である、[43]から[51]のいずれかの多能性細胞。
[53] 性染色体型が雌XX型である、[43]から[51]のいずれかの多能性細胞。
[54] [43]から[53]のいずれかの多能性細胞と動物の生殖器官由来の細胞を混合培養して、初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞から多能性細胞を樹立する方法。
[55] 動物の初期胚が雄核発生胚または雌核発生胚である[54]の方法。
[56] 混合培養が動物の初期胚中での共培養である[54]または[55]の初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞から多能性細胞を樹立する方法。
[57] 初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞が、胚盤胞の内部細胞塊由来の細胞であり、多能性細胞が、ES細胞である[54]から[56]のいずれかの多能性細胞を樹立する方法。
[58] 初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞が、始原生殖細胞であり、多能性細胞が、EG細胞である[54]から[56]のいずれかの多能性細胞を樹立する方法。
[59] 初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞が、生殖細胞であり、多能性細胞が、GS細胞である[54]から[56]のいずれかの多能性細胞を樹立する方法。
[60] [43]から[53]のいずれかの多能性細胞と他の多能性細胞を共培養することを含む、該他の多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
[61] 共培養が動物の初期胚中で行われる[60]の他の多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
[62] 他の多能性細胞が、ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である[60]または[61]の多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
[63] 他の多能性細胞が遺伝子が改変されている多能性細胞である、[60]から[62]のいずれかの多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
[64] [43]から[53]のいずれかの多能性細胞を他の多能性細胞と共に動物の宿主胚に注入することを含む、生殖細胞が他の多能性細胞に由来する生殖系列キメラ動物の作製方法。
[65] [43]から[53]のいずれかの多能性細胞および/または他の多能性細胞が適合型ミトコンドリアDNAが導入または置換された多能性細胞である、[64]の生殖系列キメラ動物の作製方法。
[66] 動物の宿主胚が適合型ミトコンドリアDNAを導入または置換した宿主胚である、[64]または[65]の生殖系列キメラ動物の作製方法。
[67] 動物の宿主胚が胚盤胞である、[64]から[66]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[68] 動物の宿主胚がテトラプロイドである、[67]の生殖系列キメラ動物の作製方法。
[69] 他の多能性細胞が、ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である[64]から[68]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[70] 動物がマウスである、[64]から[69]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[71] 他の多能性細胞が遺伝子が改変されている多能性細胞である、[64]から[70]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[72] [43]から[53]のいずれかの多能性細胞と他の多能性細胞を共培養し、共培養した細胞を共に動物の宿主胚に注入することを含む、生殖細胞が他の多能性細胞に由来する生殖系列キメラ動物の作製方法。
[73] 共培養が動物の初期胚中で行われる[72]の生殖系列キメラ動物の作製方法。
[74] [43]から[53]のいずれかの多能性細胞および他の多能性細胞が適合型ミトコンドリアDNAが導入された多能性細胞である、[72]または[73]の生殖系列キメラ動物の作製方法。
[75] 動物の宿主胚が適合型ミトコンドリアDNAを導入した宿主胚である、[72]から[74]の生殖系列キメラ動物の作製方法。
[76] 動物の宿主胚が胚盤胞である、[72]から[75]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[77] 動物の宿主胚がテトラプロイドである、[76]の生殖系列キメラ動物の作製方法。
[78] 他の多能性細胞が、ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である[72]から[77]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[79] 動物がマウスである、[72]から[78]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[80] 他の多能性細胞が遺伝子が改変されている多能性細胞である、[72]から[79]のいずれかの生殖系列キメラ動物の作製方法。
[81] [64]から[80]のいずれかの方法により作製されたキメラ動物。
[82] [55]の方法により樹立した雄核発生胚または雌核発生胚由来の多能性細胞を動物の生殖器官に移植することにより生殖細胞を作製する方法。
[83] 雄核発生胚由来のES細胞を、動物の輸精管に移植することにより精子を作製する[82]の方法。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−211887号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、本発明の方法で129.B6−YGFP ES細胞およびW/WES細胞を用いてキメラマウスを作製した場合の、移植数、新生仔数等を示す図である。
図2は、129.B6−YGFP ES細胞およびW/WES細胞を用いて本発明の方法で作製したキメラマウスの写真である。
図3は、129.B6−YGFP ES細胞およびW/WES細胞を用いて本発明の方法で作製したキメラマウスの蛍光を示す写真である。
図4は、BS−neo ES細胞およびW/WES細胞を用いて本発明の方法で作製したキメラマウスの写真である。
図5は、本発明の方法によるキメラ作製の概要を示す図である(実施例7)。
図6は、本発明の方法によるキメラ作製の概要を示す図である(実施例8)。
図7は、本発明の方法の概要を示す図である。
図8は、雄核発生胚由来ES細胞からの精子の形成を示す写真である。
本発明の特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該多能性細胞以外の他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を用いてキメラ動物を作製する方法において、変異または欠損した遺伝子は限定されず、遺伝子の変異または欠損により特定の機能が失われる遺伝子ならばいずれの遺伝子も含まれる。ここで、「特定の遺伝子が変異しまたは欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した」とは、遺伝子の塩基配列の一部または全部において、欠失、置換等が生じ、あるいは遺伝子に塩基の付加等が生じ、遺伝子の機能が失われあるいは低下することをいう。多能性細胞自体が該機能を喪失している場合も、多能性細胞由来のキメラ個体やその子孫個体が該機能を喪失している場合も含む。「遺伝子の機能」とは、該遺伝子が発現し体内で特定の物質が産生され、または器官、組織等が形成されること、該遺伝子が発現し、体内で特定の物質が産生され該物質により体内で特定の反応が生じること等、遺伝子が関与するあらゆる機能を包含する。本発明の「特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞」は、「目的とする細胞・組織・器官、タンパクなどに関わる遺伝子を欠損した多能性細胞」であり、ここで目的とする細胞・組織・器官、タンパクとは、キメラ動物に産生させようと意図する臓器、タンパクをいう。
本発明の多能性細胞とは、あらゆる細胞に分化し得る細胞をいう。多能性細胞には、生殖細胞に分化し得る全能性細胞や動物の組織に分化し得る組織性幹細胞がある。全能性細胞には、胚性幹細胞(ES細胞)、EG細胞(Embryonic germ cell、胚性生殖細胞)、GS細胞等が含まれる。ここで、内部細胞塊由来細胞をES細胞、始原生殖細胞由来細胞をEG細胞、生殖細胞由来細胞をGS細胞という。また、全能性細胞と性質が似ており、多能性を有していて生殖細胞に分化し得る細胞を、全能性細胞様細胞という場合があり、例えばES細胞様細胞(ES様細胞)、EG細胞様細胞(EG様細胞)、GS細胞様細胞(GS様細胞)等があるが、本発明において多能性細胞という場合、これらの多能性細胞様細胞と呼ばれる細胞も含まれる。例えば、ES細胞様細胞は、動物の組織性幹細胞や分化した体細胞を形質転換したり、あるいはES細胞と動物の組織性幹細胞や分化した体細胞を融合することにより得られる。
本発明の方法により得られたキメラ個体は、少なくとも特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来の分化細胞等の細胞および前記他の多能性細胞由来の分化細胞等の細胞から形成される。キメラ動物の作製にこれらの2種類の細胞以外の細胞を用いた場合は、キメラ個体は該2種類の細胞以外の細胞からも構成される。「2種類の細胞以外の細胞」は限定されないが、例えば、動物の組織幹細胞や動物の分化した体細胞等が挙げられる。
該キメラ個体においては、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来細胞以外の細胞、該細胞の有する染色体、該細胞の有する遺伝子が機能している。特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞には、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞に対して動物分類学上異なる動物種由来細胞の多能性細胞も動物分類学上同一の動物種由来の多能性細胞も含まれる。ここで、「特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来細胞以外の細胞、該細胞の有する染色体、該細胞の有する遺伝子が機能している」とは、例えば、多能性細胞由来細胞以外の細胞が特定の物質を産生したり、該細胞が特定の器官や組織を形成したりすることをいい、「該細胞の有する遺伝子が機能している」の「遺伝子」は、「特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞」において変異または欠損した特定の遺伝子と同じ遺伝子であっても、異なる遺伝子であってもよい。好ましくは、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来細胞以外の細胞の有する前記変異または欠損した遺伝子に対応する遺伝子が機能している。ここで、「前記変異または欠損した遺伝子に対応する遺伝子」とは、前記変異または欠損した遺伝子と同一の遺伝子または塩基配列の相同性の高い遺伝子であって、前記変異もしくは欠損した遺伝子が関与する機能と同一もしくは類似の機能を有している遺伝子をいう。
特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞として、例えば、生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞、免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞、特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子などのその他の遺伝子が変異または欠損した多能性細胞等が挙げられる。すなわち、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞において、変異または欠損した遺伝子が(a)生殖細胞形成に関与する遺伝子、(b)免疫系に関与する遺伝子、ならびに(c)特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子である多能性細胞を用いることができる。
この場合、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞は、該遺伝子が変異および欠損していない多能性細胞であり、例えば、生殖細胞形成能を有している多能性細胞、免疫機能に関して障害を有していない多能性細胞、あるいは特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子が変異も欠損もしていない多能性細胞である。
該他の多能性細胞において、所望の遺伝子が改変されていてもよい。この場合、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞として、生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞を用いた場合、得られるキメラ動物において形成される生殖細胞は所望の遺伝子が改変された細胞由来であるので、該キメラ動物から得られる子孫個体は、所望の遺伝子が改変されたトランスジェニック動物である。所望の遺伝子の改変は、多能性細胞が元々有していない外来遺伝子の導入でもよく、また多能性細胞が元々有している内在性遺伝子のノックアウトであってもよい。外来遺伝子としては、例えば動物分類学上の他種動物由来の遺伝子等が挙げられる。所望の遺伝子の改変は公知の方法で行うことができる。
さらに、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞は、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞と他の細胞との融合細胞であってもよく、また動物の組織性幹細胞(臓器特異性幹細胞、体性幹細胞)や分化した体細胞を公知の手段で形質転換した多能性細胞様細胞であってもよい。組織性幹細胞とは、成熟した動物の組織に存在し該組織または他の組織細胞へと分化し、該組織を形成し得る細胞をいう。例えば、脳幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、腎幹細胞、心臓幹細胞、血管幹細胞、造血幹細胞、骨髄幹細胞、神経幹細胞、網膜幹細胞、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞、間葉系幹細胞等がある。これらの幹細胞は、それぞれ特異的な表面抗原を有し、該抗原に特異的な抗体を用いて単離したり、あるいは蛍光標識した前記抗体を用いてセルソーター等を利用して単離することができる。また、幹細胞が色素Hoechst33342を排出することを利用してSP(Side population)細胞として単離することもできる。幹細胞を単離する方法は当業者には周知である。これらの組織幹細胞の単離や分化能については、実験医学,Vol.18,No.4,2000,p.420−460、実験医学,Vol.19,No.3,2001,326−369、実験医学,Vol.19,No.15,2001、実験医学,Vol.21,No.8,2003等に記載されており、これらの文献の記載に従って、幹細胞を単離し、あるいは所望の幹細胞を選択することができる。多能性細胞であるES細胞と分化細胞の融合細胞を宿主胚に注入し発生させた場合に、該融合細胞が個体に寄与し、機能し得ることは確認されている(Tada et al.,Dev Dyn.227,504−510,2003)。
これらの幹細胞や分化した体細胞を他のES細胞等の多能性細胞と共培養したりすることにより、形質転換(分化転換)した多能性細胞を得ることが出来る(Andrew et al.,Nature 430,350−356,2004)(Ying et al.,Nature 416,545−548,2002)(Terada et al.,Nature 430,542−545,2002)。
生殖細胞由来の細胞をES細胞等の多能性細胞と共培養することにより、生殖器官由来の細胞からの多能性細胞を樹立することができる。例えば、雄核発生胚(androgenetic embryo)や雌核発生胚(gynogenetic embryo)を多能性細胞と共培養することで、雄核発生胚由来のES細胞等の多能性細胞や雌核発生胚由来のES細胞等の多能性細胞を樹立することができる。共培養は、培養用ディッシュ等の培養用容器中で行なえばよい。この際、培養容器に適当なフィーダー細胞を播いておいてもよい。雄核発生胚は、受精卵からの雌性前核を除去し、別の受精卵から採取した雄性前核を移植することにより作製することができ、雌核発生胚は、受精卵からの雄性前核を除去し、別の受精卵から採取した雌性前核を移植することにより作製することができる。すなわち、本発明は、雄核発生胚または雌核発生胚をES細胞等の多能性細胞と共培養し、雄核発生胚または雌核発生胚由来のES細胞を樹立する方法をも包含する。
共培養する他の多能性細胞としては、キメラ動物の作製の際に動物の宿主胚に注入する特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞を用いればよい。
細胞の融合は、エレクトロポレーション法、PEG法等の公知の方法で行うことができる。形質転換により2倍体である多能性様細胞が得られ、融合により4倍体である多能性様細胞が得られる。この際、一方の細胞をコルヒチン等のコルセミドで処理することで微小核体としてもよいし、マイトマイシンCや放射線で処理して不均等融合させてもよい。一方のミトコンドリアDNAを公知の方法で除去後、融合に用いることも出来る。
なお、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞として、前記特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞との融合細胞を用いる場合および組織幹細胞や体細胞を特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞と共培養し多能性細胞様細胞に形質転換して用いる場合、調製した融合細胞または多能性様細胞中に特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が含まれている。この場合であっても、キメラ動物作製の際、該多能性細胞を同時に宿主胚に注入すればよい。それ以外に、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞として、特定の遺伝子が関与する機能を持つ(異種細胞、染色体などが導入された融合細胞など)と未受精卵または脱核受精卵を融合・活性化・培養を行った結果得られる胚盤胞期胚由来多能性細胞、例えばES様細胞を宿主胚に注入することも可能であろう。このように、融合細胞または多能性細胞様細胞を調製する際に用いた特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞をそのまま同時に宿主胚に注入する場合も、「特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該多能性細胞以外の他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を動物の宿主胚に注入」するに該当する。
用いる組織幹細胞や体細胞は、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した前記多能性細胞に対して動物分類学上の同種でも異種であってもよい。
前記特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が生殖細胞形成に関与する遺伝子である場合、例えば、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来細胞以外の細胞から生殖細胞が形成され得る。また、前記特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が免疫系に関与する遺伝子である場合、例えば、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来細胞以外の細胞が抗体を産生する等免疫担当細胞として機能する。あるいは、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来細胞以外の細胞は、キメラ個体形成の際に、免疫系が関与する遺伝子が変異または欠損した細胞の免疫機構により攻撃・排除されることがないので、キメラ個体において、特定の遺伝子が変異または欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞由来細胞以外の細胞が特定の物質を産生し、あるいは特定の器官や組織を形成する。
生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損しており生殖細胞を形成できない多能性細胞としては、例えば、C−kit変異動物(W遺伝子変異動物)由来の細胞がある。C−kitは、W遺伝子座にマップされる、レセプター型チロシンキナーゼのひとつであり、不妊等に関与する。C−kit変異動物として、例えばW/Wマウスが挙げられる。W/Wマウスは、雌雄両性で生殖細胞を形成することができない(不稔/不妊)マウスである。C−kit変異動物の一つであるW/Wマウスは、例えば、後述の実施例1に記載の方法により得ることができる。他のC−kit変異動物もW/Wマウスの作製法に従って、作製することができる。また、この場合、該多能性細胞は、生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損しており、生殖細胞形成という機能を欠損している。この多能性細胞と該多能性細胞に対して同種または異種であり、生殖細胞を形成し得る他の多能性細胞を混合して動物の初期胚に注入することにより、生殖細胞を形成し得る多能性細胞が生殖系列に伝播し得るキメラ動物を得ることができる。
生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない多能性細胞に対して同種または異種である細胞がマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サルおよびヒトからなる群から選択される。
該生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損しており生殖細胞を形成できない多能性細胞と一緒に宿主胚に注入する他の多能性細胞として、例えば遺伝子改変を受けた細胞が挙げられ、遺伝子改変として外来遺伝子の導入または内在遺伝子のノックアウトが挙げられる。これらの細胞を動物の宿主胚に注入することにより、前記の遺伝子改変を受けた細胞が生殖系列に伝播し得るキメラ動物を作製することができる。このようにして得られたキメラ動物においては、遺伝子改変を受けた細胞から生殖細胞が形成され、またキメラ動物の子孫を得ることにより遺伝子改変を受けた動物がトランスジェニック動物として産生される。また、一緒に宿主胚に注入する他の多能性細胞は、該生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損しており生殖細胞を形成できない多能性細胞に対して動物分類学上の異種であってもよく、この場合得られたキメラ動物は異種動物の生殖細胞を形成する。該異種動物の生殖細胞は、異種動物の染色体を有するため、得られた動物より異種動物の染色体を有する器官や組織の幹細胞や器官や臓器自体が得られ、また得られた動物が有する異種動物の染色体を有する体細胞より、異種動物のタンパク質等の物質を得ることができる。
免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞として、例えば、ヌードマウス(nu/nuマウス)やscidマウス等の免疫不全動物由来の多能性細胞が挙げられる。ここで、「免疫機能に障害を有する」とは、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞等の免疫担当細胞を形成できないこと、あるいは抗体を産生し得ず、異種由来細胞、異種由来組織、異種由来物質等を排除する機能が喪失または低下していることをいう。
ヌードマウスとは、先天的に胸腺を欠失したマウスであり、第11染色体の劣性遺伝子であるnu遺伝子がホモ型であるマウスである。すなわち、ヌードマウス由来の多能性細胞は、nu遺伝子に関してホモ型である多能性細胞である。scidマウスとは、ヒトの重症複合免疫不全勝(SCID)と同様の病態を呈するマウスをいい、劣性遺伝子であるscid遺伝子がホモ型であるマウスであるscidマウスには、NOD/scidなどがある。すなわち、scidマウス由来の多能性細胞は、scid遺伝子に関してホモ型である多能性細胞である。ヌードマウス、scidマウス等の免疫不全マウス、RAG−1遺伝子および/またはRAG−2遺伝子を欠失したリンパ球欠損マウス(Chen et al.,Proc.Natl.Acad,Sci.USA90,4528−4532,1993)は市販のものを入手するかまたは文献の記載に従って入手することができる。
このような免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞と免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞に対して動物分類学上の異種である他の多能性細胞を動物の宿主胚に注入することにより、前記免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞および前記異種である細胞がキメラ個体の形成に寄与しているキメラ動物を製造することができる。免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞がマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル等の動物由来の多能性細胞を用いることができる。例えば、免疫不全マウス由来の多能性細胞と、ヒトの抗体をコードする遺伝子を含む多能性細胞を用いてキメラマウスを作製した場合、該キメラマウスはヒト抗体遺伝子を含んでいる。該キメラマウスに抗原を投与することによりキメラマウスにヒト抗体を産生させることができる。さらに、免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞として、T細胞およびB細胞等のリンパ球の形成能を喪失した多能性細胞が挙げられ、例えば、遺伝子再構成に関与したRAG−1遺伝子やRAG−2遺伝子を欠失した動物由来の多能性細胞が挙げられる。このような多能性細胞も免疫機能が欠損しており、上記の免疫不全動物由来のES細胞を用いる場合と同様に、他種動物由来のES細胞と混合しキメラ動物を作製することができる。
さらに、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞として、特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子が変異または欠損して、該組織もしくは器官の形成能または該タンパク質の産生能を喪失した多能性細胞が挙げられる。特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子は限定されず、特定の臓器の形成に関与する遺伝子等が挙げられる。特定のタンパク質をコードする遺伝子も限定されず、例えばサイトカインなどの生理活性物質、免疫グロブリン等をコードする遺伝子が挙げられる。このような特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子が変異または欠損して、該組織もしくは器官の形成能または該タンパク質の産生能を喪失した多能性細胞を該遺伝子が変異および欠損していない他の多能性細胞とともに用いてキメラ動物を製造することにより、得られたキメラ動物において、他の多能性細胞由来の組織もしくは器官が形成され、またはタンパク質が産生される。他の多能性細胞が特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞に対して動物分類学上の異種である場合、キメラ動物において異種組織または器官が形成され、または異種タンパク質が産生される。特定の遺伝子が変異または欠損は、公知の遺伝子操作技術により行うことができる。
また、複数の遺伝子が変異または欠損し、複数の機能を喪失した多能性細胞を用いることもできる。すなわち、変異または欠損した遺伝子が(a)生殖細胞形成に関与する遺伝子、(b)免疫系に関与する遺伝子、ならびに(c)特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子である多能性細胞を用いることができる。例えば、W遺伝子とnu遺伝子の両方に関してホモであるマウス、すなわち生殖細胞を形成することができず、なおかつ免疫不全であるマウス由来の多能性細胞を用いることができる。
さらに、複数の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞として、異種間交雑により得られた生殖細胞を形成し得ない多能性細胞を用いることもできる。生殖細胞を形成し得ない多能性細胞は、生殖細胞を形成し得ない初期胚から得ることができ、生殖細胞を形成し得ない初期胚、例えば受精胚は遺伝的要因により起こる生殖細胞の形成不全を利用することで作製する。すなわち、異種交雑種第1代は不稔を示し生殖細胞を欠失することが知られており、この遺伝的要因を利用して作製する。例えば、マウスを用いる場合、実験用マウス(Mus musculus domesticus)とその同胞異種関係にあるマウスを自然交配して異種交雑受精胚を得る。このとき繁殖能力に優れた実験用マウスの雌から卵子を得る方が望ましい。すなわち、実験用マウスの雌とその同胞異種関係にある雄を自然交配して異種交雑受精胚を得ることが望ましい。特に、3週齢から4週齢の若齢期実験用雌マウスをホルモン処理して過剰排卵を誘起した後に交配することで多くの受精胚を得ることができる。更に、過剰排卵を誘起した若齢期の実験用雌マウスから採取した卵子と異種マウスの精子を体外受精して得た異種交雑種胚を効率よく大量に得ることができる。実験用マウスはC57BL/6などが使用できる。
一方、交配相手である異種マウスはMus spretusやMus caroli、Mus pahari等が使用できるが、体外受精に関する情報が比較的集積されているMus spretusが好ましく、異種交雑種胚を安定して得ることができるC57BL/6雌性マウスとMus spretus雄性マウスの組み合わせが好ましい。上記ではマウスについて例示したが、本発明の多能性細胞はマウスに限定されずあらゆる動物の多能性細胞を含む。他の動物においてもマウスと同様に操作することにより、異種間交雑により得られた生殖細胞を形成し得ない多能性細胞を得ることができる。なお、異種間交雑により得られた生殖細胞を形成し得ない多能性細胞はWO 03/071869号国際公開パンフレットの記載に従っても得ることができる。
上記のように2種類以上の細胞を動物の胚盤胞等の初期胚である宿主胚に注入し、該初期胚を仮親の子宮に移植することにより、キメラ動物を形成することができる。また、この際、テトラプロイドレスキュー法により所望の多能性細胞の遺伝子が生殖細胞に伝播されたキメラ動物を作製することもできる。テトラプロイドレスキュー法は、4倍体の受精卵にES細胞等の多能性細胞を注入することにより、4倍体細胞は胎盤へと発生し、ES細胞等の多能性細胞のみが個体へと発生することを利用した多能性細胞が生殖系列に伝播したキメラ動物を作製する方法である(Nagy A et al.,Development 110,815−821(1990))。テトラプロイドレスキュー法でキメラ動物を作製する場合は、出生してきた動物の呼吸障害による死亡を防止するために、4倍体受精卵またはES細胞のミトコンドリアDNAを核DNAと適合させておくのが望ましい。テトラプロイドレスキュー法を行う際のミトコンドリアDNAを核DNAと適合させる方法については後述する。
図7に本発明の方法によるキメラ動物作製法の概要を示す。
このように、特定の遺伝子が変異しまたは欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該機能を有する他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を用いてキメラ動物を作製することには、以下に述べる利用法がある。
(1) 遺伝子改変動物由来の生殖細胞の生産
(2) 遺伝子改変動物の生産
(3) 異種動物由来の幹細胞の生産
(4) 異種動物由来の細胞、組織または器官の生産
(5) 異種動物由来の生殖細胞の生産
(6) 異種動物の生産
(7) 異種動物由来細胞を含むキメラ組織または器官の生産
(8) 異種体細胞による目的物質の生産
さらに、これとは別に再生医療の視点からレシピエント(ここでは免疫不全マウス)に臓器幹細胞や生殖幹細胞を移植した場合、生着はするが増殖しないことや目的の細胞に分化しないことが多々ある。これは異種細胞を取り巻く細胞環境が本来の環境と細胞、分子レベルであまりにも異なるためと考えられる。一方、本発明の方法において生産されるキメラの臓器は、異種細胞、マウス細胞、様々なハイブリッド細胞が混在していると考えられる。この状況は異種幹細胞や目的の染色体や遺伝子を持つハイブリット細胞が増殖、機能するためには有利であると考えられる。また更に、このようなキメラ個体に異種臓器幹細胞を移植する場合にも有利と考えられる。将来的に異種幹細胞の増殖、分化に必要な物質(遺伝子)が明らかになった場合にもマウスES細胞を用いているため遺伝子改変を容易に行なうことが可能である。
また臓器移植に用いる目的で、急性拒絶反応の抗原性に関与する酵素を欠損したノックアウトクローンブタが作成されている。これらのブタから更に免疫不全ブタを作成し、本発明の方法で、ヒト細胞とブタ細胞の融合細胞を作製し、キメラ動物を作成すればよりヒト臓器に近いものが出来る。
本発明は、上記の方法で得られたキメラ動物およびその子孫をも包含する。
さらに、本発明は、特定の遺伝子が変異しまたは欠損し該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞それ自体も包含する。該多能性細胞に含まれる細胞は上記のとおりである。
以下、本発明の多能性細胞の作製法および利用法をW/Wマウス胚由来のES細胞を例に詳細に説明するが、多能性細胞の由来はW/Wマウスに限られず、nu/nuマウスやscidマウス等の免疫不全マウス、リンパ球欠損マウス、他のマウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル等の他の動物も含まれる。また、多能性細胞もES細胞には限定されず、EG細胞やGS細胞も含まれる。
ES細胞は哺乳類の発生過程において胚盤胞の内部細胞塊をin vitroで培養することにより樹立することができる(Evans,M.J.et al.,Nature,292:154−156,1981;Thomson,J.A.,Science,282:1145−1147,1998)。
胚でES細胞からキメラマウスが形成されるためには、樹立したES細胞が高い増殖能を有している必要がある。増殖能はin vitroにおける増殖能および胚中での増殖能の両方を含む。
すなわち、ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊の細胞をin vitroで培養することにより、樹立することができるが、この際に他のES細胞や4倍体胚と共培養することにより、未分化状態、分化能および増殖能が大きいES細胞を樹立することが出来る。また樹立率も向上する。ここで用いるES細胞は目的とするES細胞と識別、分離が可能であればよいが、生殖系列キメラ作製を目的とするES細胞の樹立の場合には生殖細胞を形成しないW/Wマウス胚由来ES細胞が望ましい。例えば、KKマウスの場合W/Wマウス胚由来のES細胞と共培養しない場合の樹立率が0%であるのに対して、共培養した場合は50%に上昇する。共培養は、培養用ディッシュ等の培養用容器中で行なえばよい。この際、培養容器に適当なフィーダー細胞を播いておいてもよい。さらに、共培養は、内部細胞塊(ICM)を構成する初期胚中で行ってもよい。この場合、共培養しようとする複数の細胞をマイクロマニュピレーター等を用いて初期胚中に注入し、培養すればよい。一定期間の共培養後、共培養した細胞を回収し、4倍体は胚(テトラプロイド)等のキメラ動物の作製のための初期胚中に注入すればよい。用いた初期胚は、繰り返し共培養に用いることができる。また、初期胚としてテトラプロイドを用いてもよい。上記の方法は核移植胚や雄性胚などES細胞を樹立する事が困難な再構築胚からもES細胞を効率的に樹立することが出来る。またW/Wマウス胚由来ES細胞や4倍体胚と共培養した再構築胚はそのままキメラ動物の作製に用いることも出来る。
また、後述のように、キメラ動物の作製のための初期胚に共培養しようとする複数のES細胞を注入し、そのままキメラ動物を作製してもよい。
本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞を用いた他のES細胞の樹立は、例えば後述の実施例5記載の方法で行えば良い。
本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞を他のES細胞、例えば、外来遺伝子の導入や特定の遺伝子のノックアウト等の所望の遺伝子改変を行ったES細胞と共培養し、同時に初期胚に入れることにより、所望のES細胞の培養中の増殖能が高められ、なおかつ胚に移植した後の該ES細胞の増殖も良好となり、該ES細胞の遺伝子が生殖系列に伝播されたキメラマウスを得ることができる。また、本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞と共培養した他のES細胞の形態も良好に保たれる。良好なES細胞のコロニーは輪郭が丸くはっきりしており、細胞が盛り上がって増殖している。これに対して悪いES細胞のコロニーは偏平で形が崩れている。
一方、W/Wマウス胚由来のES細胞は、生殖細胞が形成されないため、該ES細胞が生殖系列に伝播されることはない。すなわち、本発明の方法でキメラ動物を得た場合、得られたキメラ動物の精子又は卵子はW/Wマウス胚由来のES細胞ではない他のES細胞に由来し、次世代の産仔には必ず該ES細胞に由来した染色体が伝播する。この際、所望のES細胞はいずれのマウス系統由来のものも用いることができるが、C57BL/6または129系統由来のES細胞が望ましく、特にC57/BL6由来のES細胞が望ましい。また、このとき市販のES細胞を用いてもよい。
また、この際、W/Wマウス胚由来のES細胞と共培養する代わりに、他のES細胞の樹立の際にW/Wマウス胚由来のES細胞のコンディションメディウムを添加した培地を用いても、培養中の増殖能が高められ、なおかつ胚に移植した後の増殖能が高められたES細胞を樹立することができる。コンディションメディウムは、例えばMartin et al.,Dev Biol 121,20−28,1987の記載に従って調製できる。
この時、所望のES細胞と共培養する、W/Wマウス胚由来のES細胞の増殖能が一定の範囲にあることが望ましい。該ES細胞の増殖能が低いと共培養するES細胞の増殖能を改善することができず、一方該ES細胞の増殖能が高すぎると、ES細胞がすべて、W/Wマウス胚由来のES細胞に置き換わってしまう。該ES細胞が未分化状態および分化能を維持して増殖能が高すぎる場合は、マイトマイシンC、放射線やローダミンなどで処理することで増殖能を調節することが出来る。
一般的にES細胞を用いてキメラマウスを作製する場合、ES細胞の継代数が多くなると、増殖能が低下し、生殖系列に伝播しにくくなる。このため、通常継代数が10代以下のESを用いる必要がある。一方、W/Wマウス胚由来のES細胞と共培養して用いる場合は、W/Wマウス胚由来のES細胞に増殖等がサポートされるため、長期継代を行ったES細胞、例えば12代以上、あるいは20代以上継代したES細胞も用いることができる。
本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞を、所望の他のES細胞とともに胚盤胞等の初期胚に注入し、該初期胚を仮親の子宮に移植することにより、効率的にキメラマウスを形成することができる。また、この際、テトラプロイドレスキュー法により所望のES細胞の遺伝子が生殖細胞に伝播されたキメラマウスを作製することもできる。テトラプロイドレスキュー法は、4倍体の受精卵にES細胞を注入することにより、4倍体細胞は胎盤へと発生し、ES細胞のみが個体へと発生することを利用したES細胞が生殖系列に伝播したキメラマウスを作製する方法である(Nagy A et al.,Development 110,815−821(1990))。テトラプロイドレスキュー法でキメラマウスを作製する場合は、出生してきたマウスの呼吸障害による死亡を防止するために、4倍体受精卵または、W/Wマウス胚由来のES細胞と混合するES細胞のミトコンドリアDNAを核DNAと適合させておくのが望ましい。但し、用いる細胞が交雑細胞、例えば2種類の近交系動物の交雑細胞を用いる場合は、出生マウスの呼吸障害という問題は生じないので、必ずしもミトコンドリアDNAを核DNAと適合させる必要はない。例えば、本発明で用いているW/Wマウスは交雑系マウスであるので、W/Wマウス胚由来のES細胞は、必ずしもミトコンドリアDNAを核DNAに適合させる必要はない。ミトコンドリアDNAを核DNAと適合させるためには、4倍体受精卵または、W/Wマウス胚由来のES細胞と混合するES細胞のミトコンドリアDNAを野生型マウスのミトコンドリアDNAと置換させればよく、具体的には以下のようにして行う(WO03/071869号国際公開パンフレット)。
マウス胚由来のミトコンドリアDNA置換ES細胞は、公知の方法により得ることができる。例えば、近交系マウスのミトコンドリアDNAの置換は、バッククロス交配法または核置換法などにより、所望のタイプのミトコンドリアDNAに置換した近交系マウスを作製し、このマウスからES細胞を樹立すればよい。近交系マウスC57BL/6のミトコンドリアDNAをバッククロス交配法により野生型マウスMus musculus musculusと12回以上の交雑を繰り返すことにより、ミトコンドリアのDNAが野生型マウスMus musculus musculusタイプに置換された近交系マウスB6−mtMusが作製できる。このマウスからミトコンドリアDNAを適合型マウスMus musculus musculusタイプのDNAに置換したES細胞を樹立できる。
一方、前核置換法は、常法(MoGrath J&Solter D,J.Exp.Zool,228,355−362(1983))に従い、近交系マウスmdxの前核期受精卵の雌雄前核を野生型マウスMus musculus musculusタイプのミトコンドリアを有する除核した前核期受精卵に移植し、電気パルスによる核融合を行い培養した後にマウス卵管に移植して個体発生させることにより、ミトコンドリアDNAをMus musculus musculusタイプに置換した近交系マウスmdx−mtMusが作製できる。このマウスから同じくミトコンドリアDNAを野生型に置換したES細胞を樹立することができる。
ES細胞の樹立にあたっては、この様にして作製した近交系マウス、例えばB6−mtMus又はmdx−mtMusの胚盤胞を採取し、常法(Evans MJ and Kaufman MK,Nature 292,154−156(1981))によりES細胞を樹立することができる。
また、W/Wマウス胚由来のES細胞についてミトコンドリアDNAを置換する場合は、B6−W/+の雄をB6−mtMusの雌に交配させB6−W/+−mtMusマウスを得る。B6−W/+−mtMusの♀とDBAマウスの雄を交配することでBDF1−W/+−mtMusマウスが得られ、以後BDF1−W/+−mtMUSマウス同士を交配させればよい。上述のように、本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞は、他のES細胞の樹立、遺伝子改変を行った所望のES細胞との共培養によるキメラマウスの作製に十分な増殖能を有したES細胞の調製、および所望のES細胞と同時に胚盤胞に注入することによるキメラマウスの作製に用いることができる。これらの工程におけるW/Wマウス胚由来のES細胞の使用は、各々の工程のみにおける使用であってもよいし、2つ以上の工程における連続的な使用であってもよい。例えば、W/Wマウス胚由来のES細胞を所望の遺伝子改変を行った他のES細胞と共培養して、そのままW/Wマウス胚由来のES細胞と他のES細胞をキメラマウス作製のために、胚盤胞に注入してもよい。
ノックアウトマウス等の作出のためにES細胞の遺伝子を改変した場合、該ES細胞の増殖能は低くなる場合が多く、本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞はこのような遺伝子を改変したES細胞の増殖能等を改善することもできる。特に、複数の遺伝的改変を行ったES細胞に対しても好適に用いることができる。
さらに、本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞により樹立できる細胞、所望の遺伝子改変を行う細胞、同時に胚盤胞に注入する細胞は、ES細胞だけではなく、EG細胞(embryonic germ cell)またはGS細胞を用いてもよい。EG細胞は哺乳類始原生殖細胞をLIF、FGF2等のサイトカインと共に培養することにより得られる(Matusi,Y.,et al.,Cell,70:841−847,1992)。GS細胞は幼年期の雄マウスの精巣から得ることができる(Johnson et al.Nature 428,145−150,2004))
GS細胞の樹立は、例えば以下の方法で行う。
マウスGS様細胞の樹立
1.ディッシュはゼラチンコートしておく。
2.酵素液1は5mlのDMEM/F12にcollagenaseを3mg/ml、DNase Iを200μg/ml含む。
3.酵素液2は5mlのDMEM/F12にcollagenaseを3mg/ml、DNase Iを200μg/ml、hyaluronidaseを3mg/ml含む。
4.出生後10日〜2週間のマウスの精巣を酵素液1の中で刻む。
5.37℃で15分間インキュベートする。
6.2300rpm、20℃で10分間遠心分離する。
7.上清をアスピレーターで吸い取り、そこにチューブII’の酵素溶液を加える。このとき、トリプシンを500μg/mlとなるように加える。
8.37℃で30分間インキュベートする。
9.血清入り培地で反応をとめた後、2300rpm、20℃で10分間遠心分離をする。
10.上清をアスピレーターで吸い取り、そこにDMEM/F12(血清入り)を5ml入れる。
11.80μmのナイロンメッシュで濾過する。
12.ついで40μmのメッシュで濾過する。
13.5〜20%FBS入りDMEM/F12またはES培地で培養する。培地はDMEM/F12は2日に1回交換、ES培地は毎日交換する。
本発明のW/Wマウス由来のES細胞を所望のES細胞とともに胚盤胞に注入し、キメラマウスを作製する場合、出生するマウスの性比をコントロールすることができる。一般的に、ES細胞を樹立する場合、性染色体が雄XYの型の細胞ができることが多く、雌XXの型の細胞はできにくい。一方、本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞は、性染色体が雌XXの型の細胞も容易に得ることができ、W/Wマウス胚由来のES細胞については、雄XY型の細胞も雌XX型の細胞も必要に応じて選択することができる。例えば、所望の雄XY型のES細胞と雄XX型のW/Wマウス胚由来のES細胞を胚盤胞に注入した場合、出生する全てのキメラマウスは、雄である。また、所望の雄XY型のES細胞と雌XX型のW/Wマウス胚由来のES細胞を胚盤胞に注入した場合、所望のES細胞の増殖能の強さに応じて雄または雌のキメラマウスが出生する。
キメラ動物作成法により得られる可能性のあるキメラ動物の性および得られる生殖細胞の種類および由来は以下の通りである。
胚 ES キメラ 生殖細胞
1.雄 雄 雄 精子(胚由来+ES由来)
2.雄 雌 雄 精子(胚由来)
3.雄 雌 雌 卵(ES由来+まれに胚由来)
4.雌 雄 雄 精子(ES由来)
5.雌 雄 雌 卵(胚由来+稀にES由来)
6.雌 雌 雌 卵(胚由来+ES由来)
従来法において、ES細胞は通常雄であるので上記のうち2、3、6は起こり難い。すなわち、従来法において、雌のキメラが生まれた場合、ES細胞由来の卵を得られるのは上記の5の場合のみであるが、稀にしか生じない。従って、ES細胞は生殖伝播しにくい。
本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞を用いる場合、上記5の場合の胚をW/Wマウス胚由来のES細胞にすれば、雌のキメラが生まれた場合の卵は全てES由来である。従って、その仔が生まれれば100%ES細胞が生殖伝播している。
本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞を他のES細胞との共培養および他のES細胞を胚盤胞に注入するときに同時に注入することにより、ほぼ100%の確率でキメラマウスを得ることができる。
また、本発明のW/Wマウス胚由来のES細胞を用いてキメラマウスを作製する場合、所望のES細胞の遺伝子が生殖系列に伝播したキメラマウスが100%できるので、万一出生してきたマウスが死亡した場合でも、該マウスの生殖巣を他のマウスに移植することにより、所望のキメラマウスを作製することができる。
さらに、本発明は、雄核発生胚または雌核発生胚由来のES細胞から生殖細胞を作製する方法を包含する。雄核発生胚または雌核発生胚由来のES細胞は、生殖細胞由来の細胞をES細胞等の多能性細胞と共培養することにより、生殖器官由来の細胞からの多能性細胞を樹立することができる。例えば、雄核発生胚(androgenetic embryo)や雌核発生胚(gynogenetic embryo)を多能性細胞と共培養することで、雄核発生胚由来のES細胞等の多能性細胞や雌核発生胚由来のES細胞等の多能性細胞を樹立することができる。このようにして得られた雄核発生胚または雌核発生胚由来のES細胞は、他の初期胚や生殖細胞由来の細胞と共培養することにより、多能性細胞を樹立することもできる。
雄核発生胚または雌核発生胚由来のES細胞から、生殖細胞を形成することもできる。生殖細胞を形成するには、雄核発生胚または雌核発生胚由来のES細胞を動物の生殖器官に移植すればよい。例えば、雄核発生胚由来のES細胞を精細管に移植することにより雄核発生胚由来のES細胞由来の精子を形成することができる。この際、移植する動物はES細胞の由来動物と同種の動物が望ましい。移植の際、好ましくはES細胞をマイトマイシン等で処理する。また、同様に雌核発生胚由来のES細胞を卵管に移植することにより、雌核発生胚由来のES細胞由来の卵子を得ることができる。最終的に得られた生殖細胞がES細胞由来かどうかは、ゲノムのインプリンティングの状態を確認すればよい。
すなわち、本発明は、雄核発生胚または雌核発生胚由来の多能性細胞を動物の生殖器官に移植することにより生殖細胞を作製する方法を包含する。
以下の実施例をもって本発明を詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
/Wマウス胚由来ES細胞株(W/WES細胞株)の樹立
雌のC57BL−W/+マウス(エスエルシー)を雄のDBA/2J(日本クレア)と自然交配させて、交雑第一世代を得た。毛色よりW遺伝子をヘテロに持つ個体、すなわちBDF1−W/+を選択した。BDF1−W/+マウス同士を自然交配させ、同様に交雑第二世代のヘテロ個体(BDF2−W/+)を得た。BDP2−W/+マウスの雌雄を自然交配させ、膣栓を確認した日から3日目の個体の子宮をM2培地で灌流し、34個の胚盤胞期胚を回収し、得られた胚を常法(Evans MJ and Kaufman MK,Nature292,154−156(1981))に従いES細胞を樹立した。即ち、ES培地(80%(v/v)DMEM,20%(v/v)FCS,1%(v/v)100mM ピルビン酸溶液(Gibco Cat.11360−070)、1%(v/v)非必須アミノ酸溶液(Gibco Cat.11140−027),1mM 2−メルカプトエタノール(Sigma,Cat.No.M−6250),10U/mL LIFを分注した4穴プレートのフィーダー細胞上に先に得られた胚を1個ずつ移して37℃,5%CO−5%O−90%Nの条件下で培養した。培養7日目に増殖したICM細胞塊を選抜した。0.125%トリプシン/0.1mM EDTA処理を行い、細胞を分散した後に新しく準備した4穴プレートのフィーダー細胞上に播種して培養した。2回目の継代ではウェル全体をトリプシン/EDTA処理し、新しい3.5cm培養皿に播種して良好に増殖する17ラインを得た。ここまで到達できた細胞は、その後も安定して増殖することができたため細胞株として凍結保存した。
樹立したES細胞のゲノタイビングはPCR−RFLP法(British Journal of Haematology 98,1017−1025(1997))により行った。W遺伝子を認識するプライマー 5’−AAAGAGAGGCCCTAATGTCGG−3’(配列番号1)および5’−CTCGAGACTACCTCCCACC−3’(配列番号2)にてPCRを行い増幅して得られた104bpの断片をNsi1制限酵素処理し、断片化されない野生型および85bpと19bpに断片化されるWタイプを検定した。その結果、5ラインがW/Wタイプであった。これらのラインについて性判別PCR(Kay et al.Cell 77,639−650,1994)を行ったところ、2ラインが雄株、3ラインが雌株であった。
129.B6−YGFP ES細胞の樹立
雌の129/svマウス(NIH)を雄のC57BL/6−EGFP#60(Y−link)(Ichida et al.,J Biol Chem 26,275,15992−6001(2000))と自然交配させて、膣栓を確認した日から3日目の個体の子宮をM2培地で灌流し、10個の胚盤胞期胚を回収し、得られた胚を常法(Evans MJ and Kaufman MK,Nature 292,154−156(1981))に従いES細胞を樹立した。即ち、ES培地(80%(v/v)DMEM,20%(v/v)FCS,1%(v/v)100mMピルビン酸溶液(Gibco Cat.11360−070),1%(v/v)非必須アミノ酸溶液(Gibco Cat.11140−027),1mM 2−メルカプトエタノール(Sigma,Cat.No.M−6250),10U/mL LIFを分注した4穴プレートのフィーダー細胞上に先に得られた胚を1個ずつ移して37℃,5%CO−5%O−90%Nの条件下で培養した。培養7日目に増殖したICM細胞塊を選抜した。0.125%トリプシン/0.1mM EDTA処理を行い、細胞を分散した後に新しく準備し4穴プレートのフィーダー細胞上に播種して培養した。2回目の継代ではウェル全体をトリプシン/EDTA処理し、新しい3.5cm培養皿に播種して良好に増殖する5ラインを得た。ここまで到達できた細胞は、その後も安定して増殖することができたため細胞株として凍結保存した。
これらのラインについて性判別PCR(Kay et al.Cell 77,639−650,1994)を行ったところ、1ラインが雄株、4ラインが雌株であった。
BS−neo ES細胞の樹立
C57BL/6JマウスのミトコンドリアDNAをMus musculus musculusタイプに置換したマウスB6−mtMusの雌(N15)(Nagao et al.,Genes Genet Syst 73,21−27(1998))を雄のC57BL/6Jマウスと自然交配させた。膣栓を確認した日から3日目の個体の子宮をM2培地で灌流し、20個の胚盤胞期胚を回収し、得られた胚を常法(Evans MJ and Koufman MK,Nature292,154−156(1981))に従いES細胞を樹立した。即ち、ES培地(80%(v/v)DMEM,20%(v/v)FCS,1%(v/v)100mMピルビン酸溶液(Gibco Cat.11360−070),1%(v/v)非必須アミノ酸溶液(Gibco Cat.11140−027),1mM 2−メルカプトエタノール(Sigma,Cat.No.M−6250),10U/mL LIFを分注した4穴プレートのフィーダー細胞上に先に得られた胚を1個ずつ移して37℃,5%CO−5%O−90%Nの条件下で培養した。培養5日目に増殖したICM細胞塊を選抜した。0.125%トリプシン/0.1mM EDTA処理を行い、細胞を分散した後に新しく準備した4穴プレートのフィーダー細胞上に播種して培養した。2回目の継代ではウェル全体をトリプシン/EDTA処理し、新しい3.5cm培養皿に播種して良好に増殖する2ラインを得た。ここまで到達できた細胞は、その後も安定して増殖することができたため細胞株として凍結保存した。
これらのラインについて性判別PCR(Kay et al.Cell 77,639−650,1994)を行ったところ、1ラインが雄株、1ラインが雌株であった。
樹立したB6−mtMus ES細胞株の雄のラインに常法により、neo遺伝子ベクターを遺伝子導入し、遺伝子ターゲッティングを行った。
4倍体胚盤胞期胚の調製
過剰排卵誘起処理を施したICRマウスを同系統の雄マウスと自然交配させ、膣栓を確認した個体から絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)投与後44〜46時間に卵管灌流法で後期2細胞期胚を採取した。得られた後期2細胞期胚を0.3Mマンニトール中で直流電気パルスにより融合処理(FUJITA製ゴクウ:パルス条件は18V,50μsec,999μse間隔で3回)を施し4倍体胚を調製した。4倍体を選別し、M16培地にて37℃、5%CO−Air中で2日間培養して、4倍体胚盤胞期胚を取得した。
/WES細胞との共培養
BS−neo ES細胞については遺伝子導入後の薬剤選抜等により細胞がダメージを受けていたため、W/WES細胞との共培養を行った。すなわち1×10個BS−neo ES細胞と1×10個のW/WES細胞を混合し、フィーダー細胞を敷いた6cmディッシュに播種した。通常のES細胞の維持と同様の方法により、3日目に継代を行った。さらに3日培養後、クローニングを行うために良好な形態をしたコロニー20個を0.125%トリプシン/0.1mM EDTA処理し、細胞を分散した後、新しく準備した4穴プレートのフィーダー細胞上にそれぞれ別々に移して培養した。培養3日目に増殖したコロニーそれぞれ3〜5個を用いて前述のPCR−RPLP法(British Journal of Haematology 98,1017−1025(1997))によりゲノタイピングを行った。20ラインのうち7ラインがBS−neo ES細胞株であった。この中で最もコロニーの形態および増殖が良好なラインを凍結保存しておき、キメラ作製に用いることにした。
テトラプロイドレスキュー法によるキメラマウスの作製(1)
実施例4で得られた4倍体胚盤胞期胚に対して、先述の129.B6−YGFP ES細胞(雄)およびBDF3 W/WES細胞(雌)をそれぞれ約10個ずつピエゾマイクロマニピュレーターで注入した。注入を行った39個の4倍体胚盤胞期胚(テトラプロイド)を、膣栓を確認後2.5日目のレシピエントICRマウス2匹の子宮に移植し、出産前夜(妊娠18.5日目の夜)に帝王切開により7匹の雄と1匹の雌、合計8匹のキメラマウス胎仔を取り出した。図1に、キメラマウス作製の概要を示す。図1中、左上の細胞は、生殖細胞欠損(Wv)、免疫不全(nude,scid)、リンパ球欠損(RAG−1,RAG−2)等の目的とする細胞・組織・器官、タンパクなどに関わる遺伝子を変異または欠損したES細胞であり、右上の細胞はヒトなどの神経幹細胞、造血幹細胞、その他の分化細胞および生殖細胞欠損(Wv)、免疫不全(nude,scid)、リンパ球欠損(RAG−1,RAG−2)等の目的とする細胞・組織・器官、タンパクなどに関わる遺伝子を変異または欠損したES細胞である。得られたキメラ個体から最終的に目的とする細胞・組織・器官、タンパク等を取り出すことができる。また、図2にキメラマウスの写真を示す。蛍光顕微鏡(GFP)にて観察した結果、得られたキメラ胎仔全てに目的のES細胞(129,B6−YGFP)が寄与していることを確認した。図2aおよに図2bに示すように、W/WES細胞のレスキューなしに129.B6−Ylink−GFP ES+テトラプロイド胚でキメラマウスを作製した場合、胎仔形成は見られず、胎盤や着床痕のみであった。図2Cは、129.B6−Ylink−GFP ES+W/WES #7+テトラプロイド胚を移植した妊娠18.5日目のレシピエントマウスを示す図である。図2dは、帝王切開直後の129.B6−Ylink−GFP ES+W/WES #7+テトラプロイドキメラマウスを示す図である。さらに、図2eに示すように、生まれた個体のうち2匹はがん球の欠失や腹水など異常な形態を示したが(図2eの矢印)、他の産仔に以上は見られなかった。図3にキメラマウス(129.B6−Ylink−GFP ES+W/WES+テトラプロイドキメラマウス、生後8日目)の蛍光顕微鏡による観察の結果を示す。蘇生処置を行い活発に動くことを確認した後、里親につけて保育した。
テトラプロイドレスキュー法によるキメラマウスの作製(2)
実施例4で得られた4倍体胚盤胞期胚に対して、先述のBS−neo ES細胞(雄)およびBDF3 W/WES細胞(雄)をそれぞれ約10個ずつピエゾマイクロマニピュレーターで注入した。注入を行った29個の4倍体胚盤胞期胚を、膣栓を確認後2.5日目のレシピエントICRマウス2匹の子宮に移植し、出産前夜(妊娠18.5日目の夜)に帝王切開あるいは自然分娩により3匹の雄胎仔を取り出した。蘇生処置を行い活発に動くことを確認した後、里親につけて保育した。毛色により、得られたキメラ胎仔の1匹に目的のES細胞(BS−neo ES細胞)が寄与していることを確認した。図4に得られたキメラマウス(BS−neo ES(黒色)+W/WES(白色)+テトラプロイドキメラマウス、生後8日目)の写真を示す。図4中、毛色が黒い個体にはBS−neo ES細胞が寄与しており、白い個体はW/WES細胞のみから個体が形成されている。
図5に一連のキメラマウス作製の結果を示す。
テトラプロイドレスキュー法によるキメラマウスの作製(3)
実施例4で得られた4倍体胚盤胞期胚に対して、実施例1および2と同様の手技で樹立した雌のB6−GFP ES細胞(Ichida et al.,2000)もしくは常法(Barton et al.,1987)により作製したB6−GFP単為発生胚由来ES細胞(B6−GFP PGES)をBDF3 W/WES細胞(雌)とともにそれぞれ約10個ずつピエゾマイクロマニピュレーターで注入した。注入を行ったB6−GFP ES細胞キメラ胚24個およびB6−GFP PGESキメラ胚26個を膣栓を確認後2.5日目のレシピエントICRマウス2匹の子宮に移植し、自然分娩によりB6−GFP ES細胞キメラ胚由来個体1匹とB6−GFP PGESキメラ胚由来個体2匹を得た。蛍光顕微鏡(GFP)にて観察した結果、B6−GFP ES細胞キメラ胚由来個体1匹とB6−GFP PGESキメラ胚由来個体1匹に目的のGFP−ES細胞が寄与していることを確認した。図6にこのキメラマウス作製の詳細を示す。
4倍体胚との共培養
核移植胚や雄性胚からのES細胞(ES様細胞を含む)樹立率はあまり高くない。また樹立できたES細胞コロニーも良好な形態を維持しない場合が多い。これらの問題を解決するため、4倍体胚との共培養を行なった。
はじめに核移植胚と4倍体胚との共培養によるES細胞の樹立について述べる。操作は通常の電気融合法で行なった。B6−mtMUSの雌マウスとDBA雄マウスとの交配により得られたF1雌マウス(8週令)を過排卵処理して得た未受精卵を除核後、B10mdx雄マウスの尾部由来繊維芽細胞と融合した。ストロンチュウムによる活性化の後、M16で8細胞期まで培養した。8細胞期の割球を2個コンパクッション前の4倍体4細胞期胚(実施例4)にマイクロマニュピレーターを用いて導入した。8細胞期核移植胚4個から16個のキメラ胚を作製してM16で培養した。すべての胚は胚盤胞期まで発育し、内部細胞塊(ICM)の発達が見られた。そのうち無作為に6個選びES細胞の樹立に用いた。6個の胚から最終的に3ラインのES細胞株が樹立できた。
これとは別に樹立した雄性胚由来ES細胞はコロニーの扁平で増殖能も低いものであった。雄性胚の作製はF1雌を過排卵処理して129雄マウスと交配させ得られた前核期胚の雌性前核と、F1雌を過排卵処理してB6雄マウスと交配させ得られた前核期胚の雄性前核を置換して作製したものである。実施例4で得られた4倍体胚盤胞期胚に対して、この雄性胚由来ES細胞を約10個ずつピエゾマイクロマニピュレーターで注入した。約1日培養後、実施例1の樹立法を用いて培養した。通常ICM塊が増殖するのは5日前後であるが、ES細胞由来のICM塊は増殖するのは3日前後である。この操作を数回繰り返して出来たES細胞コロニーは良好な形態をして増殖能の高いものであった。
4倍体胚およびW/WES細胞との共培養
KKマウスの受精胚を8細胞期で子宮より回収した。8細胞期の割球を2個コンパクッション前の4倍体4細胞期胚(実施例4)にマイクロマニュピレーターを用いて導入した。8細胞期核移植胚5個から19個のキメラ胚を作製してM16で培養した。すべての胚は胚盤胞期まで発育し、内部細胞塊(ICM)の発達が見られたがES細胞の樹立はできなかった。次に同様の方法で12個のキメラ胚を作製し培養1.5日後、胚盤胞期胚になったキメラ胚にマイトマイシン処理したW/WES細胞約5個をピエゾマイクロマニュピレーターで導入した。実施例1と同様にES細胞を樹立したところ、6ラインのES細胞が樹立できた。
雄核発生胚由来ES細胞の精細管への移植
雄核発生胚由来ES細胞を精細管に移植して動向を探ることを目的とし、以下の実験を行った。材料としてはB6・BALB F2 nu/nuW/Wと雄核発生胚由来ES細胞(ライン名1−1、マーカーとしてGFPとneoを保有、継代数8および再樹立)を用いた。方法は以下に述べるとおりである。まず、C57BL/6JW/+の雌とBALB/cAnu/+の雄を交配させて、W/+かつnu/+であるF1マウスを生産した(B6・BALBF1、W/+、nu/+)。このマウスを交配させることにより、W/Wかつnu/nuであるF2マウスを生産した(B6・BALBF2、W/W、nu/nu)。このマウスが8週齢になったときに精細管に再樹立した雄核発生胚由来ES細胞を移植した。再樹立は4倍体胚の胚盤期胚内に雄核発生胚由来ES細胞を約10個注入し、ES細胞を樹立するときと同様の方法で行なった。
以下に詳しく述べる。まず、細胞の調製である。あらかじめマイトマイシン処理しておいたMEF上で2日間培養し、コンフルエントな状態になった雄核発生胚由来ES 1−1P8を用いた。この細胞をPBS(−)で洗浄後、トリプシン/EDTA(0.25%/0.04%)溶液を用いて細胞培養用ディッシュからはがし、10%FBS添加DMEM培地を等量加えることで反応を停止させた。ピペッティングにより細胞を解離した後、40μm四方の格子のナイロンメッシュでろ過した。この細胞懸濁液を遠心分離機によりペレット状にした。十分量のES培地によりこのペレットを再懸濁し、血球計算版により細胞数を測定した。再び遠心分離機によりこれをペレット状にし、注入用培地(ES培地85μl+20mg/ml DNase 5μl+トリパンブルー10μl)に懸濁し、4.3×10cells/mlの細胞懸濁液を100μl用意した。
次に移植について述べる。B6・BALBF2、W/W、nu/nuマウスに麻酔液(ネンブタール:100%エタノール:PBS=1:1:11)を0.3ml注射し、麻酔をかけた。下腹部を70%エタノールで消毒し、正中部を切開した。精巣の周囲の脂肪をピンセットでつまんで精巣を引き出し、実体顕微鏡下で輸精管を露出させた。ゴム球を用いて、先端を引き伸ばしておいたガラス管に細胞懸濁液を充填した。移植用のマウスピースにガラス管をセットした。輸精管を保持しながら、そこにガラス管を突き刺し、精巣網内に針を進入させ、呼気により細胞懸濁液を精細管内に注入した。十分に充填されたことを確認してガラス管を引き抜いた。精巣を腹腔内に戻し、反対側の精巣についても同様に移植を行った。縫合糸にて腹膜と筋層を縫い合わせ、皮膚を金属製のクリップでとめた。
この操作により、今回は左の精巣には大量に細胞懸濁液を注入することができ、右の精巣にも十分量細胞懸濁液を注入することができた。
B6・BALBF2、W/W、nu/nuの精巣はW/Wマウス特有の極少の精巣であった。精巣は、移植翌日には元の位置に戻り、一ヵ月後には正常なマウスとほぼ同じ大きさにまで成長した。また、図8に示すように形成途中の精子が見られた。よって、雄核発生胚由来ES細胞は精子幹細胞の性質を持っているといえる。
雄核発生胚由来ES細胞のメチル化パターンの解析
実験に使用した雄核発生胚由来ES細胞(Androgenetic ES:AgES)および比較対照区としてノーマルのB6由来ES細胞3ラインを用いてゲノムのインプリンティングの状態を確認した。インプリンティングの状態はインプリント遺伝子上流にあるDMRs(Differentially Methylated Regions)のCpGサイトのメチル化状態を測ることにより調べることができる。まず、それぞれのサンプルよりDNAを抽出し、CpGenome DNA Modification kit(Intergen)を用いてバイサルファイト処理を打った。次にcombined bisulfite restriction analysis(COBRA)を行うために、母方特異的にメチル化されるインプリント遺伝子Peg1/Mest、SnrpnおよびIgf2r特異的プライマーを用いて、PCRによりサンプルのDNAを増幅した。使用したプライマーは以下の通りである。
Peg1/Mest(Promoter & exon 1,Genbank acc.no.AF017994),
5’−GGTTGGGTTTGGATATTGTAAAGT−3’(配列番号3)
および5’−TTCCCTATAAATATCTTCCCATATTC−3’(配列番号4)
Snrpn(DMR1,Genbank acc.no.AF081460),
5’−TTTGGTAGTTGTTTTTTGGTAGGATAT−3’(配列番号5)
および5’−ACTAAAATCCACAAACCCAACTAAC−3’(配列番号6)
Igf2r(DMR2,Genbank acc.no.L06446),
5’−GAAGTTGTGATTTTGGTTATGTTAAG−3’(配列番号7)
および5’−ACAATTTACACCCTCAAAATACCTC−3’(配列番号8)
Peg1/MestおよびIgf2rの増幅産物についてはTaq Iにて65℃で4時間、SnrpnについてはHha Iにて37℃で4時間制限酵素処理を行った。以上のサンプルを2.5%アガロースで泳動し、エチジウムブロマイド染色によりDNA断片長を確認した。
COBRAでは、もしDNAがメチル化されていれば、Peg1/Mestでは137bpの増幅産物が90bpと47bpに、Snrpnでは248bpが135bpと113bpに、Igf2rでは193bpが141bpといくつかの断片に切れると考えられる。比較対照区のノーマルのES細胞ではおよそ50%のDNAがメチル化されており、正常な受精卵や体細胞と同じパターンを示した。一方、雄核発生胚由来ES細胞ではいずれのインプリント遺伝子もメチル化されておらず、精子と同じメチル化パターンを示した。
本発明のC−kit変異動物(W遺伝子変異動物)由来である、生殖細胞を形成できない多能性細胞は、従来樹立し得なかった多能性細胞であり、該多能性細胞を動物の胚盤胞細胞等の生殖器官由来の細胞と培養することにより増殖能の高ES細胞等の多能性細胞を樹立することができる。また、樹立された多能性細胞と本発明の生殖細胞を形成できない多能性細胞を共培養することにより、樹立された全能生細胞の増殖能を高く保つことができ、継代を繰り返した多能性細胞のキメラ動物の作製等への利用を可能にする。さらに、本発明の生殖細胞を形成できない多能性細胞をES細胞等の他の多能性細胞と共に動物の初期胚に注入し発生させることにより、該他の多能性細胞が生殖系列へ伝播されたキメラ動物を効率的に作製することができ、また出生するキメラ動物の性比をコントロールすることも可能である。
さらに、本発明の特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を動物の宿主胚に注入することを含む、キメラ動物の作製方法において、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を適切に選択することにより、キメラ動物に異種動物のタンパク質を産生させたり、あるいはキメラ動物に異種動物の臓器特異的幹細胞や臓器を産生させることが可能になる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
配列番号1〜8 プライマー

Claims (83)

  1. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該多能性細胞以外の他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を動物の宿主胚に注入することを含む、キメラ動物の作製方法。
  2. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および該多能性細胞以外の他の多能性細胞を含む2種類以上の細胞を共培養した後に動物の宿主胚に同時に注入することを含む、キメラ動物の作製方法。
  3. 共培養が動物の初期胚中で行われる請求項2記載のキメラ動物の作製方法。
  4. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞由来の遺伝子が機能するキメラ動物である、請求項1から3のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  5. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞由来の前記変異または欠損した遺伝子に対応する遺伝子が機能するキメラ動物である、請求項1から3のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  6. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が遺伝子改変を受けた細胞である請求項1から5のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  7. 遺伝子改変が外来遺伝子の導入または内在遺伝子のノックアウトである、請求項6記載のキメラ動物の作製方法。
  8. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞および/または他の多能性細胞が適合型ミトコンドリアDNAが導入または置換された多能性細胞である、請求項1から7のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  9. 動物の宿主胚が適合型ミトコンドリアDNAを導入した宿主胚である、請求項1から8のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  10. 動物の宿主胚が胚盤胞である、請求項1から9のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  11. 動物の宿主胚がテトラプロイドである、請求項10記載のキメラ動物の作製方法。
  12. 多能性細胞がES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である請求項1から11のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  13. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞が、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞に対して動物分類学上同種である請求項1から12のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  14. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞が、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞に対して動物分類学上異種である請求項1から12のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  15. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞がマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギおよびサルからなる群から選択される動物由来である請求項1から14のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  16. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の細胞がマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サルおよびヒトからなる群から選択される動物由来である請求項1から15のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  17. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞において、変異または欠損した遺伝子が
    (a)生殖細胞形成に関与する遺伝子、
    (b)免疫系に関与する遺伝子、ならびに
    (c)特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子
    からなる群から選択される1以上の遺伝子である請求項1から16のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  18. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が、異種間交雑により得られた生殖細胞を形成し得ない多能性細胞である請求項1から16のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  19. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が、生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない多能性細胞であり、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が生殖系列に伝播される請求項17記載のキメラ動物の作製法。
  20. 生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない多能性細胞がC−kit変異動物由来の生殖細胞を形成できない多能性細胞である請求項19記載のキメラ動物の作製方法。
  21. C−kit変異動物がW/Wマウスである請求項20記載のキメラ動物の作製方法。
  22. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が遺伝子改変を受けた細胞であり、該遺伝子改変を受けた多能性細胞が生殖系列に伝播される請求項19から21のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  23. 遺伝子改変が外来遺伝子の導入または内在遺伝子のノックアウトである、請求項22記載のキメラ動物の作製方法。
  24. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が、免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞である請求項17記載のキメラ動物の作製方法。
  25. 免疫系に関与する遺伝子が変異又は欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞が、抗体をコードする遺伝子が変異又は欠損し、抗体産生能を喪失した多能性細胞である請求項24記載のキメラ動物の作製方法。
  26. 免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞が免疫不全動物由来の多能性細胞である請求項24に記載のキメラ動物の作製方法。
  27. 免疫不全動物がnu/nuマウスまたはscidマウスである請求項26記載のキメラ動物の作製方法。
  28. 免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞がリンパ球欠損動物由来の多能性細胞である請求項24記載のキメラ動物の作製方法。
  29. リンパ球欠損動物がRAG−1遺伝子および/またはRAG−2遺伝子が変異または欠損した動物である請求項28記載のキメラ動物の作製方法。
  30. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子が変異または欠損した多能性細胞である請求項17記載のキメラ動物の作製方法。
  31. 製造されたキメラ動物において、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞の前記変異または欠損した遺伝子に対応する遺伝子により、該遺伝子が関与する特定の組織もしくは器官またはタンパク質が産生される請求項30記載のキメラ動物の作製方法。
  32. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞が免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損しており、さらに生殖細胞形成に関与する遺伝子、あるいは特定の組織もしくは器官の形成に関与する遺伝子または特定のタンパク質をコードする遺伝子が変異または欠損している多能性細胞である請求項17記載のキメラ動物の作製方法。
  33. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞が、
    (a)特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞と該特定の遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種もしくは異種である細胞との融合細胞、または
    (b)該特定の遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種または異種である細胞由来の多能性細胞
    である請求項1から32のいずれか1項に記載のキメラ動物の作製方法。
  34. 特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞に対して動物分類学上同種もしくは異種である細胞が組織幹細胞または分化細胞である請求項33記載のキメラ動物の作製方法。
  35. 生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない多能性細胞ならびに
    (a)生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損し、生殖細胞を形成し得ない前記多能性細胞と該生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種または異種である細胞との融合細胞、もしくは
    (b)該生殖細胞形成に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞に対して動物分類学上同種または異種である細胞由来の多能性細胞様細胞
    を動物の宿主胚に注入することを含む、前記同種または異種である細胞が生殖系列に伝播し得る請求項33または34に記載のキメラ動物の作製方法。
  36. 免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞ならびに
    (a)免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する前記多能性細胞と該多能性細胞に対して動物分類学上異種である細胞との融合細胞、もしくは
    (b)該多能性細胞に対して異種である細胞由来の多能性細胞様細胞
    を動物の宿主胚に注入することを含む、前記免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞および前記異種である細胞がキメラ個体の形成に寄与している請求項33または34に記載のキメラ動物の作製方法。
  37. 請求項1から36のいずれか1項に記載の方法で製造されたキメラ動物。
  38. 請求項17から23のいずれか1項に記載の方法で製造されたキメラ動物より、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞由来の生殖細胞を回収することを含む、特定の遺伝子が変異または欠損し、該遺伝子が関与する機能を喪失した多能性細胞以外の他の多能性細胞由来の生殖細胞を製造する方法。
  39. 請求項17から23のいずれか1項に記載の方法で製造されたキメラ動物を交配し遺伝子が改変された動物を子孫として得る遺伝子改変動物の製造方法。
  40. 請求項39記載の方法で製造された遺伝子改変動物。
  41. 請求項17および24から29のいずれか1項に記載の方法で製造されたキメラ動物またはその子孫であって、免疫系に関与する遺伝子が変異または欠損し、免疫機能に障害を有する多能性細胞以外の他の多能性細胞由来の抗体をコードする遺伝子を有するキメラ動物またはその子孫に抗原を投与することを含む抗体の製造方法。
  42. 請求項17、30および31のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたキメラ動物またはその子孫に、特定の組織もしくは器官を形成させまたは特定のタンパク質を産生させることを含む、特定の組織もしくは器官または特定のタンパク質を製造する方法。
  43. C−kit変異動物由来である、生殖細胞を形成できない多能性細胞。
  44. C−kit変異動物がW/Wマウスである請求項43記載の多能性細胞。
  45. 免疫不全動物由来である、免疫に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞。
  46. 動物がnu/nuマウスまたはscidマウスである請求項45記載の多能性細胞。
  47. リンパ球欠損動物由来である、免疫に関与する遺伝子が変異または欠損した多能性細胞。
  48. リンパ球欠損動物が、RAG−1遺伝子および/またはRAG−2遺伝子が変異または欠損した動物である請求項47記載の多能性細胞。
  49. ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である、請求項43から48のいずれか1項に記載の多能性細胞。
  50. ミトコンドリアDNAとして適合型ミトコンドリアDNAが導入されている請求項43から49のいずれか1項に記載の多能性細胞。
  51. 適合型ミトコンドリアDNAが、野生型マウスMus musculus musculusタイプである、請求項50記載の多能性細胞。
  52. 性染色体型が雄XY型である、請求項43から51のいずれか1項に記載の多能性細胞。
  53. 性染色体型が雌XX型である、請求項43から51のいずれか1項に記載の多能性細胞。
  54. 請求項43から53のいずれか1項に記載の多能性細胞と動物の初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞を混合培養して、生殖器官由来の細胞から多能性細胞を樹立する方法。
  55. 動物の初期胚が雄核発生胚または雌核発生胚である請求項54記載の方法。
  56. 混合培養が動物の初期胚中での共培養である請求項54または55に記載の初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞から多能性細胞を樹立する方法。
  57. 初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞が、胚盤胞の内部細胞塊由来の細胞であり、多能性細胞が、ES細胞である請求項54から56のいずれか1項に記載の多能性細胞を樹立する方法。
  58. 初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞が、始原生殖細胞であり、多能性細胞が、EG細胞である請求項54から56のいずれか1項に記載の多能性細胞を樹立する方法。
  59. 初期胚もしくは生殖細胞由来の細胞が、生殖細胞であり、多能性細胞が、GS細胞である請求項54から56のいずれか1項に記載の多能性細胞を樹立する方法。
  60. 請求項43から53のいずれか1項に記載の多能性細胞と他の多能性細胞を共培養することを含む、該他の多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
  61. 共培養が動物の初期胚中で行われる請求項60記載の他の多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
  62. 他の多能性細胞が、ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である請求項60または61に記載の多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
  63. 他の多能性細胞が遺伝子が改変されている多能性細胞である、請求項60から62のいずれか1項に記載の多能性細胞の増殖能を向上させる方法。
  64. 請求項43から53のいずれか1項に記載の多能性細胞を他の多能性細胞と共に動物の宿主胚に注入することを含む、生殖細胞が他の多能性細胞に由来する生殖系列キメラ動物の作製方法。
  65. 請求項43から53のいずれか1項に記載の多能性細胞および/または他の多能性細胞が適合型ミトコンドリアDNAが導入または置換された多能性細胞である、請求項63記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  66. 動物の宿主胚が適合型ミトコンドリアDNAを導入または置換した宿主胚である、請求項64または65に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  67. 動物の宿主胚が胚盤胞である、請求項64から66のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  68. 動物の宿主胚がテトラプロイドである、請求項67記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  69. 他の多能性細胞が、ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である請求項64から68のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  70. 動物がマウスである、請求項64から69のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  71. 他の多能性細胞が遺伝子が改変されている多能性細胞である、請求項64から70のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  72. 請求項43から53のいずれか1項に記載の多能性細胞と他の多能性細胞を共培養し、共培養した細胞を共に動物の宿主胚に注入することを含む、生殖細胞が他の多能性細胞に由来する生殖系列キメラ動物の作製方法。
  73. 共培養が動物の初期胚中で行われる請求項72記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  74. 請求項43から53のいずれか1項に記載の多能性細胞および他の多能性細胞が適合型ミトコンドリアDNAが導入された多能性細胞である、請求項71または72に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  75. 動物の宿主胚が適合型ミトコンドリアDNAを導入した宿主胚である、請求項72から74のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  76. 動物の宿主胚が胚盤胞である、請求項72から75のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  77. 動物の宿主胚がテトラプロイドである、請求項76記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  78. 他の多能性細胞が、ES細胞、EG細胞およびGS細胞からなる群から選択される細胞である請求項72から77のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  79. 動物がマウスである、請求項72から78のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  80. 他の多能性細胞が遺伝子が改変されている多能性細胞である、請求項72から79のいずれか1項に記載の生殖系列キメラ動物の作製方法。
  81. 請求項64から80のいずれか1項に記載の方法により作製されたキメラ動物。
  82. 請求項55記載の方法により樹立した雄核発生胚または雌核発生胚由来の多能性細胞を動物の生殖器官に移植することにより生殖細胞を作製する方法。
  83. 雄核発生胚由来のES細胞を、動物の輸精管に移植することにより精子を作製する請求項82記載の方法。
JP2006527813A 2004-07-20 2005-07-20 Es細胞を用いたキメラ作製 Withdrawn JPWO2006009297A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004211887 2004-07-20
JP2004211887 2004-07-20
PCT/JP2005/013685 WO2006009297A1 (ja) 2004-07-20 2005-07-20 Es細胞を用いたキメラ作製

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2006009297A1 true JPWO2006009297A1 (ja) 2008-05-01

Family

ID=35785395

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006527813A Withdrawn JPWO2006009297A1 (ja) 2004-07-20 2005-07-20 Es細胞を用いたキメラ作製

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20070250943A1 (ja)
EP (1) EP1779724A4 (ja)
JP (1) JPWO2006009297A1 (ja)
WO (1) WO2006009297A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9167805B2 (en) 2010-08-31 2015-10-27 National University Corporation Kumamoto University Method of establishing mouse strain
EP2954777A4 (en) * 2013-01-29 2016-11-09 Univ Tokyo METHOD FOR PRODUCING A CHIMERIC ANIMAL
JP6827250B2 (ja) * 2014-10-02 2021-02-10 学校法人自治医科大学 多能性幹細胞再樹立法
KR102636332B1 (ko) * 2015-04-08 2024-02-14 내셔날 페더레이션 오브 애그리컬쳐 코오퍼레이티브 어소우시에이션스 이개체 유래의 배우자를 생산하는 비인간 대형 포유 동물 또는 어류의 작출 방법
WO2017175876A1 (ja) * 2016-04-05 2017-10-12 学校法人自治医科大学 幹細胞を再樹立する方法
US20200315146A1 (en) * 2017-10-10 2020-10-08 The University Of Tokyo Application of pluripotent stem cells having modified differential potential to producing animals

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001299141A (ja) * 2000-04-27 2001-10-30 Sumitomo Electric Ind Ltd ノックイン非ヒト哺乳動物
AU2000250068A1 (en) * 2000-05-12 2001-11-26 Advanced Research And Technology Institute, Inc. Methods for enriching for quiescent cells in hematopoietic cell populations
CN1649489A (zh) * 2002-02-27 2005-08-03 长尾恭光 一种制备种系嵌合动物的方法
EP1486563A4 (en) * 2002-02-27 2008-01-09 Yasumitsu Nagao EMBRYONALLY MODIFIED ANIMAL AND METHOD OF CONSTRUCTING THEM
AU2003228517B2 (en) * 2002-04-16 2007-06-21 Dana-Farber Cancer Institute, Inc. Cancer models
JP2004166696A (ja) * 2002-10-31 2004-06-17 Sumitomo Pharmaceut Co Ltd Gata−3遺伝子導入アトピー性皮膚炎モデル動物

Also Published As

Publication number Publication date
US20070250943A1 (en) 2007-10-25
WO2006009297A1 (ja) 2006-01-26
EP1779724A1 (en) 2007-05-02
EP1779724A4 (en) 2008-03-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7071373B1 (en) Transgenic ungulate compositions and methods
Prelle et al. Pluripotent stem cells–model of embryonic development, tool for gene targeting, and basis of cell therapy
JP5588405B2 (ja) ラット胚性幹細胞
US6194635B1 (en) Embryonic germ cells, method for making same, and using the cells to produce a chimeric porcine
JP2000516463A (ja) 特定の遺伝的特性を有する哺乳動物を作製する方法
JP2000508919A (ja) 多能性ウサギ胚幹(es)細胞系およびそのキメラウサギの発生における使用
AU721375B2 (en) Porcine embryonic stem-like cells, methods of making and using the cells to produce transgenic pigs
JPWO2006009297A1 (ja) Es細胞を用いたキメラ作製
JP4226598B2 (ja) 精子幹細胞の生体外における増殖方法、その方法を利用して増殖された精子幹細胞、および精子幹細胞の生体外増殖に用いられる培地添加剤キット
US20090298168A1 (en) Method of genetically altering and producing allergy free cats
JP2004500038A (ja) 選択したドナー細胞を用いる核移植
Modliński et al. Embryonic stem cells: developmental capabilities and their possible use in mammalian embryo cloning
US10626417B2 (en) Method of genetically altering and producing allergy free cats
JPWO2005011371A1 (ja) 核移植卵、単為発生胚および単為発生哺乳動物の作出方法
WO2021174742A1 (zh) 一种动物的制备方法
US20070204357A1 (en) Process for producing normal parenchymal cells, tissues or organs by bioincubator
JP5771240B2 (ja) 免疫不全ブタ
JP5078074B2 (ja) 核移植卵、単為発生胚および単為発生非ヒト哺乳動物の作出方法
JP2009159878A (ja) 非ヒトes動物の新規作成方法
Hall et al. Nuclear transfer and its applications in regenerative medicine

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080617

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20090603

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20090603