JPWO2006001275A1 - グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーングする方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーニングする方法を提供する。本発明は、また、グリコーゲン合成酵素2の変異体をコードする単離された核酸、当該核酸が挿入されたベクター及び遺伝治療用である当該ベクターを提供する。本発明は、さらに、グリコーゲン合成酵素2の変異体及び当該変異体を有効成分として含有する糖尿病治療薬を提供する。
Description
本発明は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物に関する。
グリコーゲン合成酵素は、ヒトにおいては、筋型(グリコーゲン合成酵素1;737アミノ酸、83.6kDa)及び肝臓型(グリコーゲン合成酵素2;703アミノ酸、80.9kDa)の2タイプの遺伝子・酵素が存在し、グリコーゲン合成の律速酵素として機能することが知られている(非特許文献1)。
肝臓においては、食後に余剰の糖がグリコーゲン合成酵素によりグリコーゲンとして貯蔵される一方、空腹時にグリコーゲンホスホリラーゼによってグリコーゲンは分解されて、生じた糖が肝臓から放出される。このように、グリコーゲン合成酵素はグリコーゲンホスホリラーゼと共に、血糖調整に関与すると考えられている。
グリコーゲン合成酵素の活性は、リン酸化及びグルコース−6−リン酸(G−6−P)によって調節されている。グリコーゲン合成酵素は7つのセリンリン酸化部位(N末端側から順にsite2,2a,3a,3b,3c,4及び5)を有し、種々のキナーゼによってリン酸化されると不活性型になる一方、プロテインホスファターゼ−1Gによって脱リン酸化されると活性型となる。また、内在性のアロステリック活性化因子であるG−6−Pにより、リン酸化型及び脱リン酸化型の双方のグリコーゲン合成酵素が、一定の活性まで強力に活性化される(非特許文献1)。
活性低下型のグリコーゲン合成酵素の変異を持つ人は、グリコーゲンの貯蔵ができないために肝臓の糖放出が亢進し、食後高血糖になることが知られている(非特許文献2及び3)。また、高血糖状態にある1型及び2型糖尿病患者において、肝グリコーゲンが減少していることも知られている(非特許文献4〜7)。これらの臨床的知見からグリコーゲン合成酵素活性の減少と高血糖との相関が示唆されており、グリコーゲン合成酵素の活性化に基づいた糖尿病治療薬の開発が進められている。
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グリコーゲン合成酵素の活性化に基づく糖尿病治療薬のうち開発が進められているものは、すべてグリコーゲン合成酵素の活性を間接的に上昇させる作用に基づくものである。すなわち、グリコーゲン合成酵素をリン酸化して不活性型にする酵素であるグリコーゲン合成酵素キナーゼ3の阻害剤を有効成分としている。
しかし、グリコーゲン合成酵素をリン酸化して不活性型にする酵素(キナーゼ)は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3以外にも生体内に多数存在しており、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3の阻害剤はこれらすべてのキナーゼを阻害できるわけではない。つまり、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3を阻害しても、他のキナーゼによりグリコーゲン合成酵素がリン酸化を受けて不活性化されるため、最終的には高血糖を抑えることができない可能性がある。
したがって、本発明の目的は、様々なキナーゼの影響を受けることなくグリコーゲン合成酵素の活性を上昇させる糖尿病治療薬を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物を有効成分として含有する糖尿病治療薬を提供する。グリコーゲン合成酵素を直接活性化することにより、生体内に存在するグリコーゲン合成酵素を不活性化するキナーゼの影響を受けることがなくなり、高血糖を充分抑えることが可能である。また、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物は、他の糖尿病治療薬とは異なり、低血糖のリスクが低くなる可能性があることを本発明者らは見出している。さらに、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物は、肥満を改善し、1型及び2型糖尿病の双方に適用できる可能性についても本発明者らは見出している。
グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物を探索するために、本発明者らは、当該化合物のスクリーニング方法を開発した。すなわち、本発明は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーニングする方法であって、(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1Gが存在しない条件下でグリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、(b)(a)工程において測定された活性が、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い候補化合物を選択する工程と、を備えるスクリーニング方法を提供する。グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子がスクリーニング系から排除されているため、このスクリーニング方法では、グリコーゲン合成酵素を間接的に活性化する化合物が選択されることがない。
また、本発明は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーニングする別の方法として、(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、(b)グリコーゲン合成酵素と候補化合物との結合定数を測定する工程と、(c)(a)工程において、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い活性を示し、結合定数が所定値以上の候補化合物を選択する工程と、を備えるスクリーニング方法を提供する。結合実験によりグリコーゲン合成酵素と結合する化合物のみを選択することが可能となるため、本スクリーニング方法では、グリコーゲン合成酵素を直接的に活性化する化合物のみを選択することが可能である。
さらに、本発明は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーニングする別の方法として、(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、(b)グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1Gからなる群から選択される1以上の酵素に対する候補化合物の活性調節作用を測定する工程と、(c)(a)工程において、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い活性を示し、(b)工程においては活性調節作用を示さない候補化合物を選択する工程と、を備えるスクリーニング方法を提供する。本スクリーニング方法では、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対して影響を与える化合物が排除されるため、グリコーゲン合成酵素を間接的に活性化する化合物が選択されることがない。
上記スクリーニング方法におけるグリコーゲン合成酵素はグリコーゲン合成酵素2であることが好ましい。糖尿病では、肝臓におけるグリコーゲン貯蔵や糖放出の制御が重要であるため、特異性の観点から肝臓型のグリコーゲン合成酵素であるグリコーゲン合成酵素2を対象としたスクリーニングを行うことが好ましいからである。
本発明は、また、配列番号11に記載の塩基配列からなる単離された核酸、当該核酸が挿入されたベクター及び遺伝子治療用である当該ベクターを提供する。本発明は、さらに、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる単離されたタンパク質及び当該タンパク質を有効成分として含有する糖尿病治療薬を提供する。
配列番号11に記載の塩基配列からなる核酸は、ヒトのグリコーゲン合成酵素2の変異体(配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードしている。この変異体は、グリコーゲン合成酵素2が有する7つのセリンリン酸化部位のうち、site2,3a,3b,3c,4及び5の6つのセリン残基がアラニン残基に置換されている。リン酸化部位を欠いたこの変異体は、リン酸化されて不活性型になることがなく常時活性型となり、生体内に存在するキナーゼの影響を受けることなく常にグリコーゲン合成を行うことが可能となる。したがって、配列番号11に記載の塩基配列からなる核酸は、糖尿病の遺伝子治療に応用することが可能である。また、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質は糖尿病治療薬に用いることが可能である。
本発明は、また、配列番号13に記載の塩基配列からなる単離された核酸、当該核酸が挿入されたベクター及び遺伝子治療用である当該ベクターを提供する。本発明は、さらに、配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる単離されたタンパク質及び当該タンパク質を有効成分として含有する糖尿病治療薬を提供する。
配列番号13に記載の塩基配列からなる核酸は、ヒトのグリコーゲン合成酵素2の変異体(配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードしている。この変異体は、グリコーゲン合成酵素2が有する7つのセリンリン酸化部位(site2,2a,3a,3b,3c,4及び5)のすべてのセリン残基がアラニン残基に置換されている。リン酸化部位を欠いたこの変異体は、リン酸化されて不活性型になることがなく常時活性型となり、生体内に存在するキナーゼの影響を受けることなく常にグリコーゲン合成を行うことが可能となる。したがって、配列番号13に記載の塩基配列からなる核酸は、糖尿病の遺伝子治療に応用することが可能である。また、配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質は糖尿病治療薬に用いることが可能である。
本発明によれば、様々なキナーゼの影響を受けることなくグリコーゲン合成酵素の活性を上昇させる糖尿病治療薬を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
(グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物のスクリーニング方法)
本発明の第一のグリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物のスクリーニング方法は、(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1Gが存在しない条件下でグリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、(b)(a)工程において測定された活性が、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い候補化合物を選択する工程と、を備える。
本発明の第一のグリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物のスクリーニング方法は、(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1Gが存在しない条件下でグリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、(b)(a)工程において測定された活性が、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い候補化合物を選択する工程と、を備える。
細胞内にはグリコーゲン合成酵素に影響を与える因子が数多く存在する。例えば、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3はグリコーゲン合成酵素をリン酸化して不活性型に変換する。したがって、細胞内でグリコーゲン合成酵素の活性を測定し、候補化合物の存在によりその活性が上昇した場合、候補化合物がグリコーゲン合成酵素を直接活性化しているのか、グリコーゲン合成酵素の活性を抑制している因子を阻害しているのかの区別ができない。そこで、本発明のスクリーニング方法では、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子(グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1G)が存在しない条件下でグリコーゲン合成酵素の活性を測定している。このようにして活性を測定することにより、グリコーゲン合成酵素に直接作用して活性を上昇させる候補化合物のみを選択することが可能である。
グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子が存在しない条件下でグリコーゲン合成酵素の活性を測定する方法としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
グリコーゲン合成酵素によるUDP(ウリジン 5’−二リン酸)の生成をピルビン酸キナーゼ及び乳酸デヒドロゲナーゼとカップルさせ、減少するNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を測定することにより、グリコーゲン合成酵素の活性を測定することができる。この測定方法の概略を図1に示す。まず、最初の反応として、グリコーゲン合成酵素により、グリコーゲン及びUDP−グルコースから、グルコースがひとつ付加したグリコーゲン及びUDPが生成する。次に、ピルビン酸キナーゼにより、UDP及びホスホエノールピルビン酸から、UTP及びピルビン酸が生成する。最後に、乳酸デヒドロゲナーゼにより、ピルビン酸及びNADHから乳酸及びNAD+(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が生成する。すなわち、グリコーゲン合成酵素の反応が進行するたびにNADHが消費されるため、NADHの減少量がグリコーゲン合成酵素の活性を反映する。NADHの定量は、340nmにおける吸光度、又は、蛍光強度(励起波長:340nm、検出波長:460nm)を測定することにより行うことができる。
より具体的には、まず、グリコーゲン合成酵素及びUDP−グルコースを除いた酵素、基質、補因子(ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グリコーゲン、ホスホエノールピルビン酸、NADH、MgCl2等)等を添加したバッファー(トリス−塩酸バッファー等)を調製する。このバッファーに、候補化合物、グリコーゲン合成酵素及びUDP−グルコースを添加し、酵素反応を開始させる。所定時間、所定温度、酵素反応させた後(例えば、30℃で60分間)、反応液の吸光度(340nm)又は蛍光強度(励起波長:340nm、検出波長:460nm)を測定してNADHを定量することにより、グリコーゲン合成酵素の活性が測定できる。当業者であれば、反応条件(添加物の種類及び量、反応温度、反応時間等)を適宜調整することが可能である。
候補化合物を添加した場合のグリコーゲン合成酵素の活性が、候補化合物を添加しなかった場合のグリコーゲン合成酵素の活性よりも高かった場合、その候補化合物は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物と判定することができる。
また、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子が存在しない条件下でグリコーゲン合成酵素の活性を測定する別の方法としては、例えば以下の方法がある。グリコーゲン合成酵素により、グリコーゲン及びUDP−[14C]グルコースから、[14C]グリコーゲン及びUDPを生成させ、エタノール沈殿によりグリコーゲンをペレットとして回収し、液体シンチレーションカウンター等によりペレットの放射線量を定量する。放射線量は、グリコーゲン合成酵素の活性を反映している。
次に、本発明の第二のグリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物のスクリーニング方法について説明する。第二のスクリーニング方法は、(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、(b)グリコーゲン合成酵素と候補化合物との結合定数を測定する工程と、(c)(a)工程において、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い活性を示し、結合定数が所定値以上の候補化合物を選択する工程と、を備える。
本スクリーニング方法では、結合実験を行い、グリコーゲン合成酵素と結合しうる化合物のみを選択しているため、グリコーゲン合成酵素に直接作用して、その活性を上昇させる化合物のみを選択することが可能である。
本スクリーニング方法では、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する方法は特に限定されず、グリコーゲン合成酵素の活性を抑制する因子が存在する条件下で測定を行ってもよく(肝細胞等を用いた系)、前述したような、グリコーゲン合成酵素の活性を抑制する因子が存在しない条件下で測定を行ってもよい。
肝細胞等を用いた測定系として、細胞抽出液を用いて、UDP−[14C]−グルコースのグリコーゲンへの取込みを指標として、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する方法が挙げられる。ここで、細胞抽出液は、初代肝細胞、培養細胞、遺伝子導入された培養細胞のいずれでもよい。また、別の測定系として、初代肝細胞、培養細胞、遺伝子導入された培養細胞を用いて、培養液に[14C]−グルコースを添加して細胞に取り込ませ、細胞内でのグリコーゲン合成酵素によるグリコーゲンへの取込みを指標として、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する方法が挙げられる。
グリコーゲン合成酵素と候補化合物との結合定数を測定するための結合実験は、当業者にとって公知の方法を用いることが可能である。結合定数(Ka)が所定値以上である場合、グリコーゲン合成酵素と候補化合物とが結合し得ると推定できる。ここで所定値は、測定条件等により左右されるが、一般的には2×103M−1〜1×106M−1の範囲の数値であり、1×104M−1であることが好ましい。
結合実験の具体的な方法は、例えば、以下の通りである。His−タグなどのアフィニティータグを結合したグリコーゲン合成酵素をそのアフィニティータグと結合する樹脂をコートしたプレートなどに固定化する。次に、その系にグルコース−6−リン酸の放射ラベル体と候補化合物とを添加し、グリコーゲン合成酵素に対して競合させる。適切なバッファーで洗浄して非吸着ラベル体及び非吸着化合物を取り除いた後、系の放射活性を測定する。
候補化合物を添加した場合のグリコーゲン合成酵素の活性が、候補化合物を添加しなかった場合のグリコーゲン合成酵素の活性よりも高く、かつ、グリコーゲン合成酵素と候補化合物との結合定数が所定値以上である場合、その候補化合物は、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物と判定することができる。
次に、本発明の第三のグリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物のスクリーニング方法について説明する。第三のスクリーニング方法は、(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、(b)グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1Gからなる群から選択される1以上の酵素に対する候補化合物の活性調節作用を測定する工程と、(c)(a)工程において、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い活性を示し、(b)工程においては活性調節作用を示さない候補化合物を選択する工程と、を備える。
本スクリーニング方法では、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対する候補化合物の活性調節作用を測定して、かかる活性調節作用を示す候補化合物を除外するため、グリコーゲン合成酵素に直接作用して、その活性を上昇させる化合物のみを選択することが可能である。
本スクリーニング方法では、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する方法は特に限定されず、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子が存在する条件下で測定を行ってもよく、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子が存在しない条件下で測定を行ってもよい。
グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対する候補化合物の活性調節作用を測定する方法は、当業者にとって公知の方法を用いることが可能である。活性調節作用を測定し、阻害率又は活性化率が所定値以下の場合、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対して活性調節作用(阻害作用又は活性化作用)を示さない候補化合物とみなせる。
あるいは、グリコーゲン合成酵素に対する候補化合物の活性化作用が、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対する候補化合物の活性調節作用の100倍の選択性を示す場合に、当該候補化合物をグリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対して活性調節作用を示さない候補化合物とみなせる。すなわち、グリコーゲン合成酵素に対する候補化合物のEC50(50%有効濃度)が、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対する候補化合物のEC50又はIC50(50%阻害濃度)の100倍以上である場合に、当該候補化合物をグリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対して活性調節作用を示さない候補化合物とみなせる。
グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対する候補化合物の活性調節作用の測定は、当該因子の活性を測定する系(以下に具体例を示す)に候補化合物を添加した場合の活性の変化を測定することにより可能である。
グルコース−6−ホスファターゼの活性は、例えば、以下の方法で測定することが可能である。グルコース−6−ホスファターゼによりグルコース−6−リン酸をグルコースに変換する。さらに、ヘキソキナーゼによりグルコースをグルコース−6−リン酸に変換し、その際にATPから生じるADPをピルビン酸キナーゼと乳酸デヒドロゲナーゼの反応にカップルさせ、減少するNADHを測定する。
ヘキソキナーゼの活性は、例えば、以下の方法で測定することが可能である。ヘキソキナーゼによりグルコース及びATPからグルコース−6−リン酸を産生させる。生成物であるグルコース−6−リン酸をグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼの反応にカップルさせ、生成するNADHを測定する。
グリコーゲンホスホリラーゼの活性は、例えば、以下の方法で測定することが可能である。グリコーゲンホスホリラーゼにより、グリコーゲン及び無機リン酸からグルコース−1−リン酸を産生させる。生成物であるグルコース−1−リン酸をホスホグルコムターゼによりグルコース−6−リン酸に変換し、さらにグルコース−6−リン酸をグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼにより6−ホスホグルコン酸に変換し、この反応で生成するNADHを測定する。
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3の活性は、例えば、以下の方法で測定することが可能である。グリコーゲン合成酵素を基質として、[γ−32P]ATP、MgCl2及びグリコーゲン合成酵素キナーゼ3をインキュベートする。反応後、フィルターにタンパク質を吸着させ適切なバッファーで洗浄後、フィルターの放射活性をシンチレーションカウンターで測定する。
プロテインホスファターゼ1Gの活性は、例えば、以下の方法で測定することが可能である。p−ニトロフェニルリン酸を基質として、MgCl2及びプロテインホスファターゼ1Gをインキュベートし、生成するp−ニトロフェノールを測定する(410nmにおける吸光度を測定)。
候補化合物を添加した場合のグリコーゲン合成酵素の活性が、候補化合物を添加しなかった場合のグリコーゲン合成酵素の活性よりも高く、かつ、グリコーゲン合成酵素の活性調節に関与する因子に対する活性調節作用を示さない場合、その候補化合物はグリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物と判定することができる。
(グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物を有効成分として含有する糖尿病治療薬)
本発明のスクリーニング方法により、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物を選択することができる。そして、本発明の糖尿病治療薬は、かかる化合物を有効成分として含有する。本発明の糖尿病治療薬の投与形態としては各種の形態を選択でき、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤等の経口剤、例えば溶液、懸濁液等の殺菌した液状の非経口剤等が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物を選択することができる。そして、本発明の糖尿病治療薬は、かかる化合物を有効成分として含有する。本発明の糖尿病治療薬の投与形態としては各種の形態を選択でき、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤等の経口剤、例えば溶液、懸濁液等の殺菌した液状の非経口剤等が挙げられる。
固体の製剤は、そのまま錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は粉末の形態として製造することもできるが、適当な添加物を使用して製造することもできる。該添加物としては、例えば乳糖、ブドウ糖等の糖類、例えばトウモロコシ、小麦、米等の澱粉類、例えばステアリン酸等の脂肪酸、例えばメタケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸カルシウム等の無機塩、例えばポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール等の合成高分子、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、例えばステアリルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の合成セルロース誘導体、その他、水、ゼラチン、タルク、植物油、アラビアゴム等通常用いられる添加物等が挙げられる。
これらの錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末等の固形製剤は、一般的には0.1〜100重量%、好ましくは5〜100重量%の有効成分を含むことができる。液状製剤は、水、アルコール類又は例えば大豆油、ピーナツ油、ゴマ油等の植物由来の油等液状製剤において通常用いられる適当な添加物を使用し、懸濁液、シロップ剤、注射剤等の形態として製造することができる。特に、非経口的に投与する場合の適当な溶剤としては、例えば注射用蒸留水、塩酸リドカイン水溶液(筋肉内注射用)、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール、静脈内注射用液体(例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム等の水溶液)、電解質溶液(例えば点滴静注、静脈内注射用)等又はこれらの混合溶液が挙げられる。また、経口投与の懸濁剤又はシロップ剤等の液剤は、0.5〜10重量%の有効成分を含むことができる。
グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物の実際に好ましい投与量は、使用される化合物の種類、配合された組成物の種類、適用頻度および治療すべき特定部位および患者の病状によって適宜増減することができる。例えば、一日当りの成人一人当りの投与量は、経口投与の場合、0.1ないし1000mgであり、非経口投与の場合、1日当り0.01ないし500mgである。なお、投与回数は、投与方法および症状により異なるが、単回又は2ないし5回に分けて投与することができる。
(核酸、ベクター及びタンパク質)
本発明の核酸は、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなり、本発明のベクターは本発明の核酸が挿入されている。また、本発明のタンパク質は、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる。本発明の核酸は、配列番号11に記載の塩基配列に限定されるものではなく、配列番号12に記載のアミノ酸配列をコードするものすべてを包含する。
本発明の核酸は、配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなり、本発明のベクターは本発明の核酸が挿入されている。また、本発明のタンパク質は、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる。本発明の核酸は、配列番号11に記載の塩基配列に限定されるものではなく、配列番号12に記載のアミノ酸配列をコードするものすべてを包含する。
配列番号11に記載の塩基配列からなる核酸は、ヒトのグリコーゲン合成酵素2の変異体(配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードしている。この変異体は、グリコーゲン合成酵素2が有する7つのセリンリン酸化部位のうち、site2,3a,3b,3c,4及び5の6つのセリン残基がアラニン残基に置換されている(それぞれ、配列番号12の8、641、645、649、653及び657番目のアミノ酸残基に相当する。)。リン酸化部位を欠いたこの変異体は、リン酸化されて不活性型になることがなく常時活性型となり、生体内に存在するキナーゼの影響を受けることなく常にグリコーゲン合成を行うことが可能となる。したがって、本発明の核酸を用いて糖尿病の遺伝子治療を行うことが可能であり、また、本発明のタンパク質は糖尿病治療薬として用いることが可能である。
本発明の別の核酸は、配列表の配列番号13に記載の塩基配列からなり、本発明のベクターは本発明の核酸が挿入されている。また、本発明のタンパク質は、配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる。本発明の核酸は、配列番号13に記載の塩基配列に限定されるものではなく、配列番号14に記載のアミノ酸配列をコードするものすべてを包含する。
配列番号13に記載の塩基配列からなる核酸は、ヒトのグリコーゲン合成酵素2の変異体(配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードしている。この変異体は、グリコーゲン合成酵素2が有する7つのセリンリン酸化部位(site2,2a,3a,3b,3c,4及び5)のすべてのセリン残基がアラニン残基に置換されている(それぞれ、配列番号14の8、11、641、645、649、653及び657番目のアミノ酸残基に相当する。)。リン酸化部位を欠いたこの変異体は、リン酸化されて不活性型になることがなく常時活性型となり、生体内に存在するキナーゼの影響を受けることなく常にグリコーゲン合成を行うことが可能となる。したがって、本発明の核酸を用いて糖尿病の遺伝子治療を行うことが可能であり、また、本発明のタンパク質は糖尿病治療薬として用いることが可能である。
本発明の核酸は、ヒトのグリコーゲン合成酵素2のcDNAを部位特異的突然変異法で改変することにより、調製することができる。より具体的には、例えば、まず、ヒト肝臓cDNAをテンプレートにしてPCRを行い、得られる増幅産物を適当なベクターにサブクローニングする。次に、市販の部位特異的突然変異誘発キット等を利用して、上記セリン残基をコードするコドンを、アラニンをコードするコドンに置換することにより、本発明の核酸が得られる。
本発明の核酸を治療用ベクターに組み込むことにより、糖尿病の遺伝子治療を行うことが可能である。治療用ベクターとしては、特に限定されず、ウイルスベクター及び非ウイルスベクター(プラスミドベクター)のいずれであってもよい。ウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、HIVウイルス、センダイウイルス等から誘導される組み換えウイルスベクターを用いることが可能である。上記ベクターに適当なプロモーターや複製起源、選択マーカー、RNAスプライス部位、ポリアデニル化シグナル等の形質発現に関する配列を導入する。
このように上記ベクターに組み込まれた本発明の核酸は、通常の手法により遺伝子治療薬として使用できる。すなわち、組み換えウイルスベクターを治療の標的細胞(例えば、肝細胞)に接触させるか、又はプラスミドベクターをリン酸カルシウム法、リポソーム法、エレクトロポレーション法等により標的細胞に導入すればよい。
本発明のタンパク質は、本発明の核酸をベクターに組み込み、大腸菌等の宿主に導入した後、培地中で宿主細胞を培養し、当該核酸を発現させることによって得られる。宿主細胞を培養後、必要に応じて細胞を溶解した後、塩析、透析、限外ろ過、ゲルろ過、各種クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等)、電気泳動等の慣用技術により本発明のタンパク質を精製することができる。
本発明のタンパク質は糖尿病治療薬として用いることができる。すなわち、本発明の糖尿病治療薬は、本発明のタンパク質を有効成分として含有する。糖尿病治療薬の投与形態は特に限られないが、主として注射剤等の非経口投与が一般的である。製剤化は常法にしたがって行うことができ、該糖尿病治療薬は、安定化剤、可溶化剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて含有してよい。
本発明のタンパク質の好ましい投与量は、患者の病状等によって適宜増減することができる。例えば、一日当りの成人一人当りの投与量は、非経口投与の場合、1日当り本発明のタンパク質として1μgないし100mgである。なお、投与回数は、投与方法および症状により異なるが、単回又は2ないし5回に分けて投与することができる。
以下、実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(製造例1:pcDNA3.1(-)/AS-5A GYS2プラスミドの作製)
(1)グリコーゲン合成酵素2(GYS2)遺伝子のクローニング
ヒト肝臓cDNA(liver cDNA(S-1202), Multiple tissue cDNA panel, CLONTEC)をテンプレートにして、GYS−2−FW(配列番号1)及びGYS−2−RV(配列番号2)をプライマーにして、PfuTurbo DNA polymerase(STRATAGENE)を用いてPCRを行った(94℃1分間、60℃1分、72℃3分、25サイクル)。得られた増幅断片をHindIII-EcoRIで処理した後、pFLAG.CTC(SIGMA)にサブクローニングした。得られたプラスミドをpFLAG.CTC/GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS−2−FW:catatgaagcttcgaggccgatccctctctgta
GYS−2−RV:acccgggaattcgttcttatattcaccatgcagctt
(1)グリコーゲン合成酵素2(GYS2)遺伝子のクローニング
ヒト肝臓cDNA(liver cDNA(S-1202), Multiple tissue cDNA panel, CLONTEC)をテンプレートにして、GYS−2−FW(配列番号1)及びGYS−2−RV(配列番号2)をプライマーにして、PfuTurbo DNA polymerase(STRATAGENE)を用いてPCRを行った(94℃1分間、60℃1分、72℃3分、25サイクル)。得られた増幅断片をHindIII-EcoRIで処理した後、pFLAG.CTC(SIGMA)にサブクローニングした。得られたプラスミドをpFLAG.CTC/GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS−2−FW:catatgaagcttcgaggccgatccctctctgta
GYS−2−RV:acccgggaattcgttcttatattcaccatgcagctt
pFLAG.CTC/GYS2をテンプレートにして、GYS2−V−FW(配列番号3)及びGYS2−V−RV(配列番号4)をプライマーにしてPCRを行った。得られた増幅断片をEcoRI-HindIIIで処理した後、pcDNA3.1(-)にサブクローニングした。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS−V−FW:ttttttgaattccgccaccatgcttcgaggccgatccctctctgtaac
GYS−V−RV:ttttttaagctttcagttcttatattcaccatgcagc
GYS−V−FW:ttttttgaattccgccaccatgcttcgaggccgatccctctctgtaac
GYS−V−RV:ttttttaagctttcagttcttatattcaccatgcagc
(2)Site2のSerのAlaへの置換
pcDNA3.1(-)/GYS2をテンプレートにして、GYS2−V−FW−Site2(配列番号5)及びGYS2−V−RV−Site2(配列番号6)をプライマーにしてPCRを行った。得られた増幅断片をEcoRI-HindIIIで処理した後、pcDNA3.1(-)にサブクローニングした。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AS-5S GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−V−FW−Site2:ttttttgaattccgccaccatgcttcgaggccgatccctcgctgtaacatcc(下線部分がSite2に相当)
GYS2−V−RV−Site2:ttttttaagctttcagttcttatattcaccatgcagc
pcDNA3.1(-)/GYS2をテンプレートにして、GYS2−V−FW−Site2(配列番号5)及びGYS2−V−RV−Site2(配列番号6)をプライマーにしてPCRを行った。得られた増幅断片をEcoRI-HindIIIで処理した後、pcDNA3.1(-)にサブクローニングした。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AS-5S GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−V−FW−Site2:ttttttgaattccgccaccatgcttcgaggccgatccctcgctgtaacatcc(下線部分がSite2に相当)
GYS2−V−RV−Site2:ttttttaagctttcagttcttatattcaccatgcagc
(3)Site3a及び3bのSerのAlaへの置換
pcDNA3.1(-)/AS-5S GYS2をテンプレートにして、GYS2−3a,3b−sense(配列番号7)及びGYS2−3a,3b−antisense(配列番号8)をプライマーにして、QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATGENE)を用いて、変異導入を行った。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AS-AASSS GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−3a,3b−sense:agaaggatttaaatatcccaggccttccgctgtaccacctgctccttcaggg(下線部分が、順にSite3a及び3bに相当)
GYS2−3a,3b−antisense:ccctgaaggagcaggtggtacagcggaaggcctgggatatttaaatccttct(下線部分が、順にSite3b及び3aに相当)
pcDNA3.1(-)/AS-5S GYS2をテンプレートにして、GYS2−3a,3b−sense(配列番号7)及びGYS2−3a,3b−antisense(配列番号8)をプライマーにして、QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATGENE)を用いて、変異導入を行った。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AS-AASSS GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−3a,3b−sense:agaaggatttaaatatcccaggccttccgctgtaccacctgctccttcaggg(下線部分が、順にSite3a及び3bに相当)
GYS2−3a,3b−antisense:ccctgaaggagcaggtggtacagcggaaggcctgggatatttaaatccttct(下線部分が、順にSite3b及び3aに相当)
(4)Site3c,4及び5のSerのAlaへの置換
pcDNA3.1(-)/AS-AASSS GYS2をテンプレートにして、GYS2−3c,4,5−sense(配列番号9)及びGYS2−3c,4,5−antisense(配列番号10)をプライマーにして、QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて、変異導入を行った。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AS-5A GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−3c,4,5−sense:cctgctccttcaggggctcaggcctccgctcctcagagcgctgatgtggaagatgaag(下線部分が、順にSite3c、4及び5に相当)
GYS2−3c,4,5−antisense:cttcatcttccacatcagcgctctgaggagcggaggcctgagcccctgaaggagcagg(下線部分が、順にSite5、4及び3cに相当)
pcDNA3.1(-)/AS-AASSS GYS2をテンプレートにして、GYS2−3c,4,5−sense(配列番号9)及びGYS2−3c,4,5−antisense(配列番号10)をプライマーにして、QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて、変異導入を行った。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AS-5A GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−3c,4,5−sense:cctgctccttcaggggctcaggcctccgctcctcagagcgctgatgtggaagatgaag(下線部分が、順にSite3c、4及び5に相当)
GYS2−3c,4,5−antisense:cttcatcttccacatcagcgctctgaggagcggaggcctgagcccctgaaggagcagg(下線部分が、順にSite5、4及び3cに相当)
以上の操作で得られたプラスミドpcDNA3.1(-)/AS-5A GYS2は、ヒトGYS2のオープンリーディングフレーム(ORF)のセリンリン酸化部位のうち、Site2,3a,3b,3c,4及び5をコードするコドンをGCT(Alaコドン)に置換した変異型ヒトGYS2のORFを保有する。
(製造例2:pcDNA3.1(-)/AA-5A GYS2プラスミドの作製)
(1)Site2及び2aのSerのAlaへの置換
製造例1で得たpcDNA3.1(-)/GYS2をテンプレートにして、GYS2−V−FW−S2,2a(配列番号15)及びGYS2−V−RV−S2,2a(配列番号16)をプライマーにしてPCRを行った。得られた増幅断片をEcoRI-HindIIIで処理した後、pcDNA3.1(-)にサブクローニングした。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AA-5S GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−V−FW−S2,2a:ttttttgaattccgccaccatgcttcgaggccgatccctcgctgtaacagctctgggtggg(下線部分が順にSite2、2aに相当)
GYS2−V−RV−S2,2a:ttttttaagctttcagttcttatattcaccatgcagc
(1)Site2及び2aのSerのAlaへの置換
製造例1で得たpcDNA3.1(-)/GYS2をテンプレートにして、GYS2−V−FW−S2,2a(配列番号15)及びGYS2−V−RV−S2,2a(配列番号16)をプライマーにしてPCRを行った。得られた増幅断片をEcoRI-HindIIIで処理した後、pcDNA3.1(-)にサブクローニングした。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AA-5S GYS2と命名した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
GYS2−V−FW−S2,2a:ttttttgaattccgccaccatgcttcgaggccgatccctcgctgtaacagctctgggtggg(下線部分が順にSite2、2aに相当)
GYS2−V−RV−S2,2a:ttttttaagctttcagttcttatattcaccatgcagc
(2)Site3a及び3bのSerのAlaへの置換及びSite3c,4及び5のSerのAlaへの置換
pcDNA3.1(-)/AA-5S GYS2をテンプレートにして、製造例1の(3)及び(4)に記載の方法と同様の方法により、Site3a、3b、3c,4及び5のSerをAlaへ置換した。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AA-5A GYS2と命名した。このプラスミドは、ヒトGYS2のオープンリーディングフレーム(ORF)のすべてのセリンリン酸化部位(Site2,2a,3a,3b,3c,4及び5)をコードするコドンをGCT(Alaコドン)に置換した変異型ヒトGYS2のORFを保有する。
pcDNA3.1(-)/AA-5S GYS2をテンプレートにして、製造例1の(3)及び(4)に記載の方法と同様の方法により、Site3a、3b、3c,4及び5のSerをAlaへ置換した。得られたプラスミドをpcDNA3.1(-)/AA-5A GYS2と命名した。このプラスミドは、ヒトGYS2のオープンリーディングフレーム(ORF)のすべてのセリンリン酸化部位(Site2,2a,3a,3b,3c,4及び5)をコードするコドンをGCT(Alaコドン)に置換した変異型ヒトGYS2のORFを保有する。
(製造例3:組み換えアデノウイルスの作製)
まず、アデノウイルスベクターであるpCosAdv-CMVを以下の方法で作成した。Morsyらの方法(J. Clin. Invest., 92, 1580-1586 (1993))によりE1及びE3領域を欠失させたアデノウイルス由来のゲノム配列を調製した。CMVプロモーターとBGH-ployA付加シグナル配列の間に、目的の遺伝子を導入する為の制限酵素部位(SwaI)を導入した。Charomid 9-20コスミドベクター(WAKO)にPacI及びPmeI部位を導入し、アデノウイルス由来のゲノム配列をPacI部位に導入し、pCosAdv-CMVベクターを作製した。
まず、アデノウイルスベクターであるpCosAdv-CMVを以下の方法で作成した。Morsyらの方法(J. Clin. Invest., 92, 1580-1586 (1993))によりE1及びE3領域を欠失させたアデノウイルス由来のゲノム配列を調製した。CMVプロモーターとBGH-ployA付加シグナル配列の間に、目的の遺伝子を導入する為の制限酵素部位(SwaI)を導入した。Charomid 9-20コスミドベクター(WAKO)にPacI及びPmeI部位を導入し、アデノウイルス由来のゲノム配列をPacI部位に導入し、pCosAdv-CMVベクターを作製した。
pCosAdv-CMVをSwaIで消化し、末端をCIAP(仔ウシ腸管粘膜由来アルカリホスファターゼ)により脱リン酸化した。製造例1及び2で作製したpcDNA3.1(-)/AS-5A GYS2及びpcDNA3.1(-)/AA-5A GYS2をEcoRV-HindIIIで処理し、得られたDNA断片をクレノーフラグメントにより平滑化し、前記アデノウイルスベクターにサブクローニングした。In vitro Packaging Kit LAMBDA INN(ニッポンジーン)により大腸菌に形質転換し、目的の遺伝子が正しい向きに入った組み換えアデノウイルスプラスミドを精製した。精製したプラスミドDNAをPacIで完全消化してウイルスDNAを切り出し、293細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション後、293細胞を回収し、凍結融解し、遠心分離し、上清のウイルス液を得た。さらに、このウイルス液を293細胞に感染させてウイルスの増幅を繰り返し、大量のウイルス液を得た(それぞれ、Ad−AS−5A、Ad−AA−5A)。コントロールとして、lacZを導入したアデノウイルスベクター(Ad−lacZ)を作製し、同様の方法で大量のウイルス液を得た。また、比較のために、pcDNA3.1(-)/GYS2を導入したアデノウイルスベクターを作製し、同様の方法で大量のウイルス液を得た。
得られたウイルス液は、CsCl密度勾配遠心により精製し、透析バッファー(10mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM MgCl2、10%グリセロール)に対して透析を行った。回収したウイルス液は使用時まで−80℃で保存した。
(試験例1:グルコース産生量の測定)
門脈灌流法により、ラット(7〜9週齢、雄性)から肝細胞を分離し、10%FBS(ウシ胎児血清)を含む高グルコースDMEM(GIBCO)に懸濁させ、100mmコラーゲンコートディッシュ(IWAKI)に3.5×106cell/10mLの濃度で細胞を播いた。3時間後、無血清の低グルコースDMEMに培地を置換し、組み換えアデノウイルスを2時間感染させた。10%FBSを含む低グルコースDMEMに培地を置換し、一晩培養した。
門脈灌流法により、ラット(7〜9週齢、雄性)から肝細胞を分離し、10%FBS(ウシ胎児血清)を含む高グルコースDMEM(GIBCO)に懸濁させ、100mmコラーゲンコートディッシュ(IWAKI)に3.5×106cell/10mLの濃度で細胞を播いた。3時間後、無血清の低グルコースDMEMに培地を置換し、組み換えアデノウイルスを2時間感染させた。10%FBSを含む低グルコースDMEMに培地を置換し、一晩培養した。
10mMのジヒドロキシアセトンを含むグルコースフリーDMEMに培地を置換し、3〜6時間インキュベートした後、培地中に放出されたグルコース量をデタミナーGLE(協和)にて測定した。この測定値は、主に糖新生の基質前駆物質であるジヒドロキシアセトンからのグルコース産生量、つまり、糖新生系によるグルコース産生量に相当する。
図2は、様々な感染多重度における、コントロール(LacZ)及び変異型GYS2(AS−5A及びAA−5A)のグルコース産生量を示すグラフである。図2から、変異型GYS2はいずれもコントロールに比べてグルコース産生量が減少しているのが分かる。コントロールを基準にしたグルコース産生の減少率は、感染多重度が2、10及び20の場合に、変異型GYS2(AS−5A)でそれぞれ11%、54%及び58%であり、変異型GYS2(AA−5A)でそれぞれ4%、26%及び62%であった。
一方、野生型GYS2を過剰発現させた場合には、コントロールと比較してもグルコース産生量はほとんど変化しなかった。すなわち、グルコース産生の減少率は、感染多重度が2、10及び20の場合に、それぞれ15%、13%及び9%であった。
野生型GYS2を過剰発現させても、グルコース産生量はほとんど変化しないという結果は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3等によってグリコーゲン合成酵素がリン酸化を受けて不活性化されていることを示唆している。一方、変異型GYS2(AS−5A及びAA−5A)はリン酸化部位が存在しないため、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3等が存在しても不活性化されないため、グルコース産生量が減少しているものと考えられる。
(試験例2)
アデノウイルスベクターを用いてマウスの肝臓に変異型GYS2(AS−5A)を高発現させ、これにより肝GYS2活性を大きく上昇させた条件下で経口ブドウ糖負荷試験を実施し、耐糖能が改善されるかを検討した。
アデノウイルスベクターを用いてマウスの肝臓に変異型GYS2(AS−5A)を高発現させ、これにより肝GYS2活性を大きく上昇させた条件下で経口ブドウ糖負荷試験を実施し、耐糖能が改善されるかを検討した。
各アデノウイルスは、ビークルとしてPBSを使用し、5×109pfu/マウスとなるように希釈した。免疫抑制剤は以下の要領で調製した。プレドニゾンにエタノール(最終容量の3.75%)を添加してなじませ、そこにシクロスポリンA(サンディミュン注射液)を加えてよく撹拌した。その後、最終容量になるまで、滅菌生理食塩水を加えてさらに撹拌した。
(1)免疫抑制剤の投与開始
アデノウイルス投与の2日前から、1日1回、免疫抑制剤の腹腔内投与を開始した。アデノウイルス投与の2日前及び1日前は、2.5mg/kgのプレドニゾン+8mg/kgのシクロスポリンAを投与し、アデノウイルス投与当日は、2.5mg/kgのプレドニゾン+16mg/kgのシクロスポリンAを投与した。また、アデノウイルス投与の1日後及び2日後は、2.5mg/kgのプレドニゾン+4mg/kgのシクロスポリンAを投与した。
アデノウイルス投与の2日前から、1日1回、免疫抑制剤の腹腔内投与を開始した。アデノウイルス投与の2日前及び1日前は、2.5mg/kgのプレドニゾン+8mg/kgのシクロスポリンAを投与し、アデノウイルス投与当日は、2.5mg/kgのプレドニゾン+16mg/kgのシクロスポリンAを投与した。また、アデノウイルス投与の1日後及び2日後は、2.5mg/kgのプレドニゾン+4mg/kgのシクロスポリンAを投与した。
(2)アデノウイルスの投与
アデノウイルス投与前日に、自由摂餌下の血糖値及び体重を測定した。まず、ヘパリン処理したキャピラリーを用いて、覚醒下のマウスの眼窩静脈より少量の血液を採取し、標準校正したアントセンスII(バイエルメディカル)を用いて血糖値を測定した。
アデノウイルス投与前日に、自由摂餌下の血糖値及び体重を測定した。まず、ヘパリン処理したキャピラリーを用いて、覚醒下のマウスの眼窩静脈より少量の血液を採取し、標準校正したアントセンスII(バイエルメディカル)を用いて血糖値を測定した。
アデノウイルス投与当日、マウスを保定器に入れ、29G針付シリンジを用いて、ビークル、Ad−LacZ又はAd−AS−5A(製造例3で作製)を尾静脈から静脈内投与した。アデノウイルスの投与量は、いずれも5×109pfu/マウスであった。
(3)投与2日後:血糖値測定
投与2日後の午前、自由摂餌下にて、全てのマウスの血糖値を測定した。マウスを保定器に入れ、尻尾から1滴の血液を採取し、標準校正したアントセンスIIで血糖値を測定した。
投与2日後の午前、自由摂餌下にて、全てのマウスの血糖値を測定した。マウスを保定器に入れ、尻尾から1滴の血液を採取し、標準校正したアントセンスIIで血糖値を測定した。
(4)投与3日後:経口ブドウ糖負荷試験
投与3日後の午前、絶食時のマウスの体重を測定し、午後に行う経口ブドウ糖負荷試験のグルコース投与量(1g/10mL/kg)を決定した。午後、マウスの尾採血を行い、試験直前の血糖値を測定した。次に、1g/10mLのグルコース液(ビークルは0.5%メチルセルロース水溶液)を10mL/kg経口投与し、その30、60、90及び120分後に、血糖値を測定した。血糖値の測定方法は上記(3)に記載した通りである。
投与3日後の午前、絶食時のマウスの体重を測定し、午後に行う経口ブドウ糖負荷試験のグルコース投与量(1g/10mL/kg)を決定した。午後、マウスの尾採血を行い、試験直前の血糖値を測定した。次に、1g/10mLのグルコース液(ビークルは0.5%メチルセルロース水溶液)を10mL/kg経口投与し、その30、60、90及び120分後に、血糖値を測定した。血糖値の測定方法は上記(3)に記載した通りである。
(5)血漿グルコース測定
グルコース測定キット「デタミナーGL−E」(協和メディックス)を用いて、血漿グルコースを測定した。血漿5μLを生理食塩水で20倍に希釈し、スタンダード及び検体を20μLずつ96ウェルプレートに分注した。試薬1及び試薬2を等量混合し、各ウェルに150μLずつ分注し、37℃で30分間インキュベートした後、585nmの吸光度を測定した。吸光度測定はSPECTRAMAX 340PC(モレキュラーデバイス社)を使用し、機器に付属のソフトウェアSOFTmaxPro3.1.1を用いて解析した。得られた結果をAUC(血中濃度−時間曲線下面積;0−120分)で示した(図3)。図3から明らかなように、AS−5Sを高発現させたマウスでは耐糖能が改善された。
グルコース測定キット「デタミナーGL−E」(協和メディックス)を用いて、血漿グルコースを測定した。血漿5μLを生理食塩水で20倍に希釈し、スタンダード及び検体を20μLずつ96ウェルプレートに分注した。試薬1及び試薬2を等量混合し、各ウェルに150μLずつ分注し、37℃で30分間インキュベートした後、585nmの吸光度を測定した。吸光度測定はSPECTRAMAX 340PC(モレキュラーデバイス社)を使用し、機器に付属のソフトウェアSOFTmaxPro3.1.1を用いて解析した。得られた結果をAUC(血中濃度−時間曲線下面積;0−120分)で示した(図3)。図3から明らかなように、AS−5Sを高発現させたマウスでは耐糖能が改善された。
本発明のスクリーニング方法によれば、グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物が得られる。かかる化合物は、糖尿病の治療に用いることができる。
Claims (15)
- グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物を有効成分として含有する糖尿病治療薬。
- グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1Gが存在しない条件下でグリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、
(b)(a)工程において測定された活性が、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い候補化合物を選択する工程と、
を備える方法。 - グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、
(b)グリコーゲン合成酵素と候補化合物との結合定数を測定する工程と、
(c)(a)工程において、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い活性を示し、結合定数が所定値以上の候補化合物を選択する工程と、
を備える方法。 - グリコーゲン合成酵素を直接活性化する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)グリコーゲン合成酵素と候補化合物を接触させ、グリコーゲン合成酵素の活性を測定する工程と、
(b)グルコース−6−ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3及びプロテインホスファターゼ1Gからなる群から選択される1以上の酵素に対する候補化合物の活性調節作用を測定する工程と、
(c)(a)工程において、候補化合物を用いない他は(a)工程と同様にして測定された活性よりも高い活性を示し、(b)工程においては活性調節作用を示さない候補化合物を選択する工程と、
を備える方法。 - グリコーゲン合成酵素がグリコーゲン合成酵素2である、請求項2〜4のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
- 配列番号11に記載の塩基配列からなる単離された核酸。
- 請求項6に記載の核酸が挿入されたベクター。
- 遺伝子治療用である、請求項7に記載のベクター。
- 配列番号12に記載のアミノ酸配列からなる単離されたタンパク質。
- 請求項9に記載のタンパク質を有効成分として含有する糖尿病治療薬。
- 配列番号13に記載の塩基配列からなる単離された核酸。
- 請求項11に記載の核酸が挿入されたベクター。
- 遺伝子治療用である、請求項12に記載のベクター。
- 配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる単離されたタンパク質。
- 請求項14に記載のタンパク質を有効成分として含有する糖尿病治療薬。
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