JPWO2005084433A1 - 撒き餌、それに用いる水溶性容器の製造方法及び該製造方法に使用する金型 - Google Patents
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Abstract
Description
撒き餌の材料としては、オキアミ、アミエビなどが集魚力が高いと考えられており、一般的に多く用いられている。また、魚種によってはサナギなどが集魚力を発揮することがある。実際に撒き餌を使用する際には、パン粉やオカラなどと集魚剤を混ぜることにより、狙う魚種の生息する棚に効果的に撒き餌することが可能であると考えられている。
また、残った撒き餌は海水中に廃棄されることが多く、撒き餌の材料や量によって環境汚染に繋がる場合がある。
この撒き餌による環境汚染により、魚影が薄くなり釣果が得られなくなると、釣り人はさらに多くの撒き餌を用いて釣りを行うこととなる。このため、その撒き餌によりさらに環境汚染が進むといった悪循環が発生することが危惧される。
撒き餌には、上述の問題を改善するべく以下のような事項が求められている。
(1)臭いや見た目などの取扱性が良好であること。
(2)使用量を抑えるために仕掛けと確実に同調させること。
(3)未使用の撒き餌を廃棄せずに、次回の釣りに持ち越しできること。
(4)環境汚染に繋がらない材料で構成されていること。
これらの特許文献においては、撒き餌を所定の分量だけ小分けにし、各々を水溶性容器に内蔵することが開示されており、これにより、異臭の発生を抑制することができ、取扱性を良好にすることが可能となる。
また、所定時間で水溶性容器が溶解し、該容器内の撒き餌を海水中に放出させることが可能となる。
特に、水溶性容器の材料として、特許文献1においてはポリビニルアルコール系ポリマーが、特許文献2においては、パオゲンなどの水溶性樹脂を用いた複合紙が提示されている。
また、ポリビニルアルコールにおいては、溶解速度が低いため、比較的長い時間かけて溶解した方が好ましい場合に用いられる。パオゲンにおいては、溶解速度は高いが、融点が55℃程度と低いために、取扱に注意する必要がある。また、両者は食品添加物としては未認可であり、環境への負荷も懸念される。
さらに、撒き餌を押し固めた場合においては、発泡剤を用いても十分に拡散させることが困難となるなどの問題を生じている。
さらに、本発明は、前記撒き餌に用いる水溶性容器を効率的に製造するための製造方法や、その製造方法で使用する金型を提供することを目的とする。
本発明において「水溶性多糖」とは、水中での溶解速度が調整可能な材料であり、容器を形成した際に撒き餌材料の充填作業並びに撒き餌使用時の取扱いに耐える十分な機械的強度を有し、溶解した際に自然環境への負荷が極めて少ない多糖および/またはその誘導体を意味する。
本発明において「無機性水質浄化材」とは、例えば、黒ボク、リン酸アパタイト、赤鉄鉱、リモナイトなどの水質浄化材を意味し、請求項5に係る発明のように、とりわけリモナイトが好ましく、また、該リモナイトなどの無機性水質浄化材は粒状部分又は打状部分を有することが好ましい。
また、好ましくは、該水溶性多糖および/またはその誘導体の水溶液はプルラン水溶液であることを特徴とする。さらに好ましくは、該プルラン水溶液には、発酵乳酸ナトリウムが添加されていることを特徴とする。
また、金型の「所定温度」とは、上記乾燥工程を含む各工程において、厳密に同一温度であることを意味するものではなく、金型に付着した水溶液を乾燥・硬化して水溶性容器を形成するまでの間に、金型が温度変化により変形しても、所望の水溶性容器が形成される温度範囲を含むものである。
さらに、本発明の「金型」とは、樹脂、金属などの多様な材料を利用することが可能であり、上記体積変化率の条件を満足するものであれば、特に限定されるものではない。
また、請求項9に係る発明において、好ましくは、該乾燥工程において、金型を斜めに傾けて水溶液を乾燥させることを特徴とする。
また、請求項9に係る発明において、好ましくは、該離型工程は、空気を水溶性容器内部又は外部に送り込むことにより、あるいは水溶性容器を外側から吸着することにより、金型と水溶性容器を離型することを特徴とする。
また、プルランは溶解時にゲル化することがなく、該容器内の撒き餌の放出を阻害することが少ない。しかもプルランは、食品添加物として多用されており、人体を含む自然環境にも優しい素材である。
このような、プルランを原料とする水溶性容器に、撒き餌を内臓することによって、撒き餌自体の異臭の発生を抑制することが可能となり、取扱性が良好であると共に、未使用の撒き餌を廃棄せずに、次回の釣りに持ち越しできるなど、多くの利点を有する。
特に、請求項5に係る発明のように、無機性水質浄化材としてリモナイトを用いることにより、優れた濁水性や水質浄化作用を実現することが可能となる。
また、該リモナイトなどの無機性水質浄化材は粒状部分又は打状部分を有することにより、無機性水質浄化材の単位重量当りの表面積が低下し、リモナイトなどの無機性水質浄化材の脱臭作用が低下することから、水溶性容器内に収容された魚粉などの撒き餌材料の臭いをリモナイトなどが吸収することを抑え、集魚性の低下が抑制される。
また、打状部分は、水溶性容器内の仕切り部材としても使用でき、異なる種類の撒き餌材料の分離や、撒き餌材料と他の添加剤との分離、さらには、粉体のリモナイトと臭い成分有する撒き餌材料との分離などに効果的に使用できる。
また、該水溶性多糖および/またはその誘導体の水溶液をプルラン水溶液とすることにより、プルランの優れた特性を備えた接着材料となる。しかも、このようなプルラン水溶液に、発酵乳酸ナトリウムを添加することにより、プルラン水溶液が塗布された箇所の容器が硬化せず、柔軟性を維持することが可能となる。その上、プルラン水溶液の塗布作業中に液ダレを起こすことも防止できる。
しかも、取付具の先端部を、水溶性容器を構成する2つの構造体が接着されている部分など、水溶性容器の中でも最後に溶解する部分あるいは機械的強度の高い部分に固定することにより、水溶性容器を最後まで釣り糸に保持することなどが可能となる。
これにより、プルランを主成分とする水溶性容器のように離型性が劣る場合であっても、容易に製造することが可能となる。
また、乾燥工程において、金型を斜めに傾けて水溶液を乾燥させることにより、水溶液の液ダレを防ぎ、均一な厚みの容器を形成できると共に、容器の金型から離型性を向上し、容器を離型した後に残る不要な水溶液の乾燥部分の発生も抑制することが可能となる。
より好ましくは、乾燥時に金型を回転させることにより、均一な容器の形成など上記効果をより高めることが可能となる。
さらに、離型工程は、空気を水溶性容器内部又は外部に送り込むことにより、あるいは水溶性容器を外側から吸着することにより、容易に金型と水溶性容器を離型することが可能となる。
2 リール
3 釣糸
4 釣針
5 ウキ
6 サルカン
7 水溶性容器(撒き餌内蔵)
8 誘導式サルカン
9,63,72 取付部
10,61,71 蓋部
11,60,70 胴部
12 付け餌
13 撒き餌
21 金型
22 支持体
23 窪み
24 空気穴
31 水溶液
40 恒温室
65,67,68 無機性水質浄化材
図1は、水溶性容器に内蔵される撒き餌7を誘導式サルカン8を用いてに取り付けた状態を示す概略図であり、1は釣竿、2はリール、3は釣糸、4は釣針、5はウキ、6はサルカンを示す。
水溶性容器に内蔵される撒き餌7の水溶性容器は、俵型の形状を構成する、蓋部10と胴部11により形成されている。水溶性容器の蓋部10には取付部9が設けられている。
海面から撒き餌をする場合の使用経過を示しており、図3(a)のように仕掛けを準備しキャスティングを行う。海面上では、図3(b)のように容器が溶け、中の撒き餌13を放出し始める。その後、図3(c)のように付け餌12と撒き餌13が同調し始める。最後は、図3(d)のように撒き餌を放出し終わる時期には、容器は海水中に溶解することとなる。
また、集魚剤から抽出したエキスを、浸透性の高い材料と混合して水溶性容器に内蔵することも可能である。
リモナイトは、褐鉄鉱とも呼ばれ、酸化鉄をはじめ多くのミネラル分を含むものであり、水中では、水中の過剰なリンを吸着除去し、有用なミネラルの水への付加を行う作用を持つ。このため、水質浄化(藻の分解除去や透明度の向上など)に必要なバクテリアの活動を活発にし、水質の浄化を促進する機能を有するものである。しかも、水中で容易に拡散するため、釣りに好適な濁水性も有している。
なお、上記比重は、水溶性容器の寸法から体積を計算し、水溶性容器の重量を該体積で除した数値を参考としている。
プルランは、デンプンを原料とし、黒酵母の一種であるAureobasidium pullulansを培養して得られた、マルトトリオースが規則正しくα−1,6結合した天然多糖類である。
プルランは、急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、変異原性の各試験において安全性が確認されており、我が国で使用制限のない添加物として扱われている。
プルランは、冷水、温水のいずれにも速やかに溶解し、ジメチルホルムアミドやジメチルスロホキシド以外の一般の有機溶媒には不溶である。しかも、プルラン水溶液は他の多糖類に比べ、比較的低粘性で、ゲル化することがなく、粘着性の強い溶液になる性質を有する。また、pHや各種塩類の影響を受けにくく、特に食塩に対しても安定した粘度を維持する。ホウ素やチタンの混在により粘度が急激に増大するが、この場合でもゲル化することはないという性質をもっている。
プルラン以外の水溶性材料を列挙すると、水溶性多糖としては、例えば、澱粉、α化澱粉、酸化澱粉、デキストリン、ジアルデヒド澱粉、リン酸化澱粉、エチル化澱粉、プロピル化澱粉、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースフタレートアセテート、アルギン酸、アルギン酸塩、マンナン、寒天、ペクチン、キサンタンガム、キトサン、ゲランガム、カラギーナンなどがある。
水溶性容器の製造方法及び該製造方法で使用する金型については、後で詳述する。
なお、ゲル化剤及び無機物についても、食品添加物として扱われており、安全性については確認されている。
なお、撒き餌を内蔵する水溶性容器としての目的を達成するためには、ゲル化剤の量や種類を十分に選別する必要がある。
溶解速度の調整手段として、容器の厚みを調整する方法が好ましいが、強度や成形性の点から容器の厚みの調整だけでは、目的とする溶解時間が得られない場合もあり、このような場合には、二糖類などを添加し水溶性容器の溶解を速める方法なども併用することも可能である。
また、図9(b)に示すように、リモナイト67を打状に形成し、上述した効果に加え、水溶性容器内の仕切り部材として使用することも可能である。この仕切り部材は、異なる種類の撒き餌材料の分離や、撒き餌材料と他の添加剤との分離、さらには、単位重量当りの表面積が多い粉体のリモナイト68と臭い成分有する撒き餌材料66との分離などに効果的に使用できる。なお、粉体のリモナイトは水中で速やかに拡散するため、本発明の撒き餌として好適に使用できる。
さらに、リモナイト以外の撒き餌材料の多くは、比重が水より軽い傾向があることから、リモナイトを粒状又は打状とすることにより、上述した撒き餌の比重の調整が、極めて容易に行うことが可能となる。
水溶性容器に内蔵される撒き餌を用いて釣りを行う際に、仕掛けと撒き餌を同調させるために、該容器を仕掛け付近に固定し、撒き餌を放出し終えるまでは固定し続けなければならない。また、少なくとも撒き餌を放出し終えるまで溶解しないような取付部が必要となる。ただし、取付部だけが残る場合には、新しい撒き餌を取り付ける際に、まず残った取付部を外す必要があり、外した取付部をゴミとして処分するなど、使用者としては使い勝手が悪いものとなる。
例えば、水溶性容器の蓋部10を、胴部11により溶解時間が長い構成とすることにより、放出時間中には、取付部9と蓋部10とが外れないよう設定されている。
なお、取付具の形成方法は、上述した方法に限らず、射出成形などにより構成することも可能である。
取付部の材料としては、環境への影響も考慮して、水溶性材料や生分解性材料を利用することが好ましい。プルランは、フィルム状では、ポリビニールアルコールと比較して、抗張力は約3倍、弾性率は約100倍であり、腰が強く、優れた引張り強度を有していることなどから、取付部の材料としてプルランを利用することも可能である。
また、プルランを利用することにより、取付部と水溶性容器とを同じ材料を多く含む構成すとすることで、両者の接合強度を高くすることが可能である。
接合方法としては、容器がプルランを主な成分とするため、水分もしくは蒸気によって接合する方法を採用することが可能である。あるいは、プルランを利用した糊料やテープ状シートを用いて接合することも可能である。
特に、胴部及び蓋部の2つの構造体の嵌合部の接着剤には、水溶性多糖および/またはその誘導体の水溶液、特にプルラン水溶液を用いることが好ましく、さらにはプルラン水溶液に発酵乳酸ナトリウムを添加した材料を用いることが好ましい。このような接着剤は、プルラン水溶液が塗布された箇所の容器が硬化せず、柔軟性を維持することが可能となる。しかも、接着剤が粘性を持つため、プルラン水溶液の塗布作業中に液ダレを起こすことも防止できる。
図4は、本発明に利用される金型部材の概略図である。
金型21は、ヒータを内蔵した支持体22に固定されている。ヒータは、支持体に設けるものに限らず、金型内に内蔵するよう構成することも可能である。また、このような内蔵型のヒータを用いる代わりに、金型を湯水などの高温の液体に浸漬する方法や、あるいは外部の熱源や誘導加熱手段などにより金型を加熱することも可能である。
該空気穴24の開口部の大きさは、金型を上向きで乾燥させる場合には、水溶液が空気穴に侵入することがない範囲で任意に選択することが可能である。また、空気穴の数も、1つ以上設けることも可能である。
プルランを多く含む水溶性容器のように離型性が劣る容器を形成する場合、容器の内側の体積(乾燥時の金型の体積)と、該容器に取り囲まれた金型の体積(離型時の金型の体積)とが、体積変化率で0.1%以上の差がある場合には、金型と水溶性容器との間に隙間が形成され、容器を容易に金型から離型することが可能となる。
このような体積変化は、金型の温度を変更することにより容易に達成することが可能であり、乾燥工程時の温度と離型工程時の温度との差が大きい場合には、熱膨張係数が小さい材質も、本発明の金型として利用することが可能である。
金型への水溶液の付着特性は、金型の吸水率のみに依存するものではなく、水溶液の粘性にも依存する。しかしながら、粘性が高い水溶液を用いる場合には、水溶性容器の厚みが増すと共に、容器内の部位(上部、胴部、開口部など)により膜の厚みが異なる傾向となる。特に、数十〜数百μmの範囲内で、均質な膜厚を形成する場合には、吸水率が0.1〜1%の範囲内に抑制することが好ましい。
吸水率とは、常温で24時間、乾燥した試料を水に浸漬させた場合、試料が吸収する水の重量を、試料の乾燥重量で除した割合である。
また、本発明においては、温度変化を利用して体積変化を発生させているため、金型の水溶性容器に取り囲まれた部分を均等に変化させるためには、金型の材料としては熱伝導性が高いものの方が好ましい。
図6に示すように、水溶性容器の製造方法は、浸漬工程(図6(a))、引き上げ工程、乾燥工程(図6(b))、離型工程(図6(c))により構成され、必要な膜厚を得るために、乾燥工程後に、再度、浸漬工程、引き上げ工程、乾燥工程を複数回繰り返すことも可能である。
水溶液は、水溶性容器を構成する材料を水に溶解させたものである。浸漬工程時の水溶液の温度は、常温あるいは昇温など、適宜設定することができる。ただし、100℃以上に加温すると、溶媒の水が気化し、気泡が発生する原因ともなり好ましくない。
また、水溶液は粘性を有しており、溶液中に気泡が混入する場合がある。このような気泡は、浸漬形成法では、成形体に空洞を形成する原因ともなることから、水溶液に超音波を印加する方法、あるいは、水溶液を真空中に静置させる方法などにより脱泡処理することが好ましい。
浸漬工程後は、金型を水溶液中から引き上げる、図示していない引き上げ工程に移る。引き上げ工程は、金型に付着した余分な水溶液を落とし、膜厚を均質化するために行われる。
乾燥時間は、水溶液の組成や加熱炉の温度、さらには複数回浸漬させる場合の途中の段階か最終段階かにより異なるが、離型工程に移る前には、金型と水溶性容器との離型が行える程度に、充分乾燥し硬化させることが必要である。
また、この金型の加熱は、金型に付着した水溶液の乾燥を補助する役割も期待できる。
しかも、乾燥時に金型を回転させることにより、均一な容器の形成など上記効果をより一層高めることが可能となる。
冷却温度は、恒温室40における金型の体積と比較し、体積変化率が0.1%以上となる温度を設定する。
水溶性容器に対する空気の送出は、図6(c)のように金型の内部に設けた空気穴から行うだけでなく、金型の周囲に圧縮空気の送出手段を一つ以上配置し、水溶性容器の開口部付近から、該水溶性容器を取り出す方向に向けて、空気を送出するよう構成することにより、より効果的に水溶性容器の離型を行うことが可能となる。
また、空気の送出に限らず、吸着手段を利用して、水溶性容器の外側から該水溶性容器を吸着した状態で、該吸着手段を金型から離間させることにより、水溶性容器を金型から離型することも可能である。
乾燥又は半乾燥状態の切除部は、水に溶解させて水溶性容器の原料として、再利用することが可能である。
(水溶液の製造)
プルラン(商品名PF−20,株式会社林原製)を50gを水200gに入れ、攪拌してプルランを溶解した。プルラン水溶液を一晩放置することにより脱泡処理を行い、水溶液1を得た。
ポリアセタール(製品名ポリペンコアセタール,日本ポリペンコ社製,吸水率0.2%)を用いて切削加工を施し、直径35mmの円柱状で先端部に同径の半球状の曲部を有する金型1を得た。
次に、ナイロン66(製品名ポリペンコN,日本ポリペンコ社製,吸水率8.4%)、を用いて、金型1と同様に加工し、金型2を得た。
アルミニウム(製品名A5052,住友軽金属社製,吸水率0%)、真鍮(製品名C3604,三宝伸銅工業社製,吸水率0%)、鉄(製品名SS400,新日本製鉄社製,吸水率0%)を用いて、金型1と同様に加工し、金型3,4,5を得た。
30℃の水溶液1に、90℃に加熱した金型1を15秒浸漬し(浸漬工程)、その後、金型1を水溶液から引き上げ、水溶液上で30秒間静止して余分な水溶液を落下させた(引き上げ工程)。
水溶液の付着した金型1を、水溶性容器側を上向きにして、90℃の恒温室内にて10分間加熱し、水溶液を乾燥させた(乾燥工程)。金型1を恒温室から取り出し、50℃まで冷却した後、成形された水溶性容器を金型1から取り出し(離型工程)、実施例1の水溶性容器を得た。
以下、表1に示すように、水溶液1,2と金型1〜4、並びに冷却温度とを組合わせて、実施例1と同様に成形し、実施例2〜8の水溶性容器を得た。
体積変化率は、各金型が90℃と冷却温度において示す金型の直径をノギスで測定し、算出した。
成形した各水溶性容器に関し、金型上に形成された水溶性容器の開口部付近から、該水溶性容器を取り出す方向に向けて、圧縮空気を供給し、該容器の金型からの剥がれ易さを、金型から容易に離型可能なものを○、容器の一部は剥離するが完全に離型するのが困難であるもの△、離型が全く困難であったものを×として、離型性を評価した。
成形した各水溶性容器に関し、引き上げ工程において、水溶液の金型への付着状態を目視により観察し、付着状態が良好なものを○、付着しない部分が見られるものを×として、付着性を評価した。
また、吸水率が0%となる金型3〜5を用いる場合には、水溶液の付着性が劣り、水溶液1よりプルランを多く含む粘性の高い水溶液を用いる必要がある。ただし、粘性が高い場合には、一般的に均一な厚みの膜や薄い膜を形成することが困難となる傾向にあり、金型に応じた最適な粘性を確保することが必要である。
本出願人が詳細に検証したところ、体積変化率が0.1%以上の場合には、良好な離型性が確保でき、吸水性に関しては、0.1〜1%の範囲であるなら、離型性を阻害せず、良好な付着性を確保することが可能であることが判明した。
30℃の水溶液1に、90℃に加熱した金型1を15秒浸漬し(浸漬工程)、その後、金型1を水溶液から引き上げ、水溶液上で30秒間静止して余分な水溶液を落下させた(引き上げ工程)。水溶液の付着した金型4を、水溶性容器側を上向きにして、90℃の恒温室内にて5分間加熱し、水溶液を乾燥させた(乾燥工程)。
再度、30℃の水溶液1に、90℃に加熱した上記金型1を15秒浸漬し(浸漬工程)、その後、金型4を水溶液から引き上げ、水溶液上で30秒間静止して余分な水溶液を落下させた(引き上げ工程)。水溶液の付着した金型1を、水溶性容器側を上向きにして、90℃の恒温室内にて15分間加熱し、水溶液を乾燥させた(乾燥工程)。
金型1を恒温室から取り出し、50℃まで冷却した後、成形された水溶性容器を金型1から取り出し(離型工程)、実施例6の水溶性容器を得た。
このことから、本発明による浸漬形成法を用いることにより、適切な膜厚に調整可能なことが理解される。
金型1の長軸に沿って、金型中央に直径0.5mmの空気穴を開けた金型を利用して、上記実施例1と同様に水溶性容器を成形した。
離型工程時に、該空気穴より、圧縮空気を送出したところ、水溶性容器が容易に金型から離型された。
金型4の先端から5cmの位置に、幅8mm、深さ1mmの半球形状の溝を掘り、上記実施例4と同様に水溶性容器を成形した。
引き上げ工程時の様子を観察すると、水溶液の金型への付着が不十分な部分も存在するものの、実施例4と比較して、未付着部分の範囲が大幅に縮小していることが理解された。
また、金型1に、金型4と同様の処理を施し、上記実施例1と同様に水溶性容器を形成したところ、乾燥工程時に上向きに静置した金型からの液ダレが、該溝から下への液ダレが、実施例1のものより、減少していることが確認された。
水200gに対して、プルラン(株式会社林原製、商品名PF−20)を40g、50g、60g、70g、80gと変化させた水溶液を作成し、上記実施例1と同様に水溶性容器を成形した。
また、70g以上加えた粘度の高い溶液では、容器の壁面の厚みムラが大きく、例えば、厚い部分に合わせて乾燥時間を長した場合に、薄い部分の水分含有量が極端に低くなり、容器の壁がひび割れや欠けなどの問題を生じる。さらに、容器の壁の厚みが異なる場合には、水中での溶解時間にもバラツキが生じることとなる。
ムラのなく付着性のよい水溶液としては、水200gに対するプルランの添加量は、40gより多く、70gより少ない範囲が好ましく、より最適には、プルランを50g〜60g添加した時に取扱の良好なプルラン水溶液を得ることができる。
水200gに対し、プルランを40g添加した水溶液2、該水溶液2に酸化チタン4gを添加した水溶液3、該水溶液2にカッパカラギナン2gと塩化カリウム2gを添加した水溶液4、及び該水溶液2にカッパカラギナン1gとキサンタンガム1gを添加した水溶液5とを、水溶液1と同様に調整した。
次に、実施例1と同様に金型1を用いて水溶性容器を成形し、実施例7〜10を得た。
付着性については、実施例7を基準に、付着性が良くなるものを○、若干良くなるものを△、悪くなるものを×として評価する。
乾燥性については、実施例7を基準に、乾燥が速いものを○、乾燥が若干遅いものを△、乾燥がより遅いものを×として評価する。
離型性については、実施例7を基準に、離型し易くなるものを○、離型性に差異がないものを△、離型し難くくなるものを×として評価する。
これらの評価結果を表2に示す。
また、ゲル化剤であるカッパカラギナンとゲル化補助剤である塩化カリウムを添加する場合には、実施例9のように、付着性、乾燥性、及び離型性のいずれも性能が向上することが理解される。
ゲル化剤であるカッパカラギナンとキサンタンガムとを添加する場合には、付着性及び離型性は向上するものの、乾燥性が劣る上、容器の膜厚ムラが大きくなる。
上記実施例7〜10の各容器を利用して撒き餌用の水溶性容器を構成し、該水溶性容器内に撒き餌10gを収容した撒き餌カプセルを作成した。
該撒き餌カプセルを、18℃の流れのない海水に投下し、水溶性容器内の撒き餌の放出開始時間を計測したところ、実施例7のカプセルは約2分半、実施例8のカプセル及び実施例9のカプセルは約3分、そして、実施例10のカプセルは約4分であった。
水溶性容器の溶解時間は、容器の厚みが厚くなるに従い、長くなる傾向にあり、また、ゲル化剤を添加することにより、溶解時間が遅延する傾向にあることが理解される。
しかも、本発明は、前記撒き餌に用いる水溶性容器を効率的に製造するための製造方法や、その製造方法で使用する金型を提供することができるなど、多くの利点を有するものである。
Claims (14)
- 水溶性容器に内蔵される撒き餌において、水溶性容器が水溶性多糖および/またはその誘導体を主成分とする材料で構成されることを特徴とする撒き餌。
- 請求項1に記載の撒き餌において、水溶性容器が半俵状の形状を有する胴部と蓋部とからなり、胴部の開口部分に蓋部の凸状部分を挿入するかまたは当該開口部分を蓋部の凹状部分で覆うことにより、容器を形成することを特徴する撒き餌。
- 請求項1又は2に記載の撒き餌において、該水溶性多糖および/またはその誘導体がプルランを主成分とする材料で構成されることを特徴とする撒き餌。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の撒き餌において、該水溶性容器内には無機性水質浄化材を収容することを特徴とする撒き餌。
- 請求項4に記載の撒き餌において、該水溶性容器内に収容される無機性水質浄化材がリモナイトであることを特徴とする撒き餌。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の撒き餌において、水溶性容器が嵌合して容器を形成する2つの構造体からなり、2つの構造体の嵌合部は、水溶性多糖および/またはその誘導体の水溶液で接着されていることを特徴とする撒き餌。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の撒き餌において、水溶性容器が溶解時間の異なる少なくとも2種の水溶性容器壁を有することを特徴とする撒き餌。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の撒き餌において、水溶性容器が水溶性材料又は生分解性材料による取付具、あるいは、金属製又は樹脂製の取付具を有することを特徴とする撒き餌。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の撒き餌に用いる水溶性容器の製造方法において、
水溶性容器を構成する材料を含む水溶液中に金型を浸漬する浸漬工程と、該金型を該水溶液から引き上げる引き上げ工程と、該金型に付着した水溶液を乾燥させる乾燥工程と、該金型から水溶性容器を離型する離型工程とを含む水溶性容器の製造方法であり、
該金型は、少なくとも該乾燥工程においては所定温度に維持され、該離型工程においては該所定温度より低い他の温度に保持されると共に、該所定温度と該他の温度との間で体積変化率が0.1%以上を有する材質で、少なくとも該金型の水溶性容器を形成する部分が構成されていることを特徴とする撒き餌に用いる水溶性容器の製造方法。 - 請求項9のいずれかに記載の撒き餌に用いる水溶性容器の製造方法において、該浸漬工程に利用する水溶液には、脱泡処理を施すことを特徴とする撒き餌に用いる水溶性容器の製造方法。
- 請求項9又は10のいずれかに記載の水溶性容器の製造方法に使用する金型において、少なくとも該金型の水溶性容器を形成する部分が、該所定温度と該他の温度との間で体積変化率が0.1%以上を有する材質で構成されていることを特徴とする水溶性容器の製造方法に使用する金型。
- 請求項11に記載の水溶性容器の製造方法に使用する金型において、該金型は、少なくとも該水溶液に接触する部分の吸水率が0.1〜1%の材質で形成されていることを特徴とする水溶性容器の製造方法に使用する金型。
- 請求項11又は12に記載の水溶性容器の製造方法に使用する金型において、該金型の表面には、金型の水溶性容器を形成する部分の領域近傍に、水溶液の液溜りを形成する窪みを有していることを特徴とする水溶性容器の製造方法に使用する金型。
- 請求項11乃至13のいずれかに記載の水溶性容器の製造方法に使用する金型において、該金型の内部には、金型の水溶性容器を形成する部分に繋がる空気穴を有していることを特徴とする水溶性容器の製造方法に使用する金型。
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