JPWO2004079462A1 - 仮想パワーモニタを備えることにより制御対象の安定性を評価解析する機能を備えた制御システム - Google Patents
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Abstract
Description
一方、安定性を保証するための理論的枠組みとして、物理的なシステムが有する特徴である、受動性[例えば、非特許文献1参照]が注目されている。
特定のシステムのエネルギー収支を受動性に着目して観測することによって蓄積エネルギー制限を行ない、安定性を確保しようとするシステムは、既にenergy balance monitor[非特許文献2]やpassivity observer/passivity controller[非特許文献3]として提案されている。これら従来知られたシステムの概念図を図17に示す。
ところで、一般的な制御システムにおけるハードウェアリミッタの作動を決定するための、ユーザー制御対象の安定性の評価指標は、作動領域の制限やアクチェエータへの電流制限、速度制限などであり、安定、不安定の区別が大雑把である。また、一旦リミッタが作動するとその後のシステムは制御下から逸脱し、二次的な災害を引き起こす可能性もある。たとえ災害を引き起すまでに至らなくとも、システムの再起動に多大な手間を要することが多い。
また、非特許文献2のenergy balance momnitorはマスタースレーブ間の伝送路の受動性を、非特許文献3のpassivity observer/passivity controllerはハプティックシステムの仮想空間の受動性を、それぞれ確保するものであるが、現実世界の任意の制御則、任意の制御対象、任意の外乱を含む制御システムの安定性を保証するものではなかった。
さらに、非特許文献2、3に記載されたシステムでは、ユーザー制御対象3が受動的であることを前提に、エネルギー収支の観測にもとづいてユーザー制御則5を見かけ上受動的にすることで、全体系の安定性を保証している。すなわち、ユーザー制御対象3が受動的でなければ安定性を保証することができない。ユーザー制御対象としての物理システムは多くの場合受動的であるが、例えば、アクチュエータの極性を誤って逆に接続してしまい駆動入力と逆に動くような状況には対処できない。そこまで極端な例でなくても、ユーザー制御対象に直接影響する外乱による不安定化にも、やはり対処不能である。
従って本発明では、従来技術では実現できなかった、任意のユーザー制御則によって任意のユーザー制御対象が制御され任意の外乱の影響を受けるユーザー制御システムに対して、制御性能を出来るだけ高く保ちつつユーザー制御対象の安定性を保証するシステム構成を提供することを課題とする。
又本発明は、外界からのあらゆる影響を含むユーザー制御システム全体を評価し、全体系の安定性を保証することを可能ならしめるシステム構成を提供することを課題とする。
更に本発明は、ユーザー制御対象の受動性を前提としなくともその安定性を保証し得るシステム構成を提供することを課題とする。
更に本発明者らは、
制御システムの「受動性を観測」することでこれまでその安定性を定量的に評価していた(受動性モニタ)のを、後記する通り保守的な制御則からユーザー制御対象へ仮想的に伝達されるパワー(仮想パワー)を観測してユーザー制御システムの安定性を評価解析する(仮想パワーモニタ)こととした上、受動性の評価に応じて受動性の喪失を防止する様機能していたソフトウェアリミッタを、後記する通り仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいて何らかの手段でユーザー制御システムを調整することによりユーザー制御システムからの仮想パワーの流出を制限し、ユーザー制御システムの安定性を保証する様機能する仮想パワーリミッタとし、これら仮想パワーモニタと仮想パワーリミッタとからなる仮想パワーリミッタシステムをユーザー制御システムに付加する構成とすれば、上述の受動性モニタを備えることにより制御対象の安定性を評価解析する機能を備えた制御システムを更に、制御系の安定性を保証する仮想パワーリミッタシステムとして一般化し、その適用範囲を拡張できることを見出した。この仮想パワーリミッタシステムの下では、上記受動性に着目した各制御システムの構成(後記第1実施形態参照)は、仮想パワーリミッタシステムを受動性の概念にもとづいて設計した場合の一例となる。
また本発明の仮想パワーリミッタシステムによれば、ロボットを用いて人間のパワーアシストを行なうパワーアシストシステムにおいても、人間の動特性が未知であるにもかかわらず、パワーアシストロボットから人間に流出するパワーを制限することが出来、人間に対する安全性を確保することが可能となる。
上記課題を解決可能な本発明の制御システムは、(1)ユーザー制御則によってユーザー制御対象が制御される既存のシステムにおいて、前記ユーザー制御対象からのフィードバック信号を受けて前記ユーザー制御対象へ操作量を入力するための内部制御則と、前記既存のシステムを内包する被モニタシステムの入出力から被モニタシステムの受動性を観測する受動性モニタとを備え(図1に例示)、制御対象の安定性を評価解析できるようにしたことを特徴とするものである。
(2)本発明の制御システムにおいて、ユーザー制御対象としてはロボットをはじめとした機械システムを挙げることが出来るが、これに限らず電気・電子、化学等の分野における各種システムに対しても本発明を適用することが可能である。
(3)又本発明の制御システムにおいて、被モニタシステムへの入力としては力又はトルク、被モニタシステムからの出力としては速度又は角速度を挙げることが出来るが、これに限らず、被モニタシステムへの入力は力やトルク以外の物理量、また被モニタシステムからの出力は速度や角速度以外の物理量であっても構わない。
他の物理量の例としては、気、水、油等の圧力と体積変化、電圧入力と電流出力、あるいは電流入力と電圧出力などがある。これらの入出力は、受動性が定義できる物理量の組(共役パワー対)であれば、任意に選ぶことが可能である。
(4)本発明の制御システムでは、ユーザー制御則からユーザー制御対象への操作量と、内部制御則からユーザー制御対象への操作量は、同じ物理的手段でユーザー制御対象に入力されても、異なる物理的手段で入力されても構わない(図2に例示)。異なる物理的手段の例としては、同一のロボット内の異なるモーター等を挙げることが出来る。
(5)さらに本発明の制御システムでは、ユーザー制御則からユーザー制御対象への操作量と、内部制御則からユーザー制御対象への操作量は同一の次元数を持つものであるが、これら二つの操作量の次元数は異なっていても構わない。
例えば、ユーザー制御対象が6つのモーターをもつロボットである場合に、ユーザー制御則からユーザー制御対象への操作量が6つすべてのモーターへの6次元ベクトルとして表現され、内部制御則からユーザー制御対象への操作量がそのうちの3つのモーターへの3次元ベクトルとして表現されるようなシステムであっても良い。
(6)本発明において内部制御則の条件の一つは、後述する通り受動的なシステムに対して安定性を保証し得ることであるが、必ずしもこの定義を満たさない制御則であっても、適切な制限(例えば、第1のソフトウェアリミッタ)を加えることにより内部制御則として用いることが可能である。
又本発明は、受動性モニタによる受動性の評価に応じて被モニタシステム内部において、(7)被モニタシステム出力から被モニタシステム入力への負帰還量を調整(第2のソフトウェアリミッタ,図3に例示)すること、(8)又はユーザー制御則からユーザー制御対象への操作量を調整(第3のソフトウェアリミッタ,図4に例示)することにより被モニタシステムの受動性喪失を防止するソフトウェアリミッタを備えることによって、被モニタシステムからの出力の安定性を保証するものである。
(9)さらに本発明は、受動性モニタによる受動性の評価に応じて被モニタシステム内部において内部制御則からユーザー制御対象への操作量を調整するソフトウェアリミッタを備える(第4のソフトウェアリミッタ,図5に例示)ことにより、被モニタシステムからの出力の安定性を保証し、かつユーザー制御対象の制御を継続するようにしたものである。
(10)上記ソフトウェアリミッタによる調整則を適切に定めることにより、内部制御則の不安定性をどの程度許容するか、ユーザー制御対象の不安定性をどの程度許容するか、被モニタシステムの受動性をどの程度速やかに回復させるか、又はユーザー制御則を内部制御則でどの程度代替するかを、定量的かつ任意に定めることができる。
(11)このほか、上記ソフトウェアリミッタによる調整を、被モニタシステム出力から被モニタシステム入力への負帰還量、ユーザー制御則又は内部制御則のゲインに適用することにより、負帰還量、ユーザー制御則又は内部制御則の少なくともいずれか一つのゲインチューニングを、被モニタシステムからの出力の安定性が保証されるように自動的に行なうことも可能である。
又本発明は、上述の受動性モニタを備えることにより制御対象の安定性を評価解析する機能を備えた制御システムを更に、制御系の安定性を保証する仮想パワーリミッタシステム、として一般化し、その適用範囲を拡張したことを特徴とするものである。
上記一般化された本発明の制御システムは、
(12)ユーザー制御則によってユーザー制御対象が制御されるユーザー制御システムにおいて、前記ユーザー制御対象からのフィードバック信号を受けて前記ユーザー制御対象に操作量を入力し得る保守的な制御則と、前記保守的な制御則から前記ユーザー制御対象へ仮想的に伝達されるパワーを観測する仮想パワーモニタとを備え、制御対象の安定性を評価解析できるようにしたことを特徴とするものである。
又本発明は、仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいてユーザー制御システム内部において、(13)ユーザー制御システム出力からユーザー制御対象入力への負帰還量を調整すること、(14)又はユーザー制御則からユーザー制御対象への操作量を調整することによりユーザー制御システムから仮想パワーモニタシステムへの仮想パワーの流出を制限する仮想パワーリミッタを備えることによって、ユーザー制御システムからの出力の安定性を保証することを特徴とするものである。
(15)さらに本発明は、仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいてユーザー制御システム内部において保守的な制御則からユーザー制御対象への操作量を調整する仮想パワーリミッタを付加することにより、ユーザー制御システムからの出力の安定性を保証し、かつユーザー制御対象の制御を継続するようにしたものである。
(16)その他本発明によれば、上記仮想パワーリミッタによる調整を、ユーザー制御システム出力からユーザー制御対象入力への負帰還量、ユーザー制御則又は保守的な制御則のゲインに適用することにより、上記負帰還量、ユーザー制御則又は保守的な制御則の少なくともいずれか一つのゲインチューニングを、ユーザー制御システムからの出力の安定性が保証されるように自動的に行なうことも可能である。
次に、上記仮想パワーリミッタシステムは、ロボットを用いて人間のパワーアシストを行なうパワーアシストシステムに対しても適用可能である。このとき構成される本発明の制御システムは、(17)オペレータによってユーザー制御対象が制御され、そのユーザー制御対象からのフィードバック信号を受けて前記オペレータから前記ユーザー制御対象への操作量の入力を補助するパワーアシスト制御則(=上記ユーザー制御則に相当するもの)を持つパワーアシストシステム(=上記ユーザー制御システムに相当するもの)に、前記オペレータから前記ユーザー制御対象へ伝達されるパワーを観測する仮想パワーモニタを備え、制御対象の安定性を評価解析できるようにしたことを特徴とするものである。
又本発明は、仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいてパワーアシストシステム内部において、(18)パワーアシストシステム出力から前記ユーザー制御対象入力への負帰還量を調整すること、(19)又はパワーアシスト制御則からユーザー制御対象への操作量を調整することによりパワーアシストシステムから仮想パワーモニタシステムへの仮想パワーの流出を制限する仮想パワーリミッタを備えることによって、パワーアシストシステムからオペレータに流出するパワーを制限してパワーアシストシステムからの出力の安定性を保証し、オペレータに対する安全性を確保することを特徴とするものである。
(20)その他本発明によれば、上記仮想パワーリミッタによる調整を、パワーアシストシステム出力からユーザー制御対象入力への負帰還量、又はパワーアシスト制御則に適用することにより、上記負帰還量又はパワーアシスト制御則の少なくともいずれか一つのゲインチューニングを、パワーアシストシステムからの出力の安定性が保証されるように自動的に行ない、オペレータに対する安全性を確保することも可能である。
尚以下では、本発明の説明に用いる用語につき定義をおくものとする。
はじめに「受動性」について定義する。t=0を初期時刻、tを現在時刻とし、あるシステムの入力ベクトルu(t)と出力ベクトルy(t)が同じ次元数であるとする(ともにスカラーであってもよい)。このとき、次式が成り立つならば、前記システムは受動性を満足する(あるいは、受動的である)という。ただし、式(1)において、γ0 2はある有界な正定数であり、一般にはシステムの初期時刻t=0における内部エネルギーを表わす。
「共役パワー対」とは、あるシステムの入出力として受動性を定義し得る物理量の組である。共役パワー対の例としては、力と速度、トルクと角速度、或いは電圧と電流等がある。本発明においては、必ずしもシステムが実際には受動性を満足しなくとも、受動性を定義し得る物理量の組であれば共役パワー対と呼ぶこととする。
「ユーザー制御対象」とは、本発明のユーザーが定める物理的なシステムである。共役パワー対を少なくとも一組の入出力として持つものであれば、任意のシステムをユーザー制御対象とすることができる。ただし、ユーザー制御対象は必ずしも受動的でなくてもよい。
「ユーザー制御則」とは、本発明のユーザーがユーザー制御対象を制御するために任意に定める制御則である。ユーザー制御則とユーザー制御対象の間の入出力は、必ずしも共役パワー対でなくともよく、ユーザーが任意の物理量を選択すればよい。
「既存のシステム」とは、ユーザー制御則がユーザー制御対象に操作量を入力することによって、ユーザー制御対象が制御されるシステムである。既存のシステム内部には、任意の未知の外乱が入力され得る。
尚、この「既存のシステム」には、以下説明する内部制御則、受動性モニタ或いはソフトウェアリミッタの各重み等の構成要素は含まれないものとする。
「モニタシステム」とは、内部制御則からユーザー制御対象への操作量を出力とし、ユーザー制御対象から内部制御則へのフィードバックを入力とするシステムである。モニタシステムは任意の既存のシステムに対して完全に外付けで構成することが可能である。
以下、本発明を説明するにあたっては、モニタシステムは内部制御則のほか、受動性モニタをも内包するものとする。
「被モニタシステム」とは、内部制御則からユーザー制御対象への操作量を入力とし、ユーザー制御対象から内部制御則へのフィードバックを出力とするシステムである。被モニタシステムは、モニタシステムに含まれない全ての部分(既存のシステム、外乱等)であり、受動性モニタによる受動性の観測対象となる。
「内部制御則」とは、ユーザー制御対象からの出力をフィードバックし、ユーザー制御対象に操作量を入力することにより、ユーザー制御対象が上記入力と上記出力について受動的であるならば、上記出力の安定性を保証し得る制御則である。したがって、内部制御則とユーザー制御対象の間の入出力は、共役パワー対である必要がある。内部制御則とユーザー制御対象の間の入出力と、ユーザー制御則とユーザー制御対象の間の入出力は、同じ物理量を選択してもよいし、全く無関係に選択してもよい。
「受動性モニタ」とは、モニタシステムと被モニタシステムの間の入出力から、内部制御則からの操作量入力に対する被モニタシステムの受動性を観測する手段である。
「ソフトウェアリミッタ」とは、制御システムの少なくともいずれか一部分に何らかの制限を加えることにより、制御性能を出来るだけ高く保ちつつユーザー制御対象の出力の安定性を保証することに寄与するシステム構成要素である。以下に説明する本発明の一実施形態においてソフトウェアリミッタは第1〜第4のソフトウェアリミッタからなる。
又以下に、一般化した本発明の説明に用いる用語につき定義をおく。
「ユーザー制御システム」とは、保守的な制御則からユーザー制御対象への操作量を入力とし、ユーザー制御対象から保守的な制御則へのフィードバックを出力とするシステムである。ユーザー制御システムは、仮想パワーモニタシステムによる観測対象となる。
この「ユーザー制御システム」は、先の「被モニタシステム」と同義であり、既存のシステムに加え、仮想パワーリミッタの重みその他を包含し得る概念である。ユーザー制御システム内部には、任意の未知の外乱が入力され得る。
「保守的な制御則」とは、何らかの条件(例えば受動性)を満たす任意の制御対象に対して安定性を保証し得る制御則である。さらに、保守的な制御則はユーザー制御対象からの出力をフィードバックし、ユーザー制御対象に操作量を入力し得る(仮想接続)ものである。例えば受動性にもとづいて仮想パワーリミッタシステムを設計した場合、保守的な制御則とユーザー制御対象の間の入出力は共役パワー対となるような物理量の組である。保守的な制御則は、ユーザー制御則とは別個に備えられるものであって、上記「内部制御則」に相当するものである。
尚、本発明で、「仮想的な(に)接続」とは、例えば仮想パワーモニタシステムから見ると図8に示す様に保守的な制御則104からの操作量ucsvはユーザー制御システム2に確かに接続されているように見えるのであるが、ユーザー制御システム2内部(図8の破線で囲んだ内部)では実は重みWcsvがかかっており、しかもそれは普段はゼロである(接続されていない)ことをとらえて、「仮想的」な接続であることをいっている。
また、不安定な状況が生じ、かつユーザー制御則の制御機能を保守的な制御則が代替する必要が生じた場合のみ、この操作量ucsvは実際にユーザー制御対象に接続される。しかし、たとえ接続されても、重みWcsv=1にならない限り、仮想パワーモニタ110で観測されるパワーPvと実際にユーザー制御対象3に流入するパワーの量は異なる。そう言う意味でも、「仮想」という表現をしている。
従って、上記「仮想接続」とは、必ずしも実際に操作量ucsvが入力されるかは不明であるが、少なくとも、実際に入力され得る状態に置かれていることを言っている。
「仮想パワー」とは、保守的な制御則からユーザー制御対象へ仮想的に伝達されるパワーをいう。
「仮想パワーモニタ」とは、仮想パワーモニタシステムとユーザー制御システムの間の入出力から、保守的な制御則からユーザー制御対象へ伝達されるパワー(仮想パワー)を観測し、ユーザー制御システムの安定性を評価解析する手段であって、上記「受動性モニタ」に相当するものである。
「仮想パワーリミッタ」とは、仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいて何らかの手段でユーザー制御システムを調整することにより、ユーザー制御システムからの仮想パワーの流出を制限し、ユーザー制御システムからの出力の安定性を保証するシステム構成要素をいい、上記「ソフトウェアリミッタ」に相当するものである。
また、次に示す仮想パワーモニタシステムとこの仮想パワーリミッタの総称を仮想パワーリミッタシステムという。
「仮想パワーモニタシステム」とは、保守的な制御則からユーザー制御対象への操作量を出力とし、ユーザー制御対象から保守的な制御則へのフィードバックを入力とするシステムであって、上記「モニタシステム」に相当するものである。仮想パワーモニタシステムは任意のユーザー制御システムに対して完全に外付けで構成することが可能である。
以下、本発明を説明するにあたっては、仮想パワーモニタシステムは保守的な制御則のほか、仮想パワーモニタをも内包するものとする。
以上のように本発明は、任意のユーザー制御システムに対して完全に外付けで構成でき、任意のユーザー制御システムからの出力の安定性を仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測に基づいて定量的に評価し、さらにユーザー制御システムの出力の安定性を保証するシステム構成を提供するものである。本発明によれば、安定性を保てる範囲で、ユーザー制御システムの性能を出来るだけ引き出す、或いはその性能を出来るだけ高く保つことが可能となる。
上記した本発明の仮想パワーモニタシステムの概念図は図8のようになる。ユーザー制御システム2’全体を一つの観測対象として、そこから入出力を引き出し、ユーザー制御則5とは別個に設計した保守的な制御則104を仮想的に接続している。この接続を通る仮想的なパワーを観測することで、外界からのあらゆる影響を含むユーザー制御システム2’全体を評価し、ユーザー制御システム2’からの出力の安定性を保証することが可能である。又本発明の仮想パワーリミッタシステムについては、ユーザー制御対象の受動性を前提としないため、先に挙げた逆極性のアクチュエータや外乱などが存在しても安定性を保証し得る。
更に、本発明の様に複数の制御則を持つ利点は他にもある。ユーザー制御則5は、制御性能のみを追求したアグレッシブな制御則とすることができる。すなわち、制御性能が向上するのであれば、必ずしも受動的でない制御則でも許容される。接続が仮想的であれば保守的な制御則は制御に関与しないため、保守的な制御則の設計には制御性能は考慮する必要はない。
一方、既存のシステムでは、ユーザー制御則自体の受動性を確保しようとするため、本質的に、より保守的な制御性能しか実現できないことになる。
このように、本発明は有用性が高く、広く応用が可能でかつ実装も容易である。特に、本発明は高度な制御、あるいは高度なゲイン調整を必要とするにも関わらず確実に安定性を保証する必要があるようなユーザー制御システムに対して非常に有用である。
以下、本発明につきより詳細に説明する。
図2は、本発明の制御システムの別の例を示す図である。
図3は、本発明の制御システムの別の例を示す図である。
図4は、本発明の制御システムの別の例を示す図である。
図5は、本発明の制御システムの別の例を示す図である。
図6は、本発明の制御システムの被モニタシステムを示す図である。
図7は、本発明の制御システムのモニタシステムを示す図である。
図8は、本発明の仮想パワーモニタシステムの概念図である 図9は、ユーザー制御システムに本発明の仮想パワーリミッタシステムを付加した一例を示す図である。
図10は、パワーアシストシステムに本発明の仮想パワーリミッタシステムを付加した一例を示す図である。
図11は、本発明の一実施例を示す図である。
図12は、本発明の別の実施例を示す図である。
図13は、本発明の別の実施例を示す図である。
図14は、本発明の別の実施例を示す図である。
図15は、本発明の別の実施例を示す図である。
図16は、本発明の仮想パワーリミッタシステムをパワーアシストシステムに適用した一実施例を示す図である。
図17は、従来例の制御システムの一例を示す図である。
以下では、本発明を実施する対象の代表例たるロボット制御システムにおける、本発明の一実施形態とその作用を、図1〜図7に基づき説明する。本発明に係る制御システム1は、既存のシステムexに受動性モニタとソフトウェアリミッタを付加したことをその主たる特徴とするものである。▲1▼まず受動性モニタによって制御システムの安定性を定量的に評価し得る理由を述べ、▲2▼次にソフトウェアリミッタによって被モニタシステムの出力の安定性を保証し得る理由を述べる。
尚、図1〜図5は、本発明の受動性モニタ10及びソフトウェアリミッタ(21a,b〜24a,b)の個々の構成について示すものであり、また図6及び図7に現わされた各構成要素が一体となって本発明の制御システム1が構築される。図1は既存のシステムexに内部制御則4及び本発明の受動性モニタ10からなるモニタシステム11が付与された制御システム1を、図2は図1の制御システムにおいて、ユーザー制御対象3に入力される2つの操作量が異なる物理的手段で入力される場合を、図3は図1の制御システムに本発明の第2のソフトウェアリミッタ(22a,b)を適用したものを、図4は図1の制御システムに本発明の第3のソフトウェアリミッタ(23a,b)を適用したものを、図5は図1の制御システムに本発明の第3のソフトウェアリミッタ(23a,b)及び第4のソフトウェアリミッタ(24a,b)を適用したものを表している。図6及び図7は、既存のシステムexに内部制御則4、受動性モニタ10及び第1〜第4のソフトウェアリミッタ(21a,b〜24a,b)を備えた本発明の制御システム1全体の構成を示す図である。第1のソフトウェアリミッタ(21a,b)は、図7に示す通り内部制御則4内に備えられる。第1のソフトウェアリミッタは、重み調整則21a及び重み21b(Wd)からなる。重みWdは調整則21aに接続され、これにより制御される。重み調整則21aには、目標値入力yd及びユーザー制御対象3の出力yが入力される。重みWdには、ユーザー制御対象3の出力yが接続される。又重みWdからの出力は、PI制御則等の制御則6からの出力と共に、内部制御則4からの出力として受動性モニタ10及び図6の被モニタシステム2に入力される。内部制御則4に内蔵される第1のソフトウェアリミッタは図1〜図5に示す制御システム1にも適用され得るものであり、以下の説明では図1〜図5の内部制御則4には第1のソフトウェアリミッタ(21a,b)は内蔵されていると考える。
[受動性モニタ]
はじめに、本発明の受動性モニタにつき、図1に基づき説明する。図1に示す制御システム1は、任意のユーザー制御則5によってユーザー制御対象3が制御される既存のシステムexを内包する被モニタシステム2に、ユーザー制御対象3へ操作量を入力し得る内部制御則4と、被モニタシステム2の入出力から被モニタシステムの受動性を観測する手段たる受動性モニタ10とからなるモニタシステム11を備えたものである。ユーザー制御則5へは、外部よりユーザーが目標値ydを実現するために定める入力S、またユーザー制御対象3からの任意のフィードバックが入力され得る。ユーザー制御則5からの出力(操作量)uusrは、内部制御則4からの操作量uintと共にユーザー制御対象3へ入力される。ユーザー制御対象3からの出力yは、受動性モニタ10及び内部制御則4に入力される。このほか、内部制御則4には、目標値入力ydが入力され得る。内部制御則4からの操作量uintは、受動性モニタ10の他、重みWintを介してユーザー制御対象3へと入力される。受動性をモニタするだけの場合、図中の重み24b(Wint)は定数として良い。尚、Wint=0とすることで、外付けしたモニタシステム11が既存のシステムexに対して何ら影響を及ぼさないようにできる。
また、図中のユーザー制御則5からユーザー制御対象3への操作量と、内部制御則4からユーザー制御対象3への操作量は、同じ物理的手段でユーザー制御対象に入力されても、異なる物理的手段で入力されてもよく、異なる物理的手段で入力される場合の様子を図2に示す。後に説明する図3〜5、図14も同様である。
図1のユーザー制御対象3として、n自由度(回転モーターをn個持つ)ロボットを考える。このロボットの関節駆動トルクをu(t)とし、関節変位をq(t)とする。このロボットを目標軌道qd(t)に制御することを考える。ただし、u(t)、q(t)、qd(t)はそれぞれn次元ベクトルである。このとき、ユーザー制御対象3への入力は関節駆動トルクu(t)であり、ユーザー制御対象3からの出力y(t)は以下に示すように関節角速度で表わされる。yd(t)は、関節角速度の目標軌道である。また、本発明の制御システムにおいて、時間t以外の全ての値は有界であるとする。
上記ユーザー制御対象3について適当なユーザー制御則5を定めて既存のシステムexを構成した上で本発明を適用すると、図1〜図5又は、図6及び図7のようなシステムとなる。本システムにおいて、内部制御則4は以下のように定義される。
これは、yについてのPI制御則となっている。ただし、qについて考えると、以下の式(4)のようなPD制御則とみなすことができる。
以下では、表記の簡略化のため、式(5)で内部制御則4を表現する。尚、uin tは内部制御則4からの操作量を示すn次元ベクトルである。Kpは、qに対する比例ゲインを表わすn行n列の対角行列、Kdは、qに対する微分ゲインを表わすn行n列の対角行列、Wdは、内部制御則4に内蔵された本発明の第1のソフトウェアリミッタ(21a,b)の調整係数21b(重み)を表わすn行n列の対角行列である。ソフトウェアリミッタについては後程説明する。
本発明の提供する受動性モニタは、対象となる被モニタシステム2全体の蓄積エネルギーEを観測することにより、任意のユーザー制御則5、外乱等の任意の環境を含む制御システムの安定性の評価指標を与えるものである。本発明者らは、制御システムの安定性を評価するために「受動的なシステムはPD制御によって漸近安定となる」という特徴より端を発し、これより、被モニタシステム2の受動性が満足されれば、そのシステムの出力yが漸近安定だと言えることを見出した。そのため被モニタシステム2の受動性をモニタすることで、システムの安定性の評価指標とすることができる。
ここで、本発明に係る受動性モニタ10は、以下のように表現される。
尚、Eは、被モニタシステム2内部の蓄積エネルギーを表わす。受動性の定義の式(1)から、以下の式が成り立てば、被モニタシステムが受動的であるといえる。E0は、ユーザーが適当に定める被モニタシステム初期内部エネルギーである。
以下、本発明の受動性モニタ10において、式(7)でEを評価することの物理的な意味を考える。式(5)、(6)から、
ただし、目標値からの誤差として、以下のようにqeとyeを定義した。
ここで便宜上、内部制御則4のqに関するPD制御をバネダンパとみなすと、P制御のバネのポテンシャルエネルギーは、次式のようになる。
式(8)(10)より、被モニタシステム2の受動性を表わす式(7)は、次式と等価であることが分かる。ただし、Ep0=Ep(0)である。
ここで、適当に定めた定数Epmaxに対して、上述した重みWdの調整則21aを下記(12)式に定めるように考える。このように考えることで、たとえ被モニタシステム2に対して適用される内部制御則4が時変の場合であって、過大な目標値入力ydが何らかの機会に内部制御則4に入力された場合であっても、第1のソフトウェアリミッタが働き、重みWdを増加させ、時不変の場合と同様に被モニタシステム2の出力yの安定性を保証出来る。
時間t以外の全ての変数が有界であることから、時間の経過によって、上記の不等式を常に満たすようなWdは決定可能である。このとき、式(11)、(12)から、次式が得られる。
式(13)の左辺第一項は、時刻tにおいてP制御のバネに蓄積されているポテンシャルエネルギー、第二項は、D制御のダンパで散逸したエネルギーの総量である。この不等式が成り立つ場合、ダンパで散逸したエネルギーは必ず正で単調増加し、またその上限が右辺の定数Epmaxで抑えられているため、左辺第一項のポテンシャルエネルギーは、漸近的に減少することがわかる。すなわち、被モニタシステム2を受動性モニタ10で観測し、その受動性が満足されるならば、式(13)の不等式も等価に成り立つため、関節変位qの漸近安定性が示されることとなる。
従って、受動性モニタ10でEを計算し、被モニタシステム2が受動的であると評価されれば、被モニタシステム2の出力yの漸近安定性も保証されることが分かる。
一方、被モニタシステム2が受動的でなければ、被モニタシステム2の出力yの安定性は必ずしも保証されず、受動性モニタ10からの出力Eが小さくなればなるほど、被モニタシステム2はエネルギーを発生し、不安定になっていくと評価される。
また、上記安定又は不安定の判定の閾値となる式(7)のE0は、ユーザーが任意に設定できる値であり、被モニタシステム2の初期内部エネルギーという物理的な意味が明確な量であるため、定量的な評価が可能である。同様に、式(12)で表される重み調整則の定数Epmaxも、PD制御のバネダンパが持つエネルギーの上限という、物理的な意味が明確な定量的評価が可能である。
[ソフトウェアリミッタによる安定性の保証]
次に、ソフトウェアリミッタによる被モニタシステムの出力の安定性の保証について説明する。図1の制御システムに本発明の第1〜第4のソフトウェアリミッタ(21a,b〜24a,b)を適用した制御システム全体を、図6及び図7に分けて示す。また、第1のソフトウェアリミッタのほか、第2のソフトウェアリミッタ(22a,b)を適用したものを図3、第3のソフトウェアリミッタ(23a,b)を適用したものを図4、さらに第3及び第4のソフトウェアリミッタ(23a,b、24a,b)を適用したものを図5に示す。
各ソフトウェアリミッタの接続について、図6及び図7に基づき説明する。第1のソフトウェアリミッタは図7に示され、その接続は上で説明した通りである。第2〜第4のソフトウェアリミッタにつき説明する。これらも、重み調整則(22a〜24a)及びそれにより決定、制御される重みWv,Wusr,Wint(22b〜24b)からなる。各重み調整則(22a〜24a)には、受動性モニタ10の出力Eが入力される。重みWv,Wusr,Wintにはそれぞれ、ユーザー制御対象3からの出力y、ユーザー制御則5からの操作量uusr、そして内部制御則4からの操作量uint入力される。重みWv,Wusr,Wintからの出力は、ユーザー制御対象3に入力される。ここで、重みWusrからユーザー制御対象3への入力と重みWintからユーザー制御対象3への入力とは、図6の様に同じ物理的手段で入力されるか、或いは図3〜図5で表す様に異なる物理的手段で入力される。
図6及び図7の制御システム1において、ユーザー制御対象3への入力uは、以下のようになる。
ここで、Uusrはユーザー制御則5からの操作量を示すn次元ベクトル、yは被モニタシステム2からの出力を示すn次元ベクトル、Udisは、外乱からの入力トルクを示すn次元ベクトルである。Wvは本発明の第2のソフトウェアリミッタ(22a,b)の調整係数22b(重み)である。Wusrは本発明の第3のソフトウエアリミッタ(23a,b)の調整係数23b(重み)である。Wintは本発明の第4のソフトウェアリミッタ(24a,b)の調整係数24b(重み)を表わす。上記Wv、Wusr及びWintは、n行n列の対角行列からなる。
また、重みWintの調整則を次式のようにする。
ただし、Iはn行n列の単位行列である。このとき、式(6)、(7)、(14)及び(15)から、次式が得られる。
この式は式(7)と等価であるため、この式が成り立てば、被モニタシステム2の受動性が満足される。今、ユーザー制御対象3がロボットであり、ロボットに対しては入出力間に受動性が成り立つため、右辺第二項には式(1)のような下限が定まっている。従って、もし式(16)が満たされないような状況が生じた場合でも、重みWusrの調整則として、Wusrが漸次0に近付いて行くものを選び、さらに重みWvの調整則として、Wvが漸増して行くものを選べば、時間tを除く全ての値が有界であることから、時間の経過によって式(16)を成立させる重みWusrとWvが必ず存在する。このWusrとWvをリミッタの重みとすれば式(16)が成り立ち、それはすなわち被モニタシステム2が受動的であることと等価である。被モニタシステム2が受動的である場合、内部制御則4によって被モニタシステム2の出力yの漸近安定性が保証されるのは前述の通りである。従って、ソフトウェアリミッタによって、出力yの漸近安定性が保証されることが示された。
尚、ロボットのような入出力間に受動性が成り立つユーザー制御対象でないと被モニタシステムの受動性が示せない、という訳ではなく、もし受動性を満足しないユーザー制御対象であっても、WusrとWvを調整して式(16)を満足することが可能であれば、問題なく被モニタシステムの受動性が成り立つ。
ソフトウェアリミッタの重み調整則(21a〜24a)によって上記のように調整されたWd、Wv、Wusr、Wint(21b〜24b)をゲインとして含めた形で、内部制御則4、ユーザー制御則5を更新することにより、重み調整則(21a〜24a)を、漸近安定性を常に確保し得る自動ゲイン調節機構として使用し得る。これによって、試行錯誤することなく、また不安定となることなく、適切なゲインチューニングが可能となる。
2.第2実施形態
次に、上記した受動性モニタとソフトウェアリミッタからなるシステムを一般化して新たに規定した、制御系の安定性を保証する仮想パワーリミッタシステムにつき説明する。
まずはじめに本発明の仮想パワーリミッタシステムの構成要素の一つである仮想パワーモニタ(第1実施形態の受動性モニタ10に相当)につき説明する。
図8に、仮想パワーモニタ110を付加したユーザー制御システム2’を示す。ユーザー制御則5とは別個に設計した保守的な制御則104からの制御入力をucsv(t)とする。保守的な制御則104からの制御入力ucsvは必ずしも実際にユーザー制御対象3に入力される必要はなく、その接続は仮想的なものである。
ここで、仮想パワーモニタ110における観測量を次式のように定義する。
このPvは、保守的な制御則104からユーザー制御対象3へ仮想的に伝達されるパワーである。ただし、ここで言うパワーは、必ずしも[W]で表わされる物理量とは限らない。仮想パワーモニタの観測結果Pvから、ユーザー制御システム2’の安定性を評価することが可能である。
又本発明の仮想パワーリミッタシステムを構成するもう一つの重要な要素である仮想パワーリミッタ(第1実施形態のソフトウェアリミッタに相当)につき説明する。
図9に仮想パワーリミッタシステム100の概念図を示す。仮想パワーリミッタ102は、観測量Pvにもとづいてユーザー制御システム2’を調整することで、ユーザー制御システム2’の安定性を保証するものである。本実施形態では、仮想パワーリミッタ102は各重み122b,123b,124b(Wv,Wu sr,Wcsv)と重みの調整則(図中のユーザー制御システム調整則に相当)120から構成される。
次に、本発明の一実施形態として受動性の概念にもとづいて仮想パワーリミッタシステム100を設計し、ユーザー制御システム2’の安定性を保証できることを示す。尚受動性の定義は式(1)の通りである。
まず、ユーザー制御システム2’の安定性を評価するために、観測量Pvから計算される以下の量を考える。
このEvは、保守的な制御則104からユーザー制御システム2’側へ仮想的に伝達されるエネルギーである。
またユーザー制御システム2’の安定性の評価基準として次式を導入する。但しEv0は予め定める任意の定数である。
ここで、上の式(19)が成立しない状況は、物理的にはユーザー制御システム2’がエネルギーを発生し、パワーが過大に流出していることを意味する。このとき、ユーザー制御システム2’について、イ) 内部の散逸エネルギー増加、ロ) 内部の発生エネルギー減少のいずれかの戦略によって、式(19)を成立させる方向にユーザー制御システム2’を調整することができる。
第一の戦略を実現するには、ユーザー制御システム2’内部に調整可能なエネルギー散逸要素を付加し、散逸エネルギーを増加させることが考えられる。第二の戦略を実現するには、エネルギー発生要素となっている可能性の高いユーザー制御則5を、より保守的な制御則にすることで、発生エネルギーを減少させることが考えられる。
仮想パワーリミッタは、観測量Pvに応じて上述の戦略を適用し、ユーザー制御システム2’からのパワーの流出を制限する。保守的な制御則104からの制御入力(操作量ucsv)との接続が仮想的であるか否かに関わらず、式(19)が常に成立するようにユーザー制御システム2’を調整することができれば、全体系はロバストな制御系となり、安定性が保証される。
[i) ユーザー制御システムたるロボット制御システムに本発明を適用する場合]
次に、ロボット制御システムに本発明の仮想パワーリミッタシステム100を適用した例につき説明する。先の図9はその構成例を示すブロック図である。ここでユーザー制御則5の詳細や、ユーザー制御対象3としてのロボットハードウェアの動特性は未知であるものとする。但しロボットの各関節速度y(t)はセンサによって測定可能であり、対応する各関節アクチェエータへのユーザー制御則からの制御入力uusr(t)は調整可能であるものとする。又ここでyとucsvは共役パワー対をなしている。
ロボットハードウェアに実際に加わる駆動力uは、
となる。udis(t)は外乱などの未知の入力である。uv(t)=−Kvy(t)はユーザー制御対象に接続される負の出力フィードバックであり、Kvはそのゲインの正の対角行列である。
ところで、上式(20)は、先の式(14)に対応するものであるところ、両者を比較すると重みWvに関する表記が相違している。これは、先の式(14)にかかる表示では、重みWvには前記のゲインの行列Kvの要素が既に内包されている一方、上式(20)の表示では、重みWvには前記のゲインの行列Kvの要素は内包されておらず、上でuv(t)=−Kvy(t)と示した通り、Kvの要素は重みWvとは別にされていることによるものである。
したがって、本発明の第1実施形態を表示する図3及び図6では、ユーザー制御対象の入出力間に接続される負の出力フィードバックの箇所においては重みWvのブロック22bのみが表示されている一方、本発明の第2実施形態を表示する図9〜16では、ユーザー制御対象の入出力間に接続される負の出力フィードバックの箇所においては重みWvのブロック122bの他に負の出力フィードバックのゲイン−Kvのブロック122cが表示されている。
なお、Wusr(Pv)、Wcsv(Pv)、Wv(Pv)は、仮想パワーリミッタを構成する可変重みを表わす正の対角行列である。Wusr、Wcsvの対角要素は0以上1以下であり、Wcsv=I−Wusrとしておく。Iは単位行列である。
保守的な制御則104としては、例えば次の各軸PD制御を選択する。
Kp、Kdは正の対角行列である。qdは各関節変位の目標値指令であり、ユーザー制御則への目標値指令と原則として一致させておく。
このとき、式(20)から、安定性の評価基準(19)は次式と等価となる。
上式から、Pvの観測で式(19)を逸脱しそうな状況を検知した場合、Wusrを0に近づけ、Wvを大きくすることによって、式(19)を成立させるようにユーザー制御システム2’を調整可能なことが分かる。
未知の外乱の影響yTudisやロボットハードウェアの未知の動特性の影響yTuを抑え込んで、式(19)を常に成立させることができれば、各軸PD制御則(21)から全体系の出力消散性が示され、未知のロボット制御システムの安定性が保証される。
[ii) パワーアシストシステムに本発明を適用する場合]
又更に、上記と同様のロボットを用いて人間のパワーアシストを行なうパワーアシストシステム(=上述のユーザー制御システム2’に相当するもの)に本発明の仮想パワーリミッタシステムを適用した例につき説明する。従来知られたパワーアシストシステムでは一般に、人間という未知の動特性をフィードバックループ内に含むために、安定性を保証することは難しいとされているところ、本発明を適用すれば人間の動特性が未知であるにもかかわらず、パワーアシストシステムから人間に流出するパワーを制限することが出来、仮想パワーリミッタによって人間に対する安全性を確保することが可能になる。
図10はパワーアシストシステム150に本発明の仮想パワーリミッタシステム100を適用した一例を示すブロック図である。
パワーアシストシステム150に本発明を適用する場合、保守的な制御則104には次に示す人間の操作力を適用する。
これはパワーアシストロボット103(=上述のユーザー制御対象3に相当するもの)に人間が直接加える操作力である。パワーアシストシステム150では、人間(オペレータH)とパワーアシストロボット103は力学的に直接接続されているので仮想的な接続とすることはできず、仮想パワーリミッタの重みWcsv=Iとなる。本実施形態に於いては、ユーザー制御則(図10の111に相当する, 以下、パワーアシストシステム150に本発明を適用する場合においては、パワーアシスト制御則と称することとする)には以下に示す様に最も簡単なパワーアシスト制御則が用いられていることとする。他のもっと高度なパワーアシスト制御則でも良い。
尚Kusrはパワーアシストゲインを表わす正の対角行列である。これらを式(20)に代入すると、パワーアシストロボット103に加わる駆動力は次式のようになる。
上式(25)から、安定性の評価基準(19)は次式と等価となる。
従ってパワーアシストシステムの場合も、仮想パワーリミッタの重みWusrを0に近づけ、Wvを大きくすることによって、式(19)を成立させるように調整可能なことが分かる。これは、仮想パワーリミッタシステム100によって、パワーアシストが不安定にならないような自動ゲインチューニングを実現していることに相当する。
このように本実施形態によれば、人間の動特性が未知であるにもかかわらず、パワーアシストシステム150から人間(オペレータH)に流出するパワーを制限することが出来、仮想パワーリミッタによって人間に対する安全性を確保することが可能になる。
尚、上記した第2実施形態のi)及びii)の各例において、必ずしもロボットハードウェア(3,103)の受動性を仮定しなくても、受動性の概念にもとづいて仮想パワーリミッタシステム100を設計した場合において、可変重み122b,123b,124b(Wv,Wusr,Wcsv、尚パワーアシストシステム150の場合,Wcsv=I)の調整によって式(22)や式(26)さえ満足すれば、受動的でないユーザー制御対象に対しても安定性を保証することが可能となる。
尚、各重みの調整則は、図9に示す通りユーザー制御システムに本発明の仮想パワーリミッタシステム100を適用する場合にはユーザー制御システム調整則120と、図10に示す通りパワーアシストシステムに本発明の仮想パワーリミッタシステム100を適用する場合にはパワーアシストシステム調整則120’というものとする。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施例について説明する。
尚、以下の各例の説明においては、先に示した図1〜図10と同一のものには同一符号等を付して説明するものとする。
[第1例]
基本適用例
図11は、本発明の仮想パワーリミッタシステムを適用したモーター制御システムの一例を示すブロック図、図12は、本発明の仮想パワーリミッタシステムを適用した空気圧シリンダシステムの一例を示すブロック図である。
図11に示すモーター制御システム40は、ユーザー制御対象3となるモーターM及びモータードライバMDと、ユーザーへの開放部分であり、ユーザー制御則5をモーターMへ入力するためのコントローラCと、本発明の仮想パワーリミッタシステム100とからなっている。尚モータードライバMDには適宜市販のものを使用し得る。
仮想パワーリミッタシステム100は、仮想パワーモニタシステム101と仮想パワーリミッタ102とからなっており、アナログ若しくはデジタル電子回路からなるハードウェアの形で、若しくはマイクロコンピュータ等の演算装置に格納されたプログラムからなるソフトウェアの形で、又はこれらを組み合わせた形で構成されている。
仮想パワーリミッタシステム100のシステム構成その他詳細については、先に第2実施形態i)として図8及び図9に基づき説明した通りである。コントローラCにおけるユーザー制御則5には、ユーザーからの任意の入力Sや、モーターMの出力からの任意のフィードバックが入力される。又仮想パワーリミッタシステム100には、ユーザー制御則5からのユーザートルク指令uusr、保守的な制御則104への入力yd及びモーターMの出力情報yが入力される。仮想パワーリミッタシステム100からは、ユーザー制御対象3へトルク指令uが与えられる。本例ではモーターMの出力情報yはモーターの角速度であり、公知のエンコーダ又はタコメータ等を用いた角速度センサ108により仮想パワーモニタシステム101と仮想パワーリミッタ102にその情報がフィードバックされる。又本例では、保守的な制御則104への入力ydは目標角速度とされる。
仮想パワーリミッタ102は、ユーザー制御システム調整則120と、それによって調整される重み122b〜124b(Wv、Wusr及びWcsv)とからなっている。又ユーザー制御システム調整則120は仮想パワーモニタ110の出力Pvと繋がっている。重み122b〜124b(Wv、Wusr及びWcsv)にはそれぞれ、調整する対象である出力y、ユーザー制御則5からのユーザートルク指令uusr及び保守的な制御則104からの操作量ucsvが入力される。
図12に示す空気圧シリンダシステム80の構成についても、図11に示すモーター制御システム40と同様である。ここで、ユーザー制御対象3は空気圧シリンダACとなっているほか、更に各指令は圧力指令となっている。尚、空気圧シリンダACには、弁V1から圧力指令値(電流値)に比例した正負の圧力が供給され、ピストンPが伸縮するようになっている。
本例では空気圧シリンダACの出力情報yはシリンダの体積変化速度ΔVであり、適宜センサ107により仮想パワーモニタシステム101と仮想パワーリミッタ102にその情報がフィードバックされる。又本例では、保守的な制御則104への入力ydは目標体積変化速度とされている。
次に、本例に係るモーター制御システム40の動作について図11を参照しながら説明する。
はじめに、ユーザーはコントローラCより、例えばモーターの角速度に関し、時間を横軸にとった制御入力(任意の入力S)を与える。通常、ユーザー制御システム2’が安定な状態にあれば、コントローラCから出たユーザー制御則5によるユーザートルク指令uusrは、仮想パワーリミッタシステム100内で何ら新たな処理を施されることなくそのままユーザー制御対象3に対する入力(トルク指令)u=uusrとしてモータードライバMDに与えられ、モーターMは制御・運転される。このとき、仮想パワーリミッタ102の重み123b(Wusr)=1である。このように、uusrのみによってユーザー制御システム2’の安定性が保たれているならば、保守的な制御則104からの操作量ucsvが必ずしもモーターMへ入力される必要はない。従ってユーザー制御則5による入力uusrが保守的な制御則104からの操作量ucsvを必要とせず、かつユーザー制御システム2’が安定ならば、重み124b(Wcsv)=0とすることで保守的な制御則104を仮想パワーモニタ110への入力としての役割のみに制限出来る。この場合であっても、仮想パワーモニタ110にはモーターMの出力情報y及び保守的な制御則104からの操作量ucsvが入力され、仮想パワーモニタ110によるユーザー制御システム2’の安定性のモニタリングが継続して行われる。
一方、ユーザー制御システム2’が不安定になった場合は、仮想パワーリミッタ102を適切に動作させれば、ユーザー制御システム2’の出力yを漸近安定とすることができる。仮想パワーリミッタ102は、仮想パワーモニタ110の出力Pvに応じ、これに繋がっているユーザー制御システム調整則120を働かせ、それにより各重み122b〜124b(Wv,Wusr,Wcsv)を決定し、制御を継続しつつユーザー制御システム2’の出力yを安定にする様動作する。
このように、本例に係るモーター制御システム40によれば、仮想パワーリミッタシステム100の働きにより、常にユーザー制御システム2’の出力yの漸近安定性が保証されることとなる。
[第2例]
電気・電子制御システムへの適用例
図13は、本発明を電気・電子制御システムに適用した一実施例を表わすものである。電気・電子制御システムとしては、[第1例]に示すような回転電気機械を制御するシステムに限らず、通信用電源システム等、多様なものを想定できる。
この第2例に係る電気・電子制御システム50は、ユーザー制御対象3となる電気・電子制御対象EEと、ユーザーへの開放部分であり、ユーザー制御則5を電気・電子制御対象EEへ入力するためのコントローラCと、本発明の仮想パワーリミッタシステム100とからなっている。電気・電子制御対象EEは、制御電圧源VS、電流計AM、及び所望の負荷Rからなる。仮想パワーリミッタシステム100は、仮想パワーモニタシステム101と仮想パワーリミッタ102とからなっており、第1例同様、ハードウェア若しくはソフトウェア又はこれらを組み合わせて構成されている。
この第2例に係る電気・電子制御システム50の基本構成及びその動作は[第1例]のモーター制御システム40と同様である。
制御電圧源VSは、仮想パワーリミッタシステム100からのユーザー制御対象3への入力(電圧指令)uに従ってコントロールされ、所望の負荷Rに流れる電流を調節する。所望の負荷Rに流れる電流yは電流計AM又はシャント抵抗で検出され、その値は仮想パワーリミッタシステム100内の負の出力フィードバックのゲイン122c(−Kv)と保守的な制御則104と仮想パワーモニタ110とに入力される。又仮想パワーモニタ110には、同時に保守的な制御則104からの操作量ucsvも入力され、y及びucsvを用いてユーザー制御システム2’の安定性を監視する。
コントローラCにおけるユーザー制御則5には、ユーザーからの任意の入力Sや、電気・電子制御対象EEの出力からの任意のフィードバックが入力される。又仮想パワーリミッタシステム100には、ユーザー制御則5からのユーザー電圧指令uusr、保守的な制御則104への入力yd及び電気・電子制御対象EEの出力情報yが入力される。又本例では保守的な制御則104への入力ydは目標電流とされる。目標電流の値としては例えば定格電流値が挙げられる。
次に、この第2例に係る電気・電子制御システム50の動作につき図13を参照しつつ説明する。
通常、電気・電子制御システム50が安定な状態にあれば、コントローラCから出たユーザー電圧指令uusrは仮想パワーリミッタシステム100内で何ら新たな処理を施されることなくそのままユーザー制御対象3に対する電圧指令u=uusrとして制御電圧源VSに入力され、これによって電気・電子制御対象EEは制御される。即ち、ユーザー制御則5と電気・電子制御対象EEの間のフィードバック制御により、所望の負荷Rに流れる電流出力が足りない場合にはユーザー電圧指令uusrを上昇させ、電気・電子制御対象EEへの電圧指令uの値を上げて電流出力が増える様にする一方、電流出力が過多の場合にはユーザー電圧指令uusrを下げ、電気・電子制御対象EEへの電圧指令uの値を下げて電流出力が減る様にする。
一方、ユーザー制御システム2’が不安定になった場合は、仮想パワーリミッタ102を適切に動作させれば、ユーザー制御システム2’の出力yを漸近安定とすることができる。仮想パワーリミッタ102は、仮想パワーモニタ110の出力Pvに応じ、これに繋がっている仮想パワーリミッタ102の各重みの調整則となるユーザー制御システム調整則120を働かせ、それにより各重み122b〜124b(Wv,Wusr,Wcsv)を決定し、制御を継続しつつユーザー制御システム2’の出力yを安定にする様動作する。
このように、本例に係る電気・電子制御システム50によれば、仮想パワーリミッタシステム100の働きにより、常にユーザー制御システム2’の出力yの漸近安定性が保証されることとなる。
[第3例]
ユーザー制御対象に入力される操作量が異なる物理的手段で入力される場合
本例に係るモーター制御システム60は、主モーターMMの制動や補助を行うために、主モーターMMの出力軸とトルク伝達手段Tを介して物理的に連結された副モーターSMと、これと電気的に接続された副モータードライバSDとを[第1例]のモーター制御システムに追加したものである。尚本例では、この副モーターSMと副モータードライバSDは仮想パワーリミッタ102の一部を構成している。以下、図14を中心に説明する。
構成
図14は、ユーザー制御対象3に入力される操作量が異なる物理的手段で入力されるモーター制御システムの一例を示すブロック図である。本例に係るモーター制御システム60も、先の[第1例]のモーター制御システム40同様、ユーザー制御対象3となる主モーターMM及び主モータードライバMDと、ユーザーへの開放部分であり、ユーザー制御則5からの指令を主モーターMMへ入力するためのコントローラCと、本発明の仮想パワーリミッタシステム100とからなっている。
仮想パワーリミッタシステム100は、前記各例と同様、仮想パワーモニタシステム101と仮想パワーリミッタ102とからなっているが、本例の場合、仮想パワーリミッタ102は、仮想パワーモニタ110に接続されたユーザー制御システム調整則120並びにこれに接続される各重み122b及び124b(Wv,Wcsv)と、副モーターSM及び副モータードライバSDとからなっている。コントローラCにおけるユーザー制御則5には、ユーザーからの任意の入力Sや、主モーターMMの出力からの任意のフィードバックが入力される。仮想パワーリミッタシステム100には保守的な制御則104への入力yd及び主モーターMMの出力情報yが入力される。本例では保守的な制御則104への入力ydは目標角速度とされる。
[第1例]及び[第2例]では、図11〜13を参照すれば明らかな様に、ユーザー制御則5からユーザー制御対象3への操作量uusrと保守的な制御則104からユーザー制御対象3への操作量ucsvとは、ユーザー制御対象3へ入力される前に仮想パワーリミッタ102内で処理され、ユーザー制御対象3へは1つの指令値が入力される。従って、保守的な制御則104からの操作量とユーザー制御則5からの操作量とは物理的に同一の手段でユーザー制御対象3に入力されている。
一方、本例では、保守的な制御則104からの操作量とユーザー制御則5からの操作量とは以下の様に物理的に異なる手段でユーザー制御対象3に入力されている。
すなわち、
i) 操作量uusrは、ユーザー制御則5から直接、ユーザー制御対象3である主モーターMMのモータードライバMDへと入力される。
ii) 一方、操作量ucsvに関しては、重み124b(Wcsv)を経た後、別の重み122b(Wv)からの信号(ユーザー制御システム2’からの出力yの負帰還信号)と合成され、この合成信号(副モータートルク指令)u’の形で、主モーターMMとは別の副モーターSMの副モータードライバSDへと入力される。この副モータートルク指令u’は、副モータードライバSD及び副モーターSMを介して機械的な操作量uに変換されたのち、ユーザー制御対象3たる主モーターMMの出力軸側へ、トルク伝達手段Tの様な機械的手段を介して入力される。
このように、本例では保守的な制御則104からの操作量とユーザー制御則5からの操作量とは物理的に異なる手段でユーザー制御対象3に入力されている。
また本例では、1)ユーザー制御対象3からの出力yの信号は、主モーターMMの出力軸とトルク伝達手段Tを介して機械的に連結され、主モーターMMの出力回転数に相応した回転数で回る副モーターSMの回転軸側より取り出される。
さらに本例では、2)ユーザー制御則5とユーザー制御対象3間に備えられる仮想パワーリミッタの重みWusrが省略されている。
このように、本例ではユーザー制御対象3と仮想パワーリミッタシステム100との間は電気的に直接接続されておらず、副モータードライバSD、副モーターSM及びトルク伝達手段Tからなる機械的接続のみが存在する。
動作
以下では、この第3例に係るモーター制御システム60の動作に付き説明する。
最初に、副モーターSMの動作及びその作用に付き説明する。
副モーターSMは、主モーターMMに対する制動を行うほか、主モーターMMが何らかの事情でその動作が制限される様な状況下では、主モーターMMの代わりを果たし得るものである。
制動を行う場合、例えば、ユーザー制御システム2’の出力yの値を測定し、必要に応じてユーザー制御システム2’の出力yに負帰還[負の出力フィードバックのゲイン122c(−Kv)]及び重みWvを掛けたものを、重みWcsvを経た保守的な制御則104からの操作量ucsvと合成し、得られた副モータートルク指令u’を副モータードライバSDに与える。そうすると、副モータートルク指令u’に基づき、副モーターSMから、主モーターMMの回転方向とは逆方向のトルクが主モーターMMの出力軸に対して加えられ、主モーターMMへの機械的制動が行なわれる。
一方、副モータードライバSDには、保守的な制御則104からの操作量ucs vも(副モータートルク指令u’の形で)与えられ得ることから、例えば、内部要因又は外部要因による何らかの障害が主モーターMMに生じ、主モーターMMが止まってしまう様な状況下では、ユーザー制御則5から保守的な制御則104へと制御主体を移して、保守的な制御則104に基づいて副モーターSMを動かして、副モーターSMに主モーターMMが果たすべき機能を応急的に代行させることも可能である。
主モーターMMと副モーターSMとは、例えばチェーンからなるトルク伝達手段Tにより物理的に連結され、トルク伝達し得るようになっている。本例では、副モータードライバSDは、入力される副モータートルク指令u’に応じて、例えば、1)主モーターMMの回転方向とは逆方向のトルクを副モーターSMに与え、これにより主モーターMMの回転の制動を行ったり、或いは2)主モーターMMの回転が制限される様な状況の場合には、主モーターMMの代わりを果たし得る様に、保守的な制御則104に基づいて副モーターSMを駆動したりしている。
次に、この第3例に係るモーター制御システム60全体の動作につき、図14を参照しながら説明する。
通常、ユーザー制御システム2’が安定な状態にあれば、主モーターMMはコントローラCから出たユーザートルク指令uusrに基づいて制御・運転される。このように、uusrのみによってユーザー制御システム2’の安定性が保たれているならば、保守的な制御則104からの操作量ucsvが必ずしも副モーターSMを介して主モーターMMへ入力される必要はない。従って、ユーザー制御則5によるユーザートルク指令uusrが保守的な制御則104からの操作量ucsvを必要とせず、かつ、ユーザー制御システム2’が安定ならば、重み124b(Wcs v)=0とすることで保守的な制御則104を仮想パワーモニタ110への入力としての役割のみに制限出来る。この場合であっても、仮想パワーモニタ110には主モーターMMの出力情報y及び保守的な制御則104からの操作量ucsvが入力され、仮想パワーモニタ110によるユーザー制御システム2’の安定性のモニタリングが継続して行われる。
一方、ユーザー制御システム2’が不安定になった場合は、ユーザー制御システム調整則120及びこれに接続された各重み122b、124b(Wv,Wcsv)を適切に動作させ、副モータートルク指令u’を副モータードライバSDに与えて副モーターSMを作動させ、たとえば、1)トルク伝達手段Tを介して主モーターMMの出力軸に対して、主モーターMMの回転方向とは逆方向のトルクを与えたり、或いは2)主モーターMMの回転が制限される様な状況の場合には、主モーターMMの代わりを果たし得る様に、保守的な制御則104に基づいて副モーターSMを駆動することにより、ユーザー制御システム2’の出力yを漸近安定とすることが出来る。仮想パワーリミッタは、仮想パワーモニタ110の出力Pvに応じ、これに繋がっているユーザー制御システム調整則120を働かせ、それにより重み122b及び124b(Wv,Wcsv)を決定し、制御を継続しつつユーザー制御システム2’の出力yを安定にする様動作する。
このように、本例に係るモーター制御システム60によれば、仮想パワーリミッタシステム100の働きにより、常にユーザー制御システム2’の出力yの漸近安定性が保証されることとなる。
[第4例]
ロボットシステムへの適用例
次に、複数のモーターシステムの制御を行う一実施例として、複数個の関節部を有し、各関節部にモーターRM1〜RM3を備えたロボットシステムに本発明の仮想パワーリミッタシステムを適用した例に付き、図15を中心に説明する。このようなロボットシステムは、例えば自動車組み立てロボットや、溶接ロボットとして実用に供され得るものである。図15に示す通り、この第4例に係るロボットシステム70は、ユーザー制御対象3となるロボットアームRAと、ユーザへの開放部分であり、ユーザー制御則5をロボットアームRAへ入力するためのコントローラCと、本発明の仮想パワーリミッタシステム100とからなっている。
仮想パワーリミッタシステム100は、仮想パワーモニタシステム101と仮想パワーリミッタ102とからなっており、アナログ若しくはデジタル電子回路からなるハードウェアの形で、若しくはマイクロコンピュータ等の演算装置に格納されたプログラムからなるソフトウェアの形で、又はこれらを組み合わせた形で構成されている。
又ロボットアームRAは、各関節毎の駆動モーターRM1〜RM3及び仮想パワーリミッタシステム100からのトルク指令ベクトルuを受けてこれらのモーターを駆動するモータードライバMD1〜MD3を有している。従って本例では、図15に示すuusr、u、y、yd等はそれぞれ、各モーターに対する3次元ベクトルとなる。ここで、保守的な制御則104への入力ydは目標角速度とされる。
この第4例に係るロボットシステム70の内部の制御ブロックの基本的な構成及びその動作は第1例のモーター制御システム40と同様であるが、この第4例では、1つの仮想パワーリミッタシステム100で3台のモーターRM1〜RM3を制御する点が異なる。即ち、ユーザー制御対象3へのトルク指令u、またユーザー制御対象3からの出力情報(角速度出力)yは共に、独立にMD1〜MD3に入力又はRM1〜RM3より出力されるほか、仮想パワーリミッタ102の各重み122b〜124b(Wv,Wusr及びWcsv)はそれぞれ、スカラー量でなく対角行列で構成されている。ここで、各重み122b(Wv)は対角行列Wv=diag(Wvi)(Wvi≧0)と、重み123b(Wusr)は対角行列Wusr=diag(Wusri)(0≦Wusri≦1)と、及び重み124b(Wcsv)は対角行列Wcsv=diag(Wcsvi)(0≦Wcsvi≦1)となっている。
以下では、この第4例に係るロボットシステム70の動作について説明する。まず、仮想パワーモニタ110は1台であり、保守的な制御則からユーザー制御対象3へ仮想的に伝達されるパワーPvを観測し、ユーザー制御システム2’の出力yの安定性を評価解析する。仮想パワーモニタ110には保守的な制御則104からの操作量ucsv及び各モーター(RM1〜RM3)からの出力情報yが入力される。
通常、ユーザー制御システム2’が安定な状態にあれば、コントローラCより与えられるユーザー制御則5による入力uusrは、仮想パワーリミッタシステム100内で何ら新たな処理を施されることなくそのまま、各モーターRM1〜RM3に対するユーザー制御対象3へのトルク指令u=uusrとして各モータードライバMD1〜MD3に入力され、モーターRM1〜RM3は制御・運転される。このとき、仮想パワーリミッタ102の重み123b(Wusr)=1である。このように、uusrのみによってユーザー制御システム2’の安定性が保たれているならば、保守的な制御則104からの操作量ucsvは必ずしもユーザー制御対象3へ入力される必要はなく、従ってユーザー制御則5による入力uusrが保守的な制御則104からの操作量ucsvを必要とせず、かつユーザー制御システム2’が安定ならば、Wcsv=0とすることで保守的な制御則104を仮想パワーモニタ110への入力としての役割のみに制限出来る。
一方、ユーザー制御システム2’が不安定になった場合は、仮想パワーリミッタ102を適切に動作させれば、ユーザー制御システム2’の出力yを漸近安定とすることが出来る。このとき、仮想パワーリミッタ102の各重み122b〜124b(Wv,Wusr,Wcsv)は行列からなっているため、3個のモーターRM1〜RM3のそれぞれに対して独立に重みを与えることが可能である。従って、このロボットシステム70では、1台の仮想パワーモニタ110においてユーザー制御システム2’の安定性を全体として見て判断する一方、ユーザー制御対象3の各制御対象(3個のモーター)のエネルギーの制限度合をそれぞれ変えることができる。例えばロボットの手先直近にあるモーターRM1に対する重みだけを重めに設定しておき、手先のブレを最小限に抑える様な調整も可能である。
このように、この第4例によれば、複数のモーターを含むシステムのユーザー制御システム2’の出力の安定性をきめ細かく制御することができる。即ち仮想パワーリミッタ102の各重み122b〜124b(Wv,Wusr,Wcsv)がスカラー量ではなく行列で表わされているため、各自由度(各モーター)毎に独立したリミッタを設定することができ、各モーター毎の事情に応じた適切な制御を行うことが可能となる。
以下では、本発明の仮想パワーリミッタシステムをパワーアシストシステムに適用した一例として、先の図15に示す様なロボットシステムをベースにパワーアシストシステムを構成したものに本発明の仮想パワーリミッタシステムを適用した場合につき説明する。以下の説明は、図16に基づいて行なう。
図16に示す通り、本実施例のパワーアシストロボット103の基本構成は、先の図15に示すロボットシステム70に係るユーザー制御対象3と同様であるが、ロボットアームRAの手先をオペレータHが直接操作する点、そしてその動作をロボットアームRAの各関節部に配置されたモーターRM1〜RM3によってアシストする点で相違する。
ところで、先の実施例1における各例では、ユーザー制御システム2’に本発明の仮想パワーリミッタシステム100を適用する場合には、仮想パワーリミッタ102を設計する際に、保守的な制御則104を予め、計算その他を用いて準備していた。
他方、本実施例の様なパワーアシストシステム150では、ユーザー制御対象に相当するパワーアシストロボット103とオペレータHである人間とは力学的に繋がっているほか、両者の間には力センサ109が設けられている。従って、パワーアシストシステム150に本発明の仮想パワーリミッタシステム100を適用する場合には、この力センサ109を利用し、この力センサ109の測定値であるuhを用いることによって、人間による動作を上記の保守的な制御則とみなすことができる。
本実施例では、図16に示す通り、この力センサ109から得られる、オペレータHからロボットアームRAに加える力の測定値uh(ベクトル値)を用いることによって、オペレータHによる操作を保守的な制御則として取り扱っている。
尚、パワーアシストシステム150全体の構成は、先の図10に示した通りである。本実施例では、オペレータHがロボットアームRAの手先を操作する際の力uhの大きさは力センサ109によって検知され、パワーアシストロボット103のほか、仮想パワーモニタ110とパワーアシスト制御則111に入力されている。
次に、本実施例のパワーアシストロボット103の動作を説明する。
まず、本実施例のパワーアシストロボット103では、オペレータHからロボットアームRAに及ぼす力uh、角速度yの値及びパワーアシスト制御則Kusrに基づいてユーザーアシストトルク指令値が決定される。これより、実際に各モータードライバMD1〜MD3及びモーターRM1〜RM3にトルク指令uが行なわれ、その結果、各モーターRM1〜RM3に駆動力が与えられることによってオペレータHの動作がアシストされる。その他詳細は先の第2実施形態ii)で説明したものと同様である。
本実施例によれば、オペレータHの動特性が未知であるにもかかわらず、パワーアシストロボット103からオペレータHに流出するパワーを制限することが出来、仮想パワーリミッタ122b,123b(Wusr,Wv)によりオペレータHに対する安全性を確保することが出来る。
尚本発明は、上記各実施例記載の構成に限定されず、種々の設計変更その他の変形が可能である。
例えば、図11他に示すモーター制御システムやロボットシステムに係る実施例では、保守的な制御則104への目標値入力ydは角速度入力としたが、ydは例えばモーターMの回転角度に関する目標値等でも良い。同様に図12に示す空気圧シリンダシステムに係る実施例では、保守的な制御則104への目標値入力ydは体積変化速度としたが、空気流量その他の物理量としても構わない。
また、ydは必ずしもユーザーに設定させなくても、例えば図13に示す電流入力であれば定格電流や電流ゼロ、また図11他に示す角速度入力であれば速度ゼロの様な固定した値を、保守的な制御則104中に「望ましい一定値」として予め設定しておいても良い。
その他、保守的な制御則に入力される制御指令は、ユーザー制御則に入力される制御指令と同様のものであって良いが、例えば別の単位を持つものや、別の物理量を入力しても構わない。
更に、保守的な制御則に入力される制御指令は、ユーザー制御則に入力される制御指令(任意の入力S)に比べてより保守的な制御指令を入力しても構わない。
その様なより保守的な制御指令としては、例えば保守的な制御則に入力される目標値入力が図13に示す電流入力であれば、上記した様な「定格電流」や「電流ゼロ」等の指令、又保守的な制御則に入力される目標値入力が図11他に示す角速度入力であれば、「速度ゼロ」の指令とすることが挙げられる。
図13に示す構成例において、制御電圧源VSから所望の負荷Rへの印加電圧は電圧計VMで測定・表示しても良い。又図14に示す構成例において主モーターMMの制動を行うに際して、副モーターSMを発電機にもなり得る回転電気機械とし、副モータードライバSDを例えば電子負荷に相当するようなものとし、副モーターSMの両端子より得られる発電電力の消費量を負荷の大きさを変えて調節することで主モーターMMの角速度制御を行うことが出来るようにしても構わない。さらに図14に示す構成例においてトルク伝達手段Tは、チェーンに限らず、ベルトやギア等も使用し得ることは言うまでもない。
以上に詳述した通り、本発明は、未知の動特性や外乱のあらゆる影響を含むユーザー制御システムからの出力の安定性を評価し、かつ未知の動特性や外乱に拘らずユーザー制御システムからの出力の安定性を保証し得るシステム構成を提供する、新規かつ極めて有用なる発明であることが明らかである。
Claims (9)
- ユーザー制御則によってユーザー制御対象が制御されるユーザー制御システムにおいて、前記ユーザー制御対象からのフィードバック信号を受けて前記ユーザー制御対象に操作量を入力し得る保守的な制御則と、前記保守的な制御則から前記ユーザー制御対象へ仮想的に伝達されるパワーを観測する仮想パワーモニタとを備え、ユーザー制御システムからの出力の安定性を評価解析できるようにしたことを特徴とする制御システム。
- 前記仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいて前記ユーザー制御システム内部において、前記ユーザー制御システム出力から前記ユーザー制御対象入力への負帰還量を調整することで前記ユーザー制御システムから仮想パワーモニタシステムへの仮想パワーの流出を制限する仮想パワーリミッタを付加することにより、前記ユーザー制御システムからの出力の安定性を保証することを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
- 前記仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいて前記ユーザー制御システム内部において、前記ユーザー制御則から前記ユーザー制御対象への操作量を調整することで前記ユーザー制御システムから仮想パワーモニタシステムへの仮想パワーの流出を制限する仮想パワーリミッタを付加することにより、前記ユーザー制御システムからの出力の安定性を保証することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御システム。
- 前記仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいて前記ユーザー制御システム内部において前記保守的な制御則から前記ユーザー制御対象への操作量を調整する仮想パワーリミッタを付加することにより、前記ユーザー制御システムからの出力の安定性を保証し、かつ前記ユーザー制御対象の制御を継続することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の制御システム。
- 前記仮想パワーリミッタによる調整を、前記ユーザー制御システム出力から前記ユーザー制御対象入力への負帰還量、前記ユーザー制御則又は前記保守的な制御則のゲインに適用することにより、前記負帰還量、前記ユーザー制御則又は前記保守的な制御則の少なくともいずれか一つのゲインチューニングを、ユーザー制御システムからの出力の安定性が保証されるように自動的に行なうことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の制御システム。
- オペレータによってユーザー制御対象が制御され、そのユーザー制御対象からのフィードバック信号を受けて前記オペレータから前記ユーザー制御対象への操作量の入力を補助するパワーアシスト制御則を持つパワーアシストシステムに、前記オペレータから前記ユーザー制御対象へ伝達されるパワーを観測する仮想パワーモニタを備え、パワーアシストシステムからの出力の安定性を評価解析できるようにしたことを特徴とする制御システム。
- 前記仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいて前記パワーアシストシステム内部において、前記パワーアシストシステム出力から前記ユーザー制御対象入力への負帰還量を調整することで前記パワーアシストシステムから仮想パワーモニタシステムへの仮想パワーの流出を制限する仮想パワーリミッタを付加することにより、前記パワーアシストシステムから前記オペレータに流出するパワーを制限して前記パワーアシストシステムからの出力の安定性を保証し、オペレータに対する安全性を確保することを特徴とする請求項6に記載の制御システム。
- 前記仮想パワーモニタにおける仮想パワーの観測にもとづいて前記パワーアシストシステム内部において、前記パワーアシスト制御則から前記ユーザー制御対象への操作量を調整することで前記パワーアシストシステムから仮想パワーモニタシステムへの仮想パワーの流出を制限する仮想パワーリミッタを付加することにより、前記パワーアシストシステムから前記オペレータに流出するパワーを制限して前記パワーアシストシステムからの出力の安定性を保証し、オペレータに対する安全性を確保することを特徴とする請求項6又は7に記載の制御システム。
- 前記仮想パワーリミッタによる調整を、前記パワーアシストシステム出力から前記ユーザー制御対象入力への負帰還量、又は前記パワーアシスト制御則に適用することにより、前記負帰還量又は前記パワーアシスト制御則の少なくともいずれか一つのゲインチューニングを、前記パワーアシストシステムからの出力の安定性が保証されるように自動的に行ない、オペレータに対する安全性を確保することを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の制御システム。
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