JPWO2004026861A1 - 塩酸パロキセチン水和物の製法 - Google Patents
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Abstract
（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジンを水存在下に塩化水素と反応させた後、水の存在下で結晶を析出させる塩酸パロキセチン水和物の製法。
Description
塩酸パロキセチン水和物［（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジン−塩酸塩 １／２水和物、（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−４−（４−ｆｌｕｏｒｏｐｈｅｎｙｌ）−３−［（３，４−ｍｅｔｈｙｌｅｎｅｄｉｏｘｙ）ｐｈｅｎｏｘｙｍｅｔｈｙｌ］ｐｉｐｅｒｉｄｉｎｅ ｍｏｎｏｈｙｄｒｏｃｈｌｏｒｉｄｅ ｈｅｍｉｈｙｄｒａｔｅ］は、アルコール症、不安症、うつ病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するための抗うつ剤として世界的に知られている。本発明は、かかる塩酸パロキセチン水和物を製造する新規な方法に関する。
従来、（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジン（以下、ＢＯＣ保護パロキセチンという）を原料とする塩酸パロキセチンの製法として、イソプロパノール中で塩化水素と反応させる方法があるが、生成物は、欧州特許出願公開第０８１２８２７Ａ１号明細書（特開平１０−２９１９７５号に対応）に開示されているように、塩酸パロキセチン無水物である。一方、この無水物を結晶変換させて塩酸パロキセチン水和物とすることは、公知の文献に記載されているが、この方法では、欧州特許第２２３４０３Ｂ１号明細書（特公平６−４７５８７号に対応）や、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス（Ｉｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ Ｊｏｕｒｎａｌ ｏｆ Ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃｓ），４２（１９８８），１３５−１４３に開示されているように、圧力をかけるとか、種晶の存在のもと、湿度の高い環境下での結晶変換が行われている。
また塩酸パロキセチン水和物を製造するする種々の方法が、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス（Ｉｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ Ｊｏｕｒｎａｌ ｏｆ Ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃｓ），４２（１９８８），１３５−１４３および欧州特許第２２３４０３Ｂ１号明細書に開示されているが、ＢＯＣ保護パロキセチンを出発原料とする製法は、記載されていない。
また塩酸パロキセチン水和物を製造するする種々の方法が、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス（Ｉｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ Ｊｏｕｒｎａｌ ｏｆ Ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃｓ），４２（１９８８），１３５−１４３および欧州特許第２２３４０３Ｂ１号明細書に開示されているが、ＢＯＣ保護パロキセチンを出発原料とする製法は、記載されていない。
本発明者らは、ＢＯＣ保護パロキセチンを用いて塩酸パロキセチン水和物を直接に製造する方法を検討した結果、ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させた後、水存在下に結晶を析出させれば効率的に塩酸パロキセチン水和物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
（１）ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させた後、水の存在下で結晶を析出させることを特徴とする塩酸パロキセチン水和物の製法、
（２） ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させた後、当該反応に使用した水を除去することなく結晶を析出させる（１）に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（３） ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させた後、当該反応液からそのまま結晶を析出させる（１）または（２）に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（４）ＢＯＣ保護パロキセチンを芳香族炭化水素系有機溶媒中、塩酸を加えて反応させる（１）〜（３）のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（５） 芳香族炭化水素系有機溶媒がトルエンである（３）に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（６）ＢＯＣ保護パロキセチンを水単独の溶媒中で塩化水素と反応させる（１）〜（３）のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（７）ＢＯＣ保護パロキセチンを塩酸と反応させる（１）〜（３）または（６）のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（８）上記（１）〜（７）のいずれかに記載の製法により製造された塩酸パロキセチン水和物、および
（９）上記（１）〜（７）のいずれかに記載の製法により製造された塩酸パロキセチン水和物と、医薬上許容される担体とを含有してなる、アルコール症、不安症、鬱病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するための医薬組成物
に関する。
すなわち、本発明は、
（１）ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させた後、水の存在下で結晶を析出させることを特徴とする塩酸パロキセチン水和物の製法、
（２） ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させた後、当該反応に使用した水を除去することなく結晶を析出させる（１）に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（３） ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させた後、当該反応液からそのまま結晶を析出させる（１）または（２）に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（４）ＢＯＣ保護パロキセチンを芳香族炭化水素系有機溶媒中、塩酸を加えて反応させる（１）〜（３）のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（５） 芳香族炭化水素系有機溶媒がトルエンである（３）に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（６）ＢＯＣ保護パロキセチンを水単独の溶媒中で塩化水素と反応させる（１）〜（３）のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（７）ＢＯＣ保護パロキセチンを塩酸と反応させる（１）〜（３）または（６）のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法、
（８）上記（１）〜（７）のいずれかに記載の製法により製造された塩酸パロキセチン水和物、および
（９）上記（１）〜（７）のいずれかに記載の製法により製造された塩酸パロキセチン水和物と、医薬上許容される担体とを含有してなる、アルコール症、不安症、鬱病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するための医薬組成物
に関する。
本発明では、先ず、ＢＯＣ保護パロキセチンを水存在下に塩化水素と反応させ、ＢＯＣ保護パロキセチンの１位の保護基ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル（ＢＯＣ）を脱保護（脱ＢＯＣ）する。ここでＢＯＣ保護パロキセチンは、結晶状態または無結晶状態の固体状態で供給されてもよく、また固体状態になっていない油状などの状態で供給されてもよい。精製されたものが好ましいが、未精製のものでもよい。また、溶液または懸濁液の状態で供給されてもよい。精製された白色ないし脱色された結晶状態のものが特に好ましい。より純度の高い塩酸パロキセチン水和物を与えるからである。
塩化水素は、通常、塩化水素の水溶液である塩酸として、塩化水素を反応溶媒等の溶媒に溶解したものとして、または塩化水素ガスとして供給される。塩化水素の量は、通常、ＢＯＣ保護パロキセチン１モルに対して１モル以上あれば十分であるが、通常１〜１０モルであることが好ましい。
水は、塩酸として塩化水素と共に供給されてもよいし、また塩化水素とは別に供給されてもよい。この水は、下記のように反応溶媒ともなる。水の使用量は、特に限定はないが、ＢＯＣ保護パロキセチン１００重量部に対して１重量部以上あれば十分である。水の量は、後述するように、溶媒量であってもよいが、通常、ＢＯＣ保護パロキセチン１００重量部に対して２０００重量部以下であることが好ましい。
ＢＯＣ保護パロキセチンと塩化水素との反応は、溶媒中で実施する。当該溶媒は、水−有機溶媒の混合溶媒または水である。溶媒における水は、一部または全部が塩酸として供給されてもよい。水−有機溶媒における水と有機溶媒溶媒との割合は、特に限定がなく、水の量が有機溶媒に対して１重量％程度の低割合になっても差し支えない。
有機溶媒は、ＢＯＣ保護パロキセチン、塩化水素を溶解するが、これらのいずれとも反応しない限り、特に限定がない。有機溶媒としては、低級アルコール（メタノール、２−プロパノール等）等の水と混和する極性溶媒であってもよく、水と混和し難い芳香族炭化水素等の無極性溶媒であってもよい。工業的によく使用される観点から、水単独または水の存在する芳香族炭化水素系溶媒（例えば、トルエン）が好ましい。当該有機溶媒は、１種または２種以上で構成されていてもよい。
ＢＯＣ保護パロキセチンの溶媒に対する溶媒の割合は、特に限定されないが、通常、ＢＯＣ保護パロキセチン１重量部に対して２〜２０重量部程度であることが好ましい。
反応は、ＢＯＣ保護パロキセチンと塩化水素とを水または有機溶媒−水溶媒中で混合攪拌する方法、ＢＯＣ保護パロキセチン溶液に塩化水素ガスを導入しながら攪拌する方法等、ＢＯＣ保護パロキセチンと塩化水素とが接触し、脱ＢＯＣ反応を行うことができる限り如何なる手段であってもよい。
反応温度は、通常、常温から１００℃程度であることが好ましく、５０〜８０℃であることがより好ましい。
この反応により、ＢＯＣ保護パロキセチンの１位の保護基ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル（ＢＯＣ）が脱保護されると同時に、脱保護生成物であるパロキセチンの塩酸塩化が生じ、塩酸パロキセチンが生成する。
本発明では、次に、この塩酸パロキセチンを水存在下に晶析させることにより、塩酸パロキセチン水和物が生成する。この結晶の析出の具体的方法としては、主として、前記脱保護反応で得られた反応液をそのまま放置するか、あるいは好ましくは３０℃以下、より好ましくは２５℃程度に、更に好ましくは５℃に冷却し、結晶を析出させる方法があげられる。この際、結晶析出させる前に活性炭等で反応液を精製することもできる。結晶を析出させる際には、水は、反応液中に５重量％以上存在させるが、水を更に加えてもよい。また、水が十分に存在しているときには、不純物の析出の防止等の観点から、有機溶媒を加えてもよい。更に、水または１種もしくは２種以上の有機溶媒を加えることもできる。このとき、有機溶媒は、結晶析出に妨げとならない限り、脱ＢＯＣ反応溶媒と異なるものであってもよい。また、結晶析出溶媒は、水単独であってもよい。
また、結晶析出の他の具体的方法としては、脱ＢＯＣ反応における主たる溶媒をトルエン等の有機系無極性溶媒にした場合、脱ＢＯＣ反応終了後に得られた反応液に水を加えて混合し、有機溶媒層を分離した残りの含水溶液から結晶析出させることがあげられる。このときも結晶析出させる前に活性炭等で当該含水溶液を精製することができる。
脱ＢＯＣ反応における反応溶媒が、水が存在するトルエン等芳香族炭化水素である場合に、反応後に水を加えるとトルエン等の有機溶媒層である上層と、中間層（水層）、下層（オイル層）の三層に分かれることがある。この下層も水を含んでいると判断される。結晶析出にあたっては、下層（オイル層）のみを分離し、これに２−プロパノール等の炭素数１〜５の低級アルコールを加えてから結晶を析出させることができるが、収量を増加させる観点から、中間層（水層）と下層とを合せて分離し、これらの２層に２−プロパノール等炭素数１〜５の低級アルコールを加えて、中間層および下層を１層とした後、当該１層から結晶を析出させることが好ましい。いずれの場合においても、低級アルコールを加えた後に、通常は、活性炭等を添加し、結晶析出層を精製し、５０〜８５℃程度に加温ないし加熱し、塩酸パロキセチンを完全に溶解した後、活性炭等を濾過除去し、このようにして得られた溶液を３０℃以下、更には２５℃程度に、更に好ましくは５℃以下に冷却して結晶析出をさせる。
本発明では、通常、このようして結晶を析出させることによって得られた塩酸パロキセチン水和物を濾過等慣用の方法で分離し、水洗し、乾燥する。
塩酸パロキセチン水和物は、水または水の存在する有機溶媒からなる、加温ないし加熱した溶液を冷却して結晶析出させると、その結晶は、通常、ピンクに着色する傾向にあることを本発明者らは見出しているが、本発明により結晶析出される塩酸パロキセチン水和物は、そのような問題がない。
本発明の製法により得られた塩酸パロキセチン水和物は、アルコール症、不安症、鬱病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するための医薬として供せられる。
また、本発明の医薬組成物は、前記塩酸パロキセチン水和物と、医薬上許容される担体とを含有するものである。
本発明の医薬組成物は、前記塩酸パロキセチン水和物および担体を含有するものである。本発明の医薬組成物は、アルコール症、不安症、鬱病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するのに適している。
本発明の医薬組成物は、通常、経口投与に適しているが、非経口投与用の溶解性処方もまた本発明の範囲内である。本発明の医薬組成物は、遊離塩基として換算して通常、１〜２００ｍｇ、好ましくは５〜１００ｍｇ、より好ましくは１０〜５０ｍｇ（例、１０、１２．５、２０、３０または４０ｍｇ）の塩酸パロキセチン水和物（活性成分）を含有する単位投与形としてヒトに投与される。最も好ましくは、単位投与量は、遊離塩基に基づき換算して塩酸パロキセチン水和物（活性成分）２０ｍｇを含有する。このような組成物は、通常、塩酸パロキセチン水和物（活性成分）が遊離塩基を基準として５〜４００ｍｇの量で投与されるように、１日あたり１〜６回、例えば、１日あたり２〜４回投与される。より好ましくは、単位用量を１日に１回投与する。
好ましい本発明の医薬組成物の単位投与形は、錠剤またはカプセルを包含する。本発明の医薬組成物は、混合、充填、圧縮などの慣用的混合方法により処方される。
本発明において好適な担体としては、希釈剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー、保存剤などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは２種以上を混合して用いることができる。
本発明の医薬組成物は、例えば、市販の抗うつ剤で用いられるのと同様の方法で用いることができる。
塩化水素は、通常、塩化水素の水溶液である塩酸として、塩化水素を反応溶媒等の溶媒に溶解したものとして、または塩化水素ガスとして供給される。塩化水素の量は、通常、ＢＯＣ保護パロキセチン１モルに対して１モル以上あれば十分であるが、通常１〜１０モルであることが好ましい。
水は、塩酸として塩化水素と共に供給されてもよいし、また塩化水素とは別に供給されてもよい。この水は、下記のように反応溶媒ともなる。水の使用量は、特に限定はないが、ＢＯＣ保護パロキセチン１００重量部に対して１重量部以上あれば十分である。水の量は、後述するように、溶媒量であってもよいが、通常、ＢＯＣ保護パロキセチン１００重量部に対して２０００重量部以下であることが好ましい。
ＢＯＣ保護パロキセチンと塩化水素との反応は、溶媒中で実施する。当該溶媒は、水−有機溶媒の混合溶媒または水である。溶媒における水は、一部または全部が塩酸として供給されてもよい。水−有機溶媒における水と有機溶媒溶媒との割合は、特に限定がなく、水の量が有機溶媒に対して１重量％程度の低割合になっても差し支えない。
有機溶媒は、ＢＯＣ保護パロキセチン、塩化水素を溶解するが、これらのいずれとも反応しない限り、特に限定がない。有機溶媒としては、低級アルコール（メタノール、２−プロパノール等）等の水と混和する極性溶媒であってもよく、水と混和し難い芳香族炭化水素等の無極性溶媒であってもよい。工業的によく使用される観点から、水単独または水の存在する芳香族炭化水素系溶媒（例えば、トルエン）が好ましい。当該有機溶媒は、１種または２種以上で構成されていてもよい。
ＢＯＣ保護パロキセチンの溶媒に対する溶媒の割合は、特に限定されないが、通常、ＢＯＣ保護パロキセチン１重量部に対して２〜２０重量部程度であることが好ましい。
反応は、ＢＯＣ保護パロキセチンと塩化水素とを水または有機溶媒−水溶媒中で混合攪拌する方法、ＢＯＣ保護パロキセチン溶液に塩化水素ガスを導入しながら攪拌する方法等、ＢＯＣ保護パロキセチンと塩化水素とが接触し、脱ＢＯＣ反応を行うことができる限り如何なる手段であってもよい。
反応温度は、通常、常温から１００℃程度であることが好ましく、５０〜８０℃であることがより好ましい。
この反応により、ＢＯＣ保護パロキセチンの１位の保護基ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル（ＢＯＣ）が脱保護されると同時に、脱保護生成物であるパロキセチンの塩酸塩化が生じ、塩酸パロキセチンが生成する。
本発明では、次に、この塩酸パロキセチンを水存在下に晶析させることにより、塩酸パロキセチン水和物が生成する。この結晶の析出の具体的方法としては、主として、前記脱保護反応で得られた反応液をそのまま放置するか、あるいは好ましくは３０℃以下、より好ましくは２５℃程度に、更に好ましくは５℃に冷却し、結晶を析出させる方法があげられる。この際、結晶析出させる前に活性炭等で反応液を精製することもできる。結晶を析出させる際には、水は、反応液中に５重量％以上存在させるが、水を更に加えてもよい。また、水が十分に存在しているときには、不純物の析出の防止等の観点から、有機溶媒を加えてもよい。更に、水または１種もしくは２種以上の有機溶媒を加えることもできる。このとき、有機溶媒は、結晶析出に妨げとならない限り、脱ＢＯＣ反応溶媒と異なるものであってもよい。また、結晶析出溶媒は、水単独であってもよい。
また、結晶析出の他の具体的方法としては、脱ＢＯＣ反応における主たる溶媒をトルエン等の有機系無極性溶媒にした場合、脱ＢＯＣ反応終了後に得られた反応液に水を加えて混合し、有機溶媒層を分離した残りの含水溶液から結晶析出させることがあげられる。このときも結晶析出させる前に活性炭等で当該含水溶液を精製することができる。
脱ＢＯＣ反応における反応溶媒が、水が存在するトルエン等芳香族炭化水素である場合に、反応後に水を加えるとトルエン等の有機溶媒層である上層と、中間層（水層）、下層（オイル層）の三層に分かれることがある。この下層も水を含んでいると判断される。結晶析出にあたっては、下層（オイル層）のみを分離し、これに２−プロパノール等の炭素数１〜５の低級アルコールを加えてから結晶を析出させることができるが、収量を増加させる観点から、中間層（水層）と下層とを合せて分離し、これらの２層に２−プロパノール等炭素数１〜５の低級アルコールを加えて、中間層および下層を１層とした後、当該１層から結晶を析出させることが好ましい。いずれの場合においても、低級アルコールを加えた後に、通常は、活性炭等を添加し、結晶析出層を精製し、５０〜８５℃程度に加温ないし加熱し、塩酸パロキセチンを完全に溶解した後、活性炭等を濾過除去し、このようにして得られた溶液を３０℃以下、更には２５℃程度に、更に好ましくは５℃以下に冷却して結晶析出をさせる。
本発明では、通常、このようして結晶を析出させることによって得られた塩酸パロキセチン水和物を濾過等慣用の方法で分離し、水洗し、乾燥する。
塩酸パロキセチン水和物は、水または水の存在する有機溶媒からなる、加温ないし加熱した溶液を冷却して結晶析出させると、その結晶は、通常、ピンクに着色する傾向にあることを本発明者らは見出しているが、本発明により結晶析出される塩酸パロキセチン水和物は、そのような問題がない。
本発明の製法により得られた塩酸パロキセチン水和物は、アルコール症、不安症、鬱病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するための医薬として供せられる。
また、本発明の医薬組成物は、前記塩酸パロキセチン水和物と、医薬上許容される担体とを含有するものである。
本発明の医薬組成物は、前記塩酸パロキセチン水和物および担体を含有するものである。本発明の医薬組成物は、アルコール症、不安症、鬱病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するのに適している。
本発明の医薬組成物は、通常、経口投与に適しているが、非経口投与用の溶解性処方もまた本発明の範囲内である。本発明の医薬組成物は、遊離塩基として換算して通常、１〜２００ｍｇ、好ましくは５〜１００ｍｇ、より好ましくは１０〜５０ｍｇ（例、１０、１２．５、２０、３０または４０ｍｇ）の塩酸パロキセチン水和物（活性成分）を含有する単位投与形としてヒトに投与される。最も好ましくは、単位投与量は、遊離塩基に基づき換算して塩酸パロキセチン水和物（活性成分）２０ｍｇを含有する。このような組成物は、通常、塩酸パロキセチン水和物（活性成分）が遊離塩基を基準として５〜４００ｍｇの量で投与されるように、１日あたり１〜６回、例えば、１日あたり２〜４回投与される。より好ましくは、単位用量を１日に１回投与する。
好ましい本発明の医薬組成物の単位投与形は、錠剤またはカプセルを包含する。本発明の医薬組成物は、混合、充填、圧縮などの慣用的混合方法により処方される。
本発明において好適な担体としては、希釈剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー、保存剤などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは２種以上を混合して用いることができる。
本発明の医薬組成物は、例えば、市販の抗うつ剤で用いられるのと同様の方法で用いることができる。
次に本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
窒素気流下、粗（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジン７．０４ｇ（１６．３９ミリモル）を含むトルエン溶液３８．１１ｇに３５％塩酸４．２７ｇ（塩化水素換算４１．０１ミリモル）を加え、６８〜７０℃にて脱ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル化反応を２時間行い、反応の終了を高速液体クロマトグラフィ（ＨＰＬＣ）で確認した。次に水４０ｍＬを加え、７０℃で分液（三層）して、上層（トルエン層）を除く、中間層（水層）と下層（オイル層）を得た。この中間層。下層の二層に２−プロパノール１０．０ｇを加え、一層とした。更に活性炭０．３３ｇを添加し、６２〜６７℃で１５分間攪拌した後、活性炭を濾過した。５℃まで冷却する過程で、２８℃で結晶が析出した。３８〜４０℃で３０分間攪拌し、氷冷下２〜５℃、３０分間保持した後、同温で濾過し、２−プロパノール１．０ｇおよび水４．０ｇからなる溶液で洗浄して得られた湿晶を６０℃で減圧乾燥し、塩酸パロキセチン水和物結晶５．１０ｇ（収率８５．０％）を得た。目的物であることをヌジョール赤外線吸収（ＩＲ）スペクトルと標品と粉末Ｘ線回折図（ＸＲＤ）で確認した。また、水分量は２．７０重量％であった（理論水分量２．４０重量％）。
窒素気流下、粗（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジン９．６７ｇ（２２．５２ミリモル）を含むトルエン溶液６２．７７ｇに３５％塩酸５．８６ｇ（塩化水素換算５６．３０ミリモル）を加え、７０〜７３℃にて脱ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル化反応を２時間行い、反応の終了を高速液体クロマトグラフィ（ＨＰＬＣ）で確認した。次に水３５ｍＬを加え、７０℃で分液（三層）して、上層（トルエン層）および中間層（水層）を除いて、下層（オイル層）を得た。この下層に２−プロパノール６７．６９ｇを加え、更に活性炭１．０８ｇを添加し、８１℃で１５分間攪拌した後、活性炭を濾過し、予め温めておいた２−プロパノール４．７４ｇで洗浄した。５℃まで冷却する過程で、３０℃で結晶が析出した。２５〜３０℃で３０分間攪拌し、氷冷下３〜５℃、３０分間保持した後、同温で濾過し、２−プロパノール１９．４１ｇで洗浄して得られた湿晶を６０℃で減圧乾燥し、塩酸パロキセチン・塩酸塩水和物結晶４．６８ｇ（収率５５．５重量％）を得た。目的物であることをヌジョール赤外線吸収（ＩＲ）スペクトルと標品と粉末Ｘ線回折図（ＸＲＤ）で確認した。また、水分量は、２．４２重量％であった（理論水分量２．４０重量％）。
１）粗（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジンの精製
粗（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジン７１．５０ｇ（１６６．５ミリモル）に２−プロパノール２１４ｍＬを加え、５８℃まで昇温し、溶解したところで活性炭０．７０ｇを添加し、更に昇温して還流下１０分間攪拌した。
同温で活性炭を濾過し、２−プロパノール３６ｍＬで洗浄し、２℃まで冷却した。氷冷下２〜８℃に２時間２０分攪拌放置した後、同温で濾過し、２−プロパノール３６ｍＬで洗浄して結晶を得た。この結晶を５０℃で減圧乾燥し、精（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジン６０．８３ｇ（収率８５．１重量％）を得た。
２）塩酸パロキセチン水和物の製造
次に窒素気流下、精（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジン５．８７ｇ（１３．６７ミリモル）をトルエン３４ｍＬに溶解し、３５％塩酸７．１２ｇ（６８．３６ミリモル）を滴下し、６７〜７２℃で脱ＢＯＣ反応を７時間行い、反応の終了をＨＰＬＣで確認した。
その後、そのまま冷却し、２１〜２５℃、３０分攪拌放置して結晶を十分に析出させた後、結晶を同温で濾過し、トルエン６．８ｍＬで洗浄して塩酸パロキセチン水和物の結晶４．８５ｇ（９４．７重量％）を得た。このものが目的のものであることは、ヌジョールＩＲスペクトルと粉末Ｘ線回折図（ＸＲＤ）で確認した。また、水分量は、２．６９重量％であった（理論水分量２．４０重量％）。
粗（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジン７１．５０ｇ（１６６．５ミリモル）に２−プロパノール２１４ｍＬを加え、５８℃まで昇温し、溶解したところで活性炭０．７０ｇを添加し、更に昇温して還流下１０分間攪拌した。
同温で活性炭を濾過し、２−プロパノール３６ｍＬで洗浄し、２℃まで冷却した。氷冷下２〜８℃に２時間２０分攪拌放置した後、同温で濾過し、２−プロパノール３６ｍＬで洗浄して結晶を得た。この結晶を５０℃で減圧乾燥し、精（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジン６０．８３ｇ（収率８５．１重量％）を得た。
２）塩酸パロキセチン水和物の製造
次に窒素気流下、精（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジン５．８７ｇ（１３．６７ミリモル）をトルエン３４ｍＬに溶解し、３５％塩酸７．１２ｇ（６８．３６ミリモル）を滴下し、６７〜７２℃で脱ＢＯＣ反応を７時間行い、反応の終了をＨＰＬＣで確認した。
その後、そのまま冷却し、２１〜２５℃、３０分攪拌放置して結晶を十分に析出させた後、結晶を同温で濾過し、トルエン６．８ｍＬで洗浄して塩酸パロキセチン水和物の結晶４．８５ｇ（９４．７重量％）を得た。このものが目的のものであることは、ヌジョールＩＲスペクトルと粉末Ｘ線回折図（ＸＲＤ）で確認した。また、水分量は、２．６９重量％であった（理論水分量２．４０重量％）。
窒素気流下、精（−）−（３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシフェニル）オキシメチル］ピペリジン５．８７ｇ（１３．６７ミリモル）を水２７．０ｍＬに懸濁し、３５％塩酸７．１２ｇ（６８．３６ミリモル）を滴下し、還流下で脱ＢＯＣ反応を１時間行い、反応の終了をＨＰＬＣで確認した。
反応終了後、得られた反応液を５℃まで冷却した。冷却する過程で、５８℃で結晶が析出した。氷冷下２〜５℃、３０分間保持した後、同温で濾過し、水５．８７ｇで洗浄して得られた湿晶を６０℃で減圧乾燥し、塩酸パロキセチン水和物結晶４．９０ｇ（収率９５．７重量％）を得た。水分量は、２．５３重量％であった（理論水分量２．４０重量％）。
以上の結果から、本発明により、ＢＯＣ保護パロキセチンから塩酸パロキセチン水和物が首尾よく得られることがわかる。
反応終了後、得られた反応液を５℃まで冷却した。冷却する過程で、５８℃で結晶が析出した。氷冷下２〜５℃、３０分間保持した後、同温で濾過し、水５．８７ｇで洗浄して得られた湿晶を６０℃で減圧乾燥し、塩酸パロキセチン水和物結晶４．９０ｇ（収率９５．７重量％）を得た。水分量は、２．５３重量％であった（理論水分量２．４０重量％）。
以上の結果から、本発明により、ＢＯＣ保護パロキセチンから塩酸パロキセチン水和物が首尾よく得られることがわかる。
本発明の塩酸パロキセチン水和物は、アルコール症、不安症、うつ病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するための抗うつ剤として、好適に使用しうるものである。
Claims (9)
- （３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジンを水存在下に塩化水素と反応させた後、水の存在下で結晶を析出させることを特徴とする塩酸パロキセチン水和物の製法。
- （３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジンを水存在下に塩化水素と反応させた後、当該反応に使用した水を除去することなく結晶を析出させる請求項１に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法。
- （３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジンを水存在下に塩化水素と反応させた後、当該反応液からそのまま結晶を析出させる請求項１または２に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法。
- （３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジンを芳香族炭化水素系有機溶媒中、塩酸を加えて反応させる請求項１〜３のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法。
- 芳香族炭化水素系有機溶媒がトルエンである請求項４に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法。
- （３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジンを水単独の溶媒中で塩化水素と反応させる請求項１〜３のいずれかに記載の塩酸パロキセチン水和物の製法。
- （３Ｓ，４Ｒ）−１−ｔｅｒｔ−ブトキシカルボニル−４−（４−フルオロフェニル）−３−［（３，４−メチレンジオキシ）フェノキシメチル］ピペリジンを塩酸と反応させる請求項１、２、３または６に記載の塩酸パロキセチン水和物の製法。
- 請求項１〜７のいずれかに記載の製法により製造された塩酸パロキセチン水和物。
- 請求項１〜７のいずれかに記載の製法により製造された塩酸パロキセチン水和物と、医薬上許容される担体とを含有してなる、アルコール症、不安症、鬱病、脅迫障害、パニック障害、慢性痛、肥満症、老年痴呆症、片頭痛、大食、食欲不振、社会恐怖症、月経前緊張症候群、青年期性鬱病、トリコチロマニー、気分変調および物質乱用からなる群より選択される障害を治療および／または予防するための医薬組成物。
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