JPWO2004026341A1 - ガンの免疫治療剤 - Google Patents
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Abstract
分子標的治療薬のより有効な効果をもたらすことを目的とし、完全寛解率を上げ、完全寛解への期間の短縮化を達成し、免疫療法との相乗効果を達成するための手段を提供するものである。つまり、CTL活性、NKT活性、NK活性及び−VEGF等に着目する新免疫療法と分子標的治療薬特にチロシンキナーゼ阻害剤の併用による相乗効果の達成を課題とする。チロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤の併用がガン治療における優位な相乗効果を達成することを見出し本発明を完成した。
Description
本出願は、参照によりここに援用されるところの、日本特許出願番号2002−273738,2002−281780,2002−354515,2003−161238,2003−169153からの優先権を請求する。
本発明は、癌治療の新たな領域を提供するものである。すなわち、新規な癌治療法として着目されるチロシンキナーゼ阻害剤と医学博士八木田旭邦が開発したNK細胞の活性化能、NKT細胞の活性化能、血管新生阻害能、IL−12の産生誘導能及びIFNγの産生誘導能の動態に着目した新免疫療法の併用による新規なガン治療剤の提供に関する。
ガン(malignant neoplasms)(cancer)の予防または治療のために有用な物質の選別には、従来、ガン細胞へのその直接的作用が重要視されていた。免疫賦活剤がガン治療に有用であることは認められていたが、免疫賦活剤として得られた化合物はいずれもその抗ガン効果が微弱であり、免疫療法単独または化学療法との併用治療によってもガンの十分な治療効果は達成されていない。
本発明者の医学博士、八木田は、先にガン治療における画期的な手法として、インターロイキン12(IL−12)を生体内で誘発する物質の有用性に着目し、キノコ菌糸体加工物がその機能を有することを発見し、新免疫療法(Novel Immuno therapy for cancer)(NITC)ともいうべきガン治療法を確立した。従来IL−12は、抗ガン効果があるものの生体内にIL−12自体を直接投与した場合には副作用を生じるために患者が治療に耐えられないという事実があり、それ自体を抗ガン剤として使用できなかった。しかし、八木田が報告したキノコ菌糸体加工物を含む製剤は、ガンの治療において著しい治癒・延命効果を達成した。つまり八木田は、IL−12を生体内で誘発できる有効量のキノコ菌糸体加工物を投与することにより、ガンの治療目的を達成した{(特許文献1)特開平10−139670号公報}。
IL−12は、TNFα→IFNγ→IL−12→CTL活性というルートでキラーT細胞の活性化効果と増強効果をもつ。つまりIL−12の産生増強は、キラーT細胞の活性化と増強により抗ガン効果が期待される。
八木田は、IL−12の産生増強の系とは別にNKT細胞の活性化が抗ガン効果に有用であることを報告している。谷口等は、NKT細胞が有するVα24Vβ11という特異的なT細胞抗原受容体(TCR)が認識する特異的な糖脂質抗原を発見し、この抗原が、αガラクトシルセラミドであることを報告している。更に、αガラクトシルセラミドを投与した担ガンマウスでは、NKT細胞が活性化され、ガンの消失はみられないものの転移が抑制されることを証明した。
NKT細胞には、もう一つの受容体としてNK細胞抗原受容体(NKR−P1;ナチュラルキラー受容体P1)があることは報告されている{(非特許文献1)特集NKT細胞の基礎と臨床:最新医学55巻4号2000年818〜823ページ}。
NKR−P1もNKT細胞の活性化に関与し、この活性化が抗ガン効果がより優位であることを八木田は見出している{(特許文献2)US2002−0010149A1}。
ガンの分子標的治療剤が新タイプの制癌剤として従来の細胞標的治療剤と対比してその意義が着目されている。そのなかでも特にシグナル伝達阻害作用を有する薬剤としてチロシンキナーゼ阻害剤は注目されている。ZD1839(イレッサ:登録商標 アストラゼネカ)はEGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼのATP結合部位におけるATPとの競合作用を有し、チロシンキナーゼの自己リン酸化を抑制することでチロシンキナーゼ活性を抑制する。その結果、EGFRのもつ増殖、浸潤、分化、転移に関連するシグナル伝達〔EGFRの細胞外ドメインに上皮成長因子(EGF)等のリガンドが結合することにより、細胞内ドメインにあるEGFRチロシンキナーゼが活性化し、EGFRの自己リン酸化および種々の細胞内標的たんぱくのリン酸化を引き起こすことにより細胞表面から核への増殖シグナルが伝達され、癌細胞表面から核への増殖シグナルが伝達され、癌細胞の増殖、浸潤、転移、血管新生を起こす〕を遮断することにより抗癌作用を発現する。IMC−C225(EGFR標的モノクローナル抗体)は細胞膜表面のEGFRレセプター部分を認識し、EGFRの自己リン酸化を抑制することでチロシンキナーゼ活性を阻害する。ハーセプチンはEGFRと相同性をもつHer2/Neuに対するモノクローナル抗体であり、STI−571(グリベック)はBCR−Ablのチロシンキナーゼ活性の阻害とc−kitのチロシンキナーゼ活性の阻害能を有する{(非特許文献2)血液・免疫・腫瘍 Vol.7 No.3 2002−7}。
このような分子標的治療剤は新メカニズのガン治療薬として着目されるが、その効果はいまだ革命的とはいえない。たとえば、ZD1839(イレッサ)はアストラゼネカ社が新規に開発した強力かつ選択的なEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であり、ヒトでもその有用性が判明している。しかし非小細胞肺癌や前立腺癌などでの臨床成績はPR(部分寛解)が10〜20数%で、CR(完全寛解)は全くないと言ってもよいが、あっても極くまれで完全寛解まで4ヶ月以上の期間がかかっていた。そこでZA1839(イレッサ)と各種抗癌剤との併用療法が試みられているものの現時点では相加あるいは相乗効果は得られていない。
本発明者の医学博士、八木田は、先にガン治療における画期的な手法として、インターロイキン12(IL−12)を生体内で誘発する物質の有用性に着目し、キノコ菌糸体加工物がその機能を有することを発見し、新免疫療法(Novel Immuno therapy for cancer)(NITC)ともいうべきガン治療法を確立した。従来IL−12は、抗ガン効果があるものの生体内にIL−12自体を直接投与した場合には副作用を生じるために患者が治療に耐えられないという事実があり、それ自体を抗ガン剤として使用できなかった。しかし、八木田が報告したキノコ菌糸体加工物を含む製剤は、ガンの治療において著しい治癒・延命効果を達成した。つまり八木田は、IL−12を生体内で誘発できる有効量のキノコ菌糸体加工物を投与することにより、ガンの治療目的を達成した{(特許文献1)特開平10−139670号公報}。
IL−12は、TNFα→IFNγ→IL−12→CTL活性というルートでキラーT細胞の活性化効果と増強効果をもつ。つまりIL−12の産生増強は、キラーT細胞の活性化と増強により抗ガン効果が期待される。
八木田は、IL−12の産生増強の系とは別にNKT細胞の活性化が抗ガン効果に有用であることを報告している。谷口等は、NKT細胞が有するVα24Vβ11という特異的なT細胞抗原受容体(TCR)が認識する特異的な糖脂質抗原を発見し、この抗原が、αガラクトシルセラミドであることを報告している。更に、αガラクトシルセラミドを投与した担ガンマウスでは、NKT細胞が活性化され、ガンの消失はみられないものの転移が抑制されることを証明した。
NKT細胞には、もう一つの受容体としてNK細胞抗原受容体(NKR−P1;ナチュラルキラー受容体P1)があることは報告されている{(非特許文献1)特集NKT細胞の基礎と臨床:最新医学55巻4号2000年818〜823ページ}。
NKR−P1もNKT細胞の活性化に関与し、この活性化が抗ガン効果がより優位であることを八木田は見出している{(特許文献2)US2002−0010149A1}。
ガンの分子標的治療剤が新タイプの制癌剤として従来の細胞標的治療剤と対比してその意義が着目されている。そのなかでも特にシグナル伝達阻害作用を有する薬剤としてチロシンキナーゼ阻害剤は注目されている。ZD1839(イレッサ:登録商標 アストラゼネカ)はEGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼのATP結合部位におけるATPとの競合作用を有し、チロシンキナーゼの自己リン酸化を抑制することでチロシンキナーゼ活性を抑制する。その結果、EGFRのもつ増殖、浸潤、分化、転移に関連するシグナル伝達〔EGFRの細胞外ドメインに上皮成長因子(EGF)等のリガンドが結合することにより、細胞内ドメインにあるEGFRチロシンキナーゼが活性化し、EGFRの自己リン酸化および種々の細胞内標的たんぱくのリン酸化を引き起こすことにより細胞表面から核への増殖シグナルが伝達され、癌細胞表面から核への増殖シグナルが伝達され、癌細胞の増殖、浸潤、転移、血管新生を起こす〕を遮断することにより抗癌作用を発現する。IMC−C225(EGFR標的モノクローナル抗体)は細胞膜表面のEGFRレセプター部分を認識し、EGFRの自己リン酸化を抑制することでチロシンキナーゼ活性を阻害する。ハーセプチンはEGFRと相同性をもつHer2/Neuに対するモノクローナル抗体であり、STI−571(グリベック)はBCR−Ablのチロシンキナーゼ活性の阻害とc−kitのチロシンキナーゼ活性の阻害能を有する{(非特許文献2)血液・免疫・腫瘍 Vol.7 No.3 2002−7}。
このような分子標的治療剤は新メカニズのガン治療薬として着目されるが、その効果はいまだ革命的とはいえない。たとえば、ZD1839(イレッサ)はアストラゼネカ社が新規に開発した強力かつ選択的なEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であり、ヒトでもその有用性が判明している。しかし非小細胞肺癌や前立腺癌などでの臨床成績はPR(部分寛解)が10〜20数%で、CR(完全寛解)は全くないと言ってもよいが、あっても極くまれで完全寛解まで4ヶ月以上の期間がかかっていた。そこでZA1839(イレッサ)と各種抗癌剤との併用療法が試みられているものの現時点では相加あるいは相乗効果は得られていない。
本発明は、上記のような分子標的治療薬のより有効な効果をもたらすことを目的とし、完全寛解率を上げ、完全寛解への期間の短縮化を達成し、免疫療法との相乗効果を達成するための手段を提供するものである。つまり、CTL活性、NKT活性、NK活性及び−VEGF等に着目する新免疫療法と分子標的治療薬特にチロシンキナーゼ阻害剤の併用による相乗効果の達成を課題とする。
本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤の併用がガン治療における優位な相乗効果を達成することを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、
「1.チロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤が併用されることを特徴とするガンの治療剤。
2.チロシンキナーゼ阻害剤が、以下の1)〜7)の少なくとも1の受容体に対する選択的標的作用を有する前項1のガンの治療剤。
1)HER2/neu、2)HER3、3)HER4、4)c−kit、5)PDGFR、6)bcr−abl、7)EGFR
3.チロシンキナーゼ阻害剤が、選択的EGFR又はc−kit標的作用を有する前項1のガンの治療剤。
4.IL−12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する物質である前項1〜3の何れか一に記載のガンの治療剤。
5.IL−12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する茸菌糸体由来成分又は酵母由来成分である前項4のガンの治療剤。
6.ガンの化学療法剤及び放射線治療との併用無しに処置される前項1〜5の何れか一に記載のガンの治療剤。
7.NKT細胞のNKR−P1に選択的に作用してNKT細胞を活性化をおこす物質と併用される前項1〜6の何れか一に記載のガンの治療剤。
8.血管新生阻害能を有する物質と併用される前項1〜7の何れか一に記載のガンの治療剤。
9.以下の1)又は2)のいずれか1をマーカーとしてチロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤の併用治療が行われる前項1〜8の何れか一に記載のガンの治療剤。
1) NKTP値の投与前値が5.0%以上の測定値を示す、
2) Th2値の投与前値が3%以上の測定値を示す
10.Th1/Th2比がイレッサ投与前値に比較して投与数ヶ月後に増加の測定値を示すことを併用治療の継続のマーカーにする前項1〜9の何れか一に記載のガンの治療剤。
11.NKTP値の投与前値が、5.0%未満の測定値を示すことを特徴とする前項10に記載のガンの治療剤。
12.IL−12、INFγの測定値が、イレッサ投与前値に比較して投与数ヶ月後の値で低下していないことを併用治療の継続のマーカーにする前項9に記載のガンの治療剤。
13.ガンの治療剤が肺(腺)ガン治療剤であることを特徴とする前項1〜12の何れか一に記載のガンの治療剤。
14.前項1〜13の何れか一に記載のガン治療剤を用いたガンの治療方法。」
からなる。
本発明は、チロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤の併用がガン治療における優位な相乗効果を達成することを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、
「1.チロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤が併用されることを特徴とするガンの治療剤。
2.チロシンキナーゼ阻害剤が、以下の1)〜7)の少なくとも1の受容体に対する選択的標的作用を有する前項1のガンの治療剤。
1)HER2/neu、2)HER3、3)HER4、4)c−kit、5)PDGFR、6)bcr−abl、7)EGFR
3.チロシンキナーゼ阻害剤が、選択的EGFR又はc−kit標的作用を有する前項1のガンの治療剤。
4.IL−12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する物質である前項1〜3の何れか一に記載のガンの治療剤。
5.IL−12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する茸菌糸体由来成分又は酵母由来成分である前項4のガンの治療剤。
6.ガンの化学療法剤及び放射線治療との併用無しに処置される前項1〜5の何れか一に記載のガンの治療剤。
7.NKT細胞のNKR−P1に選択的に作用してNKT細胞を活性化をおこす物質と併用される前項1〜6の何れか一に記載のガンの治療剤。
8.血管新生阻害能を有する物質と併用される前項1〜7の何れか一に記載のガンの治療剤。
9.以下の1)又は2)のいずれか1をマーカーとしてチロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤の併用治療が行われる前項1〜8の何れか一に記載のガンの治療剤。
1) NKTP値の投与前値が5.0%以上の測定値を示す、
2) Th2値の投与前値が3%以上の測定値を示す
10.Th1/Th2比がイレッサ投与前値に比較して投与数ヶ月後に増加の測定値を示すことを併用治療の継続のマーカーにする前項1〜9の何れか一に記載のガンの治療剤。
11.NKTP値の投与前値が、5.0%未満の測定値を示すことを特徴とする前項10に記載のガンの治療剤。
12.IL−12、INFγの測定値が、イレッサ投与前値に比較して投与数ヶ月後の値で低下していないことを併用治療の継続のマーカーにする前項9に記載のガンの治療剤。
13.ガンの治療剤が肺(腺)ガン治療剤であることを特徴とする前項1〜12の何れか一に記載のガンの治療剤。
14.前項1〜13の何れか一に記載のガン治療剤を用いたガンの治療方法。」
からなる。
(図1)患者のレントゲン図
(図2)患者のレントゲン図
(図3)破骨細胞分化の必須シグナルの図
(図4)肺(腺)癌の奏効例
(図5)大腸癌の奏効例
(図6)各種癌での奏効例
(図7)ロジスティック回帰係数分析による各マーカーの奏効に対する寄与度(肺腺ガン)
(図8)イレッサ投与患者におけるロジスティック回帰係数分析による各マーカーの奏効に対する寄与度(肺腺ガン)
(図9)イレッサ投与前における有効例(B群)と無効例(A群)の比較
(図10)NKTP<5.0における有効例(B群)と無効例(A群)の比較
(図11)2つの閾値による有効・無効群
(図12)イレッサと新免疫療法との作用時期の相違
(図13)イレッサ投与前におけるC群及びD群の比較
(図14)C群、D群におけるサイトカインの相違
(図15)イレッサとNITCとの抗腫瘍作用における相乗作用機序仮説
(図2)患者のレントゲン図
(図3)破骨細胞分化の必須シグナルの図
(図4)肺(腺)癌の奏効例
(図5)大腸癌の奏効例
(図6)各種癌での奏効例
(図7)ロジスティック回帰係数分析による各マーカーの奏効に対する寄与度(肺腺ガン)
(図8)イレッサ投与患者におけるロジスティック回帰係数分析による各マーカーの奏効に対する寄与度(肺腺ガン)
(図9)イレッサ投与前における有効例(B群)と無効例(A群)の比較
(図10)NKTP<5.0における有効例(B群)と無効例(A群)の比較
(図11)2つの閾値による有効・無効群
(図12)イレッサと新免疫療法との作用時期の相違
(図13)イレッサ投与前におけるC群及びD群の比較
(図14)C群、D群におけるサイトカインの相違
(図15)イレッサとNITCとの抗腫瘍作用における相乗作用機序仮説
以下、本発明を詳しく説明するが、本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、別途定義されていない限り、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者により普通に理解される意味を持つ。
本発明者の医学博士八木田のガン新免疫療法(NITC)とは4つの異なる作用機序を組み合わせることからなる治療手段である。
第一の作用機序は、血管新生阻害物質(ベターシャーク)を投与してガンへの血流を障害してガン縮小をはかる方法である。これは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を測定することでその効果は判定が可能である。血管新生阻害作用はVEGF値のマイナス(負)値(−VEGF)で評価できる。このVEGF値の替わりにFGF、HGFなどのその他の血管増殖因子を用いることも血管新生阻害能を評価することが可能である。またVEGFの替わりに血管新生阻害因子の正数値でもその評価が可能である(例えばエンドスタチン値)。
第2の作用機序は、β1,3グルカン構造を担持する化合物を投与してTh1サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL−12)を誘導してCTLを活性化する方法である。CTL活性はCD8(+)パーフォリン産生能力で判定が可能であるが、このCD8(+)パーフォリン値には細胞障害性T細胞(CTL)と免疫抑制性T細胞(STC;Suppressor Tcell)とがあり、前者はガン細胞を障害し、後者の活性化は結果的にガンの増殖につながる。したがってその絶体値では評価はできない。しかし前者はIFNγが10IU/ml以上かもしくはIL−12値が7.8pg/ml以上であればCTLであり、IFNγとIL−12が低値であればSTCと判定される。そこでCTL活性は、IFNγ産生能力(IFNγ値)もしくはIL−12産生能力(IL−12値)で評価が可能である。
第三及び第四の作用機序であるα1,3グルカン構造を担持する化合物の投与によって活性化されるeffector細胞はNK細胞とNKT細胞である。このNKとNKT細胞とはNKR−P1(NK細胞受容体CD161(+))を共有しており、前者はCD3(−)CD161(+)の表面マーカーでNK細胞数は測定可能であり、その活性化はCD3(−)CD161(+)パーフォリン産生能力で判定が可能である。一方後者のNKT細胞はCD3(+)CD161(+)でその細胞数は測定が可能となり、そのパーフォリン産生能力(NKTPと記す)でNKT細胞の活性化は測定可能である。
したがってガン治療における新免疫療法(NITC)であっても一般的な免疫療法であっても、以下の測定項目でそれぞれのeffector細胞もしくは血管新生阻害作用を評価することが可能である。具体的には、CTL活性はIFNγあるいはIL−12の産生誘導能力で評価が可能である。NK細胞の活性化はCD3(−)CD161(+)もしくはCD3(−)CD161(+)パーフォリン値でも評価可能である。NKT細胞の活性化はCD3(+)CD161(+)もしくはCD3(+)CD161(+)パーフォリン値(NKTP値)でも評価が可能である。
本発明は、上記の新免疫療法にチロシンキナーゼ阻害剤を併用することによる臨床における結果を検討することにより行われた。本発明者は、新免疫療法(NITC)として、ガン患者にα1,3グルカン構造を担持する化合物、β1,3グルカン構造を担持する化合物と血管新生阻害作用物質(サメ軟骨)を併用し、IL−12、IFNγ他の各種サイトカインを測定した。なお、CD8(+)パーフォリン産生は、IFNγ及びIL−12の産生とは強い正の相関性が存在し、この結果、CD8(+)パーフォリン産生の測定はCTL活性ルートの評価に意義を見出している。
この意義によりCD8(+)パーフォリン産生能の測定は、有用なCTL活性化剤(つまりIL−12産生誘発剤)のスクリーニング方法に適用可能であり、このスクリーニング方法を利用すればCTL活性化能(IL−12産生誘発能)を担持する新規β1,3グルカンの特定が可能である。本発明で使用する、IL−12産生誘導剤は特に限定せず、広く使用可能である。例えば、β1,3グルカン構造を持つ茸菌糸体組成物製剤(例えばILX商品名:東西医薬研究所、ILY商品名:セイシン企業、AHCC:アミノアップ)、或はβ1,3グルカン構造を持つ各種酵母(海洋性酵母、パン酵母、NBGTM)が利用できる。また、新規なIL−12産生誘導剤は、CD8パーフォリン産生能の測定を組み合わせることで当業者は容易にIL−12産生誘導剤(CTL活性化剤)を特定可能である。CTL活性化剤は、本発明で使用するIL−12産生誘導剤と同義である。
本発明では、このIL−12産生誘導剤とチロシンキナーゼ阻害剤の併用が必須である。具体例では、ZD1839(イレッサ商品名)又はSTI571(グリベック商品名)を使ったが、各種チロシンキナーゼ阻害剤が有効に利用できる。それらは標的分子として、HER2/neu、HER3、HER4、c−kit、PDGFR、bcr−abl、EGFR等が例示される。最も効果的な分子はEGFR又はc−kitである。
チロシンキナーゼ阻害剤の投与量は、各分子標的化合物の推奨投与量に従うが、10〜500mg/日の経口投与がおこなわれる。
IL−12産生誘導剤とチロシンキナーゼ阻害剤の併用は、特に限定はされないが、治療初期からでもどちらを先行させていても良い。具体例では、NITC療法特にIL−12産生誘導剤を一定期間投与後に、チロシンキナーゼ阻害剤を併用し、劇的な臨床効果を確認した。
本発明では、IL−12産生誘導剤に加えて、NK活性化剤又はNKT活性剤の併用が可能である。ニゲロオリゴ糖、フコイダン等のα1,3グルカン構造を持つ化合物の組成物製剤がNK活性化剤又はNKT活性剤として有用である。α1,3グルカン構造を持つ化合物は種々知られており、この既知構造とCD3(−)CD161(+)、CD3(−)CD161(+)パーフォリン産生能CD3(+)CD161(+)、CD3(+)CD161(+)パーフォリン産生能の測定を組み合わせれば当業者は容易にNK活性化剤又はNKT活性化剤を特定可能である。なお、CD3(+)CD161(+)はNKT細胞の受容体NKR−P1に作用することを意味する。
α1,3グルカン構造の糖類物質としては、例えば、ニゲロオリゴ糖(TSO)、フコイダン、硫酸オリゴ糖等が挙げられる。
ニゲロオリゴ糖は、3−O−α−D−グルコピラノシル−D−グルコースを構成単位として含有する糖類である。代表的なものとしては、ニゲロース、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトース等が挙げられる。
また、市販されているニゲロオリゴ糖としては、ニゲロオリゴ糖液糖(販売者・武田食品工業株式会社)が挙げられるが、これが含有する主なニゲロオリゴ糖は(1) ニゲロース α−D−Glcp−(1,3)−D−Glc (2) ニゲロシルグルコース α−D−Glcp−(1,3)−α−D−Glcp−(1,4)−D−Glc (3) ニゲロシルマルトース α−D−Glcp−(1,3)−α−D−Glcp−(1,4)−α−D−Glcp−(1,4)−D−Glc(なお、Glcはグルコース、pはピラノースの略号である)である。
フコイダンは、狭義ではフコースの2乃至6分子に硫酸1分子が結合した硫酸化フコース含有多糖類であり、これにキシロースあるいはウロン酸を含有したフコイダン様多糖体を食品レベルで「フコイダン」と称している。フコイダンは、例えばコンブを破砕し、チップ化し、水溶液成分を抽出した後、抽出残渣を遠心分離により除去し、ヨードや塩化ナトリウム等の低分子物質を限外ろ過により除去して凍結乾燥化して製剤化される。
フコイダンとしては、褐藻類由来フコイダン、例えばガゴメコンブ由来のフコイダン、およびオキナワモズク由来フコイダン等が例示される。ガゴメコンブ等の褐藻類コンブ科由来のフコイダンには少なくとも3種類のフコイダン、F−フコイダン(α−L−フコースのポリマー)、U−フコイダン(β−D−グルクロン酸とα−D−マンノースを主鎖とし、側鎖にα−L−フコースをもつ)、G−フコイダン(β−D−ガラクトースを主鎖とし、側鎖にα−L−フコースをもつ)、が存在しており、いずれのフコイダンもフコースが硫酸化されている。
硫酸オリゴ糖としては、例えば株式会社白子製のスサビノリ(Poryphyra Yezaensis)由来の抽出物があげられる。該抽出物の主成分はα1,3結合のガラクタン硫酸のオリゴ糖とα1,3結合およびβ1,4結合よりなるガラクタン硫酸のオリゴ糖である。
本発明のチロシンキナーゼ阻害剤とCTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)との併用、更にはNK活性化剤、NKT活性化剤、新生血管阻害剤との併用は、その適用法を選別することで肺ガン(肺扁平上皮ガン、肺腺ガン、小細胞肺ガン)、胸腺腫、甲状腺ガン、前立腺ガン、腎ガン、膀胱ガン、結腸ガン、直腸ガン、食道ガン、盲腸ガン、尿管ガン、乳ガン、子宮頸ガン、脳ガン、舌ガン、咽頭ガン、鼻腔ガン、喉頭ガン、胃ガン、肝ガン、胆管ガン、精巣ガン、卵巣ガン、子宮体ガン、転移性骨ガン、悪性黒色腫、骨肉腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、脂肪肉腫等の治療に有効である。
本発明に係るチロシンキナーゼ阻害剤とCTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)の併用、更にはNK活性化剤、NKT活性化剤、新生血管阻害剤との併用は、その活性化を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる処方にて用いられる。すなわち、その活性化を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる投与量、ならびに投与期間を選択して用いられる。具体的には、その投与量は、NK活性化剤又はNKT活性化剤であるα−1,3グルカン構造を持つ化合物は1g〜40g/日程度、好ましくは5g〜20g/日程度で、CTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)であるβ−1,3グルカン構造を持つ化合物は1g〜10g/日程度、好ましくは3g〜6g/日程度である。また、投与期間は一般的には10日間〜24ヶ月間、投与頻度は隔日又は1〜3回/日で、好ましくは連日投与である。当該CTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)、NK活性化剤、NKT活性化剤は、好適には経口摂取される。無論、投与量を減少させ、これらを非経口に耐え得る品質に調製することで、非経口摂取(静脈内または筋肉内投与などを含む)も可能である。
抗ガン(化学療法)剤、放射線、あるいはステロイド併用療法を、本発明の併用に加えて行う場合には、2種類の免疫系のうち、TNFα→IFNγ→IL−12→キラーT細胞の系統が著しく障害される。そのためこれらは本発明では用いないことが好ましい。但し抗ガン剤を投与するとき、上記の免疫系を障害しない投与法である低濃度化学療法すなわち5FU、UFT、ミフロール、フルツロン、CDDP(5μg〜10μg)の低濃度やタキソテールあるいはタキソール、アドリアマイシン、マイトマイシン、CPT−11などの低濃度抗ガン剤の投与法等を適用することは有用である。また同様に放射線療法において低容量照射の適用、ステロイド療法においても低濃度投与等を選択する必要がある。
細胞および各サイトカインの測定方法を以下に例示する。
(NKT細胞の測定)(NK細胞の測定)(CD8の測定)
NKR−P1を有するNKT細胞の測定は、NKT細胞の細胞表面に特異的に存在する細胞表面抗原(CD3およびCD161)の測定により行うことができる。具体的には、末梢血中のリンパ球について、CD3が陽性でかつCD161が陽性(CD3+CD161+)の細胞を検定する。つまり、NKT細胞の細胞表面抗原であるCD3およびCD161を、モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーを使用するTwo Color検査により測定する。ここでNKT細胞が活性化されているとは、リンパ球の中でCD3+CD161+NKT細胞の割合が10%以上、より好ましくは16%以上であることをいう。NKT細胞活性化能とは、NKT細胞の割合を10%以上、より好ましくは16%以上に増加せしめる機能、またはある物質を投与する前のNKT細胞の割合より更に増強せしめる機能を意味する。
同様に(CD3−CD161+)とはCD3が陰性でかつCD161が陽性の細胞を検定することである。この方法はNK細胞の測定に有用である。
さらにCD8+とはCD8が陽性の細胞を検定することである。この方法はCTL活性の測定に有用である。
実施例ではガン患者の血液を用いて、血中細胞について細胞表面抗原であるCD3、CD161、CD8について陽性・陰性で区別し、各細胞の割合を、フローサイトメトリーを用いたTwo Color検査により常法通り測定した。このときCD3、CD161、CD8に対するモノクローナル抗体は、それぞれコールター社製製又はベクトンディッキンソン社製ものを使用した。
(パーフォリン産生細胞の測定)
末梢血中のリンパ球について、細胞表面抗原であるCD3、CD161、CD8のうち2者とパーフォリンについてフローサイトメトリーを用いたThree Color検査により常法通り測定する。具体的には、採取した血液に固定液を加えて細胞を固定し、膜透過液を添加後抗パーフォリン抗体(Pharmingen社製)を添加して反応させ、さらにPRE−Cy5標識二次抗体(DAKO社製)を添加して反応させ、ついで抗CD3−PE(Coulter 6604627)抗体および抗CD161−FITC(B−D)抗体を添加して反応させ、その後フローサイトメトリーで測定する。図・表中での略語はPERと表示した。
(サイトカインを測定するための試料の調製)
まず、血液より単核球画分を分離調製する。ヘパリン加末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)(PBS)で2倍に希釈して混和した後、Ficoll−Conray液(比重1.077)上に重層し、400Gで20分間遠沈後、単核球画分を採取する。洗浄後、10%牛胎児血清(FBS)を加えたRPMI−1640培地を加え、細胞数を1×106個となるように調製する。得られた細胞浮遊液200μlにフィトヘマグルチニン(Phytohemagglutinin)(DIFCO社製)を20μg/mlの濃度となるように加え、96穴マイクロプレートにて5%CO2存在下、37℃で24時間培養し、該培養した細胞溶液中のサイトカインを測定する試料とする。
(IL−12の測定)
IL−12量の測定は自体公知の臨床、生化学的検査を利用できるが、R&D SYSTEMS社やMBL社より入手することのできる酵素免疫測定法(ELISA)による測定キットが使用される。ここではR&D SYSTEMS社の測定キットを用いた。実際には96穴マイクロプレートの各穴に測定用希釈液Assay Diluent RD1Fを50μl、標準液(standard)または前記サイトカイン測定用試料の調製法で調製した試料を200μlずつ分注した後、室温にて静置して2時間反応させた。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ(horse radish peroxidase)(HRP)標識抗IL−12抗体を200μlずつ分注し2時間室温で静置した。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、20分間室温静置後、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。550nmを対照として450nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IL−12量は、pg/mlとして表される。ここでIL−12産生誘発能とは、末梢血単核球画分が刺激により産生するIL−12量を、7.8pg/ml以上に増強せしめる機能、またはある物質を投与する前のIL−12産生量より増強せしめる機能を意味する。
(IFNγの測定)
IFNγの測定は、BioSource Europe S.社のIFNγ EASIAキットを用いて、酵素免疫測定法(EIA法)で測定した。実際には96穴マイクロプレートの各穴に標準液(standard)または上記調製した試料を2倍希釈したものを50μlずつ分注し、HRP標識抗IFN−γ抗体を50μlずつ分注し更に振盪しながら2時間室温で反応させた。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、振盪しながら15分間室温で反応させ、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。630nmを対照として450nmおよび490nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IFNγ量は、IU/mlとして表される。
(血管新生阻害能の測定)
(血管内皮細胞増殖因子/VEGFと塩基性繊維芽細胞増殖因子/bFGF及び血管新生阻害因子エンドスタチン/endostatinの測定)
市販キットの各酵素免疫固相法(ELISA:enzyme linked immuno sorbent assay)(ACCUCYTE Human VEGF,ACCUCYTE Human bFGF,ACCUCYTE Human Endostatin:CYTIMMUNE Sciences Inc.)で血清中濃度を測定した。
(Th2の測定)
Th2とは、細胞表面抗原CD4を有するヘルパーT細胞(100%)の中で、INFγ陰性かつIL−4陽性細胞の割合値を示すものである。
癌患者血液をブレフェルジンA(Breferdin A:BFA)存在下でホルボール12−ミリステート−13−アセテート(phorbol 12−Myristate 13 Acetate:PMA)及びイオノマイシン(Ionomycin)を加え、37℃で4時間刺激した。PMA,イオノマイシンで血液中の細胞を刺激してサイトカインを産出させ、BFAで細胞内タンパク質の細胞外への輸送を阻害した。このようにして調製された活性化検体にCD4−PC5(Beckman Coulter社)を加えて細胞表面のCD4を染色した。次に、FACS Lysing Solution(Becton Dickinson)で溶血及び固定処理をした後、更にFACS Permeabilizing Solutio(Becton Dickinson)で細胞膜透過処理を行なった。その後、IFN−γ FITC/IL−4 PE(Becton Dickinson)を用いて細胞内サイトカインを染色し、フローサイトメーター(FACS Calibur、Becton Dickinson)で測定し、解析を行った。
{Th1/Th2(細胞)比の測定}
Th1/Th2細胞比は、フローサイトメトリーによるヘルパーT(Th)細胞系統Three color解析検査によって常法により検定した。Th1/Th2とは、細胞表面抗原CD4を有するヘルパーT細胞のなかでIFNγを産生する細胞(Th1)とIL−4を産生する細胞(Th2)の比率を表すもので、CD4×IFNγ/IL−4と記す。
まず癌患者血液を、ホルボール12−ミリステート−13−アセテート(phorbol 12−Myristate 13 Acetate)とイオノマイシン(Ionomycin)により37℃で4時間処理し、血液中の細胞を刺激してサイトカインを産生させた。次いでブレフェルジンA(Breferdin A)を加えて産生反応を停止させ、抗CD4抗体であるCD4−PC5(Beckman Coulter社)を用いて細胞表面マーカーであるCD4を染色し、細胞を固定後、FACS Lysing Solution(日本ベクトンディッキンソン社)を用いて溶血処理した。その後FACS Permeabilizing Solution(日本ベクトンディッキンソン社)により細胞膜透過処理を行い、更に抗IFNγ抗体/抗IL−4抗体(FASTIMMUNE IFNγ FITC/IL−4 PE,日本ベクトンディッキンソン社)で細胞内のサイトカインを染色して、フローサイトメーター(FACS Calibur、Becton Dickinson社)で測定および解析を行った。
(TNFαの測定方法)
1.単核球の分離調製と培養
ヘパリン加末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)(PBS)で2倍に希釈して混和した後、Conray−ficoll液(比重1.077)上に重層し、1800rpmで20分間遠沈後、単核球画分を採取した。洗浄後、10%牛胎児血清(FBS)を加えたRPMI−1640培地を加え、リンパ球数を1×106個/mlとなるように調製した。得られた細胞浮遊液200μlにフィトヘマグルチニン(Phytohemagglutinin:30μg/ml)(DIFCO社製)を20μl加え、96穴マイクロプレートにて5%CO2存在下、37℃で24時間培養した。培養後は、測定まで凍結保存した。
2.ELISAによる測定
あらかじめ抗ヒトTNFαが固相化されている抗体プレートに標準液又は被検検体を加えて反応させた。次に、プレートを洗浄し、POD標識抗ヒトTNFαモノクローナル抗体(酵素標識抗体)を加え反応させた。再度プレートを洗浄後、基質を加えて酵素反応を行い、活性を波長492nmにおける吸光度として読み取った。
なお、臨床検査に用いた各マーカーは何れも市販品を用い、各推奨の方法により測定値を示した。表示される略字は各一般的な表示方法によった。
患者の効果判定は、次のCR(完全寛解)、PR(部分寛解)、LNC(長期不変)、SNC(短期不変)、PD(病状進行)の5段階判定を行った。また、各癌種での奏効率とは、各癌種の全症例中のCR、PR、LNC、SNC、PDの割合を示す(例、症例数7の結腸癌における、PR71.4%とは7症例中の内5症例がPRを表す)。
本発明者の医学博士八木田のガン新免疫療法(NITC)とは4つの異なる作用機序を組み合わせることからなる治療手段である。
第一の作用機序は、血管新生阻害物質(ベターシャーク)を投与してガンへの血流を障害してガン縮小をはかる方法である。これは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を測定することでその効果は判定が可能である。血管新生阻害作用はVEGF値のマイナス(負)値(−VEGF)で評価できる。このVEGF値の替わりにFGF、HGFなどのその他の血管増殖因子を用いることも血管新生阻害能を評価することが可能である。またVEGFの替わりに血管新生阻害因子の正数値でもその評価が可能である(例えばエンドスタチン値)。
第2の作用機序は、β1,3グルカン構造を担持する化合物を投与してTh1サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL−12)を誘導してCTLを活性化する方法である。CTL活性はCD8(+)パーフォリン産生能力で判定が可能であるが、このCD8(+)パーフォリン値には細胞障害性T細胞(CTL)と免疫抑制性T細胞(STC;Suppressor Tcell)とがあり、前者はガン細胞を障害し、後者の活性化は結果的にガンの増殖につながる。したがってその絶体値では評価はできない。しかし前者はIFNγが10IU/ml以上かもしくはIL−12値が7.8pg/ml以上であればCTLであり、IFNγとIL−12が低値であればSTCと判定される。そこでCTL活性は、IFNγ産生能力(IFNγ値)もしくはIL−12産生能力(IL−12値)で評価が可能である。
第三及び第四の作用機序であるα1,3グルカン構造を担持する化合物の投与によって活性化されるeffector細胞はNK細胞とNKT細胞である。このNKとNKT細胞とはNKR−P1(NK細胞受容体CD161(+))を共有しており、前者はCD3(−)CD161(+)の表面マーカーでNK細胞数は測定可能であり、その活性化はCD3(−)CD161(+)パーフォリン産生能力で判定が可能である。一方後者のNKT細胞はCD3(+)CD161(+)でその細胞数は測定が可能となり、そのパーフォリン産生能力(NKTPと記す)でNKT細胞の活性化は測定可能である。
したがってガン治療における新免疫療法(NITC)であっても一般的な免疫療法であっても、以下の測定項目でそれぞれのeffector細胞もしくは血管新生阻害作用を評価することが可能である。具体的には、CTL活性はIFNγあるいはIL−12の産生誘導能力で評価が可能である。NK細胞の活性化はCD3(−)CD161(+)もしくはCD3(−)CD161(+)パーフォリン値でも評価可能である。NKT細胞の活性化はCD3(+)CD161(+)もしくはCD3(+)CD161(+)パーフォリン値(NKTP値)でも評価が可能である。
本発明は、上記の新免疫療法にチロシンキナーゼ阻害剤を併用することによる臨床における結果を検討することにより行われた。本発明者は、新免疫療法(NITC)として、ガン患者にα1,3グルカン構造を担持する化合物、β1,3グルカン構造を担持する化合物と血管新生阻害作用物質(サメ軟骨)を併用し、IL−12、IFNγ他の各種サイトカインを測定した。なお、CD8(+)パーフォリン産生は、IFNγ及びIL−12の産生とは強い正の相関性が存在し、この結果、CD8(+)パーフォリン産生の測定はCTL活性ルートの評価に意義を見出している。
この意義によりCD8(+)パーフォリン産生能の測定は、有用なCTL活性化剤(つまりIL−12産生誘発剤)のスクリーニング方法に適用可能であり、このスクリーニング方法を利用すればCTL活性化能(IL−12産生誘発能)を担持する新規β1,3グルカンの特定が可能である。本発明で使用する、IL−12産生誘導剤は特に限定せず、広く使用可能である。例えば、β1,3グルカン構造を持つ茸菌糸体組成物製剤(例えばILX商品名:東西医薬研究所、ILY商品名:セイシン企業、AHCC:アミノアップ)、或はβ1,3グルカン構造を持つ各種酵母(海洋性酵母、パン酵母、NBGTM)が利用できる。また、新規なIL−12産生誘導剤は、CD8パーフォリン産生能の測定を組み合わせることで当業者は容易にIL−12産生誘導剤(CTL活性化剤)を特定可能である。CTL活性化剤は、本発明で使用するIL−12産生誘導剤と同義である。
本発明では、このIL−12産生誘導剤とチロシンキナーゼ阻害剤の併用が必須である。具体例では、ZD1839(イレッサ商品名)又はSTI571(グリベック商品名)を使ったが、各種チロシンキナーゼ阻害剤が有効に利用できる。それらは標的分子として、HER2/neu、HER3、HER4、c−kit、PDGFR、bcr−abl、EGFR等が例示される。最も効果的な分子はEGFR又はc−kitである。
チロシンキナーゼ阻害剤の投与量は、各分子標的化合物の推奨投与量に従うが、10〜500mg/日の経口投与がおこなわれる。
IL−12産生誘導剤とチロシンキナーゼ阻害剤の併用は、特に限定はされないが、治療初期からでもどちらを先行させていても良い。具体例では、NITC療法特にIL−12産生誘導剤を一定期間投与後に、チロシンキナーゼ阻害剤を併用し、劇的な臨床効果を確認した。
本発明では、IL−12産生誘導剤に加えて、NK活性化剤又はNKT活性剤の併用が可能である。ニゲロオリゴ糖、フコイダン等のα1,3グルカン構造を持つ化合物の組成物製剤がNK活性化剤又はNKT活性剤として有用である。α1,3グルカン構造を持つ化合物は種々知られており、この既知構造とCD3(−)CD161(+)、CD3(−)CD161(+)パーフォリン産生能CD3(+)CD161(+)、CD3(+)CD161(+)パーフォリン産生能の測定を組み合わせれば当業者は容易にNK活性化剤又はNKT活性化剤を特定可能である。なお、CD3(+)CD161(+)はNKT細胞の受容体NKR−P1に作用することを意味する。
α1,3グルカン構造の糖類物質としては、例えば、ニゲロオリゴ糖(TSO)、フコイダン、硫酸オリゴ糖等が挙げられる。
ニゲロオリゴ糖は、3−O−α−D−グルコピラノシル−D−グルコースを構成単位として含有する糖類である。代表的なものとしては、ニゲロース、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトース等が挙げられる。
また、市販されているニゲロオリゴ糖としては、ニゲロオリゴ糖液糖(販売者・武田食品工業株式会社)が挙げられるが、これが含有する主なニゲロオリゴ糖は(1) ニゲロース α−D−Glcp−(1,3)−D−Glc (2) ニゲロシルグルコース α−D−Glcp−(1,3)−α−D−Glcp−(1,4)−D−Glc (3) ニゲロシルマルトース α−D−Glcp−(1,3)−α−D−Glcp−(1,4)−α−D−Glcp−(1,4)−D−Glc(なお、Glcはグルコース、pはピラノースの略号である)である。
フコイダンは、狭義ではフコースの2乃至6分子に硫酸1分子が結合した硫酸化フコース含有多糖類であり、これにキシロースあるいはウロン酸を含有したフコイダン様多糖体を食品レベルで「フコイダン」と称している。フコイダンは、例えばコンブを破砕し、チップ化し、水溶液成分を抽出した後、抽出残渣を遠心分離により除去し、ヨードや塩化ナトリウム等の低分子物質を限外ろ過により除去して凍結乾燥化して製剤化される。
フコイダンとしては、褐藻類由来フコイダン、例えばガゴメコンブ由来のフコイダン、およびオキナワモズク由来フコイダン等が例示される。ガゴメコンブ等の褐藻類コンブ科由来のフコイダンには少なくとも3種類のフコイダン、F−フコイダン(α−L−フコースのポリマー)、U−フコイダン(β−D−グルクロン酸とα−D−マンノースを主鎖とし、側鎖にα−L−フコースをもつ)、G−フコイダン(β−D−ガラクトースを主鎖とし、側鎖にα−L−フコースをもつ)、が存在しており、いずれのフコイダンもフコースが硫酸化されている。
硫酸オリゴ糖としては、例えば株式会社白子製のスサビノリ(Poryphyra Yezaensis)由来の抽出物があげられる。該抽出物の主成分はα1,3結合のガラクタン硫酸のオリゴ糖とα1,3結合およびβ1,4結合よりなるガラクタン硫酸のオリゴ糖である。
本発明のチロシンキナーゼ阻害剤とCTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)との併用、更にはNK活性化剤、NKT活性化剤、新生血管阻害剤との併用は、その適用法を選別することで肺ガン(肺扁平上皮ガン、肺腺ガン、小細胞肺ガン)、胸腺腫、甲状腺ガン、前立腺ガン、腎ガン、膀胱ガン、結腸ガン、直腸ガン、食道ガン、盲腸ガン、尿管ガン、乳ガン、子宮頸ガン、脳ガン、舌ガン、咽頭ガン、鼻腔ガン、喉頭ガン、胃ガン、肝ガン、胆管ガン、精巣ガン、卵巣ガン、子宮体ガン、転移性骨ガン、悪性黒色腫、骨肉腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、脂肪肉腫等の治療に有効である。
本発明に係るチロシンキナーゼ阻害剤とCTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)の併用、更にはNK活性化剤、NKT活性化剤、新生血管阻害剤との併用は、その活性化を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる処方にて用いられる。すなわち、その活性化を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる投与量、ならびに投与期間を選択して用いられる。具体的には、その投与量は、NK活性化剤又はNKT活性化剤であるα−1,3グルカン構造を持つ化合物は1g〜40g/日程度、好ましくは5g〜20g/日程度で、CTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)であるβ−1,3グルカン構造を持つ化合物は1g〜10g/日程度、好ましくは3g〜6g/日程度である。また、投与期間は一般的には10日間〜24ヶ月間、投与頻度は隔日又は1〜3回/日で、好ましくは連日投与である。当該CTL活性化剤(IL−12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)、NK活性化剤、NKT活性化剤は、好適には経口摂取される。無論、投与量を減少させ、これらを非経口に耐え得る品質に調製することで、非経口摂取(静脈内または筋肉内投与などを含む)も可能である。
抗ガン(化学療法)剤、放射線、あるいはステロイド併用療法を、本発明の併用に加えて行う場合には、2種類の免疫系のうち、TNFα→IFNγ→IL−12→キラーT細胞の系統が著しく障害される。そのためこれらは本発明では用いないことが好ましい。但し抗ガン剤を投与するとき、上記の免疫系を障害しない投与法である低濃度化学療法すなわち5FU、UFT、ミフロール、フルツロン、CDDP(5μg〜10μg)の低濃度やタキソテールあるいはタキソール、アドリアマイシン、マイトマイシン、CPT−11などの低濃度抗ガン剤の投与法等を適用することは有用である。また同様に放射線療法において低容量照射の適用、ステロイド療法においても低濃度投与等を選択する必要がある。
細胞および各サイトカインの測定方法を以下に例示する。
(NKT細胞の測定)(NK細胞の測定)(CD8の測定)
NKR−P1を有するNKT細胞の測定は、NKT細胞の細胞表面に特異的に存在する細胞表面抗原(CD3およびCD161)の測定により行うことができる。具体的には、末梢血中のリンパ球について、CD3が陽性でかつCD161が陽性(CD3+CD161+)の細胞を検定する。つまり、NKT細胞の細胞表面抗原であるCD3およびCD161を、モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーを使用するTwo Color検査により測定する。ここでNKT細胞が活性化されているとは、リンパ球の中でCD3+CD161+NKT細胞の割合が10%以上、より好ましくは16%以上であることをいう。NKT細胞活性化能とは、NKT細胞の割合を10%以上、より好ましくは16%以上に増加せしめる機能、またはある物質を投与する前のNKT細胞の割合より更に増強せしめる機能を意味する。
同様に(CD3−CD161+)とはCD3が陰性でかつCD161が陽性の細胞を検定することである。この方法はNK細胞の測定に有用である。
さらにCD8+とはCD8が陽性の細胞を検定することである。この方法はCTL活性の測定に有用である。
実施例ではガン患者の血液を用いて、血中細胞について細胞表面抗原であるCD3、CD161、CD8について陽性・陰性で区別し、各細胞の割合を、フローサイトメトリーを用いたTwo Color検査により常法通り測定した。このときCD3、CD161、CD8に対するモノクローナル抗体は、それぞれコールター社製製又はベクトンディッキンソン社製ものを使用した。
(パーフォリン産生細胞の測定)
末梢血中のリンパ球について、細胞表面抗原であるCD3、CD161、CD8のうち2者とパーフォリンについてフローサイトメトリーを用いたThree Color検査により常法通り測定する。具体的には、採取した血液に固定液を加えて細胞を固定し、膜透過液を添加後抗パーフォリン抗体(Pharmingen社製)を添加して反応させ、さらにPRE−Cy5標識二次抗体(DAKO社製)を添加して反応させ、ついで抗CD3−PE(Coulter 6604627)抗体および抗CD161−FITC(B−D)抗体を添加して反応させ、その後フローサイトメトリーで測定する。図・表中での略語はPERと表示した。
(サイトカインを測定するための試料の調製)
まず、血液より単核球画分を分離調製する。ヘパリン加末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)(PBS)で2倍に希釈して混和した後、Ficoll−Conray液(比重1.077)上に重層し、400Gで20分間遠沈後、単核球画分を採取する。洗浄後、10%牛胎児血清(FBS)を加えたRPMI−1640培地を加え、細胞数を1×106個となるように調製する。得られた細胞浮遊液200μlにフィトヘマグルチニン(Phytohemagglutinin)(DIFCO社製)を20μg/mlの濃度となるように加え、96穴マイクロプレートにて5%CO2存在下、37℃で24時間培養し、該培養した細胞溶液中のサイトカインを測定する試料とする。
(IL−12の測定)
IL−12量の測定は自体公知の臨床、生化学的検査を利用できるが、R&D SYSTEMS社やMBL社より入手することのできる酵素免疫測定法(ELISA)による測定キットが使用される。ここではR&D SYSTEMS社の測定キットを用いた。実際には96穴マイクロプレートの各穴に測定用希釈液Assay Diluent RD1Fを50μl、標準液(standard)または前記サイトカイン測定用試料の調製法で調製した試料を200μlずつ分注した後、室温にて静置して2時間反応させた。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ(horse radish peroxidase)(HRP)標識抗IL−12抗体を200μlずつ分注し2時間室温で静置した。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、20分間室温静置後、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。550nmを対照として450nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IL−12量は、pg/mlとして表される。ここでIL−12産生誘発能とは、末梢血単核球画分が刺激により産生するIL−12量を、7.8pg/ml以上に増強せしめる機能、またはある物質を投与する前のIL−12産生量より増強せしめる機能を意味する。
(IFNγの測定)
IFNγの測定は、BioSource Europe S.社のIFNγ EASIAキットを用いて、酵素免疫測定法(EIA法)で測定した。実際には96穴マイクロプレートの各穴に標準液(standard)または上記調製した試料を2倍希釈したものを50μlずつ分注し、HRP標識抗IFN−γ抗体を50μlずつ分注し更に振盪しながら2時間室温で反応させた。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、振盪しながら15分間室温で反応させ、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。630nmを対照として450nmおよび490nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IFNγ量は、IU/mlとして表される。
(血管新生阻害能の測定)
(血管内皮細胞増殖因子/VEGFと塩基性繊維芽細胞増殖因子/bFGF及び血管新生阻害因子エンドスタチン/endostatinの測定)
市販キットの各酵素免疫固相法(ELISA:enzyme linked immuno sorbent assay)(ACCUCYTE Human VEGF,ACCUCYTE Human bFGF,ACCUCYTE Human Endostatin:CYTIMMUNE Sciences Inc.)で血清中濃度を測定した。
(Th2の測定)
Th2とは、細胞表面抗原CD4を有するヘルパーT細胞(100%)の中で、INFγ陰性かつIL−4陽性細胞の割合値を示すものである。
癌患者血液をブレフェルジンA(Breferdin A:BFA)存在下でホルボール12−ミリステート−13−アセテート(phorbol 12−Myristate 13 Acetate:PMA)及びイオノマイシン(Ionomycin)を加え、37℃で4時間刺激した。PMA,イオノマイシンで血液中の細胞を刺激してサイトカインを産出させ、BFAで細胞内タンパク質の細胞外への輸送を阻害した。このようにして調製された活性化検体にCD4−PC5(Beckman Coulter社)を加えて細胞表面のCD4を染色した。次に、FACS Lysing Solution(Becton Dickinson)で溶血及び固定処理をした後、更にFACS Permeabilizing Solutio(Becton Dickinson)で細胞膜透過処理を行なった。その後、IFN−γ FITC/IL−4 PE(Becton Dickinson)を用いて細胞内サイトカインを染色し、フローサイトメーター(FACS Calibur、Becton Dickinson)で測定し、解析を行った。
{Th1/Th2(細胞)比の測定}
Th1/Th2細胞比は、フローサイトメトリーによるヘルパーT(Th)細胞系統Three color解析検査によって常法により検定した。Th1/Th2とは、細胞表面抗原CD4を有するヘルパーT細胞のなかでIFNγを産生する細胞(Th1)とIL−4を産生する細胞(Th2)の比率を表すもので、CD4×IFNγ/IL−4と記す。
まず癌患者血液を、ホルボール12−ミリステート−13−アセテート(phorbol 12−Myristate 13 Acetate)とイオノマイシン(Ionomycin)により37℃で4時間処理し、血液中の細胞を刺激してサイトカインを産生させた。次いでブレフェルジンA(Breferdin A)を加えて産生反応を停止させ、抗CD4抗体であるCD4−PC5(Beckman Coulter社)を用いて細胞表面マーカーであるCD4を染色し、細胞を固定後、FACS Lysing Solution(日本ベクトンディッキンソン社)を用いて溶血処理した。その後FACS Permeabilizing Solution(日本ベクトンディッキンソン社)により細胞膜透過処理を行い、更に抗IFNγ抗体/抗IL−4抗体(FASTIMMUNE IFNγ FITC/IL−4 PE,日本ベクトンディッキンソン社)で細胞内のサイトカインを染色して、フローサイトメーター(FACS Calibur、Becton Dickinson社)で測定および解析を行った。
(TNFαの測定方法)
1.単核球の分離調製と培養
ヘパリン加末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)(PBS)で2倍に希釈して混和した後、Conray−ficoll液(比重1.077)上に重層し、1800rpmで20分間遠沈後、単核球画分を採取した。洗浄後、10%牛胎児血清(FBS)を加えたRPMI−1640培地を加え、リンパ球数を1×106個/mlとなるように調製した。得られた細胞浮遊液200μlにフィトヘマグルチニン(Phytohemagglutinin:30μg/ml)(DIFCO社製)を20μl加え、96穴マイクロプレートにて5%CO2存在下、37℃で24時間培養した。培養後は、測定まで凍結保存した。
2.ELISAによる測定
あらかじめ抗ヒトTNFαが固相化されている抗体プレートに標準液又は被検検体を加えて反応させた。次に、プレートを洗浄し、POD標識抗ヒトTNFαモノクローナル抗体(酵素標識抗体)を加え反応させた。再度プレートを洗浄後、基質を加えて酵素反応を行い、活性を波長492nmにおける吸光度として読み取った。
なお、臨床検査に用いた各マーカーは何れも市販品を用い、各推奨の方法により測定値を示した。表示される略字は各一般的な表示方法によった。
患者の効果判定は、次のCR(完全寛解)、PR(部分寛解)、LNC(長期不変)、SNC(短期不変)、PD(病状進行)の5段階判定を行った。また、各癌種での奏効率とは、各癌種の全症例中のCR、PR、LNC、SNC、PDの割合を示す(例、症例数7の結腸癌における、PR71.4%とは7症例中の内5症例がPRを表す)。
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
新免疫療法(NITC)として進行末期癌症例に対し治療を行ってきた。2002年4月末現在3490例中35.3%のCR、PRの奏効例を得ている。このNITCはβ−1,3グルカンの投与で内因性TNFα、IFNγ、IL−12を誘導してCTL(キラーT細胞)を活性化し、かつα−1,3グルカンの投与でNKおよびNKT細胞の活性化をはかると共にベターシャークの経口投与で血管新生阻害をはかるBRM療法である。患者には、IL−12産生誘発剤、さめ軟骨(セイシン企業)、及びα1,3構造をもつ糖類等を、各推奨処方により投与された。また、IL−12産生誘導剤として、ILX(東西医薬)、ILY(セイシン企業)、クレスチン(三共)、イミュトール(NBG)等を患者の症状により、単独又は併用して投与がなされ、略同一の結果を得た。
新免疫療法(NITC)として進行末期癌症例に対し治療を行ってきた。2002年4月末現在3490例中35.3%のCR、PRの奏効例を得ている。このNITCはβ−1,3グルカンの投与で内因性TNFα、IFNγ、IL−12を誘導してCTL(キラーT細胞)を活性化し、かつα−1,3グルカンの投与でNKおよびNKT細胞の活性化をはかると共にベターシャークの経口投与で血管新生阻害をはかるBRM療法である。患者には、IL−12産生誘発剤、さめ軟骨(セイシン企業)、及びα1,3構造をもつ糖類等を、各推奨処方により投与された。また、IL−12産生誘導剤として、ILX(東西医薬)、ILY(セイシン企業)、クレスチン(三共)、イミュトール(NBG)等を患者の症状により、単独又は併用して投与がなされ、略同一の結果を得た。
症例1
今回、末期肺腺癌(両肺粟粒性肺転移)で頚椎、胸椎および股関節の骨転移かつ脳転移も認められた症例(NITCPD例)にイレッサ250mg/日の経口投与を追加したところ1ヶ月半で癌性胸水と原発性肺癌が完全に消失かつ右股関節・頚椎・胸椎の骨転移も治癒し、TNFα、IFNγ、及びIL−12も基準値を超えて活性化され、各種腫瘍マーカーも正常化しCRと判定された。(図−1)(表−1)
症例2
前立腺癌で多発骨転移の症例でホルモン抵抗性、抗癌剤抵抗性、免疫療法抵抗性の末期癌症例にZA1839(イレッサ)250mg/日をNITCに併用追加投与したが1ヶ月で多発骨転移も完全寛解しPSAの値も170mg/mlから4.0ng/mlと正常化した。(CR判定)(表−2)
症例3
右肺腺癌で両肺に粟粒性肺転移と多発肋骨転移が認められ、呼吸困難と激しい背部痛が出現していた症例に2002年8月3日よりイレッサ1錠250mg/日をNITCに併用連日投与した。
8月31日の投与後約1ヶ月で右肺原発巣は半減し粟粒性肺転移もほとんど消失し、多発肋骨転移も消失した。TNFα、IFNγ、及びIL−12産生誘導も増加し、腫瘍マーカーのCEAが治療前256ng/mlから172ng/mlと、またSLX−1が480U/mlから140U/mlと半減以下となった。(PR判定)(図−2)(表−3)
NITCと抗癌剤、放射線との併用は、IFNγ、IL−12の産生誘導を阻害するが、NITCとイレッサの併用はIFNγ、IL−12の産生を抑制せずかえって増加させる傾向が認められた。Th1サイトカインの産生は骨転移を改善するために重要であり、破骨細胞分化増殖に対しTRAF6を阻害することで阻害作用が認められている。またイレッサはTRAF6の下流のc−fos mRNAのシグナル伝達を阻害することで破骨細胞の分化増殖を阻害することが可能である。(図−3)
イレッサは、c−fos mRNAの発現を抑制してEGFRのチロシンキナーゼシグナル伝達系を抑制すると共に破骨細胞の分化を阻害する。また、新免疫療法(NITC)によりIFNγやIL−12等のTh1サイトカインを増量することで破骨細胞の分化をc−fosより上流で阻害し、イレッサとNITCとは相加あるいは相乗的に骨転移を改善することが可能となる。骨転移に関してはNITCによりTh1サイトカインの産生増強により破骨細胞の分化におけるTRAF6の産生を抑制し、さらにイレッサによるTRAF6の下流にあるc−fos mRNAの発現を抑制して2重システムで骨転移を阻害する。従って、骨転移に対してもNITCとイレッサは相加あるいは相乗的に作用し症例1、症例2および症例3の骨転移を改善したものと考えられる。
イレッサは癌細胞に直接的あるいは間接的に抗腫瘍性を作用するのに対し、NITCはβ−1,3グルカン投与でTh1サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL−12)を産生増強し、CTLのみならずNKやNKT細胞も活性化する。一方、α−1,3グルカン投与でNKとNKT細胞を活性し、effector細胞を活性化する。また、NITCはADCC活性化も促進することが分っている。すなわち、イレッサの分子標的治療と免疫療法とは相互に補いながら癌の治療効果を亢める作用が認められた。
イレッサによる治療では、EGFRチロシンキナーゼ阻害により癌細胞の縮小(PR)(約20%)と増殖の停止(NC)(約50%)の成績である。NITCを併用することでβ−1,3グルカンでTh1サイトカイン→CTL活性を促し、α−1,3グルカンでNKおよびNKT細胞を活性化することによりそれぞれのeffector細胞を増殖、活性化することが可能である。これらの活性化CTL、NKおよびNKT細胞がイレッサで発育、増殖の減速あるいは停止状態におちいった腫瘍細胞を攻撃しやすくなることによるものと考えられる。従って人類がこれまで治療不能と考えられた粟粒性肺転移や骨転移など難治性悪性腫瘍も治療可能となる。
今回、末期肺腺癌(両肺粟粒性肺転移)で頚椎、胸椎および股関節の骨転移かつ脳転移も認められた症例(NITCPD例)にイレッサ250mg/日の経口投与を追加したところ1ヶ月半で癌性胸水と原発性肺癌が完全に消失かつ右股関節・頚椎・胸椎の骨転移も治癒し、TNFα、IFNγ、及びIL−12も基準値を超えて活性化され、各種腫瘍マーカーも正常化しCRと判定された。(図−1)(表−1)
症例2
前立腺癌で多発骨転移の症例でホルモン抵抗性、抗癌剤抵抗性、免疫療法抵抗性の末期癌症例にZA1839(イレッサ)250mg/日をNITCに併用追加投与したが1ヶ月で多発骨転移も完全寛解しPSAの値も170mg/mlから4.0ng/mlと正常化した。(CR判定)(表−2)
症例3
右肺腺癌で両肺に粟粒性肺転移と多発肋骨転移が認められ、呼吸困難と激しい背部痛が出現していた症例に2002年8月3日よりイレッサ1錠250mg/日をNITCに併用連日投与した。
8月31日の投与後約1ヶ月で右肺原発巣は半減し粟粒性肺転移もほとんど消失し、多発肋骨転移も消失した。TNFα、IFNγ、及びIL−12産生誘導も増加し、腫瘍マーカーのCEAが治療前256ng/mlから172ng/mlと、またSLX−1が480U/mlから140U/mlと半減以下となった。(PR判定)(図−2)(表−3)
NITCと抗癌剤、放射線との併用は、IFNγ、IL−12の産生誘導を阻害するが、NITCとイレッサの併用はIFNγ、IL−12の産生を抑制せずかえって増加させる傾向が認められた。Th1サイトカインの産生は骨転移を改善するために重要であり、破骨細胞分化増殖に対しTRAF6を阻害することで阻害作用が認められている。またイレッサはTRAF6の下流のc−fos mRNAのシグナル伝達を阻害することで破骨細胞の分化増殖を阻害することが可能である。(図−3)
イレッサは、c−fos mRNAの発現を抑制してEGFRのチロシンキナーゼシグナル伝達系を抑制すると共に破骨細胞の分化を阻害する。また、新免疫療法(NITC)によりIFNγやIL−12等のTh1サイトカインを増量することで破骨細胞の分化をc−fosより上流で阻害し、イレッサとNITCとは相加あるいは相乗的に骨転移を改善することが可能となる。骨転移に関してはNITCによりTh1サイトカインの産生増強により破骨細胞の分化におけるTRAF6の産生を抑制し、さらにイレッサによるTRAF6の下流にあるc−fos mRNAの発現を抑制して2重システムで骨転移を阻害する。従って、骨転移に対してもNITCとイレッサは相加あるいは相乗的に作用し症例1、症例2および症例3の骨転移を改善したものと考えられる。
イレッサは癌細胞に直接的あるいは間接的に抗腫瘍性を作用するのに対し、NITCはβ−1,3グルカン投与でTh1サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL−12)を産生増強し、CTLのみならずNKやNKT細胞も活性化する。一方、α−1,3グルカン投与でNKとNKT細胞を活性し、effector細胞を活性化する。また、NITCはADCC活性化も促進することが分っている。すなわち、イレッサの分子標的治療と免疫療法とは相互に補いながら癌の治療効果を亢める作用が認められた。
イレッサによる治療では、EGFRチロシンキナーゼ阻害により癌細胞の縮小(PR)(約20%)と増殖の停止(NC)(約50%)の成績である。NITCを併用することでβ−1,3グルカンでTh1サイトカイン→CTL活性を促し、α−1,3グルカンでNKおよびNKT細胞を活性化することによりそれぞれのeffector細胞を増殖、活性化することが可能である。これらの活性化CTL、NKおよびNKT細胞がイレッサで発育、増殖の減速あるいは停止状態におちいった腫瘍細胞を攻撃しやすくなることによるものと考えられる。従って人類がこれまで治療不能と考えられた粟粒性肺転移や骨転移など難治性悪性腫瘍も治療可能となる。
症例4 73歳 男性
2000年8月10日に小腸平滑筋肉腫で小腸切除し、2001年12月27日に肝転移で肝動脈塞栓術を施行し経度に縮小をみた。その後、2002年7月肝転移が増大し、腹膜転移も出現した。そのため、2002年7月22日より、NITC治療を開始した。2002年8月20日より、グリベック400mg/日の投与も開始した。8月20日時点での、Th1サイトカインの活性化は起こっており、各TNFα(2570pg/ml)、IFNγ(17.5IU/ml)、IL−12(49.8pg/ml)であった。NK活性も強い値〔CD3(−)CD161(+):30.6%〕を示した。しかし、NKT細胞活性はみとめられなかった〔CD3(+)CD161(+)perforin(+):29.9%〕。腫瘍マーカーはGATは22.9u/ml(正常値13.6以下)、BFP:93ng/ml(正常値75以下)、ICTP:5.2ng/ml(正常値4.5以下)と高値を示した。約1ヶ月間、NITCとグリベックの併用療法を続け、2002年9月18日に測定した各免疫マーカーの値は前回よりも増強していた。各TNFα(4322pg/ml)、IFNγ(34.8IU/ml)、IL−12(98.3pg/ml)、NK活性〔CD3(−)CD161(+):35.4%〕、NKT細胞活性〔CD3(+)CD161(+)perforin(+):32.4%〕。腫瘍マーカーはGATは18.3u/ml(正常値13.6以下)、BFP:79ng/ml(正常値75以下)、ICTP:4.8ng/ml(正常値4.5以下)であった。そして、驚いたことに、同時に行った超音波検査で肝転移は50%以上縮小し、異常を示した腫瘍マーカーも全て改善していた。
症例5 62歳 女性 子宮筋肉腫
2000年1月26日に子宮筋肉腫で子宮全摘出と両側付属器官の切除を受けた。しかし、腹腔内残存腫瘍が認められた。2000年2月から5月まで、パラプラチン、エンドキサン、テラルビシンの抗癌剤投与を受けたがPDと判定された。2001年11月15日に左腹部腹壁に手拳大の腫瘍が出現し、2002年1月23日再切除を施行した。その後、2002年2月から4月までイホマイドの抗癌剤投与したが2002年4月に右腹壁に6x5cm大の子宮筋肉腫の再々転移が認められた。2002年8月10日に超音波検査で右腹壁に103x88x81mmと左腹壁に29x30x27mmの肉腫の増大が認められた。
2002年8月10日より、グリベック400mg/日とNITCの併用療法を行った。2002年9月17日の超音波検査で右腹壁の腫瘍58x40x39mmと左腹壁の腫瘍15x14x13mmと半減していた。また、Th1サイトカインの産生能力の増強が確認された(TNFα(4106pg/ml)、IFNγ(33.5IU/ml)、IL−12(80.6pg/ml)。
症例4、症例5はいずれも末期肉腫である。これらの症例では、NITC単独ではPDであったが、クリベック併用で約1ヶ月の極めて短い期間でいづれも著名な改善(PR)を得た。これまでのグリベックの投与報告例では4ヶ月から6ヶ月の投与で20%前後の奏効例しか報告されていない。しかし、本臨床例では、極めて短期間に処方例全てでPRを達成した。このことは、NITC療法特にIL−12の産生誘発療法とグリベックの併用療法は、上記イレッサのNITC療法特にIL−12の産生誘発療法との併用療法と同様に、対癌治療に対して相乗効果が発揮されたものと推定された。かくして、本発明により、チロシンキナーゼ阻害剤とTh1サイトカイン産生増強剤の併用には、対抗癌効果に相乗効果のあることを確認した。なお、抗癌剤とNITCの併用療法ではTh1サイトカイン値の著名な抑制が認められたが、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤とNITCの併用療法ではいずれも免疫能力を上昇させ、そして抗腫瘍作用においても相乗的に作用することが確認された。
2000年8月10日に小腸平滑筋肉腫で小腸切除し、2001年12月27日に肝転移で肝動脈塞栓術を施行し経度に縮小をみた。その後、2002年7月肝転移が増大し、腹膜転移も出現した。そのため、2002年7月22日より、NITC治療を開始した。2002年8月20日より、グリベック400mg/日の投与も開始した。8月20日時点での、Th1サイトカインの活性化は起こっており、各TNFα(2570pg/ml)、IFNγ(17.5IU/ml)、IL−12(49.8pg/ml)であった。NK活性も強い値〔CD3(−)CD161(+):30.6%〕を示した。しかし、NKT細胞活性はみとめられなかった〔CD3(+)CD161(+)perforin(+):29.9%〕。腫瘍マーカーはGATは22.9u/ml(正常値13.6以下)、BFP:93ng/ml(正常値75以下)、ICTP:5.2ng/ml(正常値4.5以下)と高値を示した。約1ヶ月間、NITCとグリベックの併用療法を続け、2002年9月18日に測定した各免疫マーカーの値は前回よりも増強していた。各TNFα(4322pg/ml)、IFNγ(34.8IU/ml)、IL−12(98.3pg/ml)、NK活性〔CD3(−)CD161(+):35.4%〕、NKT細胞活性〔CD3(+)CD161(+)perforin(+):32.4%〕。腫瘍マーカーはGATは18.3u/ml(正常値13.6以下)、BFP:79ng/ml(正常値75以下)、ICTP:4.8ng/ml(正常値4.5以下)であった。そして、驚いたことに、同時に行った超音波検査で肝転移は50%以上縮小し、異常を示した腫瘍マーカーも全て改善していた。
症例5 62歳 女性 子宮筋肉腫
2000年1月26日に子宮筋肉腫で子宮全摘出と両側付属器官の切除を受けた。しかし、腹腔内残存腫瘍が認められた。2000年2月から5月まで、パラプラチン、エンドキサン、テラルビシンの抗癌剤投与を受けたがPDと判定された。2001年11月15日に左腹部腹壁に手拳大の腫瘍が出現し、2002年1月23日再切除を施行した。その後、2002年2月から4月までイホマイドの抗癌剤投与したが2002年4月に右腹壁に6x5cm大の子宮筋肉腫の再々転移が認められた。2002年8月10日に超音波検査で右腹壁に103x88x81mmと左腹壁に29x30x27mmの肉腫の増大が認められた。
2002年8月10日より、グリベック400mg/日とNITCの併用療法を行った。2002年9月17日の超音波検査で右腹壁の腫瘍58x40x39mmと左腹壁の腫瘍15x14x13mmと半減していた。また、Th1サイトカインの産生能力の増強が確認された(TNFα(4106pg/ml)、IFNγ(33.5IU/ml)、IL−12(80.6pg/ml)。
症例4、症例5はいずれも末期肉腫である。これらの症例では、NITC単独ではPDであったが、クリベック併用で約1ヶ月の極めて短い期間でいづれも著名な改善(PR)を得た。これまでのグリベックの投与報告例では4ヶ月から6ヶ月の投与で20%前後の奏効例しか報告されていない。しかし、本臨床例では、極めて短期間に処方例全てでPRを達成した。このことは、NITC療法特にIL−12の産生誘発療法とグリベックの併用療法は、上記イレッサのNITC療法特にIL−12の産生誘発療法との併用療法と同様に、対癌治療に対して相乗効果が発揮されたものと推定された。かくして、本発明により、チロシンキナーゼ阻害剤とTh1サイトカイン産生増強剤の併用には、対抗癌効果に相乗効果のあることを確認した。なお、抗癌剤とNITCの併用療法ではTh1サイトカイン値の著名な抑制が認められたが、本発明のチロシンキナーゼ阻害剤とNITCの併用療法ではいずれも免疫能力を上昇させ、そして抗腫瘍作用においても相乗的に作用することが確認された。
NITCとイレッサとの併用治療における、癌の免疫治療の実施例1、2の症例1〜5症例を含む55症例での治療結果を総括した。55症例の癌の進行度は、初期段階から進行末期段階であり、癌種類は肺癌、大腸癌、肛門癌、腎癌、舌癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、食道癌、膵癌、咽頭癌、耳下腺癌、膀胱癌、子宮頚癌、卵巣癌である。また、各症例のNITCとイレッサとの併用治療期間は、約2〜4ヶ月間である。また、各症例での、患者には、実施例1と同様に、IL−12産生誘導剤、さめ軟骨(セイシン企業)、及びα1,3構造をもつ糖類(NK、NKT活性化剤)が、各推奨処方により投与された。また、イレッサは、各推奨処方に従い、例えば、症例1のように、250mg/日の量を経口投与した。
各癌種での奏効率の検討
肺(腺)癌は15例中PR症例が12例の80%に奏効例が認められた。残り3例はNC症例であった。肺(腺)癌症例では4例が粟粒性肺転移症例である。すなわち肺(腺)癌のなかでも粟粒性肺転移は最も予後が不良で呼吸困難を合併し、従来の治療法では全くといってよいほどに改善することは不可能であった。このような粟粒性肺転移症例はイレッサ単独では改善することはあり得ないと考えられる。また肺(腺)癌のイレッサ単独治療例はこれまで奏効例の割合は20%前後と報告されているが、今回のNITCとイレッサとの併用は15例中12例である80%がPR例という驚くべき改善率を示した(図4)。
大腸癌は直腸癌と結腸癌とに分類される。一般に直腸癌は結腸癌に比較し、予後不良と考えられている。NITCとイレッサとの併用治療による効果は、直腸癌は4例でいずれもPRと判定され奏効率100%であった。一方、結腸癌は7例でPRが5例(71.4%)、NCが1例(14.3%)、そしてPDが1例(14.3%)であった。従って大腸癌としてはPRが9例(81.8%)という驚くべき改善率を示した(図5)。
NITCとイレッサとの併用治療による効果において、肺(腺)、大腸癌以外の癌種で、PR症例が認められた悪性腫瘍は、肛門癌2例中1例の50%、腎癌2例中2例の100%、舌癌は1例中1例の100%、卵巣癌が4例中2例の50%であり、胃癌が3例中1例の33.3%、乳癌は6例中1例の16.7%であった。また、前立腺癌は2例中2例がNCであり、腫瘍マーカーのPSAは低下しなかったが骨転移の疼痛は著明に改善した。食道癌は3例中2例の66.7%がNC、膵癌、喉頭癌、耳下腺癌の各1例はNCで進行が停止していた。膀胱癌と子宮頸癌ではいずれもPD症例のみであった。
NITCとイレッサとの併用治療による効果において、肺(腺)癌、大腸癌(結腸癌、直腸癌)、腎癌、舌癌、卵巣癌、胃癌、肛門癌、乳癌の有効例ではTh1サイトカインのTNFα、IFNγおよびIL−12が高値を示す傾向が認められた。また、VEGFも抑制している傾向が認められた。一方、NK細胞とNKT細胞においては有効例と無効例とで差は認められなかった。従ってイレッサ(商品名)と免疫療法の併用治療はTh1サイトカインのなかでもIFNγとIL−12とを上昇させ得ることがこのような著効例を見出しているものと考えられる(図6)。
現在、イレッサ(商品名)と抗癌剤との併用ではその効果が認められていないが、本発明に係るNITC(特にIL−12産生誘導剤)とイレッサとの併用治療では、各癌種での治療効果を確認できた。特に、肺(腺)癌、大腸癌(結腸癌、直腸癌)、腎癌、舌癌、卵巣癌、胃癌、肛門癌、乳癌種に対してのNITC(特にIL−12産生誘導剤)とイレッサ(商品名)との併用治療は有効である。
以上より、ガン患者に本発明に係るNITC(特にIL−12産生誘導剤)とイレッサRとの併用治療を施すことは、有効なガンの治療方法となる。
各癌種での奏効率の検討
肺(腺)癌は15例中PR症例が12例の80%に奏効例が認められた。残り3例はNC症例であった。肺(腺)癌症例では4例が粟粒性肺転移症例である。すなわち肺(腺)癌のなかでも粟粒性肺転移は最も予後が不良で呼吸困難を合併し、従来の治療法では全くといってよいほどに改善することは不可能であった。このような粟粒性肺転移症例はイレッサ単独では改善することはあり得ないと考えられる。また肺(腺)癌のイレッサ単独治療例はこれまで奏効例の割合は20%前後と報告されているが、今回のNITCとイレッサとの併用は15例中12例である80%がPR例という驚くべき改善率を示した(図4)。
大腸癌は直腸癌と結腸癌とに分類される。一般に直腸癌は結腸癌に比較し、予後不良と考えられている。NITCとイレッサとの併用治療による効果は、直腸癌は4例でいずれもPRと判定され奏効率100%であった。一方、結腸癌は7例でPRが5例(71.4%)、NCが1例(14.3%)、そしてPDが1例(14.3%)であった。従って大腸癌としてはPRが9例(81.8%)という驚くべき改善率を示した(図5)。
NITCとイレッサとの併用治療による効果において、肺(腺)、大腸癌以外の癌種で、PR症例が認められた悪性腫瘍は、肛門癌2例中1例の50%、腎癌2例中2例の100%、舌癌は1例中1例の100%、卵巣癌が4例中2例の50%であり、胃癌が3例中1例の33.3%、乳癌は6例中1例の16.7%であった。また、前立腺癌は2例中2例がNCであり、腫瘍マーカーのPSAは低下しなかったが骨転移の疼痛は著明に改善した。食道癌は3例中2例の66.7%がNC、膵癌、喉頭癌、耳下腺癌の各1例はNCで進行が停止していた。膀胱癌と子宮頸癌ではいずれもPD症例のみであった。
NITCとイレッサとの併用治療による効果において、肺(腺)癌、大腸癌(結腸癌、直腸癌)、腎癌、舌癌、卵巣癌、胃癌、肛門癌、乳癌の有効例ではTh1サイトカインのTNFα、IFNγおよびIL−12が高値を示す傾向が認められた。また、VEGFも抑制している傾向が認められた。一方、NK細胞とNKT細胞においては有効例と無効例とで差は認められなかった。従ってイレッサ(商品名)と免疫療法の併用治療はTh1サイトカインのなかでもIFNγとIL−12とを上昇させ得ることがこのような著効例を見出しているものと考えられる(図6)。
現在、イレッサ(商品名)と抗癌剤との併用ではその効果が認められていないが、本発明に係るNITC(特にIL−12産生誘導剤)とイレッサとの併用治療では、各癌種での治療効果を確認できた。特に、肺(腺)癌、大腸癌(結腸癌、直腸癌)、腎癌、舌癌、卵巣癌、胃癌、肛門癌、乳癌種に対してのNITC(特にIL−12産生誘導剤)とイレッサ(商品名)との併用治療は有効である。
以上より、ガン患者に本発明に係るNITC(特にIL−12産生誘導剤)とイレッサRとの併用治療を施すことは、有効なガンの治療方法となる。
免疫療法(NITC)の単独症例の46例(CR:1例、PR:13例、LNC:2例、SNC:22例、PD:8例)および免疫療法(NITC)とイレッサ(250mg/日/経口)追加併用例の27例(CR:2例、PR:20例、NC:5例、PD:0例)の合計73例において、イレッサ投与の寄与度と各免疫学的因子のそれぞれにおける寄与度(率)を検討した。結果は、ロジスティック回帰係数によって図7に示した。
肺腺癌の治療において全体で検討すると、第一はイレッサを投与するか否かが最も重要である。第二が、IL−12の産生能力とNKT細胞でのパーフォリン産生細胞(NKTPと記載)がほぼ同率で重要である。ついでIFNγ、TNFαの産生能力の順で意義があった。
免疫療法(NITC)とイレッサ投与症例の26例における、免疫学的各ファクターの寄与率を検討した。結果は、ロジスティック回帰係数によって図8に示した。その結果、イレッサ投与前ではNKTP細胞(NKT細胞でPerforin陽性細胞)が最も重要な意義を示した。イレッサ投与前における患者の免疫能力の差違で本療法での有効群と無効群での識別が可能か否かを判定することは肺腺癌患者の治療方針決定にとって重要なことと考えられた。
そこで、まずイレッサ投与前のNKTP細胞の割合(総リンパ球中のNKTP細胞の割合)を確認し、結果を図9に示した。NKTP細胞数(割合)を5.0%でカットオフ値とした場合、92.9%が有効と判定された。しかし、NKTPが5.0%以下でもなお57.1%は有効例であり、判定から落ちこぼれている。この5.0%未満となった症例については、さらにTh1/Th2比で有効例を判定できることが判明した。すなわち、図8から明らかであるように、イレッサ投与前後の変化量としてTh1/Th2比が非常に高値を示しているので、この指標を用いてNKTPが5.0%未満の症例を解析した。図10に示されたように、Th1/Th2比がイレッサ投与後に増加した場合に88.9%の割合で有効例を判定できることがわかった。Th1/Th2比がイレッサ投与後に減少すると100%無効例となった。
以上の結果をまとめると、NKTP値が5.0%以上であればイレッサとNITC併用で有効性が高く、NKTP値が5.0%未満の値でも、Th1/Th2比がイレッサ投与後に増加していれば有効性が期待できる可能性が高いことが示唆された。かくして本実施例の分析結果から、NITCとイレッサ併用投与症例において、NKTP値のイレッサ投与前値が5.0%以上、もしくはイレッサ投与後のTh1/Th2比が増加していれば、NITCとイレッサ併用投与による有効例が有意に高いと判定される(p<0.001)(図11)ことが判明した。
肺腺癌の治療において全体で検討すると、第一はイレッサを投与するか否かが最も重要である。第二が、IL−12の産生能力とNKT細胞でのパーフォリン産生細胞(NKTPと記載)がほぼ同率で重要である。ついでIFNγ、TNFαの産生能力の順で意義があった。
免疫療法(NITC)とイレッサ投与症例の26例における、免疫学的各ファクターの寄与率を検討した。結果は、ロジスティック回帰係数によって図8に示した。その結果、イレッサ投与前ではNKTP細胞(NKT細胞でPerforin陽性細胞)が最も重要な意義を示した。イレッサ投与前における患者の免疫能力の差違で本療法での有効群と無効群での識別が可能か否かを判定することは肺腺癌患者の治療方針決定にとって重要なことと考えられた。
そこで、まずイレッサ投与前のNKTP細胞の割合(総リンパ球中のNKTP細胞の割合)を確認し、結果を図9に示した。NKTP細胞数(割合)を5.0%でカットオフ値とした場合、92.9%が有効と判定された。しかし、NKTPが5.0%以下でもなお57.1%は有効例であり、判定から落ちこぼれている。この5.0%未満となった症例については、さらにTh1/Th2比で有効例を判定できることが判明した。すなわち、図8から明らかであるように、イレッサ投与前後の変化量としてTh1/Th2比が非常に高値を示しているので、この指標を用いてNKTPが5.0%未満の症例を解析した。図10に示されたように、Th1/Th2比がイレッサ投与後に増加した場合に88.9%の割合で有効例を判定できることがわかった。Th1/Th2比がイレッサ投与後に減少すると100%無効例となった。
以上の結果をまとめると、NKTP値が5.0%以上であればイレッサとNITC併用で有効性が高く、NKTP値が5.0%未満の値でも、Th1/Th2比がイレッサ投与後に増加していれば有効性が期待できる可能性が高いことが示唆された。かくして本実施例の分析結果から、NITCとイレッサ併用投与症例において、NKTP値のイレッサ投与前値が5.0%以上、もしくはイレッサ投与後のTh1/Th2比が増加していれば、NITCとイレッサ併用投与による有効例が有意に高いと判定される(p<0.001)(図11)ことが判明した。
実施例4の臨床例によって、免疫療法(NITC)とイレッサとの併用療法のさらなる有用性を分析した。分析結果は図12に示した如く、イレッサ投与1ヶ月以降に、腫瘍の増殖が抑制されるBタイプとイレッサ投与の効果がないAタイプに分かれることが判明した。さらに、症状が良くなったBタイプでも、さらに6ヶ月以内に、再燃・再発するCタイプと再燃しないDタイプに分かれることが判明した。それぞれの分岐点でどちらのタイプ(A又はBタイプ、C又はDタイプ)にいくかを予測することが出来れば有効なガン免疫治療の指標となる。また、イレッサ投与後、数週間から5ヶ月、好ましくは1ヶ月から3ヶ月に患者の免疫学的各ファクターを測定することによって、その後の免疫療法(NITC)とイレッサの併用療法を継続することが有効な治療となるかを予測することが出来れば有効なガン免疫治療の指標となる。そのために、タイプの予測因子を明らかにするために宿主の免疫学的特徴(腫瘍マーカー)を検討した。
その結果、Aタイプ又はBタイプになるかは、イレッサ投与前のNKTP値が5.0%以上であればBタイプとなり、たとえNKTP値が5.0%未満でもイレッサ投与後のTh1/Th2比が増加していればBタイプの方向に向かうことが判明した(図8〜11)。また、NKTP値が5.0%未満で、Th1/Th2比が減少していればAタイプとなり、イレッサは効果を発揮しないことが判明した。
一方、Cタイプ又はDタイプになるかは、図13に示した結果によりTh2値の割合が3%を超えればDタイプに向かい、3%未満の場合には再燃・再発するCタイプになることが判明した。ただし、Dタイプに向かう場合にはイレッサ投与後のIL−12、INFγの値がイレッサ投与後でも低下していないことが重要であると判明した(図14)。
以上の分析結果をもとに、イレッサとNITCとの抗腫瘍作用の相違を図15のシェーマに示した。
癌細胞の増殖が著明な場合は抗原も提示されていない。癌細胞は増殖が激しい細胞ほどEGFRが多いはずである。このEGFRのシグナル伝達系のチロシンキナーゼ阻害作用でイレッサが細胞内でシグナルをブロックする。このことによって癌細胞の核がアポトーシスにおちいり、核の障害が起こり癌細胞の表面にFAS抗原や癌抗原のClassIまたはClassII抗原が表出する。その結果CTL細胞(キラーT細胞)やNK細胞が抗原認識し免疫細胞が癌細胞をターゲットとして攻撃しアポトーシス小体となった癌細胞を貧食することになる。
従って図15に示した如くイレッサとNITCの併用療法では、まずイレッサが癌細胞での増殖を促すEGFRのシグナル伝達をブロックする。その後、免疫細胞が活性化して癌を攻撃するという時間差があると考えられる。
イレッサが作用するか否かはNKTパーフォリン活性とTh1サイトカインが重要である。また、腫瘍が一時縮小し、その効果が続くか否かはIFNγとIL−12の産生が投与後も持続することが重要である。またその際にTh2系の免疫系が必要となるものと推定される。
その結果、Aタイプ又はBタイプになるかは、イレッサ投与前のNKTP値が5.0%以上であればBタイプとなり、たとえNKTP値が5.0%未満でもイレッサ投与後のTh1/Th2比が増加していればBタイプの方向に向かうことが判明した(図8〜11)。また、NKTP値が5.0%未満で、Th1/Th2比が減少していればAタイプとなり、イレッサは効果を発揮しないことが判明した。
一方、Cタイプ又はDタイプになるかは、図13に示した結果によりTh2値の割合が3%を超えればDタイプに向かい、3%未満の場合には再燃・再発するCタイプになることが判明した。ただし、Dタイプに向かう場合にはイレッサ投与後のIL−12、INFγの値がイレッサ投与後でも低下していないことが重要であると判明した(図14)。
以上の分析結果をもとに、イレッサとNITCとの抗腫瘍作用の相違を図15のシェーマに示した。
癌細胞の増殖が著明な場合は抗原も提示されていない。癌細胞は増殖が激しい細胞ほどEGFRが多いはずである。このEGFRのシグナル伝達系のチロシンキナーゼ阻害作用でイレッサが細胞内でシグナルをブロックする。このことによって癌細胞の核がアポトーシスにおちいり、核の障害が起こり癌細胞の表面にFAS抗原や癌抗原のClassIまたはClassII抗原が表出する。その結果CTL細胞(キラーT細胞)やNK細胞が抗原認識し免疫細胞が癌細胞をターゲットとして攻撃しアポトーシス小体となった癌細胞を貧食することになる。
従って図15に示した如くイレッサとNITCの併用療法では、まずイレッサが癌細胞での増殖を促すEGFRのシグナル伝達をブロックする。その後、免疫細胞が活性化して癌を攻撃するという時間差があると考えられる。
イレッサが作用するか否かはNKTパーフォリン活性とTh1サイトカインが重要である。また、腫瘍が一時縮小し、その効果が続くか否かはIFNγとIL−12の産生が投与後も持続することが重要である。またその際にTh2系の免疫系が必要となるものと推定される。
以上の実施例によれば、チロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤(Th1サイトカイン産生増強)の併用はガンの治療において相乗効果あることが見出され、ガン治療における画期的な成果を達成した。
Claims (14)
- チロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤が併用されることを特徴とするガンの治療剤。
- チロシンキナーゼ阻害剤が、以下の1)〜7)の少なくとも1の受容体に対する選択的標的作用を有する請求項1のガンの治療剤。
1)HER2/neu、2)HER3、3)HER4、4)c−kit、5)PDGFR、6)bcr−abl、7)EGFR - チロシンキナーゼ阻害剤が、選択的にEGFR又はc−kit標的作用を有する請求項1のガンの治療剤。
- IL−12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する物質である請求項1〜3の何れか一に記載のガンの治療剤。
- IL−12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する茸菌糸体由来成分又は酵母由来成分である請求項4のガンの治療剤。
- ガンの化学療法剤及び放射線治療との併用無しに処置される請求項1〜5の何れか一に記載のガンの治療剤。
- NKT細胞のNKR−P1に選択的に作用してNKT細胞の活性化をおこす物質と併用される請求項1〜6の何れか一に記載のガンの治療剤。
- 血管新生阻害能を有する物質と併用される請求項1〜7の何れか一に記載のガンの治療剤。
- 以下の1)又は2)のいずれか1をマーカーとしてチロシンキナーゼ阻害剤とIL−12産生誘導剤の併用治療が行われる請求項1〜8の何れか一に記載のガンの治療剤。
1) NKTP値の投与前値が5.0%以上の測定値を示す、
2) Th2値の投与前値が3%以上の測定値を示す - Th1/Th2比がイレッサ投与前値に比較して、投与数ヶ月後に増加の測定値を示すことを併用治療の継続のマーカーにする請求項1〜9の何れか一に記載のガンの治療剤。
- NKTP値の投与前値が、5.0%未満の測定値を示すことを特徴とする請求項10に記載のガンの治療剤。
- IL−12、INFγの測定値が、イレッサ投与前値に比較して投与数ヶ月後の値で低下していないことを併用治療の継続のマーカーにする請求項9に記載のガンの治療剤。
- ガンの治療剤が肺(腺)ガン治療剤であることを特徴とする請求項1〜12の何れか一に記載のガンの治療剤。
- 請求項1〜13の何れか一に記載のガン治療剤を用いたガンの治療方法。
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