JPWO2004023126A1 - シリコン製マイクロセンサの実装方法、製造方法およびシリコン製マイクロセンサ - Google Patents

シリコン製マイクロセンサの実装方法、製造方法およびシリコン製マイクロセンサ Download PDF

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Abstract

課題 センサ素子をケースに接着した後におけるセンサ素子とケースとの位置関係を所望の位置関係に制御し、シリコン製マイクロセンサの基本性能を確保することを目的とする。解決手段 ガスセンサ10の接着用凹部41の底面41Bには、シート状の接着部材48を介してセンサ素子50の素子裏面50Bが接着される。接着部材48は、センサ素子50が接着用凹部41に完全に接着したときにセンサ素子50の素子表面50Aと素子ケース40の配置面40Aとが略面一となる状態を実現する厚みd1を有する。

Description

本発明は、シリコン製基板上に検出機構を備えたセンサ素子をケースに装着することにより構成されたシリコン製マイクロセンサに関する。
従来、シリコン製マイクロセンサは、様々な用途、例えば、ガスの性状変化を検出してガス濃度を測定するといった用途に広く用いられている。このようなシリコン製マイクロセンサに使用されるセンサ素子には、半導体マイクロマシニング技術を用いることにより、検出機構が配設される部位を薄肉とした構造を有するものがある。この構造のセンサ素子では、薄肉とされた部位と薄肉とされていない部位との間に空隙が形成される。このような空隙を備えたセンサ素子の構造のことを、以下、「ダイヤフラム構造」と言う。このようなダイヤフラム構造は、例えば、検出機構がガスの燃焼熱を検出することによりガス濃度を測定するシリコン製マイクロセンサでは、センサ素子において検出機構と他の部位とを熱的に絶縁したり、センサ素子がケースに装着された状態において検出機構の熱容量を小さくする等の役割を果たしている。
上記ダイヤフラム構造を有するセンサ素子のケースへの装着は、従来、ケースとセンサ素子とをペースト状の接着剤で接着することによって行なわれていた(例えば、特開2001−12986号公報参照)。
しかし、上記従来の接着手法では、ペースト状の接着剤はケースとセンサ素子との接着の際に流動し得るため、たとえ接着剤の使用量を一定に保っても接着範囲における接着剤の均一な分布を実現することが難しく、接着剤が固化した後におけるケースとセンサ素子との位置関係について企図した通りの位置関係を得にくいという課題があった。このようなケースとセンサ素子との位置関係は、検出機構の検出精度等のシリコン製マイクロセンサの基本性能に影響し得る。従って、上記の課題は、シリコン製マイクロセンサの基本性能の向上という観点から解決する必要性の高いものであった。
そこで本発明は、上記の課題を解決し、センサ素子をケースに接着した後におけるセンサ素子とケースとの位置関係を所望の位置関係に制御し、シリコン製マイクロセンサの基本性能を確保することを目的として、以下の構成を採った。
本発明の第1のシリコン製マイクロセンサの実装方法は、
シリコン製基板上に検出機構を備えたセンサ素子を、ケースに収納するシリコン製マイクロセンサの実装方法であって、
前記ケースに、前記センサ素子を収納可能な凹部を、該凹部の少なくとも前記センサ素子と接触する底面を平坦として形成し、
該凹部の底面に、予め厚みを調整したシート状の接着部材を配置し、
前記センサ素子を、前記凹部に嵌め込んで、前記接着部材により前記底面に接着固定すること
を要旨とする。
また、本発明の第2のシリコン製マイクロセンサの実装方法は、
シリコン製基板上に検出機構を備えたセンサ素子を、ケースに収納するシリコン製マイクロセンサの実装方法であって、
前記ケースに、前記センサ素子を収納可能な凹部を、該凹部の少なくとも前記センサ素子と接触する底面を平坦として形成し、
前記センサ素子の裏面に、前記凹部に挿入可能な大きさであり、予め厚みを調整したシート状の接着部材を貼付し、
前記センサ素子を、前記凹部に嵌め込んで、前記接着部材により前記底面に接着固定すること
を要旨とする。
上記発明の第1のシリコン製マイクロセンサの実装方法では、ケースに設けられた凹部の底面に予め厚みを調整したシート状の接着部材を配置し、センサ素子を、凹部に嵌め込んで、接着部材により凹部の底面に接着固定する。また、上記発明の第2のシリコン製マイクロセンサの実装方法では、センサ素子の裏面に予め厚みを調整したシート状の接着部材を貼付し、このセンサ素子を、ケースに設けられた凹部に嵌め込んで、接着部材により凹部の底面に接着固定する。このようにシート状の接着部材を用いて接着固定することにより、実装段階において接着部材の厚みを変えることによって、接着後におけるケースとセンサ素子との位置関係を自由に調節することが可能となり、実装後のシリコン製マイクロセンサにおいて所望の位置関係を得ることが可能となる。このように所望の位置関係を得ることで、実装後におけるシリコン製マイクロセンサの基本性能を確保し易くなる。
センサ素子を収納可能な凹部が、センサ素子が配置される側のケースの表面である配置面に所定の深さで形成されており、シート状の接着部材の予め調整された厚みが、凹部にセンサ素子を嵌めて接着固定した後で、センサ素子の素子表面とケースの配置面とが略面一になる寸法であることも好適である。このような厚みの接着部材を用いて実装すれば、実装後のシリコン製マイクロセンサにおいてセンサ素子の素子表面とケースの配置面とが略面一となる。従って、センサ素子の検出機構付近において検出対象物の流れが乱れてしまうことを有効に防止し、円滑な流れを確保することができる。ここで、略面一になる寸法とは、センサ素子の素子表面とケースの配置面との段差が、0.3mm以下であることを意味する。
センサ素子に、検出機構の配置された個所が薄肉形状となるようにセンサ素子の一部を除去することにより空隙部を設け、シート状の接着部材が、センサ素子の空隙部に対応する箇所に、該空隙部の開口に対応した形状の開口部を備える構成としてもよい。この構成によれば、センサ素子をケースの凹部に接着する際、不要な接着剤がセンサ素子の空隙部内に流れ込んで空隙部の薄肉形状とされた部位(薄肉部)に付着し、接着剤の硬化工程等のセンサ素子に熱がかかる場合に薄肉部が破損するといったことを防止することができる。
シート状の接着部材を熱硬化性の接着剤を成分とする部材にしてもよい。このような接着部材を用いれば、加熱されたセンサ素子を凹部に嵌め込んで圧着することにより、接着部材による底面への接着固定を実現することが可能となる。このような場合には、予めセンサ素子を加熱しておき、その余熱を利用してセンサ素子が接着用凹部に接着固定されるので、接着に伴う実装効率を高めることができる。
本発明のシリコン製マイクロセンサの製造方法は、
(A)シリコン製基板の表面に検出機構を準備する工程と、
(B)該検出機構が配設される側の面である素子表面において、前記検出機構の配設個所が薄肉形状となるセンサ素子を準備する工程と、
(C)該センサ素子が配置される側の配置面に該センサ素子の収納用の凹部が形成されたケースを準備する工程と、
(D)シート状の接着部材を準備する工程と、
(E)前記凹部の底面と前記センサ素子の前記素子表面とは反対側の面である素子裏面との間に前記接着部材を介在させて、該凹部に該センサ素子を接着する工程と
を備えたことを要旨とする。
上記発明のシリコン製マイクロセンサの製造方法では、センサ素子が、その素子裏面とケースの凹部の底面との間に介在されたシート状の接着部材により、凹部に接着される。このため、製造段階において接着部材の厚みを変えることにより、接着後におけるケースとセンサ素子との位置関係を自由に調節することが可能となり、製造後のシリコン製マイクロセンサにおいて所望の位置関係を得ることが可能となる。このように所望の位置関係を得ることで、製造後におけるシリコン製マイクロセンサの基本性能を確保し易くなる。
上記の製造方法が、前記工程(E)では、前記凹部に前記センサ素子を接着する際、前記センサ素子の素子表面と前記ケースの配置面とを略面一とし、更に(F)前記凹部に前記センサ素子が接着された後において、前記凹部に接着された前記センサ素子の素子表面と前記ケースの配置面との間に、前記センサ素子と前記ケースとの間を電気的に接続する信号線を装着する工程と、(G)前記素子表面ないし前記ケースの配置面に、前記信号線が装着された部位と前記検出機構が配設された部位とを区画する区画材を設ける工程と、(H)前記信号線が装着された部位を充填材によりモールドする工程とを備えることとしてもよい。センサ素子の素子表面とケースの配置面とを略面一とした上で、素子表面ないしケースの配置面に区画材を設けることで、素子表面ないしケースの配置面と区画材との間に隙間が生じにくくなり、信号線が装着された部位を充填材でモールドする際に充填材が上記隙間から流出しにくくなる。従って、充填材が上記隙間から流出することに起因するシリコン製マイクロセンサの検出不良や破損等の不具合の発生を防止することができる。
ケースが凹部の底面に露出する端子を備え、センサ素子がケースの露出した端子と面する側に検出機構に接続される電極を備える場合には、上記の工程(D)において前記端子と前記電極との方向についてのみ導電性を有するシート状の接着部材を準備することも好適である。こうすれば、凹部にセンサ素子を接着することにより、センサ素子の電極とケースの端子とが接着部材を介して導通される。従って、製造段階において、センサ素子の電極とケースの端子とのボンディング等による接続作業が不要となり、製造効率を高めることができる。
本発明のシリコン製マイクロセンサは、
シリコン製基板上に検出機構が配置され、該検出機構の配置される個所が薄肉とされた構造を有するセンサ素子と、
該センサ素子の収納用の凹部が形成されたケースと、
前記凹部の底面に敷設されて該凹部と前記センサ素子とを接着する接着部材と
を備え、
前記接着部材がシート状の部材であることを要旨とする。
上記発明のシリコン製マイクロセンサでは、センサ素子が、シート状の接着部材を介してケースの凹部の底面に接着される。従って、接着部材の厚みを変更してケースとセンサ素子との位置関係を自由に制御することが可能となり、こうした位置関係の制御によってシリコン製マイクロセンサの基本性能を確保し易くなる。
こうしたセンサ素子の収納用の凹部は、センサ素子が配置される側のケースの表面である配置面に所定深さで形成し、センサ素子の素子表面とケースの配置面とを略面一としても良い。こうすれば、センサ素子の検出機構近傍において段差などが生じることがなく、段差の存在に起因する不具合を生じることがない。こうした不具合としては、例えば検出機構近傍を検出対象である気体が流れる場合の乱流の発生、段差への塵埃の堆積などが考えられる。もとより、面一にしないことで、乱流などを発生させることが望ましい場合も存在する。こうした場合には、接着部材の厚みを条件に応じて変更することで、対応可能である。
また、センサ素子の素子裏面に、検出機構の配置された箇所が薄肉形状となるように空隙部を設け、接着部材を、センサ素子の空隙部に対応する箇所に、空隙部の開口に対応した形状の開口部を備えた形状とすることも可能である。かかる構成によれば、センサ素子をケースの凹部に接着する際、不要な接着剤がセンサ素子の空隙部内に流れ込んだとしても、開口部内に流出しやすいので、接着剤が空隙部の肉薄形状とされた部位(肉薄部)に付着することを防止することができる。
あるいは、ケースの凹部の底面の、接着部材の開口部に対応する位置に、所定の容積の内部空間を有する凹所を設ける構成としてもよい。この構成によれば、センサ素子の薄肉形状とされた部位の周辺に存する空気の体積が凹所内の空間分だけ増加されるので、薄肉形状とされた部位付近における空気の圧力上昇が生じにくくなり、薄肉形状とされた部位の破損を有効に防止することができる。
シート状の接着部材の予め調整された厚みを、凹部にセンサ素子を嵌めて接着固定した後で、凹部の底面とセンサ素子の素子裏面との間の開口部内に所定の容積の間隙が設けられる寸法とすることも好ましい。こうすれば、凹部にセンサ素子を接着固定することにより、空隙部内の空隙に連続する間隙が設けられる。従って、ケースの凹部の底面に凹所を形成しなくても、上記の間隙によって上記の破損防止特性を十全に確保することが可能となり、製造効率を高めることができる。また、ケースの凹部の底面に上記凹所を形成した場合には、空隙が間隙ないし凹所に連通されて空気領域が更に拡大されるので、上記の破損防止特性をより一層向上することができる。
また、ケースに、その凹部の底面の接着部材の存在箇所に露出する端子を設け、センサ素子に、ケースの露出した端子と面する側に、検出機構に接続される電極を設け、接着部材を、端子と電極との方向についてのみ導電性を有するシート状の部材とすることができる。こうすれば、センサ素子の電極とケースの端子との接続を容易に実現することができ、構成を簡便にすることができる。
図1は、本発明の一実施例である接触燃焼式可燃性ガスセンサ10の平面を示す説明図である。
図2は、図1に示した接触燃焼式可燃性ガスセンサ10を2−2線に沿って切断したときの断面を示す説明図である。
図3は、センサ素子50を模式的に表わす説明図である。
図4は、センサ素子50が装着される前の接触燃焼式可燃性ガスセンサ10の平面を示す説明図である。
図5は、図4に示した接触燃焼式可燃性ガスセンサ10を5−5線に沿って切断したときの矢視断面形状を示す説明図である。
図6は、接着部材48を示す説明図である。
図7は、接着用凹部41にセンサ素子50が接着され、信号線57の絶縁処理がなされる様子を示す説明図である。
図8は、図7(C)に示した素子ケース40を9−9線に沿って切断したときの矢視断面形状を示す説明図である。
図9は、第1変形例を示す説明図である。
図10は、第2変形例を示す説明図である。
図11は、第3変形例を示す説明図である。
図12は、第4変形例を示す説明図である。
図13は、第5変形例を示す説明図である。
図14は、第2実施例としてのエアフロメータ610の使用状態を示す説明図である。
図15は、エアフロメータ610の平面図である。
図16は、エアフロメータ610の正面図である。
図17は、図16に示したエアフロメータ610を17−17線に沿って切断したときの矢視断面形状を示す説明図である。
図18は、エアフロメータ610に用いられたシリコン製マイクロセンサ710の構造を示す説明図である。
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明の実施の形態を、以下の順序で説明する。
A.第1実施例(接触燃焼式可燃性ガスセンサ10)
A−1.接触燃焼式可燃性ガスセンサ10の全体構成
A−2.センサ素子50の構成
A−3.素子ケース40の構成
A−4.ガス検出の仕組み
B.接触燃焼式可燃性ガスセンサ10の製造工程
B−1.素子ケース40,回路基板80,センサ素子50,接着部材48の準備
B−2.接着部材48の構成
B−3.センサ素子50の素子ケース40への接着
B−4.信号線57のモールド
B−5.回路基板80との接続
B−6.作用効果
C.変形例
D.第2実施例(エアフロメータ610)
D−1 エアフロメータ610の使用例
D−2 エアフロメータの構成
D−3 作用効果
A.実施例:
A−1.接触燃焼式可燃性ガスセンサ10の全体構成:
図1は本発明の一実施例である接触燃焼式可燃性ガスセンサ10の平面を示す説明図であり、図2は図1に示した接触燃焼式可燃性ガスセンサ10を2−2線に沿って切断したときの断面を示す説明図である。
接触燃焼式可燃性ガスセンサ10(以下、ガスセンサ10という)は、可燃性ガスの燃焼に伴って電気抵抗値が変化することを利用して可燃性ガスの濃度を検出するセンサであり、例えば、自動車の燃料電池ユニットに搭載され、水素の漏れを測定する目的などに用いられる。
ガスセンサ10は、半導体のセンサ素子50が装着される素子ケース40と、この素子ケース40に接続された回路基板80とを備えている。このように構成されたガスセンサ10は、図2に太矢印で示すように、素子ケース40のセンサ素子50が装着された領域に入ってきた被測定ガスをセンサ素子50によって検出し、被測定ガス量に対応した電気信号を回路基板80に出力する。
なお、上記の素子ケース40を、図2に二点鎖線で示すように、被測定ガスの入口20aないし出口20bが形成された合成樹脂製の取付用筐体20に装着してガスセンサを構成し、被測定ガスの流路を形成するパイプ等に取付用筐体20を装着してガスセンサを使用することとしてもよい。
A−2.センサ素子50の構成:
図3はセンサ素子50を模式的に表わす説明図である。図3(A)はセンサ素子50の底面を表わし、図3(B)は図3(A)に示したセンサ素子50を3B−3B線に沿って切断したときの断面形状を表わしている。これらの図に示すように、センサ素子50は、シリコン製基板51と、絶縁薄膜52a,52bと、検出機構53と、絶縁保護膜55とを備えている。
シリコン製基板51は、縦が3mm、横が5mmのシリコン製の平板である。シリコン製基板51の上層には絶縁薄膜52aが形成されている。この絶縁薄膜52aの表面がセンサ素子50の素子表面50Aとなる。この素子表面50Aに後述する検知用ヒータ53aが配設される。シリコン製基板51の下層には、後述する空隙部51aに相当する部分を除いて、絶縁薄膜52bが形成されている。この絶縁薄膜52bの表面がセンサ素子50の素子裏面50Bとなる。この素子裏面50Bが、後述する素子ケース40の接着用凹部41の底面41Bに接着部材48を介して接着される。なお、絶縁薄膜52a,52bは、シリコン製基板51を酸化することによって形成される酸化膜、CVD等によって形成された窒化硅素膜、窒化膜、酸窒化膜、TaxOy膜及びこれらの積層膜等のひとつ以上の膜によって構成される。
検出機構53は、検知用ヒータ53aと、この検知用ヒータ53aの上方に位置する触媒膜53bから構成されている。検知用ヒータ53aは、通常、Pt(白金)、Ni−Cr(ニッケル−クロム)、Au(金)およびCr(クロム)等の正の温度抵抗係数が大きい導電体によって形成されている。触媒膜53bは、被測定ガスの燃焼を促す触媒であり、対象となるガスによって適宜材質を選択することができる。例えば、水素ガス等の可燃性ガスに適用する場合には、触媒として、Pt(白金)及びPd(パラジウム)等の貴金属の単層膜、またはPt(白金)及びPd(パラジウム)等をAl(アルミナ)やSiO(酸化シリコン)に担持させたものを用いることができる。また、絶縁保護膜55との密着強度を向上させるために、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Cr(クロム)およびNb(ニオブ)等の金属層やこれらの金属酸化層を下層に設けることもできる。
センサ素子50は、既述したダイヤフラム構造を有している。即ち、図3に示すように、検出機構53が配設された位置の下方には、検出機構53の配設個所が薄肉形状となるように、センサ素子50の一部を除去することにより、角錐台形状の空隙部51aが設けられている。この空隙部51a内に所定の容積の空隙51bが形成される。本実施例では、空隙51bが約1mmの容積を有する構成としたが、空隙51bの容積は空隙部51aの形状を変更することにより適宜定めることができる。こうした空隙51bの存在により、検出機構53の熱容量を小さくすることや検出機構53とシリコン製基板51とを熱的に絶縁することが可能となる。なお、空隙部51aの部位においては、絶縁薄膜52bが形成されず、シリコン製基板51が露出した状態とされている。
絶縁保護膜55は、絶縁薄膜52a,52bと同様の材質及び形成方法により作製され、検知用ヒータ53aと電極56との間の配線層等を覆うように配設される。これにより、検知用ヒータ53aと電極56との間の配線の汚染や損傷を防止することができる。
電極56は、検知用ヒータ53aに接続される配線の引き出し部位である。本実施例では、4個の電極56がコンタクトホールを介して素子表面50Aに露出している(図1を参照)。電極56の材質はAl(アルミニウム)またはAu(金)を用いることができる。さらに、Au(金)を用いる場合は、絶縁保護膜55との密着強度を向上させるために、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Cr(クロム)およびNb(ニオブ)等の金属層やこれらの金属酸化層を下層に設けることもできる。
A−3.素子ケース40の構成:
図4は、センサ素子50が装着される前の接触燃焼式可燃性ガスセンサ10の平面を示す説明図であり、図5は図4に示した接触燃焼式可燃性ガスセンサ10を5−5線に沿って切断したときの矢視断面形状を示す説明図である。図4ないし図5に示すように、樹脂成形された素子ケース40は被測定ガスが流入される側にセンサ素子50が配置される配置面40Aを備える。この配置面40Aには、センサ素子50が収納される接着用凹部41が設けられている。この接着用凹部41の底面41Bに、センサ素子50の素子裏面50Bが接着部材48を介して接着される(図2を参照)。なお、接着部材48の構成については、後述するガスセンサ10の製造工程と併せて説明する。
接着用凹部41の底面には、所定の深さの凹所42が形成されている。この凹所42は、センサ素子50を接着用凹部41に接着した状態において、センサ素子50の空隙部51aとほぼ対向する位置に形成される(図2を参照)。このように凹所42と空隙部51a内の空隙51bとを対向させた状態でセンサ素子50を接着用凹部41に装着した場合には、検出機構が配設された薄い部分(以下、薄膜部という)の周辺に密閉された状態で存在する空気の体積が増大するため、薄膜部付近の密閉された空気の圧力上昇が抑制される。従って、薄膜部の破損を有効に防止することができる。
また、図1ないし図2に示すように、接着用凹部41の底面における凹所42の開口面積は、センサ素子50の素子裏面50Bにおける空隙部51aの開口面積よりも若干小さい面積に形成されており、凹所42は素子裏面50Bにおける空隙部51aに包含されている。
図2に示すように、センサ素子50を接着用凹部41に接着した状態において、センサ素子50の素子表面50Aは、素子ケース40の配置面40Aとほぼ同一面になっている。
素子ケース40には、センサ素子50と回路基板80の間の導通路として4本のリード45が埋設されている。各リード45の一端は、素子ケース40外部に引き出されており、回路基板80に接続される。各リード45の他端は、素子ケース40の配置面40Aに露出されており、端子45aとして形成されている。この端子45aは、素子表面50Aの各電極56との接続に用いられる(図1および図2を参照)。
図1および図2に示したように、信号線57は、低粘度の絶縁性樹脂材料から形成された充填材58bによりモールドされている。また、素子ケース40の配置面40Aないしセンサ素子50の素子表面50Aには、検出機構53が設けられた部位と信号線57が設けられた部位とを区画する区画材58aが設けられている。
区画材58aは、信号線57が設けられた部位に流し込まれた充填材58bが検出機構53が設けられた部位に流れ込むことを防止する役割を果たす。充填材58bは、検出機構53が設けられた部位に流れ込もうとする際に区画材58aにより堰き止められる。こうした区画材58aにより、充填材58bが検出機構53に流出することに起因する検出機構53の損傷を防止することができる。
なお、上記の充填材58bおよび区画材58aの樹脂材料として、エポキシやウレタンなどの樹脂を用い、これらの重合度を変えることにより粘度を調節しても差し支えない。また、樹脂製の板材で形成された区画材58aを、素子ケース40の配置面40Aないしセンサ素子50の素子表面50Aに接着する構成としても差し支えない。
A−4.ガス検出の仕組み:
上記のように構成されたガスセンサ10では、検出機構53に被測定ガスが流入されると、被測定ガス中の水素などの可燃性ガスが触媒膜53bに接触して燃焼し、発生した燃焼熱が検知用ヒータ53aに伝わることで、正の抵抗温度係数の材料を用いた検知用ヒータ53aの電気抵抗値が増加する。増加後の電気抵抗値は、電気信号の形態で、電極56,信号線57,リード45を通じて回路基板80に送出される。回路基板80は、受け取った電気抵抗値を、予め定められた電気抵抗の基準値と比較し、両者の差異に基づいて可燃性ガスの濃度を測定する。
B.ガスセンサ10の製造工程:
次に、本実施例におけるガスセンサ10を製造する工程について説明する。
B−1.素子ケース40,回路基板80,センサ素子50,接着部材48の準備:
まず、図3ないし図5に示した形状の素子ケース40,回路基板80,センサ素子50と接着部材48を準備する。素子ケース40は、リード45をインサートした樹脂射出成形により製造することができる。
B−2.接着部材48の構成:
準備される接着部材48の構成を図6に示す。図6(A)は接着部材48の平面を示し、図6(B)は図6(A)に示した接着部材48を7B−7B線に沿って切断したときの矢視断面形状を示している。
接着部材48は表裏両面が粘着面とされたシート状の部材であり、各粘着面は熱硬化性を有する。接着部材48の平面形状(貼付面積)は、基となるシートを適当な形状に切断することにより、自由に定めることができる。本実施例では、図6(A)に示すように、接着用凹部41の底面41Bとほぼ同じ面積分の貼付面積を有する接着部材48を採用している。
接着部材48の略中央部には、センサ素子50の素子裏面50Bにおける空隙部51aの面積分のシートがくり抜き形状で切除されることにより、穴部48pが形成されている。
本実施例では、接着部材48は、センサ素子50が接着用凹部41に完全に接着したときにセンサ素子50の素子表面50Aと素子ケース40の配置面40Aとが略面一となる状態(図2を参照)を実現する厚みd1を有する。具体的には、500μmの深さの接着用凹部41に400μmの厚みのセンサ素子50を装着するに際して、100μmmのシート厚の接着部材48を採用している。この接着部材48は、シート厚が10μm以上のものの中から好適な厚みのものを適宜選択して採用することができる。なお、将来、センサ素子50の接着用凹部41への確実な接着を10μm以下のシート厚で実現する接着部材が出現した場合には、このような接着部材を採用することも可能である。上記の接着部材48の材料としては、エポキシやポリイミド等を用いることができる。
B−3.センサ素子50の素子ケース40への接着:
図7は接着用凹部41にセンサ素子50が接着され、信号線57の絶縁処理がなされる様子を示す説明図である。この図7では図2に対応する要部断面の様子を略記して示している。上記のように各部材が準備された後、図7(A)に示すように、素子ケース40の接着用凹部41の底面41Bに、接着部材48を介してセンサ素子50を装着する。具体的には、まず、底面41Bに接着部材48を敷設した後、敷設された接着部材48上に適度に加熱されたセンサ素子50の素子裏面50Bを配置し、素子表面50A方向からセンサ素子50を圧着する。つまり、センサ素子50から放射される余熱が接着部材48の表裏面に伝わることにより、接着部材48の表裏面の熱硬化性の粘着剤が粘着性を帯びる。このような粘着性を帯びた状態での圧着により、底面41Bにセンサ素子50の素子裏面50Bが接着される。センサ素子50が接着用凹部41に完全に接着したときには、図7(B)に示すように、センサ素子50の素子表面50Aと素子ケース40の配置面40Aとがほぼ同一面になる。なお、センサ素子50を素子ケース40に接着する手順は、センサ素子50の素子表面50Aに接着部材48を貼着した後に、このセンサ素子50を接着用凹部41の底面41Bに配置し、素子表面50A方向からセンサ素子50を圧着するという手順に変更することができる。
また、接着部材48には、空隙部51aないし凹所42の面積分の穴部48pが形成されているので、空隙部51aの外周付近の素子裏面50Bである空隙部外周裏面50Bg(図6(A)において斜線ハッチングで示した部分)は、その全面において接着部材48に接着する。これにより空隙部51a内の空隙51bが封止される。従って、センサ素子50の素子表面50A側から回り込んできた外気(図6(A)において白抜き矢印で示す)が空隙51bや凹所42に進入することが防止される。
上記のような穴部48pが形成された接着部材48を用いてセンサ素子50を接着することにより、空隙部51a内の空隙51bは穴部48pを介して凹所42に好適に連通され(図2を参照)、接着部材48が凹所42を塞いでしまったり、接着部材48が凹所42に侵入してしまうといったことが防止される。また、接着部材48はシート状なので、不要な接着剤が空隙部51a内や凹所42内に流れ込んで固化してしまい、空隙部51a内や凹所42内の空気の体積が少なくなってしまうといったことがない。従って、ダイヤフラム構造のセンサ素子50が有する良好な破損防止特性を十全に確保することができる。
B−4.信号線57のモールド:
次に、信号線57を絶縁性樹脂材でモールドする。具体的には、まず、センサ素子50の素子表面50A上および素子ケース40の配置面40A上に高粘度の絶縁性樹脂材料を塗布することにより区画材58aを縦壁状に立設する。区画材58aは、センサ素子50の上面に置かれたときに盛り上がるような高粘度(150Pa・s以上)の絶縁性樹脂材料から形成されている。続いて、信号線57の上方から低粘度の絶縁性樹脂材料を流し込むことにより信号線57を充填材58bで被覆する。本実施例では、充填材58bとして、低粘度(150Pa・s未満、好ましくは15Pa・s以下)の樹脂材料を用いているため、充填材58bは信号線57の裏側にまで流れ込む。これにより、信号線57は充填材58bに密着して覆われた状態となる。こうした被覆後の状態を図7(C)に示した。
図7(C)に示した素子ケース40を9−9線に沿って切断したときの矢視断面形状を図8に示す。図8に示すように、センサ素子50の接着用凹部41への接着後には、センサ素子50の素子表面50Aと素子ケース40の配置面40Aとが略面一状態となる。よって、センサ素子50と素子ケース40という異なる部品の間に、素子表面50Aと配置面40Aを跨いで区画材58aを設けた場合に、素子表面50Aと配置面40Aとの段差によって素子表面50Aと区画材58aとの間や配置面40Aと区画材58aとの間に隙間が生じることがない。従って、このような隙間から充填材58bが検出機構53方向に流出することが有効に阻止され、検出機構53に向かおうとする充填材58bは区画材58aによって十全に堰き止められる。
B−5.回路基板80との接続:
次に、素子ケース40の各リード45の一端を回路基板80にハンダ付けすることにより、各リード45の端子45aと回路基板80との結線を行なう。これによりガスセンサ10が完成する。
B−6.作用効果:
以上説明したように、上記実施例のガスセンサ10は、センサ素子50の素子ケース40への接着が、接着用凹部41の底面41Bと素子裏面50Bとの間に介在されたシート状の接着部材48によって実現される。従って、製造段階において接着部材48の平面形状や厚み等を変えることにより、接着後における素子ケース40とセンサ素子50との位置関係を自由に調節することが可能となる。例えば、接着部材48の厚みを変えることによりセンサ素子50の素子表面50Aの位置を厳密に制御することができる。このように所望の位置関係を得ることで、製造後におけるシリコン製マイクロセンサの基本性能を確保し易くなる。
例えば、上記実施例のように、センサ素子50の素子表面50Aと素子ケース40の配置面40Aとの高さ関係を略面一とした場合には、被測定ガスが素子表面50Aと素子ケース40の配置面40Aとの段差部分に当たって乱流を引き起こすといった事態が防止され、被測定ガスの円滑な流れを確保してガス濃度検出の正確性を高めることができる。また、上記実施例のように、センサ素子50の素子表面50Aと素子ケース40の配置面40Aとの間に信号線57のモールド用の区画材58aを設ける場合には、素子表面50Aや素子ケース40の配置面40Aと区画材58aとの隙間から充填材58bが流出して検出機構53に充填材58bが付着してしまうことが有効に阻止される。従って、検出機構53による検出不良や検出機構53自体の破損等の不具合の発生を防止することができる。
なお、上記実施例のガスセンサ10は、例えば、燃料電池ユニットの水素の漏れを検知するセンサに適用することができる。即ち、燃料電池ユニットでは、水素極と空気極とにそれぞれ水素、空気(酸素)を流し、これを化学反応させることにより電気を発生させており、上記実施例のガスセンサ10を、燃料電池ユニットにおいて湿度の高い箇所(水分を燃料電池セルの電解質まで導く水分導入部)に水素が混入しているのを検出するセンサとして用いることが可能である。
C.変形例:
上記実施例のガスセンサ10の変形例について図9から図13を参照しつつ説明する。図9から図13に示すガスセンサ110,210,310,410やセンサ素子550は、上記実施例におけるガスセンサ10やセンサ素子50とほぼ共通の各部を備える。図9ないし図13では、この共通の各部につき、符号の十の位以下を上記実施例で用いた符号と同じ数字ないし英字を用いて表わしている。
図9は第1変形例を示す説明図である。この図9では図7(C)に対応する断面を示している。図9に示すように、第1変形例としてのガスセンサ110は、センサ素子150の素子裏面150B側に電極156を設けると共に、この電極156と導通される各リード145の端子145aを、素子ケース140の接着用凹部141の底面141Bに露出した状態で設けている。こうしたセンサ素子150を接着用凹部141に接着する際には、異方導電性を有するシート状接着部材148(本例においては、厚み方向にのみ導電性を示す接着部材)が用いられる。こうすれば、接着用凹部141にセンサ素子150を接着することにより、センサ素子150の電極156と素子ケース140の各端子145aとが接着部材148を介して導通される。従って、製造段階において、センサ素子150の電極156と素子ケース140の各端子145aとを接続する工程や電極156と端子145aとの間の信号線をモールドする工程が不要となり、製造効率を高めることができる。
上記実施例では、4本の信号線57の周囲を取り囲むような形状の区画材58aを設けたが、区画材58aはこのような形状のものに限られるものではなく、充填材58bの検出機構53側への流入を阻止するような他の形状で設けてもよい。例えば、図10に示す第2変形例としてのガスセンサ210のように、信号線57領域と検出機構53領域とを区切る位置に設けられた棒状の区画材258aを素子ケース40の対向する内周壁に装着固定し、素子ケース40の壁を利用して区画材258aを設けることも可能である。なお、図10では図1に対応する平面を示している。
上記実施例では、空隙部51aと対向する位置に凹所42を形成したが、凹所42を形成しない構成としてもよい。こうした構成例を第3変形例として図11に示した。なお、この図11ではガスセンサ310の図7(C)に対応する断面を示している。
また、凹所42以外の態様で空隙部51aに連通される空間を形成することも可能である。こうした構成例を第4変形例として図12に示した。この図12では図7(C)に対応する断面を示している。図12に示すように、第4変形例としてのガスセンサ410では、接着部材448の厚みを上記実施例の厚みd1よりも厚くすることにより、素子裏面50Bと接着用凹部441の底面441Bとの間に間隙448bが形成されている。こうすれば、製造段階においてセンサ素子50の空隙部51aと対向する接着用凹部441に凹所を形成しなくても、空隙部51a内の空隙51bに連通される間隙448bが設けられ、空気容積が拡大される。従って、製造効率をより高めつつ、薄膜部の破損防止特性を確保することができる。なお、上記の間隙448bと併せて接着用凹部441に凹所を形成した場合には、空隙が間隙448bないし凹所の双方に連通されて空気領域がより拡大されるので、上記の破損防止特性をより一層向上することができる。
上記実施例では、センサ素子50の素子裏面50Bに空隙部51aを形成することにより空隙61bを設けたが、これ以外の形態で空隙51bを設けることも可能である。例えば、第4変形例としてのセンサ素子550を表わす図13に示すように、センサ素子50の側面に貫通穴を形成することにより空隙551bを設けてもよい。なお、図13では図3(B)に対応する断面を示している。
なお、上記実施例ないし変形例において、信号線57をモールドする工程が不要となる場合や、充填材58bの検出機構53への流れ込みが他の手段によって防止される場合(例えば、接着用凹部41の内側壁とセンサ素子50の外側面との密着が確保されている場合、流動しない性質の充填材を用いてモールド処理する場合)には、センサ素子50の接着用凹部41への接着時において素子表面50Aと配置面40Aとが略面一でなくてもよい。このような場合には、センサ素子50の高さの調整やセンサ素子50が接着用凹部41に接着される面積の調整を、接着部材48の厚みに応じて柔軟に変えることができる。
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば、シート状の接着部材48が2以上の部材の組み合わせから構成されるものとしてもよい。
また、上記実施例では、本発明を可燃性ガスの濃度を検出するガスセンサ10に適用したが、これに限定されるものではなく、本発明を可燃性ガス以外のガス(例えば、NOx等の排気ガス)の検出に適用することも可能である。また、本発明を流量センサや加速度センサ等に適用することも可能である。
D.第2実施例(エアフロメータ610):
D−1 エアフロメータ610の使用例
次に、本発明の第2実施例として、気体の流量を計測するセンサとしてエアフロメータについて説明する。図14は、このエアフロメータ610を用いた内燃機関の吸気系を模式的に示す模式図である。図示するように、内燃機関600の吸気系には、上流からエアクリーナ632,吸気管630,サージタンク637が設けられており、吸気管630には、シリコン製マイクロセンサを用いたエアフロメータ610と、吸気量を調整するスロットルバルブ635とが設けられている。吸気管630が内燃機関600に接続する吸気ポートには燃料噴射バルブ640が備えられている。この他、内燃機関600には、イグナイタ643からの高電圧の印加を受けてシリンダ内に火花を形成する点火プラグ645,内燃機関600の回転数を検出する回転数センサ650、これらのセンサからの信号を受けて、燃料噴射バルブ640やイグナイタ643などを駆動するEFIコントローラ620なども備えられている。
EFIコントローラ620は、エアフロメータ610からの信号を受けて吸入空気量Qを演算し、これと内燃機関600の回転数Nとに基づいて、内燃機関600に必要とされる燃料噴射量Vを演算する。EFIコントローラ620は、この燃料噴射量Vに応じた時間、燃料噴射バルブ640を開弁することにより、燃料デリバリパイプ638に圧送された燃料を、吸気ポートに噴射する。噴射された燃料は、図示しないピストンが下降する吸引行程において、吸気管を介して吸引される吸入空気と混合しつつ、内燃機関600のシリンダ(燃焼室)内に吸入され、ピストンの上昇に伴う圧縮行程の終期において、点火プラグ645に形成される火花により点火される。火花点火により生じる爆発燃焼により、ピストンを押し下げられ、燃料の燃焼エネルギは、運動エネルギとして、図示しないクランクシャフトを介して外部に取り出され、例えば車両の駆動輪を駆動するといった目的に用いられる。
かかる内燃機関600の制御において、燃料と吸入空気の混合比を適正、例えばガソリンが燃料の場合にストイキな値(空燃比14.7)に保とうとすると、吸入空気量Qを精密にかつ応答性良く検出することが必要になる。本実施例で用いられるエアフロメータ610は、シリコン製マイクロセンサとして構成されており、高い検出精度と応答性を実現している。以下、第2実施例としてのエアフロメータ610の構成について説明する。
D−2 エアフロメータの構成:
第2実施例としてのエアフロメータ610の外形形状を図15および図16に示した。図15は、エアフロメータ610の平面図、図16はその正面図である。このエアフロメータ610は、図14ないし図16に示すように、吸気管630内に配置される検出部612と、吸気管630にこのエアフロメータ610を取り付けるためのフランジ615と、EFIコントローラ620との電気的な接続を行なうためのコネクタ618とを備える。検出部612は、吸気管630の吸気の流れに突き出される部位であり、その先端部正面には、図16に示すように、開口部700が設けられている。この開口部700は、検出部612の背面まで貫通しており、検出部612が吸気管630に差し込まれた状態でエアフロメータ610が取り付けられると、吸気管630を流れる吸入空気の一部は、開口部700を通り抜ける。
この開口部700の部位における断面を図17に示した。図示するように、開口部700は、出入り口において開口断面積が大きく、中心部で最も開口断面積の小さな形状をしている。かかる形状としているために、吸気管630内を流れる吸入空気は、スムーズにこの開口部700に流れ込み、流れ出る。吸気管630内を流れる全吸入空気の量と、エアフロメータ610の開口部700を流れる空気量との間には、良い比例関係が成り立っているので、開口部700を通過する空気量を測定すれば、吸気管630を流れ、最終的に内燃機関600に流れ込む吸入空気量を検出することができる。
エアフロメータ610の開口部700の中心部には、シリコン製マイクロセンサ710が形成されている。このシリコン製マイクロセンサ710の構造を拡大して図18に示した。シリコン製マイクロセンサ710の基本的な形状は、第1実施例と同様である。即ち、シリコン製マイクロセンサ710は、ケース715に設けられた接着用凹部735に、シート状の接着部材740を介して、シリコン製基板720が接着固定された構造となっている。シリコン製基板720の表面は、きわめて高い精度に研磨されており、いわゆる鏡面仕上げとなっている。また、シリコン製基板720の表面には、酸化シリコンの絶縁薄膜727が形成されている。このシリコン製基板720の略中央の裏面には、空隙730が形成されており、検出機構が形成されている部位は薄肉とされている。この薄肉部には、中心にヒータ725が、その両側に上流側センサ721と下流側センサ722とが形成されている。ヒータ725,両センサ721は、いずれもスパッタリングなどの手法で形成された白金などの薄膜である。なお、ヒータ725,両センサ721,722は、薄肉部に対応する絶縁薄膜727の内部に形成されている。絶縁薄膜727は、酸化膜以外の薄膜によっても形成可能である。
第2実施例であるエアフロメータ610のシリコン製マイクロセンサ710は、接着用凹部735の深さH1が、シート状接着部材740の厚みd1とシリコン製基板720の厚みD1との総和に等しくされている(H1=d1+D1)。このため、接着用凹部735の底部に接着部材740を置き、ここにシリコン製基板720を嵌め込んで接着部材740により、シリコン製基板720を接着用凹部735に接着すると、シリコン製基板720の表面とケース715の表面とは、ほぼ面一となる。両者の高さの差は、本実施例では、±0.3mm以下となるよう、各部の寸法公差を管理した。ケース715表面とシリコン製基板720の表面との間に高さの差(段差)が存在し、この段差が所定以上となると、開口部700を流れる空気に看過できない渦が生じ、後述する空気量の検出精度の影響を与えることがある。本実施例では、段差を±0.3mm以下としたので、開口部700を通過する空気の流れは整然とした層流に保たれ、エアフロメータ610として必要な検出精度を得ることができる。
ケース715表面とシリコン製基板720の表面との間の段差は、寸法公差の管理を厳しくすることにより、±0.2mm以下、より好ましくは±0.1mm以下とすることも可能である。なお、プラスは検出機構が形成されたシリコン製基板720の方が高い場合、マイナスは低い場合である。シリコン製基板720を突出させ、上記の差を0.05〜0.3mmの範囲に管理することが好ましい。もとより、更に0.05〜0.2mmの範囲、あるいは0.05〜0.1mmの範囲とすることも、検出精度を高く維持するという点で好ましい。なお、エアフロメータ610のその余の構成、例えばコネクタ618の端子からシリコン製基板720の電極への配線などは、基本的に第1実施例と同様に行なわれているので、その説明は省略する。
D−3 作用効果:
以上、構造を簡略に説明したシリコン製マイクロセンサ710による吸入空気量の検出の手法について簡略に説明する。シリコン製基板720の薄肉部の中心に設けられたヒータ725には、一定の電流が流され、時間当たり一定の熱量を発生する。ヒータ725で発生した熱は、開口部700内に存在する空気を介して周囲に伝達され、両脇の二つのセンサ721,722の温度を上昇させる。センサ721,722は、白金などの高い抵抗温度係数を有する材料から形成されている。センサの抵抗値は、基本的には、比抵抗、センサ部分の長さおよび断面積により定まる。また、白金などの材料の抵抗温度係数は公知である。従って、両センサ721,722の抵抗値を計測すれば、その温度を知ることができる。両センサ721,722は、同温度でその抵抗値が等しくなるように、同じ材料を用い、同じ長さ、同じ断面積に形成されている。また、ヒータ725から上流側センサ721までの距離と、下流側センサ722までの距離は等しくされている。従って、開口部700を通過する空気量が0であれば、両センサの温度上昇は等しく、抵抗値も基本的に等しくなる。
一方、内燃機関600の運転より内燃機関600に流れ込む空気が吸気管630内を流れ、その一部が開口部700を通過すると、通電により熱を発生するヒータ725からの伝熱は、開口部700を流れる空気により下流側センサ722の温度上昇を高め、上流側センサ721の温度上昇を抑制するように働く。その程度は、開口部700を流れる空気量に比例する。そこで、例えば、4つの抵抗器から構成されるホイーストンブリッジの対向する位置に上流側センサ721と下流側センサ722とが配置されるように接続し、他の二つの抵抗器をヒータ725からの伝熱の影響を受けない位置に配置すれば、上流側センサ721と下流側センサ722との温度変化により抵抗値の変化を、ホイーストンブリッジにより精度良く検出することができる。本実施例のエアフロメータ610では、かかる構造により、開口部700を流れる空気量、ひいては吸気管630を流れる空気量を計測している。
以上説明した第2実施例のシリコン製マイクロセンサ710を用いたエアフロメータ610では、ヒータ725および両センサ721,722が形成された部位は肉薄とされているので、開口部700を流れる空気の流量が変化してヒータ725からの伝熱の状態が変わると、両センサ721,722の温度も直ちに変化する。このため、空気量の検出において高い応答性を実現することができる。また、シリコン製基板720は、シート状の接着部材740を用いて接着用凹部735に収納・接着されているので、ケース715の高さに対するシリコン製基板720の表面高さを精度良く管理することができ、両者をほぼ面一とすることにより、開口部700内を流れる空気の流れに乱れを生じさせることがなく、空気量の検出精度を高く維持することができる。
また、特許請求の範囲における「ケース」として、上記実施例では、樹脂成形された素子ケース40やケース715を挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、ガラスセラミックなどからなるセラミック基板、或いは、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BT樹脂、PPE樹脂などの樹脂や、これらの樹脂とガラス繊維やポリエステル繊維などの繊維との複合材料、三次元網目構造のフッ素樹脂にエポキシ樹脂などを含浸させた樹脂複合材料を用いてなる基板も含まれる。更に、セラミック基板とこれらの樹脂や複合材料とを組み合わせてなる基板なども含まれる。

Claims (15)

  1. シリコン製基板上に検出機構を備えたセンサ素子を、ケースに収納するシリコン製マイクロセンサの実装方法であって、
    前記ケースに、前記センサ素子を収納可能な凹部を、該凹部の少なくとも前記センサ素子と接触する底面を平坦として形成し、
    該凹部の底面に、予め厚みを調整したシート状の接着部材を配置し、
    前記センサ素子を、前記凹部に嵌め込んで、前記接着部材により前記底面に接着固定する
    シリコン製マイクロセンサの実装方法。
  2. シリコン製基板上に検出機構を備えたセンサ素子を、ケースに収納するシリコン製マイクロセンサの実装方法であって、
    前記ケースに、前記センサ素子を収納可能な凹部を、該凹部の少なくとも前記センサ素子と接触する底面を平坦として形成し、
    前記センサ素子の裏面に、前記凹部に挿入可能な大きさであり、予め厚みを調整したシート状の接着部材を貼付し、
    前記センサ素子を、前記凹部に嵌め込んで、前記接着部材により前記底面に接着固定する
    シリコン製マイクロセンサの実装方法。
  3. 請求項1または2に記載のシリコン製マイクロセンサの実装方法であって、
    前記センサ素子を収納可能な凹部は、前記センサ素子が配置される側の前記ケースの表面である配置面に所定の深さで形成されており、
    前記シート状の接着部材の予め調整された厚みは、前記凹部に前記センサ素子を嵌めて接着固定した後で、前記センサ素子の素子表面と前記ケースの前記配置面とが略面一になる寸法である
    シリコン製マイクロセンサの実装方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載のシリコン製マイクロセンサの実装方法であって、
    前記センサ素子には、前記検出機構の配置された個所が薄肉形状となるようにセンサ素子の一部を除去することにより空隙部が設けられており、
    前記シート状の接着部材は、前記センサ素子の空隙部に対応する箇所に、該空隙部の開口に対応した形状の開口部を備えた
    シリコン製マイクロセンサの実装方法。
  5. 前記シート状の接着部材は、熱硬化性の接着剤を成分とする部材である請求項1ないし4のいずれかに記載のシリコン製マイクロセンサの実装方法。
  6. 加熱された前記センサ素子を前記凹部に嵌め込んで圧着することにより、前記接着部材による前記底面への接着固定を実現する5に記載のシリコン製マイクロセンサの実装方法。
  7. (A)シリコン製基板の表面に検出機構を準備する工程と、
    (B)該検出機構が配設される側の面である素子表面において、前記検出機構の配設個所が薄肉形状となるセンサ素子を準備する工程と、
    (C)該センサ素子が配置される側の配置面に該センサ素子の収納用の凹部が形成されたケースを準備する工程と、
    (D)シート状の接着部材を準備する工程と、
    (E)前記凹部の底面と前記センサ素子の前記素子表面とは反対側の面である素子裏面との間に前記接着部材を介在させて、該凹部に該センサ素子を接着する工程と
    を備えたシリコン製マイクロセンサの製造方法。
  8. 請求項7に記載のシリコン製マイクロセンサの製造方法であって、
    前記工程(E)では、前記凹部に前記センサ素子を接着する際、前記センサ素子の素子表面と前記ケースの配置面とを略面一とすると共に、
    (F)前記凹部に前記センサ素子が接着された後において、前記凹部に接着された前記センサ素子の素子表面と前記ケースの配置面との間に、前記センサ素子と前記ケースとの間を電気的に接続する信号線を装着する工程と、
    (G)前記素子表面ないし前記ケースの配置面に、前記信号線が装着された部位と前記検出機構が配設された部位とを区画する区画材を設ける工程と、
    (H)前記信号線が装着された部位を充填材によりモールドする工程と
    を備えたシリコン製マイクロセンサの製造方法。
  9. 請求項7または8に記載のシリコン製マイクロセンサの製造方法であって、
    前記ケースは、前記凹部の底面に露出する端子を備え、
    前記センサ素子は、前記ケースの露出した端子と面する側に、前記検出機構に接続される電極を備え、
    前記工程(D)で準備される接着部材は、前記端子と前記電極との方向についてのみ導電性を有するシート状の部材である
    シリコン製マイクロセンサの製造方法。
  10. シリコン製基板上に検出機構を備えたセンサ素子と、
    該センサ素子の収納用の凹部が形成されたケースと、
    前記凹部の底面に敷設されて該凹部と前記センサ素子とを接着する接着部材と
    を備え、
    前記接着部材がシート状の部材である
    シリコン製マイクロセンサ。
  11. 前記センサ素子の収納用の凹部は、前記センサ素子が配置される側の前記ケースの表面である配置面に所定深さで形成されており、
    前記センサ素子の素子表面と前記ケースの前記配置面とが略面一である
    請求項10記載のシリコン製マイクロセンサ。
  12. 前記センサ素子の素子裏面には、前記検出機構の配置された箇所が薄肉形状となるように空隙部が設けられており、
    前記接着部材は、前記センサ素子の前記空隙部に対応する箇所に、前記空隙部の開口に対応した形状の開口部を備えた
    請求項10または11記載のシリコン製マイクロセンサ。
  13. 前記ケースの前記凹部の底面には、前記接着部材の前記開口部に対応する位置に、所定の容積の内部空間を有する凹所が設けられた請求項12記載のシリコン製マイクロセンサ。
  14. 前記シート状の接着部材の予め調整された厚みは、前記凹部の底面と前記センサ素子の素子裏面との間の前記開口部内に所定の容積の間隙が設けられる寸法である請求項12または13記載のシリコン製マイクロセンサ。
  15. 請求項10ないし14のいずれかに記載のシリコン製マイクロセンサであって、
    前記ケースは、前記凹部の底面の前記接着部材の存在箇所に露出する端子を備え、
    前記センサ素子は、前記ケースの露出した端子と面する側に、前記検出機構に接続される電極を備え、
    前記接着部材は、前記端子と前記電極との方向についてのみ導電性を有するシート状の部材である
    シリコン製マイクロセンサ。
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