JPWO2004005515A1 - イネbt型雄性不稔細胞質に対する稔性回復遺伝子 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2002年7月5日に提出された日本特許出願 特願2002−107560号を基礎とする優先権主張出願である。当該日本特許出願の内容は全て本明細書に援用される。
そこで、ハイブリッドライスの生産には、細胞質雄性不稔を利用する三系法が利用されている。三系法とは、雄性不稔細胞質を保有する系統である不稔系統、Rf−1遺伝子を保有する系統である回復系統、および核遺伝子は不稔系統と同一であって不稔細胞質を保有しない系統である維持系統とを使用する方法をいう。これらの3系統を用いて、(i)不稔系統に回復系統の花粉を受精させることによりハイブリッド種子を獲得することができ、(ii)一方、不稔系統に維持系統の花粉を受精させることにより不稔系統を維持することができる。
三系法でBT型雄性不稔細胞質を利用するにあたっては、回復系統のイネを育成するために、育種における各過程で育成中のイネがRf−1遺伝子を保有すること、また、最終段階ではRf−1遺伝子をホモで保有することを確認する必要がある。また、三系法において、回復系統に使用する品種が確実にRf−1遺伝子を保有することを調べたり、得られたハイブリッド種子が稔性を回復しているか確認するために、Rf−1遺伝子の存在を調べる必要が生じる場合もある。
従来、植物体中でのRf−1遺伝子座の遺伝子型を推定するためには、まず、検定系統と交配を行った交配種子から植物体(F1)を形成し、次いでF1植物を自殖させてその種子の形成率が一定以上(例えば70〜80%以上)である個体の出現頻度を調査する必要があった。なお、検定系統とは、維持系統、不稔系統あるいは両系統のセットを指し、目的とする被検定個体の細胞質がBT型か通常細胞質か、あるいは不明かにより適宜選択するものである。不稔系統を検定系統として用いる場合は母親として、維持系統を検定系統として用いる場合は父親として、それぞれ被検定個体に交配する。
しかしながら、これらの方法を行うには、莫大な労力と時間を要する。また、種子稔性は、環境要因の影響を受けやすいので、低温・日照不足などの不良環境で調査すれば、遺伝子型の構成によらず不稔になる場合があり、Rf−1遺伝子座の遺伝子型推定が正確に行えないという問題を有していた。
このような問題を解消するために、最近では、分子生物学的方法によりRf−1遺伝子の存在を判別する方法も提案されている。それは、Rf−1遺伝子と連鎖する塩基配列(以下、DNAマーカーという)を検出することにより、Rf−1遺伝子の存在または不存在を調べる方法である。因みに、Rf−1遺伝子のDNA配列は未解読であるため、直接Rf−1遺伝子を検出することは、現在の技術では不可能であった。
例えば、イネのRf−1遺伝子座は第10染色体上に存在し、そして、制限酵素断片長多型(RFLP)解析に使用することができるDNAマーカー(RFLPマーカー)座G291とG127との間であることが報告されている(Fukuta et al.1992,Jpn J.Breed.42(supl.1)164−165)。このため、Rf−1遺伝子と連鎖するDNAマーカー座G291およびG127の遺伝子型を調査することにより、Rf−1遺伝子座の遺伝子型を推定することが可能である。
しかしながら、従来の分子生物学的方法にはいくつかの問題が存在する。第一の問題は、従来の方法では、使用するマーカーがRFLPマーカーであり、これを検出するためにはサザンブロット解析を行う必要があるという点である。サザンブロット解析を行うためには、被検定個体から数マイクログラム単位の精製されたDNAを必要とし、さらに制限酵素処理、電気泳動、ブロッティング、プローブとのハイブリダイゼーション、およびシグナルの検出からなる一連の作業手順を行う必要があるため、多大な労力が必要であるうえに、検定結果を得るまでに1週間程度かかっていた。
第二の問題は、RFLPマーカー座G291とG127の間の遺伝子地図距離は約30cM(イネDNAでは約9000kbpに相当する)と長いため、二重組換えが起こる可能性が数%程度はあると考えられ、Rf−1遺伝子座の遺伝子型が必ずしも正確に推定できないことである。
さらに第三の問題は、Rf−1遺伝子の存在をRFLPマーカー座G291およびG127の遺伝子型を調査することにより推定する場合、選抜の結果育成される稔性回復系統には、Rf−1遺伝子と共に、RFLPマーカー座G291とG127の間の遺伝子領域も導入されるという点である。その結果、導入DNA配列は30cM以上のRf−1遺伝子ドナー親由来の染色体領域を有することになり、導入DNA領域中に存在する可能性がある劣悪遺伝子をRf−1遺伝子と同時に導入してしまう危険性があった。
このような問題を解決するため、Rf−1遺伝子座と連鎖する優性DNAマーカー(特開平7−222588)および共優性DNAマーカー(特開平9−313187)が開発されている。これらのマーカーは、Rf−1遺伝子座とそれぞれ、1.6±0.7cM(イネDNAでは約480kbpに相当)および3.7±1.1cM(イネDNAでは約1110kbpに相当)の遺伝的距離で連鎖しており、両座はRf−1遺伝子座を挟む位置関係にある。そのため、優性PCRマーカー座および共優性PCRマーカー座は、これらが両方とも存在することを検出することにより、Rf−1遺伝子の存在を推定することができる。また、共優性PCRマーカーの使用は、Rf−1遺伝子座の遺伝子型がホモかヘテロかも推定することを可能にする。
しかしながら、これらのPCRマーカーを使用する場合にも、依然としていくつかの問題がある。この共優性マーカーはRf−1遺伝子座と3.7±1.1cMの遺伝距離を有するため、Rf−1遺伝子座との間での組換え頻度が高いという問題が十分には解決されていない。その結果、共優性マーカー自体についてはホモ型またはヘテロ型まで正確に検出することができるが、共優性マーカー座とRf−1遺伝子座との間で組換えが生じる場合に、Rf−1遺伝子座の遺伝子型の推定、特にホモ型またはヘテロ型までの推定を正確に実施できないという問題がある。一方、優性マーカーを使用してRf−1遺伝子座の遺伝子型を推定する場合、優性マーカーではRf−1遺伝子がホモの個体(Rf−1/Rf−1)およびヘテロの個体(Rf−1/rf−1)の両方を区別することなく検出してしまう。そのため、上記共優性マーカーと優性マーカーとを組み合わせて利用してRf−1遺伝子座の遺伝子型を推定したとしても、Rf−1遺伝子に関するホモ型とヘテロ型とを正確に識別することはできない。また、優性マーカーを用いて行うPCRでは、PCR産物が得られなかった場合には、実験操作上の問題に起因する可能性も否定できない。さらに、これらの共優性マーカーと優性マーカーとの間の遺伝的距離が約5.3cM(約1590kbp)と離れているため、Rf−1遺伝子ドナー親からの導入染色体領域長を短い長さに限定することができないので、この領域中に含まれる劣悪遺伝子の持ち込みを抑制できないという問題点も有している。
さらに、特開2000−139465には、イネ第10染色体のRf−1遺伝子の近傍に座乗するRFLPマーカーの塩基配列に基づいて開発された、共優性PCRマーカーが記載されている。しかしながら、それらのPCRマーカーは、依然としてRf−1遺伝子からの遺伝的距離が約1cMより離れているという問題を有している。
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸。
本発明の方法において、上記配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸は、好ましくは、以下の条件1)−12)の少なくとも一つを満たす:
1)配列番号69の塩基1769に相当する塩基がAである;
2)配列番号70の塩基1767に相当する塩基がAである;
3)配列番号71の塩基1772に相当する塩基がAである;
4)配列番号72の塩基1762に相当する塩基がAである;
5)配列番号73の塩基1703に相当する塩基がAである;
6)配列番号74の塩基1779に相当する塩基がAである;
7)配列番号80の塩基1783に相当する塩基がAである;
8)配列番号81の塩基1729に相当する塩基がAである;
9)配列番号82の塩基1781に相当する塩基がAである;
10)配列番号83の塩基1774に相当する塩基がAである;
11)配列番号84の塩基1728に相当する塩基がAである;又は
12)配列番号85の塩基1644に相当する塩基がAである。
本発明はまた、上記配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸を利用して、被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有するか否かを識別する方法を提供することを目的とする。本発明の方法は、一態様において、好ましくは、配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸が、以下の条件1)−12)の少なくとも一つを満たす場合に被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有すると判断する:
1)配列番号69の塩基1769に相当する塩基がAである;
2)配列番号70の塩基1767に相当する塩基がAである;
3)配列番号71の塩基1772に相当する塩基がAである;
4)配列番号72の塩基1762に相当する塩基がAである;
5)配列番号73の塩基1703に相当する塩基がAである;
6)配列番号74の塩基1779に相当する塩基がAである;
7)配列番号80の塩基1783に相当する塩基がAである;
8)配列番号81の塩基1729に相当する塩基がAである;
9)配列番号82の塩基1781に相当する塩基がAである;
10)配列番号83の塩基1774に相当する塩基がAである;
11)配列番号84の塩基1728に相当する塩基がAである;又は
12)配列番号85の塩基1644に相当する塩基がAである。
本発明は、さらに、Rf−1遺伝子の稔性回復機能を抑制する方法を提供することを目的とする。本発明の抑制方法は、一態様において、配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸、に対し相補的な塩基配列から選択される、連続した少なくとも100塩基の長さのアンチセンスを導入する、ことを含む。
本発明はさらにまた、配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸、を提供することを目的とする。本発明は、一態様において、以下のa)−p)
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸
から選択される核酸を提供する。
図2は、BACクローンAC068923とラムダクローンコンティグとの位置関係を示す。
図3は、Rf−1座極近傍組換え型花粉(いずれも稔性あり)のRf−1座極近傍の染色体構成を、その花粉から生じた10個体(RS1、RS2、RC1−8)のマーカー座の遺伝子型に基づき、明らかにした結果を示したものである。白抜き部分はジャポニカ型領域を、黒部分はインディカ型領域を示す。
図4は、第10染色体上のマーカー座とRf−1座との連鎖分析の結果に基づき、Rf−1座の連鎖地図上での位置を示したものである。地図距離は、1042F1個体の分離データから算出した。
図5は、相補性試験によるRf−1領域の同定のために使用した、10個のゲノムクローン由来の断片を示す。染色体歩行により得られたλクローン(細い線)を用いて、太い直線で示した染色体領域について相補性試験を行った。XSF18は、欠失を含むクローンであることが分かったので、その欠失部分は点線で示した。
図6は、XSG16由来の15.7kb(実施例10)及びXSF18由来の16.2kb断片(実施例8)を用いた相補性試験の結果を示す。XSG16由来の15.7kbでは稔性が回復し、稲穂がたれている。
図7は、Rf−1遺伝子構造の模式図を示す。白棒部分および黒線部分は、それぞれエキソンおよびイントロンを示す。エキソン部分については、塩基対数を示してある。
図8は、相補性試験を行ったIR24ゲノム断片、cDNAライブラリースクリーニングに用いたプローブ及び単離したcDNAから推定したRf−1遺伝子の位置関係の模式図を示す。Rf−1遺伝子の白棒部分および黒線部分は、それぞれ、エキソンおよびイントロンを示す。エキソン部分については、塩基対数を示してある。
I. 特願2000−247204に記載のRf−1遺伝子座の遺伝子型を推 定する方法
特願2000−247204は、Rf−1遺伝子座がイネ第10染色体上のRFLPマーカー座S12564座とC1361座との間に座乗することを利用して、被検定イネ個体または種子がRf−1遺伝子を持つか否かを識別する方法について記載している。
マーカー
Rf−1遺伝子座の近傍に存在する特定の領域に対して設計したプライマー対を用いてPCRを行い、その産物を特定の制限酵素で処理後電気泳動にかけると、ジャポニカ系統とインディカ系統との間で、異なる大きさのバンドが観察されることがある。そのような場合、インディカ系統に特徴的なバンドをRf−1連鎖バンドとする。本発明者らにより、Rf−1遺伝子座は、イネ第10染色体上に存在するPCRマーカー座S12564 Tsp509I座とC1361 MwoI座との間に座乗することが明らかにされ、その周辺でのPCRマーカーは当業者が適宜開発して使用可能となった。
例えば、下記の群から選択されるPCRマーカーの少なくとも1個を被検体イネのゲノム中に存在するか否か検出することにより、被検定個体がこれらのPCRマーカーと連鎖するRf−1遺伝子を持つか否かを識別する:
(1)マーカー1: 配列番号1および配列番号2の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素EcoRI認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーR1877 EcoRI;
(2)マーカー2: 配列番号3および配列番号4の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素HindIII認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーG4003 HindIII(配列番号19);
(3)マーカー3: 配列番号5および配列番号6の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素MwoI認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーC1361 MwoI(配列番号20);
(4)マーカー4: 配列番号7および配列番号8の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素MwoI認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーG2155 MwoI(配列番号21);
(5)マーカー5: 配列番号9および配列番号10の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素MspI認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーG291 MspI(配列番号22);
(6)マーカー6: 配列番号11および配列番号12の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素BslI認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーR2303 BslI(配列番号23);
(7)マーカー7: 配列番号13および配列番号14の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素BstUI認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーS10019 BstUI(配列番号24);
(8)マーカー8: 配列番号15および配列番号16の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素KpnI認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーS10602 KpnI(配列番号25);および
(9)マーカー9: 配列番号17および配列番号18の配列を有するDNAをプライマーとして用いてゲノミックPCRを行い、得られた産物中の、制限酵素Tsp509I認識部位の有無に基づいて、ジャポニカ系統とインディカ系統のイネの間の多型を検出する、PCRマーカーS12564 Tsp509I(配列番号26)。
なお、上記PCRマーカーは、Rf−1遺伝子座が、イネ第10染色体上の9個のRFLPマーカー領域R1877、G291、R2303、S12564、C1361、S10019、G4003、S10602、およびG2155付近に座乗する可能性が高いと考え(Fukuta et al.1992,Jpn J.Breed.42(supl.1)164−165によるRFLP連鎖解析結果、およびHarushima et al.1998,Genetics 148 479−494によるイネRFLP連鎖地図を参照)、これらのRFLPマーカーを、後記参考例1に記載するようにして、共優性PCRマーカーであるCAPSマーカーまたはdCAPSマーカー(Michaels and Amasino 1998,The Plant Journal 14(3)381−385;Neff et al.1998,The plant Journal 14(3) 387−392)に変換した。この変換により、上記PCRマーカーが得られた。
これらのPCRマーカーのうち、PCRマーカーR1877 EcoRI、G291 MspI(配列番号22)、R2303 BslI(配列番号23)およびS12564 Tsp509I(配列番号26)からなる群と、PCRマーカーC1361 MwoI(配列番号20)、S10019 BstUI(配列番号24)、G4003 HindIII(配列番号19)、S10602 KpnI(配列番号25)、およびG2155 MwoI(配列番号21)からなる群とは、第10染色体上でRf−1遺伝子座を挟んで反対側に存在する。
従って、一態様において、(a)PCRマーカーR1877 EcoRI、G291 MspI、R2303 BslIおよびS12564 Tsp509Iからなる群から選択される少なくとも1個のPCRマーカー、並びに(b)PCRマーカーC1361 MwoI、S10019 BstUI、G4003 HindIII、S10602 KpnI、およびG2155 MwoIからなる群から選択される少なくとも1個のPCRマーカーによりRf−1連鎖バンドを検出することにより、Rf−1遺伝子の存在を検出する。その際、上記(a)の群からRf−1遺伝子に最も近いマーカーとして、少なくともPCRマーカーS12564 Tsp509Iおよび上記(b)の群から少なくともC1361 MwoIを使用することが好ましい。被検定イネのゲノム中に、(a)のPCRマーカーによるRf−1連鎖バンドと(b)のPCRマーカーによるRf−1連鎖バンドの両方が検出されれば、そのイネがRf−1遺伝子を有する可能性を高い確率で推定することができる。
別の態様においては、上記(a)の群から少なくとも二つのPCRマーカー、及び(b)の群から少なくとも二つのPCRマーカーによりRf−1連鎖バンドを検出する。例えば、(a)及び(b)の群のマーカーのうち、図1に示す遺伝子地図において、Rf−1遺伝子により近いマーカーによりRf−1連鎖バンドが検出され、それよりRf−1遺伝子から遠いマーカーによりRf−1連鎖バンドが検出されないイネ個体を選抜することにより、Rf−1遺伝子を有するが、不要な遺伝子領域をできるだけ含まないイネを選抜することが可能である。この場合も、(a)及び(b)の各群のマーカーのうち少なくとも一つは、それぞれPCRマーカーS12564 Tsp509IおよびC1361 MwoIであることが好ましい。すなわち、2種のPCRマーカー座S12564 Tsp509IとC1361 MwoIは、マーカー座間距離にして0.3cM離れている。この性質を利用することにより、Rf−1遺伝子ドナー親から導入する染色体領域を1cM程度に狭めることができる。その結果、ドナー親のRf−1遺伝子近傍に存在する可能性がある劣悪遺伝子が回復系統に導入される可能性を最小限に抑えることができる。
Rf−1遺伝子の検出
被検定イネゲノム中のRf−1遺伝子を検出するには、上記配列番号1−18のプライマーを用いて、被検定イネゲノムから上記PCRマーカーのいずれかをPCRで増幅させ、ポリメラーゼ連鎖反応−制限酵素断片長多型(PCR−RFLP)法で検出する。PCR−RFLP法は、比較する品種系統間において、PCRにより増幅したDNA断片配列中の制限酵素認識部位に多型が存在する場合に、その制限酵素による切断パターンからいずれの型であるかを簡便に決定する方法である(D.E.Harry,et al.,Theor Appl Genet(1998)97:327−336)。
制限酵素による切断パターンとしては、可視化されたゲル上に、使用したプライマー対に応じて、以下の表1のようなバンドの存在の有無が確認される。
II. Rf−1遺伝子座領域の特定
以上、特願2000−247204において、Rf−1遺伝子座がDNAマーカー座S12564 Tsp509IとC1361 MwoI座との間に座乗することが本発明者らにより明らかにされ、これを利用したRFLP−PCR用マーカーが記載されている。Rf−1遺伝子を持たない通常のジャポニカ品種に、戻し交雑によりRf−1遺伝子を導入することにより回復系統が育成される。その過程で、特願2000−247204に記載のRf−1遺伝子座の識別方法を用いると、回復系統の育成が効率的(必要期間は2〜3年)になるだけでなく、導入断片長を制御することができる。
しかしながら、交雑による導入では、Rf−1極近傍領域をも同時に導入することは避けられない。特願2000−247204において、Rf−1遺伝子座がDNAマーカー座S12564 Tsp509IとC1361 MwoI座との間に座乗することが解明されたが、両遺伝子座は約0.3cM、即ち約90kbpである。仮にRf−1極近傍に劣悪遺伝子が存在すれば、Rf−1遺伝子ともにその劣悪遺伝子も導入される可能性が否定できない。
そこで、本発明者らはDNAマーカー座S12564 Tsp509IとC1361 MwoI座の間の領域について、Rf−1遺伝子座とDNAマーカー座S12564 Tsp509Iとが密接連鎖することを手がかりに、染色体歩行および遺伝学的解析を行うことにより、Rf−1遺伝子と連鎖する領域を調べた。その結果、Rf−1遺伝子を含むRf−1遺伝子座領域を約76kbまで特定し、そして当該領域の全塩基配列を決定することに成功した。本発明により、BT型雄性不稔細胞質に対する稔性回復遺伝子の機能を遺伝子工学的に導入することが可能となった。
具体的には、特願2000−247204では、MSコシヒカリにMS−FRコシヒカリ(Rf−1座ヘテロ)の花粉をかけて作成した集団1042個体を用いて連鎖分析を行い、Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体を1個体、Rf−1座とC1361 MwoI座との間での組換え個体を2個体見出した(本明細書中の参考例1−2)。本発明では、上記集団をさらに4103個体追加し、合計5145個体として解析を行った。その結果、新たに、Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体を1個体、Rf−1座とC1361 MwoI座との間での組換え個体を6個体見出し、それぞれの組換え個体の合計を2個体および8個体とした。これら10個体をRf−1座極近傍組換え個体として、本発明の高精度分離分析に供試することとした(実施例1)。
Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体が2個体に対し、C1361 MwoI座との間での組換え個体が8個体という上記の組換え個体出現頻度は、S12564 Tsp509I座とC1361 MwoI座とを比較すると、S12564 Tsp509I座のほうが遺伝学的にRf−1座に近いことを意味する。遺伝的距離(組換え価cMが単位)と物理的距離(塩基対数bpが単位)とは必ずしも比例しないが、通常は遺伝的距離が短ければ物理的距離も短いと期待できる。
そこで、S12564 Tsp509I座を起点に染色体歩行を行うことにより、Rf−1座を単離することとした(実施例2)。染色体歩行には、インディカ品種IR24およびジャポニカ品種あそみのりのゲノムDNAを用いてλ DASH IIベクターにより作成したゲノミックライブラリーを供試した。IR24はRf−1保有品種、あそみのりはRf−1非保有品種である。染色体歩行を進めた結果、IR24のゲノミッククローンにより約76kbの染色体領域をカバーするコンティグ(複数のクローンを重複部分で重ね合わせて染色上での順に整列化したもの)を作成することができ、その全塩基配列(76363bp)を決定した。
次いで、得られた塩基配列情報等を利用することにより、新たに12個のマーカーを開発し、既述のRf−1座極近傍組換え個体10個体を用いて、高精度分離分析を行った(実施例3)。その結果、上記の約76kbの染色体領域に含まれる65kbの配列がRf−1遺伝子の機能の有無を決定する配列を包含することが示された。この領域は、8個のゲノミッククローンから構成されるコンティグによりカバーされている。各クローンの長さは、約12〜22kbであり少なくとも4.7kbの重複部を持つ。一方、イネの遺伝子の長さについては、短いものから長いものまであることが知られているが、大部分の遺伝子は数kb以内であると考えられる。そのため、これら8個のゲノミッククローンのうち、少なくともひとつは完全長のRf−1遺伝子を包含すると予測される。
本発明者らはさらに、上記76kbの染色体領域のうち、Rf−1遺伝子領域をさらに絞り込むと共に、稔性回復能の存在を直接的に証明するために、相補性試験を行った。
具体的には、雄性不稔系統であるMSコシヒカリの未熟種子に、上記76kb領域内の10個の部分断片(各10〜21kb)を、別々に遺伝子工学的に導入した(図5)。使用された10個の部分断片のうち、8個は先に染色体歩行で得られた8個のゲノミッククローン(図1、実施例3に記載のXSE1、XSE7、XSF4、XSF20、XSG22、XSG16、XSG8及びXSH18)に由来するものである。これらに加えて、さらに2個のクローンXSF18およびXSX1に由来する断片についても相補性試験を行った。XSF18はXSF20と5’末端及び3’末端(各々、配列番号27の塩基20328及び41921)が同一だが、途中の塩基33947−38591を欠いている。これは、最初にクローンXSF18が単離されたが、単離後の増殖の過程で上記欠失を生じたことが判明したため、再度増殖をやり直すことにより、完全型のクローンを単離し、XSF20と命名したことに因る(実施例8)。また、XSX1は、クローンXSG8とXSH18の重複部分がやや小さいため(約7kb)、制限酵素処理およびライゲーションにより両クローンから、重複部分を十分に含むようなクローンを新たに作成したものである(実施例13)。
Rf−1は優性遺伝子であるので、導入した断片がRf−1遺伝子を完全に包含している場合には、形質転換植物当代において稔性が回復する。相補性試験において、各断片について形質転換植物の種子稔性調査を行い、λファージクローンXSG16に由来する15.6kb断片(配列番号27の塩基38538−54123を含む)を導入した形質転換体において、種子稔性が回復していることが見出された(実施例10)。他の断片については、形質転換植物はすべて不稔であった。これらの結果から、上記15.6kb断片がRf−1遺伝子を完全に包含していることが示された。さらに、本発明により、Rf−1遺伝子を遺伝子工学的に導入する方法が提供され、その有効性が実証された。
本発明者は、λファージクローンXSG16のどの部分がRf−1遺伝子を含むかをさらに特定するために、前述の15.6kb断片(配列番号27の塩基38538−54123を含む)よりも短い断片について相補性試験による種子稔性調査を行った。その結果、XSG16に由来する11.4kb断片(配列番号27の塩基42357−53743を含む)を導入した形質転換体において、種子稔性が回復していることが見出された(実施例10(2))。さらに、より短い6.8kb断片(配列番号27の塩基42132−48883を含む)を導入した形質転換体においても、種子稔性が回復した(実施例10(3))。これらの結果から、上記6.8kb断片がRf−1遺伝子を包含していることが示された。
本発明者らは、さらに研究をすすめ、稔性回復機能を有する核酸を特定し、それによってコードされるアミノ酸配列も明らかとなった。具体的には、実施例14−15に記載したように、先ず、配列番号27の43733−44038及び48306−50226に相当するDNA断片をPCRを用いて作成した。これらの2種の断片をプローブ(プローブP及びQ)として、コシヒカリにRf−1を導入した系統より作成したcDNAをライブラリーをスクリーニングした。その結果、6個のクローンの末端塩基配列がXSG16の配列と一致し、Rf−1遺伝子を含むクローンとして単離され、塩基配列が解析された(配列番号69−74)。
配列番号69−74のいずれの配列も、配列番号75のアミノ酸配列1−791を持つタンパク質をコードする。具体的には、各々配列番号69の塩基215−2587、配列番号70の塩基213−2585、配列番号71の塩基218−2590、配列番号72の塩基208−2580、配列番号73の塩基149−2521及び配列番号74の塩基225−2597が、いずれも配列番号75のアミノ酸配列1−791をコードする。なお上記塩基配列は、配列番号27の塩基43907−46279に対応する。
配列番号75のアミノ酸配列を、トウモロコシの稔性回復遺伝子(Rf2)の推定アミノ酸配列(Cui et al.,1996)と比較したところ、N末端の7アミノ酸残基(Met−Ala−Arg−Arg−Ala−Ala−Ser)が一致した。これら7アミノ酸残基はミトコンドリアへの標的化シグナルの一部と考えられている(Liu et al., 2001)。これらのことから、今回単離したcDNAはRf−1遺伝子のコーディング領域を完全に包含すると考えられる。イネRf−1とトウモロコシRf2とのアミノ酸レベルでの相同性は、前述の領域を除いては見られない。
また、今回単離したcDNAの配列をIR24のゲノム配列(配列番号27)と比較し、Rf−1遺伝子のエキソンとイントロンの構造を明らかにした(図7)。その結果、植物体内において、スプライシング様式およびポリA付加位置を異にする種々の転写産物が混在していることが示された。Rf−1遺伝子のコード領域内には、イントロンは介在しない。
本発明者は、実施例10(3)の相補性実験で種子稔性を回復した6.8kb断片について、さらに相補性実験を行った。具体的には、実施例16において、前記6.8kb断片中のRf−1遺伝子のプロモーター領域と予想翻訳領域とを包含する4.2kb断片(配列番号27の塩基42132−46318)を用いて、相補性実験を行ったところ、種子稔性が回復した。
さらに、実施例17において稔性回復機能を有する核酸を含むクローンを新たに6個取得した。具体的には、先ず、配列番号27の塩基45522−45545及び45955−45932に相当する2種類のプライマーを用いて、IR24のゲノミッククローンXSG16をテンプレートにPCRを行い、DNA断片を得た。当該DNA断片をプローブRとして、前記プローブPとともにプラークハイブリダイゼーションを行なった。プローブPおよびプローブRのどちらでも陽性を示すプラークから、新たに6個のクローンを得た(#7−#12)。その結果を配列番号80−85に示す。
配列番号80−85のいずれの配列も、配列番号75のアミノ酸配列1−791を持つタンパク質をコードすると推定される。具体的には、各々配列番号80の塩基229−2601、配列番号81の塩基175−2547、配列番号82の塩基227−2599、配列番号83の塩基220−2592、配列番号84の塩基174−2546及び配列番号85の塩基90−2462が、いずれも配列番号75のアミノ酸配列1−791をコードする。なお上記塩基配列は、配列番号27の塩基43907−46279に対応する。
今回単離したcDNAの配列をIR24のゲノム配列(特願2001−285247配列番号27)と比較することにより、エキソンとイントロンの構造が明らかになった(図8)。今回単離したcDNAのなかには、予想翻訳領域とは関係のないエキソンを含まず、単一エキソンからなるものも3個存在した(#10−#12、配列番号83−85)。
III. Rf−1遺伝子座を含む核酸
本発明は、稔性回復遺伝子(Rf−1)座を含む核酸を提供する。
本発明の稔性回復遺伝子(Rf−1)座を含む核酸は、配列番号27の塩基配列を有する核酸、又は配列番号27の塩基配列と少なくとも70%同一の塩基配列であって、稔性回復機能を有する核酸を含む。さらに、実施例10に記載したように、配列番号27の塩基配列のうち、特に塩基38538−54123にRf−1遺伝子が完全に含まれていると確認された。Rf−1遺伝子を含む領域はさらに、好ましくは、配列番号27の塩基38538−54123、より好ましくは、塩基42357−53743、さらに好ましくは、塩基42132−48883、さらにより好ましくは塩基42132−46318と特定された。
本発明者らはさらに、研究を進め、Rf−1遺伝子を含む核酸として以下の領域を特定した。
a)配列番号69の塩基215−2587、
b)配列番号70の塩基213−2585、
c)配列番号71の塩基218−2590、
d)配列番号72の塩基208−2580、
e)配列番号73の塩基149−2521、
f)配列番号74の塩基225−2597、
h)配列番号80の塩基229−2601、
i)配列番号81の塩基175−2547、
j)配列番号82の塩基227−2599、
k)配列番号83の塩基220−2592、
l)配列番号84の塩基174−2546及び
m)配列番号85の塩基90−2462。
上記塩基配列は、g)配列番号27の塩基43907−46279に対応し、そして、いずれも配列番号75のアミノ酸配列1−791をコードする。
以下、本明細書中、文脈により「配列番号27の塩基配列」という用語は、配列番号27全体、あるいは、その一部であって稔性回復機能に関与する部分、特に、塩基38538−54123を示す。より好ましくは、塩基42357−53743、さらに好ましくは、塩基42132−48883、さらにより好ましくは塩基42132−46318を示す。そして、特に好ましくは、g)配列番号27の塩基43907−46279、あるいは、これに対応する、a)配列番号69の塩基215−2587、b)配列番号70の塩基213−2585、c)配列番号71の塩基218−2590、d)配列番号72の塩基208−2580、e)配列番号73の塩基149−2521、f)配列番号74の塩基225−2597、h)配列番号80の塩基229−2601、i)配列番号81の塩基175−2547、j)配列番号82の塩基227−2599、k)配列番号83の塩基220−2592、l)配列番号84の塩基174−2546又はm)配列番号85の塩基90−2462のいずれかを示す。
後述する実施例では、稔性回復遺伝子(Rf−1)を含む核酸として、Rf−1遺伝子を含むインディカ米のIR24のゲノムライブラリーより核酸が単離され、配列番号27の塩基配列が決定された。しかしながら、本発明の、稔性回復遺伝子(Rf−1)を含む核酸の由来は、Rf−1遺伝子を有するインディカ型品種由来のものであれば特に限定されない。Rf−1遺伝子を有するインディカ型品種は、特に限定されず、例えば、IR24、IR8、IR36、IR64、Chinsurah、BoroIIが含まれる。Rf−1遺伝子を有しないジャポニカ型品種としては、例えば、限定されるわけではないが、あそみのり、コシヒカリ、きらら397、アキヒカリ、あきたこまち、ササニシキ、キヌヒカリ、日本晴、初星、黄金晴、ヒノヒカリ、ミネアサヒ、あいちのかおり、ハツシモ、アケボノ、フジヒカリ、峰の雪もち、ココノエモチ、ふくひびき、どんとこい、五百万石、ハナエチゼン、トドロキワセ、はえぬき、どまんなか、ヤマヒカリ等が知られている。「インディカ型品種」も「ジャポニカ型品種」も当業者に周知であり、当業者はどのようなイネ品種が本発明の対象となり得るか容易に判断できる。
本発明の核酸は、一本鎖および二本鎖型両方のDNAと共に、そのRNA相補体も含む。DNAには、例えば、ゲノムDNA(その対応するcDNAも含む)、化学的に合成されたDNA、PCRにより増幅されたDNA、およびそれらの組み合わせが含まれる。
本発明のRf−1遺伝子を含む核酸は、好ましくは配列番号27の塩基配列を有する。1つ以上のコドンが同一のアミノ酸をコードする場合があり、遺伝暗号の縮重と呼ばれている。このため、配列番号27と完全には一致していないDNA配列が、配列番号27と全く同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードすることがあり得る。こうした変異体DNA配列は、サイレント(silent)突然変異(例えば、PCR増幅中に発生する)から生じてもよいし、または天然配列の意図的な突然変異誘発の産物であってもよい。
本発明のRf−1遺伝子は、好ましくは配列番号75に記載のアミノ酸配列をコードする。しかしながら、これに限定されることなく、1またはそれ以上のアミノ酸配列が欠失、付加または置換しているアミノ酸配列を有していてもよい。、稔性回復機能を有する限り、全ての相同タンパク質を含むことが意図される。「アミノ酸変異」は1から複数個、好ましくは、1ないし20個、より好ましくは1ないし10個、最も好ましくは1ないし5個である。Rf−1遺伝子にコードされるアミノ酸配列は、配列番号75に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する。
アミノ酸の同一性パーセントは、視覚的検査及び数学的計算により決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman,S.B.及びWunsch,C.D.(J.Mol.Biol.,48:443−453,1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff,S及びHenikoff,J.G.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10915−10919,1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl.Acids.Res.25.,p.3389−3402,1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる相同性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。
同一の機能を有するタンパク質であっても、由来する品種の相違によって、そのアミノ酸配列に相違が存在しうることは当業者にとって周知の事実である。本発明のRf−1遺伝子は、稔性回復機能を有する限り、配列番号27の塩基配列のこのような相同体、変異体も含みうる。「稔性回復機能を有する」とは、当該DNA断片が導入された場合に、イネ個体又は種子に稔性を付与することを意味する。稔性回復は、Rf−1遺伝子よりタンパク質が発現されることに因ってもよく、あるいはRf−1遺伝子の核酸(DNA又はRNA)自体が稔性の付与に何らかの機能をしていてもよい。
限定されるわけではないが、Rf−1遺伝子の相同体、変異体が稔性回復機能を有するか否かは、例えば、以下のように調べることが可能である。MSコシヒカリ(不稔系統)にコシヒカリの花粉をかけることにより得た未熟種子を供試して、Hiei et al(Plant Journal(1994),6(2),p.272−282)の方法に従い、被検定核酸断片を導入する。得られた形質転換体を通常の条件で栽培すると、被検定核酸断片が稔性回復機能を有する場合にのみ、種子が稔る。
Rf−1遺伝子を有しないジャポニカ型のあそみのりの対応する領域に由来する核酸は、配列番号28に示した塩基配列を有する。配列番号28と配列番号27の対応する部分は、全体として約98%の同一性を有する。よって、本発明の稔性回復遺伝子(Rf−1)座を含む核酸は、配列番号27と少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する。「配列番号27」は、特に好ましくは、g)配列番号27の塩基43907−46279、あるいは、これに対応する、a)配列番号69の塩基215−2587、b)配列番号70の塩基213−2585、c)配列番号71の塩基218−2590、d)配列番号72の塩基208−2580、e)配列番号73の塩基149−2521、f)配列番号74の塩基225−2597、h)配列番号80の塩基229−2601、i)配列番号81の塩基175−2547、j)配列番号82の塩基227−2599、k)配列番号83の塩基220−2592、l)配列番号84の塩基174−2546又はm)配列番号85の塩基90−2462のいずれかを意図する。
核酸の同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算により決定してもよい。あるいは、2つの核酸配列の同一性パーセントは、Devereuxら,Nucl.Acids Res.,12:387(1984)に記載され、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、およびSchwartzおよびDayhoff監修,Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353−358(1979)に記載されるような、GribskovおよびBurgess,Nucl.Acids Res.14:6745(1986)の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらに0.10のペナルティ;および(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。
本発明の核酸はまた、配列番号27の塩基配列に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸、並びに、配列番号27の塩基配列に高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸を含む。
本明細書において使用されるように、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者により、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Vol.1,pp.1.101−104,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に示されている。例えば、ニトロセルロースフィルターに関し、5XSSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40℃ないし60℃での、1×SSCないし6XSSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、例えばスターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5XSSC、0.1%SDSの洗浄条件の使用が含まれる。また、例えば、ハイブリダイゼーション溶液が約50%ホルムアミドを含む場合、上記ハイブリダイゼーション温度は約15℃ないし20℃低めとなる。非常にストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者により、容易に決定することが可能である。一般に、非常にストリンジェントな条件は、上記中程度にストリンジェントな条件よりも、より高い温度及び/又はより低い塩濃度でのハイブリダイゼーション、及び/又は洗浄条件を含む、例えば、約60℃ないし65℃での0.1×SSCないし0.2×SSCのハイブリダイゼーション条件、および/又は約65℃ないし68℃、0.2XSSC、0.1%SDSの洗浄条件を含む。当業者は温度および洗浄溶液塩濃度は、プローブの長さなどの要因にしたがい、必要に応じ調整してもよいことを認識するであろう。
「配列番号27」は、特に好ましくは、g)配列番号27の塩基43907−46279、あるいは、これに対応する、a)配列番号69の塩基215−2587、b)配列番号70の塩基213−2585、c)配列番号71の塩基218−2590、d)配列番号72の塩基208−2580、e)配列番号73の塩基149−2521、f)配列番号74の塩基225−2597、h)配列番号80の塩基229−2601、i)配列番号81の塩基175−2547、j)配列番号82の塩基227−2599、k)配列番号83の塩基220−2592、l)配列番号84の塩基174−2546又はm)配列番号85の塩基90−2462のいずれかを意図する。
同様に、本発明のDNAには、1つまたは複数の塩基の欠失、挿入または置換のため、配列番号27の塩基配列とは異なるが稔性回復機能を有する核酸を含む。稔性回復機能を有する限り、欠失、挿入または置換される塩基の数は特に制限されないが、好ましくは1個ないし数千個、より好ましくは1個ないし千個、さらにこのましくは1個ないし500個、さらにより好ましくは1個ないし200個、最も好ましくは1個ないし100個である。
本明細書の記載に基づいてRf−1遺伝子がより特定され、当業者がRf−1遺伝子以外の部分またはRf−1遺伝子内のイントロン部分などの核酸を除いて使用することが可能である。また、既定のアミノ酸(特に配列番号75に記載のアミノ酸配列)を、例えば同様の物理化学的特性を有する残基により置換してもよい。こうした保存的置換の例には、1つの脂肪族残基を互いに、例えばIle、Val、Leu、またはAlaを互いに置換するもの;LysおよびArg、GluおよびAsp、またはGlnおよびAsn間といった、1つの極性残基から別のものへの置換;あるいは芳香族残基の別のものでの置換、例えばPhe、Trp、またはTyrを互いに置換するものが含まれる。他の保存的置換、例えば、同様の疎水性特性を有する領域全体の置換が、周知である。当業者は、周知の遺伝子工学的手法により、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989)等に記載の、例えば部位特異的突然変異誘発法を使用して、所望の欠失、挿入または置換を施すことが可能である。
本発明者らは、Rf−1遺伝子を有するインディカ型のIR24(塩基配列27)と、有しないジャポニカ型のあそみのり(塩基配列28)およびGenBankに登録されている日本晴BACクローン(アクセッション番号AC068923)とを比較した。その結果、Rf−1遺伝子を含むインディカ型のRf−1領域は少なくとも、以下の1塩基多型(SNP)を有することを見出した。
1)配列番号27の塩基1239に相当する塩基がAである;
2)配列番号27の塩基6227に相当する塩基がAである;
3)配列番号27の塩基20680に相当する塩基がGである;
4)配列番号27の塩基45461に相当する塩基がAである;
5)配列番号27の塩基49609に相当する塩基がAである;
6)配列番号27の塩基56368に相当する塩基がTである;
7)配列番号27の塩基57629に相当する塩基がCである;及び
8)配列番号27の塩基66267に相当する塩基がGである。
よって、本発明のRf−1領域を含む核酸は、好ましくは上記条件1)−8)の1つないし全てを満たす。
なお、後述の実施例3において、Rf−1遺伝子極近傍組換え個体(RS1−RS2、RC1−RC8)についてそのRf−1領域の染色体構成を調べた。その結果、配列番号27の塩基1239ないし66267の塩基配列、即ち、最大限に見積もってもP4497 MboI座からB56691 XbaI座までの領域(約65kb)(図3)に、Rf−1遺伝子の機能の有無を決定する配列が含まれることが明らかにされた。ただし、Rf−1遺伝子の一部の遺伝子型がインディカ型であることが、Rf−1遺伝子の遺伝子機能発現に重要であり、残りの部分はジャポニカ型でもインディカ型でも遺伝子機能に大きな差異を生じない可能性がある。極端な場合、ジャポニカ・インディカ間でコーディング領域は完全に同一で、プロモーター領域だけに差違があり、そして、プロモーター領域及びコーディング領域の一部のみが上記P4497 MboI座からB56691 XbaI座までの領域(約65kb)に含まれることもあり得る。よって、上記共有インディカ型領域(配列番号27の塩基1239ないし66267)がRf−1遺伝子全体を完全に包含するとは、断定できない。しかしながら、以下の理由、
1)遺伝子の大きさは通常数kbであり10kbを超えることは稀である;
2)本発明で明らかにしたIR24のゲノム塩基配列(配列番号27)は、上記共有インディカ型領域を完全に包含する;
3)配列番号27の5’末端は、上記共有インディカ型領域の5’末端から1238bp上流に位置し、別の遺伝子(S12564)の一部である;および
4)配列番号27の3’末端は、上記共有インディカ型領域の3’末端から10096bp下流に位置する
により、少なくとも配列番号27はRf−1遺伝子全体を完全に包含すると考えられる。
このように、本発明者らは、まずRf−1遺伝子領域を76kbまで絞り込むことに成功した。よって、本発明のRf−1遺伝子領域を含む核酸は、従来技術の特開2000−139465に記載のRf−1遺伝子からの遺伝子距離が約1cM(約300kb)ある共優性マーカー座を用いて選抜した場合よりも、Rf−1遺伝子の近傍に存在する他の遺伝子を含む可能性が格段に低い。さらに、本発明者らの先の特願2000−247204に記載のDNAマーカー座S12564 Tsp509IとC1361 MwoI座(両遺伝子座の距離は約0.3cM)を用いて選抜した場合よりも他の遺伝子を含む可能性が低い。
さらに、本発明者らは相補性試験を行うことにより、配列番号27の塩基配列のうち、特に塩基38538−54123にRf−1遺伝子が完全に含まれていることを確認した。よって、本発明の一態様において、配列番号27の塩基配列又は配列番号27の塩基38538−54123の塩基配列と、少なくとも70%同一の塩基配列は、以下の条件1)及び2)の少なくとも一つを満たす:
1)配列番号27の塩基45461に相当する塩基がAである;及び
2)配列番号27の塩基49609に相当する塩基がAである。
本発明者らはさらに、Rf−1遺伝子を含む核酸として以下の領域を特定した。
a)配列番号69の塩基215−2587、
b)配列番号70の塩基213−2585、
c)配列番号71の塩基218−2590、
d)配列番号72の塩基208−2580、
e)配列番号73の塩基149−2521、
f)配列番号74の塩基225−2597、
h)配列番号80の塩基229−2601、
i)配列番号81の塩基175−2547、
j)配列番号82の塩基227−2599、
k)配列番号83の塩基220−2592、
l)配列番号84の塩基174−2546、及び
m)配列番号85の塩基90−2462。
上記塩基配列は、g)配列番号27の塩基43907−46279に対応する。本発明の核酸はさらに、
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸。
を含む。
上記の配列番号27の塩基45461は、1)配列番号69の塩基1769;2)配列番号70の塩基1767;3)配列番号71の塩基1772;4)配列番号72の塩基1762;5)配列番号73の塩基1703;6)配列番号74の塩基1779;7)配列番号80の塩基1783;8)配列番号81の塩基1729;9)配列番号82の塩基1781;10)配列番号83の塩基1774;11)配列番号84の塩基1728;及び12)配列番号85の塩基1644に相当する。よって、特に好ましくは、本発明の方法に使用する核酸は、好ましくは、以下の条件1)−12)の少なくとも一つを満たす:
1)配列番号69の塩基1769に相当する塩基がAである;
2)配列番号70の塩基1767に相当する塩基がAである;
3)配列番号71の塩基1772に相当する塩基がAである;
4)配列番号72の塩基1762に相当する塩基がAである;
5)配列番号73の塩基1703に相当する塩基がAである;
6)配列番号74の塩基1779に相当する塩基がAである;
7)配列番号80の塩基1783に相当する塩基がAである;
8)配列番号81の塩基1729に相当する塩基がAである;
9)配列番号82の塩基1781に相当する塩基がAである;
10)配列番号83の塩基1774に相当する塩基がAである;
11)配列番号84の塩基1728に相当する塩基がAである;又は
12)配列番号85の塩基1644に相当する塩基がAである。
IV. イネの稔性の回復方法
本発明は、配列番号27の塩基配列を有する核酸、又は配列番号27の塩基配列と少なくとも70%同一の塩基配列であって、稔性回復機能を有する核酸をイネに導入することにより、イネの稔性を回復する方法を提供する。本発明の方法はまた、配列番号27の一部、特に、配列番号27の塩基38538−54123、好ましくは、塩基42357−53743、より好ましくは、塩基42132−48883の塩基配列を有する核酸、又は配列番号27の塩基38538−54123、好ましくは、塩基42357−53743、より好ましくは、塩基42132−48883、さらにより好ましくは塩基42132−46318の塩基配列と少なくとも70%同一の塩基配列であって、稔性回復機能を有する核酸をイネに導入してもよい。
本発明の方法は特に好ましくは、配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸をイネに導入する。最も好ましくは、配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸は、以下のa)−p)の核酸から選択される:
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸。
本発明において、イネに導入されうる稔性回復遺伝子(Rf−1)座を含む核酸は、先の「III.Rf−1遺伝子座を含む核酸」において記載の核酸を使用しうる。核酸のイネへの導入方法は特に限定されず、公知の方法を使用することが可能である。本発明の核酸は公知の遺伝子工学的な方法によって導入しても、あるいは交配によっても導入してもよい。隣接する他の遺伝子の導入を防げる、育種年限を短縮できる、という観点より遺伝子工学的な方法の使用が好ましい。
遺伝子工学的手法による形質導入のためにはいかなる適切な発現系を使用してもよい。組換え発現ベクターは、適切な転写または翻訳制御ヌクレオチド配列、例えば、哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子由来のものなどに、機能可能であるように連結されている、本発明のイネに導入されうる稔性回復遺伝子(Rf−1)を含む核酸を含む。
制御配列の例には、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、並びに転写および翻訳開始および終結を調節する適切な配列が含まれる。ヌクレオチド配列は、制御配列が該DNA配列に機能的に関連しているとき、機能可能であるように連結されている。したがって、プロモーターヌクレオチド配列は、該プロモーターヌクレオチド配列がDNA配列の転写を調節するならば、DNA配列に、機能可能であるように連結されている。イネにおいて複製する能力を与える複製起点、および形質転換体を同定する選択遺伝子が、一般的に発現ベクターに取り込まれている。選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシンもしくはネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子などが例示される。
さらに、必要に応じて適切なシグナルペプチド(天然または異種性)をコードする配列を、発現ベクターに取り込んでもよい。シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNA配列を、インフレームで本発明の核酸配列に融合させ、DNAがまず転写され、そしてmRNAがシグナルペプチドを含む融合タンパク質に翻訳されるようにしてもよい
本発明によればまた、木発明の遺伝子を含む組換えベクターが提供される。プラスミドなどのベクターに本発明の遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.53(1989)に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えベクター(例えば、組換えプラスミド)は、宿主細胞であるイネに導入される。
ベクターは、簡便には当業界において入手可能な組換え用ベクター(例えば、プラスミドDNAなど)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。本願発明の核酸断片を用いてイネに稔性を付与する場合には、特に、植物形質転換用ベクターが有用である。植物用ベクターとしては、植物細胞中で当該遺伝子を発現し、当該タンパク質を生産する能力を有するものであれば特に限定されないが、例えば、pBI221、pBI121(以上Clontech社製)、及びこれらから派生したベクターが挙げられる。また、特に単子葉植物たるイネの形質転換には、pIG121Hm、pTOK233(以上Hieiら,Plant J.,6,271−282(1994))、pSB424(Komariら,Plant J.,10,165−174(1996))などが例示される。
形質転換植物は、上述のベクターのβ−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子の部位に本願発明の核酸断片を入れ替えて植物形質転換用ベクターを構築し、これを植物に導入することで調整することができる。植物形質転換用ベクターは、少なくともプロモーター、翻訳開始コドン、所望の遺伝子(本願発明の核酸配列またはその一部)、翻訳終始コドンおよびターミネーターを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、選抜マーカー領域などを適宜含んでいてもよい。プロモーター、ターミネーターは植物細胞で機能するものであれば特に限定されないが、構成的発現をするプロモーターとしては、上記ベクターに予め組み込まれている35Sプロモーターの他に、アクチン、ユビキチン遺伝子のプロモーターなどが例示される。
プラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、一般に、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.74(1989)に記載のリン酸カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。植物細胞の場合は、例えばリーフディスク法[Science,227,129(1985)]、エレクトロポレーション法[Nature,319,791(1986)]によって形質転換することができる。
特に植物への遺伝子導入法としては、アグロバクテリウムを用いる方法(Horsch et al.,Science,227,129(1985)、Hiei et al.,Plant J.,6,271−282(1994))、エレクトロポレーション法(Fromm et al.,Nature,319,791(1986))、PEG法(Paszkowski et al.,EMBO J.,3,2717(1984))、マイクロインジェクション法(Crossway et al.,Mol.Gen.Genet.,202,179(1986))、微小物衝突法(McCabe et al.,Bio/Technology,6,923(1988))などが挙げられる。所望の植物に核酸を導入する方法であれば特に限定されない。
一方、交配による導入の場合には、例えば、以下のようにして行うことが可能である。先ず、Rf−1供与親とジャポニカ品種とを交雑して得られたF1に、ジャポニカ品種を戻し交雑する。得られた個体のなかから、S12564 Tsp509I座がジャポニカ型ホモ、P4497 MboI座及びB53627BstZ17I座がヘテロの個体を選別し、さらなる戻し交雑に供試する。得られた個体のなかから、P4497 MboI座及びB56691 XbaI座がヘテロ、B53627 BstZ17I座がジャポニカ型ホモの個体を選抜し、さらなる戻し交雑に供試する。以後は、戻し交雑各世代で、P4497 MboI座及びB56691 XbaI座がヘテロの個体を選抜し、次の戻し交雑に供試する、という工程を10回程度繰り返す。最後に、P4497 MboI座及びB56691 XbaI座がヘテロの個体を自殖させ、得られた個体から両座がインディカ型ホモの個体を選抜することにより、P4497 MboI座からB56691 XbaI座までの限定された染色体領域をRf−1供与親から引き継ぐ回復系統を得ることができる。
本発明において、稔性回復遺伝子(Rf−1)を含む核酸が単離されたことにより、Rf−1遺伝子を遺伝子工学の技術を用いてイネ品種に導入し、回復系統を育成することが可能となった。本発明ではRf−1領域を先ず76kb以下にまで絞り込むことに成功した。よって本発明のRf−1遺伝子座を含む核酸は、従来技術と比較して、Rf−1遺伝子の近傍に存在する他の遺伝子を含む可能性が格段に低い。さらに、本発明はRf−1遺伝子を含む領域の全塩基配列を明らかにした。当業者は、本明細書の記載に基づきRf−1遺伝子自体の解析することが進めることができる。よって、隣接する遺伝子を全く含まずにRf−1遺伝子のみを導入することも可能となった。これは、隣接遺伝子が劣悪形質をもたらす遺伝子である場合に特に重要である。さらに、交雑の場合より早く、1〜2年の短期間での回復系統を育成も可能となった。
そして、本明細書中の実施例4−13及び17に記載の相補性試験では実際に、図5に記載の10個のクローン由来の断片を用い、アグロバクテリウムを用いる方法によりMSコシヒカリ(BT細胞質を持ち、核遺伝子はコシヒカリとほぼ同一)を形質転換した。その結果、配列番号27の塩基38538−54123、好ましくは、塩基42357−53743、より好ましくは、塩基42132−48883、さらにより好ましくは塩基42132−46318の塩基配列を含む核酸によって、稔性回復系統が育成されることが証明された。
限定されるわけではないが、アグロバクテリウムを用いるイネの回復系統の作成方法は、例えば、Hiei et al.,Plant J.,6,P.271−282(1994)、Komari et al.,Plant J.,10,p.165−174(1996)、Ditta et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:p.7347−7351(1980)等に記載されている。
先ず、所期の挿入したい核酸断片を含むプラスミドベクターを作成する。プラスミドベクターは、例えば、前記Komari et al.,Plant J.,10,p.165−174(1996)らにプラスミドマップが記載されている、pSB11、pSB22等が使用可能である。あるいは、当業者は例えば前記pSB11、pSB22等のプラスミドベクターを基に、自ら適当なベクターを構築する事も可能である。本明細書後述する実施例では、pSB11を基に、ハイグロマイシン耐性遺伝子カセットを持つ中間ベクターpSB200を作成して使用した。具体的には、先ず、ユビキチンプロモーターとユビキチンイントロン(Pubi−ubiI)に、ノパリン合成酵素のターミネーター(Tnos)を接続した。これより得られたPubi−ubiI−Tnos接続体のubiI−Tnos間に、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HYG(R))を挿入することにより、Pubi−ubiI−HYG(R)−Tnosからなる接続体を得た。この接続体を、pSB11(Komariら、上述)のHindIII/EcoRI断片に接続することにより、pKY205を得た。このpKY205のPubi上流に存在するHindII1部位にNotI、NspV、EcoRV、KpnI、SacI、EcoRIの制限酵素部位を追加するためのリンカー配列を挿入することにより、ハイグロマイシン耐性遺伝子カセットを有するpSB200を得た。
次いで、挿入核酸を含む組換えベクターを用いて大腸菌(例えばDH5α、JM109、MV1184等、いずれも例えばTAKARA社より購入可能)を形質転換する。
さらに、形質転換された大腸菌を用いて、アグロバクテリウム菌株を好ましくはヘルパー大腸菌株とともに、例えば、Ditta et al(1980)の方法に従い、三菌系交雑(triparential mating)を行う。限定されるわけではないが、アグロバクテリウムは例えば、Agrobacterium tumefaciens菌株LBA4404/pSB1、LBA4404/pNB1、LBA4404/pSB3等を使用することが可能である。いずれも前述のKomari et al.,Plant J.,10,p.165−174(1996)にプラスミドマップが記載されており、当業者は例えば自らベクター構築を行うことにより使用可能である。限定されるわけではないが、ヘルパー大腸菌は、例えばHB101/pRK2013(クローンテック社より入手可能)等が使用可能である。また、より一般的ではないがpRK2073を保有する大腸菌もヘルパー大腸菌として使用可能との報告がある(Lemas et al.,Plasmid 1992,27,p.161−163)。
次いで、所期の交配が生じたアグロバクテリウムを用いて、例えば、Hiei et al (1994)の方法に準拠し、雄性不稔イネの形質転換を行う。形質転換に必要なイネ未熟種子は、例えば、雄性不稔イネにジャポニカ品種の花粉をかけることにより作成できる。
形質転換植物の稔性回復は、例えば出穂約1か月後に、種子稔性を立毛調査することによって調べることが可能である。立毛調査とは、圃場などで栽培されている状態で観察する方法である。あるいは、実験室で穂の稔実率を調べる稔実率調査を行ってもよい。
V. Rf−1遺伝子の存在の有無の識別方法
本発明においてRf−1遺伝子の機能の有無を決定する配列が、イネ第10染色体上の約65kbの多型検出用マーカー座P4497 MboIとB56691 XbaIの間に存在することが明らかにされた。さらに、相補性試験により、配列番号27の塩基配列のうち、特に塩基38538−54123にRf−1遺伝子が完全に含まれていることが確認された。
また、Rf−1遺伝子を有するインディカ型品種(IR24)(配列番号27)と当該遺伝子を有しないジャポニカ型品種(あそみのり(配列番号28)および日本晴BACクローンAC068923)の塩基配列を比較し、両者に複数の多型(polymorphism)が存在することが明らかになった。その結果、Rf−1遺伝子近傍領域における塩基配列の多型を利用することにより、被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有するか否かを、簡便、迅速かつ正確に識別することが可能となった。
よって、本発明はまた、Rf−1遺伝子の機能の有無を決定する配列がイネ第10染色体上の多型検出用マーカー座P4497 MboIとB56691 XbaIの間に存在することを利用して、被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有するか否かを識別する方法を提供する。
多型の検出は公知の任意の方法を使用して行うことが可能である。例えば、制限酵素断片長の多型(restriction fragment length polymorphism;RFLP)を調べる方法、塩基配列の決定により直接的に決定する方法、ゲノムDNAを8塩基認識制限酵素で切断後、末端を放射能標識し、さらに、6塩基および4塩基認識制限酵素で切断し、2次元電気泳動で展開する方法(RLGS法、Restriction Landmark Genome Scanning)等が知られている。さらに、RFLPをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅・検出するAFLP(amplified fragment length polymorphism;P.Vos,ら、Nucleic Acids Res.Vol.23,p.4407−4414(1995))分析も開発されている。
例えば、従来より以下に例示するようなRFLPをPCR増幅を用いて検出する方法(RFLPマーカーのPCRマーカー化)、マイクロサテライトの多型をPCR増幅を用いて検出する方法(マイクロサテライトマーカー)が採用されてきた。
RFLPマーカーのPCRマーカー化
A. RFLPプローブ対応ゲノム領域の多型を利用してPCRマーカー化する方法(D.E.Harry,B.Temesgen,D.B.Neale;Codominant PCR−based markers for Pinus taeda developed from mapped cDNA clones,Theor.Appl.Genet.(1998)97:p.327−336)。これは、RFLPマーカープローブ配列(「RFLP」は、あるDNA断片をプローブに用いてサザン解析を行った場合に観察される多型である。プローブに用いたDNA断片の塩基配列を「RFLPマーカープローブ配列」と呼ぶ。)に対して設計したプライマーを用いてゲノムPCRを行った後、次の二方法のいずれかによりPCRマーカー化できる。第1は、産物を一連の制限酵素で処理し、断片長多型を生じる制限酵素を探索する手法であり、第2は、産物の塩基配列を品種間比較して多型を探索し、その多型を利用してPCRマーカー化する方法である。
B. RFLP原因部位を同定してPCRマーカー化する方法。これは、RFLPマーカープローブ配列内あるいはその周辺(通常数kb以内)に存在するRFLP原因部位(比較する2品種の一方のみが持つ制限酵素認識部位)を同定することにより、PCRマーカー化する方法である。
マイクロサテライトマーカー
マイクロサテライトとは、(CA)nのような2ないし4塩基程度の繰り返し配列であり、ゲノム中に多数存在している。繰り返し数に品種間多型がある場合、隣接領域に設計したプライマーを用いてPCRを行うと、PCR産物長に多型が観察され、DNA多型を検出することが可能となる。マイクロサテライトを利用した多型検出マーカーは、マイクロサテライトマーカーと呼ばれている(O.Parnaud,X.Chen,S.R.McCouch, ,Mol.Gen.Genet.(1996)252:p.597−607)。
本発明において多型の検出方法は特に限定されない。効率、簡便性の観点より、PCRとRFLPを組み合わせて、比較する品種系統間において、PCRにより増幅したDNA断片配列中の制限酵素認識部位に多型が存在する場合に、その制限酵素による切断パターンからいずれの型であるかを決定するPCR−RFLP法が好ましい。PCR−RFLP法は、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)法とも呼ばれる。多型が見出される部位に適当な制限酵素認識部位が存在しない場合、PCRの際に制限酵素部位を導入するCAPSの修飾法、dCAPS(derived cleaved amplified polymorphic sequence)も使用可能である(Michaels,S.D.and Amasino,R.M.(1998),The Plant Journal 14(3)381−385;A.Koniecznyら,(1993),Plant J.4(2)p.403−410;Neff,M.M.,Neff,J.D., Chory,J.and Pepper,A.E.(1998),The Plant Journal 14(3)387−392)。以下、より詳細に説明する。
CAPS法、dCAPS法
限定されるわけではないが、本発明の識別方法では
i)Rf−1遺伝子座において、インディカ品種とジャポニカ品種の塩基配列において多型が見出される部位およびその隣接領域の塩基配列に基づいて、当該塩基配列を増幅するようにプライマー対を作成し;
ii)被検定イネ個体又は種子のゲノムDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い;そして
iii)前記核酸増幅産物に見出される多型に基づいて、被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有するか否かを判断する。
工程i)におけるプライマー対の作成は、好ましくは
a)前記核酸増幅産物の多型中に欠失領域を有する型が存在する場合、当該欠失領域の両側に欠失領域を挟むように核酸増幅用プライマー対を作成し、多型検出用マーカーとする;
b)前記核酸増幅産物の多型中に制限酵素認識に差異を生じる塩基置換が存在する場合、当該塩基置換部位の両側に置換部位を挟むように核酸増幅用プライマー対を作成し、多型検出用マーカーとする;または
c)前記核酸増幅産物の多型中に制限酵素認識に差異を生じない塩基置換が存在する場合、当該塩基置換部位を含み、そして、当該塩基置換部位を含む領域を核酸増幅産物では制限酵素認識に差異を生じるような塩基配列に変更するようなミスマッチ導入用プライマー対を作成し、多型検出用マーカーとする;
のいずれかの手段を含む。
限定されるわけではないが、本発明において、Rf−1遺伝子の存在を識別するために利用可能な適当な多型部位は、例えば、Rf−1遺伝子を有するインディカ型品種(IR24)(配列番号27)と当該遺伝子を有しないジャポニカ型品種(あそみのり(配列番号28)およびBACクローンAC068923)の塩基配列を比較し、以下のように多型検出用マーカーの作成が可能となるように、適宜選択することができる。
例えば、見出された多型が制限酵素認識部位に差異を生じる場合、当該多型部位の両側に多型部位を挟むように核酸増幅プライマーを作成し、多型検出用に用いる。プライマーを設計する際は、不要な産物を避けるために、反復性の高い配列に対して設計しない方が好ましい。見出された多型が制限酵素認識に差異を生じない場合、記述のdCAPS法を適用することにより、マーカーを作成することができる。dCAPSマーカーのプライマーを設計する際は、反復配列に対して設計しない方が好ましいことに加え、多型を識別しやするするため産物長が、好ましくは50−300塩基、より好ましくは100塩基程度となるようにするとよい。
見出された多型がマイクロサテライトに関するものであれば、当該マイクロサテライトを挟むように核酸増幅用プライマーを作成し、多型検出用に用いる。この場合も、反復配列に対してプライマーを設計しない方が好ましい。
1)核酸増幅
本発明では、好ましくは、解明された被検定イネ個体又は種子のRf−1遺伝視座の核酸配列の塩基配列に基づいて、多型を含む隣接領域を増幅するようにプライマー対を作成する。当該プライマーを使用して、被検定イネ個体又は種子のゲノムDNAを鋳型に核酸増幅反応を行う。核酸増幅反応は好ましくは、複製連鎖反応(PCR)(サイキら、1985,Science 230,p.1350−1354)である。
核酸増幅のためのプライマー対は、多型部位およびその隣接領域の塩基配列に基づき公知の方法により作成することが可能である。具体的には、限定されるわけではないが、例えば、多型部位およびその隣接領域の塩基配列に基づき、以下の条件:
1)各プライマーの長さが15−30塩基であること;
2)各プライマーの塩基配列中のG+Cの割合が30−70%であること;
3)各プライマーの塩基配列中のA、T、GおよびCの分布が部分的に大きく偏らないこと;
4)プライマー対によって増幅される核酸増幅産物の長さが50−3000塩基、好ましくは50−300塩基であること;そして
5)各プライマー自身の塩基配列中、又はプライマー同士の塩基配列間に相補的な配列部分が存在しないこと
を満たすように、多型部位およびその隣接領域の塩基配列と同じ塩基配列若しくは上記領域に相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAを製造し、または、必要であれば多型部位およびその隣接領域の塩基配列に対する結合特異性を失わないように修飾した上記一本鎖DNAを製造する
ことを含む方法により、プライマー対を作成できる。
本発明において増幅される、多型部位の「隣接領域」とは、多型とその隣接領域の双方を含む領域が、好ましくは、PCR法等の核酸増幅が可能な距離の範囲内にあることを意味する。限定されるわけではないが、好ましくは増幅される隣接領域が約50塩基ないし約3000塩基、より好ましくは約50塩基ないし約2000塩基の範囲内にある。多型を識別しやするするためは、産物長が好ましくは50−300塩基、より好ましくは100塩基程度となるようにするとよい。限定されるわけではないが、隣接領域は、多型部位の5’側または3’側に好ましくは約0塩基ないし約3000塩基、より好ましくは約0塩基ないし約2000塩基、より好ましくは約0塩基ないし約1000塩基の範囲内にある。
核酸増幅反応の手順及び条件は特に限定されず、当業者に周知である。当業者は、多型部位およびその隣接領域の塩基配列、プライマー対の塩基配列および長さ等の種々の要因に応じて適宜、条件を採用することが可能である。一般には、プライマー対の長さが長い程、G+Cの割合が高いほど、A、T、GおよびCの分布の偏りが小さい程よりストリンジェントな条件(より高温度でのアニーリング反応および核酸伸長反応、より少ないサイクル数)で核酸増幅反応を行うことが可能である。よりストリンジェントな条件の採用により、特異性の高い増幅反応が可能となる。
増幅反応は、限定されるわけではないが、例えば、鋳型として使用するゲノムDNA50ng、dNTP各200μM、ExTaqTM(TAKARA)5Uを使用し、例えば、94℃にて2分を1サイクル行った後、94℃にて1分、58℃にて1分、72℃にて2分を1サイクルとして30サイクル行い、最後に72℃にて2分を1サイクル行うことにより行うことができる。あるいは、94℃にて2分を1サイクル行った後、94℃にて1分、58℃にて1分、72℃にて1分を1サイクルとして30サイクル行い、最後に72℃にて2分を1サイクル行うことにより行うこともできる。あるいは、別の態様においては、94℃にて2分を1サイクル行った後、94℃にて30秒、58℃にて30秒、72℃にて30秒を1サイクルとして35サイクル行い、最後に72℃にて2分を1サイクル行うことにより行うこともできる。
PCRの鋳型として使用する被検定イネゲノムのDNAは、Edwardsら(Nucleic Acids Res.8(6):1349,1991)の方法で、個体又は種子より簡易に抽出することができる。より好ましくは、標準的な方法により精製したDNAを用いるのがよい。CTAB法(Murray M.G.,et al.,Nucleic Acids Res.8(19):4321−5,1980)は、特に好ましい抽出法である。PCRを行うための鋳型として使用するDNAの濃度は、終濃度で0.5ng/μlが好ましい。
2)多型検出用マーカーの作成
上記プライマー対を用いた核酸増幅反応により、増幅産物に多型が検出されるか否かを調査し、見出された多型に基づいて多型検出用マーカーを作成する。限定されるわけではないが、増幅産物に検出されうる多型としては以下のようなものがある。
a)前記核酸増幅産物の多型中に欠失領域を有する型が存在する場合
このような場合、欠失領域の両側に欠失領域を挟むように核酸増幅用プライマー対を作成し、多型検出用マーカーとする。欠失領域の大きさが十分な場合、例えば増幅産物をアガロースゲル電気泳動又はアクリルアミドゲル電気泳動等することにより、泳動度の差により多型の検出が可能である。例えば、アガロースゲル電気泳動の場合には塩基対数に約5%以上の差がある場合、シーケンス用アクリルアミドゲル電気泳動の場合には約1塩基以上長さに差がある場合検出可能である。または、欠失領域外の塩基配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド若しくはDNA断片を解析用プローブとして、核酸増幅産物に対してハイブリダイゼーションを行うことにより、多型を検出することができる。あるいは、必要に応じ、増幅産物の塩基配列を決定して多型を確認してもよい。核酸の電気泳動、ハイブリダイゼーション、塩基配列の決定等は公知の方法を使用でき、当業者は適宜採用可能である。このような場合は、増幅産物の長さの相違が直接多型を生じるので、これを利用した多型検出用マーカーをALP(amplicon length polymorphism)マーカーと言う。
b)前記核酸増幅産物の多型中に制限酵素認識に差異を生じる塩基置換が存在する場合
このような場合、当該塩基置換部位の両側に置換部位を挟むように核酸増幅用プライマー対を作成し、多型検出用マーカーとする。このような場合、核酸増幅産物の多型中に制限酵素認識に差異を生じる塩基置換が存在する、即ち、核酸増幅産物中に、特定の1または複数の制限酵素で切断されるものとされないものが存在する。よって、得られた増幅産物を制限酵素処理し、例えばアガロースゲル等で電気泳動し、泳動度の差により多型を検出することが可能である。必要に応じ、増幅産物の塩基配列を決定して多型を確認してもよい。
このような場合、PCR等による増幅産物の制限酵素断片の長さの相違が多型を生じるので、これを利用した多型検出用マーカーをCAPSマーカーまたはPCR−RFLPマーカーという(A.Koniecznyら,上述)。
後述する実施例1のプライマー対P4497 MboI、P23945 MboI、P41030 TaqI、P45177 BstUI、B59066 BsaJI及びB56691 XbaIがこのような場合に相当する。なお、前記a)の核酸増幅産物の長さで多型を検出可能な場合であっても制限酵素処理を併用することにより、多型がより検出しやすくなる場合がある。
c)前記核酸増幅産物の多型中に制限酵素認識に差異を生じない塩基置換が存在する場合
このような場合、当該塩基置換部位を含み、そして、当該塩基置換部位を含む領域を核酸増幅産物では制限酵素認識に差異を生じるような塩基配列に変更するようなミスマッチ導入プライマー対を作成し、多型検出用マーカーとする。
具体的には、天然のRf−1遺伝子近傍領域の塩基配列に基づくプライマー対では核酸増幅産物に多型を生じるが制限酵素認識に差異を生じないため、片方のまたは双方のプライマーにミスマッチを導入し、当該塩基置換部位(多型)を含む領域を核酸増幅産物では制限酵素認識に差異を生じるような塩基配列に変更する。例えば、PCR法を用いた部位特異的変異の導入による特定ヌクレオチドの置換、欠失又は付加の一般的な技術は、例えばMikaelianら、Nucl.Acids.Res.20:376.1992に記載された方法を用いることができる。上記ミスマッチ導入プライマーを多型検出用マーカーとして用いた増幅産物では、ミスマッチ導入部位において制限酵素認識に差異を有するため、核酸増幅産物中に、特定の1または複数の制限酵素で切断されるものとされないものが存在する。よって、上述のb)の場合と同様に得られた増幅産物を制限酵素処理し、例えばアガロースゲル等で電気泳動し、泳動度の差により多型を検出することが可能である。
ミスマッチの導入は、プライマーの標的植物ゲノムへの結合性を失わせず、また、多型を生じている塩基置換を変化させるものであってもならない。多型を生じている塩基置換を利用してその近傍にミスマッチを導入して、塩基置換とミスマッチの双方の組み合わせにより制限酵素認識に差異が生じるようにする。このようなミスマッチの導入法は当業者に公知であり、例えば、Michaels,S.D.and Amasino,R.M.(1998)、Neff,M.M.,Neff,J.D.,Chory,J.and Pepper,A.E.(1998)等に詳述されている。
このような場合のマーカーは、前述のb)のCAPSマーカーの改良であり、dCAPS(derived CAPS)マーカーという。後述する実施例3のP9493 BslIがこのような場合に相当する。
なお、上記のb)またはc)の場合において、品種間の多型とは無関係の余分な制限酵素部位が多く存在すると、多型に基づく制限酵素部位認識の相違が識別しにくくなる場合がある。このような場合、必要に応じプライマーにミスマッチを導入し、不必要な制限酵素部位をつぶしてもよい。例えば、実施例3のB60304 MspIでは、Rプライマーにミスマッチを導入して多型と無関係なMspI部位をつぶしている。
限定されるわけではないが、CAPS法又はdCAPS法は、他のRFLP法等と比較していくつかの利点を有する。具体的には、例えば、RFLP法と比較して、少量のサンプルで分析できる。分析に要する時間および労力を大きく軽減できる、といった利点がある。マイクロサテライトマーカーと比較しても、作成したPCRマーカーの多型検出がアクリルアミド電気泳動よりも容易なアガロースゲル電気泳動で行えるという利点がある。
本発明の識別方法の好ましい実施態様
以下、例示のために本発明の被検定イネがRf−1遺伝子を有するか否かを識別する方法の好ましい態様を記載する。本明細書の実施例においてRf−1遺伝子を有するインディカ型品種IR24の塩基配列(配列番号27)において、ジャポニカ型品種の対応する領域と比較した結果、少なくとも以下の1)−8)の多型を有することを見出した。
1)配列番号27の塩基1239に相当する塩基がAである;
2)配列番号27の塩基6227に相当する塩基がAである;
3)配列番号27の塩基20680に相当する塩基がGである;
4)配列番号27の塩基45461に相当する塩基がAである;
5)配列番号27の塩基49609に相当する塩基がAである;
6)配列番号27の塩基56368に相当する塩基がTである;
7)配列番号27の塩基57629に相当する塩基がCである;及び
8)配列番号27の塩基66267に相当する塩基がGである。
よって、本発明の好ましい実施態様において、上記1)−8)の条件のいずれか1つないし全部を満たす場合に、被検定イネの個体又は種子がRf−1遺伝子を有すると判断する。
さらに、本発明者らは配列番号27の塩基配列のうち、特に塩基38538−54123、好ましくは、塩基42357−53743、より好ましくは、塩基42132−48883、さらにより好ましくは塩基42132−46318にRf−1遺伝子の機能発現に必須の領域が含まれていることを確認した。よって、本発明の一態様において、配列番号27の塩基配列又は配列番号27の塩基38538−54123の塩基配列と、少なくとも70%同一の塩基配列が、以下の条件1)及び2)の少なくとも一つを満たす場合に、被検定イネの個体又は種子がRf−1遺伝子を有すると判断する:
1)配列番号27の塩基45461に相当する塩基がAである;及び
2)配列番号27の塩基49609に相当する塩基がAである。
上記の条件を満たすか否かは、公知の多型の検出方法を使用することが可能である。上記配列を含む隣接領域の塩基配列を直接決定してもよい。しかしながら、迅速性、簡便性の観点より、上述したCAPS法又はdCAPS法を採用することが好ましい。CAPS法又はdCAPS法は、例えば以下のように行うことが可能である。
i)以下のいずれかの塩基、
1)配列番号27の塩基1239に相当する塩基;
2)配列番号27の塩基6227に相当する塩基;
3)配列番号27の塩基20680に相当する塩基;
4)配列番号27の塩基45461に相当する塩基;
5)配列番号27の塩基49609に相当する塩基;
6)配列番号27の塩基56368に相当する塩基;
7)配列番号27の塩基57629に相当する塩基;及び
8)配列番号27の塩基66267に相当する塩基
を含む隣接領域の塩基配列に基づいて、上記塩基と隣接領域の双方を増幅するようにプライマー対を作成し;
ii)被検定イネ個体又は種子のゲノムDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い;そして
iii)前記核酸増幅産物に見出される多型に基づいて被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子の有無を識別する。
核酸増幅反応産物の多型の検出は、限定されるわけではないが、例えば以下の1)−8)の1つないし全てを満たす場合に被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有すると判断する、ことによって行う。
1)配列番号27の塩基1239に相当する塩基を含む領域が、MboI認識配列を有しない;
2)配列番号27の塩基6227に相当する塩基を含む領域が、BslI認識配列を有しない;
3)配列番号27の塩基20680に相当する塩基を含む領域が、MboI認識配列を有する;
4)配列番号27の塩基45461に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
5)配列番号27の塩基49609に相当する塩基を含む領域が、BstUI認識配列を有しない;
6)配列番号27の塩基56368に相当する塩基を含む領域が、MspI認識配列を有しない;
7)配列番号27の塩基57629に相当する塩基を含む領域が、BsaJI認識配列を有しない;及び
8)配列番号27の塩基66267に相当する塩基を含む領域が、XbaI認識配列を有しない。
ただし、上記1)−8)の領域の各多型を検出可能な制限酵素であれば、上記に限定されるものではない。
本発明の識別方法は、好ましくは、
i)以下のいずれかの塩基、
1)配列番号27の塩基45461に相当する塩基;又は
2)配列番号27の塩基49609に相当する塩基;
を含む隣接領域の塩基配列に基づいて、上記塩基と隣接領域の双方を増幅するようにプライマー対を作成し;
ii)被検定イネ個体又は種子のゲノムDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い;そして
iii)前記核酸増幅産物に見出される多型に基づいて被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子の有無を識別する。限定されるわけではないが、工程iii)が、以下の条件1)及び2)の少なくとも一つを満たす場合に被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有すると判断する:
1)配列番号27の塩基45461に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;及び
2)配列番号27の塩基49609に相当する塩基を含む領域が、BstUI認識配列を有しない。
上記の配列番号27の塩基45461は、1)配列番号69の塩基1769;2)配列番号70の塩基1767;3)配列番号71の塩基1772;4)配列番号72の塩基1762;5)配列番号73の塩基1703;6)配列番号74の塩基1779;7)配列番号80の塩基1783;8)配列番号81の塩基1729;9)配列番号82の塩基1781;10)配列番号83の塩基1774;11)配列番号84の塩基1728;及び12)配列番号85の塩基1644に相当する。
増幅反応に使用するプライマー対は、配列番号27の塩基配列に基づき、好ましくは前述した条件を満たすように当業者が適宜選択可能である。好ましくは、配列番号39及び40、配列番号41及び42、配列番号43及び44、配列番号45及び46、配列番号47及び48、配列番号49及び50、配列番号51及び52、並びに配列番号53及び54からなるグループから選択される塩基配列を有するいずれかのプライマー対を使用する。より好ましくは、プライマー対は、配列番号45及び46、並びに配列番号47及び48からなるグループから選択される。または、必要であれば上記プラーマー対の配列に基づき、多型部位およびその隣接領域の塩基配列に対する結合特異性を失わないように置換、欠失又は付加を施した配列をプライマーとして採用することも可能である。
得られたPCR産物を、制限酵素断片長多型に関して調べるため、それぞれのPCRマーカーに存在する制限部位に対応する制限酵素で切断する。この切断は、用いる制限酵素の推奨反応温度で数時間〜一昼夜インキュベーションすることにより行う。制限酵素で切断したそれぞれの増幅PCRサンプルは、例えば約0.7%ないし2%アガロースゲルあるいは約3%のMetaPhorTMアガロースゲルで電気泳動することにより解析する。例えば、ゲルをエチジウムブロマイド中紫外線下で可視化する。
本発明の最も好ましい態様において、制限酵素による切断パターンとしては、可視化されたゲル上に、使用するプライマー対に応じて、以下の表2のようなアンドの存在の有無が確認される。
なお、後述の実施例3において、花粉稔性を有するRf−1遺伝子極近傍組換え個体(RS1−RS2、RC1−RC8)について、上記8種のプライマー対を含めた14種の多型マーカーを使用して、Rf−1領域の染色体構成を調べた。その結果、いずれの個体もP9493 BslIないし59066 BsaJIの間については、インディカ型品種由来のRf−1遺伝子を有することが確認された。この結果から、図3で示したような染色体構成をもつ組換え型花粉において、花粉の受精能力があること、すなわち、Rf−1遺伝子が機能していることが示された。これは、これらの組換え型花粉が共有するインディカ型領域、すなわち、最大限に見積もってもP4497 MboI座からB56691 XbaI座までの領域(約65kb)に、Rf−1遺伝子の機能の有無を決定する配列が含まれることを意味する。
なお、本発明では、交雑による個体の出現頻度からS12564 Tsp509I座とRf−1座とが非常に近接しているとの予測に基づき、染色体歩行を始めた。実際、本発明の高精度分離分析の結果、両座の遺伝的距離は約0.04cMと算出された。現在公知となっているRf−1座連鎖マーカーのなかで、最も密接に連鎖しているマーカーは、先述の特開2000−139465に記載されているマーカーのひとつであるが、そのマーカーでもRf−1座との遺伝的距離は1cMと記載されている。イネの場合、平均すると1cMは300kbに相当すると考えられており、特開2000−139465のマーカーを起点に染色体歩行を開始したのでは、Rf−1遺伝子領域の絞込みに相当の時間を要したと考えられる。
VI. Rf−1遺伝子の稔性回復機能の抑制方法
本発明において、稔性回復機能を有する核酸を含む、稔性回復遺伝子(Rf−1)座を含む核酸が単離され、その全塩基配列が決定されたことにより、Rf−1遺伝子の稔性回復機能を遺伝子工学的に制御することが可能となった。よって、本発明は、さらに、Rf−1遺伝子の稔性回復機能を抑制する方法を提供する。
本発明のRf−1遺伝子の稔性回復機能を抑制する方法は、例えば、配列番号27の塩基配列を有する核酸、又は配列番号27の塩基配列と少なくとも70%同一の塩基配列であって、稔性回復機能を有する核酸、に対し相補的な塩基配列から選択される、連続した少なくとも100塩基の長さのアンチセンスを導入する、ことを含む。
本発明のRf−1遺伝子の稔性回復機能を抑制する方法は、一態様において、配列番号27の塩基38538−54123、好ましくは、塩基42357−53743、より好ましくは、塩基42132−48883の塩基配列を有する核酸、又は配列番号27の塩基38538−54123、好ましくは、塩基42357−53743、より好ましくは、塩基42132−48883、さらにより好ましくは塩基42132−46318の塩基配列と少なくとも70%同一の塩基配列であって、稔性回復機能を有する核酸、に対し相補的な塩基配列から選択される、連続した少なくとも100塩基の長さのアンチセンスを導入することを含む。
本発明のRf−1遺伝子の稔性回復機能を抑制する方法は、特に、好ましい一態様において、配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸、に対し相補的な塩基配列から選択される、連続した少なくとも100塩基の長さのアンチセンスを導入することを含む。
最も好ましくは、配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸は、以下のa)−p)の核酸から選択される:
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸。
アンチセンスは、少なくとも100塩基以上、より好ましくは500塩基以上、最も好ましくは1000塩基以上の長さである。導入の技術上の簡便性等の観点より、好ましくは10000塩基以下、より好ましくは5000塩基以下である。アンチセンスは、公知の方法により合成することが可能である。アンチセンスのイネへの導入は公知の方法により、例えば、Terada et al.(Plant Cell Physiol.2000 Jul,41(7),p.881−888)に記載の方法により行うことが可能である。
また、限定されるわけではないが、Tos17(Hirochika H.et al.1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,p.7783−7788)などの転移因子の挿入変異系統のなかから、配列番号27の塩基配列内に転移因子が挿入された系統を選抜することにより、Rf−1が破壊された系統を育成することも可能であると考えられる。さらに、植物においても相同組換えにより遺伝子破壊が研究されている。その系の確立により、配列番号27の塩基配列を有する核酸、または配列番号27の塩基配列と少なくとも70%同一である核酸を用いて、Rf−1遺伝子を変異型Rf−1遺伝子に置換することにより、稔性回復機能を抑制することも可能であると考えられる。
参考文献
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参考例
以下の参考例は、本出願入の先の特許出願 特願2000−247204(2000年8月17日出願)に記載された実施例に基づく。
参考例1 Rf−1遺伝子座周辺RFLPマーカーのPCRマーカー化
本参考例においては、Rf−1遺伝子座周辺RFLPマーカー9個(R1877、G291、R2303、S12564、C1361、S10019、G4003、S10602、G2155)をPCRマーカー化した。
(1)材料および方法
Rf−1遺伝子座周辺RFLPマーカー9個(R1877、G291、R2303、S12564、C1361、S10019、G4003、S10602、G2155)を農林水産省農業生物資源研究所から購入し、ベクター内の挿入塩基配列を決定した後、以下の手順で実験を行った。なお、本文中のイネ品種のうち、あそみのりはジャポニカ米であり、IR24はインディカ米である。
(2)ゲノミックライブラリーの作製
あそみのりの緑葉から、CTAB法により各々トータルDNAを抽出した。Mbolで部分消化後、NaCl密度勾配遠心(6〜20%直線勾配、20℃、37000rpm、4時間、全容量12ml)によりサイズ分画を行った。各分画(約0.5ml)の一部を電気泳動にかけ、15〜20kbのDNAを含む分画を選抜・精製した。ライブラリーの作製は、Lambda DASH II(Stratagene)をベクターに用いて、付属プロトコールに準拠して行った。パッケージングには、Giga Pack III Gold(Stratagene)を用いた。パッケージング後、SM Buffer 500μlおよびクロロフォルム20μlを添加した。遠心後の上清にクロロフォルム20μlを添加し、ライブラリー溶液とした。
ライブラリー溶液の50倍希釈液5μlを用いて、XL−1 Blue MRA(P2)に感染させた。その結果、あそみのりについては83個のプラークが出現した。ライブラリーあたりでは、4.15×105pfuとなり、平均挿入断片長を20kbとすると、8.3×109bpをカバーする計算になる。これは、イネゲノム(4×108bp)に対して十分な大きさのライブラリーであると考えられた。
(3)R1877、C1361およびG4003対応ゲノミッククローンの単離
C1361およびG4003については、RFLPマーカープローブを含むプラスミドを単離した後、制限酵素処理・電気泳動により、RFLPマーカープローブ部分を分離し、DNA回収フィルター(Takara SUPREC−01)を用いて目的のDNAを回収した。R1877については、マーカープローブ両端部に対してプライマーを設計し、あそみのりトータルDNAをテンプレートにPCRを行い、産物を電気泳動後、前述の方法で回収した。回収したDNAは、rediprime DNA labelling system(Amersham Pharmacia)を用いてラベルし、ライブラリースクリーニング用プローブとした。なお、PCRは常法により行った(以下、同様)。
ライブラリーのスクリーニングは、プラークをHybond−N+(Amersham Pharmacia)にブロットした後、常法により行った。1stスクリーニング後、陽性プラーク周辺を打ち抜き、SMバッファーに懸濁し、2ndスクリーニングに供試した。2ndスクリーニング後、陽性プラークを打ち抜き、さらに3rdスクリーニングを行い、単一プラークを分離した。
分離した目的プラークをSMバッファーに懸濁後、プレートライセート法によりファージを一次増殖した。得られたファージ増殖液を用いて、振とう培養法により二次増殖を行った後、Lambda starter kit(QIAGEN)を用いてファージDNAを精製した。
各マーカーについて、8枚のプレートを用いて1stスクリーニングを行った。プレート1枚につきライブラリー溶液を10μl使用した。3rdスクリーニングまで行った結果、R1877、C1361およびG4003対応ゲノミッククローンを、それぞれ、4個、3個および3個単離した。
(4)R1877のPCRマーカー化
単離したゲノミッククローンを解析し、RFLPの原因部位、即ち、IR24(インディカ米)には存在しあそみのり(ジャポニカ米)には存在しないEcoRI部位を同定することにより、PCRマーカー化を行った。
具体的には、単離した4クローンについて以下の解析を行った。まず、T3およびT7プライマーを用いて、各クローンの挿入断片の両末端の塩基配列を明らかにした。つぎに、マーカープローブ両端部に対して外向きのプライマーを設計し、T3およびT7プライマーと組合わせ(合計4プライマー組合せ)、各クローンをテンプレートにPCRを行った。
また、各クローンをNotIおよびEcoRIで消化した後、電気泳動することにより、挿入断片長および各EcoRI断片長を推定した。
これらの解析の結果、各クローンの位置関係を明らかにすることができた。一方、RFLP解析ではマーカープローブRI877により日本晴(ジャポニカ米)では20kb、Kasalath(インディカ米)では6.4kbのEcoRI断片が検出されること(ftp://ftp.staff.or.jp/pub/geneticmap98/parentsouthern/chr10/R1877.JPG)ことが知られている。これらの事実を併せ考えることにより、IR24には存在しあそみのりには存在しないEcoRI部位のおおよその位置が推定できた。そこで、その周辺を増幅するように設計したプライマー組合わせ(配列番号1と配列番号2)を用いて、94℃にて1分、58℃にて1分、72℃にて2分を1サイクルとし30サイクルのPCR条件にてゲノミックPCRを行った。得られたPCR産物をEcoRI処理した後、0.7%アガロースゲルで電気泳動した。
その結果、あそみのり−IR24間で期待通りの多型が観察された。すなわち、PCR産物(約3200bp)のEcoRI処理により、IR24では1500bpと1700bpとに切断されるのに対し、あそみのりでは切断されなかった。あそみのり−IR24のRIL(Recombinant Inbred Line)を用いてこのPCRマーカーをマッピングした結果、RFLPマーカー座R1877と同一領域に位置づけられ、RFLPマーカーR1877がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをR1877EcoRIと命名した。
(5)G4003のPCRマーカー化
単離したゲノミッククローンを解析し、RFLPの原因部位、即ち、あそみのりには存在しIR24には存在しないHindIII部位を同定することにより、PCRマーカー化を行った。
R1877と同様の解析を行い、単離した3クローンの位置関係を明らかにした。RFLP解析ではマーカープローブG4003により日本晴(ジャポニカ米)では3kb、Kasalathでは10kb(インディカ米)のHindIII断片が検出されること(ftp://ftp.staff.or.jp/pub/geneticmap98/parentsouthern/chr10/R1877.JPG)ことが知られている。これらの事実を併せ考えることにより、あそみのりには存在しIR24には存在しないHindIII部位が、2個の候補部位のいずれかであると推定された。そこで、各HindIII部位周辺を増幅するように設計したプライマー組合せ(配列番号3および配列番号4)を用いて、94℃にて30秒、58℃にて30秒、72℃にて30秒を1サイクルとし35サイクルの条件で、ゲノミックPCRを行った。得られたPCR産物をHindIII処理後、2%アガロースゲルで電気泳動したところ、マーカープローブ内部のHindIII部位が多型部位であることが示された。すなわち、PCR産物(362bp)のHindIII処理により、あそみのりでは95bpと267bpとに切断されるのに対し、IR24では切断されなかった。マッピングの結果、RFLPマーカーG4003がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをG4003 HindIII(配列番号19)と命名した。
(6)C1361のPCRマーカー化
単離したゲノミッククローンの塩基配列情報に基づいてプライマーを設計した。あそみのりおよびIR24のトータルDNAをテンプレートにPCRを行い、産物を電気泳動後、既述の方法で回収した。回収したDNAをテンプレートに用いて、ABI Model 310により各品種の塩基配列を解読し、多型作出に利用可能な変異を探索した。
R1877と同様の解析を行い、単離した3クローンのおおよその位置関係を明らかにすることはできた。しかし、C1361マーカー周辺にはPCR増幅しにくい領域や塩基配列を解読できない領域が存在することが明らかになり、RFLP原因部位を同定することは困難であると考えられた。そこで、比較的長いPCR産物(2.7kb)が得られる領域に着目し、dCAPS化を試みることにした。
具体的には、あそみのり、コシヒカリ(以上、ジャポニカ米)及びKasalath、IR24(以上、インディカ米)を用いて、前記領域のゲノミックPCR産物の塩基配列を比較した結果、ジャポニカ米・インディカ米間で多型を示す部位を6ヶ所見出すことができた。そのうちのひとつについて、dCAPS化を行った。この過程で、プライマーとして配列番号5および配列番号6を用い、94℃にて30秒、58℃にて30秒、72℃にて30秒を1サイクルとし35サイクルのPCR条件にてPCRを行った。得られたPCR産物をMwoI処理後、3%MetaPhorTMアガロースで電気泳動することにより解析した。あそみのりでは2箇所で切断され、約25bp、50bp、79bpのバンドが観察され、IR24では1箇所で切断され、約50bp、107bPのバンドが観察された。マッピングの結果、RFLPマーカーC1361がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをC1361 MwoI(配列番号20)と命名した。
(7)G2155のPCRマーカー化
マーカープローブ両端部に対してプライマーを設計し、あそみのり、コシヒカリ、IR24およびIL216(戻し交雑によりコシヒカリにRf−1遺伝子を導入した系統、遺伝子型はRf−1/Rf−1)のトータルDNAをテンプレートにPCRを行った。PCR産物の精製および多型作出に利用可能な変異の探索は、既述の方法で行った。
具体的には、供試品種の対応領域の塩基配列を比較した結果、Rf−1遺伝子保有品種系統(IR24およびIL216)とRf−1遺伝子非保有品種系統(あそみのりおよびコシヒカリ)との間の変異が3ヶ所見出された。そのうちのひとつを利用して、dCAPS化を行った。この過程で、プライマーとして配列番号7及び配列番号8を用い、94℃にて30秒、58℃にて30秒、72℃にて30秒を1サイクルとし35サイクルのPCR条件にてPCRを行った。得られたPCR産物をMwoI処理後、3%MetaPhorTMアガロースで電気泳動することにより解析した。あそみのりでは1箇所で切断され、約25bp及び105bpのバンドが観察され、IR24では2箇所で切断され、約25bp、27bp及び78bpのバンドが観察された。マッピングの結果、RFLPマーカーG2155がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをG2155 MwoI(配列番号21)と命名した。
(8)G291のPCRマーカー化
マーカープローブ内部配列に対してプライマーを設計し、種々のプライマー組合わせでPCRを行い、期待される大きさの増幅産物が得られるプライマー組合わせを探索した。探索により見出したプライマー組合わせで、あそみのり、コシヒカリ、IR24およびIL216のトータルDNAをテンプレートにPCRを行った。PCR産物の精製および多型作出に利用可能な変異の探索は、既述の方法で行った。
具体的には、マーカープローブ配列に対して設計したプライマーを用いて、供試品種のゲノミックPCRを行い、産物の塩基配列を比較した。その結果、Rf−1遺伝子保有品種系統(IR24およびIL216)とRf−1遺伝子非保有品種系統(あそみのりおよびコシヒカリ)との間の変異が4ヶ所見出された。そのうちのひとつを利用して、dCAPS化を行った。この過程で、プライマーとして配列番号9及び配列番号10を用い、94℃にて30秒、58℃にて30秒、72℃にて30秒を1サイクルとし35サイクルのPCR条件にてPCRを行った。得られたPCR産物をMspI処理後、3%MetaPhorTMアガロースで電気泳動することにより解析した。Rf−1遺伝子保有品種系統では2箇所で切断され、約25bp、49bp及び55bpのバンドが観察され、Rf−1遺伝子非保有品種系統では1箇所で切断され、約25bp及び104bpのバンドが観察された。マッピングの結果、RFLPマーカーG291がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをG291 MsPI(配列番号22)と命名した。
(9)R2303のPCRマーカー化
マーカープローブ内部配列に対してプライマーを設計し、あそみのり(ジャポニカ米)、IR24およびKasalath(インディカ米)のトータルDNAをテンプレートにPCRを行った。産物の精製および多型作出に利用可能な変異の探索は、既述の方法で行った。
供試品種の対応領域の塩基配列を比較した結果、ジャポニカ米−インディカ米間の変異が見出された。この変異は、BslI認識部位に生じていたので、そのままCAPSマーカーとした。この過程で、プライマーとして配列番号11及び配列番号12を用い、94℃にて1分、58℃にて1分、72℃にて2分を1サイクルとし30サイクルのPCR条件にてPCRを行った。得られたPCR産物をBslI処理後、2%アガロースで電気泳動することにより解析した。ジャポニカ米では1箇所で切断され、約238bp及び1334bpのバンドが観察され、インディカ米では2箇所で切断され、約238bp、655bp及び679bpのバンドが観察された。マッピングの結果、RFLPマーカーR2303がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをR2303 BslI(配列番号23)と命名した。
(10)S10019のPCRマーカー化
S10019のPCRマーカー化は、上記R2303のPCRマーカー化の方法(9)にしたがって行った。
具体的には、供試品種の対応領域の塩基配列を比較した結果、ジャポニカ米−インディカ米間の変異が見出された。この変異は、BstUI認識部位に生じていたので、そのままCAPSマーカーとした。この過程で、プライマーとして配列番号13及び配列番号14を用い、94℃にて1分、58℃にて1分、72℃にて1分を1サイクルとし30サイクルのPCR条件にてPCRを行った。得られたPCR産物をBstUI処理後、2%アガロースで電気泳動することにより解析した。ジャポニカ米では1箇所で切断され、約130bp及び462bpのバンドが観察され、インディカ米では2箇所で切断され、約130bp、218bp及び244bpのバンドが観察された。マッピングの結果、RFLPマーカーS10019がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをBstUI(配列番号24)と命名した。
(11)S10602のPCRマーカー化
S10602のPCRマーカー化は、上記R2303のPCRマーカー化の方法(9)にしたがって行った。
具体的には、供試品種の対応領域の塩基配列を比較した結果、ジャポニカ米−インディカ米間の変異が見出された。その変異を利用して、CAPS化を行った。この過程で、プライマーとして配列番号15及び配列番号16を用い、94℃にて1分、58℃にて1分、72℃にて1分を1サイクルとし33サイクルのPCR条件にてPCRを行った。得られたPCR産物をKpnI処理後、2%アガロースで電気泳動することにより解析した。ジャポニカ米では1箇所で切断され、約117bp及び607bpのバンドが観察され、インディカ米では切断されず、724bpのバンドが観察された。マッピングの結果、RFLPマーカーS10602がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをS10602 KpnI(配列番号25)と命名した。
(12)S12564のPCRマーカー化
S12564のPCRマーカー化は、R2303のPCRマーカー化の方法にしたがって行った。
具体的には、供試品種の対応領域の塩基配列を比較した結果、ジャポニカ米−インディカ米間の変異が見出された。その変異を利用して、dCAPS化を行った。この過程で、プライマーとして配列番号17及び配列番号18を用い、94℃にて30秒、58℃にて30秒、72℃にて30秒を1サイクルとし35サイクルのPCR条件にてPCRを行った。得られたPCR産物をTsp509I処理後、3%MetaPhorTMアガロースで電気泳動することにより解析した。ジャポニカ米では2箇所で切断され、26bp、41bp及び91bpのバンドが観察され、インディカ米では1箇所で切断され、41bp及び117bpのバンドが観察された。マッピングの結果、RFLPマーカーS12564がPCRマーカーに変換されたことが証明され、このマーカーをS12564 Tsp509I(配列番号26)と命名した。
参考例2 Rf−1遺伝子座のマッピング
MSコシヒカリにMS−FRコシヒカリの花粉をかけて作成したF1集団1042個体の幼苗からDNAを抽出し、分析に供試した。ここで、MSコシヒカリとは、細胞質をBT型雄性不稔細胞質に置換したコシヒカリである(世代:BC10F1)。また、MS−FRコシヒカリとは、IR8(農業生物資源研究所より入手)に由来するRf−1遺伝子をMSコシヒカリに導入した系統である(Rf−1遺伝子座ヘテロ)。
まず、Rf−1遺伝子座を挟むと考えられる、参考例1に記載の2個のマーカー座R1877 EcoRIおよびG2155 MwoIにおける各個体の遺伝子型を調査した。R1877 EcoRI座またはG2155 MwoI座に関してジャポニカ米型ホモ個体を、これら2マーカー座間での組換え体とみなした。つぎに、各組換え体について、さらに、G291 MspI座、R2303 BslI座、S12564 Tsp509I座、C1361 MwoI座、S10019 BstUI座、G4003 HindIII座およびS10602 KpnI座の遺伝子型を調査し、組換え位置を同定した。
R1877 EcoRI座およびG2155 MwoI座に関する遺伝子型調査の結果、稔性を回復した46個体がRf−1遺伝子座付近での組換え体であることが明らかになった。これら組換え体について、Rf−1遺伝子座近傍マーカー座の遺伝子型を調査した結果を表3に示す。
表3に示されたように、S12564 Tsp509Iマーカーがジャポニカ型である個体8と、C1361 MwoI座マーカーがジャポニカ型である個体9および個体10が得られた。いずれも稔性を回復した個体であることから、前者はRf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体、Rf−1座とC1361 MwoI座との間での組換え個体と解し、Rf−1遺伝子はS12564 Tsp509I座とC1361 MwoI座との間に存在することが判明した。上記交配において、BT型雄性不稔細胞質を持つ個体では、Rf−1遺伝子をもつ花粉のみが受精能力を持つとの報告(C.Shinjyo,JAPAN.J.GENETICS Vol.44,No.3:149−156(1969))に基づいて、Rf−1遺伝子座を詳細連鎖地図上に位置づけることができた(図4)
実施例1 Rf−1座極近傍組換え個体の獲得
(材料および方法)
MSコシヒカリ(世代:BC10F1)にMS−FRコシヒカリ(世代:BC9F1、Rf−1座ヘテロ)の花粉をかけて作成したBC10F1集団4103個体を用い、各固体からDNAを抽出し、上記参考例2と同様に、S12564Tsp509I座およびC1361 MwoI座の遺伝子型を調査した。S12564 Tsp509I座の遺伝子型がコシヒカリ型ホモ個体を、Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換えにより生じた個体とみなし、C1361 MwoI座の遺伝子型がコシヒカリ型ホモ個体を、Rf−1座とC1361 MwoI座との間での組換えにより生じた個体とみなした。
(結果および考察)
4103個体を調査した結果、Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体を1個体、Rf−1座とC1361 MwoI座との間での組換え個体を6個体見出した。一方、上記参考例2において交配により得られた1042個体を調査した結果、表3に示したように、Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体を1個体、Rf−1座とC1361 MwoI座との間での組換え個体を2個体見出している。
合計すると、5145個体から、Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体を2個体、Rf−1座とC1361 MwoI座との間での組換え個体を8個体獲得できたことになる。これら10個体を以下の実施例における高精度分離分析に供試することにした。
実施例2 染色体歩行
(1)1回目染色体歩行
(材料および方法)
ジャポニカ品種あそみのり(Rf−1非保有品種)のゲノムDNAを用いて、参考例1に記載したようにLambda DASH IIベクターによりゲノミックライブラリーを作成し、染色体歩行に供試した。
RFLPプローブ S12564の部分塩基配列(アクセッション番号D47284)に対して次のプライマー対:
を設計し、あそみのりトータルDNAをテンプレートに用いて、定法に従いPCRを行った。得られた約1200bpの増幅産物を、アガロースゲルでの電気泳動後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。精製したDNAは、rediprime DNA labelling system(Amersham Pharmacia社)を用いてラベルし、ライブラリースクリーニング用プローブ(プローブA、図1)とした。
ライブラリーのスクリーニングは、プラークをHybond−N+(Amersham Pharmacia社)にブロットした後、常法により行った。単一プラークを分離した後、Lambda Midi kit(QIAGEN社)を用いてプレートライセート法によりファージDNAを精製した。
(結果および考察)
スクリーニングにより4個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちのふたつ(WSA1およびWSA3)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、WSA1およびWSA3に対応するあそみのりゲノム塩基配列を決定した(DNAシーケンサー377、ABI社)。
(2)2回目染色体歩行
(材料および方法)
既述のあそみのりゲノミックライブラリーに加え、インディカ品種IR24(Rf−1保有品種)のゲノムDNAから同様に作成したIR24ゲノミックライブラリーを、染色体歩行に供試した。
(1)で明らかにしたあそみのりゲノム塩基配列に対して次のプライマー対:
を設計し、WSA3のDNAをテンプレートに用いて、定法に従いPCRを行った。得られた524bpの増幅産物を、既述の方法で精製・ラベルし、ライブラリースクリーニング用プローブ(プローブE、図1)とした。
ライブラリーのスクリーニングおよびファージDNAの精製は、既述の方法で行った。
(結果および考察)
あそみのりゲノミックライブラリースクリーニングにより15個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちのひとつ(WSE8)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、WSE8に対応するあそみのりゲノム塩基配列を決定した。
IR24ゲノミックライブラリースクリーニングにより7個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちのふたつ(XSE1およびXSE7)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、XSE1およびXSE7に対応するIR24ゲノム塩基配列を決定した。
(3)3回目染色体歩行
(材料および方法)
既述のあそみのりゲノミックライブラリーおよびIR24ゲノミックライブラリーを、染色体歩行に供試した。
(2)で明らかにしたあそみのりゲノム塩基配列に対して次のプライマー対:
を設計し、WSE8のDNAをテンプレートに用いて、定法に従いPCRを行った。得られた1159bpの増幅産物を、既述の方法で精製・ラベルし、ライブラリースクリーニング用プローブ(プローブF、図1)とした。
ライブラリーのスクリーニングおよびファージDNAの精製は、既述の方法で行った。
(結果および考察)
あそみのりゲノミックライブラリースクリーニングにより8個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちのふたつ(WSF5およびWSF7)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、WSF5およびWSF7に対応するあそみのりゲノム塩基配列を決定した。
IR24ゲノミックライブラリースクリーニングにより13個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちのふたつ(XSF4およびXSF20)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、XSF4およびXSF20に対応するIR24ゲノム塩基配列を決定した。
(4)4回目染色体歩行
(材料および方法)
既述のあそみのりゲノミックライブラリーおよびIR24ゲノミックライブラリーを、染色体歩行に供試した。
(3)で明らかにしたあそみのりゲノム塩基配列に対してプライマー対:
を設計し、WSF7のDNAをテンプレートに用いて、定法に従いPCRを行った。得られた456bpの増幅産物を、既述の方法で精製・ラベルし、ライブラリースクリーニング用プローブ(プローブG、図1)とした。
ライブラリーのスクリーニングおよびファージDNAの精製は、既述の方法で行った。
(結果および考察)
あそみのりゲノミックライブラリースクリーニングにより6個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちのふたつ(WSG2およびWSG6)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、WSG2およびWSG6に対応するあそみのりゲノム塩基配列を決定した。
IR24ゲノミックライブラリースクリーニングにより14個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちの3クローン(XSG8、XSG16およびXSG22)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、XSG8、XSG16およびXSG22に対応するIR24ゲノム塩基配列を決定した。
(5)5回目染色体歩行
(材料および方法)
既述のIR24ゲノミックライブラリーを、染色体歩行に供試した。
本発明者らは、TIGR(The Institute for Genomic Research)の公開ホームページを閲覧し、RFLPマーカーS12564を包含するBAC(Bacterial Artificial Chromosome)クローン(アクセッション番号AC068923)が公開データベース(GenBank)に登録されていることを見出した。このBACクローンは、ジャポニカ品種日本晴のゲノムDNAを含むものであり、塩基配列を比較したところ、(1)−(4)で作成したあそみのりおよびIR24のコンティグ領域を完全に包含することが示された(図2)。
そこで、このBACクローンの一部を増幅する次のプライマー対:
を設計し、IR24トータルDNAをテンプレートに用いて、定法に従いPCRを行った。得られた約600bpの増幅産物を、既述の方法で精製・ラベルし、ライブラリースクリーニング用プローブ(プローブH、図1)とした。
ライブラリーのスクリーニングおよびファージDNAの精製は、既述の方法で行った。
(結果および考察)
IR24ゲノミックライブラリースクリーニングにより15個のクローンが得られ、末端塩基配列の解析および制限酵素断片長解析の結果から、そのうちのひとつ(XSH18)は図1に示した位置関係にあることが示された。プライマー歩行により、XSH18に対応するIR24ゲノム塩基配列を決定した。
実施例3 高精度分離分析
(1)PCRマーカーP4497 MboIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)とあそみのりコンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号28)とを比較した結果、配列番号27の1239番目の塩基がAであるのに対し、当該位置に対応する配列番号28の12631番目の塩基はGであることを見出した。
この差異の検出には、先ず次のプライマー対:
P4497 MboI F:
および
P4497 MboI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い約730bpの断片を増幅する。増幅産物をMboI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はMboIの認識配列(GATC)をもたず、MboI処理により切断されないのに対し、あそみのりDNAからの増幅産物はMboIの認識配列をもち、MboI処理により切断されるため、MboI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(2)PCRマーカーP9493 BslIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)とあそみのりコンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号28)とを比較した結果、配列番号27の6227番目の塩基がAであるのに対し、当該位置に対応する配列番号28の17627番目の塩基はCであることを見出した。
この差異の検出には、先ず次のプライマー対:
P9493 BslI F:
および
P9493 BslI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い126bpの断片を増幅する。増幅産物をBslI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はBslIの認識配列(CCNNNNNNNGG)をもたず、BslI処理により切断されないのに対し、あそみのりDNAからの増幅産物はBslIの認識配列をもち、BslI処理により切断されるため、BslI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
なお、本マーカーの開発には、dCAPS法(Michaels and Amasino 1998,Neff et al 1998)を適用した。具体的には、前記P9493 BslI Rプライマーの使用により、配列番号27の6236および配列番号28の17636のaがgに置換される。これにより、あそみのりDNA由来の断片は、配列番号28の17626−17636の部分の配列がCCtttccttGGとなり、BslI処理により切断される。
(3)PCRマーカーP23945 MboIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)とあそみのりコンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号28)とを比較した結果、配列番号27の20680番目の塩基がGであるのに対し、当該位置に対応する配列番号28の32079番目の塩基はAであることを見出した。
この差異の検出には、先ず次のプライマー対:
P23945 MboI F:
および
P23945 MboI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い260bpの断片を増幅する。増幅産物をMboI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はMboIの認識配列(GATC)をもち、MboI処理により切断されるのに対し、あそみのりDNAからの増幅産物はMboIの認識配列をもたず、MboI処理により切断されないため、MboI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(4)PCRマーカーP41030 TaqIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)とあそみのりコンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号28)とを比較した結果、配列番号27の45461番目の塩基がAであるのに対し、当該位置に対応する配列番号28の49164番目の塩基はGであることを見出した。
この差異の検出には、先ず次のプライマー対:
P41030 TaqI F:
および
P41030 TaqI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い280bpの断片を増幅する。増幅産物をTaqI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はTaqIの認識配列(TCGA)をもたず、TaqI処理により切断されないのに対し、あそみのりDNAからの増幅産物はTaqIの認識配列をもち、TaqI処理により切断されるため、TaqI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(5)PCRマーカーP45177 BstUIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)とあそみのりコンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号28)とを比較した結果、配列番号27の49609番目の塩基がAであるのに対し、当該位置に対応する配列番号28の53311番目の塩基はGであることを見出した。
この差異の検出には、先ず次のプライマー対:
P45177 BstUI F:
および
P45177 BstUI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い812bpの断片を増幅する。増幅産物をBstUI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はBstUIの認識配列(CGCG)を2個所もち、BstUI処理により3個の断片に切断されるのに対し、あそみのりDNAからの増幅産物はBstUIの認識配列を3個所もち、BstUI処理により4個の断片に切断されるため、BstUI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(6)PCRマーカーB60304 MspIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)と既述のBACクローン(アクセッション番号AC068923)の塩基配列とを比較した結果、配列番号27の56368番目の塩基がTであるのに対し、当該位置に対応するAC068923の塩基はCであることを見出した。
この差異の検出は、先ず次のプライマー対:
B60304 MspI F:
および
B60304 MspI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い約330bpの断片を増幅する。増幅産物をMspI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はMspIの認識配列(CCGG)をもたず、MspI処理により切断されないのに対し、日本晴DNAからの増幅産物はMspIの認識配列をもち、MspI処理により切断されるため、MspI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
なお、本マーカーの開発には、dCAPS法を適用した。具体的には、B60304 MspI Rプライマーの使用により、配列番号27の56463のgがtに置換される。これにより、配列番号27の56460−56463のMspIの認識配列CCGGがccgtとなり、MspIによって切断されなくなる。よって、IR24由来の断片はMspIの認識配列を一つも有さず、一方、日本晴由来のDNAは、配列番号27の56367−56370に対応する領域に1箇所MspIの認識配列を有することとなる。
(7)PCRマーカーB59066 BsaJIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)と既述のBACクローン(アクセッション番号AC068923)の塩基配列とを比較した結果、配列番号27の57629番目の塩基がCであるのに対し、当該位置に対応するAC068923の塩基はCCであることを見出した。
この差異の検出は、先ず次のプライマー対:
B59066 BsaJI F:
および
B59066 BsaJI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い約420bpの断片を増幅する。増幅産物をBsaJI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はBsaJIの認識配列(CCNNGG)をもたず、BsaJI処理により切断されないのに対し、日本晴DNAからの増幅産物はBsaJIの認識配列をもち、BsaJI処理により切断されるため、BsaJI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(8)PCRマーカーB56691 XbaIの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)と既述のBACクローン(アクセッション番号AC068923)の塩基配列とを比較した結果、配列番号27の66267番目の塩基がGであるのに対し、当該位置に対応するAC068923の塩基はCであることを見出した。
この差異の検出は、先ず次のプライマー対:
B56691 XbaI F:
および
B56691 XbaI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い約670bpの断片を増幅する。増幅産物をXbaI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はXbaIの認識配列(TCTAGA)をもたず、XbaI処理により切断されないのに対し、日本晴DNAからの増幅産物はXbaIの認識配列をもち、XbaI処理により切断されるため、XbaI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(9)PCRマーカーB53627 BstZ17Iの開発
実施例2で明らかにしたIR24コンティグに対応するゲノム塩基配列(配列番号27)と既述のBACクローン(アクセッション番号AC068923)の塩基配列とを比較した結果、配列番号27の69331番目の塩基がTであるのに対し、当該位置に対応するAC068923の塩基はCであることを見出した。
この差異の検出は、先ず次のプライマー対:
B53627 BstZ17I F:
および
B53627 BstZ17I R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い約620bpの断片を増幅する。
増幅産物をBstZ17I処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、IR24DNAからの増幅産物はBstZ17Iの認識配列(GTATAC)をもち、XbaI処理により切断されるのに対し、日本晴DNAからの増幅産物はBstZ17Iの認識配列をもたず、BstZ17I処理により切断されないため、BstZ17I処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(10)PCRマーカーB40936 MseIの開発
以下の(10)−(12)のPCRマーカーの開発はいずれも、配列番号27の3’末端76363よりもさらに下流(3’末端)側に相当する塩基配列についての研究に関する。
既述のBACクローン(アクセッション番号AC068923)の塩基配列に対して、次のプライマー対:
および
を設計した。このプライマー対を用いて、MS−FRコシヒカリ(Rf−1座の遺伝子型はRf−1 Rf−1)およびコシヒカリのトータルDNAをテンプレートに、定法に従いPCRを行った。得られた約1300bpの増幅産物を、アガロースゲルでの電気泳動後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。精製したDNAの塩基配列を、DNAシーケンサー377(ABI社)により解析した結果、数個所において多型を見出すことができた。
そのひとつは、次のプライマー対:
B40936 MseI F:
および
B40936 MseI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い、増幅産物をMseI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、MS−FRコシヒカリ(Rf−I Rf−1)DNAからの増幅産物はMseIの認識配列(TTAA)をもち、MseI処理により切断されるのに対し、コシヒカリDNAからの増幅産物はMseIの認識配列をもたず、MseI処理により切断されないため、MseI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
なお、本マーカーの開発には、dCAPS法を適用した。
(11)PCRマーカーB19839 MwoIの開発
既述のBACクローン(アクセッション番号AC068923)の塩基配列に対して、次のプライマー対:
および
を設計した。このプライマー対を用いて、MS−FRコシヒカリ(Rf−1 Rf−1)およびコシヒカリのトータルDNAをテンプレートに、定法に従いPCRを行った。得られた約1200bpの増幅産物を、アガロースゲルでの電気泳動後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。精製したDNAの塩基配列を、DNAシーケンサー377(ABI社)により解析した結果、数個所において多型を見出すことができた。
そのひとつは、次のプライマー対:
B19839 MwoI F:
および
B19839 MwoI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い、増幅産物をMwoI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、MS−FRコシヒカリ(Rf−1 Rf−1)DNAからの増幅産物はMwoIの認識配列(GCNNNNNNNGC)をもたず、MwoI処理により切断されないのに対し、コシヒカリDNAからの増幅産物はMwoIの認識配列をもち、MwoI処理により切断されるため、MwoI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
なお、本マーカーの開発には、dCAPS法を適用した。
(12)PCRマーカーB2387 BfaI の開発
既述のBACクローン(アクセッション番号AC068923)の塩基配列に対して、次のプライマー対:
および
を設計した。このプライマー対を用いて、MS−FRコシヒカリ(Rf−1 Rf−1)およびコシヒカリのトータルDNAをテンプレートに、定法に従いPCRを行った。得られた約1300bpの増幅産物を、アガロースゲルでの電気泳動後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。精製したDNAの塩基配列を、DNAシーケンサー377(ABI社)により解析した結果、数個所において多型を見出すことができた。
そのひとつは、次のプライマー対:
B2387 BfaI F:
および
B2387 BfaI R:
を用いて当該部位周辺のPCR増幅を行い、増幅産物をBfaI処理後、アガロースゲルで電気泳動することにより、可視化することができる。すなわち、MS−FRコシヒカリ(Rf−1 Rf−1)DNAからの増幅産物はBfaIの認識配列(CTAG)をもたず、BfaI処理により切断されないのに対し、コシヒカリDNAからの増幅産物はBfaIの認識配列をもち、BfaI処理により切断されるため、BfaI処理後のDNA鎖長が異なり、アガロースゲル中の移動度の差異として検出することができる。
(13)分離分析
実施例1で得られた、Rf−1座とS12564 Tsp509I座との間での組換え個体2個体(RS1およびRS2)およびRf−1座とC1361 MwoI座との間での組換え個体8個体(RC1からRC8)について、上記(1)ないし(12)で開発した12個のDNAマーカー座の遺伝子型を調査した。結果を、各個体のS12564 Tsp509I座およびC1361 MwoI座の遺伝子型とともに表4に示した。
表4は、いずれの個体もP9493 BSlIないし59066 BsaJIの間については、インディカ型品種由来のRf−1染色体領域を有することを示す。この結果から、図3で示したような染色体構成をもつ組換え型花粉において、花粉の受精能力があること、すなわち、Rf−1遺伝子が機能していることが示された。これは、これらの組換え型花粉が共有するインディカ型領域、すなわち、最大限に見積もってもP4497 MboI座からB56691 XbaI座までの領域(約65kb)に、Rf−1遺伝子の機能の有無を決定する配列が含まれることを意味する。
ただし、Rf−1遺伝子の一部の遺伝子型がインディカ型であることが、Rf−1遺伝子の遺伝子機能発現に重要であり、残りの部分はジャポニカ型でもインディカ型でも遺伝子機能に大きな差異を生じない可能性がある。よって、上記共有インディカ型領域(配列番号27の塩基1239ないし66267)がRf−1遺伝子全体を完全に包含するとは、断定できない。しかしながら、以下の理由、
1)遺伝子の大きさは通常数kbであり10kbを超えることは稀である;
2)本発明で明らかにしたIR24のゲノム塩基配列(配列番号27)は、上記共有インディカ型領域を完全に包含する;
3)配列番号27の5’末端は、上記共有インディカ型領域の5’末端から1238bp上流に位置し、別の遺伝子(S12564)の一部である;および
4)配列番号27の3’末端は、上記共有インディカ型領域の3’末端から10096bp下流に位置する
により、少なくとも配列番号27はRf−1遺伝子全体を完全に包含すると考えられる。
実施例4 XSE1由来の9.7kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSE1(図1および5)をNotIで完全消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された9.7kbの断片(配列番号27の塩基1−9657を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、pSB11(Komariら、上述)を基に、ハイグロマイシン耐性遺伝子カセットを持つ中間ベクターpSB200を作成した。具体的には、先ず、ユビキチンプロモーターとユビキチンイントロン(Pubi−ubiI)に、ノパリン合成酵素のターミネーター(Tnos)を接続した。これより得られたPubi−ubiI−Tnos接続体のubiI−Tnos間に、ハイグロマイシン体制遺伝子(HYG(R))を挿入することにより、Pubi−ubiI−HYG(R)−Tnosからなる接続体を得た。この接続体を、pSB11のHindIII/EcoRI断片に接続することにより、pKY205を得た。このpKY205のPubi上流に存在するHindIII部位にNotI、NspV、EcoRV、KpnI、SacI、EcoRIの制限酵素部位を追加するためのリンカー部位を挿入することにより、ハイグロマイシン耐性遺伝子カセットを有するpSB200を得た。
上記プラスミドベクターpSB200をNotIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSE1由来の9.7kb断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。反応後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAを純水(Millipore社製装置により作成)に溶解後、大腸菌DH5αと混合し、エレクトロポレーションに供試した。エレクトロポレーション後の溶液を、LB培地で振盪培養(37℃、1時間)した後、スペクチノマイシンを含むLBプレートに広げ、加温(37℃、16時間)した。生じたコロニーのなかの24個についてプラスミドを単離した。その制限酵素断片長パターンおよび境界部塩基配列を調査することにより、組換えプラスミドにより形質転換された所望の大腸菌を選抜した。
上記により選抜した大腸菌を、Agrobacterium tumefaciens菌株LBA4404/pSB1(Komari et al,1996)およびヘルパー大腸菌HB101/pRK2013(Ditta et al,1980)とともに供試して、Ditta et al(1980)の方法に従い、三菌系交雑(triparential mating)を行った。スペクチノマイシンを含むABプレートに生じたコロニーのなかの6個について、プラスミドを単離し、制限酵素断片長パターンを調査することにより、所望のアグロバクテリウムを選抜した。
上記により選抜したアグロバクテリウムを用いて、Hiei et al(1994)の方法に準拠し、MSコシヒカリ(BT細胞質を持ち、核遺伝子はコシヒカリとほぼ同一)の形質転換を行った。形質転換に必要なMSコシヒカリの未熟種子は、MSコシヒカリにコシヒカリの花粉をかけることにより作成した。
形質転換植物は、馴化後、長日条件の温室に移した。移植適期まで育成した後、48個体の植物を、1/5000アールのワグネルポットに移植し(4個体/ポット)、移植3〜4週間後に短日条件の温室に移した。出穂約1か月後に、種子稔性を立毛調査した。
(結果および考察)
形質転換植物48個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した9.7kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例5 XSE7由来の14.7kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSE7(図1および5)をEcoRIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、DNA Blunting Kit(TAKARA社)により平滑化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけ、分離された14.7kbの断片(配列番号27の塩基2618−17261を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をSacIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化し、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、DNA Blunting Kit(TAKARA社)により平滑化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSE7由来の14.7kb断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物48個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した14.7kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例6 XSF4由来の21.3kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSF4(図1および5)をNotIで部分消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された21.3kbの断片(配列番号27の塩基12478−33750を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をNotIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSF4由来の21.3kbの断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物48個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した21.3kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例7 XSF20由来の13.2kb断庁に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSF20(図1及び5)をSalIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、DNA Blunting Kit(TAKARA社)により平滑化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけ、分離された13.2kbの断片(配列番号2の塩基26809−40055を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をEcoRVで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSF20由来の13.2kbの断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物44個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した13.2kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例8 XSF18由来の16.2kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSF18はXSF20と5’末端及び3’末端(各々、配列番号27の塩基20328及び41921)と同一だが、途中の塩基33947−38591を欠いている。よって、配列番号27の塩基20328−33946及び38592−41921を含む。これは、最初にクローンXSF18が単離されたが、単離後の増殖の過程で上記欠失を生じたことが判明したため、再度増殖をやり直すことにより、完全型のクローンを単離し、XSF20と命名したことに因る。
λファージクローンXSF18(図5)をNotIで完全消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された16.2kbの断片(配列番号27の塩基21065−33946及び38592−41921を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をNotIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSF18由来の16.2kbの断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物48個体は、いずれも不稔であった(図6)。このことから、導入した16.2kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例9 XSG22由来の12.6kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSG22(図1および5)をNotIで部分消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された12.6kbの断片(配列番号27の塩基31684−44109を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をNotIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSG22由来の12.6kbの断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物48個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した12.6kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例10 XSG16由来の15.7kb断片に関する相補性試験
(1)
(材料および方法)
λファージクローンXSG16(図1および5)をNotIで部分消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された15.7kbの断片(配列番号27の塩基38538−54123を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をNotIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSG16由来の15.7kb断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物47個体のうち、少なくとも37個体は、明らかに稔性を回復していた(図6)。このことから、導入した15.7kb断片のなかのイネ(IR24)に由来する部分である15586塩基(配列番号27の塩基38538−54123)が、完全長のRf−1遺伝子を包含していると考えられた。
(2) XSG16内部の11.4kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSG16をAlwNIおよびBsiWIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、DNA Blunting Kit(TAKARA社)により平滑化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけ、分離された11.4kbの断片を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
プラスミドベクターpSB11(Komari et al. Plant Jpurnal,1996)をSmaIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備したふたつの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。反応後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAを純水(Millipore社製装置により作成)に溶解後、大腸菌DH5αと混合し、エレクトロポレーションに供試した。エレクトロポレーション後の溶液を、LB培地で振とう培養(37℃、1時間)した後、スペクチノマイシンを含むLBプレートに広げ、加温(37℃、16時間)した。生じたコロニーのなかの14個について、プラスミドを単離し、制限酵素断片長パターンおよび境界部塩基配列を調査することにより、所望の大腸菌を選抜した。
上記により選抜した大腸菌を、Agrobacterium tumefaciens菌株LBA4404/pSB4U(高倉ら、特願2001−269982(WO02/019803 A1))およびヘルパー大腸菌HB101/pRK2013(Ditta et al,1980)とともに供試して、Ditta et al(1980)の方法に従い、三菌系交雑(triparential mating)を行った。スペクチノマイシンを含むABプレートに生じたコロニーのなかの12個について、プラスミドを単離し、制限酵素断片長パターンを調査することにより、所望のアグロバクテリウムを選抜した。
上記により選抜したアグロバクテリウムを用いて、Hiei et al(1994)の方法に準拠し、MSコシヒカリ(BT細胞質を持ち、核遺伝子はコシヒカリとほぼ同一)の形質転換を行った。形質転換に必要なMSコシヒカリの未熟種子は、MSコシヒカリにコシヒカリの花粉をかけることにより作成した。
形質転換植物は、馴化後、長日条件の温室に移した。移植適期まで育成した後、120個体の植物を、1/5000アールのワグネルポットに移植し(4個体/ポット)、移植約1か月後に短日条件の温室に移した。出穂約1か月後に、各個体から標準的な穂を1穂サンプリングし、種子稔性(総もみ数に対する稔実もみの割合)を調査した。
(結果および考察)
形質転換植物120個体のうち、59個体が10%以上の種子稔性を示し、そのうち19個体は70%以上の種子稔性を示した。このことから、導入した11.4kb断片(配列番号27の42357番目の塩基から53743番目の塩基まで)が、稔性回復の機能を発現するうえで必須のRf−1遺伝子領域を包含していると考えられた。
(3) XSG16内部の6.8kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSG16をHpaIおよびAlwNIで完全消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された6.8kbの断片を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
プラスミドベクターpSB11の調整を含め、以後の過程は上記(2)に記載の方法に準拠した。
(結果および考察)
形質転換植物120個体のうち、67個体が10%以上の種子稔性を示し、そのうち26個体は70%以上の種子稔性を示した。このことから、導入した6.8kb断片(配列番号27の42132番目の塩基から48883番目の塩基まで)が、稔性回復の機能を発現するうえで必須のRf−1遺伝子領域を包含していると考えられた。
実施例11 XSG8由来の16.9kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSG8(図1および5)をNotIで完全消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された16.9kbの断片(配列番号27の塩基46558−63364を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をNotIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSG8由来の16.9kb断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物48個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した16.9kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例12 XSH18由来の20.0kb断片に関する相補性試験
(材料および方法)
λファージクローンXSH18(図1および5)をNotIで完全消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された20.0kbの断片(配列番号27の塩基56409−76363を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、プラスミドベクターpSB200をNotIで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSH18由来の20.0kbの断片とベクター断片の二つの断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物44個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した20.0kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例13 XSG8およびXSH18の重複部由来の19.7kb断片に関 する相補性試験
(材料および方法)
実施例11におけるライゲーションによって得られた所望の大腸菌から単離したプラスミド(XSG8SB200F)を、SalIおよびStuIで完全消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された12.8kbの断片(配列番号27の塩基50430−63197を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
一方、実施例12におけるライゲーションによって得られた所望の大腸菌から単離したプラスミド(XSH18SB200R)を、SalI、StuIおよびXhoIで完全消化し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。分離された6.9kb断片(配列番号27の塩基63194−70116を含む)を、QIAEXII(QIAGEN社)を用いて精製した。
さらに、プラスミドベクターpSB200をEcoRVで完全消化後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。回収したDNAをTE溶液に溶解後、CIAP(TAKARA社)により脱リン酸化した。反応液をアガロースゲルによる電気泳動にかけた後、QIAEXII(QIAGEN社)を用いてゲルからベクター断片を精製した。
上記により準備した、XSG8由来の12.8kbの断片、XSH18由来の6.9kbの断片、及びベクター断片の三個の断片を供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。ライゲーション産物は、XSG8およびXSH18の重複部由来の19.7kb断片(配列番号27の50430−70116を含む)(図5のXSX1)を含む。以後、実施例4に記載の方法に準拠して、形質転換植物を作成・調査した。
(結果および考察)
形質転換植物40個体は、いずれも不稔であった。このことから、導入した19.7kb断片は、少なくとも完全長のRf−1遺伝子を包含していないと考えられた。
実施例14 cDNAライブラリーの作成
先ず、戻し交雑によりコシヒカリにRf−1を導入した系統IL216(遺伝子型はRf−1/Rf−1)を作成した。前記IL216を慣行法で温室栽培し、葉耳間長が−5〜5cmの生育段階で幼穂をサンプリングした。SDS−フェノール法(Watanabe,A.and Price,C.A.(1982)Translation of mRNAs for subunits of chloroplast coupling factor 1 in spinach.Proceedings of the National Academy of Sciences of the U.S.A.,79,6304−6308)でトータルRNAを抽出した後、QuickPrep mRNA Purification Kit(Amersham Pharmacia Biotech)によりpoly(A)+ RNAを精製した。
次いで、精製したpoly(A)+RNAを供試して、ZAP−cDNA Synthesis Kit(Stratagene)によりcDNAライブラリーを作成した。作成したライブラリー(1ml)のタイターは16000000pfu/mlと算出され、十分な大きさであると判断された。
実施例15 cDNAライブラリーのスクリーニング
(1)スクリーニング用プライマーの作成
以下の2種類のプライマー、
センスプライマー
アンチセンスプライマー
を用いて、IR24のゲノミッククローンXSG16をテンプレートにPCRを行った。配列番号76及び77は各々、配列番号27の塩基43733−43756及び44038−44015に相当する。
電気泳動後、約300bpの増幅産物をQIAEX II Gel Extraction Kit(QIAGEN)によりアガロースゲルから回収した。回収した断片を、Rediprime II DNA labelling system(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて32P−ラベルした(以下、「プローブP」と呼称する)。
また、以下の2種類のプライマー、
センスプライマー
アンチセンスプライマー
を用いて、IR24のゲノミッククローンXSG16をテンプレートにPCRを行った。配列番号78及び79は各々、配列番号27の塩基48306−48329及び50226−50203に相当する。電気泳動後、約1900bpの増幅産物を上述の方法によりアガロースゲルから回収した。回収した断片を、上述の方法で32P−ラベルした(以下、「プローブQ」と呼称する)。
(2)cDNAライブラリーのスクリーニング
実施例14で作成したcDNAライブラリーを供試して、約15000プラークが出現した寒天培地を70枚作成した。各寒天培地について2回ずつプラークリフトを行い、Hybond−N+(Amersham Pharmacia Biotech)に転写した。一方のメンブレンをプローブPとのハイブリダイゼーションに、もう一方のメンプレンをプローブQとのハイブリダイゼーションに用いた。一連の作業は、製造者の手引書に従って行った。
ハイブリダイゼーションは、250mM Na2HPO4、1mM EDTAおよび7% SDSを含むハイブリダイゼーション溶液にプローブを添加し、65℃で16時間行った。洗浄は、1×SSCおよび0.1% SDSを含む溶液により65℃、15分で2回行った後、0.1×SSCおよび0.1% SDSを含む溶液により65℃、15分で2回行った。洗浄後のメンブレンをFUJIX BAS1000(Fuji Photo Films)で解析した。
その結果、プローブPおよびプローブQのどちらでも陽性を示すプラークが8個見出された。そこで、それらプラークを単離し、製造者(Stratagene)の手引書に従いpBluescriptにサブクローニングした後、末端塩基配列を調査した。8個のクローンのうち、6個のクローンの末端塩基配列がXSG16の配列と一致した。それら6クローンの全塩基配列を決定し、結果を、配列表の配列番号69−74に示した。
配列番号69−74のいずれの配列も、配列番号75のアミノ酸配列1−791を持つタンパク質をコードすると推定される。具体的には、各々配列番号69の塩基215−2587、配列番号70の塩基213−2585、配列番号71の塩基218−2590、配列番号72の塩基208−2580、配列番号73の塩基149−2521及び配列番号74の塩基225−2597が、いずれも配列番号75のアミノ酸配列1−791をコードする。なお上記塩基配列は、配列番号27の塩基43907−46279に対応する。
配列番号75のアミノ酸配列を、トウモロコシの稔性回復遺伝子(Rf2)の推定アミノ酸配列(Cui et al.,1996)と比較したところ、N末端の7アミノ酸残基(Met−Ala−Arg−Arg−Ala−Ala−Ser)が一致した。これら7アミノ酸残基はミトコンドリアへの標的化シグナルの一部と考えられている(Liu et al.,2001)。これらのことから、今回単離したcDNAはRf−1遺伝子のコーディング領域を完全に包含すると考えられる。イネRf−1とトウモロコシRf2とのアミノ酸レベルでの相同性は、前述の領域を除いては見られない。遺伝子産物がミトコンドリアに移行してからの稔性回復機構は、両者で異なるものと推測される。
また、今回単離したcDNAの配列をIR24のゲノム配列(配列番号27)と比較することにより、エキソンとイントロンの構造が明らかになった(図7)。その結果、植物体内において、スプライシング様式およびポリA付加位置を異にする種々の転写産物が混在していることが示された。
実施例16 相補性試験
実施例10(3)において、稔性回復能を持つことが証明されたIR24由来の6.8kbゲノム断片を含むプラスミド中の、Rf−1遺伝子のプロモーター領域と予想翻訳領域とを包含する4.2kb断片を用いて、相補性実験を行った。
先ず、上記実施例10(3)のプラスミドをEcoRIで処理し、アガロースゲルによる電気泳動を行った。Rf−1のプロモーター領域と予想翻訳領域とを包含する4.2kb断片(配列番号27の塩基42132−46318に相当する)を分離し、QIAEXII(QIAGEN)を用いてゲルから回収した。この4.2kb断片を、EcoRI処理後CIAP(TAKARA)処理したpBluescriptII SK(−)とともに供試して、DNA Ligation Kit Ver.1(TAKARA社)を用いてライゲーション反応を行った。反応後、エタノール沈殿によりDNAを回収した。
回収したDNAを純水(Millipore社製装置により作成)に溶解後、大腸菌DH5αと混合し、エレクトロポレーションに供試した。エレクトロポレーション後の溶液を、LB培地で振とう培養(37℃、1時間)した後、アンピシリンを含むLBプレートに広げ、加温(37℃、16時間)した。生じたコロニーのなかの12個について、プラスミドを単離し、制限酵素断片長パターンおよび境界部塩基配列を調査することにより、所望の大腸菌を選抜した。つぎに、選抜した大腸菌から単離したプラスミドを、BamHIおよびSalIで処理後、アガロースゲルによる電気泳動を行い、Rf−1のプロモーター領域と予想翻訳領域とを包含する4.2kb断片を分離し、QIAEXII(QIAGEN)を用いてゲルから回収した。
一方、TnosJH0072(nosターミネーターおよびアンピシリン耐性遺伝子カセットを持つ中間ベクター)をBamHIおよびSalIで処理後、アガロースゲルによる電気泳動を行った。nosターミネーターおよびアンピシリン耐性遺伝子カセットとを包含する3.0kb断片を分離し、QIAEXII(QIAGEN)を用いてゲルから回収した。
Rf−1のプロモーター領域と予想翻訳領域とを包含する4.2kb断片及びTnosJH0072由来の断片を、前述の方法でライゲーション反応およびポレーションを行った。アンピシリンを含むLBプレートに広げ、加温(37°C、16時間)後、生じたコロニーのなかの12個について、プラスミドを単離し、制限酵素断片長パターンおよび境界部塩基配列を調査することにより、所望の大腸菌を選抜した。
さらに、上述のとおり選抜した大腸菌から単離したプラスミドを、SgfIで処理後、アガロースゲルによる電気泳動を行い、Rf−1のプロモーター領域と予想翻訳領域とを包含する4.2kb断片を分離し、QIAEXII(QIAGEN)を用いてゲルから回収した。この4.2kb断片を、PacI処理後CIAP(TAKARA)処理したpSB200Pac(ハイグロマイシン耐性遺伝子カセットを持つ中間ベクター)とともに供試して、前述の方法でライゲーション反応およびポレーションを行った。スペクチノマイシンを含むLBプレートに広げ、加温(37℃、16時間)後、生じたコロニーのなかの16個について、プラスミドを単離し、制限酵素断片長パターンおよび境界部塩基配列を調査することにより、所望の大腸菌を選抜した。
以上の工程により、Rf−1のプロモーター領域とRf−1の予想翻訳領域を含む断片にnosターミネーターが接続されたキメラ遺伝子が、中間ベクター内に挿入された大腸菌が得られた。この大腸菌を、Agrobacterium tumefaciens菌株LB4404/pSB1(Komari et al,1996)およびヘルパー大腸菌HB101/pRK2013(Ditta et al,1980)とともに供試して、Ditta et al(1980)の方法に従いtriparential matingを行った。スペクチノマイシンを含むABプレートに生じたコロニーのなかの6個について、プラスミドを単離し、制限酵素断片長パターンを調査することにより、所望のアグロバクテリウムを選抜した。
上記により選抜したアグロバクテリウムを用いて、Hiei et al(1994)の方法に準拠し、MSコシヒカリ(BT細胞質を持ち、核遺伝子はコシヒカリとほぼ同一)の形質転換を行った。形質転換に必要なMSコシヒカリの未熟種子は、MSコシヒカリにコシヒカリの花粉をかけることにより作成した。
形質転換植物は、馴化後、長日条件の温室に移した。移植適期まで育成した後、32個体の植物を、1/5000アールのワグネルポットに移植し(4個体?ポット)、移植3〜4週間後に短日条件の温室に移した。出穂約1か月後に、種子稔性を立毛調査した。その結果、32個体のうち28個体は、稔性を回復していることがわかった。
以上の結果から、予想翻訳領域を発現させることによりRf−1遺伝子の機能を付与できることが、実験的に証明された。
実施例17 cDNA単離
実施例15は、プローブPおよびプローブQによりIR24幼穂由来cDNAライブラリーをスクリーニングし、どちらのプローブでも陽性を示すプラークを単離・解析することにより、6個のcDNAを単離した。本実施例では、プローブPおよび下記のプローブRにより同様のスクリーニングを行うことにより、さらに6個のcDNAを単離した。詳細は、以下のとおりである。
まず、2種類のプライマー、
センスプライマー
アンチセンスプライマー
を用いて、IR24のゲノミッククローンXSG16をテンプレートにPCRを行った。配列番号86および87は各々、配列番号27の塩基45522−45545及び45955−45932に相当する。
電気泳動後、約430bpの増幅産物をQIAEX II(QIAGEN)によりアガロースゲルから回収した。回収した断片を、Rediprime II DNA labelling system(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて32P−ラベルした(プローブR、図8)。
IR24幼穂由来cDNAライブラリーを供試して、約15000プラークが出現した寒天培地を20枚作成した。各寒天培地について2回ずつプラークリフトを行い、Hybond−N+(Amersham Pharmacia Biotech)に転写した。一方のメンブレンを実施例15のプローブPとのハイブリダイゼーションに、もう一方のメンブレンをプローブRとのハイブリダイゼーションに用いた。一連の作業は、製造者の手引書に従って行った。その結果、プローブPおよびプローブRのどちらでも陽性を示すプラークが12個見出された。
そこで、それらプラークを単離し、製造者(Stratagene)の手引書に従いpBluescriptにサブクローニングした後、末端塩基配列を調査した。12個のクローンのうち、6個のクローンの末端塩基配列がXSG16の配列と一致したため、それら6クローンの全塩基配列を決定した(#7−#12)。その結果を配列番号80−85に示す。
配列番号80−85のいずれの配列も、配列番号75のアミノ酸配列1−791を持つタンパク質をコードすると推定される。具体的には、各々配列番号80の塩基229−2601、配列番号81の塩基175−2547、配列番号82の塩基227−2599、配列番号83の塩基220−2592、配列番号84の塩基174−2546及び配列番号85の塩基90−2462が、いずれも配列番号75のアミノ酸配列1−791をコードする。なお上記塩基配列は、配列番号27の塩基43907−46279に対応する。
今回単離したcDNAの配列をIR24のゲノム配列(配列番号27)と比較することにより、エキソンとイントロンの構造が明らかになった(図8)。今回単離したcDNAのなかには、予想翻訳領域とは関係のないエキソンを含まず、単一エキソンからなるものも3個存在した(#10−#12、配列番号83−85)。
Claims (13)
- 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸をイネに導入することにより、イネの稔性を回復する方法。
- 配列番号75のアミノ酸配列をコードする核酸をイネに導入することにより、イネの稔性を回復する、請求項1に記載の方法。
- 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸が、以下のa)−p)の核酸から選択される、請求項1又は2に記載の方法:
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸。 - 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸が、以下の条件1)−12)の少なくとも一つを満たす、請求項3に記載の方法:
1)配列番号69の塩基1769に相当する塩基がAである;
2)配列番号70の塩基1767に相当する塩基がAである;
3)配列番号71の塩基1772に相当する塩基がAである;
4)配列番号72の塩基1762に相当する塩基がAである;
5)配列番号73の塩基1703に相当する塩基がAである;
6)配列番号74の塩基1779に相当する塩基がAである;
7)配列番号80の塩基1783に相当する塩基がAである;
8)配列番号81の塩基1729に相当する塩基がAである;
9)配列番号82の塩基1781に相当する塩基がAである;
10)配列番号83の塩基1774に相当する塩基がAである;
11)配列番号84の塩基1728に相当する塩基がAである;又は
12)配列番号85の塩基1644に相当する塩基がAである。 - 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸を利用して被検定イネ個体又は種子が稔性回復遺伝子(Rf−1遺伝子)を有するか否かを識別する方法。
- 以下のa)−p)の核酸;
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸
のいずれかを利用する、請求項5に記載の方法。 - 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸が、以下の条件1)−12)の少なくとも一つを満たす場合に被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有すると判断する、請求項5又は6に記載の方法:
1)配列番号69の塩基1769に相当する塩基がAである;
2)配列番号70の塩基1767に相当する塩基がAである;
3)配列番号71の塩基1772に相当する塩基がAである;
4)配列番号72の塩基1762に相当する塩基がAである;
5)配列番号73の塩基1703に相当する塩基がAである;は
6)配列番号74の塩基1779に相当する塩基がAである;
7)配列番号80の塩基1783に相当する塩基がAである;
8)配列番号81の塩基1729に相当する塩基がAである;
9)配列番号82の塩基1781に相当する塩基がAである;
10)配列番号83の塩基1774に相当する塩基がAである;
11)配列番号84の塩基1728に相当する塩基がAである;又は
12)配列番号85の塩基1644に相当する塩基がAである。 - i)以下のいずれかの塩基、
1)配列番号69の塩基1769に相当する塩基;
2)配列番号70の塩基1767に相当する塩基;
3)配列番号71の塩基1772に相当する塩基;
4)配列番号72の塩基1762に相当する塩基;
5)配列番号73の塩基1703に相当する塩基;
6)配列番号74の塩基1779に相当する塩基;
7)配列番号80の塩基1783に相当する塩基;
8)配列番号81の塩基1729に相当する塩基;
9)配列番号82の塩基1781に相当する塩基;
10)配列番号83の塩基1774に相当する塩基;
11)配列番号84の塩基1728に相当する塩基;及び
12)配列番号85の塩基1644に相当する塩基
を含む隣接領域の塩基配列に基づいて、上記塩基と隣接領域の双方を増幅するようにプライマー対を作成し;
ii)被検定イネ個体又は種子のゲノムDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い;そして
iii)前記核酸増幅産物に見出される多型に基づいて被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子の有無を識別する、請求項6又は7に記載の方法。 - 工程iii)が、以下の条件1)−12)の少なくとも一つを満たす場合に被検定イネ個体又は種子がRf−1遺伝子を有すると判断する、請求項8に記載の方法:
1)配列番号69の塩基1769に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
2)配列番号70の塩基1767に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
3)配列番号71の塩基1772に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
4)配列番号72の塩基1762に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
5)配列番号73の塩基1703に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
6)配列番号74の塩基1779に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
7)配列番号80の塩基1783に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
8)配列番号81の塩基1729に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
9)配列番号82の塩基1781に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
10)配列番号83の塩基1774に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;
11)配列番号84の塩基1728に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない;又は
12)配列番号85の塩基1644に相当する塩基を含む領域が、TaqI認識配列を有しない。 - 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸、に対し相補的な塩基配列から選択される、連続した少なくとも100塩基の長さのアンチセンスを導入することにより、Rf−1遺伝子の稔性回復機能を抑制する方法。
- 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸が、以下のa)−p)の核酸から選択される、請求項16に記載の方法:
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸。 - 配列番号75のアミノ酸配列、又は配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードする核酸であって、稔性回復機能を有する核酸。
- 以下のa)−p)の核酸から選択される、請求項11に記載の核酸:
a)配列番号69の塩基215−2587を含む核酸;
b)配列番号70の塩基213−2585を含む核酸;
c)配列番号71の塩基218−2590を含む核酸;
d)配列番号72の塩基208−2580を含む核酸;
e)配列番号73の塩基149−2521を含む核酸;
f)配列番号74の塩基225−2597を含む核酸;
g)配列番号27の塩基43907−46279を含む核酸;
h)配列番号80の塩基229−2601を含む核酸;
i)配列番号81の塩基175−2547を含む核酸;
j)配列番号82の塩基227−2599を含む核酸;
k)配列番号83の塩基220−2592を含む核酸;
l)配列番号84の塩基174−2546を含む核酸;
m)配列番号85の塩基90−2462を含む核酸;
n)上記a)−m)のいずれかの核酸と少なくとも70%同一であり、かつ、稔性回復機能を有する核酸;
o)上記a)−m)のいずれかの核酸と中程度又は高程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、稔性回復機能を有する核酸;及び
p)上記a)−m)のいずれかの核酸に1ないし複数の塩基が欠失、挿入又は置換しており、かつ、稔性回復機能を有する核酸。
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