JPWO2003045553A1 - 触媒担体構造体とその製造方法及び排気ガス浄化用触媒と排気ガス浄化方法 - Google Patents
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Abstract
触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料の絶対量と表面積を格段に高め、それによって排気ガス浄化用触媒の浄化性能を格段に向上させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体を提供することを解決課題とする。この解決課題は、排気ガス浄化用触媒に使用され、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層を備えた触媒担体構造体であって、前記セラミック線材層は、複数の相互に接触して平行に伸びるセラミック線材によって形成され、前記セラミック線材は実質的に触媒担体材料からなり、前記スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、前記スペーサーは、前記セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、前記間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成する、ことを特徴とする触媒担体構造体によって達成される。
Description
技術分野
本発明は、触媒担体構造体、触媒担体構造体の製造方法、排気ガス浄化用触媒、及び排気ガス浄化方法に関し、とりわけ、自動車用エンジン等の内燃機関の排気ガスを浄化するための排気ガス浄化用触媒に使用される触媒担体構造体に関する。
背景技術
自動車用エンジン等の内燃機関から排出される排気ガスには、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)が含まれ、さらに、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼内燃機関の排気ガスには、粒子状物質のパティキュレート(PM)が含まれる。これらの有害物質は、環境保護の面から早期に排出量を低減させることが要請されている。
こうしたNOx、CO、HCを含む排気ガスは、一般に、三元触媒等の排気ガス浄化用触媒によって浄化される。この排気ガス浄化用触媒は、通常、ハニカム形状を有する基材(ハニカム基材)のセル壁上にセラミック材料の触媒担体が固定されて触媒担体構造体が形成され、この触媒担体構造体に白金等の触媒成分を担持して構成される。
ここで、このようなハニカム基材は、セラミック材料に限らず金属材料からも製造されることができ、特開平8−243406号公報、特開平5−138040号公報等に記載のように、板状の金属材料を利用した種々の形状の金属製ハニカム基材が提案されている。また、特開昭63−302953号等に記載のように、線状の金属材料を利用した触媒担体構造体も提案されている。
しかしながら、自動車を高速で長時間運転したときの高温雰囲気、さらに、NOx、SOxによる腐食性雰囲気のため、一般に、セラミック製ハニカム基材が使用され、また、排気ガス温度の変動に伴う熱膨張又は収縮によるクラック等の損傷を回避する必要があるため、通常は、特有に低い熱膨張率を有するコージェライトからなるハニカム基材が使用される。こうしたセラミック製ハニカム基材は、コージェライトを生成する配合物素地を押出成形した後、焼成して製造されるものが一般的であるが、特開昭59−73053号公報等に記載のように、無機質繊維の織布を利用したものも提案されている。
一方、NOx等のほかにパティキュレートが含まれる希薄燃焼内燃機関の排気ガスは、同様に、ハニカム基材を用いた触媒担体構造体に白金等の触媒成分を担持した排気ガス浄化用触媒による浄化が鋭意検討されており、この場合のハニカム基材は、通常、セルを交互に目封じしてパティキュレート濾過機能を付与したものが使用される。
こうした排気ガス浄化用触媒が高い排気ガス浄化性能を発揮するためには、触媒成分が排気ガスと十分に接触すること、したがって、触媒成分が広い面積で触媒担体上に担持されることが必要である。このため、ハニカム基材は、単位断面積あたり出来るだけ数多くのセルを有するものが望まれ、ハニカム基材に固定される触媒担体用セラミック材料としては、一般に、約180m2/gのような高い比表面積を有するγ−アルミナ(活性アルミナ)が使用される。
ところで、各種の酸化物、複合酸化物、窒化物、炭化物等のセラミック材料の中には、排気ガス雰囲気下で酸素ストレージ能、酸素イオン伝導性、酸塩基点、吸着性等の機能を発揮し、触媒作用又は助触媒作用を奏する特定のセラミック材料がある(以下「機能性セラミック材料」と称する)。
例えば、セリアのように酸化触媒の作用を有するもの、特定のペロブスカイト型複合酸化物、アルミネート型複合酸化物、及びスピネル型複合酸化物のようにNOxをN2とO2に分解する触媒作用を有するもの、セリア−ジルコニア複合酸化物のように排気ガス雰囲気の局所的変動を抑えて助触媒の役割をするものが知られており、先行技術としては、特開平5−261289号公報、特開平11−156196号公報、特開平10−314593号公報、特開平11−165067号公報等がある。
また、これらの特定のセラミック材料の触媒作用又は助触媒作用は、白金等の触媒成分を担持することで、即ち、機能性セラミック材料を触媒担体材料として使用することで一層高められることが知られている。
しかるに、排気ガス浄化用触媒の浄化性能を高めるために、ハニカム基材のセルをさらに飛躍的に縮小することは、ハニカム基材を製造する押出技術の面から限界がある。また、セルの中心間距離は、現状では、1mm以下まで縮小されているが、セルの口径をさらに縮小すると、排気ガスの流れを妨げるセル壁の横断面積が増加して排気ガスの圧力損失が増大するため、燃費の悪化を招くという問題がある。
一方、上記の特定の機能性セラミック材料の触媒作用は、白金等の貴金属に比較して低いため、意図する排気ガス浄化性能を発揮させるには、大量のセラミック材料を使用する必要があるが、ハニカム基材に固定するのでは、ハニカム基材の空間容積の面から制約がある。また、これらの機能性セラミック材料は、一般に、白金等の触媒成分を担持するのに十分な高い比表面積を有するものが得られにくいという問題がある。
したがって、本発明は、とりわけ、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料の絶対量と表面積を格段に高め、それによって排気ガス浄化用触媒の浄化性能を格段に向上させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体を提供することを目的とする。
また、高いパティキュレート捕集機能を発揮し、それによって高いパティキュレート浄化作用を奏する排気ガス浄化用触媒を得るための触媒担体構造体を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明の目的は、排気ガス浄化用触媒に使用され、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層を備えた触媒担体構造体であって、前記セラミック線材層は、複数の相互に接触して平行に伸びるセラミック線材によって形成され、前記セラミック線材は実質的に触媒担体材料からなり、前記スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、前記スペーサーは、前記セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、前記間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成する、ことを特徴とする触媒担体構造体によって達成される。
本発明において、「セラミック線材」とは、セラミック材料からなる「線材」を指称し、セラミック線材は「実質的に触媒担体材料からなり」とは、セラミック線材の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が触媒担体材料であること意味する。また、「触媒担体材料」とは、触媒成分を担持するのに適する比表面積の高い触媒担体用セラミック材料、及び触媒成分が担持されることで触媒作用又は助触媒作用が高められる機能性セラミック材料の双方を包含する。
また、「セラミック線材層」とは、複数の接触したセラミック線材の配列によって形成された「層」を指称し、「スペーサー」とは、複数のセラミック線材層の各層の間に連通する間隙を設けるために、セラミック線材層の各層の間に介在する材料を指称し、排気ガス雰囲気下で耐久性のあるセラミック材料からなるものが適切であり、「スペーサー層」とは、複数のスペーサーの配列によって形成され、一方向に連通した間隙を有する「層」を指称する。
かかる構成の触媒担体構造体においては、従来よりも触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体材料の絶対量と表面積が格段に高められることから、触媒成分が担持され得る表面積が格段に高められた、あるいは機能性セラミック材料の触媒作用又は助触媒作用が格段に高められた触媒担体構造体が提供される。
この触媒担体材料の絶対量を格段に高めることができる理由は、セラミック線材が実質的に触媒担体からなり、複数の相互に接触したセラミック線材によってセラミック線材層が形成されるためである。即ち、従来技術のようにハニカム基材を使用せず、触媒担体材料そのものでセラミック線材が形成され、かつセラミック線材は、接触して存在することから、単位空間体積あたり高い体積割合で存在することができ、したがって、触媒担体構造体の単位空間体積に占める触媒担体材料の空間体積が格段に増加されるためである。
触媒担体材料の表面積を格段に高めることができる理由は、次の通りである。
排気ガスが、接触するセラミック線材からなるセラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流通するため、即ち、セラミック線材の側面とスペーサーの側面を内壁とする間隙が排気ガスの流路となることから、排気ガスの流路が実質的に触媒担体材料によって形成されるためである。
また、セラミック線材層の実質的に全ての外側表面に排気ガスが接触することができるためである。即ち、従来のハニカム基材を用いた触媒担体構造体では、ハニカム基材に固定されたセラミック材料のセル壁の近傍には排気ガスが流通しないため、セル壁の近傍のセラミック材料には排気ガスが接触しないが、本発明の触媒担体構造体では、セラミック線材の全ての外側表面に排気ガスが接触することができるためである。さらに、セラミック線材は、製造技術面からの直径の制約が少ないためである。即ち、セラミック線材は、押出によって製造されるハニカム基材のセル壁の厚さよりも格段に小さい、細くは直径数μmのものも製造可能なためである。
これらのセラミック線材は、低い熱膨張率を有する材料に限定されず、触媒担体材料として適する各種の酸化物や複合酸化物等から広範囲に選択されたセラミック材料であることができる。この理由は、個々のセラミック線材は、単純形状であって体積が顕著に小さく、したがって、割合に高い熱膨張率を有する材料であっても、温度の変動に伴う熱応力が桁違いに小さいためである。
なお、スペーサーもまたこうした触媒担体材料から構成されることができ、それによって、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体材料の絶対量と表面積をさらに増大させることができる。
これらの触媒担体材料として適するセラミック材料は、一般に、比表面積の高い多孔質体であって強度が比較的低い。しかるに、本発明の触媒担体構造体においては、セラミック線材は、相互に接触して平行に伸びるため、相互に支持して破損を生じにくくすることから、かつスペーサーは、接触したセラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に配置されるため、単位空間体積あたり数多くの接点でセラミック線材と接触することから、全体として触媒担体構造体として十分な強度の一体の構造体を形成することが可能となる。また、セラミック線材が相互に接触することから、コンパクトな触媒担体構造体をもたらすことができる。
こうした本発明の触媒担体構造体は、排気ガス浄化用触媒を流通する排気ガスの圧力損失が増大するといった問題は、著しく軽減される。
この理由は、スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、これらのスペーサーは、セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、この間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成するためである。即ち、排気ガスの流路は、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された一方向に連通する間隙であって、この間隙のサイズは、十分に低い排気ガスの圧力損失となるように、スペーサーの径とスペーサーの間隔によって広範囲に調整可能なためである。また、ハニカム基材のセル壁のような、触媒成分が担持され得る材料以外の材料が排気ガスの流路に存在しないためである。
また、本発明の触媒担体構造体は、同じく、ハニカム基材のセル壁のような、触媒成分が担持され得る材料以外の材料が排気ガスの流路に存在しないという理由により、触媒担体材料の単位質量あたりの熱容量が顕著に低下された触媒担体構造体を構成することができる。
さらに、こうした本発明の触媒担体構造体に白金等の触媒成分が担持されてなる排気ガス浄化用触媒は、パティキュレートが含まれるディーゼルエンジン等の希薄燃焼内燃機関の排気ガスに対して、パティキュレート捕集機能を発揮することができる。この理由は次のように考えられる。
排気ガスが一定の速度以上で流通すると、排気ガスの流れに乱れが生じて、各々のパティキュレートはランダムな方向に流動する。一方、排気ガス全体の速度及び方向と、各々のパティキュレートの速度及び方向とは異なり、排気ガスの平均速度によらず、接触するセラミック線材によって形成された窪みの中には排気ガス速度が極めて遅い局所領域が発生する。このため、その排気ガス速度が極めて遅い局所領域に到達したパティキュレートは、その局所領域に堆積し、そして、パティキュレートに含まれる可溶有機成分(SOF)の付着力が、その堆積したパティキュレートの再移動を抑制するものと考えられる。
即ち、こうした排気ガス浄化用触媒は、セラミック線材層とスペーサー層によって形成される間隙が排気ガスの流路を確保しながら、パティキュレートフィルタとして機能することができる。
かかる排気ガス浄化用触媒のパティキュレート捕集機能は、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流れる排気ガスの速度が高くなるにつれてより顕著になるといった特有のものである。この理由は、排気ガスの速度が高くなるにつれて、排気ガスの流れの乱れが増大し、したがって、上記の排気ガス速度が極めて遅い局所領域に向かうパティキュレートの速度成分が高められるためと考えられる。
触媒担体構造体を構成するセラミック線材層は、1つの態様として、図1〜3に示すように、複数の一方向に伸びる平行なセラミック線材によって形成され、別な態様として、図4〜5に示すように、複数の円形又は長円形に巻回された平行なセラミック線材によって形成される。
好ましい態様として、セラミック線材層の各々が、複数の相互に接触した平行なセラミック線材に隣接して、複数の相互に隔てられた平行なセラミック線材をさらに備える。かかる態様においては、上述のように、複数の相互に接触した平行なセラミック線材がパティキュレート捕集機能を発揮することができ、一方、複数の相互に隔てられた平行なセラミック線材では、こうしたパティキュレート捕集機能が顕著ではない。
このため、かかる態様における触媒担体構造体に触媒成分を担持して調製された排気ガス浄化用触媒は、パティキュレート捕集機能を有する領域と有しない領域を備えることができる。したがって、例えば、パティキュレートの酸化浄化を促進するNO2のようなガス成分を、上流のパティキュレート捕集機能を有しない領域に担持された特定の触媒成分によって発生させ、その下流にパティキュレート捕集機能を有する領域を配置するといった、パティキュレートの効率的な浄化を目的とした排気ガス浄化用触媒の設計が可能となる。
好ましい態様として、セラミック線材が、5〜45質量%のセラミック繊維によって補強される。これにより、多孔質の比較的強度の低い触媒担体材料を効果的に補強することができる。ここで、「セラミック繊維」とは、セラミック材料を含んでなる「繊維」を指称し、触媒担体材料に補強作用を奏する材料であり、好ましくは、直径数μm〜数10μmの実質的に無孔質のセラミック材料からなる。
1つの好ましい態様として、こうしたセラミック繊維は、触媒担体材料の中に分散され、セラミック線材の中で相互に接合した多数の短繊維である。ここで、「短繊維」とは、数10μm〜数mmの長さを有する繊維を指称する。この態様においては、例えば、いわゆるチョップドファイバーと称されるようなセラミック短繊維が、触媒担体材料のマトリックスの中に全体的に分散され、相互に接触した箇所で結合して存在する。したがって、マトリックスの中でのセラミック短繊維の結合により、セラミック繊維によるセラミック線材の補強効果を格段に高めることができる。
別の好ましい態様として、セラミック繊維は、触媒担体材料の中に埋設され、セラミック線材の心材を形成した複数の長繊維として存在する。ここで、「長繊維」とは、連続して伸びる繊維を指称し、好ましくは、セラミック線材の長さにわたって伸びる。この態様においては、複数の長繊維が心材として存在することにより、触媒担体材料と排気ガスとの接触面積を実質的に低下させることなく、セラミック繊維の単位質量あたりの補強作用が向上するとともに、触媒担体材料の中に埋設されたセラミック繊維の表面積が高められることから、触媒担体材料とセラミック繊維との結合性を高めることができる。
なお、スペーサーもまた、同様にして触媒担体材料がセラミック繊維によって補強されたものであれば、触媒担体材料の絶対量と表面積をさらに増大させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体を得ることができる。
好ましい態様として、セラミック線材の各々の両端がセラミック材料からなる側面層に埋設される。ここで、「側面層」とは、セラミック線材の端部を埋設し、触媒担体構造体の少なくとも一部の側面を形成する「層」を指称する。かかる態様においては、セラミック線材は、各々の両端が強固に固定され、かつセラミック線材とスペーサーは多数の接点で互いに支持することができる。したがって、セラミック線材とスペーサーが比較的強度の低い多孔質材料からなっても、こうした構成により、全体として高強度で一体の触媒担体構造体とすることができる。
好ましい態様として、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層が、排気ガスの流れ方向にそって複数のユニットに分割される。かかる態様においては、排気ガスの急激な温度変化が触媒担体構造体に及ぼす熱応力を低下させ、温度変化に伴う触媒担体構造体の損傷を抑制することができる。また、排気ガスは、ユニット間のスペースを流通した後、次のユニットのセラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙に流入するため、この間隙を流れるときの排気ガスの流れの乱れが増大されることから、パティキュレートの捕集率をより高めることができる。
好ましい態様として、セラミック線材とスペーサーが、相互に接触する箇所で結合する。かかる態様においては、触媒担体構造体の一体性をより高めることができる。
好ましい態様として、セラミック線材が10μm〜1mmの直径を有し、スペーサーが30μm〜3mmの直径を有する。かかる態様においては、排気ガスの圧力損失を過度に高めることなく、触媒担体材料の絶対量と表面積が格段に高められた触媒担体構造体を提供することができる。
好ましい態様として、触媒担体材料が、アルミナ、ジルコニア、セリア、ジルコニア−セリア、アルミナ−セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−イットリア、ジルコニア−カルシア、ペロブスカイト型複合酸化物、アルミネート型複合酸化物、及びスピネル型複合酸化物から選択された少なくとも1種の酸化物セラミックである。こうした酸化物セラミックは、触媒担体材料として適性があり、またそれ自体が触媒作用もしくは助触媒作用を発揮することもある。
こうした本発明の触媒担体構造体は、例えば、予備セラミック線材からなる複数の予備セラミック線材層と予備スペーサーからなる複数の予備スペーサー層を交互に配置して予備触媒担体構造体を作成し、次いで予備触媒担体構造体を焼成する方法によって製造することができる。ここで、「予備セラミック線材」、「予備スペーサー」等の「予備」とは、焼成前の状態のものを指称し、「セラミック前駆体」とは、焼成によりセラミック材料を生成する物質を指称する。
かかる触媒担体構造体の製造方法において、好ましくは、予備スペーサーが、セラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んでなる。この場合、予備スペーサーの配合物に含まれるセラミック前駆体が、焼成によりセラミック材料に変化することで、焼成後にスペーサーとセラミック線材の結合が発現し、さらに、予備スペーサーの塑性が、予備セラミック線材との接触箇所における予備スペーサーのクラック等の損傷を伴わない変形をもたらすことができる。このため、焼成後にスペーサーとセラミック線材が拡張された結合領域を有し、より強固な一体の触媒担体構造体を得ることができる。
好ましい態様として、セラミック前駆体の配合物が液体の分散媒を含み、この分散媒が未乾燥の状態で、予備セラミック線材層と予備スペーサー層を交互に配置する。かかる分散媒が未乾燥の状態であれば、配合物は塑性を有するとともに、予備スペーサーと予備セラミック線材を接触させた状態から分散媒が乾燥すると、少なくとも軽度の接着力が予備スペーサーと予備セラミック線材の間に発現する。このため、損傷を招くことなく予備触媒担体構造体をハンドリングすることが容易になり、より安定して強固な一体の触媒担体構造体を得ることができる。
このようにして得られた触媒担体構造体に、NOxの還元、COとHCの酸化、及び/又はパティキュレートの燃焼に有効な白金、パラジウム、及びロジウムからなる群より選択された少なくとも1種の触媒成分が担持されて排気ガス浄化用触媒が製造される。
排気ガスは、かかる排気ガス浄化用触媒のセラミック線材層とスペーサー層によって形成され、スペーサーが伸びる方向に連通した間隙を流通する間に浄化される。
排気ガスがパティキュレートを含む場合、この間隙を流れる排気ガスの平均流速を約5m/秒以上とすることで、排気ガス浄化用触媒にパティキュレート捕集機能を顕著に発揮させることができる。排気ガス浄化用触媒の接触するセラミック線材によって形成された窪みの中に捕集されたパティキュレートは、触媒成分の作用に長時間にわたって曝され、NOx等の有害物質とともに排気ガスの流れの中で浄化されることができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明の触媒担体構造体は、排気ガス浄化用触媒に使用され、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層を備えた触媒担体構造体であって、前記セラミック線材層は、複数の相互に接触して平行に伸びるセラミック線材によって形成され、前記セラミック線材は実質的に触媒担体材料からなり、前記スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、前記スペーサーは、前記セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、前記間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成する。
図1〜3は、こうした触媒担体構造体(1)であって、セラミック線材層(2)が複数の一方向に伸びる平行なセラミック線材(4)によって形成された態様をモデル的に例示する。図1は、かかる態様の触媒担体構造体(1)の斜視図、図2は、図1のA−A線での断面図、図3は、図1のB−B線での断面図である。
図1〜3に示すように、スペーサー層(3)は、間隔(6)を設けて配置されたスペーサー(5)によって形成され、排気ガスGは、この間隔(6)を流路として流れる。
図4〜5は、別な態様の触媒担体構造体(1)であって、セラミック線材層(2)が複数の円形又は長円形に巻回された平行なセラミック線材(4)によって形成された態様をモデル的に例示する。図4は、かかる態様の触媒担体構造体(1)の斜視図、図5は、図4の触媒担体構造体(1)の排気ガスの流れ方向に見た断面図である。この態様においても、同様に、排気ガスはスペーサー層(3)の間隔(6)を流路として流れる。
図1〜5に例示するように、セラミック線材層(2)は、好ましくは、実質的に同じ直径のセラミック線材(4)によって形成され、同様に、スペーサー層(3)は、実質的に同じ直径のスペーサー(5)によって形成される。
ここで、セラミック線材層(2)は、図1〜5にモデル的に示すように、セラミック線材を一列に配列して形成する態様だけではなく、図6にモデル的に示すように、セラミック線材(4)を重ねて配列して形成することもできる。また、スペーサー層(3)は、図7にモデル的に例示するように、スペーサー層(3)の長さよりも短いスペーサー(5)の組み合わせによって形成することもできる。
セラミック線材層を形成するセラミック線材は、排気ガス雰囲気中で耐久性があり、触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料として適する任意のセラミック材料から形成されることができ、酸化物に限らず、炭化物や窒化物等を含んで形成されることもできる。
好ましくは、セラミック線材は、アルミナ、ジルコニア、セリア、ジルコニア−セリア、アルミナ−セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−イットリア、ジルコニア−カルシア、ペロブスカイト型複合酸化物、アルミネート型複合酸化物、及びスピネル型複合酸化物から選択された少なくとも1種の酸化物セラミックを含んでなる。
このようなセラミック線材は、例えば、アルミナ等のセラミック粉末を含む予備セラミック線材を作成し、これを焼成することによって製造することができる。
具体的には、アルミナ等のセラミック粉末と水等の液体の分散媒を混合して、配合物のスラリーを作成し、このスラリーに必要により、セラミック前駆体、及びポリビニルアルコールやポリアクリルアミドのような曳糸性の高いポリマーを添加し、直径数mm以下のノズルからスラリーを押出しながら延伸し、スラリーを線状に加工することによって予備セラミック線材を作成することができる。あるいは、目的とする予備セラミック線材と同等の直径の口径を有するノズルから単にスラリーを押出することによって作成することもできる。これらの予備セラミック線材の直径は、ノズル口径、延伸速度等によって調節することができる。
そして、必要により、分散媒を逃散させる乾燥に供することによって、自己支持性を有する未焼成の予備セラミック線材とすることができ、次いで焼成に供することによって、より高い自己支持性を有するセラミック線材とすることができる。
このようにして得られる焼成前の予備セラミック線材又は焼成後のセラミック線材は、それぞれ焼成前の予備スペーサー又は焼成後のスペーサーとして使用することもできる。
ここで、「セラミック前駆体」とは、焼成によりセラミック材料を生成する物質であり、常温で液体の物質、又は常温で液体の溶液を形成する物質が適切である。例えば、セラミック材料がアルミナであれば、「セラミック前駆体」には、アルミナゾルのほか、アルミニウムメトキシドやアルミニウムエトキシドのようなアルコール等に可溶なアルミニウム化合物、硝酸アルミニウムや塩化アルミニウムのような水等に可溶なアルミニウム化合物が挙げられ、他のセラミック材料についても同様である。
こうした「セラミック前駆体」は、液体から固体のセラミック材料に変化するとアルミナ等のセラミック粉末を結合させる作用を奏する。このため、アルミナ等のセラミック粉末、水等の分散媒、及びセラミック前駆体を含むスラリーを乾燥・焼成することにより、触媒担体構造体を構成するのに必要な強度を有し、比表面積の高い多孔質のセラミック材料を生成させることができる。
図1〜3に例示する触媒担体構造体は、例えば、上記のようにして作成した複数の予備セラミック線材と複数の予備スペーサーを配列して、予備セラミック線材層と予備スペーサー層が交互に配置された図1のような構造の予備触媒担体構造体を作成し、次いで焼成することによって製造することができる。得られる触媒担体構造体は、焼成によって若干の寸法収縮が生じることがあるほか、予備触媒担体構造体と実質的に同じ形状を有する。
この場合、予備スペーサーがセラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んだ状態で、予備セラミック線材層と予備スペーサー層を交互に配置すれば、セラミック前駆体の作用によって焼成によりスペーサーとセラミック線材に結合が発現し、かつ配合物が塑性を有することで、スペーサーとセラミック線材の結合箇所を拡張することができる。
この予備スペーサーがセラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んだ状態とは、例えば、上記のように予備スペーサーを、配合物のスラリーを押出及び/又は延伸して作成する場合、この予備スペーサーが未だ液体の分散媒を含んでおり、軽度に負荷を与えると、クラック等の損傷を招くことなく塑性変形が可能な状態が挙げられる。
ここで、予備スペーサーと予備セラミック線材を接触させて予備スペーサーを塑性変形させた後に分散媒が乾燥すると、バラバラにならないような少なくとも軽度の接着力が予備スペーサーと予備セラミック線材の間に発現するため、予備触媒担体構造体をハンドリングすることが容易になる。
好ましい態様としての、セラミック線材層の各々が、複数の相互に接触した平行なセラミック線材に隣接して、複数の相互に隔てられた平行なセラミック線材をさらに備えた触媒担体構造体は、同様に、かかる構造に予備セラミック線材と予備セラミック線材を配列し、次いで焼成することによって製造することができる。
図4〜5に例示する触媒担体構造体は、例えば、予備セラミック線材を平行に接触させて配列し、予備セラミック線材と直角に予備スペーサーを間隔を設けて配置し、次いでこれらを巻回して図4〜5に示すような予備触媒担体構造体を作成した後、焼成することによって製造することができる。この場合も、好ましくは、予備スペーサーがセラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んだ状態で予備触媒担体構造体を作成する。
好ましい態様として、セラミック線材が5〜45質量%のセラミック繊維によって強化される。このセラミック繊維は、触媒担体構造体の使用条件下で耐久性があって多孔質の触媒担体材料に補強効果を奏する任意のものが選択可能であるが、好ましくは、実質的に無孔質のセラミック材料からなるものであり、具体的には、雰囲気と温度に応じて、各種のガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等が使用される。
こうしたセラミック繊維は、1つの態様として、触媒担体材料の中に分散され、セラミック線材の中で相互に結合した多数のセラミック短繊維である。このようなセラミック短繊維で補強されたセラミック線材は、例えば、アルミナ等のセラミック粉末、水等の分散媒、及びセラミック前駆体に加えて、いわゆるチョップドファイバーと称されるセラミック短繊維を含むスラリーを作成し、上記と同様にして、このスラリーを延伸又は押出によって線状に成形した後、焼成することによって製造することができる。
ここで、セラミック短繊維をスラリーに均一に分散させて予備セラミック線材を作成し、焼成温度をセラミック繊維の軟化温度付近の適切な温度に設定すれば、焼成の過程でセラミック繊維を融合させることができ、この結果、触媒担体材料のマトリックスの中にセラミック短繊維が全体的に分散され、セラミック短繊維が相互に接触した箇所で結合した状態のセラミック線材を得ることができる。
また、こうしたセラミック繊維は、別な態様として、触媒担体材料の中に埋設され、セラミック線材の心材を形成した複数の長繊維である。このようなセラミック繊維で補強されたセラミック線材は、例えば、ヤーン、ロービング、合撚糸等の形態を有する複数のセラミック長繊維を、アルミナ等のセラミック粉末、水等の分散媒、及びセラミック前駆体を含むスラリーに浸漬した後、引き上げることによってセラミック長繊維をスラリーでコーティングし、次いで焼成することによって製造することができる。スラリーのコーティングの厚さは、スラリー粘度、セラミック長繊維の引き上げ速度等によって調整することができる。
このようにして得られる焼成前の予備セラミック線材又は焼成後のセラミック線材は、それぞれ焼成前の予備スペーサー又は焼成後のスペーサーとして使用することもできる。
好ましい態様として、図8〜10にモデル的に例示するように、触媒担体構造体(1)のセラミック線材層(2)を形成するセラミック線材(4)の各々の両端が、セラミック材料からなる側面層(7)に埋設される。
側面層(7)は、例えば、図8〜10に示すような実質的に同じ肉厚の平板状の形状を有し、それが曝される温度と雰囲気に応じて広範囲に選択されたセラミック材料から形成される。この材料は、コージェライト、ジルコニア、ムライト、炭化ケイ素等のいわゆる構造用セラミック材料のほか、アルミナ又はシリカを主成分として配合されたキャスタブル耐火物やプラスチック耐火物等の不定形耐火物が好適に使用可能であり、場合により、上記の触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料そのものが使用されることもできる。
なお、側面層を2層構造にし、セラミック線材の端部を埋設する内側を多孔質セラミック材料で形成し、外側をより緻密で高強度のセラミック材料又は金属材料によって形成することもできる。
このようなセラミック線材を埋設する側面層は、通常のセラミック体の製造方法にしたがって得ることができ、具体的には、セラミック粉末、焼結助剤又は結合剤、及び水等の分散媒等が混合されたセラミック素地を作成し、そのセラミック素地から、プレス成形、ドクターブレード、鋳込み成型等によって予備側面層を作成し、次いで焼成することによって得ることができる。
ここで、側面層には、複数のセラミック線材の各々の両端が埋設されるが、この埋設された状態は、上記の予備側面層の成形体が未だ塑性を有する状態で、図1のような予備触媒担体構造体の予備セラミック線材、又は焼成して強度を高めた触媒担体構造体のセラミック線材の各々の両端を、予備側面層に適度な深さまで侵入させ、そして焼成することによって形成することができる。
この予備側面層が塑性を有する状態は、セラミック素地に含まれる水等の分散媒が未乾燥の段階であれば維持され、この塑性を有する状態では、予備セラミック線材又はセラミック線材の端部を侵入させることでの予備側面層のクラック等の損傷発生は抑制される。そして、必要により乾燥させた後、焼成することにより、セラミック線材と側面層が結合し、図8〜10の状態の一体の触媒担体構造体を得ることができる。
あるいは、予備触媒担体構造体の予備セラミック線材の端部が予備側面層に埋設された状態は、図1のような予備触媒担体構造体又は触媒担体構造体を、予備セラミック線材又はセラミック線材を鉛直にして自立させ、予備触媒担体構造体内の間隙にセラミック素地をある高さまで流し込み、次いで、セラミック素地を乾燥させることにより得ることもできる。次いで、同様にして他方の予備側面層を形成した後、焼成し、図8〜10の状態の一体の触媒担体構造体とすることができる。
好ましい態様として、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層が、排気ガスの流れ方向にそって複数に分割されて側面層に固定され、触媒担体構造体が構成される。即ち、図1に示すように形成されたセラミック線材層とスペーサー層のユニットが、排気ガスの流れ方向にそって複数のユニットで直列に配置されて側面層に固定される。
かかる態様の触媒担体構造体は、例えば、図1のような構造の予備触媒担体構造体又は触媒担体構造体のユニットを複数作成し、これらの予備セラミック線材又はセラミック線材を、上記と同様にして、予備側面層に埋設させた後、焼成することによって作成することができる。
こうした本発明の触媒担体構造体は、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料の絶対量と表面積を格段に高め、それによって排気ガス浄化用触媒の浄化性能を格段に向上させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体として使用することができる。
また、こうした本発明の触媒担体構造体は、高いパティキュレート捕集機能を発揮し、それによって高いパティキュレート浄化作用を奏する排気ガス浄化用触媒を提供するための触媒担体構造体として使用することができる。
これらの目的において、好ましくは、セラミック線材を形成する触媒担体材料は、理論密度の20〜80%の密度と10m2/g以上の比表面積を有し、これらは、原料とするセラミック粉末を適切に選択し、焼成温度、セラミック前駆体の種類等によって調節することができる。なお、これらの密度と比表面積は、セラミック線材がセラミック繊維で補強された場合は、セラミック繊維を除く触媒担体材料の特性を意味する。
また、好ましくは、セラミック線材は10μm〜1mmの直径と30〜500mmの長さ有し、スペーサーは30μm〜3mmの直径と30〜500mmの長さを有する。
また、好ましくは、1つのセラミック線材層は20〜3000本、より好ましくは、50〜1000本のセラミック線材によって形成され、1つの触媒担体構造体は、好ましくは、10〜5000層、より好ましくは、50〜500層のセラミック線材層によって形成される。また、隣接したスペーサーの間隙Lは、排気ガスの圧力損失を考慮して適宜選択されることができるが、好ましくは、スペーサーの直径をDとして、D<L<20×Dである。
また、セラミック線材をセラミック繊維によって補強する場合、セラミック繊維は1本のフィラメントとして、好ましくは、2〜50μmの直径、より好ましくは、3〜20μmの直径を有し、好ましくは、セラミック線材の5〜45質量%の割合で短繊維又は長繊維としてセラミック線材の中に存在する。スペーサーをセラミック繊維によって補強する場合も同様である。
ここで、セラミック線材とスペーサー及び随意のセラミック繊維は、円形の横断面を有する必要はなく、楕円形や多角形等の横断面形状を有することもでき、あるいは、セラミック線材においては、その伸びる方向に平行な溝を表面に形成して表面積とパティキュレート捕集率をさらに高めることができ、スペーサーにおいては、扁平な形状とすることで、セラミック線材との接触面積をさらに高めることもできる。これらの場合のセラミック線材とスペーサー及び随意のセラミック繊維の「直径」とは、セラミック線材等の長手方向に垂直な断面の最長径と最短径の平均を意味する。
また、側面層が設けられる場合、好ましくは、側面層はセラミック線材の伸びる方向に5〜20mmの厚さを有し、各々の両端が側面層に埋設されるセラミック線材の埋設の深さは、好ましくは、1〜10mmである。
また、セラミック線材層とスペーサー層のユニットが、排気ガスの流れ方向にそって複数のユニットで直列に配置されて側面層に固定され場合、好ましくは、ユニットの数は2〜10であり、このユニットは、排気ガスの流れ方向に、好ましくは、1〜20mmの距離で離隔されて側面層に固定される。また、この場合の1つのユニットのスペーサー層は、排気ガスの流れにそって、好ましくは、10〜50mmの長さを有する。
また、セラミック線材を作成するにおいて、セラミック前駆体を含むスラリーを成形して「焼成」し、また、予備触媒担体構造体から図1に例示した触媒担体構造体を得るために「焼成」するときの温度と雰囲気は、使用する材料によって適宜選択される。ここで、セラミック線材、スペーサー、及び側面層の材料がアルミナ等の酸化物セラミックを主成分とする場合、焼成雰囲気は一般に大気雰囲気でよく、また、焼成温度は、セラミック前駆体からセラミック材料が生成する温度であって、通常は、約400〜1200℃の範囲が適切である。
このような触媒担体構造体に、白金、パラジウム、及びロジウム等から選択された触媒成分が、触媒担体材料の質量あたり約0.2〜3質量%の量で担持されて排気ガス浄化用触媒が製造される。この担持は、通常の蒸発乾固法、含浸法、吸着法、イオン交換法、還元析出法等によって行うことができる。
こうした排気ガス浄化用触媒を用い、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙に、内燃機関の排気ガスをスペーサーが伸びる方向に流通させることにより、排気ガスに含まれるNOx、CO、HC、及び/又はパティキュレートが浄化される。
ここで、排気ガスがパティキュレートを含む場合、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流れる排気ガスの流速が5m/秒以上であれば、パティキュレートは、排気ガス浄化用触媒のセラミック線材によって形成された窪みに高い割合で捕集され、この流速は、より好ましくは、7m/秒以上、さらに好ましくは、10m/秒以上である。
図11は、かかる排気ガス浄化用触媒のパティキュレート捕集機能を示すものであり、排気ガスGがセラミック線材層(2)とスペーサー層によって形成された間隙(6)を流通する間に、セラミック線材(4)の間の窪み(8)にパティキュレート(9)が捕集される状態をモデル的に示す。
図12は、図1に示した構造の本発明の排気ガス浄化用触媒を備えた排気ガス浄化装置(10)を例示する部分切欠斜視図である。この排気ガス浄化装置(10)は、排気ガス浄化用触媒(11)が、排気ガスダクト(図示せず)を備えた直方体形状の筒状部材(12)内に装着されて構成されるものである。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
実施例
実施例1
イオン交換水にγ−アルミナ粉末(比表面積約180m2/g)とアルミナゾルを添加して万能ミキサーで混練し、γ−アルミナ粉末を約45質量%、アルミナゾルを固形分換算で約2質量%含む配合物のスラリーを調製した。
このスラリーを、直径300μmの口径を有するノズルから押出しながら延伸・乾燥した後、100mmの長さに切断し、直径約120μm×長さ100mmの多数の予備セラミック線材を作成した。これらの予備セラミック線材の約500本を平行に接触させて幅60mmに配置し、100mm×60mmのサイズの第1の予備セラミック線材層を形成した。
別に、イオン交換水にγ−アルミナ粉末とアルミナゾルを添加してボールミル混合し、γ−アルミナ粉末を約40質量%、アルミナゾルを固形分換算で約1.5質量%含む配合物のスラリーを調製した。
次いで、アルミナ長繊維(直径約10μm、理論密度の98%以上の無孔質)を約100本の束にした長さ100mmのヤーンを多数本用意し、これらのヤーンを、上記のスラリーに浸漬した後、引き上げて、アルミナ長繊維の周りにスラリーがコーティングされた予備スペーサーを作成した。これらの予備スペーサーを、スラリーが未乾燥の状態で、上記の第1の予備セラミック線材層の上に約1mmの間隙を設け、予備セラミック線材と直交させて平行に配置し、第1の予備スペーサー層を形成した。
次いで、第1の予備セラミック線材層と同様にして、第1の予備スペーサー層の上に第2の予備セラミック線材層を配置し、さらに第2の予備セラミック線材層の上に第2の予備スペーサー層を配置し、これらの操作を繰り返して、150層の予備セラミック線材層と149層の予備スペーサー層が交互に配置された予備触媒担体構造体を得た。
ここで、予備セラミック線材層に上に予備スペーサーを配置して予備スペーサー層を形成するとき、及び予備スペーサー層の上に予備セラミック線材を配置して予備セラミック線材層を形成するときは、それぞれの予備スペーサーのコーティングされたスラリーが未乾燥の状態であるように、迅速に操作した。
このようして得られた予備触媒担体構造体を、700℃×2時間の大気雰囲気中の焼成に供した後、長さ約100mmのスペーサーをセラミック線材層の幅60mmに合わせて切り揃えた。これにより、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を得た。
得られた触媒担体構造体を構成するセラミック線材は、約170m2/gの比表面積と理論密度の約57%の密度を有する多孔質アルミナの触媒担体材料からなり、直径は約120μmであった。また、スペーサーは、約173m2/gの比表面積と理論密度の約57%の密度を有する約78質量%の多孔質アルミナの触媒担体材料と、約22質量%の無孔質のアルミナ長繊維からなり、直径は約270μmであった。また、スペーサーは、セラミック線材との接触箇所が変形して拡張し、セラミック線材とスペーサーは、その拡張した接触箇所で結合して一体の触媒担体構造体を形成していた。
実施例2
イオン交換水にγ−アルミナ粉末とアルミナゾルのほか、アルミナ短繊維(直径約10μm、平均長さ約200μm、理論密度の98%以上の無孔質)を添加して万能ミキサーで混練し、γ−アルミナ粉末を約30質量%、アルミナゾルを固形分換算で約1.8質量%、及びアルミナ短繊維を約15質量%含む配合物のスラリーを調製した。
このスラリーを、実施例1と同様にして、直径300μmの口径を有するノズルから押出しながら延伸・乾燥した後、切断して、多数の予備セラミック線材を作成し、次いで、これらの予備セラミック線材を平行に接触させて幅60mmに配置し、100mm×60mmのサイズの第1の予備セラミック線材層を形成した。
別に、実施例1と同様にして、γ−アルミナ粉末を約40質量%、アルミナゾルを固形分換算で約1.5質量%含む配合物のスラリーを調製し、アルミナ長繊維の長さ100mmのヤーンの周りにスラリーがコーティングされた予備スペーサーを作成し、次いで、実施例1と同様にして、これらの予備スペーサーを、スラリーが未乾燥の状態で、予備セラミック線材と直交させて平行に配置し、第1の予備スペーサー層を形成した。
次いで、実施例1と同様にして、150層の予備セラミック線材層と149層の予備スペーサー層が交互に配置された予備触媒担体構造体を得た後、700℃×2時間の大気雰囲気中の焼成に供し、次いで、長さ100mmのスペーサーをセラミック線材層の幅に合わせて切り揃えて、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を得た。
得られた触媒担体構造体を構成するセラミック線材は、約170m2/gの比表面積と理論密度の約57%の密度を有する多孔質アルミナの触媒担体材料と無孔質のアルミナ短繊維からなり、直径は約120μmであり、アルミナ短繊維は、セラミック線材に約35質量%含まれていた。また、スペーサーは、セラミック線材との接触箇所が変形して拡張し、セラミック線材とスペーサーは、その拡張した接触箇所で結合して一体の触媒担体構造体を形成していた。
実施例3
実施例1と同様にして、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を作成した。
別に、市販の高アルミナ質キャスタブル耐火物の配合物粉末を用意し、これに配合物粉末100質量部あたり20質量部の水を加えて混練し、軽度に破砕して、湿り気のある顆粒状のセラミック素地を調製した。
このセラミック素地を、縦70mm×横65mm×深さ20mmのキャビティを有する金型に入れ、約10MPaの圧力で一軸プレスして、縦70mm×横65mm×厚さ10mmの平板状成形体を作成した。次いで、この未だ塑性を有して金型の中に存在する状態の平板状成形体に、上記の触媒担体構造体を、セラミック線材を鉛直な方向にして5mmの深さまで押し込み、その状態で100℃×12時間の乾燥に供した後、平板状成形体から金型を取り外した。
同様に、上記のセラミック素地を金型に流し込んでもう1つの平板状成形体を作成し、先と反対側のセラミック線材の端部を5mmの深さまで押し込み、その状態で100℃×12時間の乾燥に供した後、平板状成形体から金型を取り外した。これにより、触媒担体構造体に相対する2つの平板状成形体を取り付けた図8の状態の構造体を得た。
次いで、この構造体を900℃×2時間の焼成に供して本発明の一体の触媒担体構造体を得た。この焼成により、平板状成形体は硬化して側面層を形成し、セラミック線材はこの側面層の中に強固に埋設されていた。
実施例4
実施例1と同様にして、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を作成した。
この触媒担体構造体に、ジニトロジアンミン白金錯体水溶液(白金濃度3質量%)を含浸し、乾燥の後、大気雰囲気中で500℃×2時間の焼成に供し、本発明の排気ガス浄化用触媒を作成した。
実施例5
実施例4で作成した本発明の排気ガス浄化用触媒の長さ100mm×幅60mmの2面以外の4面を厚さ3mmのフェルト状のセラミック断熱材で囲み、さらにその上を厚さ1mmのステンレス製薄板で覆って、図12のような状態の排気ガス浄化装置を構成した。
この排気ガス浄化装置に、図12に流れ方向を示すように、排気ガス浄化用触媒の一方の長さ100mm×幅60mmの面から他方の長さ100mm×幅60mmの面に、ディーゼルエンジンのモデル排気ガスを流通させた。
排気ガスは、約8mg/m3の濃度でパティキュレートを含んでおり、排気ガス浄化装置の出口でパティキュレート濃度を測定した。
この測定の結果、排気ガス浄化用触媒のセラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流れる排気ガスの平均流速が約1m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約10%以下、平均流速が約5m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約50%、平均流速が約7m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約75%、平均流速が約10m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約90%であった。
産業上の利用可能性
以上述べたように、本発明によると、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料の絶対量と表面積を格段に高め、それによって排気ガス浄化用触媒の浄化性能を格段に向上させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体を提供することができる。
また、かかる触媒担体構造体の製造方法を提供することができる。
また、かかる触媒担体構造体に白金等の触媒成分が担持され、それによってNOx、CO、及びHCの浄化のみならず、高いパティキュレート捕集機能を発揮し、それによって高いパティキュレート浄化作用を奏する排気ガス浄化用触媒、さらにパティキュレートを含む排気ガスの浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の触媒担体構造体を例示する概略の斜視図である。
図2は、図1のA−A線での概略の断面図である。
図3は、図1のB−B線での概略の断面図である。
図4は、本発明の触媒担体構造体の別な態様を例示する概略の斜視図である。
図5は、図4に示す触媒担体構造体の概略の断面図である。
図6は、セラミック線材層の別な態様を例示する概略の断面図である。
図7は、スペーサー層の別な態様を例示する概略の断面図である。
図8は、本発明の触媒担体構造体のさらに別な態様を例示する概略の斜視図である。
図9は、図8のA−A線での概略の断面図である。
図10は、図8のB−B線での概略の断面図である。
図11は、本発明の排気ガス浄化用触媒におけるパティキュレート捕集状態を説明する概略の図である。
図12は、本発明の排気ガス浄化用触媒を用いた排気ガス浄化装置の一例を示す概略の部分切欠斜視図である。
本発明は、触媒担体構造体、触媒担体構造体の製造方法、排気ガス浄化用触媒、及び排気ガス浄化方法に関し、とりわけ、自動車用エンジン等の内燃機関の排気ガスを浄化するための排気ガス浄化用触媒に使用される触媒担体構造体に関する。
背景技術
自動車用エンジン等の内燃機関から排出される排気ガスには、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)が含まれ、さらに、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼内燃機関の排気ガスには、粒子状物質のパティキュレート(PM)が含まれる。これらの有害物質は、環境保護の面から早期に排出量を低減させることが要請されている。
こうしたNOx、CO、HCを含む排気ガスは、一般に、三元触媒等の排気ガス浄化用触媒によって浄化される。この排気ガス浄化用触媒は、通常、ハニカム形状を有する基材(ハニカム基材)のセル壁上にセラミック材料の触媒担体が固定されて触媒担体構造体が形成され、この触媒担体構造体に白金等の触媒成分を担持して構成される。
ここで、このようなハニカム基材は、セラミック材料に限らず金属材料からも製造されることができ、特開平8−243406号公報、特開平5−138040号公報等に記載のように、板状の金属材料を利用した種々の形状の金属製ハニカム基材が提案されている。また、特開昭63−302953号等に記載のように、線状の金属材料を利用した触媒担体構造体も提案されている。
しかしながら、自動車を高速で長時間運転したときの高温雰囲気、さらに、NOx、SOxによる腐食性雰囲気のため、一般に、セラミック製ハニカム基材が使用され、また、排気ガス温度の変動に伴う熱膨張又は収縮によるクラック等の損傷を回避する必要があるため、通常は、特有に低い熱膨張率を有するコージェライトからなるハニカム基材が使用される。こうしたセラミック製ハニカム基材は、コージェライトを生成する配合物素地を押出成形した後、焼成して製造されるものが一般的であるが、特開昭59−73053号公報等に記載のように、無機質繊維の織布を利用したものも提案されている。
一方、NOx等のほかにパティキュレートが含まれる希薄燃焼内燃機関の排気ガスは、同様に、ハニカム基材を用いた触媒担体構造体に白金等の触媒成分を担持した排気ガス浄化用触媒による浄化が鋭意検討されており、この場合のハニカム基材は、通常、セルを交互に目封じしてパティキュレート濾過機能を付与したものが使用される。
こうした排気ガス浄化用触媒が高い排気ガス浄化性能を発揮するためには、触媒成分が排気ガスと十分に接触すること、したがって、触媒成分が広い面積で触媒担体上に担持されることが必要である。このため、ハニカム基材は、単位断面積あたり出来るだけ数多くのセルを有するものが望まれ、ハニカム基材に固定される触媒担体用セラミック材料としては、一般に、約180m2/gのような高い比表面積を有するγ−アルミナ(活性アルミナ)が使用される。
ところで、各種の酸化物、複合酸化物、窒化物、炭化物等のセラミック材料の中には、排気ガス雰囲気下で酸素ストレージ能、酸素イオン伝導性、酸塩基点、吸着性等の機能を発揮し、触媒作用又は助触媒作用を奏する特定のセラミック材料がある(以下「機能性セラミック材料」と称する)。
例えば、セリアのように酸化触媒の作用を有するもの、特定のペロブスカイト型複合酸化物、アルミネート型複合酸化物、及びスピネル型複合酸化物のようにNOxをN2とO2に分解する触媒作用を有するもの、セリア−ジルコニア複合酸化物のように排気ガス雰囲気の局所的変動を抑えて助触媒の役割をするものが知られており、先行技術としては、特開平5−261289号公報、特開平11−156196号公報、特開平10−314593号公報、特開平11−165067号公報等がある。
また、これらの特定のセラミック材料の触媒作用又は助触媒作用は、白金等の触媒成分を担持することで、即ち、機能性セラミック材料を触媒担体材料として使用することで一層高められることが知られている。
しかるに、排気ガス浄化用触媒の浄化性能を高めるために、ハニカム基材のセルをさらに飛躍的に縮小することは、ハニカム基材を製造する押出技術の面から限界がある。また、セルの中心間距離は、現状では、1mm以下まで縮小されているが、セルの口径をさらに縮小すると、排気ガスの流れを妨げるセル壁の横断面積が増加して排気ガスの圧力損失が増大するため、燃費の悪化を招くという問題がある。
一方、上記の特定の機能性セラミック材料の触媒作用は、白金等の貴金属に比較して低いため、意図する排気ガス浄化性能を発揮させるには、大量のセラミック材料を使用する必要があるが、ハニカム基材に固定するのでは、ハニカム基材の空間容積の面から制約がある。また、これらの機能性セラミック材料は、一般に、白金等の触媒成分を担持するのに十分な高い比表面積を有するものが得られにくいという問題がある。
したがって、本発明は、とりわけ、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料の絶対量と表面積を格段に高め、それによって排気ガス浄化用触媒の浄化性能を格段に向上させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体を提供することを目的とする。
また、高いパティキュレート捕集機能を発揮し、それによって高いパティキュレート浄化作用を奏する排気ガス浄化用触媒を得るための触媒担体構造体を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明の目的は、排気ガス浄化用触媒に使用され、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層を備えた触媒担体構造体であって、前記セラミック線材層は、複数の相互に接触して平行に伸びるセラミック線材によって形成され、前記セラミック線材は実質的に触媒担体材料からなり、前記スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、前記スペーサーは、前記セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、前記間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成する、ことを特徴とする触媒担体構造体によって達成される。
本発明において、「セラミック線材」とは、セラミック材料からなる「線材」を指称し、セラミック線材は「実質的に触媒担体材料からなり」とは、セラミック線材の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が触媒担体材料であること意味する。また、「触媒担体材料」とは、触媒成分を担持するのに適する比表面積の高い触媒担体用セラミック材料、及び触媒成分が担持されることで触媒作用又は助触媒作用が高められる機能性セラミック材料の双方を包含する。
また、「セラミック線材層」とは、複数の接触したセラミック線材の配列によって形成された「層」を指称し、「スペーサー」とは、複数のセラミック線材層の各層の間に連通する間隙を設けるために、セラミック線材層の各層の間に介在する材料を指称し、排気ガス雰囲気下で耐久性のあるセラミック材料からなるものが適切であり、「スペーサー層」とは、複数のスペーサーの配列によって形成され、一方向に連通した間隙を有する「層」を指称する。
かかる構成の触媒担体構造体においては、従来よりも触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体材料の絶対量と表面積が格段に高められることから、触媒成分が担持され得る表面積が格段に高められた、あるいは機能性セラミック材料の触媒作用又は助触媒作用が格段に高められた触媒担体構造体が提供される。
この触媒担体材料の絶対量を格段に高めることができる理由は、セラミック線材が実質的に触媒担体からなり、複数の相互に接触したセラミック線材によってセラミック線材層が形成されるためである。即ち、従来技術のようにハニカム基材を使用せず、触媒担体材料そのものでセラミック線材が形成され、かつセラミック線材は、接触して存在することから、単位空間体積あたり高い体積割合で存在することができ、したがって、触媒担体構造体の単位空間体積に占める触媒担体材料の空間体積が格段に増加されるためである。
触媒担体材料の表面積を格段に高めることができる理由は、次の通りである。
排気ガスが、接触するセラミック線材からなるセラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流通するため、即ち、セラミック線材の側面とスペーサーの側面を内壁とする間隙が排気ガスの流路となることから、排気ガスの流路が実質的に触媒担体材料によって形成されるためである。
また、セラミック線材層の実質的に全ての外側表面に排気ガスが接触することができるためである。即ち、従来のハニカム基材を用いた触媒担体構造体では、ハニカム基材に固定されたセラミック材料のセル壁の近傍には排気ガスが流通しないため、セル壁の近傍のセラミック材料には排気ガスが接触しないが、本発明の触媒担体構造体では、セラミック線材の全ての外側表面に排気ガスが接触することができるためである。さらに、セラミック線材は、製造技術面からの直径の制約が少ないためである。即ち、セラミック線材は、押出によって製造されるハニカム基材のセル壁の厚さよりも格段に小さい、細くは直径数μmのものも製造可能なためである。
これらのセラミック線材は、低い熱膨張率を有する材料に限定されず、触媒担体材料として適する各種の酸化物や複合酸化物等から広範囲に選択されたセラミック材料であることができる。この理由は、個々のセラミック線材は、単純形状であって体積が顕著に小さく、したがって、割合に高い熱膨張率を有する材料であっても、温度の変動に伴う熱応力が桁違いに小さいためである。
なお、スペーサーもまたこうした触媒担体材料から構成されることができ、それによって、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体材料の絶対量と表面積をさらに増大させることができる。
これらの触媒担体材料として適するセラミック材料は、一般に、比表面積の高い多孔質体であって強度が比較的低い。しかるに、本発明の触媒担体構造体においては、セラミック線材は、相互に接触して平行に伸びるため、相互に支持して破損を生じにくくすることから、かつスペーサーは、接触したセラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に配置されるため、単位空間体積あたり数多くの接点でセラミック線材と接触することから、全体として触媒担体構造体として十分な強度の一体の構造体を形成することが可能となる。また、セラミック線材が相互に接触することから、コンパクトな触媒担体構造体をもたらすことができる。
こうした本発明の触媒担体構造体は、排気ガス浄化用触媒を流通する排気ガスの圧力損失が増大するといった問題は、著しく軽減される。
この理由は、スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、これらのスペーサーは、セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、この間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成するためである。即ち、排気ガスの流路は、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された一方向に連通する間隙であって、この間隙のサイズは、十分に低い排気ガスの圧力損失となるように、スペーサーの径とスペーサーの間隔によって広範囲に調整可能なためである。また、ハニカム基材のセル壁のような、触媒成分が担持され得る材料以外の材料が排気ガスの流路に存在しないためである。
また、本発明の触媒担体構造体は、同じく、ハニカム基材のセル壁のような、触媒成分が担持され得る材料以外の材料が排気ガスの流路に存在しないという理由により、触媒担体材料の単位質量あたりの熱容量が顕著に低下された触媒担体構造体を構成することができる。
さらに、こうした本発明の触媒担体構造体に白金等の触媒成分が担持されてなる排気ガス浄化用触媒は、パティキュレートが含まれるディーゼルエンジン等の希薄燃焼内燃機関の排気ガスに対して、パティキュレート捕集機能を発揮することができる。この理由は次のように考えられる。
排気ガスが一定の速度以上で流通すると、排気ガスの流れに乱れが生じて、各々のパティキュレートはランダムな方向に流動する。一方、排気ガス全体の速度及び方向と、各々のパティキュレートの速度及び方向とは異なり、排気ガスの平均速度によらず、接触するセラミック線材によって形成された窪みの中には排気ガス速度が極めて遅い局所領域が発生する。このため、その排気ガス速度が極めて遅い局所領域に到達したパティキュレートは、その局所領域に堆積し、そして、パティキュレートに含まれる可溶有機成分(SOF)の付着力が、その堆積したパティキュレートの再移動を抑制するものと考えられる。
即ち、こうした排気ガス浄化用触媒は、セラミック線材層とスペーサー層によって形成される間隙が排気ガスの流路を確保しながら、パティキュレートフィルタとして機能することができる。
かかる排気ガス浄化用触媒のパティキュレート捕集機能は、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流れる排気ガスの速度が高くなるにつれてより顕著になるといった特有のものである。この理由は、排気ガスの速度が高くなるにつれて、排気ガスの流れの乱れが増大し、したがって、上記の排気ガス速度が極めて遅い局所領域に向かうパティキュレートの速度成分が高められるためと考えられる。
触媒担体構造体を構成するセラミック線材層は、1つの態様として、図1〜3に示すように、複数の一方向に伸びる平行なセラミック線材によって形成され、別な態様として、図4〜5に示すように、複数の円形又は長円形に巻回された平行なセラミック線材によって形成される。
好ましい態様として、セラミック線材層の各々が、複数の相互に接触した平行なセラミック線材に隣接して、複数の相互に隔てられた平行なセラミック線材をさらに備える。かかる態様においては、上述のように、複数の相互に接触した平行なセラミック線材がパティキュレート捕集機能を発揮することができ、一方、複数の相互に隔てられた平行なセラミック線材では、こうしたパティキュレート捕集機能が顕著ではない。
このため、かかる態様における触媒担体構造体に触媒成分を担持して調製された排気ガス浄化用触媒は、パティキュレート捕集機能を有する領域と有しない領域を備えることができる。したがって、例えば、パティキュレートの酸化浄化を促進するNO2のようなガス成分を、上流のパティキュレート捕集機能を有しない領域に担持された特定の触媒成分によって発生させ、その下流にパティキュレート捕集機能を有する領域を配置するといった、パティキュレートの効率的な浄化を目的とした排気ガス浄化用触媒の設計が可能となる。
好ましい態様として、セラミック線材が、5〜45質量%のセラミック繊維によって補強される。これにより、多孔質の比較的強度の低い触媒担体材料を効果的に補強することができる。ここで、「セラミック繊維」とは、セラミック材料を含んでなる「繊維」を指称し、触媒担体材料に補強作用を奏する材料であり、好ましくは、直径数μm〜数10μmの実質的に無孔質のセラミック材料からなる。
1つの好ましい態様として、こうしたセラミック繊維は、触媒担体材料の中に分散され、セラミック線材の中で相互に接合した多数の短繊維である。ここで、「短繊維」とは、数10μm〜数mmの長さを有する繊維を指称する。この態様においては、例えば、いわゆるチョップドファイバーと称されるようなセラミック短繊維が、触媒担体材料のマトリックスの中に全体的に分散され、相互に接触した箇所で結合して存在する。したがって、マトリックスの中でのセラミック短繊維の結合により、セラミック繊維によるセラミック線材の補強効果を格段に高めることができる。
別の好ましい態様として、セラミック繊維は、触媒担体材料の中に埋設され、セラミック線材の心材を形成した複数の長繊維として存在する。ここで、「長繊維」とは、連続して伸びる繊維を指称し、好ましくは、セラミック線材の長さにわたって伸びる。この態様においては、複数の長繊維が心材として存在することにより、触媒担体材料と排気ガスとの接触面積を実質的に低下させることなく、セラミック繊維の単位質量あたりの補強作用が向上するとともに、触媒担体材料の中に埋設されたセラミック繊維の表面積が高められることから、触媒担体材料とセラミック繊維との結合性を高めることができる。
なお、スペーサーもまた、同様にして触媒担体材料がセラミック繊維によって補強されたものであれば、触媒担体材料の絶対量と表面積をさらに増大させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体を得ることができる。
好ましい態様として、セラミック線材の各々の両端がセラミック材料からなる側面層に埋設される。ここで、「側面層」とは、セラミック線材の端部を埋設し、触媒担体構造体の少なくとも一部の側面を形成する「層」を指称する。かかる態様においては、セラミック線材は、各々の両端が強固に固定され、かつセラミック線材とスペーサーは多数の接点で互いに支持することができる。したがって、セラミック線材とスペーサーが比較的強度の低い多孔質材料からなっても、こうした構成により、全体として高強度で一体の触媒担体構造体とすることができる。
好ましい態様として、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層が、排気ガスの流れ方向にそって複数のユニットに分割される。かかる態様においては、排気ガスの急激な温度変化が触媒担体構造体に及ぼす熱応力を低下させ、温度変化に伴う触媒担体構造体の損傷を抑制することができる。また、排気ガスは、ユニット間のスペースを流通した後、次のユニットのセラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙に流入するため、この間隙を流れるときの排気ガスの流れの乱れが増大されることから、パティキュレートの捕集率をより高めることができる。
好ましい態様として、セラミック線材とスペーサーが、相互に接触する箇所で結合する。かかる態様においては、触媒担体構造体の一体性をより高めることができる。
好ましい態様として、セラミック線材が10μm〜1mmの直径を有し、スペーサーが30μm〜3mmの直径を有する。かかる態様においては、排気ガスの圧力損失を過度に高めることなく、触媒担体材料の絶対量と表面積が格段に高められた触媒担体構造体を提供することができる。
好ましい態様として、触媒担体材料が、アルミナ、ジルコニア、セリア、ジルコニア−セリア、アルミナ−セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−イットリア、ジルコニア−カルシア、ペロブスカイト型複合酸化物、アルミネート型複合酸化物、及びスピネル型複合酸化物から選択された少なくとも1種の酸化物セラミックである。こうした酸化物セラミックは、触媒担体材料として適性があり、またそれ自体が触媒作用もしくは助触媒作用を発揮することもある。
こうした本発明の触媒担体構造体は、例えば、予備セラミック線材からなる複数の予備セラミック線材層と予備スペーサーからなる複数の予備スペーサー層を交互に配置して予備触媒担体構造体を作成し、次いで予備触媒担体構造体を焼成する方法によって製造することができる。ここで、「予備セラミック線材」、「予備スペーサー」等の「予備」とは、焼成前の状態のものを指称し、「セラミック前駆体」とは、焼成によりセラミック材料を生成する物質を指称する。
かかる触媒担体構造体の製造方法において、好ましくは、予備スペーサーが、セラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んでなる。この場合、予備スペーサーの配合物に含まれるセラミック前駆体が、焼成によりセラミック材料に変化することで、焼成後にスペーサーとセラミック線材の結合が発現し、さらに、予備スペーサーの塑性が、予備セラミック線材との接触箇所における予備スペーサーのクラック等の損傷を伴わない変形をもたらすことができる。このため、焼成後にスペーサーとセラミック線材が拡張された結合領域を有し、より強固な一体の触媒担体構造体を得ることができる。
好ましい態様として、セラミック前駆体の配合物が液体の分散媒を含み、この分散媒が未乾燥の状態で、予備セラミック線材層と予備スペーサー層を交互に配置する。かかる分散媒が未乾燥の状態であれば、配合物は塑性を有するとともに、予備スペーサーと予備セラミック線材を接触させた状態から分散媒が乾燥すると、少なくとも軽度の接着力が予備スペーサーと予備セラミック線材の間に発現する。このため、損傷を招くことなく予備触媒担体構造体をハンドリングすることが容易になり、より安定して強固な一体の触媒担体構造体を得ることができる。
このようにして得られた触媒担体構造体に、NOxの還元、COとHCの酸化、及び/又はパティキュレートの燃焼に有効な白金、パラジウム、及びロジウムからなる群より選択された少なくとも1種の触媒成分が担持されて排気ガス浄化用触媒が製造される。
排気ガスは、かかる排気ガス浄化用触媒のセラミック線材層とスペーサー層によって形成され、スペーサーが伸びる方向に連通した間隙を流通する間に浄化される。
排気ガスがパティキュレートを含む場合、この間隙を流れる排気ガスの平均流速を約5m/秒以上とすることで、排気ガス浄化用触媒にパティキュレート捕集機能を顕著に発揮させることができる。排気ガス浄化用触媒の接触するセラミック線材によって形成された窪みの中に捕集されたパティキュレートは、触媒成分の作用に長時間にわたって曝され、NOx等の有害物質とともに排気ガスの流れの中で浄化されることができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明の触媒担体構造体は、排気ガス浄化用触媒に使用され、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層を備えた触媒担体構造体であって、前記セラミック線材層は、複数の相互に接触して平行に伸びるセラミック線材によって形成され、前記セラミック線材は実質的に触媒担体材料からなり、前記スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、前記スペーサーは、前記セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、前記間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成する。
図1〜3は、こうした触媒担体構造体(1)であって、セラミック線材層(2)が複数の一方向に伸びる平行なセラミック線材(4)によって形成された態様をモデル的に例示する。図1は、かかる態様の触媒担体構造体(1)の斜視図、図2は、図1のA−A線での断面図、図3は、図1のB−B線での断面図である。
図1〜3に示すように、スペーサー層(3)は、間隔(6)を設けて配置されたスペーサー(5)によって形成され、排気ガスGは、この間隔(6)を流路として流れる。
図4〜5は、別な態様の触媒担体構造体(1)であって、セラミック線材層(2)が複数の円形又は長円形に巻回された平行なセラミック線材(4)によって形成された態様をモデル的に例示する。図4は、かかる態様の触媒担体構造体(1)の斜視図、図5は、図4の触媒担体構造体(1)の排気ガスの流れ方向に見た断面図である。この態様においても、同様に、排気ガスはスペーサー層(3)の間隔(6)を流路として流れる。
図1〜5に例示するように、セラミック線材層(2)は、好ましくは、実質的に同じ直径のセラミック線材(4)によって形成され、同様に、スペーサー層(3)は、実質的に同じ直径のスペーサー(5)によって形成される。
ここで、セラミック線材層(2)は、図1〜5にモデル的に示すように、セラミック線材を一列に配列して形成する態様だけではなく、図6にモデル的に示すように、セラミック線材(4)を重ねて配列して形成することもできる。また、スペーサー層(3)は、図7にモデル的に例示するように、スペーサー層(3)の長さよりも短いスペーサー(5)の組み合わせによって形成することもできる。
セラミック線材層を形成するセラミック線材は、排気ガス雰囲気中で耐久性があり、触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料として適する任意のセラミック材料から形成されることができ、酸化物に限らず、炭化物や窒化物等を含んで形成されることもできる。
好ましくは、セラミック線材は、アルミナ、ジルコニア、セリア、ジルコニア−セリア、アルミナ−セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−イットリア、ジルコニア−カルシア、ペロブスカイト型複合酸化物、アルミネート型複合酸化物、及びスピネル型複合酸化物から選択された少なくとも1種の酸化物セラミックを含んでなる。
このようなセラミック線材は、例えば、アルミナ等のセラミック粉末を含む予備セラミック線材を作成し、これを焼成することによって製造することができる。
具体的には、アルミナ等のセラミック粉末と水等の液体の分散媒を混合して、配合物のスラリーを作成し、このスラリーに必要により、セラミック前駆体、及びポリビニルアルコールやポリアクリルアミドのような曳糸性の高いポリマーを添加し、直径数mm以下のノズルからスラリーを押出しながら延伸し、スラリーを線状に加工することによって予備セラミック線材を作成することができる。あるいは、目的とする予備セラミック線材と同等の直径の口径を有するノズルから単にスラリーを押出することによって作成することもできる。これらの予備セラミック線材の直径は、ノズル口径、延伸速度等によって調節することができる。
そして、必要により、分散媒を逃散させる乾燥に供することによって、自己支持性を有する未焼成の予備セラミック線材とすることができ、次いで焼成に供することによって、より高い自己支持性を有するセラミック線材とすることができる。
このようにして得られる焼成前の予備セラミック線材又は焼成後のセラミック線材は、それぞれ焼成前の予備スペーサー又は焼成後のスペーサーとして使用することもできる。
ここで、「セラミック前駆体」とは、焼成によりセラミック材料を生成する物質であり、常温で液体の物質、又は常温で液体の溶液を形成する物質が適切である。例えば、セラミック材料がアルミナであれば、「セラミック前駆体」には、アルミナゾルのほか、アルミニウムメトキシドやアルミニウムエトキシドのようなアルコール等に可溶なアルミニウム化合物、硝酸アルミニウムや塩化アルミニウムのような水等に可溶なアルミニウム化合物が挙げられ、他のセラミック材料についても同様である。
こうした「セラミック前駆体」は、液体から固体のセラミック材料に変化するとアルミナ等のセラミック粉末を結合させる作用を奏する。このため、アルミナ等のセラミック粉末、水等の分散媒、及びセラミック前駆体を含むスラリーを乾燥・焼成することにより、触媒担体構造体を構成するのに必要な強度を有し、比表面積の高い多孔質のセラミック材料を生成させることができる。
図1〜3に例示する触媒担体構造体は、例えば、上記のようにして作成した複数の予備セラミック線材と複数の予備スペーサーを配列して、予備セラミック線材層と予備スペーサー層が交互に配置された図1のような構造の予備触媒担体構造体を作成し、次いで焼成することによって製造することができる。得られる触媒担体構造体は、焼成によって若干の寸法収縮が生じることがあるほか、予備触媒担体構造体と実質的に同じ形状を有する。
この場合、予備スペーサーがセラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んだ状態で、予備セラミック線材層と予備スペーサー層を交互に配置すれば、セラミック前駆体の作用によって焼成によりスペーサーとセラミック線材に結合が発現し、かつ配合物が塑性を有することで、スペーサーとセラミック線材の結合箇所を拡張することができる。
この予備スペーサーがセラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んだ状態とは、例えば、上記のように予備スペーサーを、配合物のスラリーを押出及び/又は延伸して作成する場合、この予備スペーサーが未だ液体の分散媒を含んでおり、軽度に負荷を与えると、クラック等の損傷を招くことなく塑性変形が可能な状態が挙げられる。
ここで、予備スペーサーと予備セラミック線材を接触させて予備スペーサーを塑性変形させた後に分散媒が乾燥すると、バラバラにならないような少なくとも軽度の接着力が予備スペーサーと予備セラミック線材の間に発現するため、予備触媒担体構造体をハンドリングすることが容易になる。
好ましい態様としての、セラミック線材層の各々が、複数の相互に接触した平行なセラミック線材に隣接して、複数の相互に隔てられた平行なセラミック線材をさらに備えた触媒担体構造体は、同様に、かかる構造に予備セラミック線材と予備セラミック線材を配列し、次いで焼成することによって製造することができる。
図4〜5に例示する触媒担体構造体は、例えば、予備セラミック線材を平行に接触させて配列し、予備セラミック線材と直角に予備スペーサーを間隔を設けて配置し、次いでこれらを巻回して図4〜5に示すような予備触媒担体構造体を作成した後、焼成することによって製造することができる。この場合も、好ましくは、予備スペーサーがセラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んだ状態で予備触媒担体構造体を作成する。
好ましい態様として、セラミック線材が5〜45質量%のセラミック繊維によって強化される。このセラミック繊維は、触媒担体構造体の使用条件下で耐久性があって多孔質の触媒担体材料に補強効果を奏する任意のものが選択可能であるが、好ましくは、実質的に無孔質のセラミック材料からなるものであり、具体的には、雰囲気と温度に応じて、各種のガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等が使用される。
こうしたセラミック繊維は、1つの態様として、触媒担体材料の中に分散され、セラミック線材の中で相互に結合した多数のセラミック短繊維である。このようなセラミック短繊維で補強されたセラミック線材は、例えば、アルミナ等のセラミック粉末、水等の分散媒、及びセラミック前駆体に加えて、いわゆるチョップドファイバーと称されるセラミック短繊維を含むスラリーを作成し、上記と同様にして、このスラリーを延伸又は押出によって線状に成形した後、焼成することによって製造することができる。
ここで、セラミック短繊維をスラリーに均一に分散させて予備セラミック線材を作成し、焼成温度をセラミック繊維の軟化温度付近の適切な温度に設定すれば、焼成の過程でセラミック繊維を融合させることができ、この結果、触媒担体材料のマトリックスの中にセラミック短繊維が全体的に分散され、セラミック短繊維が相互に接触した箇所で結合した状態のセラミック線材を得ることができる。
また、こうしたセラミック繊維は、別な態様として、触媒担体材料の中に埋設され、セラミック線材の心材を形成した複数の長繊維である。このようなセラミック繊維で補強されたセラミック線材は、例えば、ヤーン、ロービング、合撚糸等の形態を有する複数のセラミック長繊維を、アルミナ等のセラミック粉末、水等の分散媒、及びセラミック前駆体を含むスラリーに浸漬した後、引き上げることによってセラミック長繊維をスラリーでコーティングし、次いで焼成することによって製造することができる。スラリーのコーティングの厚さは、スラリー粘度、セラミック長繊維の引き上げ速度等によって調整することができる。
このようにして得られる焼成前の予備セラミック線材又は焼成後のセラミック線材は、それぞれ焼成前の予備スペーサー又は焼成後のスペーサーとして使用することもできる。
好ましい態様として、図8〜10にモデル的に例示するように、触媒担体構造体(1)のセラミック線材層(2)を形成するセラミック線材(4)の各々の両端が、セラミック材料からなる側面層(7)に埋設される。
側面層(7)は、例えば、図8〜10に示すような実質的に同じ肉厚の平板状の形状を有し、それが曝される温度と雰囲気に応じて広範囲に選択されたセラミック材料から形成される。この材料は、コージェライト、ジルコニア、ムライト、炭化ケイ素等のいわゆる構造用セラミック材料のほか、アルミナ又はシリカを主成分として配合されたキャスタブル耐火物やプラスチック耐火物等の不定形耐火物が好適に使用可能であり、場合により、上記の触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料そのものが使用されることもできる。
なお、側面層を2層構造にし、セラミック線材の端部を埋設する内側を多孔質セラミック材料で形成し、外側をより緻密で高強度のセラミック材料又は金属材料によって形成することもできる。
このようなセラミック線材を埋設する側面層は、通常のセラミック体の製造方法にしたがって得ることができ、具体的には、セラミック粉末、焼結助剤又は結合剤、及び水等の分散媒等が混合されたセラミック素地を作成し、そのセラミック素地から、プレス成形、ドクターブレード、鋳込み成型等によって予備側面層を作成し、次いで焼成することによって得ることができる。
ここで、側面層には、複数のセラミック線材の各々の両端が埋設されるが、この埋設された状態は、上記の予備側面層の成形体が未だ塑性を有する状態で、図1のような予備触媒担体構造体の予備セラミック線材、又は焼成して強度を高めた触媒担体構造体のセラミック線材の各々の両端を、予備側面層に適度な深さまで侵入させ、そして焼成することによって形成することができる。
この予備側面層が塑性を有する状態は、セラミック素地に含まれる水等の分散媒が未乾燥の段階であれば維持され、この塑性を有する状態では、予備セラミック線材又はセラミック線材の端部を侵入させることでの予備側面層のクラック等の損傷発生は抑制される。そして、必要により乾燥させた後、焼成することにより、セラミック線材と側面層が結合し、図8〜10の状態の一体の触媒担体構造体を得ることができる。
あるいは、予備触媒担体構造体の予備セラミック線材の端部が予備側面層に埋設された状態は、図1のような予備触媒担体構造体又は触媒担体構造体を、予備セラミック線材又はセラミック線材を鉛直にして自立させ、予備触媒担体構造体内の間隙にセラミック素地をある高さまで流し込み、次いで、セラミック素地を乾燥させることにより得ることもできる。次いで、同様にして他方の予備側面層を形成した後、焼成し、図8〜10の状態の一体の触媒担体構造体とすることができる。
好ましい態様として、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層が、排気ガスの流れ方向にそって複数に分割されて側面層に固定され、触媒担体構造体が構成される。即ち、図1に示すように形成されたセラミック線材層とスペーサー層のユニットが、排気ガスの流れ方向にそって複数のユニットで直列に配置されて側面層に固定される。
かかる態様の触媒担体構造体は、例えば、図1のような構造の予備触媒担体構造体又は触媒担体構造体のユニットを複数作成し、これらの予備セラミック線材又はセラミック線材を、上記と同様にして、予備側面層に埋設させた後、焼成することによって作成することができる。
こうした本発明の触媒担体構造体は、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料の絶対量と表面積を格段に高め、それによって排気ガス浄化用触媒の浄化性能を格段に向上させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体として使用することができる。
また、こうした本発明の触媒担体構造体は、高いパティキュレート捕集機能を発揮し、それによって高いパティキュレート浄化作用を奏する排気ガス浄化用触媒を提供するための触媒担体構造体として使用することができる。
これらの目的において、好ましくは、セラミック線材を形成する触媒担体材料は、理論密度の20〜80%の密度と10m2/g以上の比表面積を有し、これらは、原料とするセラミック粉末を適切に選択し、焼成温度、セラミック前駆体の種類等によって調節することができる。なお、これらの密度と比表面積は、セラミック線材がセラミック繊維で補強された場合は、セラミック繊維を除く触媒担体材料の特性を意味する。
また、好ましくは、セラミック線材は10μm〜1mmの直径と30〜500mmの長さ有し、スペーサーは30μm〜3mmの直径と30〜500mmの長さを有する。
また、好ましくは、1つのセラミック線材層は20〜3000本、より好ましくは、50〜1000本のセラミック線材によって形成され、1つの触媒担体構造体は、好ましくは、10〜5000層、より好ましくは、50〜500層のセラミック線材層によって形成される。また、隣接したスペーサーの間隙Lは、排気ガスの圧力損失を考慮して適宜選択されることができるが、好ましくは、スペーサーの直径をDとして、D<L<20×Dである。
また、セラミック線材をセラミック繊維によって補強する場合、セラミック繊維は1本のフィラメントとして、好ましくは、2〜50μmの直径、より好ましくは、3〜20μmの直径を有し、好ましくは、セラミック線材の5〜45質量%の割合で短繊維又は長繊維としてセラミック線材の中に存在する。スペーサーをセラミック繊維によって補強する場合も同様である。
ここで、セラミック線材とスペーサー及び随意のセラミック繊維は、円形の横断面を有する必要はなく、楕円形や多角形等の横断面形状を有することもでき、あるいは、セラミック線材においては、その伸びる方向に平行な溝を表面に形成して表面積とパティキュレート捕集率をさらに高めることができ、スペーサーにおいては、扁平な形状とすることで、セラミック線材との接触面積をさらに高めることもできる。これらの場合のセラミック線材とスペーサー及び随意のセラミック繊維の「直径」とは、セラミック線材等の長手方向に垂直な断面の最長径と最短径の平均を意味する。
また、側面層が設けられる場合、好ましくは、側面層はセラミック線材の伸びる方向に5〜20mmの厚さを有し、各々の両端が側面層に埋設されるセラミック線材の埋設の深さは、好ましくは、1〜10mmである。
また、セラミック線材層とスペーサー層のユニットが、排気ガスの流れ方向にそって複数のユニットで直列に配置されて側面層に固定され場合、好ましくは、ユニットの数は2〜10であり、このユニットは、排気ガスの流れ方向に、好ましくは、1〜20mmの距離で離隔されて側面層に固定される。また、この場合の1つのユニットのスペーサー層は、排気ガスの流れにそって、好ましくは、10〜50mmの長さを有する。
また、セラミック線材を作成するにおいて、セラミック前駆体を含むスラリーを成形して「焼成」し、また、予備触媒担体構造体から図1に例示した触媒担体構造体を得るために「焼成」するときの温度と雰囲気は、使用する材料によって適宜選択される。ここで、セラミック線材、スペーサー、及び側面層の材料がアルミナ等の酸化物セラミックを主成分とする場合、焼成雰囲気は一般に大気雰囲気でよく、また、焼成温度は、セラミック前駆体からセラミック材料が生成する温度であって、通常は、約400〜1200℃の範囲が適切である。
このような触媒担体構造体に、白金、パラジウム、及びロジウム等から選択された触媒成分が、触媒担体材料の質量あたり約0.2〜3質量%の量で担持されて排気ガス浄化用触媒が製造される。この担持は、通常の蒸発乾固法、含浸法、吸着法、イオン交換法、還元析出法等によって行うことができる。
こうした排気ガス浄化用触媒を用い、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙に、内燃機関の排気ガスをスペーサーが伸びる方向に流通させることにより、排気ガスに含まれるNOx、CO、HC、及び/又はパティキュレートが浄化される。
ここで、排気ガスがパティキュレートを含む場合、セラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流れる排気ガスの流速が5m/秒以上であれば、パティキュレートは、排気ガス浄化用触媒のセラミック線材によって形成された窪みに高い割合で捕集され、この流速は、より好ましくは、7m/秒以上、さらに好ましくは、10m/秒以上である。
図11は、かかる排気ガス浄化用触媒のパティキュレート捕集機能を示すものであり、排気ガスGがセラミック線材層(2)とスペーサー層によって形成された間隙(6)を流通する間に、セラミック線材(4)の間の窪み(8)にパティキュレート(9)が捕集される状態をモデル的に示す。
図12は、図1に示した構造の本発明の排気ガス浄化用触媒を備えた排気ガス浄化装置(10)を例示する部分切欠斜視図である。この排気ガス浄化装置(10)は、排気ガス浄化用触媒(11)が、排気ガスダクト(図示せず)を備えた直方体形状の筒状部材(12)内に装着されて構成されるものである。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
実施例
実施例1
イオン交換水にγ−アルミナ粉末(比表面積約180m2/g)とアルミナゾルを添加して万能ミキサーで混練し、γ−アルミナ粉末を約45質量%、アルミナゾルを固形分換算で約2質量%含む配合物のスラリーを調製した。
このスラリーを、直径300μmの口径を有するノズルから押出しながら延伸・乾燥した後、100mmの長さに切断し、直径約120μm×長さ100mmの多数の予備セラミック線材を作成した。これらの予備セラミック線材の約500本を平行に接触させて幅60mmに配置し、100mm×60mmのサイズの第1の予備セラミック線材層を形成した。
別に、イオン交換水にγ−アルミナ粉末とアルミナゾルを添加してボールミル混合し、γ−アルミナ粉末を約40質量%、アルミナゾルを固形分換算で約1.5質量%含む配合物のスラリーを調製した。
次いで、アルミナ長繊維(直径約10μm、理論密度の98%以上の無孔質)を約100本の束にした長さ100mmのヤーンを多数本用意し、これらのヤーンを、上記のスラリーに浸漬した後、引き上げて、アルミナ長繊維の周りにスラリーがコーティングされた予備スペーサーを作成した。これらの予備スペーサーを、スラリーが未乾燥の状態で、上記の第1の予備セラミック線材層の上に約1mmの間隙を設け、予備セラミック線材と直交させて平行に配置し、第1の予備スペーサー層を形成した。
次いで、第1の予備セラミック線材層と同様にして、第1の予備スペーサー層の上に第2の予備セラミック線材層を配置し、さらに第2の予備セラミック線材層の上に第2の予備スペーサー層を配置し、これらの操作を繰り返して、150層の予備セラミック線材層と149層の予備スペーサー層が交互に配置された予備触媒担体構造体を得た。
ここで、予備セラミック線材層に上に予備スペーサーを配置して予備スペーサー層を形成するとき、及び予備スペーサー層の上に予備セラミック線材を配置して予備セラミック線材層を形成するときは、それぞれの予備スペーサーのコーティングされたスラリーが未乾燥の状態であるように、迅速に操作した。
このようして得られた予備触媒担体構造体を、700℃×2時間の大気雰囲気中の焼成に供した後、長さ約100mmのスペーサーをセラミック線材層の幅60mmに合わせて切り揃えた。これにより、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を得た。
得られた触媒担体構造体を構成するセラミック線材は、約170m2/gの比表面積と理論密度の約57%の密度を有する多孔質アルミナの触媒担体材料からなり、直径は約120μmであった。また、スペーサーは、約173m2/gの比表面積と理論密度の約57%の密度を有する約78質量%の多孔質アルミナの触媒担体材料と、約22質量%の無孔質のアルミナ長繊維からなり、直径は約270μmであった。また、スペーサーは、セラミック線材との接触箇所が変形して拡張し、セラミック線材とスペーサーは、その拡張した接触箇所で結合して一体の触媒担体構造体を形成していた。
実施例2
イオン交換水にγ−アルミナ粉末とアルミナゾルのほか、アルミナ短繊維(直径約10μm、平均長さ約200μm、理論密度の98%以上の無孔質)を添加して万能ミキサーで混練し、γ−アルミナ粉末を約30質量%、アルミナゾルを固形分換算で約1.8質量%、及びアルミナ短繊維を約15質量%含む配合物のスラリーを調製した。
このスラリーを、実施例1と同様にして、直径300μmの口径を有するノズルから押出しながら延伸・乾燥した後、切断して、多数の予備セラミック線材を作成し、次いで、これらの予備セラミック線材を平行に接触させて幅60mmに配置し、100mm×60mmのサイズの第1の予備セラミック線材層を形成した。
別に、実施例1と同様にして、γ−アルミナ粉末を約40質量%、アルミナゾルを固形分換算で約1.5質量%含む配合物のスラリーを調製し、アルミナ長繊維の長さ100mmのヤーンの周りにスラリーがコーティングされた予備スペーサーを作成し、次いで、実施例1と同様にして、これらの予備スペーサーを、スラリーが未乾燥の状態で、予備セラミック線材と直交させて平行に配置し、第1の予備スペーサー層を形成した。
次いで、実施例1と同様にして、150層の予備セラミック線材層と149層の予備スペーサー層が交互に配置された予備触媒担体構造体を得た後、700℃×2時間の大気雰囲気中の焼成に供し、次いで、長さ100mmのスペーサーをセラミック線材層の幅に合わせて切り揃えて、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を得た。
得られた触媒担体構造体を構成するセラミック線材は、約170m2/gの比表面積と理論密度の約57%の密度を有する多孔質アルミナの触媒担体材料と無孔質のアルミナ短繊維からなり、直径は約120μmであり、アルミナ短繊維は、セラミック線材に約35質量%含まれていた。また、スペーサーは、セラミック線材との接触箇所が変形して拡張し、セラミック線材とスペーサーは、その拡張した接触箇所で結合して一体の触媒担体構造体を形成していた。
実施例3
実施例1と同様にして、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を作成した。
別に、市販の高アルミナ質キャスタブル耐火物の配合物粉末を用意し、これに配合物粉末100質量部あたり20質量部の水を加えて混練し、軽度に破砕して、湿り気のある顆粒状のセラミック素地を調製した。
このセラミック素地を、縦70mm×横65mm×深さ20mmのキャビティを有する金型に入れ、約10MPaの圧力で一軸プレスして、縦70mm×横65mm×厚さ10mmの平板状成形体を作成した。次いで、この未だ塑性を有して金型の中に存在する状態の平板状成形体に、上記の触媒担体構造体を、セラミック線材を鉛直な方向にして5mmの深さまで押し込み、その状態で100℃×12時間の乾燥に供した後、平板状成形体から金型を取り外した。
同様に、上記のセラミック素地を金型に流し込んでもう1つの平板状成形体を作成し、先と反対側のセラミック線材の端部を5mmの深さまで押し込み、その状態で100℃×12時間の乾燥に供した後、平板状成形体から金型を取り外した。これにより、触媒担体構造体に相対する2つの平板状成形体を取り付けた図8の状態の構造体を得た。
次いで、この構造体を900℃×2時間の焼成に供して本発明の一体の触媒担体構造体を得た。この焼成により、平板状成形体は硬化して側面層を形成し、セラミック線材はこの側面層の中に強固に埋設されていた。
実施例4
実施例1と同様にして、長さ100mm×幅60mm×高さ55mmのサイズの図1に示した構造の触媒担体構造体を作成した。
この触媒担体構造体に、ジニトロジアンミン白金錯体水溶液(白金濃度3質量%)を含浸し、乾燥の後、大気雰囲気中で500℃×2時間の焼成に供し、本発明の排気ガス浄化用触媒を作成した。
実施例5
実施例4で作成した本発明の排気ガス浄化用触媒の長さ100mm×幅60mmの2面以外の4面を厚さ3mmのフェルト状のセラミック断熱材で囲み、さらにその上を厚さ1mmのステンレス製薄板で覆って、図12のような状態の排気ガス浄化装置を構成した。
この排気ガス浄化装置に、図12に流れ方向を示すように、排気ガス浄化用触媒の一方の長さ100mm×幅60mmの面から他方の長さ100mm×幅60mmの面に、ディーゼルエンジンのモデル排気ガスを流通させた。
排気ガスは、約8mg/m3の濃度でパティキュレートを含んでおり、排気ガス浄化装置の出口でパティキュレート濃度を測定した。
この測定の結果、排気ガス浄化用触媒のセラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙を流れる排気ガスの平均流速が約1m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約10%以下、平均流速が約5m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約50%、平均流速が約7m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約75%、平均流速が約10m/秒のとき、パティキュレート捕集率は約90%であった。
産業上の利用可能性
以上述べたように、本発明によると、触媒担体構造体の単位空間体積あたりの触媒担体用セラミック材料又は機能性セラミック材料の絶対量と表面積を格段に高め、それによって排気ガス浄化用触媒の浄化性能を格段に向上させ、かつ十分に高い強度を有する触媒担体構造体を提供することができる。
また、かかる触媒担体構造体の製造方法を提供することができる。
また、かかる触媒担体構造体に白金等の触媒成分が担持され、それによってNOx、CO、及びHCの浄化のみならず、高いパティキュレート捕集機能を発揮し、それによって高いパティキュレート浄化作用を奏する排気ガス浄化用触媒、さらにパティキュレートを含む排気ガスの浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の触媒担体構造体を例示する概略の斜視図である。
図2は、図1のA−A線での概略の断面図である。
図3は、図1のB−B線での概略の断面図である。
図4は、本発明の触媒担体構造体の別な態様を例示する概略の斜視図である。
図5は、図4に示す触媒担体構造体の概略の断面図である。
図6は、セラミック線材層の別な態様を例示する概略の断面図である。
図7は、スペーサー層の別な態様を例示する概略の断面図である。
図8は、本発明の触媒担体構造体のさらに別な態様を例示する概略の斜視図である。
図9は、図8のA−A線での概略の断面図である。
図10は、図8のB−B線での概略の断面図である。
図11は、本発明の排気ガス浄化用触媒におけるパティキュレート捕集状態を説明する概略の図である。
図12は、本発明の排気ガス浄化用触媒を用いた排気ガス浄化装置の一例を示す概略の部分切欠斜視図である。
Claims (15)
- 排気ガス浄化用触媒に使用され、交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層を備えた触媒担体構造体であって、
前記セラミック線材層は、複数の相互に接触して平行に伸びるセラミック線材によって形成され、
前記セラミック線材は実質的に触媒担体材料からなり、
前記スペーサー層は、複数の相互に間隔を設けられて平行に伸びる線材のスペーサーによって形成され、
前記スペーサーは、前記セラミック線材が伸びる方向と垂直な方向に、かつ排気ガスの流れ方向に平行に配置され、前記間隙は一方向に連通して排気ガス流路を形成する、
ことを特徴とする触媒担体構造体。 - 前記セラミック線材層が、複数の一方向に伸びる平行なセラミック線材によって形成された請求項1に記載の触媒担体構造体。
- 前記セラミック線材層が、複数の円形又は長円形に巻回された平行なセラミック線材によって形成された請求項1に記載の触媒担体構造体。
- 前記セラミック線材層の各々が、前記複数の相互に接触した平行なセラミック線材に隣接して、複数の相互に隔てられた平行なセラミック線材をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒担体構造体。
- 前記セラミック線材又は前記スペーサーの少なくとも一方が、5〜45質量%のセラミック繊維によって補強された請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒担体構造体。
- 前記セラミック繊維が、触媒担体材料の中に分散され、セラミック線材の中で相互に結合した多数の短繊維である請求項5に記載の触媒担体構造体。
- 前記セラミック繊維が、触媒担体材料の中に埋設され、セラミック線材の心材を形成した複数の長繊維である請求項5に記載の触媒担体構造体。
- 前記セラミック線材の各々の両端がセラミック材料からなる側面層に埋設された請求項2及び4〜7のいずれか1項に記載の触媒担体構造体。
- 交互に配置された複数のセラミック線材層と複数のスペーサー層が、排気ガスの流れ方向にそって複数に分割された請求項8に記載の触媒担体構造体。
- 前記セラミック線材と前記スペーサーが、相互に接触する箇所で結合した請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒担体構造体。
- 予備セラミック線材からなる複数の予備セラミック線材層と予備スペーサーからなる複数の予備スペーサー層を交互に配置して予備触媒担体構造体を作成し、次いで前記予備触媒担体構造体を焼成して触媒担体構造体を製造する方法であって、前記予備スペーサーが、セラミック前駆体を含みかつ塑性を有する配合物を含んでなることを特徴とする請求項10に記載の触媒担体構造体の製造方法。
- 前記配合物が液体の分散媒を含み、前記分散媒が未乾燥の状態で前記予備セラミック線材層と前記予備スペーサー層を交互に配置する請求項11に記載の触媒担体構造体の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の触媒担体構造体に、白金、パラジウム、及びロジウムからなる群より選択された少なくとも1種の触媒成分が担持されたことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
- 請求項13に記載の排気ガス浄化用触媒を用い、前記排気ガス浄化用触媒のセラミック線材層とスペーサー層によって形成された間隙に、排気ガスを前記スペーサーが伸びる方向に流通させることを特徴とする排気ガスの浄化方法。
- 前記排気ガスがパティキュレートを含み、前記間隙を流れる排気ガスの流速が5m/秒以上である請求項14に記載の排気ガスの浄化方法。
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2002
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