JPWO2003035052A1 - ウイルス感染予防・治療剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ゲラニルゲラニルアセトンの予防・治療剤としての新たな用途に係り、より詳細には、ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有するウイルス感染予防・治療剤に関する。
背景技術
ウイルスは種々の疾患の原因となり、例えば、インフルエンザAウイルス感染症は世界中で集団感染や大流行を引き起こし、小児、高齢者、心肺疾患や免疫不全患者にしばしば深刻な状況をもたらすウイルスの一つである(非特許文献1乃至3参照)。
近年、様々な治療法が進歩する中、いまだにウイルスに対する確実で有効な治療法は見出されていない。現在では、不活性ワクチン接種が最も有効な手段として用いられているものの、例えばインフルエンザAウイルスはその表面抗原性を巧みに変化させ、ワクチンによる治療効果をしばしば低下させている。
最近、ノイラミニダーゼインヒビター(neuraminidase inhibitor)であるザナミビル(zanamivir)、オセルタミビル(oseltamivir)といった新薬や(非特許文献4乃至7参照)、イオンチャンネルブロッカーであるアマンタジン(amantazine)、リマンタジン(rimantadine)といった薬物によるウイルス感染の化学療法効果に関して、インビボ若しくはインビトロで多くの報告がなされている(非特許文献8参照)。
しかし、それも発症早期での投薬のみでしか効果がなく、肺炎や二次感染は防げないとも報告されており(非特許文献9参照)、また耐性を持つウイルスも報告されている。
ところで、熱ショック蛋白質(以下、「HSP」という。)は様々なストレス下で細胞内に誘導されるストレス蛋白の一群であり、その傾向は分子量70kDの熱ショック蛋白質(以下、「HSP70」という。)に最も顕著に認められる現象である。最近の研究により、生体及び細胞に対する熱ショック蛋白質の保護効果が数多く報告されており、注目を浴びている。
HSPはリポポリサッカライドに対する抗炎症作用・炎症性サイトカインの抑制、虚血からの保護効果、細胞のアポトーシスの抑制などから敗血症性ショック、心臓や脳といった生命器官の虚血性疾患など様々な病態において、生体にとって侵襲防御の面から有益であることが示されている。
しかしながら、HSPの誘導法は熱ショック、亜ヒ酸ナトリウム塩、重金属などの環境ストレスや虚血などの病的ストレス等で、臨床応用には非現実的なものであり、生体で安全にHSPを誘導する方法は、未だ確立されていない。
近年、抗潰瘍薬として市販されているゲラニルゲラニルアセトン(以下、「GGA」という。(商品名「セルベックス(Selbex)」エーザイ株式会社製)の作用機序がHSPの誘導、発現を介していることが報告された(非特許文献10参照)。そのため、GGAは臨床応用可能なHSP誘導剤として、特に、注目されている。
そこで、本発明は、GGAの強力なHSP誘導作用に着目し、ウイルスに対する感染予防・治療効果を検討し、ウイルスに対する新しい医薬を提供することを目的とする。
非特許文献1:Glezen WP.Epidemiol Rev.1982;4:25−44;
非特許文献2:Couch RB,Kasel JA,Glezen WP,et al.J.Infect Dis.1986;153:431−40;
非特許文献3:MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1997;46(RR−9):1−25;
非特許文献4:Woods JM,Bethell RC,Coates JA,et al.Antimicrob Agents Chemother 1993;37:1473−9;
非特許文献5:Hayden FG,Osterhaus ADME,Treanor JJ,et al.N Engl J Med 1997;337:874−80;
非特許文献6:Gubareva LV,Kaiser L,Hayden FG,Lancet 2000;355(9206):827−35;
非特許文献7:,Long JK,Mossad,Goldman MP,Cleve clin J Med 2000;67:92−5;
非特許文献8:Wingfield WL,Pollack D,Grunert RR,N Engli J Med 1969;281:579−84;
非特許文献9:Wingfield WL,Pollack D,Grunert RR,N Engli J Med 1969;281:579−84;
非特許文献10:Hirakawa T,Rokutan K,Nikawa T,et al.Gastroenterogy 1996;111:345−57。
発明の開示
上記目的は、ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有するウイルス感染予防・治療剤により達成される。
本発明の好ましい態様によれば、前記ウイルス感染予防・治療剤において、前記ウイルスがインフルエンザウイルスであることを特徴とする。
また、上記目的は、ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有する医薬を患者に有効量投与することを含むウイルス感染の予防・治療方法により達成される。
また、上記目的は、ウイルス感染予防・治療剤の製造のためのゲラニルゲラニルアセトンの使用により達成される。
また、上記目的は、ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有する抗ウイルス因子活性増強剤により達成される。
本発明の好ましい態様によれば、前記抗ウイルス因子活性増強剤において、抗ウイルス因子はMxA遺伝子であることを特徴とする。
さらに、上記目的は、ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有するプロテインキナーゼ誘導剤により達成される。
本発明の好ましい態様によれば、前記プロテインキナーゼ誘導剤において、前記プロテインはインターフェロン誘導性二本鎖RNA活性化蛋白であることを特徴とする。
本発明によれば、GGAはウイルスに感染する前にあらかじめ投与されるとウイルス感染を予防する効果があり、感染後に投与されるとウイルス感染を治療する効果がある。
また、本発明によれば、GGA投与は抗ウイルス遺伝子であるMxAの発現を増加させ、抗ウイルス作用を有するインターフェロン誘導性二本鎖RNA活性化蛋白キナーゼのmRNA発現も増加させる。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、GGAを投与することがインフルエンザウイルス感染予防・治療効果を有することを初めて見出してなされたものである。以下、本発明の好ましい実施態様を、本発明で行った実験を説明しながら、詳述する。
本発明で利用するGGAは、一般名をテプレノンといい、胃潰瘍・胃炎治療薬として広く用いられおり、試薬、工業原料として入手することも可能であり、公知の合成法に従って合成することができる。GGAの化学名は、6,10,14,18−テトラメチル−5,9,13,17−ノナデカテトラエン−2−オンであり、その構造式は下記の通りである。
GGAはその構造中に4カ所に二重結合を有しており、計8種類の幾何異性体が存在するが、本発明においては特に限定されず、いずれか1つの異性体でもよく、また2種以上の混合物であってもよい。これらの中でも好ましい化合物としては、(5E,9E,13E)−6,10,14,18−テトラメチル−5,9,13,17−ノナデカテトラエン−2−オン及び(5Z,9E,13E)−6,10,14,18−テトラメチル−5,9,13,17−ノナデカテトラエン−2−オンを挙げることができる。
本発明では、インビボの実験として、マウス感染モデルを用いてGGA投与による臨床的感染兆候等の改善傾向を検討する。具体的には、GGA前処理の群と前処理のない群に分け、両群をインフルエンザウイルスに感染させた後、種々の挙動を詳細に評価する。
なお、本発明におけるウイルスは、インフルエンザウイルスを代表的なウイルスとして例示するが、これに限定されず、リノウイルス等のいわゆる感冒を引き起こすウイルスやヘルペスウイルス等の皮膚、粘膜に感染するウイルス等も含まれる。
インフルエンザウイルス感染後、マウスの体重、マウス肺内のウイルス複製、マウス肺内のウイルス核蛋白合成及びHSP70発現の観点から、プラークアッセイ法、ウエスタンブロット法、ノーザンブロット法等の公知の手法を用いて、GGA投与の効果を解析する。
前述の解析により、マウス体重減少の改善、マウス肺内のウイルス数の減少、マウス肺内のウイルス核蛋白の発現量の抑制、HSP70発現の増大は、前処理に利用したGGA濃度依存性を有する。つまり、本発明において、GGAを予め投与したマウス群では、GGA投与量が多いほど、マウスの体重減少が改善され、肺内ウイルス増殖が認められず、その結果、事前にGGA投与することにより、ウイルス感染の予防が可能となる。
次に、本発明によるインビトロの実験として、ヒト肺胞上皮細胞を用いて、GGA投与による抗ウイルス活性の有無を検討する。
前述のヒト肺胞上皮細胞としてはA549細胞を利用し、GGA処理によるHSP誘導効果と、インフルエンザウイルス感染後の核蛋白等やHSPの合成能、並びに抗ウイルス遺伝子の発現を評価する。
本発明によるGGA処理を行うと、HSP70 mRNAの発現がGGA濃度に依存して誘導され、蛋白質レベルでもその合成能が上昇する。
インフルエンザウイルス感染後でも、GGA処理によりHSP蛋白が強く発現されているため、インフルエンザ血球凝集素蛋白やマトリックス蛋白、非構造蛋白等の各種のウイルス蛋白合成能が抑制される。
さらに、本発明では、GGA処理後のインフルエンザウイルス感染時の抗ウイルス遺伝子の発現への影響の検討から、HSP70 mRNA発現の増強とともに、GGA処理A549細胞では抗ウイルス遺伝子であるMxAの発現と、抗ウイルス作用を有するインターフェロン誘導性二本鎖RNA活性化蛋白キナーゼを活性化させる。そのため、本発明では、宿主細胞におけるウイルス感染に対する生体防御機能を増強している可能性を示唆され、ウイルス感染後にGGAを投与すると、ウイルス感染を治療する効果が予想される。
ここで、GGAの投与量は、感染ウイルスの種類、症状、年齢、体重等により適宜選択することができるが、通常は成人1日あたり150mgから3gであり、好ましくは200mgから2g、さらに好ましくは250mgから1.5gである。
GGAの投与方法は、特に限定されず、経口投与または非経口投与を適宜選択できるが、特に経口投与が好ましい。
経口投与のための剤型は、固体又は液体の剤型、具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が好ましい。GGAはすでに医薬品として広く用いられ、毒性が低く、重篤な副作用は知られておらずきわめて安全性の高い化合物であるため、そのまま粉末剤として経口投与してもよい。あるいは、製剤分野において常用される賦型剤(例えば、乳頭、白糖、デンプン、マンニトール等)、希釈剤等を含有した適当な剤型の医薬として投与してもよい。
さらに、必要に応じて、前記医薬は、GGAのほかに、酸化防止剤、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000等)、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を含有した医薬として投与してもよい。
非経口投与のための剤型は、注射用製剤、点滴剤、外用剤、坐剤が好ましい。
[実施例]
以下、実験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実験動物の取り扱いに関する実験手順は、大分医科大学の動物実験倫理規定委員会の承認を得て行われた。
ウイルス感染症、特に罹患率・死亡率ともに顕著なインフルエンザウイルス感染症に対するGGA作用を、インビボ及びインビトロによる実験で解析を行った。
ウイルスはインフルエンザAウイルスであるA/PR/8/34(H1N1)株(以下、「PR8」と称す。)を、マウスはSPF(specific pathogen−free)BALB/cN、メスの6週齢(チャールズリバージャパン(株)製)を、細胞はヒト肺上皮由来のA549細胞を、使用した。
まず、前記マウスは4匹ずつ清潔な状態のもと、滅菌した食餌と水を自由摂取できる状態でケージにて飼育した。
マウスは、ランダムに以下の4つの処置群に分割し試験に共した;▲1▼control群;PR8ウイルスを2x105PFU、経鼻的に感染、▲2▼150G−PR8群;150mg/kg GGA投与後control群と同様に、同量のPR8感染、▲3▼75G−PR8群;75mg/kg GGA投与後同様に、同量のPR8感染、▲4▼15G−PR8群;15mg/kg GGA投与後同様に、同量のPR8感染させた。前記▲1▼は対照群、▲2▼〜▲4▼は感染前のGGA投与群と称する。GGA投与群においてはGGAを経口的に12時間おきに3週間投与した。
図1は、PR8感染による体重減少に及ぼすGGA効果の結果を示す図である。マウスPR8感染モデルにおいて、GGA投与による臨床的感染徴候の改善が、次にように認められた。
control群では、感染後、30%に達する体重減少が観測された。一方、75G−PR8群以外のGGA投与群では、感染による体重減少はほとんど認められなかった。
図2は、本発明によるインフルエンザ感染後の各群のマウス肺内ウイルス複製に及ぼすGGA効果を示す図である。ここで、肺内ウイルスの定量は、MDCKを用いたプラークアッセイ法にて行った。図2から分かるように、control群では肺内のPR8ウイルス量は初回感染ウイルス量の約103倍まで増殖した。一方、GGA投与群では肺内ウイルス増殖はGGAの投与量依存的に抑制され、150G−PR8群においては3日後、75G−PR8群においては4日後にウイルスは完全に消失した。
図3は、本発明によるインフルエンザウイルス感染後の各群のマウス肺内のウイルス核蛋白(nucleoprotein、以下、「NP」という)の合成に及ぼすGGA効果の結果を示す図である。各群のマウスの肺内におけるウイルスのNP発現量は、ウエスタンブロット法により分析し、対照群であるcontrol群に比較して、GGA投与群では濃度依存性に抑制されることが判明した。なお、図3中に記載されたp.i.daysとは、PR8感染後の日数を指す。
図4は、本発明による感染後の各群のマウス肺内のウイルスNP合成に及ぼすGGAの効果を、さらにEIA法にて詳細に定量した結果を示す図である。図4から明らかなように、GGA未投与群である対照群と比較して、GGA投与群ではPR8感染後にウイルスNP合成能が顕著に低下していることが分かる。
次に、GGAがマウス肺にHSP70 mRNAの発現を誘導させるか否かを確認した。
図5は、GGA投与によるマウス肺におけるHSP70発現の結果を示す図である。図5から明らかなように、BALB/cマウスに3週間GGAを投与すると(図5のGGA150とは、GGAを、3週間12時間おきに150mg/kgを投与したことを示す。)、肺にHSP70の発現が投与量に依存して誘導されることが、ノーザンブロットにより同定された。つまり、HSP70の発現量は、GGA処理により、GGA処理なし(図5中の−に相当する)よりは顕著に多く、GGA投与量が多いほどその発現量は増大する傾向にある。
図6は、感染後のマウス肺におけるHSP70 mRNA発現の動態に及ぼすGGAの影響をノーザンブロットにて検討した結果を示す図である。図6から、図5の示す結果と同様に、HSP70の発現量はGGA投与量に依存していることが分かる。なお、図6中のp.i.dayとは、PR8による感染後の日数を意味する。
なお、図5及び図6は、グルタールアルデヒド二リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をコントロールに使用し、GGA投与によるマウス肺におけるHSP70の発現の結果を示す図である。図5では、ビヒクルは各投与量と同量のα−トコフェロールを含む希釈剤を投与した。
図5及び図6の結果から、GGA投与単独で、HSP70 mRNAが濃度依存的に肺組織内で発現しており、感染後のcontrol群に比較してGGA投与群は肺内HSP70 mRNAの発現が、図1及び図2に示す体重減少・ウイルス増殖の時期に一致して増加しており、症状改善時に一致した発現の増強が認められた。これは、HSP70の発現とインフルエンザ感染症状の抑制に強い相関関係があることを示唆するものである。
以上の説明は、インビボでの実験による解析であるが、以下は、インビトロにおいて検討を行った結果を説明する。
図7は、本発明にて行ったインビトロによる実験において、A549細胞をGGA処理した結果を示す図である。即ち、図7に示す結果から、GGAは、ヒト肺胞上皮由来A549細胞において、HSP誘導効果を有することが判明した。なお、HSP誘導の定量はノーザンブロット法により行った。
図7に示すように、インビボと同様にGAPDHをコントロールとした場合、HSP70 mRNAの発現が濃度及び時間に依存して誘導された。なお、図7中のαはα−トコフェロールを示す。
図8は、35S−メチオニンを用いたパルスラベル法にて細胞内蛋白を、SDS−PAGEにて展開した結果を示す図である。その結果から、GGAは約70kDの蛋白の発現を24時間にわたり強く誘導し、蛋白レベルでも顕著に合成能を上昇させた(図8左を参照)。また、同サンプルをHSP70抗体によるウエスタンブロットで解析すると、その蛋白はHSP70と同定され(図8右を参照)、GGA投与6時間後を発現のピークとして、HSP70の発現が観測された。
図9は、PR8感染時のGGAによるNP及びHSP70の合成能への影響を調べた結果を示す図である。パルスラベル法により、GGA処理なし(−)、GGA処理有り(+)のA549細胞でのNP、HSP70の蛋白合成能を解析した。GGA処理(−)では、NPの合成が感染後24時間にわたり著しく増強し、一方、GGA処理(+)では、HSP70合成能の増強が感染早期に認められ、その減衰に一致したNPの合成が12時間後に開始した。しかしながら、その合成能はGGA処理(−)に比して抑制されていることが分かった。
また、図9から、対照に対してPR8のHA(インフルエンザ血球凝集素蛋白)、NP、M1(マトリックス蛋白)、NS1(非構造蛋白)などのウイルス蛋白の合成能が顕著に抑制されていることが明らかである。その抑制効果は、HSP70の発現時期と強く相関していた。
図10は、図9にて用いたサンプルの蛋白量を、感染3、6、12、24時間後にてデンシトメトリーにより解析した結果を示す図である。図10の結果から、PR8感染12時間後まではHSP70の発現が認められた。
図11は、本発明によるPR8感染12時間後の細胞におけるHSP70とNPの蛋白の蓄積をウエスタンブロットにより解析した結果を示す図である。その結果から、ウイルス未感染のmockではNP合成が認められず、GGA処理がHSP70を誘導し、NPの発現を感染12時間後の阻害していることが確認され、ウイルス蛋白合成は、HSP70の合成により著明に抑制された。
次いで、GGA処理によるPR8感染時の抗ウイルス遺伝子の発現への影響を検討し、その結果を図12及び図13に示す。図12から、ノーザンブロット法によりA549細胞に対するGGA処理はPR8感染時にHSP mRNA発現を増強し、それに伴い、図12から抗ウイルス遺伝子(特にオルソミクソウイルス)であるMxA遺伝子の発現も増強することが確認された。なお、図12中のGAPDHは、前出の図5と同様に、コントロールとして使用したものである。
図13は、抗ウイルス作用を持つインターフェロン誘導性二本鎖RNA活性化蛋白キナーゼ(以下、「PKR」という。)のmRNA発現を、RT−PCR法にて定量した結果を示す。その結果から、GGA処理によりA549細胞内のPKRの発現が増加し、そのmRNAもアップレギュレートされたことが分かった。なお、本図中のβ−アクチンはコントロールとして使用したものである。
一般に、ウイルスが感染すると生体内において種々の遺伝子、抗ウイルス因子や酵素の発現が増強され又は抑制されるが、この中でGGAがMxA遺伝子及びPKRに作用していることは、ウイルス感染特にインフルエンザウイルス感染の予防治療に有効であることを、作用メカニズムの点から強く指示するものであり、同時にGGAが抗ウイルス因子活性増強剤又は蛋白キナーゼ誘導剤であることを示すものである。
以上の結果から、GGAはインビボにおいてインフルエンザウイルスに対する増殖抑制作用を示し、体重減少という臨床症状を顕著に改善させることが明らかであり、その効果にはGGAによる肺でのHSP70の合成促進が深く関与していることが示唆された。
また、インビトロでは、GGAがHSP70の発現を強力に誘導しており、その誘導時期に一致してインフルエンザウイルスの複製を阻害していることが分かった。さらに、GGAはウイルス感染症における宿主側の抗ウイルス遺伝子MxA、PKRを活性化させており、宿主のウイルス感染に対する生体防御能を増強していることが分かり、GGAを投与することは、インフルエンザウイルスに対する予防・治療に効果的であることが判明した。
産業上の利用可能性
以上の説明から、ゲラニルゲラニルアセトンの新たな用途として、ウイルス感染予防・治療剤へ利用可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明によるマウスPR8感染モデルにおいて、GGA投与による臨床的感染兆候の改善傾向を示す図である。ここで、本発明で用いたBALC/cマウスは、以下の4つの群に無作為に抽出された。▲1▼control群(n=30);経鼻的にA/PR/8/34、2x105PFUを投与、GGA前処理群は、3週間、12時間毎にGGAを経口的に投与され、GGA投与量により、▲2▼150mg/kg(150G−PR8群;n=30)、▲3▼75mg/kg(75G−PR8群;n=30)、▲4▼15mg/kg(15G−PR8群;n=30)とし、3週間後同様にPR8に感染させた。感染後、各々のマウスの体重は1、2、3、4、7、10日後に測定した。
図2は、本発明によるインフルエンザウイルス感染後の各群のマウス肺内ウイルス複製に及ぼすGGA効果を示す図である。
図3は、本発明によるインフルエンザウイルス感染後の各群のマウス肺内のウイルス核蛋白合成に及ぼすGGA効果を示す図である。なお、図3中の150mg/kgGGA、75mg/kgGGA、15mg/kgGGAは、150G−PR8群、75G−PR8群、15G−PR8群を、それぞれ示す。
図4は、本発明によるPR8感染後の各群のマウス肺内のウイルス核蛋白合成に及ぼすGGA効果を、EIA法にて定量した結果を示す図である。
図5は、本発明によるGGA投与によるマウス肺におけるHSP70発現の結果を示す図である。
図6は、本発明によるPR8感染後のマウス肺におけるHSP70mRNA発現の動態に及ぼすGGAの影響を、ノーザンブロット法により評価した結果を示す図である。なお、図6中の150mg/kgGGA、75mg/kgGGA、15mg/kgGGAは、150G−PR8群、75G−PR8群、15G−PR8群を、それぞれ示す。
図7は、本発明によるヒト肺上皮由来A549細胞におけるGGAのHSP誘導効果を示す図である。
図8は、本発明において、35S−メチオニンを用いたパルスラベル法にて、細胞内蛋白を、SDS−PAGEにて展開した結果を示す図である。
図9は、本発明によるPR8感染時にて、GGAによるHP及びHSP70の合成能への影響を検討した結果を示す図である。
図10は、図9にて検討したサンプルの蛋白量を、感染後の各時間にてデンシトメトリーにより解析した結果を示す図である。
図11は、本発明によるPR8感染12時間後の細胞におけるHSP70と核蛋白NPの蓄積をウエスタンブロットにより解析した結果を示す図である。
図12は、本発明によるGGA処理によりPR8感染時の抗ウイルス遺伝子の発現への影響を示す図である。
図13は、本発明によるGGA処理によりPR8感染時の抗ウイルス遺伝子の発現への影響を示す図である。
Claims (8)
- ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有するウイルス感染予防・治療剤。
- 前記ウイルスはインフルエンザウイルスである請求の範囲1記載のウイルス感染予防・治療剤。
- ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有する医薬を患者に有効量投与することを含むウイルス感染の予防・治療方法。
- ウイルス感染予防・治療剤の製造のためのゲラニルゲラニルアセトンの使用。
- ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有する抗ウイルス因子活性増強剤。
- 前記抗ウイルス因子はMxA遺伝子である請求の範囲5記載の抗ウイルス因子活性増強剤。
- ゲラニルゲラニルアセトンを有効成分として含有するプロテインキナーゼ誘導剤。
- 前記プロテインはインターフェロン誘導性二本鎖RNA活性化蛋白である請求の範囲7記載のプロテインキナーゼ誘導剤。
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