JPWO2002083907A1 - UspAを用いた目的ポリペプチドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
配列番号:2記載の付加ポリペプチド、リンカーペプチドおよび目的ポリペプチドを含む融合ポリペプチドを産生する組換え体を用いることを特徴とする目的ポリペプチドの製造方法。
Description
技術分野
本発明は、UspAを含む融合ポリペプチドを用いた目的ポリペプチドの製造方法に関する。
背景技術
遺伝子組換え技術の進歩により、目的とするポリペプチドをコードする遺伝子をベクターに組み込み、細菌などの宿主細胞を形質転換させることにより、形質転換細胞に目的ポリペプチドを産生させることが可能である。しかしながら、目的ポリペプチドの分子量が小さい等安定性が悪い場合には、宿主細胞が産生するプロテアーゼやペプチダーゼにより細胞内で分解されてしまい、目的ポリペプチドを得ることができない。
そこで、目的ポリペプチドの分子量が小さい等安定性が悪い場合には、目的ポリペプチドの細胞内での分解を避けるために、目的ポリペプチドと付加ポリペプチドを融合させた融合ポリペプチドを宿主細胞内で産生させ、得られた融合ポリペプチドを限定分解して目的ポリペプチドを得る方法が採用されている。
しかしながら、付加ポリペプチドの選択によっては、高い生産量を得ることが困難であり、目的ポリペプチドの効率的製造の妨げとなっていた。
発明の開示
本発明は、UspA(Mol.Microbil.,6,3187−3198(1992))またはその部分配列を含む融合ポリペプチドを産生する組換え体を用いることを特徴とする目的ポリペプチドの製造方法を提供するものである。
本発明者らは、分子量の小さな目的ポリペプチドの効率的な大量生産を目的として研究した結果、本発明を見出し、これを完成した。
すなわち、本発明は、
(1) (A)配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド、
(B)配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド、及び
(C)配列番号:2の1位のAlaから143位のGluまでのアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、
からなる群より選択される付加ポリペプチド、リンカーペプチド並びに目的ポリペプチドより構成される融合ポリペプチド;
(2) 上記(1)記載の(A)、(B)または(C)に記載のアミノ酸配列において、少なくとも1残基以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、リンカーペプチド及び目的ポリペプチドより構成され、かつ宿主中においてプロテアーゼにより分解されない融合ポリペプチド;
(3) リンカーペプチドが、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の融合ポリペプチド;
(4) 目的ポリペプチドが、配列番号:8、配列番号:10および配列番号:12記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の融合ポリペプチド;
(5) 融合ポリペプチドが、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18および配列番号:20に記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(1)、(3)または(4)に記載の融合ポリペプチド;
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(7) 配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17および配列番号:19に記載の核酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(6)記載のポリヌクレオチド;
(8) 上記(6)又は(7)に記載のポリヌクレオチドを有する発現ベクター;
(9) 上記(8)記載の発現ベクターを宿主に導入して得られる形質転換体;及び
(10)上記(9)記載の形質転換体を培養する工程、産生された融合ポリペプチドを回収する工程、および該融合ポリペプチドを限定分解する工程を包含する目的ポリペプチドの製造方法;
に関する。
本発明において、「配列番号:2の1位のAlaから143位のGluまでのアミノ酸配列」とは、大腸菌由来のUspA(Mol.Microbil.,6,3187−3198(1992))の全長アミノ酸配列を意味する。UspAは、143アミノ酸残基(配列番号:2)からなり、配列番号:1記載の核酸によってコードされるペプチドである。「配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列」及び「配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列」とは、UspAの部分アミノ酸配列を意味する。
本発明において、「付加ポリペプチド」はUspAの全長または断片を含むポリペプチドからなり、UspAの全長ポリペプチドだけでなく、部分ポリペプチドも付加ポリペプチドとして使用され得る。付加ポリペプチドとして好ましいUspAの部分ポリペプチドとしては、「配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド」または「配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド」が例示される。更に好ましくは、「配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド」、「配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド」である。
本発明において「リンカーペプチド」とは、配列特異的プロテアーゼにより認識されるアミノ酸またはアミノ酸配列をC末端に有するペプチドである。好ましくはC末端にプロテアーゼによって認識される配列を有するペプチドを意味する。融合ポリペプチドを構成するリンカーペプチドが、配列特異的プロテアーゼにより切断されることにより、目的ポリペプチドを得ることができる。リンカーペプチドとしては、アミノ酸4残基以上、20残基以下のペプチドが好ましい。具体的には、配列番号:3〜5に記載されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドが例示される。
本発明の「目的ポリペプチド」は、宿主細胞質内で安定性が悪く、単独で発現が困難であるポリペプチドであれば、どのようなポリペプチドでも目的ポリペプチドとなり得る。好ましくは分子量が小さなポリペプチドであり、配列番号:8記載のアドレノメデュリン前駆体(AM−gly)、配列番号:10記載のtatとBH4からなるポリペプチド(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97,7,3100−3105(2000))、配列番号:12記載のHIV−1 integrase core domain F185K(HIV−1 INc)などが例示される。アドレノメデュリン前駆体(AM−gly)とは、アドレノメデュリン(AM:Biochem.Biophys.Res.Commun.,192,553,(1993))のC末端のチロシン残基にグリシン残基を付加した53アミノ酸残基からなるポリペプチドを意味する。
本発明において、「融合ポリペプチド」とは、付加ポリペプチド、リンカーペプチドおよび目的ポリペプチドからなるポリペプチドを意味する。付加ポリペプチドは、融合ポリペプチドのN末端側に位置する。目的ポリペプチドは、融合ポリペプチドのC末端側に位置する。リンカーペプチドは、付加ポリペプチドと目的ポリペプチドとの間に位置する。融合ポリペプチドとしては、目的ポリペプチドがアドレノメデュリン前駆体である配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18及び配列番号20記載のアミノ酸配列が例示される。
本発明の融合ポリペプチドは、「上記(1)記載の(A)、(B)または(C)に記載のアミノ酸配列において、少なくとも1残基以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、リンカーペプチド及び目的ポリペプチドより公正され、かつ宿主中においてプロテアーゼにより分解されない融合ポリペプチド」も包含する。付加ポリペプチド中、置換、欠失、挿入または付加される残基数は、10残基以下であり、融合ポリペプチドは宿主中に存在するプロテアーゼにより分解されないという機能を有する。このようなポリペプチドは、任意のアミノ酸配列を欠失させ、所望のアミノ酸、ないしはアミノ酸配列を導入することによって置換される。アミノ酸配列の置換処理には、いくらかの遺伝子操作技術の組み合わせが広く利用できるが、例えば、Site−diredted deletion(部位指定削除)法(Nucl.Acids Res.,11,1645,1983)、Site−specific mutagenesis(部位特異的変異)法(Zoller,M.J.et al.,Methods in Enzymol.,100,468,1983、Kunkel.T.A.et al.,Methods in Enzymol.,154,367−382,1987)、PCR突然変異生成法、制限酵素処理と合成遺伝子の利用による方法等がある。
部位特異的変異法であれば、例えばMolecuar Cloning:A Laboratory Manual第2版第1−3巻Sambrook,J.ら著、Cold Spring Harber Laboratory Press出版New York 1989年に記載の部位特異的変異誘発法やPCR法などの方法を用い、本発明のポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
本発明のポリヌクレオチドを用いて、目的ポリペプチドを産生するには、例えば、Molecular Cloning等の多くの教科書や文献に基づいて実施することができる。具体的には、発現させたいDNAの上流に翻訳開始コドンを付加し、下流には翻訳終止コドンを付加する。さらに、転写を制御するプロモーター配列(例えば、trp、lac、T7、SV40初期プロモーター)等の制御遺伝子を付加し、適当なベクター(例えば、pBR322、pUC19、pSV・SPORT1など)に組み込むことに、宿主細胞内で複製し、機能する発現プラスミドを作製する。
次に、発現プラスミドを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を得る。宿主細胞としては、大腸菌などの原核生物、酵母のような単細胞真核生物、昆虫、哺乳類などの多細胞生物の細胞などが挙げられる。
このような形質転換体を適当な条件で培養し、該形質転換体を破砕する。融合ポリペプチドを含む画分は遠心分離等により回収される。
本発明において、「融合ポリペプチドを限定分解する」方法とは、臭化シアン等による化学的な切断方法や配列特異的プロテアーゼを利用した方法がある。好ましくは融合ポリペプチドの酵素的な切断により目的ポリペプチドを遊離することができるプロテアーゼを意味する。このようなプロテアーゼとしては、BLase(Eur.J.Biochem.,204,165−171(1992))、V8 protease(J.Biol.Chem.,247,6720−6726(1972))、Streptomyces griseus由来のプロテアーゼ(J.Biochem.,104,451−456(1988))、Lysyl endopeptidase(Agr.Biol.Chem.,42,1443(1978))、Prolyl endopeptidase(J.Biol.Chem.255,4786−4792(1980))、Factor Xa(Biochemistry,7,4506−4517(1968))Thrombin(Arch.Biochem.Biophys.147,201−207(1971))、Enterokinase(Biochemistry,16,3354−60(1977))などが例示される。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、目的ポリペプチドの製造は、以下の工程により行なうことができる。
(1)ベクターの作製及び形質転換体の培養・破砕
(2)融合ポリペプチドの精製
(3)融合ポリペプチドの抽出・溶解
(4)融合ポリペプチドの限定分解
(5)目的ポリペプチドの精製
以下において、各工程につき説明する。
(1)ベクターの作製および形質転換体の培養・破砕
本発明の付加ポリペプチドであるUspAを含む融合ポリペプチドをコードする遺伝子を、適当なベクターに組み込むことにより、融合ポリペプチドを発現するための発現ベクターが作製される。融合ポリペプチドをコードする遺伝子は、付加ポリペプチドをコードする遺伝子の他に、リンカーペプチドをコードする遺伝子及び目的ポリペプチドをコードする遺伝子からなる。UspAをコードする遺伝子の入手源としては、例えばE.coli JM109株の染色体DNAを使用することが出来る。リンカーペプチドをコードする遺伝子としては、合成DNAを使用することが出来る。
ベクターとしては、ファージ又はプラスミドが使用される。この発現ベクターを宿主に導入することにより、形質転換体が作製される。宿主としては、細菌、酵母、昆虫細胞および動物細胞が用いられる。本発明において、宿主としては、好ましくは細菌であり、さらに、好ましくは大腸菌が用いられる。
宿主が大腸菌の場合、目的の融合ポリペプチドを効率的に発現させるためには、宿主内で機能する適切なプロモーター(lac,tac,trc,trp,PLなど)とShine−Dalgarno(SD)配列を有する発現ベクター(pKK223−3,pBS,pDR540,pPL−lambdaなど)や、さらに翻訳開始コドンATGや制御配列を備えたATGベクター(pTrc99Aなど)に目的の融合ポリペプチドを含む遺伝子断片を挿入すれば良い。
発現ベクターを適切な宿主細胞(例えば、E.coli JM103,JM109,JM110,HB101,C600,BL21株など)に導入することによって形質転換体が得られる。この形質転換体を適当な条件で培養し、形質転換体を常法により破砕することにより、所望の融合ポリペプチドを得ることができる。
(2)融合ポリペプチドの精製
融合ポリペプチドを含む画分の回収は、封入体を形成した場合には遠心分離によって行なうことができる。遠心分離は、常法に従って行なうことができる。または、膜を用いて回収することも可能である。封入体を形成しない場合には塩析やカラムクロマトグラフィーなどによって精製することができる。
(3)沈殿した融合ポリペプチドの抽出・溶解
不溶画分の融合ポリペプチドは、可溶化剤で抽出することができる。可溶化剤としては4〜10mol/lの尿素溶液の他、SDSや塩酸グアニジンなどの試薬が例示される。しかしながら、抽出液中にて、限定分解を行なうため、酵素を用いる場合には活性が失われない尿素溶液で抽出するのが好ましい。沈殿化操作によって精製をしない場合この操作は必要とせず、精製後、限定分解可能な条件に溶解しておけば良い。
(4)融合ポリペプチドの限定分解
常法に従い、融合ポリペプチドを化学的あるいは酵素的方法により切断し、目的ポリペプチドを得る。限定分解を行なうための、化学的方法としては臭化シアンを使った方法、酵素的方法としては、BLase(Bacillus licheniformis Glu−specific endopeptidase)、V8 protease、Lysyl endopeptidase、Prolyl endopeptidase、Factor Xa、Thrombin、Enterokinaseを使った方法などが例示できる。限定分解は、上述の抽出液の尿素濃度を透析または希釈により調節した後におこなうことが好ましい。酵素を使った場合には好ましい尿素濃度は、0mol/l〜2mol/l程度である。
(5)目的ポリペプチドの精製
目的ポリペプチドは、各種クロマトグラフィーで精製することができる。精製した目的ポリペプチドは、凍結乾燥により長期保存が可能である。
実施例
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
実施例1 候補とする新規付加ポリペプチドの選出
種々の付加ポリペプチドを生産量の面から検討し、チオレドキシン分子やそのN末端部分配列からなるポリペプチドを付加タンパク質としたAM−glyの発現方法が得られていたが、発現量が温度変化や培地条件によって大きく影響を受けるために高密度培養のような方法を使用した効率的な大量発現法の開発が困難であった。そこで宿主由来のポリペプチドから付加ポリペプチドに適したものを探索することにした。近年プロテオーム解析に使われる二次元電気泳動は通常分子量、そして等電点を指標とした電気泳動が行われ、これらに関する情報の他にその発現量も知ることができる。一方融合タンパク質は分子量が小さいものの方がより効果的に相手側のポリペプチドを生産することが可能であり、安定性は等電点の影響を受けることが知られている。分子の配列部分を一定の大きさに限定する場合、小さなタンパク質分子は安定性等その分子が持つ特性を保持する可能性が大きいとも考えられる。さらに電気泳動データで明瞭なスポットを形成するタンパク質分子は高い発現量を得ることが可能で、安定性にも優れる可能性が高い。これらの理由から宿主とする大腸菌のタンパク質二次元電気泳動データより候補とする付加タンパク質を選抜し、付加タンパク質領域のみが異なるAM−glyの発現プラスミドを構築、安定した高発現が得られる組み合わせを探索することにした。タンパク質二次元電気泳動データはElectrophoresis,19,1960−1971(1998)を用いた。AM−gly分子自身は等電点が高いために等電点4−7、そして分子量が小さな分子群のうちから発現量が比較的多いHdeB、YfiD、UspA、YjgF、YgiN、PtsHを検討に用いることにした。これらの多くは機能が未知のタンパク質である。ヒストン様タンパク質(Hns)やribosomal subunit protein(RpsF)の高発現は菌体の増殖に悪影響を与える可能性があったので候補から除外した。HdeBに関しては分泌シグナルが存在するのでシグナルを除いた形でも検討することにした。
実施例2 発現プラスミドの構築
Cephalosporin−C deacetylaseの発現プラスミドであるpCAH431[J.Biosci.Bioeng.,87,446(1999)]の0.2kbp VspI−XbaI断片と0.23kbp SspI−DraI断片を除去してpCAH4312を構築し、このプラスミドを基にした。pCAH4312を鋳型としてtrp promoterを含む部分をPCRにより増幅し、pMOSblue T−vector(アマシャム・ファルマシア社製)にクローニングした。pCAH4312のEcoRI−XbaI間に、クローニングされたtrp promoterを含むSmaI−XbaI断片を挿入し、大腸菌用ATGベクターpATG1131とした。EcoRI切断末端はT4 DNA polymeraseで平滑化処理の後、SmaI切断末端と連結した。PCRに用いたプライマーの配列を示す。発現プラスミドpATG1131はEcoRI−XbaI間にクローニングした遺伝子をtrp promoterを使って発現する。
センス側プライマー
アンチセンス側プライマー
まず[GSGSGDAFE]−AM−gly合成遺伝子を含むNaeI−SalI遺伝子を4本の合成DNAを用いたPCR反応により作製し、pUC18上にクローニングした([GSGSGDAFE]−AM−gly/pUC18)。用いた合成DNAの配列を示す。下線部分は互いに相補する配列部分である。
次にHdeB、YfiD、UspA、YjgF、YgiN、PtsHの遺伝子断片を取得し、キメラ遺伝子を構築してATGベクターに組み込んだ。HdeBに関しては分泌シグナルが存在するのでシグナルを除いた形での断片取得も行った。いずれもE.coli JM109株の染色体DNAを鋳型にしたPCRにより該当遺伝子部分を増幅し、得た断片をpUC18上で[GSGSGDAFE]−AM−gly遺伝子の5’末端に融合した後、pATG1131のEcoRI−XbaI間にクローニングした。EcoRI切断末端はMung Bean Nucleaseで平滑化処理し、また連結する各蛋白質の遺伝子側の5’側も必要なものはMung Bean NucleaseまたはT4 DNA polymeraseにより平滑化処理して野生型の5’配列を持つ遺伝子として組込んだ。この操作過程で当該遺伝子内に切断を受けるものはその切断配列にアミノ酸置換を伴わない部位特異的な変異を導入した。付加ポリペプチド遺伝子の3’側の連結にはNaeI切断配列を使った都合上Ala残基が付与された。PCRに用いたDNAの配列を以下に示す。
センス側プライマー
アンチセンス側プライマー
実施例3 発現実験
構築した発現プラスミドを保持するE.coli BL21株を試験管培養(10mL CAH−A培地(5μg/ml tetracycline)、37℃、振とう数300min−1)した。培養終了液の菌体総蛋白質についてSDS−PAGE、CBB染色した結果、分泌シグナルを残したHdeBを用いた場合以外はいずれも[GSGSGDAFE]−AM−glyと融合したタンパク質の生産が確認できた。UspA、YgiNが顕著な発現を示し、これらのプラスミド名をpAME9101、pAMEB101とした。構築した諸プラスミドは構造遺伝子領域のみが異なり、発現量の差は主にタンパク質の安定性に起因するものと推測できた。
CAH−A培地の組成
実施例4 低分子化したUspAを用いたAM−glyの融合発現
UspA−[A]−[GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:13、14)発現プラスミドpAME9101と同様の方法を用いてUspAのN末端部分配列を使用したプラスミドを作製した。発現量が大幅に低下しない範囲で付加ポリペプチドの分子量を下げれば生産効率を上げることが可能となる。部分配列としてはUspA[1−84]、UspA[1−65]、UspA[1−59]、UspA[1−57]を用い、これらの領域のPCRに用いたプライマーの配列を以下に示す。
センス側プライマー(共通)
アンチセンス側プライマー
各プラスミドを保持するE.coli BL21株を実施例11と同じ方法で試験管培養したところ最も分子量を小さくしたUspA[1−57]−[A]−[GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:15、16)でも発現可能であり、さらに封入体の溶解性を高めるためにAspを導入して等電点を低くしたUspA[1−56]−[DD]−[GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:17、18)もまた発現可能であった。2−L jar fermentorを用いてpAME9105(UspA[1−84]−[A]−GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:19、20)発現プラスミド)、pAME9107(UspA[1−56]−[DD]−[GSGSGDAFE]−AM−gly発現プラスミド)をそれぞれ保持するE.coli BL21株について培養したところ、前者が2.2g/L、後者が1.6g/Lの生産性を示した。生産量の測定はSDS−PAGEのゲルをCBB染色し、BSAを標準としてデンシトメーターで測定した。培養は1.2LのCAH−A培地(5μg/ml tetracycline・HCl)を用い、32℃、通気1L/min、攪拌800rpmで行った。pAME9107のUspA[1−56]遺伝子領域中に存在するGluをAspに置換したpAME9108を構築した。以下、GluをAspに置換したUspA[1−56]をUspA[1−56]*と称する。
実施例5 半回分培養の実施
2−L jar fermentorを用いてpAME9108を保持するE.coli BL21株を用いた半回分培養を行い、UspA[1−56]*−[DD]−[GSGSGDAFE]−AM−glyの生産を試みた。この結果3.9g/Lの生産量を得ることができた。条件を検討することでさらに高いレベルでの生産もできるだろう。生産量の測定はSDS−PAGEのゲルをCBB染色し、BSAを標準としてデンシトメーターで測定した。同条件でpAME3105保持株の培養を行ってもthioredoxin−[GSGSGDAFE]−AM−glyの生産は認められない。培養は1.2L R/2培地にテトラサイクリン塩酸塩を5μg/ml添加し、32℃、攪拌速度800rpm、通気速度1.2L/minでアンモニアをpH>6.7になるように添加しながら27h行った。流加は500g/Lグルコース,12.5g/L MgSO4・7H2O水溶液を溶存酸素濃度の低下を栄養源枯渇の指標にして合計5回添加した。
R/2培地の組成
実施例6 他の目的ポリペプチドの発現系構築
高い発現量を得ることが困難であったAM−glyを高発現可能な付加ポリペプチドとして新規にUspA、UspA[1−84]、UspA[1−56]*−[DD]、YgiNが得られ、これらの付加ペプチドは他の目的ポリペプチドの生産にも応用できると考えられた。これらの付加ポリペプチドとしての利用例は報告されておらず、有用性の調査を目的とし、tat−[A]−BH4と変異型HIV−1 integrase core domain F185K(HIV−1 INc)についても発現実験を行うことにした。AM−gly、tat−[A]−BH4は単独では発現できないのに対してHIV−1 INcは発現可能である。プラスミドの構築はpAME9101、pAME9105、pAME9108、pAMEB101、pAME3105を使用し、AM−gly遺伝子領域を含むこれらのNspV−XbaI断片を上記遺伝子と置換することによった。tat−[A]−BH4遺伝子断片は合成DNAにより、またHIV−1 Inc遺伝子はpTYI−201(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,92,6057−6061(1995))を鋳型としてPCRによって増幅、pMOSBlueにクローニングした断片を使用した。用いた合成DNAの配列を以下に示す。
tat−[A]−BH4合成遺伝子(二本鎖)
HIV−1 INc用PCRプライマー
センス側プライマー
アンチセンス側プライマー
実施例7 各キメラ遺伝子発現量の比較
構築した発現プラスミドを保持するE.coli BL21株、E.coli JM109株(それぞれB株、K−12株由来)を試験管培養(10mL CAH−A培地、37℃、振とう数300min−1または5ml L培地、37℃、振とう数120min−1(いずれもBL21株の場合5μg/ml、JM109株の場合10μg/mlのtetracycline・HClを添加))した。L培地の組成は1Lあたり10g Tryptone peptone,5g Yeast extract,5g NaCl,pH7.3とした。培養終了液の菌体総蛋白質についてSDS−PAGE、CBB染色し、デンシトメーターで発現量を調べた。発現量は内部標準をとって比として算出した(図1−4)。図中、比1はおよそ1g/Lに相当する。また、これらの宿主、培養条件のうち、融合したポリペプチドを最も多量に発現する組み合わせを抽出し、図5にまとめた。
この結果から、今回本手法によって分離することができた高生産用付加ポリペプチドUspA、UspA[1−84]、UspA[1−56]*−[DD]、YgiN、チオレドキシンのいずれもが高い発現量を得ることができた。特に図1−4のどの条件でもUspA及びその部分配列はAM−gly、そしてUspAの部分配列はtat−[A]−BH4の生産に適しており、一方、図5を見て分かるように他の分子形ではほぼ同等の生産量が得られる。このことから UspA、UspA[1−84]、UspA[1−56]*−[DD]のいずれかを用いれば多くのポリペプチドの高生産が可能であり、特にAM−glyやtat−[A]−BH4のように細胞内で単独の発現ができない分子には効果が大きいことが分かった。AM−glyの場合には他分子が全く生産が見られない場合にでも生産性が認められる。またここで用いたUspAのN末端部分配列の配列長はAppl.Microbiol.Biotech.,42,703−708(1995)、Gene,29,251−254(1984)等に報告されている他分子と比べて短く、当初の目的にかなった結果となった。特に小さなペプチドの生産にはより効果的な生産系の構築が可能となる。UspA分子はCysを108番目のアミノ酸残基として一つ持つのみであるため、目的とするポリペプチド間とのCys−Cys結合の形成を考慮する必要もない。AM−glyと同様にtat−[A]−BH4やHIV−1 INcについてもUspAあるいはその部分配列を付加ペプチドとした半回分培養、流加培養による高い発現レベルでの生産が可能である。
産業上の利用可能性
本発明によれば、付加ポリペプチドとしてUspAまたはその部分ポリペプチドを用いることにより、目的ポリペプチドを効率的に大量生産することが可能となる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、E.coli JM109を宿主とし、L培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比を示す図である。
図2は、E.coli BL21を宿主とし、L培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比を示す図である。
図3は、E.coli JM109を宿主とし、CAH−A培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比
図4は、E.coli BL21を宿主とし、CAH−A培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比を示す図である。
図5は、図1−図4の各条件で最大の産生量を示したものをまとめたものである。
図1〜図5中、UspA[1−56]*はUspA[1−56]内のGluをAspに置換したものを意味する。
本発明は、UspAを含む融合ポリペプチドを用いた目的ポリペプチドの製造方法に関する。
背景技術
遺伝子組換え技術の進歩により、目的とするポリペプチドをコードする遺伝子をベクターに組み込み、細菌などの宿主細胞を形質転換させることにより、形質転換細胞に目的ポリペプチドを産生させることが可能である。しかしながら、目的ポリペプチドの分子量が小さい等安定性が悪い場合には、宿主細胞が産生するプロテアーゼやペプチダーゼにより細胞内で分解されてしまい、目的ポリペプチドを得ることができない。
そこで、目的ポリペプチドの分子量が小さい等安定性が悪い場合には、目的ポリペプチドの細胞内での分解を避けるために、目的ポリペプチドと付加ポリペプチドを融合させた融合ポリペプチドを宿主細胞内で産生させ、得られた融合ポリペプチドを限定分解して目的ポリペプチドを得る方法が採用されている。
しかしながら、付加ポリペプチドの選択によっては、高い生産量を得ることが困難であり、目的ポリペプチドの効率的製造の妨げとなっていた。
発明の開示
本発明は、UspA(Mol.Microbil.,6,3187−3198(1992))またはその部分配列を含む融合ポリペプチドを産生する組換え体を用いることを特徴とする目的ポリペプチドの製造方法を提供するものである。
本発明者らは、分子量の小さな目的ポリペプチドの効率的な大量生産を目的として研究した結果、本発明を見出し、これを完成した。
すなわち、本発明は、
(1) (A)配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド、
(B)配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド、及び
(C)配列番号:2の1位のAlaから143位のGluまでのアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、
からなる群より選択される付加ポリペプチド、リンカーペプチド並びに目的ポリペプチドより構成される融合ポリペプチド;
(2) 上記(1)記載の(A)、(B)または(C)に記載のアミノ酸配列において、少なくとも1残基以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、リンカーペプチド及び目的ポリペプチドより構成され、かつ宿主中においてプロテアーゼにより分解されない融合ポリペプチド;
(3) リンカーペプチドが、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の融合ポリペプチド;
(4) 目的ポリペプチドが、配列番号:8、配列番号:10および配列番号:12記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の融合ポリペプチド;
(5) 融合ポリペプチドが、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18および配列番号:20に記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(1)、(3)または(4)に記載の融合ポリペプチド;
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(7) 配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17および配列番号:19に記載の核酸配列からなる群より選択されることを特徴とする上記(6)記載のポリヌクレオチド;
(8) 上記(6)又は(7)に記載のポリヌクレオチドを有する発現ベクター;
(9) 上記(8)記載の発現ベクターを宿主に導入して得られる形質転換体;及び
(10)上記(9)記載の形質転換体を培養する工程、産生された融合ポリペプチドを回収する工程、および該融合ポリペプチドを限定分解する工程を包含する目的ポリペプチドの製造方法;
に関する。
本発明において、「配列番号:2の1位のAlaから143位のGluまでのアミノ酸配列」とは、大腸菌由来のUspA(Mol.Microbil.,6,3187−3198(1992))の全長アミノ酸配列を意味する。UspAは、143アミノ酸残基(配列番号:2)からなり、配列番号:1記載の核酸によってコードされるペプチドである。「配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列」及び「配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列」とは、UspAの部分アミノ酸配列を意味する。
本発明において、「付加ポリペプチド」はUspAの全長または断片を含むポリペプチドからなり、UspAの全長ポリペプチドだけでなく、部分ポリペプチドも付加ポリペプチドとして使用され得る。付加ポリペプチドとして好ましいUspAの部分ポリペプチドとしては、「配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド」または「配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド」が例示される。更に好ましくは、「配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド」、「配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド」である。
本発明において「リンカーペプチド」とは、配列特異的プロテアーゼにより認識されるアミノ酸またはアミノ酸配列をC末端に有するペプチドである。好ましくはC末端にプロテアーゼによって認識される配列を有するペプチドを意味する。融合ポリペプチドを構成するリンカーペプチドが、配列特異的プロテアーゼにより切断されることにより、目的ポリペプチドを得ることができる。リンカーペプチドとしては、アミノ酸4残基以上、20残基以下のペプチドが好ましい。具体的には、配列番号:3〜5に記載されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドが例示される。
本発明の「目的ポリペプチド」は、宿主細胞質内で安定性が悪く、単独で発現が困難であるポリペプチドであれば、どのようなポリペプチドでも目的ポリペプチドとなり得る。好ましくは分子量が小さなポリペプチドであり、配列番号:8記載のアドレノメデュリン前駆体(AM−gly)、配列番号:10記載のtatとBH4からなるポリペプチド(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97,7,3100−3105(2000))、配列番号:12記載のHIV−1 integrase core domain F185K(HIV−1 INc)などが例示される。アドレノメデュリン前駆体(AM−gly)とは、アドレノメデュリン(AM:Biochem.Biophys.Res.Commun.,192,553,(1993))のC末端のチロシン残基にグリシン残基を付加した53アミノ酸残基からなるポリペプチドを意味する。
本発明において、「融合ポリペプチド」とは、付加ポリペプチド、リンカーペプチドおよび目的ポリペプチドからなるポリペプチドを意味する。付加ポリペプチドは、融合ポリペプチドのN末端側に位置する。目的ポリペプチドは、融合ポリペプチドのC末端側に位置する。リンカーペプチドは、付加ポリペプチドと目的ポリペプチドとの間に位置する。融合ポリペプチドとしては、目的ポリペプチドがアドレノメデュリン前駆体である配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18及び配列番号20記載のアミノ酸配列が例示される。
本発明の融合ポリペプチドは、「上記(1)記載の(A)、(B)または(C)に記載のアミノ酸配列において、少なくとも1残基以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、リンカーペプチド及び目的ポリペプチドより公正され、かつ宿主中においてプロテアーゼにより分解されない融合ポリペプチド」も包含する。付加ポリペプチド中、置換、欠失、挿入または付加される残基数は、10残基以下であり、融合ポリペプチドは宿主中に存在するプロテアーゼにより分解されないという機能を有する。このようなポリペプチドは、任意のアミノ酸配列を欠失させ、所望のアミノ酸、ないしはアミノ酸配列を導入することによって置換される。アミノ酸配列の置換処理には、いくらかの遺伝子操作技術の組み合わせが広く利用できるが、例えば、Site−diredted deletion(部位指定削除)法(Nucl.Acids Res.,11,1645,1983)、Site−specific mutagenesis(部位特異的変異)法(Zoller,M.J.et al.,Methods in Enzymol.,100,468,1983、Kunkel.T.A.et al.,Methods in Enzymol.,154,367−382,1987)、PCR突然変異生成法、制限酵素処理と合成遺伝子の利用による方法等がある。
部位特異的変異法であれば、例えばMolecuar Cloning:A Laboratory Manual第2版第1−3巻Sambrook,J.ら著、Cold Spring Harber Laboratory Press出版New York 1989年に記載の部位特異的変異誘発法やPCR法などの方法を用い、本発明のポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
本発明のポリヌクレオチドを用いて、目的ポリペプチドを産生するには、例えば、Molecular Cloning等の多くの教科書や文献に基づいて実施することができる。具体的には、発現させたいDNAの上流に翻訳開始コドンを付加し、下流には翻訳終止コドンを付加する。さらに、転写を制御するプロモーター配列(例えば、trp、lac、T7、SV40初期プロモーター)等の制御遺伝子を付加し、適当なベクター(例えば、pBR322、pUC19、pSV・SPORT1など)に組み込むことに、宿主細胞内で複製し、機能する発現プラスミドを作製する。
次に、発現プラスミドを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を得る。宿主細胞としては、大腸菌などの原核生物、酵母のような単細胞真核生物、昆虫、哺乳類などの多細胞生物の細胞などが挙げられる。
このような形質転換体を適当な条件で培養し、該形質転換体を破砕する。融合ポリペプチドを含む画分は遠心分離等により回収される。
本発明において、「融合ポリペプチドを限定分解する」方法とは、臭化シアン等による化学的な切断方法や配列特異的プロテアーゼを利用した方法がある。好ましくは融合ポリペプチドの酵素的な切断により目的ポリペプチドを遊離することができるプロテアーゼを意味する。このようなプロテアーゼとしては、BLase(Eur.J.Biochem.,204,165−171(1992))、V8 protease(J.Biol.Chem.,247,6720−6726(1972))、Streptomyces griseus由来のプロテアーゼ(J.Biochem.,104,451−456(1988))、Lysyl endopeptidase(Agr.Biol.Chem.,42,1443(1978))、Prolyl endopeptidase(J.Biol.Chem.255,4786−4792(1980))、Factor Xa(Biochemistry,7,4506−4517(1968))Thrombin(Arch.Biochem.Biophys.147,201−207(1971))、Enterokinase(Biochemistry,16,3354−60(1977))などが例示される。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、目的ポリペプチドの製造は、以下の工程により行なうことができる。
(1)ベクターの作製及び形質転換体の培養・破砕
(2)融合ポリペプチドの精製
(3)融合ポリペプチドの抽出・溶解
(4)融合ポリペプチドの限定分解
(5)目的ポリペプチドの精製
以下において、各工程につき説明する。
(1)ベクターの作製および形質転換体の培養・破砕
本発明の付加ポリペプチドであるUspAを含む融合ポリペプチドをコードする遺伝子を、適当なベクターに組み込むことにより、融合ポリペプチドを発現するための発現ベクターが作製される。融合ポリペプチドをコードする遺伝子は、付加ポリペプチドをコードする遺伝子の他に、リンカーペプチドをコードする遺伝子及び目的ポリペプチドをコードする遺伝子からなる。UspAをコードする遺伝子の入手源としては、例えばE.coli JM109株の染色体DNAを使用することが出来る。リンカーペプチドをコードする遺伝子としては、合成DNAを使用することが出来る。
ベクターとしては、ファージ又はプラスミドが使用される。この発現ベクターを宿主に導入することにより、形質転換体が作製される。宿主としては、細菌、酵母、昆虫細胞および動物細胞が用いられる。本発明において、宿主としては、好ましくは細菌であり、さらに、好ましくは大腸菌が用いられる。
宿主が大腸菌の場合、目的の融合ポリペプチドを効率的に発現させるためには、宿主内で機能する適切なプロモーター(lac,tac,trc,trp,PLなど)とShine−Dalgarno(SD)配列を有する発現ベクター(pKK223−3,pBS,pDR540,pPL−lambdaなど)や、さらに翻訳開始コドンATGや制御配列を備えたATGベクター(pTrc99Aなど)に目的の融合ポリペプチドを含む遺伝子断片を挿入すれば良い。
発現ベクターを適切な宿主細胞(例えば、E.coli JM103,JM109,JM110,HB101,C600,BL21株など)に導入することによって形質転換体が得られる。この形質転換体を適当な条件で培養し、形質転換体を常法により破砕することにより、所望の融合ポリペプチドを得ることができる。
(2)融合ポリペプチドの精製
融合ポリペプチドを含む画分の回収は、封入体を形成した場合には遠心分離によって行なうことができる。遠心分離は、常法に従って行なうことができる。または、膜を用いて回収することも可能である。封入体を形成しない場合には塩析やカラムクロマトグラフィーなどによって精製することができる。
(3)沈殿した融合ポリペプチドの抽出・溶解
不溶画分の融合ポリペプチドは、可溶化剤で抽出することができる。可溶化剤としては4〜10mol/lの尿素溶液の他、SDSや塩酸グアニジンなどの試薬が例示される。しかしながら、抽出液中にて、限定分解を行なうため、酵素を用いる場合には活性が失われない尿素溶液で抽出するのが好ましい。沈殿化操作によって精製をしない場合この操作は必要とせず、精製後、限定分解可能な条件に溶解しておけば良い。
(4)融合ポリペプチドの限定分解
常法に従い、融合ポリペプチドを化学的あるいは酵素的方法により切断し、目的ポリペプチドを得る。限定分解を行なうための、化学的方法としては臭化シアンを使った方法、酵素的方法としては、BLase(Bacillus licheniformis Glu−specific endopeptidase)、V8 protease、Lysyl endopeptidase、Prolyl endopeptidase、Factor Xa、Thrombin、Enterokinaseを使った方法などが例示できる。限定分解は、上述の抽出液の尿素濃度を透析または希釈により調節した後におこなうことが好ましい。酵素を使った場合には好ましい尿素濃度は、0mol/l〜2mol/l程度である。
(5)目的ポリペプチドの精製
目的ポリペプチドは、各種クロマトグラフィーで精製することができる。精製した目的ポリペプチドは、凍結乾燥により長期保存が可能である。
実施例
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
実施例1 候補とする新規付加ポリペプチドの選出
種々の付加ポリペプチドを生産量の面から検討し、チオレドキシン分子やそのN末端部分配列からなるポリペプチドを付加タンパク質としたAM−glyの発現方法が得られていたが、発現量が温度変化や培地条件によって大きく影響を受けるために高密度培養のような方法を使用した効率的な大量発現法の開発が困難であった。そこで宿主由来のポリペプチドから付加ポリペプチドに適したものを探索することにした。近年プロテオーム解析に使われる二次元電気泳動は通常分子量、そして等電点を指標とした電気泳動が行われ、これらに関する情報の他にその発現量も知ることができる。一方融合タンパク質は分子量が小さいものの方がより効果的に相手側のポリペプチドを生産することが可能であり、安定性は等電点の影響を受けることが知られている。分子の配列部分を一定の大きさに限定する場合、小さなタンパク質分子は安定性等その分子が持つ特性を保持する可能性が大きいとも考えられる。さらに電気泳動データで明瞭なスポットを形成するタンパク質分子は高い発現量を得ることが可能で、安定性にも優れる可能性が高い。これらの理由から宿主とする大腸菌のタンパク質二次元電気泳動データより候補とする付加タンパク質を選抜し、付加タンパク質領域のみが異なるAM−glyの発現プラスミドを構築、安定した高発現が得られる組み合わせを探索することにした。タンパク質二次元電気泳動データはElectrophoresis,19,1960−1971(1998)を用いた。AM−gly分子自身は等電点が高いために等電点4−7、そして分子量が小さな分子群のうちから発現量が比較的多いHdeB、YfiD、UspA、YjgF、YgiN、PtsHを検討に用いることにした。これらの多くは機能が未知のタンパク質である。ヒストン様タンパク質(Hns)やribosomal subunit protein(RpsF)の高発現は菌体の増殖に悪影響を与える可能性があったので候補から除外した。HdeBに関しては分泌シグナルが存在するのでシグナルを除いた形でも検討することにした。
実施例2 発現プラスミドの構築
Cephalosporin−C deacetylaseの発現プラスミドであるpCAH431[J.Biosci.Bioeng.,87,446(1999)]の0.2kbp VspI−XbaI断片と0.23kbp SspI−DraI断片を除去してpCAH4312を構築し、このプラスミドを基にした。pCAH4312を鋳型としてtrp promoterを含む部分をPCRにより増幅し、pMOSblue T−vector(アマシャム・ファルマシア社製)にクローニングした。pCAH4312のEcoRI−XbaI間に、クローニングされたtrp promoterを含むSmaI−XbaI断片を挿入し、大腸菌用ATGベクターpATG1131とした。EcoRI切断末端はT4 DNA polymeraseで平滑化処理の後、SmaI切断末端と連結した。PCRに用いたプライマーの配列を示す。発現プラスミドpATG1131はEcoRI−XbaI間にクローニングした遺伝子をtrp promoterを使って発現する。
センス側プライマー
アンチセンス側プライマー
まず[GSGSGDAFE]−AM−gly合成遺伝子を含むNaeI−SalI遺伝子を4本の合成DNAを用いたPCR反応により作製し、pUC18上にクローニングした([GSGSGDAFE]−AM−gly/pUC18)。用いた合成DNAの配列を示す。下線部分は互いに相補する配列部分である。
次にHdeB、YfiD、UspA、YjgF、YgiN、PtsHの遺伝子断片を取得し、キメラ遺伝子を構築してATGベクターに組み込んだ。HdeBに関しては分泌シグナルが存在するのでシグナルを除いた形での断片取得も行った。いずれもE.coli JM109株の染色体DNAを鋳型にしたPCRにより該当遺伝子部分を増幅し、得た断片をpUC18上で[GSGSGDAFE]−AM−gly遺伝子の5’末端に融合した後、pATG1131のEcoRI−XbaI間にクローニングした。EcoRI切断末端はMung Bean Nucleaseで平滑化処理し、また連結する各蛋白質の遺伝子側の5’側も必要なものはMung Bean NucleaseまたはT4 DNA polymeraseにより平滑化処理して野生型の5’配列を持つ遺伝子として組込んだ。この操作過程で当該遺伝子内に切断を受けるものはその切断配列にアミノ酸置換を伴わない部位特異的な変異を導入した。付加ポリペプチド遺伝子の3’側の連結にはNaeI切断配列を使った都合上Ala残基が付与された。PCRに用いたDNAの配列を以下に示す。
センス側プライマー
アンチセンス側プライマー
実施例3 発現実験
構築した発現プラスミドを保持するE.coli BL21株を試験管培養(10mL CAH−A培地(5μg/ml tetracycline)、37℃、振とう数300min−1)した。培養終了液の菌体総蛋白質についてSDS−PAGE、CBB染色した結果、分泌シグナルを残したHdeBを用いた場合以外はいずれも[GSGSGDAFE]−AM−glyと融合したタンパク質の生産が確認できた。UspA、YgiNが顕著な発現を示し、これらのプラスミド名をpAME9101、pAMEB101とした。構築した諸プラスミドは構造遺伝子領域のみが異なり、発現量の差は主にタンパク質の安定性に起因するものと推測できた。
CAH−A培地の組成
実施例4 低分子化したUspAを用いたAM−glyの融合発現
UspA−[A]−[GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:13、14)発現プラスミドpAME9101と同様の方法を用いてUspAのN末端部分配列を使用したプラスミドを作製した。発現量が大幅に低下しない範囲で付加ポリペプチドの分子量を下げれば生産効率を上げることが可能となる。部分配列としてはUspA[1−84]、UspA[1−65]、UspA[1−59]、UspA[1−57]を用い、これらの領域のPCRに用いたプライマーの配列を以下に示す。
センス側プライマー(共通)
アンチセンス側プライマー
各プラスミドを保持するE.coli BL21株を実施例11と同じ方法で試験管培養したところ最も分子量を小さくしたUspA[1−57]−[A]−[GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:15、16)でも発現可能であり、さらに封入体の溶解性を高めるためにAspを導入して等電点を低くしたUspA[1−56]−[DD]−[GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:17、18)もまた発現可能であった。2−L jar fermentorを用いてpAME9105(UspA[1−84]−[A]−GSGSGDAFE]−AM−gly(配列番号:19、20)発現プラスミド)、pAME9107(UspA[1−56]−[DD]−[GSGSGDAFE]−AM−gly発現プラスミド)をそれぞれ保持するE.coli BL21株について培養したところ、前者が2.2g/L、後者が1.6g/Lの生産性を示した。生産量の測定はSDS−PAGEのゲルをCBB染色し、BSAを標準としてデンシトメーターで測定した。培養は1.2LのCAH−A培地(5μg/ml tetracycline・HCl)を用い、32℃、通気1L/min、攪拌800rpmで行った。pAME9107のUspA[1−56]遺伝子領域中に存在するGluをAspに置換したpAME9108を構築した。以下、GluをAspに置換したUspA[1−56]をUspA[1−56]*と称する。
実施例5 半回分培養の実施
2−L jar fermentorを用いてpAME9108を保持するE.coli BL21株を用いた半回分培養を行い、UspA[1−56]*−[DD]−[GSGSGDAFE]−AM−glyの生産を試みた。この結果3.9g/Lの生産量を得ることができた。条件を検討することでさらに高いレベルでの生産もできるだろう。生産量の測定はSDS−PAGEのゲルをCBB染色し、BSAを標準としてデンシトメーターで測定した。同条件でpAME3105保持株の培養を行ってもthioredoxin−[GSGSGDAFE]−AM−glyの生産は認められない。培養は1.2L R/2培地にテトラサイクリン塩酸塩を5μg/ml添加し、32℃、攪拌速度800rpm、通気速度1.2L/minでアンモニアをpH>6.7になるように添加しながら27h行った。流加は500g/Lグルコース,12.5g/L MgSO4・7H2O水溶液を溶存酸素濃度の低下を栄養源枯渇の指標にして合計5回添加した。
R/2培地の組成
実施例6 他の目的ポリペプチドの発現系構築
高い発現量を得ることが困難であったAM−glyを高発現可能な付加ポリペプチドとして新規にUspA、UspA[1−84]、UspA[1−56]*−[DD]、YgiNが得られ、これらの付加ペプチドは他の目的ポリペプチドの生産にも応用できると考えられた。これらの付加ポリペプチドとしての利用例は報告されておらず、有用性の調査を目的とし、tat−[A]−BH4と変異型HIV−1 integrase core domain F185K(HIV−1 INc)についても発現実験を行うことにした。AM−gly、tat−[A]−BH4は単独では発現できないのに対してHIV−1 INcは発現可能である。プラスミドの構築はpAME9101、pAME9105、pAME9108、pAMEB101、pAME3105を使用し、AM−gly遺伝子領域を含むこれらのNspV−XbaI断片を上記遺伝子と置換することによった。tat−[A]−BH4遺伝子断片は合成DNAにより、またHIV−1 Inc遺伝子はpTYI−201(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,92,6057−6061(1995))を鋳型としてPCRによって増幅、pMOSBlueにクローニングした断片を使用した。用いた合成DNAの配列を以下に示す。
tat−[A]−BH4合成遺伝子(二本鎖)
HIV−1 INc用PCRプライマー
センス側プライマー
アンチセンス側プライマー
実施例7 各キメラ遺伝子発現量の比較
構築した発現プラスミドを保持するE.coli BL21株、E.coli JM109株(それぞれB株、K−12株由来)を試験管培養(10mL CAH−A培地、37℃、振とう数300min−1または5ml L培地、37℃、振とう数120min−1(いずれもBL21株の場合5μg/ml、JM109株の場合10μg/mlのtetracycline・HClを添加))した。L培地の組成は1Lあたり10g Tryptone peptone,5g Yeast extract,5g NaCl,pH7.3とした。培養終了液の菌体総蛋白質についてSDS−PAGE、CBB染色し、デンシトメーターで発現量を調べた。発現量は内部標準をとって比として算出した(図1−4)。図中、比1はおよそ1g/Lに相当する。また、これらの宿主、培養条件のうち、融合したポリペプチドを最も多量に発現する組み合わせを抽出し、図5にまとめた。
この結果から、今回本手法によって分離することができた高生産用付加ポリペプチドUspA、UspA[1−84]、UspA[1−56]*−[DD]、YgiN、チオレドキシンのいずれもが高い発現量を得ることができた。特に図1−4のどの条件でもUspA及びその部分配列はAM−gly、そしてUspAの部分配列はtat−[A]−BH4の生産に適しており、一方、図5を見て分かるように他の分子形ではほぼ同等の生産量が得られる。このことから UspA、UspA[1−84]、UspA[1−56]*−[DD]のいずれかを用いれば多くのポリペプチドの高生産が可能であり、特にAM−glyやtat−[A]−BH4のように細胞内で単独の発現ができない分子には効果が大きいことが分かった。AM−glyの場合には他分子が全く生産が見られない場合にでも生産性が認められる。またここで用いたUspAのN末端部分配列の配列長はAppl.Microbiol.Biotech.,42,703−708(1995)、Gene,29,251−254(1984)等に報告されている他分子と比べて短く、当初の目的にかなった結果となった。特に小さなペプチドの生産にはより効果的な生産系の構築が可能となる。UspA分子はCysを108番目のアミノ酸残基として一つ持つのみであるため、目的とするポリペプチド間とのCys−Cys結合の形成を考慮する必要もない。AM−glyと同様にtat−[A]−BH4やHIV−1 INcについてもUspAあるいはその部分配列を付加ペプチドとした半回分培養、流加培養による高い発現レベルでの生産が可能である。
産業上の利用可能性
本発明によれば、付加ポリペプチドとしてUspAまたはその部分ポリペプチドを用いることにより、目的ポリペプチドを効率的に大量生産することが可能となる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、E.coli JM109を宿主とし、L培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比を示す図である。
図2は、E.coli BL21を宿主とし、L培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比を示す図である。
図3は、E.coli JM109を宿主とし、CAH−A培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比
図4は、E.coli BL21を宿主とし、CAH−A培地で培養した各融合ポリペプチドの生産量の比を示す図である。
図5は、図1−図4の各条件で最大の産生量を示したものをまとめたものである。
図1〜図5中、UspA[1−56]*はUspA[1−56]内のGluをAspに置換したものを意味する。
Claims (10)
- (A)配列番号:2の1位のAlaから56位のAspまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド、
(B)配列番号:2の1位のAlaから84位のLeuまでのアミノ酸配列を含む付加ポリペプチド、及び
(C)配列番号:2の1位のAlaから143位のGluまでのアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、
からなる群より選択される付加ポリペプチド、リンカーペプチド並びに目的ポリペプチドより構成される融合ポリペプチド。 - 請求項1記載の(A)、(B)または(C)に記載のアミノ酸配列において、少なくとも1残基以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を有するアミノ酸配列からなる付加ポリペプチド、リンカーペプチド及び目的ポリペプチドより構成され、かつ宿主中においてプロテアーゼにより分解されない融合ポリペプチド。
- リンカーペプチドが、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の融合ポリペプチド。
- 目的ポリペプチドが、配列番号:8、配列番号:10および配列番号:12記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の融合ポリペプチド。
- 融合ポリペプチドが、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18および配列番号:20に記載のアミノ酸配列からなる群より選択されることを特徴とする請求項1、3または4に記載の融合ポリペプチド。
- 請求項1から5のいずれかに記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
- 配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17および配列番号:19に記載の核酸配列からなる群より選択されることを特徴とする請求項6記載のポリヌクレオチド。
- 請求項6又は7に記載のポリヌクレオチドを有する発現ベクター。
- 請求項8記載の発現ベクターを宿主に導入して得られる形質転換体。
- 請求項9記載の形質転換体を培養する工程、産生された融合ポリペプチドを回収する工程、および該融合ポリペプチドを限定分解する工程を包含する目的ポリペプチドの製造方法。
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