JPWO2002078032A1 - 回路遮断器 - Google Patents

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Abstract

導体に固定接点が固着された固定接触子と、前記固定接点と接離する可動接点が固着された可動接触子と、この可動接触子を回動させる開閉機構部と、前記固定接点と可動接点とが接離する時に発生するアークを消弧する消弧装置と、これらを収納する筐体とを備えた回路遮断器において、前記消弧装置には、前記固定接触子の全面を覆うように消弧部材が設けられ、かつ前記消弧部材が、非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体を含む回路遮断器。本発明によれば、優れた難燃性を確保するとともに、過負荷遮断や短絡遮断など遮断性能の優れた回路遮断器が小型化でもって提供される。

Description

技術分野
本発明は、回路遮断器に関するものである。
背景技術
図1および図2は、回路遮断器の断面図であり、図1は回路遮断器のオン状態、図2は回路遮断器のオフ状態を示す。また、図3は回路遮断器の消弧装置の消弧部材の拡大図を示す側面図(a)および平面図(b)である。図において、1は銅などの導体からなる可動接触子、2は可動接触子1の一端に固着された可動接点、3は可動接点2と接離する固定接点、4は固定接点3が固着された銅などの胴体からなる固定接触子、5は固定接触子4の他端部に構成された電源側の端子部であり、外部電源から配線が接続される。6は消弧装置であり、互いに空隙を介して積層配列され、可動接点2と固定接点3の間に発生したアークを冷却、消弧する磁性体の金属からなる複数の消弧板(グリッド)6aと、グリッド6aを両側で保持する消弧側板6bと、図3に示した消弧部材6cで構成されて、消弧部材6cおよび消弧側板6bは絶縁材料からなる。消弧部材6cは可動接点2および固定接点3の間に設けられており、固定接点3を露出した状態でアークに曝される固定接触子4の全面を覆うように設けられている。7は可動接触子1を回動し、開閉駆動する開閉機構部、8はこの開閉機構部7を手動で操作するためのハンドル、9は引き外し装置、10は負荷側の端子部である。11はカバー、12はベースで、前記部品を収納・固定し、筐体16の一部を構成している。13は端子部5を筐体16内と隔離するエンドプレートであり、アークによるホットガスを排出する排気口13aを有し、ベース12に設けられたガイド溝12aに挿入装着されている。14はアークを端子部5の方向へ走行させるアークランナである。
次の前記の回路遮断器の動作について説明する。
図1において、ハンドル8を操作すると、開閉機構部7が動作して可動接触子1が回動し、可動接点2と固定接点3とが接触開離する。端子部5を電源に、端子部10を負荷に接続し、接点を接触させることにより電力が電源から負荷に供給される。この状態で、通電の信頼性を確保するために可動接点2は固定接点3に規定の接触圧力で押さえつけられている。ここで、負荷側に過電流が流れると、過電流を引き外し装置9で検出し、開閉機構部7が動作して図2に示すように両接点2,3の間にアーク15が発生する。
一方、短絡事故などが起こり回路に大きな過電流が流れると、両接点2,3間の接触面における電磁反発力が強くなり、前記可動接点2に加わっている接触圧に打ち勝つために、可動接触子1は引き外し装置9および開閉機構部7の動作を待たずに回動し、接点2,3の開離が起こる。アーク電圧は、固定接点3から可動接点2までの開離距離が増大するに従って上昇し、また、同時にアーク15が消弧装置6の方向へ磁気力によって引き付けられ伸張するために、さらに上昇する。このようにして、アーク電流は電流零点を迎えアーク15を消弧し、遮断が完了する。
すなわち、消弧装置6の消弧板6aはアーク15の熱を吸収し、冷却するとともにアーク15を屈曲させ可動接点2と固定接点3の接点間距離を引き離すように作用する。また、消弧部材6cは可動接点2から固定接触子4へのアークの起点移動(アークタッチ)を防ぐとともに高温のアーク15に曝されることによって熱分解ガスを発生し、この熱分解ガスはアーク15を冷却・吹消す消弧ガスとして作用している。
近年、配電盤サイズの縮小化にともない回路遮断器自体コンパクト化される傾向にあり、また、回路遮断器に使用されるプラスチック材料に対して要求される難燃性のレベルが向上する傾向にある。
具体的には、製品拡販のグローバル化により、欧州のIEC60947規格や米国のUL746規格に適合する製品が要望されている。両規格の中では、国内ではUL−HBの比較的低い難燃要求の消弧部材等の通電部を保持する材料の難燃性に関して、IEC60947規格はグローワイヤーイグニッション(GWI)960℃以上でかつホットワイヤーイグニッション(HWI)がUL94−V0でHWI指数4またはUL94−V2でHWI指数2以上を規定し、一方、UL746規格はUL94でV0以上とそれぞれの規格で最上級レベルの難燃性が要求されている。
この対応策として、難燃性樹脂の消弧部材への適用が考えられ、その代表格として少量の充填量で効果を発揮する臭素などハロゲン化合物を充填したハロゲン難燃樹脂あげられる。
しかし、ハロゲン難燃樹脂はアークに曝されて発生する熱分解ガス中に金属に活性な成分を含有するためか、金属腐食が著しく電極接点不良の原因となり繰返し遮断後の通電が不能となる。特にハロゲン化合物系ではアークの高温(7000〜20000℃)によりプラズマ化された分解ガスにハロゲンイオンが存在されるためか消弧性が劣り遮断性能が悪化し遮断が不能となったり、あるいは、遮断を確実にするには電極間の距離を大きくすることが必要となり開閉遮断器の小型化が困難となるなどの問題があった。
なお、非ハロゲン難燃樹脂は近年開発が盛んに行われており、リン化合物系、珪素樹脂系あるいは水酸化アルミニウムなど無機系難燃剤を充填した難燃性樹脂や、ポリフェニレンサルファイドなど樹脂自体で難燃性を有する芳香族系樹脂が知られている。
リン化合物系難燃剤は一般に使用し難い上に、特に赤燐を用いた系ではハロゲン系よりも金属腐食が著しく、電極接点不良による繰返し遮断後に通電不能となる。
また、珪素樹脂系難燃剤や無機系難燃剤を充填した難燃樹脂は、熱分解ガスのプラズマ場で生成される金属酸化物や酸化ケイ素などの絶縁性セラミックスが電極接点上へ蒸着・堆積することにより電極表面を汚染する接点不良を誘引し、繰返し遮断後の通電が不能となる。さらに、無機系難燃剤は難燃性を発揮させるために高充填化が必須であるが、耐熱性の高融熱可塑性樹脂への混練には汎用無機難燃剤(水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム)の熱分解温度が低くすぎて高充填化が難しく難燃性が満足できなかったり、あるいは、低融点熱可塑性樹脂への高充填化を達成し難燃性を満足しても、消弧部材の機械強度は低下する。
一方、ポリフェニレンサルファイドなど樹脂自体で難燃性を発揮する芳香族樹脂は、ポリマー分子中の炭素含有率が高いため、遮断性能を悪化する傾向があり、遮断性能を確保するためにはアークと固定接触子の距離の拡大が必要で回路遮断器の小型化の障害となるなどの問題があった。
本発明は、前記のような問題点を解消するためになされたもので、難燃化による電極接点の腐食や汚染による導通不良、あるいは機械強度低下や絶縁悪化を抑制することにより難燃性と遮断性能の優れた、小型化の可能な回路遮断器を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明は、導体に固定接点が固着された固定接触子と、前記固定接点と接離する可動接点が固着された可動接触子と、この可動接触子を回動させる開閉機構部と、前記固定接点と可動接点とが接離する時に発生するアークを消弧する消弧装置と、これらを収納する筐体とを備えた回路遮断器において、前記消弧装置には、前記固定接触子の全面を覆うように消弧部材が設けられ、かつ前記消弧部材が、非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体を含むことを特徴とする回路遮断器を提供するものである。
また本発明は、消弧用絶縁材料成形体に、難燃剤としてトリアジン系有機化合物が含まれていることを特徴とする前記の回路遮断器を提供するものである。
また本発明は、消弧用絶縁材料成形体のマトリックス樹脂が、ポリアミドであることを特徴とする前記の回路遮断器を提供するものである。
消弧用絶縁材料成形体のマトリックス樹脂であるポリアミドが、非芳香族系ポリアミドであることを特徴とする前記の回路遮断器を提供するものである。
非ハロゲン難燃性樹脂が、前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して10重量%以下の有機繊維、および前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して15重量%以下のセラミックウイスカーからなる群から選択された1種以上の充填材を含有していることを特徴とする前記の回路遮断器を提供するものである。
また本発明は、消弧部材が、アークに曝される被アーク層と、前記被アーク層を支持するバックアップ層との積層体からなり、前記被アーク層が、非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体からなり、かつ前記バックアップ層が、ガラス繊維、無機鉱物およびセラミック繊維からなる群から選択された1種以上を含有する難燃性樹脂からなることを特徴とする前記の回路遮断器を提供するものである。
また本発明は、バックアップ層の一部が、被アーク層を複数箇所貫通していることを特徴とする前記の回路遮断器を提供するものである。
発明の実施の形態
以下、本発明の回路遮断器についてさらに説明する。
本発明の回路遮断器は、既に説明した図1ないし図3の主用部品の構成において接点2,3間に発生するアークに曝される消弧装置6の最もアークに近接した消弧部材6cの部分に非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体を用いることを特徴としている。
消弧用絶縁材料成形体は、難燃剤としてトリアジン系有機化合物が含まれていることが好ましい。
このようなトリアジン系有機化合物としては、例えば特開昭53−31759号公報に記載される化合物が挙げられ、とくにアークに曝されて発生する熱分解ガス中に金属腐食や金属酸化物を含まないものが好ましく、具体的には例えばメラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリーグアナミン、メラム、メレム、メロンなどメラミン誘導体、メラミン化合物あるいはメラミン縮合物を含むメラミン類;トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、トリ(n−プロピル)シアヌレート、メチルシアヌレート、ジエチルシナヌレートなどシアヌル酸化合物類、トリメチルイソシアヌレート、トリエチルイソシアヌレート、トリ(n−プロピル)イソシアヌレート、メチルイソシアヌレート、ジエチルイソシナヌレートなどイソシアヌル酸化合物類が挙げられる。
これらのトリアジン系有機化合物は、下記で説明するマトリックス樹脂に対し5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%含まれるのが好ましい。
また、消弧用絶縁材料成形体のマトリックス樹脂は、例えば特開平7−302535号公報などに記載されるポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体、ポリアセタール、ポリアセタール共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体等が挙げられ、アークに曝されて発生する熱分解ガス中に金属腐食や電極接点汚染あるいは遊離炭素など導通不良や消弧性を悪化する組成の含有量が少ないものが好ましく、さらに好ましくは、機械特性やトリアジン系有機化合物との相溶性の優れたナイロン12、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tなどのポリアミドがよく、さらには炭素含有量の少ないナイロン6,ナイロン66,ナイロン46など非芳香族ポリアミドがアーク被曝による消弧用絶縁材料成形体の表面炭化層の形成が少なく好ましい。
また、非ハロゲン難燃性樹脂が、前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して10重量%以下の有機繊維、および前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して15重量%以下のセラミックウイスカーからなる群から選択された1種以上の充填材を含有しているのが好ましい。
本発明で用いる有機繊維としては、例えば超高分子ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フェノール繊維など燃焼時に焼失するものであって、好ましくはマトリックス樹脂との混練性、成形温度以上の融点、分解温度、機械的特性を考慮すると、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などがよい。
本発明で用いるセラミックウイスカーとしては、アルミナ、酸化亜鉛、水酸化マグネシューム、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムなど金属酸化物類や水酸化物類、窒化物類、炭化物類あるいは硼酸化合物類など直径数μm以下の針状結晶のウイスカーが挙げられるが、好ましくは成形物の絶縁抵抗を損なわず、アークによりイオン化され難く、また、入手性の観点より水酸化マグネシュームウイスカーやホウ酸アルミニウムがよい。
なお、一般にトリアジン系有機化合物を含む難燃性樹脂は、無機系化合物やガラス繊維など充填剤の添加により、トリアジン有機化合物の燃焼時に難燃性付与効果を発揮するチャー形成層をガラスなどの燃焼残査が破壊する、すなわち、成形体表面に残留する燃焼残査のローソク効果により難燃性が悪化することが知られているが、本発明では燃焼とともに焼失あるいは欠落し成形体表面の燃焼残査が少ない、有機繊維やセラミックウイスカーを用いた。
本発明で用いる消弧用絶縁材料成形体は、難燃剤入り樹脂ペレットあるいは、難燃剤粉体とニート樹脂ペレットを同時に押出機のホッパーに導入し、その後、有機繊維またはセラミックウイスカーを樹脂の溶融帯域中へ押出し機のサイドフィーダより所定量を添加し、ペレット状の非ハロゲン難燃性樹脂を作製し、これを公知の射出成形法により成形して得ることができる。
また本発明において、消弧部材は、アークに曝される被アーク層と、この被アーク層を支持するバックアップ層との積層体から構成されていてもよい。
例えば図4に示されるような消弧用絶縁材料成形体6aを消弧部材に用いる場合、例えば図5aに示すように、被アーク層6a−1が非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体からなり、バックアップ層6a−2が、ガラス繊維、無機鉱物およびセラミック繊維からなる群から選択された1種以上を含有する難燃性樹脂からなることができる。また、図5bに示すようにバックアップ層樹脂6a−2の一部が、被アーク層6a−1を複数箇所、例えば櫛状に貫通しているようにし、被アーク層6a−1とバックアップ層6a−2との接合力を強固にするのが好ましい態様である。
バックアップ層6a−2に含まれる難燃性樹脂を補強する充填剤は汎用のガラス繊維、無機鉱物および/またはセラミック繊維であって、成形物の絶縁抵抗を損なわない限り特に限定するものでない。充填剤の配合量は、下記で説明するマトリックス樹脂に対し5〜50重量%、好ましくは15〜30重量%がよい。また必要に応じてハロゲン系難燃剤も適量用いることができる。また、バックアップ層6a−2はアークに対し被アーク層6a−1の裏側あるいはエネルギーの大きいアーク芯より離して配設するため、回りこんでくる比較的弱いアーク風に曝されるだけなのでアークによる熱分解や炭化層の形成も比較的少ない。このため、難燃剤はグローワイヤ960℃、UL94でV0以上の難燃性を発揮するものであれば、バックアップ層の機械強度を損なわない限り特に限定するものではない。
次に、バックアップ層6a−2に用いるマトリックス樹脂としてはポリオレフィン、ポリアセタール、ポリアミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリスルホンなどや、それらの共重合体の熱可塑性樹脂、あるいは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂など熱硬化性樹脂が挙げられるが、好ましくは成形性の観点より熱可塑性樹脂が望ましく、さらに好ましくは耐熱性、耐衝撃性に優れかつ被アーク層6a−1の樹脂との相溶性の良い芳香族ポリアミドが望ましい。
図5に示されるような態様において、被アーク層6a−1とバックアップ層6a−2からなる消弧用絶縁材料成形体の作製は、公知の射出成形による二色成形により一体化成形することができる。なお、この製造法に限定されるものではなく被アーク層6a−1とバックアップ層6a−2それぞれを成形した後に両者を接着剤などで貼り合わせてもよい。
実施例
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例中%とは、特に断らない限り重量%を示す。
実施例1
実施例1の非ハロゲン難燃性樹脂はマトリックス樹脂ナイロン66に、マトリックス樹脂に対して難燃剤としてシアノメラミンを10%充填したものである。具体的には、東洋紡製:T−662樹脂ペレットにDSM製:melapur MCの所定量を予めドライブレンドしたのち二軸押出機にて混練し作製した。難燃性は射出成形した厚さ1.6mmの平板をそれぞれの試験片形状に切出して評価した。また、遮断性能は実機模擬試験用として図4の形状で肉厚1.6mmとした消弧用絶縁材料成形体を射出成形法により作製し評価た。
難燃性試験はUL94、UL746:HWI(熱線着火性試験)、IEC707:GWI(グローワイヤー試験)それぞれの規定に基づき、それぞれの専用試験機、UL94燃焼性試験機(スガ試験機(株)製)、HWI着火性試験機(スガ試験機(株)製)、GWI燃焼性試験機(スガ試験機(株)製)を用いて評価した。
遮断性能試験は実機を模擬した回路遮断器を試作し下記に示す過負荷試験および短絡試験を行った。
過負荷試験:前記構成の消弧装置を含む回路遮断器にオン状態で定格電流の6倍の電流(たとえば100A用回路遮断器の場合600A)を通電し、可動接点2と固定接点3とを接点開離距離L(可動接点2と固定接点3との距離)25mmで開離させ、アーク電流の遮断を規定回数(12回)成功させることをもって合格とする試験である。
短絡試験:オン状態において、電圧230〜690Vで50KAの過剰電流を流して可動接触子を開離させ、アーク電流を発生し、このアーク電流の遮断を規定回数(3回)の成功と破損(具体的には筐体の欠損)がないことをもって合格とする試験である。
試験条件としては、100〜250AFクラスの回路遮断器を想定し、過負荷試験1は3相720V/600A、過負荷試験2は3相720V/1050A、過負荷試験3は3相720V/1500Aで評価した。また、短絡試験1は3相500V/30KA、短絡試験2は500V/50KA、短絡試験3は440V/65KAで評価した。
この樹脂組成と難燃性および遮断性能評価結果を結果と表1に示す。過負荷試験は成功遮断回数を短絡試験は成功遮断回数と破損の有無を示した。
この結果、難燃性はUL94がV0、HWI指数が4、GWI960℃と、いずれも合格である。また、遮断性能は過負荷試験1、2、3ともに規定遮断回数の12回をクリアーし、短絡試験1,2も規定遮断回数の3回をクリアーするものの、短絡試験3では成功遮断回数が2回で、しかも筐体の一部に亀裂が発生した。この短絡試験3ではアークエネルギーが大きく、アーク風圧により欠落した消弧部材一部がアーク場に巻き込まれることにより熱分解ガスの発生量が増大し筐体を破壊すると共に、3回目の短絡試験では、消弧部材が2回目の短絡遮断で欠損し、アーク電流を吹消すだけの熱分解ガスを発生することができないため遮断不能となったものと考えられ、この実施例1の樹脂組成で遮断条件の厳しい高定格な回路遮断器に適用するためには、すなわち、短絡試験3をクリアーするためには、アークの芯となる固定接点と可動接点の法線と、消弧部材の被アーク面とのギャップ距離を拡大(消弧装置の大型化)するか、あるいは、アーク風圧によって欠損しないよう消弧部材の補強が必要と考えられる。
実施例2〜5
実施例2〜5はマトリックス樹脂のナイロン種類を変えたもので、強化材や難燃剤を含まないニート樹脂を用いた。マトリックス樹脂の種類の他は全て実施例1と同様にして樹脂ペレット、試験片などを作製し、難燃性や遮断性能を評価した。試験結果を表1に示す。
ここでマトリックス樹脂は、実施例2がナイロン6(東洋紡製:T−803)、実施例3がナイロン46(DJEP製:スタニールTS−300)、実施例4でナイロン6T(東洋紡製:TY−502NZ)、実施例5でナイロン9T(クラレ製)をそれぞれ用いた。
この結果、実施例2,3はいずれも強化材の充填してないニート樹脂のため実施例1と同様にアーク風により細隙部材の一部が欠損するためか、短絡試験3で成功遮断回数が2回となるものの、他の短絡試験および過負荷試験ともに良好である。また、実施例4,5は樹脂中の成分に芳香族が含まれるため繰返し遮断による細隙部材表面の炭化のためか、過負荷試験3の成功遮断回数が11回と僅かに及ばないが、他の過負荷試験や短絡試験ともに良好である。
実施例6〜9
実施例6、7は強化材としてチョップストランドのアラミド繊維(帝人製:テクノーラ)をマトリックス樹脂に対してそれぞれ5%、10%充填したもので、実施例8,9はホウ酸アルミウイスカー(四国化成製:アルボレックス)をそれぞれ10%、15%充填したものである。これらの樹脂ペレットは実施例1の非ハロゲン難燃樹脂をマトリックス樹脂として、それぞれ強化材の所定量を2軸押出し機のサイドフィーダーより添加、混練し作製した他は、実施例1とまったく同一の条件で評価した。試験結果を表1に示す。
この結果、いずれの実施例も難燃試験および遮断性能試験をクリアーした。これは、強化材として添加した10%以下のアラミド繊維や15%以下のホウ酸アルミウイスカーは難燃性の悪化に影響を及ぼすことなく、かつ消弧部材の耐衝撃性が向上されたものと考えられる。
比較例1〜2
比較例1、比較例2は難燃剤として、ハロゲン系の臭化ポリスチレン(Br−PS)を用いたもので、比較例1はマトリックス樹脂ナイロン66(東洋紡製:T−662)に、臭素化ポリスチレン(東ソー製/フレームカット210R)を25%および難燃助剤として三酸化アンチモン(Sb)10%を充填したもので、比較例2は比較例1にガラス繊維を30%充填したものである。
これらハロゲン系の臭化ポリスチレンの難燃効果は良好で、ガラス繊維を充填した比較例2でもUL94およびGWIも合格で、また両比較例ともにHWIはシアノメラミンの指数4〜3に比べ指数2と極めて良い。しかし、遮断性能は比較例1で過負荷試験、短絡試験ともに度の試験条件でもクリアーできるものがないほど悪く、また比較例2では短絡遮断性能は短絡試験3が、過負荷遮断性能は全ての試験条件で要求成功遮断回数の半数回以下で導通不能となる。これは、過負荷試験ではアークに曝されて発生するガスに臭素が含まれるため接点金属を腐食し導通不能を引き起こし、また、短絡試験では消弧ガス中に臭素イオンが存在するため消弧時間が長くなり、消弧装置のグリッドを消耗させるなどの現象により遮断性能を悪化させたものと想定される。
Figure 2002078032
実施例10〜14
実施例10〜14は、図5の態様の消弧部材を試験した例である。実施例10〜13は図5aに示すように、被アーク層6a−1として実施例1のシアノメラミンを添加したナイロン66を、バックアップ層6a−2は表2に示すような無機化合物やガラス繊維で強化されたハロゲン難燃性樹脂を積層成形した単純二層構造の成形体である。ここで、まず0.8mm厚さの被アーク層を射出成形し、ついでバックアップ層を全体の肉厚が1.6mmになるように射出成形する二色成形法で消弧部材を作製した。また、実施例14は図5bに示すようにバックアップ層樹脂6a−2の一部が被アーク層6a−1の表面に貫通するよう部分貫通二層積層構造とし、被アーク層とバックアップ層の接合力を強固にした。すなわち、バックアップ層の一部が、非ハロゲン難燃性樹脂からなる被アーク層に断面が櫛状に貫通成形したものである。
それぞれの実施例10〜14で用いたバックアップ層樹脂は、UL94はV0で、HWI、GWIともに規格をクリアーする市販の難燃樹脂で、実施例10はガラス繊維25%のブロム難燃PA66(デュポン製:ザイテルFR50)を、実施例11はタルク30%充填ブロム難燃PA66(デュポン製:ザイテルFR70M30)を、実施例12はガラス繊維20%のブロム難燃PA46(DJEP製:スタニールTS250F40)を、実施例13はガラス繊維45%のブロム難燃PA46(DJEP製:スタニールTS250F90)を、実施例14は実施例10と同じガラス繊維25%のブロム難燃PA66(デュポン製:ザイテルFR50)を用いた。
表2に実施例10〜14の遮断性能の評価結果を示す。この結果、被アーク層は、短絡試験におけるアーク風による欠損も無く、かつ、バックアップ層樹脂の過負荷試験における炭化層の形成が少ないためか、短絡試験および過負荷試験のいずれの試験も規定の成功遮断回数を満足し良好な遮断性能が得られた。
ここで、実施例14は被アーク層の一部表面にバックアップ層樹脂が露出しているため、この露出部樹脂の炭化による過負荷遮断性能の悪化が懸念されたが、露出部樹脂の炭化層が点在するのみで被アーク層樹脂部の沿面抵抗は保たれ、消弧部材の沿面を通して固定接触子への導通パスが形成されないためか、いずれの過負荷試験条件でも良好な結果が得られた。
ここでは、被アーク層とバックアップ層の接合に量産性の観点より二色成形法を用いたが、特にこの成形法にこだわるものではなく必要に応じ接着剤などで接合しても一向に構わない。
Figure 2002078032
本発明の効果を以下に記す。
1)本発明に係わる第1の回路遮断器によれば、導体に固定接点が固着された固定接触子と、前記固定接点と接離する可動接点が固着された可動接触子と、この可動接触子を回動させる開閉機構部と、前記固定接点と可動接点とが接離する時に発生するアークを消弧する消弧装置と、これらを収納する筐体とを備えた回路遮断器において、前記消弧装置には、前記固定接触子の全面を覆うように消弧部材が設けられ、かつ前記消弧部材が、非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体を含むことによって、電極接点の腐食や汚染による導通不良、あるいは機械強度低下や絶縁悪化を抑制することにより難燃性確保するとともに過負荷遮断や短絡遮断などの遮断性能を向上することができる。
2)本発明に係わる第2の回路遮断器によれば、消弧用絶縁材料成形体に、難燃剤としてトリアジン系有機化合物が含まれていることによって、難燃性確保をするとともに消弧ガスに接点など金属腐食性の強いリン化合物や接点不良の原因となる珪素や金属酸化物が含有されないため過負荷遮断性能をさらに向上することができ消弧装置の小型化ができる。
3)本発明に係わる第3の回路遮断器によれば、消弧用絶縁材料成形体のマトリックス樹脂が、ポリアミドであることによって、消弧用絶縁材料成形体表面の炭化による絶縁悪化が制御され過負荷遮断性能をさらに向上することができる。
4)本発明に係わる第4の回路遮断器によれば、消弧用絶縁材料成形体のマトリックス樹脂であるポリアミドが、非芳香族系ポリアミドであることによって、消弧用絶縁材料成形体表面の炭化による絶縁悪化が一層制御され過負荷遮断性能をさらに向上することができ消弧装置の小型化ができる。
5)本発明に係わる第5の回路遮断器によれば、非ハロゲン難燃性樹脂が、前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して10重量%以下の有機繊維、および前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して15重量%以下のセラミックウイスカーからなる群から選択された1種以上の充填材を含有していることにより、難燃性を損なうことなく消弧部材の耐衝撃性が向上し短絡遮断性能を向上することができる。
6)本発明に係わる第6の回路遮断器によれば、消弧部材が、アークに曝される被アーク層と、前記被アーク層を支持するバックアップ層との積層体からなり、前記被アーク層が、非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体からなり、かつ前記バックアップ層が、ガラス繊維、無機鉱物およびセラミック繊維からなる群から選択された1種以上を含有する難燃性樹脂からなることにより、難燃性を確保するとともに、消弧部材の耐衝撃性が向上し短絡遮断性能をさらに向上することができる。
7)本発明に係わる第7の回路遮断器によれば、バックアップ層の一部が、被アーク層を複数箇所貫通していることにより、消弧部材の被アーク層とバックアップ層の接合が強固となり短絡遮断性能をさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
図1は、回路遮断器のオン状態を示す断面図である。
図2は、回路遮断器のオフ状態を示す部分断面図である。
図3は、消弧部材の側面図(a)、および平面図(b)である。
図4は、消弧部材の斜視図である。
図5は、消弧部材の二層構造の一例の斜視図(a)、およびその他の例の斜視図(b)である。

Claims (7)

  1. 導体に固定接点が固着された固定接触子と、前記固定接点と接離する可動接点が固着された可動接触子と、この可動接触子を回動させる開閉機構部と、前記固定接点と可動接点とが接離する時に発生するアークを消弧する消弧装置と、これらを収納する筐体とを備えた回路遮断器において、前記消弧装置には、前記固定接触子の全面を覆うように消弧部材が設けられ、かつ前記消弧部材が、非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体を含むことを特徴とする回路遮断器。
  2. 消弧用絶縁材料成形体に、難燃剤としてトリアジン系有機化合物が含まれていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の回路遮断器。
  3. 消弧用絶縁材料成形体のマトリックス樹脂が、ポリアミドであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の回路遮断器。
  4. 消弧用絶縁材料成形体のマトリックス樹脂であるポリアミドが、非芳香族系ポリアミドであることを特徴とする請求の範囲第3項記載の回路遮断器。
  5. 非ハロゲン難燃性樹脂が、前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して10重量%以下の有機繊維、および前記非ハロゲン難燃性樹脂に対して15重量%以下のセラミックウイスカーからなる群から選択された1種以上の充填材を含有していることを特徴とする請求の範囲第1項記載の回路遮断器。
  6. 消弧部材が、アークに曝される被アーク層と、前記被アーク層を支持するバックアップ層との積層体からなり、前記被アーク層が、非ハロゲン難燃性樹脂を主成分とする消弧用絶縁材料成形体からなり、かつ前記バックアップ層が、ガラス繊維、無機鉱物およびセラミック繊維からなる群から選択された1種以上を含有する難燃性樹脂からなることを特徴とする請求の範囲第1項記載の回路遮断器。
  7. バックアップ層の一部が、被アーク層を複数箇所貫通していることを特徴とする請求の範囲第6項記載の回路遮断器。
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