JPWO2002077226A1 - プロスタグランジンep1受容体 - Google Patents
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Abstract
(1)新規なポリペプチであるプロスタグランジンE(PGE)受容体、(2)そのポリペプチドをコードするcDNAおよびその配列に選択的にハイブリダイズするフラグメント、(3)そのDNAからなる複製または発現ベクター、(4)その複製または発現ベクターで形質転換された宿主細胞、(5)その宿主細胞を培養する前記ポリペプチドの製造方法、(6)前記ポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体、(7)前記ポリペプチドまたは前記抗体および薬学的に許容される賦形剤および/または抗体を含有する薬学的組成物、(8)前記ポリペプチドまたは前記宿主細胞を用いるEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法。本発明のポリペプチドは、PGE2の過剰産生によって生ずる鎮痛剤、解熱剤、頻尿等の疾患の治療剤として用いることができる。
Description
技術分野
本発明は新規なポリペプチドであるプロスタグランジンE(以下、PGEと略記する。)受容体に関する。
さらに詳しく言えば、本発明は(1)新規なポリペプチド、(2)そのポリペプチドをコードするcDNAおよびその配列に選択的にハイブリダイズするフラグメント、(3)そのDNAからなる複製または発現ベクター、(4)その複製または発現ベクターで形質転換された宿主細胞、(5)その宿主細胞を培養する前記ポリペプチドの製造方法、(6)前記ポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体、(7)前記ポリペプチドまたは前記抗体および薬学的に許容される賦形剤および/または抗体を含有する薬学的組成物、(8)前記ポリペプチドを用いるEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法、および(9)前記宿主細胞を用いるEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法に関する。
背景技術
プロスタグランジン(PG)、トロンボキサン(TX)およびロイコトリエン(LT)のようなプロスタノイドは、アラキドン酸の酸化代謝物のひとつのファミリーであり、生体内で局所ホメオスタシスを維持するために種々の生理作用を発揮している(The Pharmacological Basis of Therapeutics(Gilman,A.G.,Goodman,L.S.,Rall,T.W.,and Murad,F.,eds)7th Ed.,pp660,Macmillan Publishing Co.,New York(1985)参照のこと)。それらの生理作用はそれぞれのプロスタノイドに特有の細胞膜受容体によって制御されている(Annu.Rev.Pharm.Tox.,10,213(1989)、Prostanoids and their Receptors.In Comprehensive Medicinal Chemistry.,pp643(1990),Pergamon Press,Oxford参照)。
プロスタノイドの一員であるプロスタグランジンE(PGE)、とりわけプロスタグランジンE2(PGE2)は、消化管の収縮、弛緩、胃酸の分泌、平滑筋の弛緩、神経伝達物質の遊離等に広く関与している。PGE2の生理作用と薬理作用、およびその作用部位を解析した結果からPGE2の受容体として、EP1、EP2、EP3およびEP4の4つのサブタイプ受容体が存在し(Negishi M.et al,J.Lipid Mediators Cell Signalling,12,379−391(1995))、それぞれ異なった情報伝達に関与しているものと考えられている。
このうち、EP1は、発痛、発熱、利尿に関与していることが知られている(Br.J.Pharmacol.,1994,112,735−40、European J.Pharmacol.,152(1988)273−279、Gen Pharmacol.,Sep1992,23(5)p805−809参照。)。そのため、この受容体に拮抗することは、鎮痛剤、解熱剤、頻尿の治療剤として有効であると考えられる。これらの点を明確にするためには、EP1受容体の構造、シグナリングおよびその組織分布を解析することが必須である。
特許第3090472号明細書には、EP1受容体のアミノ酸配列(Accession No.AAC37539.1)およびそれをコードする塩基配列(Accession No.L22647)が開示されている。しかしながら、それらの配列を詳細に検討してみると、塩基配列で4箇所、アミノ酸配列で2箇所、本発明のヒトEP1受容体のそれらと異なっていることが判明した。
スイスプロット(Swiss Prot Release2.0)に登録されている既知のポリペプチドのアミノ酸配列を調査したが、本発明のポリペプチドと同一の配列を有しているものはまったく無かった。さらに、ジーンバンク(GenBank Release70.0)に登録されている塩基配列も調査したが、本発明のポリペプチドをコードするDNAと同一の配列は見つからなかった。従って、本発明のポリペプチドは新規なものであることが確認された。
発明の開示
本発明者らは、ヒトEP1受容体のcDNAのクローニングに成功し、それを細胞に発現にさせて分析した結果、それがヒトEP1受容体をコードしていることを明らかにして本発明を完成した。
さらに、後記実施例で明らかなように、本発明のヒトEP1受容体発現細胞では、極めて高い[3H]−PGE2の特異的結合が見られ、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇も認められるのに対し、特許第3090472号明細書に記載されているヒトEP1受容体発現細胞では、[3H]−PGE2の特異的結合は認められたが、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇は全く認められないことが判明した。
本発明は、
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)前記(1)項に記載されたポリペプチドをコードするcDNA、
(3)配列番号2で示される塩基配列を有する前記(2)項に記載されたDNA、またはその配列に選択的にハイブリダイズするフラグメントDNA、
(4)前記(2)あるいは(3)のいずれかの項に記載のDNAを含む複製または発現ベクター、
(5)前記(4)項記載の複製または発現ベクターで形質転換された宿主細胞、
(6)前記(1)項記載のポリペプチドを発現させるための条件下で前記(5)記載の宿主細胞を培養することを特徴とする該ポリペプチドの製造方法、
(7)前記(1)項記載のポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体、
(8)前記(1)項記載のポリペプチドまたは前記(7)項記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤および/または抗体を含有することを特徴とする薬学的組成物、
(9)前記(1)項記載のポリペプチドを用いることを特徴とするEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法、
および
(10)前記(5)項記載の宿主細胞を用いることを特徴とするEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法に関する。
発明の詳細な説明
配列番号2で示される塩基配列を有するDNAに選択的にハイブリダイズするDNAとは、一般に、少なくとも100個、好ましくは、少なくとも150個、例えば、200、250または300個の連続した塩基配列領域で、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80または90%、より好ましくは95%以上の相同性のあるものであり、そのようなDNAは、以後本発明のDNAとして記載される。
ハイブリダイズするDNAには、相補配列も含まれる。ハイブリダイズの条件は、ストリンジェントであることが望ましい。
配列番号2で示される塩基配列を有するDNAのフラグメントとは、少なくとも10塩基、好ましくは少なくとも15塩基、例えば20、25、30または40塩基部分を意味し、そのようなフラグメントも本発明のDNAに含まれる。
本発明のDNAは遺伝子組み換え法、合成法あるいは当業者に公知の方法の方法によって取得することができる。
さらに、本発明には、本発明のDNAを含む複製または発現ベクターが含まれる。ベクターとしては、例えば、ori領域と、必要により上記DNAの発現のためのプロモーター、プロモーターの制御因子などからなるプラスミド、ウィルスまたはファージベクターが挙げられる。ベクターはひとつまたはそれ以上の選択的マーカー遺伝子、例えばアンピシリン耐性遺伝子を含んでいてもよい。
さらに、本発明には、配列番号2で示される塩基配列を有するDNAを含む本発明のDNAを複製または発現させるためのベクターで形質転換された宿主細胞も含まれる。細胞としては、例えば細菌、酵母、昆虫細胞または哺乳動物細胞が挙げられる。
さらに、本発明には、本発明のポリペプチドを発現させるための条件下で、本発明の宿主細胞を培養することからなる本発明のポリペプチドの製造方法も含まれる。
本発明のポリペプチドとしては、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するもの以外に、配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部が欠損したもの(例えば、成熟蛋白中、生物活性の発現に必須な部分だけからなるポリペプチド)、その一部が他のアミノ酸と置換したもの(例えば、物性の類似したアミノ酸に置換したもの)、およびその一部に他のアミノ酸が付加または挿入されたものも含まれる。
よく知られているように、ひとつのアミノ酸をコードするコドンは1〜6種類(例えば、メチオニン(Met)は1種類、ロイシン(Leu)は6種類)知られている。従って、ポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなくDNAの塩基配列を変えることができる。
(2)で特定される本発明のDNAには、配列番号1で示されるポリペプチドをコードするすべての塩基配列群が含まれる。塩基配列を変えることによって、ポリペプチドの生産性が向上することがある。
(3)の配列番号2で特定されるDNAは、(2)で示されるDNAの一態様であり、天然型配列を表わす。
配列番号2で示される塩基配列を有するDNAの作製は、以下の方法に従って行なわれる。
すなわち、
(i)本発明のポリペプチドが産生される細胞からmRNAを分離し、
(ii)該mRNAからファーストストランド(1本鎖DNA)、次いでセカンドストランド(2本鎖DNA)を合成し(DNAの作製)、
(iii)該DNAを適当なプラスミドベクターに組み込み、
(iv)得られた組み換えベクターで宿主細胞を形質転換し(cDNAライブラリーの作製)、
(v)得られたcDNAライブラリーより、ハイブリダイゼーション法により目的とするDNA含有プラスミドを単離し、
(vi)目的とするDNAの塩基配列を決定することによって作製することができる。
より詳細に説明すると、工程(i)は、ヒトの組織中、EP1受容体を発現していると考えられる組織、好ましくは脳、胎盤、神経芽腫由来(T98G等)、赤白血病(Hel等)等の組織細胞または細胞株より、オカヤマ(Okayama,H)等の方法[Method in Enzymology,154,3(1987)に記載]、Chirgwin,J.M.等の方法[Biochem.,18,5294(1979)に記載]等の方法に従って行なわれる。
(ii)、(iii)および(iv)の工程はcDNAライブラリー作製の工程であり、改変したGubler & Hoffman法[Gene,25,263(1983)に記載]に準じて行なわれる。
(iii)の工程で用いられるプラスミドベクターとしては大腸菌内で機能するもの(例えば、pBR322)や枯草菌内で機能するもの(例えば、pUB110)が多数知られているが、好適には、大腸菌内で機能するλ−ZAPIIが用いられる。
(iv)の工程で用いられる宿主細胞は既に多くのものが知られており、いずれを用いてもよいが、好ましくはDH5のコンピテントセル[Gene,96,23(1990)記載の方法により調整される。]である。
最近では、各動物の種々の組織のcDNAライブラリーが既に市販されている。これらの市販のcDNAライブラリーも好適に用いられる。
工程(v)は、それ自体公知であり、例えば、プラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法[Gene,10,63(1980)に記載]等によって行なわれる。また、適当なプローブとしては、異種動物のEP1受容体のDNAまたはそのフラグメントまたは該DNAとホモロジーを有するDNAが用いられる。
工程(vi)はそれ自体公知であり、例えばジデオキシ・ターミネーター(dideoxy terminator)法やマキサム・ギルバート(Maxam−Gilbert)法により行なわれる。
配列番号2で示される塩基配列が、一旦確定されると、その後は、化学合成によって、またはPCR法によって、あるいは該塩基配列の断片をプローブとしたハイブリダイズ法によって、本発明のDNAを得ることができる。さらに、本DNAを含有するベクターDNAを適当な宿主に導入し、これを増殖させることによって、目的とする本発明DNAを必要量得ることができる。
本発明のポリペプチド(配列番号1)を取得する方法としては、
(1)生体または培養細胞から精製単離する方法、
(2)ポリペプチド合成する方法、または
(3)遺伝子組み換え技術を用いて生産する方法、
などが挙げられるが、工業的には(3)に記載した方法が好ましい。
遺伝子組み換え技術を用いてポリペプチドを生産するための発現系(宿主−ベクター系)としては、例えば、細菌、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞の発現系が挙げられる。
例えば、大腸菌で発現させる場合には、蛋白部分をコードするDNA(例えば、配列番号2で示される塩基配列をコードするDNA)を、適当なプロモーター(例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、λPLプロモーター、T7プロモーター等)の下流に接続し、大腸菌内で機能するベクター(例えば、pBR322、pUC18、pUC19等)に挿入して発現ベクターを作製する。次に、この発現ベクターで形質転換した大腸菌(例えば、E.coli DH1、E.coli JM109、E.coli HB101株等)を適当な培地で培養して、その菌体より目的とするポリペプチドを得ることができる。また、バクテリアのシグナルペプチド(例えば、pelBのシグナルペプチド)を利用すれば、ペリプラズマ中に目的とするポリペプチドを分泌することもできる。さらに、他のポリペプチドとのヒュージョン・プロテイン(fusion protein)を生産することもできる。
また、哺乳動物細胞で発現させる場合には、例えば、配列番号2で示される塩基配列をコードするDNAを適当なベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)中の適当なプロモーター(例えば、SV40プロモーター、LTRプロモーター、メタロチオネインプロモーター等)の下流に挿入して発現ベクターを作製する。次に、得られた発現ベクターで適当な哺乳動物細胞(例えば、サルCOS−7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、マウスL細胞等)を形質転換し、形質転換体を適当な培地で培養することによって、その培養液中に目的とするポリペプチドが分泌される。以上のようにして得られたポリペプチドは、一般的な生化学的方法によって単離精製することができる。
本発明は、本発明におけるポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体も含む。さらに本発明におけるポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法も含む。モノクローナル抗体は、本発明のペプチド、またはその断片を抗原として用い、通常のハイブリドーマの技術により製造することができる。ポリクローナル抗体は、宿主動物(例えば、ラットやウサギ等)に本発明のポリペプチドを接種し、免疫血清を回収する、通常の方法により製造することができる。
本発明には、本発明のポリペプチド、その抗体と薬学的に許容される賦形剤および/または担体を含有する薬学的組成物も含まれる。
本発明のDNAは、上記のようなベクターのアンチセンス領域に挿入することでアンチセンスRNAを製造することもできる。このようなアンチセンスRNAは、細胞中の本発明のポリペプチドのレベルを制御することに用いることもできる。
[医薬品への適用]
鎮痛剤、解熱剤、頻尿の治療剤等に使用するために、本発明のポリペプチド、あるいは本発明のポリペプチドに対する抗体は通常、全身的又は局所的に、一般的には経口または非経口の形で投与される。好ましくは、経口投与、静脈内投与および脳室内投与である。
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、一回につき、100μgから100mgの範囲で、一日一回から数回経口投与されるかまたは、成人一人あたり、一回につき、10μgから100mgの範囲で、一日一回から数回非経口投与される。
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
本発明化合物を投与する際には、経口投与のための固体組成物、液体組成物およびその他の組成物、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤等として用いられる。
経口投与のための固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセルには、ソフトカプセルおよびハードカプセルが含まれる。
このような固体組成物においては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、安定化剤(ヒト血清アルブミン、ラクトース等)、溶解補助剤(アルギニン、アスパラギン酸等)を含有していてもよい。
錠剤または丸剤は、必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の胃溶性あるいは腸溶性のフィルムで被膜してもよいし、また2以上の層で被膜してもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
経口投与のための液体組成物は、薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般に用いられる不活性な希釈剤(例えば、精製水、エタノール等)を含んでいてもよい。この様な組成物は、不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
経口投与のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、それ自体公知の方法により処方されるスプレー剤が含まれる。この組成物は不活性な希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような安定化剤、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第2,868,691号および同第3,095,355号明細書に詳しく記載されている。
本発明による非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性または非水性の溶液剤、懸濁剤としては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤と混合される。水性の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水および生理食塩水が挙げられる。非水性の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(登録商標)等が挙げられる。
このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等)、溶解補助剤(例えば、アルギニン、アスパラギン酸等)のような補助剤を含んでいてもよい。
産業上の利用可能性
本発明のポリペプチドは、それ自体、PGE2と特異的に結合するのでPGE2の過剰産生によって生ずる疾患、例えば、鎮痛剤、解熱剤、頻尿の治療剤等として用いることができる。また、EP1受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する物質のスクリーニングに用いられる。
さらに、本発明のポリペプチドのポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いて、生体における該ポリペプチドの定量が行なえ、これによって本発明のポリペプチドと疾患との関係の研究あるいは疾患の診断等に利用することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
実施例1:本発明のヒトEP1受容体のcDNAクローニング
Erythroleukemia cell line,HEL cellsを培養し、常法に従って調製したHELmRNAを用いてRT−PCR法を行なった。PCR反応は2段階で行なった(2step PCR)。逆転写反応による1stストランドDNA合成後、以下の反応液を調製した。
反応液:HELcDNAs(1μl)、プライマー1(0.5μM)、プライマー2(0.5μM)、PCRバッファ(buffer)(Tris−HCl(pH8.3,10mM),KCl(50mM),MgCl2(1.5mM))、dNTPs(0.25mM、dATP,dCTP,dGTP,dTTPの等モル混合物)、Taqポリメラーゼ(0.5unit/μl)、10%DMSO。
PCR反応の条件は以下の通りである。
1段階目:[(94℃,1分),(62℃,2分),(72℃,3分)]×25サイクル、
2段階目:[(94℃,1分),(55℃,2分),(72℃,3分)]×25サイクル。
PCR反応の生成物をアガロースゲル電気泳動したところ、目的長に合致したバンド(1250bp)が得られた。バンドを精製し、pT7 Blue T−Vector(Novagen社製)に挿入(以下、pT7 Blue hEP1と略す。)し、サンガー(Sanger,F.)等のジデオキシターミネーター法に基づいた、ABI社(Applied Biosystems Inc.)の蛍光ダイターミネーターを用いるサイクルシークエンス法によって、挿入部分のcDNAに対して塩基配列を決定した。シークエンスの読み取りには、ABI社のDNAシークエンサーを用い、塩基配列を決定した。hEP1受容体をコードするcDNAの塩基配列を配列番号2に、それによって翻訳されるアミノ酸配列を配列番号1に示した。
ここで、本発明で得られたヒトEP1受容体の塩基配列およびアミノ酸配列と、特許第3090472号明細書に記載されているものと比較してみた(以下、各塩基およびアミノ酸の右肩の数字は、それぞれ翻訳開始コドン、ATGの“A”、および翻訳開始アミノ酸である“Met”を起点として数えた時の位置を示している)。
本発明の塩基配列中、G211は、特許第3090472号明細書の記載では、“A”となっている。以下、これを“G211→A”と示す。同様に、T689→A、A690→TおよびA999→Gの計4箇所で異なっていることがわかる。また、これらの塩基配列の違いから、アミノ酸配列もAla71→Thr、およびLeu230→Hisの2箇所で異なっていることが判明した。
実施例2:ヒトEP1受容体発現細胞を用いた受容体結合実験
1)CHO細胞への遺伝子導入およびヒトEP1受容体発現細胞クローンの単離 pT7 Blue hEP1からEcoRI消化によって、挿入断片を切り出し、発現用ベクターpdKCR−dhfrのEcoRIサイトへ方向を合わせて挿入した。約25〜50μgの発現用プラスミドを適当な制限酵素(SalI,SacII等)で完全消化し、フェノール(phenol)/CIAA抽出・CIAA抽出・エタノール沈殿にて精製後、50μlの滅菌水で溶解した。宿主として用いたCHO−dhfr(−)細胞は、1.0〜1.5×106cells/0.8mlになるようにPBSucバッファ(buffer)(スクロース(272mM),K+PO4 2−バッファ(buffer)(7mM,pH7.4),MgCl2(1mM))で懸濁した。Gene Pulser Cuvette(Bio−rad社,Cat.No.165−2088)中に細胞懸濁液0.8mlとプラスミドDNA10μlを加えて10分間氷冷し、Gene Pulser(Bio−rad社)を用いて25μF/200〜500Vのパルス電圧を加えた。さらに10分間氷冷の後、約10mlの培養液(許容培地;100×HT supplement(GIBCO BRL)を所定濃度含み、ペリシニン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%dialyzed FCS(GIBCO社製)を含むα−MEM(大日本製薬社製))で懸濁して培養フラスコ(75cm2)に移し、CO2インキュベーター中で約48時間培養した。この後トリプシン処理で細胞を回収し、選択培地(非許容培地;ペリシニン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%dialyzed FCS(GIBCO社製)を含むα−MEM)で懸濁して、さらに培養を続けた。
シングルコロニーを単離するために、数日〜一週間培養を続けた後、活発に増殖しているコロニー(20〜30cells/colony)が現れてきた時点で次のようにコロニーの単離培養を行なった。培養フラスコの培養液を除去しPBSで軽く洗浄後、コロニーの上に濾紙を5mm角ぐらいに細断してオートクレーブし、トリプシン液に浸した濾紙をのせ37℃/3分間処置し、濾紙で細胞を擦り取って24wells−プレートに入れた。1ml/wellの選択培地を加えさらに培養を続け、細胞の形態や増殖能等から有望なクローンを選択した。
あるいは限界希釈法を用いた。約一週間培養を続けた後、細胞が活発に増殖している適当な時期で細胞を2〜5cells/wellになるように96wells−プレート数枚に播種し、細胞の形態や増殖能等から有望なクローンを選別して24wells−プレートに移した。
2)膜標品の調製
上記方法によって得られたヒトEP1受容体を発現しているCHO細胞クローンを培養し、以下の方法によって、膜標品を調製した。
ペリシニン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%dialyzed FCS(GIBCO社製)を含むα−MEM(大日本製薬社製)を使用し、500cm2トレイ(住友ベークライト社製)で大量培養した。PBS(−)で洗浄後、セルスクレイパーで細胞を回収し、1,000rpmで3分間遠心した後、細胞ペレットを−80℃で凍結保存した。
以下、細胞膜調製の操作は4℃以下で行なった。トレイ50〜150枚分のペレットを合わせ、10倍量の氷冷バッファA(buffer A)を加え、ポッターホモジナイザーで破砕した(1,000rpm,5strokes)。1,000×gで10分間の遠心で得られた上清を100,000×gで15分間遠心した。得られた沈殿はバッファB(buffer B)を用いて懸濁し、膜標品とし、使用時まで−80℃で保存した。
バッファA(buffer A):
EDTA(1mM),MgCl2(10mM),PMSF(0.1mM),ペプスタチンA(pepstatin A)(10μM),ロイペプチン(leupeptin)(10μM)およびインドメタシン(indomethacin)(20μM)を含有するTris−HCl(20mM,pH7.5);
バッファB(buffer B):
EDTA(1mM),MgCl2(10mM)およびNaCl(0.1M)を含有するKPi(pH6.0,10mM)。
結合実験
上記方法によって調整したヒトEP1受容体由来膜画分および各濃度の[3H]−PGE2を含む反応液(200μl)を一定時間室温下でインキュベートし、セルハーベスター(Brandel社製)を用いて吸引ろ過し、膜画分をガラスフィルター上に回収し、氷冷バッファー(1回当たり1〜2ml)で洗浄後、液体シンチレーターを用いて総結合量を測定した。なお、非特異的結合量はPGE2(10μM)の存在下で上記と同様の操作により測定した。総結合量から非特異的結合量を差し引くことにより、特異的結合量を算出した。
以上の方法により得られた特異的結合量のデータをスキャッチャードプロット(Scatchard plots)にて解析し、Kd値(nM)およびBmax値(fmol/mg protein)を算出した。本発明ヒトEP1受容体発現細胞を用いた結果を図1に、特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた結果を図2にそれぞれ示した。なお、図1、2に用いたヒトEP1受容体発現細胞におけるhEP1mRNA発現量は定量的PCRで検討した結果、相違を認めずほぼ同レベルのヒトEP1受容体が発現するものと考えられた。
実施例3:ヒトEP1受容体発現細胞を用いた細胞内Ca濃度の測定
500cm2トレイを用いてコンフレントになるまで培養した後、PBS(−)で洗浄し、氷冷しながらPBS(−)中でピペッティングにより細胞をはがした。800rpm、3分間の遠心で得られた細胞ペレットをミディアムA(medium A)(15ml)に懸濁し、37℃で50分間、室温で10分間インキュベートした後、再び遠心で得られたペレットをミディアムB(medium B)に懸濁(1〜2×106/ml)してアッセイに用いた。なお、Fura2−AM(同仁社製)の存在する場合、アルミホイルで遮光して操作を行なった。CAM−220Spectrofluorometer(日本分光工業(株)社製)を用い、上記細胞懸濁液400μlを600rpmで撹拌しながら340nmおよび380nmでの蛍光強度の変化ならびにその比をモニターし、細胞内Ca濃度の変化を測定した。
ミディアムA(medium A):
fura2−AM(5μM)、インドメタシン(indomethacin)(10μM)、HEPES−NaOH(pH7.4,10mM)および10%FCSを含有するα−MEM、
ミディアムB(medium B):
インドメタシン(indomethacin)(1μM)、HEPES−NaOH(pH7.4,10mMおよび0.1%BSAを含有するα−MEM。
本発明および特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた細胞内Ca濃度の変化を以下の図3に示した。なお、図3中、比較とは、特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた実験結果を意味する。
上記実施例2および3から明らかなように、本発明のヒトEP1受容体発現細胞では、極めて高い[3H]−PGE2の特異的結合が見られ、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇も認められた。
一方、特許第3090472号明細書に記載されているヒトEP1受容体発現細胞では、[3H]−PGE2の特異的結合は認められたが、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇は全く認められなかった。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は本発明のヒトEP1受容体発現細胞を用いた結合実験のスキャッチャードプロットである。
図2は特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた結合実験のスキャッチャードプロットである。
図3は本発明および特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた細胞内Ca濃度の変化を示すグラフである。
本発明は新規なポリペプチドであるプロスタグランジンE(以下、PGEと略記する。)受容体に関する。
さらに詳しく言えば、本発明は(1)新規なポリペプチド、(2)そのポリペプチドをコードするcDNAおよびその配列に選択的にハイブリダイズするフラグメント、(3)そのDNAからなる複製または発現ベクター、(4)その複製または発現ベクターで形質転換された宿主細胞、(5)その宿主細胞を培養する前記ポリペプチドの製造方法、(6)前記ポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体、(7)前記ポリペプチドまたは前記抗体および薬学的に許容される賦形剤および/または抗体を含有する薬学的組成物、(8)前記ポリペプチドを用いるEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法、および(9)前記宿主細胞を用いるEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法に関する。
背景技術
プロスタグランジン(PG)、トロンボキサン(TX)およびロイコトリエン(LT)のようなプロスタノイドは、アラキドン酸の酸化代謝物のひとつのファミリーであり、生体内で局所ホメオスタシスを維持するために種々の生理作用を発揮している(The Pharmacological Basis of Therapeutics(Gilman,A.G.,Goodman,L.S.,Rall,T.W.,and Murad,F.,eds)7th Ed.,pp660,Macmillan Publishing Co.,New York(1985)参照のこと)。それらの生理作用はそれぞれのプロスタノイドに特有の細胞膜受容体によって制御されている(Annu.Rev.Pharm.Tox.,10,213(1989)、Prostanoids and their Receptors.In Comprehensive Medicinal Chemistry.,pp643(1990),Pergamon Press,Oxford参照)。
プロスタノイドの一員であるプロスタグランジンE(PGE)、とりわけプロスタグランジンE2(PGE2)は、消化管の収縮、弛緩、胃酸の分泌、平滑筋の弛緩、神経伝達物質の遊離等に広く関与している。PGE2の生理作用と薬理作用、およびその作用部位を解析した結果からPGE2の受容体として、EP1、EP2、EP3およびEP4の4つのサブタイプ受容体が存在し(Negishi M.et al,J.Lipid Mediators Cell Signalling,12,379−391(1995))、それぞれ異なった情報伝達に関与しているものと考えられている。
このうち、EP1は、発痛、発熱、利尿に関与していることが知られている(Br.J.Pharmacol.,1994,112,735−40、European J.Pharmacol.,152(1988)273−279、Gen Pharmacol.,Sep1992,23(5)p805−809参照。)。そのため、この受容体に拮抗することは、鎮痛剤、解熱剤、頻尿の治療剤として有効であると考えられる。これらの点を明確にするためには、EP1受容体の構造、シグナリングおよびその組織分布を解析することが必須である。
特許第3090472号明細書には、EP1受容体のアミノ酸配列(Accession No.AAC37539.1)およびそれをコードする塩基配列(Accession No.L22647)が開示されている。しかしながら、それらの配列を詳細に検討してみると、塩基配列で4箇所、アミノ酸配列で2箇所、本発明のヒトEP1受容体のそれらと異なっていることが判明した。
スイスプロット(Swiss Prot Release2.0)に登録されている既知のポリペプチドのアミノ酸配列を調査したが、本発明のポリペプチドと同一の配列を有しているものはまったく無かった。さらに、ジーンバンク(GenBank Release70.0)に登録されている塩基配列も調査したが、本発明のポリペプチドをコードするDNAと同一の配列は見つからなかった。従って、本発明のポリペプチドは新規なものであることが確認された。
発明の開示
本発明者らは、ヒトEP1受容体のcDNAのクローニングに成功し、それを細胞に発現にさせて分析した結果、それがヒトEP1受容体をコードしていることを明らかにして本発明を完成した。
さらに、後記実施例で明らかなように、本発明のヒトEP1受容体発現細胞では、極めて高い[3H]−PGE2の特異的結合が見られ、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇も認められるのに対し、特許第3090472号明細書に記載されているヒトEP1受容体発現細胞では、[3H]−PGE2の特異的結合は認められたが、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇は全く認められないことが判明した。
本発明は、
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)前記(1)項に記載されたポリペプチドをコードするcDNA、
(3)配列番号2で示される塩基配列を有する前記(2)項に記載されたDNA、またはその配列に選択的にハイブリダイズするフラグメントDNA、
(4)前記(2)あるいは(3)のいずれかの項に記載のDNAを含む複製または発現ベクター、
(5)前記(4)項記載の複製または発現ベクターで形質転換された宿主細胞、
(6)前記(1)項記載のポリペプチドを発現させるための条件下で前記(5)記載の宿主細胞を培養することを特徴とする該ポリペプチドの製造方法、
(7)前記(1)項記載のポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体、
(8)前記(1)項記載のポリペプチドまたは前記(7)項記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤および/または抗体を含有することを特徴とする薬学的組成物、
(9)前記(1)項記載のポリペプチドを用いることを特徴とするEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法、
および
(10)前記(5)項記載の宿主細胞を用いることを特徴とするEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物のスクリーニング方法に関する。
発明の詳細な説明
配列番号2で示される塩基配列を有するDNAに選択的にハイブリダイズするDNAとは、一般に、少なくとも100個、好ましくは、少なくとも150個、例えば、200、250または300個の連続した塩基配列領域で、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80または90%、より好ましくは95%以上の相同性のあるものであり、そのようなDNAは、以後本発明のDNAとして記載される。
ハイブリダイズするDNAには、相補配列も含まれる。ハイブリダイズの条件は、ストリンジェントであることが望ましい。
配列番号2で示される塩基配列を有するDNAのフラグメントとは、少なくとも10塩基、好ましくは少なくとも15塩基、例えば20、25、30または40塩基部分を意味し、そのようなフラグメントも本発明のDNAに含まれる。
本発明のDNAは遺伝子組み換え法、合成法あるいは当業者に公知の方法の方法によって取得することができる。
さらに、本発明には、本発明のDNAを含む複製または発現ベクターが含まれる。ベクターとしては、例えば、ori領域と、必要により上記DNAの発現のためのプロモーター、プロモーターの制御因子などからなるプラスミド、ウィルスまたはファージベクターが挙げられる。ベクターはひとつまたはそれ以上の選択的マーカー遺伝子、例えばアンピシリン耐性遺伝子を含んでいてもよい。
さらに、本発明には、配列番号2で示される塩基配列を有するDNAを含む本発明のDNAを複製または発現させるためのベクターで形質転換された宿主細胞も含まれる。細胞としては、例えば細菌、酵母、昆虫細胞または哺乳動物細胞が挙げられる。
さらに、本発明には、本発明のポリペプチドを発現させるための条件下で、本発明の宿主細胞を培養することからなる本発明のポリペプチドの製造方法も含まれる。
本発明のポリペプチドとしては、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するもの以外に、配列番号1で示されるアミノ酸配列の一部が欠損したもの(例えば、成熟蛋白中、生物活性の発現に必須な部分だけからなるポリペプチド)、その一部が他のアミノ酸と置換したもの(例えば、物性の類似したアミノ酸に置換したもの)、およびその一部に他のアミノ酸が付加または挿入されたものも含まれる。
よく知られているように、ひとつのアミノ酸をコードするコドンは1〜6種類(例えば、メチオニン(Met)は1種類、ロイシン(Leu)は6種類)知られている。従って、ポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなくDNAの塩基配列を変えることができる。
(2)で特定される本発明のDNAには、配列番号1で示されるポリペプチドをコードするすべての塩基配列群が含まれる。塩基配列を変えることによって、ポリペプチドの生産性が向上することがある。
(3)の配列番号2で特定されるDNAは、(2)で示されるDNAの一態様であり、天然型配列を表わす。
配列番号2で示される塩基配列を有するDNAの作製は、以下の方法に従って行なわれる。
すなわち、
(i)本発明のポリペプチドが産生される細胞からmRNAを分離し、
(ii)該mRNAからファーストストランド(1本鎖DNA)、次いでセカンドストランド(2本鎖DNA)を合成し(DNAの作製)、
(iii)該DNAを適当なプラスミドベクターに組み込み、
(iv)得られた組み換えベクターで宿主細胞を形質転換し(cDNAライブラリーの作製)、
(v)得られたcDNAライブラリーより、ハイブリダイゼーション法により目的とするDNA含有プラスミドを単離し、
(vi)目的とするDNAの塩基配列を決定することによって作製することができる。
より詳細に説明すると、工程(i)は、ヒトの組織中、EP1受容体を発現していると考えられる組織、好ましくは脳、胎盤、神経芽腫由来(T98G等)、赤白血病(Hel等)等の組織細胞または細胞株より、オカヤマ(Okayama,H)等の方法[Method in Enzymology,154,3(1987)に記載]、Chirgwin,J.M.等の方法[Biochem.,18,5294(1979)に記載]等の方法に従って行なわれる。
(ii)、(iii)および(iv)の工程はcDNAライブラリー作製の工程であり、改変したGubler & Hoffman法[Gene,25,263(1983)に記載]に準じて行なわれる。
(iii)の工程で用いられるプラスミドベクターとしては大腸菌内で機能するもの(例えば、pBR322)や枯草菌内で機能するもの(例えば、pUB110)が多数知られているが、好適には、大腸菌内で機能するλ−ZAPIIが用いられる。
(iv)の工程で用いられる宿主細胞は既に多くのものが知られており、いずれを用いてもよいが、好ましくはDH5のコンピテントセル[Gene,96,23(1990)記載の方法により調整される。]である。
最近では、各動物の種々の組織のcDNAライブラリーが既に市販されている。これらの市販のcDNAライブラリーも好適に用いられる。
工程(v)は、それ自体公知であり、例えば、プラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法[Gene,10,63(1980)に記載]等によって行なわれる。また、適当なプローブとしては、異種動物のEP1受容体のDNAまたはそのフラグメントまたは該DNAとホモロジーを有するDNAが用いられる。
工程(vi)はそれ自体公知であり、例えばジデオキシ・ターミネーター(dideoxy terminator)法やマキサム・ギルバート(Maxam−Gilbert)法により行なわれる。
配列番号2で示される塩基配列が、一旦確定されると、その後は、化学合成によって、またはPCR法によって、あるいは該塩基配列の断片をプローブとしたハイブリダイズ法によって、本発明のDNAを得ることができる。さらに、本DNAを含有するベクターDNAを適当な宿主に導入し、これを増殖させることによって、目的とする本発明DNAを必要量得ることができる。
本発明のポリペプチド(配列番号1)を取得する方法としては、
(1)生体または培養細胞から精製単離する方法、
(2)ポリペプチド合成する方法、または
(3)遺伝子組み換え技術を用いて生産する方法、
などが挙げられるが、工業的には(3)に記載した方法が好ましい。
遺伝子組み換え技術を用いてポリペプチドを生産するための発現系(宿主−ベクター系)としては、例えば、細菌、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞の発現系が挙げられる。
例えば、大腸菌で発現させる場合には、蛋白部分をコードするDNA(例えば、配列番号2で示される塩基配列をコードするDNA)を、適当なプロモーター(例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、λPLプロモーター、T7プロモーター等)の下流に接続し、大腸菌内で機能するベクター(例えば、pBR322、pUC18、pUC19等)に挿入して発現ベクターを作製する。次に、この発現ベクターで形質転換した大腸菌(例えば、E.coli DH1、E.coli JM109、E.coli HB101株等)を適当な培地で培養して、その菌体より目的とするポリペプチドを得ることができる。また、バクテリアのシグナルペプチド(例えば、pelBのシグナルペプチド)を利用すれば、ペリプラズマ中に目的とするポリペプチドを分泌することもできる。さらに、他のポリペプチドとのヒュージョン・プロテイン(fusion protein)を生産することもできる。
また、哺乳動物細胞で発現させる場合には、例えば、配列番号2で示される塩基配列をコードするDNAを適当なベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)中の適当なプロモーター(例えば、SV40プロモーター、LTRプロモーター、メタロチオネインプロモーター等)の下流に挿入して発現ベクターを作製する。次に、得られた発現ベクターで適当な哺乳動物細胞(例えば、サルCOS−7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、マウスL細胞等)を形質転換し、形質転換体を適当な培地で培養することによって、その培養液中に目的とするポリペプチドが分泌される。以上のようにして得られたポリペプチドは、一般的な生化学的方法によって単離精製することができる。
本発明は、本発明におけるポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体も含む。さらに本発明におけるポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法も含む。モノクローナル抗体は、本発明のペプチド、またはその断片を抗原として用い、通常のハイブリドーマの技術により製造することができる。ポリクローナル抗体は、宿主動物(例えば、ラットやウサギ等)に本発明のポリペプチドを接種し、免疫血清を回収する、通常の方法により製造することができる。
本発明には、本発明のポリペプチド、その抗体と薬学的に許容される賦形剤および/または担体を含有する薬学的組成物も含まれる。
本発明のDNAは、上記のようなベクターのアンチセンス領域に挿入することでアンチセンスRNAを製造することもできる。このようなアンチセンスRNAは、細胞中の本発明のポリペプチドのレベルを制御することに用いることもできる。
[医薬品への適用]
鎮痛剤、解熱剤、頻尿の治療剤等に使用するために、本発明のポリペプチド、あるいは本発明のポリペプチドに対する抗体は通常、全身的又は局所的に、一般的には経口または非経口の形で投与される。好ましくは、経口投与、静脈内投与および脳室内投与である。
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、一回につき、100μgから100mgの範囲で、一日一回から数回経口投与されるかまたは、成人一人あたり、一回につき、10μgから100mgの範囲で、一日一回から数回非経口投与される。
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
本発明化合物を投与する際には、経口投与のための固体組成物、液体組成物およびその他の組成物、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤等として用いられる。
経口投与のための固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセルには、ソフトカプセルおよびハードカプセルが含まれる。
このような固体組成物においては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、安定化剤(ヒト血清アルブミン、ラクトース等)、溶解補助剤(アルギニン、アスパラギン酸等)を含有していてもよい。
錠剤または丸剤は、必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の胃溶性あるいは腸溶性のフィルムで被膜してもよいし、また2以上の層で被膜してもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
経口投与のための液体組成物は、薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般に用いられる不活性な希釈剤(例えば、精製水、エタノール等)を含んでいてもよい。この様な組成物は、不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
経口投与のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、それ自体公知の方法により処方されるスプレー剤が含まれる。この組成物は不活性な希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような安定化剤、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第2,868,691号および同第3,095,355号明細書に詳しく記載されている。
本発明による非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性または非水性の溶液剤、懸濁剤としては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤と混合される。水性の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水および生理食塩水が挙げられる。非水性の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(登録商標)等が挙げられる。
このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等)、溶解補助剤(例えば、アルギニン、アスパラギン酸等)のような補助剤を含んでいてもよい。
産業上の利用可能性
本発明のポリペプチドは、それ自体、PGE2と特異的に結合するのでPGE2の過剰産生によって生ずる疾患、例えば、鎮痛剤、解熱剤、頻尿の治療剤等として用いることができる。また、EP1受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する物質のスクリーニングに用いられる。
さらに、本発明のポリペプチドのポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いて、生体における該ポリペプチドの定量が行なえ、これによって本発明のポリペプチドと疾患との関係の研究あるいは疾患の診断等に利用することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
実施例1:本発明のヒトEP1受容体のcDNAクローニング
Erythroleukemia cell line,HEL cellsを培養し、常法に従って調製したHELmRNAを用いてRT−PCR法を行なった。PCR反応は2段階で行なった(2step PCR)。逆転写反応による1stストランドDNA合成後、以下の反応液を調製した。
反応液:HELcDNAs(1μl)、プライマー1(0.5μM)、プライマー2(0.5μM)、PCRバッファ(buffer)(Tris−HCl(pH8.3,10mM),KCl(50mM),MgCl2(1.5mM))、dNTPs(0.25mM、dATP,dCTP,dGTP,dTTPの等モル混合物)、Taqポリメラーゼ(0.5unit/μl)、10%DMSO。
PCR反応の条件は以下の通りである。
1段階目:[(94℃,1分),(62℃,2分),(72℃,3分)]×25サイクル、
2段階目:[(94℃,1分),(55℃,2分),(72℃,3分)]×25サイクル。
PCR反応の生成物をアガロースゲル電気泳動したところ、目的長に合致したバンド(1250bp)が得られた。バンドを精製し、pT7 Blue T−Vector(Novagen社製)に挿入(以下、pT7 Blue hEP1と略す。)し、サンガー(Sanger,F.)等のジデオキシターミネーター法に基づいた、ABI社(Applied Biosystems Inc.)の蛍光ダイターミネーターを用いるサイクルシークエンス法によって、挿入部分のcDNAに対して塩基配列を決定した。シークエンスの読み取りには、ABI社のDNAシークエンサーを用い、塩基配列を決定した。hEP1受容体をコードするcDNAの塩基配列を配列番号2に、それによって翻訳されるアミノ酸配列を配列番号1に示した。
ここで、本発明で得られたヒトEP1受容体の塩基配列およびアミノ酸配列と、特許第3090472号明細書に記載されているものと比較してみた(以下、各塩基およびアミノ酸の右肩の数字は、それぞれ翻訳開始コドン、ATGの“A”、および翻訳開始アミノ酸である“Met”を起点として数えた時の位置を示している)。
本発明の塩基配列中、G211は、特許第3090472号明細書の記載では、“A”となっている。以下、これを“G211→A”と示す。同様に、T689→A、A690→TおよびA999→Gの計4箇所で異なっていることがわかる。また、これらの塩基配列の違いから、アミノ酸配列もAla71→Thr、およびLeu230→Hisの2箇所で異なっていることが判明した。
実施例2:ヒトEP1受容体発現細胞を用いた受容体結合実験
1)CHO細胞への遺伝子導入およびヒトEP1受容体発現細胞クローンの単離 pT7 Blue hEP1からEcoRI消化によって、挿入断片を切り出し、発現用ベクターpdKCR−dhfrのEcoRIサイトへ方向を合わせて挿入した。約25〜50μgの発現用プラスミドを適当な制限酵素(SalI,SacII等)で完全消化し、フェノール(phenol)/CIAA抽出・CIAA抽出・エタノール沈殿にて精製後、50μlの滅菌水で溶解した。宿主として用いたCHO−dhfr(−)細胞は、1.0〜1.5×106cells/0.8mlになるようにPBSucバッファ(buffer)(スクロース(272mM),K+PO4 2−バッファ(buffer)(7mM,pH7.4),MgCl2(1mM))で懸濁した。Gene Pulser Cuvette(Bio−rad社,Cat.No.165−2088)中に細胞懸濁液0.8mlとプラスミドDNA10μlを加えて10分間氷冷し、Gene Pulser(Bio−rad社)を用いて25μF/200〜500Vのパルス電圧を加えた。さらに10分間氷冷の後、約10mlの培養液(許容培地;100×HT supplement(GIBCO BRL)を所定濃度含み、ペリシニン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%dialyzed FCS(GIBCO社製)を含むα−MEM(大日本製薬社製))で懸濁して培養フラスコ(75cm2)に移し、CO2インキュベーター中で約48時間培養した。この後トリプシン処理で細胞を回収し、選択培地(非許容培地;ペリシニン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%dialyzed FCS(GIBCO社製)を含むα−MEM)で懸濁して、さらに培養を続けた。
シングルコロニーを単離するために、数日〜一週間培養を続けた後、活発に増殖しているコロニー(20〜30cells/colony)が現れてきた時点で次のようにコロニーの単離培養を行なった。培養フラスコの培養液を除去しPBSで軽く洗浄後、コロニーの上に濾紙を5mm角ぐらいに細断してオートクレーブし、トリプシン液に浸した濾紙をのせ37℃/3分間処置し、濾紙で細胞を擦り取って24wells−プレートに入れた。1ml/wellの選択培地を加えさらに培養を続け、細胞の形態や増殖能等から有望なクローンを選択した。
あるいは限界希釈法を用いた。約一週間培養を続けた後、細胞が活発に増殖している適当な時期で細胞を2〜5cells/wellになるように96wells−プレート数枚に播種し、細胞の形態や増殖能等から有望なクローンを選別して24wells−プレートに移した。
2)膜標品の調製
上記方法によって得られたヒトEP1受容体を発現しているCHO細胞クローンを培養し、以下の方法によって、膜標品を調製した。
ペリシニン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%dialyzed FCS(GIBCO社製)を含むα−MEM(大日本製薬社製)を使用し、500cm2トレイ(住友ベークライト社製)で大量培養した。PBS(−)で洗浄後、セルスクレイパーで細胞を回収し、1,000rpmで3分間遠心した後、細胞ペレットを−80℃で凍結保存した。
以下、細胞膜調製の操作は4℃以下で行なった。トレイ50〜150枚分のペレットを合わせ、10倍量の氷冷バッファA(buffer A)を加え、ポッターホモジナイザーで破砕した(1,000rpm,5strokes)。1,000×gで10分間の遠心で得られた上清を100,000×gで15分間遠心した。得られた沈殿はバッファB(buffer B)を用いて懸濁し、膜標品とし、使用時まで−80℃で保存した。
バッファA(buffer A):
EDTA(1mM),MgCl2(10mM),PMSF(0.1mM),ペプスタチンA(pepstatin A)(10μM),ロイペプチン(leupeptin)(10μM)およびインドメタシン(indomethacin)(20μM)を含有するTris−HCl(20mM,pH7.5);
バッファB(buffer B):
EDTA(1mM),MgCl2(10mM)およびNaCl(0.1M)を含有するKPi(pH6.0,10mM)。
結合実験
上記方法によって調整したヒトEP1受容体由来膜画分および各濃度の[3H]−PGE2を含む反応液(200μl)を一定時間室温下でインキュベートし、セルハーベスター(Brandel社製)を用いて吸引ろ過し、膜画分をガラスフィルター上に回収し、氷冷バッファー(1回当たり1〜2ml)で洗浄後、液体シンチレーターを用いて総結合量を測定した。なお、非特異的結合量はPGE2(10μM)の存在下で上記と同様の操作により測定した。総結合量から非特異的結合量を差し引くことにより、特異的結合量を算出した。
以上の方法により得られた特異的結合量のデータをスキャッチャードプロット(Scatchard plots)にて解析し、Kd値(nM)およびBmax値(fmol/mg protein)を算出した。本発明ヒトEP1受容体発現細胞を用いた結果を図1に、特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた結果を図2にそれぞれ示した。なお、図1、2に用いたヒトEP1受容体発現細胞におけるhEP1mRNA発現量は定量的PCRで検討した結果、相違を認めずほぼ同レベルのヒトEP1受容体が発現するものと考えられた。
実施例3:ヒトEP1受容体発現細胞を用いた細胞内Ca濃度の測定
500cm2トレイを用いてコンフレントになるまで培養した後、PBS(−)で洗浄し、氷冷しながらPBS(−)中でピペッティングにより細胞をはがした。800rpm、3分間の遠心で得られた細胞ペレットをミディアムA(medium A)(15ml)に懸濁し、37℃で50分間、室温で10分間インキュベートした後、再び遠心で得られたペレットをミディアムB(medium B)に懸濁(1〜2×106/ml)してアッセイに用いた。なお、Fura2−AM(同仁社製)の存在する場合、アルミホイルで遮光して操作を行なった。CAM−220Spectrofluorometer(日本分光工業(株)社製)を用い、上記細胞懸濁液400μlを600rpmで撹拌しながら340nmおよび380nmでの蛍光強度の変化ならびにその比をモニターし、細胞内Ca濃度の変化を測定した。
ミディアムA(medium A):
fura2−AM(5μM)、インドメタシン(indomethacin)(10μM)、HEPES−NaOH(pH7.4,10mM)および10%FCSを含有するα−MEM、
ミディアムB(medium B):
インドメタシン(indomethacin)(1μM)、HEPES−NaOH(pH7.4,10mMおよび0.1%BSAを含有するα−MEM。
本発明および特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた細胞内Ca濃度の変化を以下の図3に示した。なお、図3中、比較とは、特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた実験結果を意味する。
上記実施例2および3から明らかなように、本発明のヒトEP1受容体発現細胞では、極めて高い[3H]−PGE2の特異的結合が見られ、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇も認められた。
一方、特許第3090472号明細書に記載されているヒトEP1受容体発現細胞では、[3H]−PGE2の特異的結合は認められたが、PGE2依存的な細胞内Ca濃度上昇は全く認められなかった。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は本発明のヒトEP1受容体発現細胞を用いた結合実験のスキャッチャードプロットである。
図2は特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた結合実験のスキャッチャードプロットである。
図3は本発明および特許第3090472号明細書記載のヒトEP1受容体発現細胞を用いた細胞内Ca濃度の変化を示すグラフである。
Claims (10)
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
- 請求の範囲1記載のポリペプチドをコードするcDNA。
- 配列番号2で示される塩基配列を有する請求の範囲2記載のDNA、またはその配列に選択的にハイブリダイズするフラグメントDNA。
- 請求の範囲2または3記載のDNAを含む複製または発現ベクター。
- 請求の範囲4記載の複製または発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
- 請求の範囲1記載のポリペプチドを発現させるための条件下で請求の範囲5記載の宿主細胞を培養することを特徴とする該ポリペプチドの製造方法。
- 請求の範囲1記載のポリペプチドのモノクローナルまたはポリクローナル抗体。
- 請求の範囲1記載のポリペプチドまたは請求の範囲7記載の抗体および薬学的に許容される賦形剤および/または抗体を含有することを特徴とする薬学的組成物。
- 請求の範囲1記載のポリペプチドを用いることを特徴とするEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
- 請求の範囲5記載の宿主細胞を用いることを特徴とするEP1アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物をスクリーニングする方法。
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