JPS649073B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、微生物を活性状態でポリアクリルア
ミドゲルの内部に包括固定する方法に関する。

従来の技術 廃水を生物学的に処理する場合に、微生物を固
定化して使用することが提案されている。そして
微生物を包活固定する場合の担体として、寒天、
カラギーナン、アルギン酸等の天然に存在する物
質及びポリアクリルアミド等の合成高分子物質が
提案されている。担体の物理的強度を重視する場
合、これらのうちでポリアクリルアミドが最も優
れていると言われている。

本発明者らは、特願昭59−245499号明細書に、
ポリアクリルアミドの内部に微生物を包活固定
し、粒状の固定化微生物を製造するため、微生物
懸濁液及びアルギン酸ナトリウムを混合したアク
リルアミドモノマーの水溶液を、塩化カルシウム
及び重合開始剤を含む水溶液中に滴下して重合さ
せる方法を提案した。この方法は、操作が簡単で
あり、疎水性液体を用いずに固定化微生物を球状
に成形できるため有利な方法である。

発明が解決しようとする問題点 しかしながら、前記の方法には、アクリルアミ
ドモノマーの毒性によつて、微生物の活性が低下
するという欠点がある。更に、この方法において
は、微生物懸濁液及びアルギン酸ナトリウムを混
合したアクリルアミドモノマーの水溶液を、塩化
カルシウム及び重合開始剤を含む水溶液中に滴下
したとき、その直後に生じるアルギン酸カルシウ
ムの被膜を通して、液滴下のアクリルアミドモノ
マーの一部が外液中に漏れる欠点があり、固定化
微生物の強度の低下を起こすと同時に、滴下量が
多くなると、外液である塩化カルシウム及び重合
開始剤を含む水溶液自体が重合してしまう場合さ
えある。また、重合開始剤の濃度が低い場合に
は、重合が液滴全体に確実に行われず、強固な固
定化微生物ができなかつた。

従つて、本発明は、微生物の活性をできるだけ
高く維持し、アクリルアミドモノマーの外液への
漏れを抑制し、重合を液滴全体に確実に行わせる
ことにより、活性及び強度の高い固定化微生物を
製造しうる方法を提供することを目的とする。

問題点を解決するための手段 本発明による微生物の固定方法は、アルギン酸
ナトリウムを混合したアクリルアミドモノマー水
溶液に、該モノマーの重合に必要な量の一部の重
合開始剤を予め添加し、次いで微生物懸濁液を混
合した後、塩化カルシウム及び重合開始剤の残部
を含む水溶液中に滴下し、アクリルアミドモノマ
ーの重合を終了させることを特徴とする。

本発明方法によれば、まず、アルギン酸ナトリ
ウムを混合したアクリルアミドモノマー水溶液に
該モノマーの重合に必要な量の一部の重合開始剤
を予め添加して、穏やかに重合反応を進めながら
微生物懸濁液を混合する。微生物は、アクリルア
ミドモノマー水溶液と混合すると、主としてアク
リアミドモノマーの毒性によつて活性が急速に低
下するが、本発明方法により予め重合開始剤の一
部を添加しておくと、重合反応によりアクリルア
ミドモノマーの毒性が徐々に低下する。これによ
り、微生物の活性の低下を低減することができ
る。この予め添加する重合開始剤の量は、滴下す
る混合液に対して0.5％以下、好ましく0.1〜0.5％
とする。

こうして得た混合液を次に、塩化カルシウムと
重合開始剤の残部を含む水溶液中に滴下すること
によりアクリルアミドを分子量が大きくなつた状
態でアルギン酸カルシウムの被膜で多い、外液中
への漏れを抑制する。

本発明方法では、塩化カルシウム及び重合開始
剤を含む水溶液に予め窒素ガス等の不活性ガスを
十分通気して重合を阻害する溶存酸素を排除し、
嫌気性雰囲気下に滴下及び重合操作を行う。これ
により、液滴内部に保持されたアクリルアミドの
重合を速やかに確実に終了させることができる。

また、予め重合開始剤を添加した後、温度を25
℃以下に保つことにより穏やかに重合反応を進め
ながら微生物懸濁液を混合することができ、重合
開始剤を添加してから２分以内であれば、混合液
の粘度はあまり大きくならず、ノズルからの滴下
が可能である。

アクリルアミドモノマー及びアルギン酸ナトリ
ウムの濃度は、適宜変化させることができるが、
通常、微生物懸濁液を混合した後の状態におい
て、アクリルアミドモノマー濃度が５〜30％、ア
ルギン酸ナトリウム濃度が0.1〜２％になるよう
に調整する。アルギン酸ナトリウムは、重合度が
約100以下の小さいものを用いることにより液滴
中のアクリルアミドの漏れを更に少なくすること
ができる。

モノマー水溶液には、通常、架橋剤としてＮ，
N′−メチレンビスアクリルアミド、Ｎ，N′−プ
ロピレンビスアクリルアミド、ジアクリルアミド
ジメチルエステル等を溶解し、更に必要に応じて
重合促進剤、例えばβ−ジメチルアミノプロピオ
ニトリル、Ｎ，Ｎ，N′，N′−テトラメチルエチ
レンジアミン等を添加することができる。

重合開始剤としては、ペルオクソ二硫酸カリウ
ム、ペルオクソ二硫酸アンモニウム等を使用する
ことができる。

モノマー水溶液を塩化カルシウム・重合開始剤
水溶液に滴下した後、２〜15分程度で重合が終了
し、球状の固定化微生物が完成する。固定化微生
物の粒径は、滴下する速度、ノズルの口径等の調
節により変えることができ、１〜８mmのものを得
ることができる。塩化カルシウム・重合開始剤水
溶液は、重合時の発熱による温度上昇を防ぎ、20
〜35℃に保持する必要がある。

作 用 重合開始剤の一部を予めモノマー水溶液に添加
することにより、アクリルアミドモノマーを少し
重合させた状態で微生物懸濁液を混合することが
可能になる。その結果、アクリルアミドモノマー
の毒性による影響か低減され、高い微生物活性が
保持される。また、低重合度のアクリルアミドを
含む液滴をアルギン酸カルシウムの被膜で覆うの
で、液滴から外液へのアクリルアミドモノマーの
漏れが抑制され、強度の高い固定化微生物を生じ
る。

実施例 次に、実施例に基づいて本発明を詳述するが、
本発明はこれに限定されるものではない。

実施例 １ シユードモナス菌（Pseudomonas sp.）を下
記の方法で固定した。

アクリルアミドモノマー36％、Ｎ，N′−メチ
レンビスアクリルアミド２％、β−ジメチルアミ
ノプロピオニトリル0.5％及びアルギン酸ナトリ
ウム１％を含む水溶液に予め窒素ガスを十分に通
気し、溶存酸素を排除しておいた。このモノマー
水溶液５mlに温度を10℃に保持しながら種々の濃
度のペルオクソ二硫酸カリウム水溶液１ml及び次
いで、シユードモナス菌の7.3×10⁷細胞／cm³の懸
濁液４mlを添加した。ペルオクソ二硫酸カリウム
水溶液の添加からシユードモナス菌の添加終了ま
でに要した時間は30秒であつた。

こうして得た混合液を塩化カルシウム２％及び
ペルオクソ二硫酸カリウム１％を含む水溶液60ml
中に水溶液の温度を30℃に保持しながら滴下し、
重合を完了させ、固定化微生物を得た。

この実験において、予め添加したペルオクソ二
硫酸カリウムの濃度（滴下する混合液に対してｘ
％）と完成する固定化微生物の圧縮強度及び
ATPの残存量から求めた微生物の活性残存率と
の関係を第１図に示す。

従来の方法（ｘ＝０％）より、著しく高い強度
及び活性残存率が得られた。

実施例 ２ ニトロソモナス菌（Nitrosomonas sp.）、ニト
ロバクター菌（Nitrobacter sp.）等が優先する
混合培養菌体の5.5×10⁷細胞／cm³の懸濁液を用い
る以外は、実施例１と同様に操作した。得られた
固定化微生物の圧縮強度及び活性残存率を測定
し、結果を第２図に示す。

従来の方法（ｘ＝０％）より、著しく高い強度
及び活性残存率が得られた。

発明の効果 本発明によれば、アクリルアミドモノマーの毒
性の影響を抵下し、また、液滴中のアクリルアミ
ドの外液中への漏れを少なくして微生物を固定化
することができる。従つて、高い活性及び強度を
有する固定化微生物が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は実施例１における予め添加するペルオ
クソ二硫酸カリウムの濃度と固定化微生物の圧縮
強度及び活性残存率との関係図、第２図は実施例
２における予め添加するペルオクソ二硫酸カリウ
ムの濃度と固定化微生物の圧縮強度及び活性残存
率との関係図である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ アルギン酸ナトリウムを混合したアクリルア
   ミドモノマー水溶液に、該モノマーの重合に必要
   な量の一部の重合開始剤を予め添加し、次いで微
   生物懸濁液を混合した後、塩化カルシウム及び重
   合開始剤の残部を含む水溶液中に滴下し、アクリ
   ルアミドモノマーの重合を終了させることを特徴
   とする微生物の固定方法。 ２ 予め添加する重合開始剤の濃度を滴下する混
   合液に対して0.1〜0.5％とする特許請求の範囲第
   １項記載の微生物の固定方法。 ３ 滴下及び重合操作を酸素の排除下に行う特許
   請求の範囲第１項又は第２項記載の微生物の固定
   方法。