JPS646785B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 ＜技術分野＞ 本発明は、温度検出手段付カテーテルの製造方
法に関するものである。

＜従来技術およびその問題点＞ カテーテルなどの成型物には、特に後の加工に
より孔、穴、溝等が形成されることがあり、これ
らの孔、穴、溝等は充填剤の注入により補修して
いる。この成型物の孔、穴、溝などに充填剤を注
入する充填加工は、ヘラ、注射針等による手操作
あるいは定量吐出機による機械的操作によつて行
われている。

充填操作を第１図につき説明すると、成型物１
の穴２に充填剤３を注入するのであるが、成型物
１の表面４と充填剤表面とが同一平面または曲面
をなすよう仕上げる必要がある。充填剤の注入に
際して、特に少量を充填する場合は、手操作では
作業が困難であり、第１図に点線５で示すように
過少充填のために窪んだり、あるいは過剰充填の
ために実線６で示すように盛り上つたりする。ま
た、機械的充填操作によつても、充填剤の注入量
を成型物の孔、穴や溝の充填体積と一致するよう
に厳しく管理する必要がある。しかし、充填剤の
注入量を厳しく管理したとしても、粘度の高い充
填剤では、充填後糸を引く状態になり、手操作の
場合と同様に成型物表面と充填剤表面とが面一
（同一平面または曲面）とはならず、平滑な仕上
がり表面が得られない。

特に、カテーテルなど血管に挿入して使用する
成型物では、成型物の表面が滑らかでないと血管
壁等を傷つけることがあり、また、このような成
型物を長時間血管内に留置すると血栓を生じさせ
る原因にもなるので、表面を平滑に仕上げること
は非常に重要である。

しかるに、従来の手操作あるいは機械的操作に
よつては、成型物の仕上がり表面が平滑とはなら
ず、美観が損なわれる上、使用上の問題点も生
じ、さらに充填作業が困難で、作業が煩雑で、作
業時間が長いなどの多くの問題があつた。

発明の目的 本発明は、上述した実情に鑑みなされたもので
あり、その目的とする処は、温度検出手段付カテ
ーテルを製造するにあたり、カテーテル本体の
孔、穴、溝等に充填剤を注入した後、充填剤表面
を平滑に補修する工程を有する製造方法を提供し
ようとするものである。

すなわち、本発明は、カテーテル本体と該カテ
ーテル本体内に温度検出手段を有する温度検出手
段付カテーテルの製造方法において、カテーテル
本体を成形し、該カテーテル本体の先端付近の側
壁に側孔を穿設し、温度検出素子と該素子に接続
されたリード線とからなる温度検出手段を前記温
度検出素子が前記側孔付近にくるように挿入し、
次に、前記側孔より、前記温度検出素子を包囲
し、該側孔よりややあふれる程度に充填剤を注入
し、該充填剤が硬化する前に、前記側孔付近のカ
テーテル本体の表面形状にほぼ対応する表面形状
を有する加工具で前記側孔よりあふれた充填剤を
除去した後、該充填剤を硬化させることを特徴と
する温度検出手段付カテーテルの製造方法を提供
するものである。

前記充填剤は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂
のいずれかで構成するのが好ましい。

発明の具体的説明 温度検出手段付カテーテルは、単一または複数
のルーメンを有し、複数のルーメンを有する場合
は、それらのうちの一ルーメンに温度検出用素子
を設置する。他のルーメンは、輸液や薬剤等の注
入用、血液等のサンプリング用、バルーンへの二
酸化炭素あるいは空気注入用、圧測定用の用途に
供する。

このような温度検出手段付カテーテルは、一般
的な押出延伸法などによつてカテーテル本体を成
形し、温度検出用素子を充填剤で固定するための
充填剤注入用の孔をカテーテル本体の先端付近の
側壁に穿設し、続いて、温度検出用素子とそれに
接続されたリード線とを挿入した後、孔から充填
剤を注入して温度検出用素子を固定することによ
つて製造される。この際、充填剤はカテーテル本
体表面より盛り上がるように注入し、充填剤が硬
化する前に後述する加工具によつて盛り上り部分
を研削し、充填剤表面を、平滑な自由表面とし、
カテーテル本体の表面と面一とする。

次に、本発明の温度検出手段付カテーテルの好
適実施例である熱希釈法に使用される温度検出手
段付カテーテルにつき、その製造方法を図面に基
づいて説明する。

第２図に示すように、熱希釈法に使用される温
度検出手段付カテーテル１０は、少なくとも２本
のルーメンを有し、温度検出用素子１１用のルー
メン１２および指示薬注入用ルーメン１３の他
に、カテーテルを挿入し易いようにするためのバ
ルーンへの二酸化炭素あるいは空気注入用ルーメ
ン、圧測定用ルーメンなどが必要に応じて設けら
れている。このようなカテーテル１０に温度検出
用素子１１をセツトするには、カテーテル１０の
先端付近の温度検出部に対応する位置のカテーテ
ル１０の外壁１４および隔壁１５に孔１６ａおよ
び１６ｂを形成し、この孔部分に温度検出用素子
１１を位置させた後、孔１６ａから充填剤１７を
注入して硬化させることにより行つている。この
際、他のルーメンとの隔壁の孔１６ｂは必ずしも
要しないが、隔壁にも孔１６ｂを穿設し、充填剤
１７を他のルーメンにも流入させた方が、温度検
出部の熱応答がよくなり、好ましい。また、カテ
ーテル１０の外壁１４の孔１６ａから注入された
充填剤１７が、第１図に点線５で示すように窪ん
でいてはならない。窪んでいる場合には、付加的
に充填剤を注入して充填剤が孔よりややあふれる
程度とした後、最終仕上げとして研削を行い、充
填剤表面を平滑にし、かつカテーテル本体表面と
面一となるようにする。

ここで、注入された充填剤の盛り上り部分の研
削加工に用いる加工具３０の一例を、第４ａ図お
よび第４ｂ図に示す。加工具３０の本体３１は、
カテーテル本体の外表面に対応するプロフイー
ル、すなわち、カテーテル本体の外表面が平面で
あれば平面の、曲面であれば曲面のプロフイール
を有するようにするのが加工上好便である。そし
て、加工具本体３１の移動方向の一方の端面に
は、第４ａ図の例では傾斜面で構成したブレード
３２、第４ｂ図の例では薄肉部で構成したブレー
ド３３を形成し、いずれのブレード３２，３３に
も、カテーテル本体表面より盛り上つた充填剤を
研削するためのエツチング３４を形成する。

この種の加工具３０により、カテーテル本体表
面より盛り上つた充填剤が研削され、その後、充
填剤が硬化すると、充填剤表面は平滑な自由表面
で、カテーテル本体表面と面一となる。

第５図には、第４ａ図に示すものと同様の機能
を果たす他の構成の加工具３０を用い、そのブレ
ード３２のエツジ３４により、カテーテル１０の
孔１６ａから注入された充填剤１７の盛り上り部
分を、矢印３４の方向に研削している状態を示
す。これにより、カテーテル１０上の充填剤の盛
り上り部分は、カテーテル１０の曲面と同じ曲面
をなすように鋭利に切除された後に、充填剤が硬
化するので、カテーテル１０は、孔の穿設、充填
加工を行つた後も、加工以前と同様の平滑な表面
を有するようになる。

なお、加工具の材料は、カテーテル上を移動さ
せる際に変形を生じないような剛性を持つもの、
例えば金属ではステンレス、鉄、銅、黄銅、アル
ミニウムなど、合成樹脂ではポリアセタール樹
脂、ABS樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂な
どが好ましい。

カテーテルの構成材料は、ポリ塩化ビニル、ポ
リエチレン、テトラフルオロエチレン等の樹脂に
オキシ炭酸ビスマス、酸化ビスマス等を配合した
ものなどが使用され、充填剤は、アルミナ
（Al₂O₃）、炭化ケイ素（SiC）、チツ化ホウ素
（BN）等を熱伝導を向上させるために含有させ
たエポキシ樹脂、シリコーン樹脂などが好適に使
用される。

本発明の方法で製造される温度検出手段付カテ
ーテルは、例えば熱希釈法、直腸温度測定用、膀
胱温度測定用などに使用されるが、熱希釈法に使
用する場合について説明する。

第３図に示すように、温度検出手段付カテーテ
ル１０を肘静脈または太腿静脈よりバルーンを膨
らませて血流に乗せて心臓１８の右房１９および
右室２０を経て肺動脈２１にまで挿入する。この
状態で、氷水等で一定の温度に冷却された指示液
を、ルーメン１３を用いてその注入口２２より右
房１９内へ注入液の温度変化がないように素早く
注入する。注入口２２より注入された指示液は、
右房１９から右室２０、肺動脈２１へ拡散する。
カテーテル１０の先端部に設けられた温度検出部
２３において、指示液注入前後の温度変化を測定
し、所要のデータを得る。

このように、温度検出手段付カテーテルは心
臓、血管など人体に挿入して使用するものであ
り、カテーテル表面がなめらかでないと、心臓
壁、血管などのカテーテル挿入部分を傷つけるこ
とがあり、また、血管内に留置して使用する場合
には血栓を生じさせるおそれがある。

従つて、この種のカテーテルに限らず、成型物
の表面は加工後においても平滑にしておくことが
重要であることがわかる。

発明の具体的作用 本発明においては、カテーテルに温度測定用素
子などの埋め込み、固定を行うためにカテーテル
本体の先端付近に孔をあけ、この孔からの充填剤
注入の際、カテーテル本体の表面よりも充填剤表
面が盛り上るように充填すれば良い。

この盛り上り部分は、鋭利なエツジを有するブ
レード付加工具により、充填剤表面がカテーテル
本体表面の一部をなすように切除された後、充填
剤は硬化される。

これにより、カテーテル本体表面に孔、穴、溝
などが形成されて存在していても、充填剤注入の
後処理加工である充填剤の切削加工により、カテ
ーテル本体表面と充填剤表面とは同一の平面また
は曲面を有するよう加工された後に充填剤が硬化
するので、品質のすぐれたカテーテルを得ること
ができる。

発明の具体的効果 本発明の製造方法によれば、従来の手操作ある
いは機械的操作による充填剤注入工程を含む製造
方法に比べて、以下に述べるような多くの利点を
有する。

(1) 本発明においては、カテーテル本体の孔、
穴、溝等に注入される充填剤は、後処理により
カテーテル本体表面から盛り上つた不要部分は
切除されるから、手操作あるいは機械操作によ
り充填剤を注入する場合にも、精密な注入が必
要ではなく、孔、穴、溝等に過剰量の充填剤を
注入すれば良い。すなわち、充填剤の注入に際
しては、充填量の精密な管理は必要でなくな
り、従来最も厳しい管理が必要であつた作業工
程が極めて簡素化され、次の研削工程は簡単な
方法で行い得るので、作業時間が大幅に短縮さ
れる。また、不要部分の切除に用いる作業工具
は簡単なものであるから、製造コストの上昇を
招くこともない。

(2) カテーテル本体の孔、穴、溝等に注入された
充填剤は、硬化前、不要な盛り上り部分はその
カテーテル本体表面に対応する形状を有するス
ライド加工具により切除されるから、切除加工
されたカテーテルの表面は、充填剤で補修した
部分が存在しても、補修部分もあたかもカテー
テル本体表面であるかのように、両者間の境界
が識別されるようなことはない程平滑な自由表
面となり、人体、特に血管などに挿入して使用
されても、血管を傷つけたり、血栓を生ぜしめ
るような恐れは全くない。

【図面の簡単な説明】

第１図は、成形物の穴を充填剤で補修した状態
を示す断面図、第２図は、温度検出手段付カテー
テルの先端温度検出部の断面図、第３図は、第２
図に示すカテーテルの右心系の熱希釈法への適用
例を示す線図、第４ａ図および第４ｂ図は、カテ
ーテルの孔などに注入された充填剤表面の平滑化
加工に用いる加工具の斜視図、第５図は、第４ａ
図に示す加工具と同様の機能を果たす他の構成の
加工具により、カテーテルの孔に注入された充填
剤表面を平滑化している状態を示す斜視図であ
る。 符号の説明、１……成型物、２……穴、３……
充填剤、４……成型物表面、５，６……充填剤表
面、１０……温度検出手段付カテーテル、１１…
…温度検出用素子、１２，１３……ルーメン、１
４……外壁、１５……隔壁、１６ａ，１６ｂ……
孔、１７……充填剤、１８……心臓、１９……右
房、２０……右室、２１……肺動脈、２２……注
入口、２３……温度検出部、３０……加工具、３
１……本体、３２，３３……ブレード、３４……
エツジ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ カテーテル本体と該カテーテル本体内に温度
   検出手段を有する温度検出手段付カテーテルの製
   造方法において、カテーテル本体を成形し、該カ
   テーテル本体の先端付近の側壁に側孔を穿設し、
   温度検出素子と該素子に接続されたリード線とか
   らなる温度検出手段を前記温度検出素子が前記側
   孔付近にくるように挿入し、次に、前記側孔よ
   り、前記温度検出素子を包囲し、該側孔よりやや
   あふれる程度に充填剤を注入し、該充填剤が硬化
   する前に、前記側孔付近のカテーテル本体の表面
   形状にほぼ対応する表面形状を有する加工具で前
   記側孔よりあふれた充填剤を除去した後、該充填
   剤を硬化させることを特徴とする温度検出手段付
   カテーテルの製造方法。 ２ 前記充填剤は、エポキシ樹脂、シリコーン樹
   脂のいずれかである特許請求の範囲第１項に記載
   の温度検出手段付カテーテルの製造方法。