JPS64193B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はボルト又はナツトを締付けるナツトラ
ンナに関するものである。

近年、ロボツトなどによる組立工程を汎用化す
るとか、あるいはエンジン部品などの機能重量部
品の高精度締付けに対するニーズが高まつてい
る。このためのナツトランナには、多種サイズの
ボルト、ナツトの締付けを高速で、しかも高精度
に行う必要があり、一般的には高速低トルク、低
速高トルクの変速切替機構、高減速機構が設けら
れている。しかし、このような機構は回転系にお
けるイナーシヤ、回転抵抗、重量を大きくしがち
である。例えばナツトランナの低速時には、一般
に回転系のイナーシヤは問題とならないが、高速
時は締付けに関与しない高減速機構部のイナーシ
ヤ及び摩擦抵抗が比較的大きいため、ねじ締め精
度や駆動モータの制御に少なからず悪影響を及ぼ
している。

特に変速機構として駆動モータを正逆転切替え
し、高速、低速の速度切替えを行うものにあつて
は、駆動モータの正転から逆転への切替え時に減
速−停止−逆転を短時間にスムーズに行う必要が
あり、このとき回転系イナーシヤの軽減が強く望
まれている。

本発明はかかる点に鑑みなされたもので、ナツ
トランナ軸の高速回転時は高減速機構を回転系か
ら切り離し、これにより回転系のイナーシヤ、回
転抵抗等を大幅に軽減してねじ締め精度や駆動モ
ータの正逆転制御をスムーズになし得るようにし
たナツトランナを提供することを目的とする。

以下、本発明の実施例を図面について説明す
る。

第１図は本発明にかかるナツトランナの一例を
示すもので、該ナツトランナ１０は、概略して固
定部に取付けられる固定ハウジング１１、ナツト
等に係合するソケツト１２ａを先端に有するナツ
トランナ軸１２、可動ハウジング１３、直流サー
ボモータ等からなる正逆回転可能な駆動モータ１
４、および前記可動ハウジング１３内に装着され
た高速回転軸１５、初段減速機構１６、高減速機
構１７、中間スリーブ１８およびこれら回転系の
駆動モータ１４とナツトランナ軸１２間での回転
伝達を司る第１〜第３の一方クラツチ１９〜２１
とから構成され、その各部の詳細は以下に述べ
る。

前記固定ハウジング１１と可動ハウジング１３
は同一軸線に沿つて配置され、そして、この両者
は固定ハウジング１１に対し微少相対回転を許容
する可撓スリーブ２２により一体に連結されてい
る。また、固定ハウジング１１の中心軸線部には
ナツトランナ軸１２がベアリング２３を介して軸
線方向にスライド可能にかつ回転可能に軸承さ
れ、さらに中間スリーブ１８は可撓スリーブ２２
の可動ハウジング１３との結合部と固定ハウジン
グ１１間にまたがつて軸受２４，２４により回転
可能にかつナツトランナ軸１２と同心に軸着さ
れ、この中間スリーブ１８とナツトランナ軸１２
の嵌合部は両者の内周および外周に形成したスプ
ライン１８ａ，１２ａによつてスプライン結合さ
れているとともに、ナツトランナ軸１２は中間ス
リーブ１８内に装着した圧縮スプリング２５によ
り軸線方向にフローチングできるようになつてい
る。

また、前記駆動モータ１４は前記可動ハウジン
グ１３の他端に軸線を互いに一致させて一体に固
定されており、この駆動モータ１４の回転は初段
減速機構１６を介して並列する高速回転軸１５又
は高減速機構１７により前記中間スリーブ１８に
伝達されるものであるが、前記高速低トルク用の
初段減速機構１６は、前記駆動モータ１４の出力
軸１４ａに一体に取付けた太陽歯車１６ａと、可
動ハウジング１３内に軸受１６ｂを介して回転可
能にかつ太陽歯車１６ａと同心に取付けた遊星歯
車支持体１６ｃと、この支持体１６ｃに軸ピン１
６ｄにより回転可能に軸着され、かつ自転しなが
ら公転できるよう太陽歯車１６ａおよび可動ハウ
ジング１３の内周壁に形成した内歯歯車１６ｅと
噛合する複数個の遊星歯車１６ｆとから構成され
ている。そして前記遊星歯車支持体１６ｃに一体
にかつモータ出力軸１４ａの軸線と同軸にした円
筒軸１６ｇには、可動ハウジング１３内において
前記モータ出力軸１４ａの中心軸線上に同軸に配
置した前記高速回転軸１５の一端部がスプライン
結合され、この高速回転軸１５の他端部は可動ハ
ウジング１３内に突出する前記中間スリーブ１８
内に軸受２６を介して回転可能に軸承され、かつ
高速回転軸１５の外周と中間スリーブ１８の内周
間には前記第２の一方クラツチ２０が介在されて
おり、この第２の一方クラツチ２０は高速回転軸
１５が前記初段減速機構１６を介して高速で正回
転されているとき噛合つて、その回転力を中間ス
リーブ１８に伝達するものである。

また、前記高減速機構１７は初段減速機構１６
の回転をさらに減速して低速高トルクを発生させ
るためのもので、直列に結合された３段の歯車減
速機２７〜２９からなり、第１段の歯車減速機２
７は高速回転軸１５の正回転時オーバラインし、
逆転時に噛合う前記第１の一方クラツチ１９を介
して高速回転軸１５に取付けた入力回転部材２７
ａと、この入力回転部材２７ａに一体に設けた太
陽歯車２７ｂと、可動ハウジング１３内に軸受２
７ｃを介して回転可能にかつ太陽歯車２７ｂと同
心に取付けた遊星歯車支持体２７ｄと、この支持
体２７ｄに軸ピン２７ｅにより回転可能に軸着さ
れ、かつ自転しながら公転できるよう太陽歯車２
７ｂおよび可動ハウジング１３の内周壁に形成し
た内歯歯車２７ｆに噛合する複数個の遊星歯車２
７ｇとから構成されている。また、第２段の歯車
減速機２８は、前記第１段の歯車減速機２７の出
力軸に相当する支持体２７ｄに一体にかつ高速回
転軸１５の外周に同心に配設した太陽歯車２８ａ
と、可動ハウジング１３内に軸受２８ｂを介して
回転可能にかつ太陽歯車２８ａと同心に取付けた
遊星歯車支持体２８ｃと、この支持体２８ｃに軸
ピン２８ｄにより回転可能に軸着され、かつ自転
しながら公転できるよう太陽歯車２８ａおよび可
動ハウジング１３の内周壁に形成した内歯歯車２
８ｅに噛合する複数個の遊星歯車２８ｆとから構
成され、さらに第３段の歯車減速機２９は、前記
第２段の歯車減速機２８の出力軸に相当する支持
体２８ｃに一体にかつ高速回転軸１５の外周に同
心に配設した太陽歯車２９ｃと、可動ハウジング
１３内の支持体２９ｂに軸ピン２９ｃを介して回
転可能に軸着され、かつ太陽歯車２９ａに噛合す
る複数個の歯車２９ｄと、この各歯車２９ｄが内
接噛合する回転可能な内歯歯車２９ｅと、この内
歯歯車２９ｅと一体化され、かつ前記中間スリー
ブ１８の可動ハウジング内突出部分と重合する位
置において可動ハウジング１３の内周に軸受３０
を介し回転可能にかつ中間スリーブ１８と同心に
枢着された出力回転部材３１とから構成されてお
り、そして前記出力回転部材３１の内周面と中間
スリーブ１８の外周面間には、前記第３の一方ク
ラツチ２１が介在され、この第３の一方クラツチ
２１は前記第２の一方クラツチ２０と同様に出力
回転部材３１が正転されたとき噛合つて中間スリ
ーブ１８に回転力を伝達するようになつている。

次に上記のように構成された本発明の動作を第
２図および第３図を参照しながら説明する。

まず、ナツトランナによるナツト又はボルトの
締付け操作に際し、駆動モータ１４が正回転駆動
され、これにより出力軸１４ａが第２図の矢印方
向（正転）に回転されると、その回転は初段減速
機構１６により減速されて第２図の破線矢印で示
す系路で高速回転軸１５に伝達され、高速回転軸
１５を第２図の実線矢印方向に高速で回転させ
る。この高速回転軸１５の回転は第２の一方クラ
ツチ２０を介して中間スリーブ１８に伝達され、
さらに中間スリーブ１８とスプライン結合される
ナツトランナ軸１２に伝達されて、該ナツトラン
ナ軸１２を第２図の実線矢印方向に高速低トルク
で回転させる。このとき、第１の一方クラツチ１
９はオバーラン、即ち非噛合い状態におかれるた
め、高速回転軸１５の回転は高減速機構１７の第
１段減速機２７に伝達されることがなく、したが
つて高減速機構１７は高速回転系から切離され動
作することがない。

また、上記高速低トルクで締付けられた後のボ
ルトまたはナツトの完全な締付けを行わせるため
に駆動モータ１４が逆転方向に切替駆動された場
合は、その出力軸１４ａは第３図の実線矢印方向
に回転されると同時に、出力軸１４ａの回転は初
段減速機構１６により減速され、第３図の破線矢
印で示す系路で高速回転軸１５に伝達される。こ
れにより高速回転軸１５が第３図の実線矢印方向
に回転されると、その回転は第１の一方クラツチ
１９を介して入力回転部材２７ａに伝達され、さ
らに高減速機構１７に伝達される。そして第３図
の破線矢印に示す系路で各歯車減速機２７〜２９
を伝達される間に初段減速機構１６の回転速度
は、それぞれの第１段〜第３段の歯車減速機２７
〜２９により所望の低速度に減速され、出力回転
部材３１より第３図の実線矢印方向の回転として
出力する。出力回転部材３１の回転は第３の一方
クラツチ２１を介して中間スリーブに伝達され、
さらに中間スリーブ１８とスプライン結合するナ
ツトランナ軸１２に伝達されて、該ナツトランナ
軸１２を第３図の実線矢印方向に低速高トルクで
回転することになる。このとき、高速回転軸１５
と中間スリーブ１８間に介在した第２の一方クラ
ツチ２０は非噛合い状態におかれるため、高速回
転軸１５の回転が中間スリーブ１８に伝達される
ことがない。

したがつて、上記構成のナツトランナでは、高
速時に高減速機構部が回転駆動されないため、駆
動モータの正転から逆転への切替時に生じる回転
系のイナーシヤを軽減できるのである。

第４図は本発明ナツトランナの他の実施例を示
すもので、高減速機構にハーモニツクドライブ機
構３２を用いたものである。前記ハーモニツクド
ライブ機構３２はサーキユラスプライン３２ａ、
フレクスプライン３２ｂおよびウエーブジエネレ
ータ３２ｃからなり、前記ウエーブジエネレータ
３２ｃは入力回転部材３２ｄおよび第１の一方ク
ラツチ１９を介して同軸に配置した高速回転軸１
５に連繋され、この高速回転軸１５の一端は駆動
モータ１４に直結されているとともに、高速回転
軸１５の他端部は、第１図の場合と同様に同軸配
置される中間スリーブ１８の一端部に第２の一方
クラツチ２０を介して連結され、さらに前記フレ
クスプライン３２ｂと一体化した出力回転部材３
２ｅと前記中間スリーブ１８とは第３の一方クラ
ツチ２１を介して連結されている。そして前記中
間スリーブ１８とナツトランナ軸１２は終段減速
機構３３を介して連結され、中間スリーブ１８の
回転をナツトランナ軸１２に伝達されるようにな
つている。前記終段減速機構３３は、中間スリー
ブ１８に一体に設けた太陽歯車３３ａと、この太
陽歯車３３ａと同心にかつ回転可能に配置された
支持体３３ｂに回転可能に軸着され、そして自転
および公転できるよう太陽歯車３３ａおよび内歯
歯車３３ｃに噛合された複数個の遊星歯車３３ｄ
とから構成され、さらに支持体３３ｂにはナツト
ランナ軸１２がスプライン結合されている。

この実施例においては、駆動モータ１４の正回
転時は、その回転は高速回転軸１５、第２の一方
クラツチ２０を介して中間スリーブ１８に伝達さ
れ、さらに終段減速機構３３により減速されてナ
ツトランナ軸１２に伝達され、ナツトランナ軸１
２を高速低トルクで回転する。また、駆動モータ
１４が逆回転された場合は、その回転は高速回転
軸１５および第１の一方クラツチ１９を介してハ
ーモニツクドライブ機構３２に伝達され、ここで
ナツト等の締付けに必要な回転速度に減速された
後、その出力回転部材３２ｅおよび第３の一方ク
ラツチ２１を介して中間スリーブ１８に伝達さ
れ、さらに中間スリーブ１８の回転は終段減速機
構３３により減速されて低速高トルクでナツトラ
ンナ軸１２を回転するようになる。

したがつて、第４図の実施例においても第１図
の場合と同様の効果が得られる。

以上のように本発明によれば、ナツトランナ軸
の高速低トルク回転時は高減速機構を回転系から
切り離し動作しない構造にしたので、高速低トル
ク時の回転系のイナーシヤおよび回転抵抗等を大
幅に軽減でき、このため駆動モータの正逆転によ
る高速、低速の速度切替え時の駆動モータの制御
が容易かつ確実になるとともに、ねじ締め精度も
安定化するなどの効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明にかかるナツトランナの第１実
施例を示す一部切欠きの側面図、第２図は第１実
施例におけるナツトランナの高速低トルク動作状
態を示す概略説明図、第３図は同じく第１実施例
におけるナツトランナの低速高トルク動作状態を
示す概略説明図、第４図は本発明の第２実施例を
示すナツトランナの概略構成図である。 １０……ナツトランナ、１１……固定ハウジン
グ、１２……ナツトランナ軸、１３……可動ハウ
ジング、１４……駆動モータ、１４ａ……出力
軸、１５……高速回転軸、１６……初段減速機
構、１７……高減速機構、１８……中間スリー
ブ、１９……第１の一方クラツチ、２０……第２
の一方クラツチ、２１……第３の一方クラツチ、
２７ａ……入力回転部材、３１……出力回転部
材、３２……ハーモニツクドライブ機構、３３…
…終段減速機構。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 正逆回転可能な駆動モータと、この駆動モー
   タの出力軸と一端が互いに連結されかつ該出力軸
   の軸線上に回転可能に配置された高速回転軸と、
   この高速回転軸の周囲に同心に配置された遊星歯
   車機構又はハーモニツクドライブ機構にて構成さ
   れる高減速機構と、この高減速機構の入力回転部
   材と前記高速回転軸との間に介在された第１の一
   方クラツチと、前記高減速機構の低出力回転部材
   と前記高速回転軸の他端間に一端が同心に介在さ
   れかつ他端部を前記高速回転軸上に回転可能に延
   在させた中間スリーブと、この中間スリーブの一
   端部においてその内周面と前記高速回転軸の外周
   面間に介在され前記第１の一方クラツチと逆方向
   の回転力を伝達する第２の一方クラツチと、前記
   中間スリーブの一端部においてその外周面と前記
   高減速機構の低出力回転部材の内周面間に介在さ
   れ前記第２の一方クラツチと同方向の回転力を伝
   達する第３の一方クラツチと、前記中間スリーブ
   の他端側に減速機構を介してもしくは介さずに連
   結したナツトランナ軸とからなるナツトランナ。