JPS638254B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 イ 発明の目的 〔産業上の利用分野〕 本発明は無機質繊維と無機質結合剤を主成分と
して形成された不燃、吸音性の無機質天井板によ
つて、曲面天井面を形成するための施工方法に関
するものである。

〔従来の技術〕

石綿、岩綿、ガラス繊維などの無機質繊維と石
膏、珪酸カルシウム、セメントなどの無機質結合
剤を主成分とし、これに必要に応じ澱粉、フエノ
ール樹脂などの有機質結合剤その他の改質剤を添
加混合して平板状に成形した無機質天井板は、不
燃、吸音性の平面天井面形成のために広く用いら
れているが、該天井板は伸度、引張強度並びに可
撓性が低いため、これを彎曲せしめて曲面天井板
を形成することは甚だ困難であり、このような曲
面施工の場合は板巾の狭い短冊状板としてこれを
多数並列して曲面を形成するか、予め製造した所
定曲面を有する特別の成形板を用いるなどの手段
が採用されている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

従来の平板状無機質天井板は、強度、重量、取
扱い性ななどの上から通常６〜25mm厚で30×60cm
程度の矩形板が一般に用いられているが、その彎
曲可能な曲率半径は６mm厚の薄板の場合でも、
300〜250cmであり、それ以下の曲率半径の屈曲を
与えると天井板自体が亀裂破損する虞れがあり、
また上記の彎曲可能な限界内でも、彎曲による内
部応力が釘止め固定部分に集中して該部に亀裂を
生ずるので、平面施工の場合に比べて多数の釘止
めを必要とするなど、平板状無機質天井板を彎曲
して曲面天井面を形成する方法は多くの問題点が
あり、緩曲面形成の場合のみに僅かに実施されて
いるに過ぎない。

一方、室内天井面の装飾性を向上するために、
曲率半径が30cm程度までの凹または凸の急曲面を
形成することが要望さるようになつたが、従来の
平板状無機質天井板を彎曲適用することは不可能
であり、止むを得ず前記のような短冊状板の並列
施工あるいは予め特定の曲面板を製造する手段に
よつて、これに対応せざるを得なかつた。

しかし、このような曲面施工方法においては、
複雑な準備工程を要したり、施工が面倒となるな
どの問題点があり、その改善が望まれていた。

ロ 発明の構成 〔問題点を解決するための手段〕 本発明は従来の無機質天井板を用いる曲面天井
施工方法の前記の問題点を解決するため、その強
度低下を補つて極めて容易に良好な仕上がり曲面
天井面が得られる施工方法を提供するものであ
る。

すなわち、本発明は、裏面に複数の直線状切溝
を平行に凹設するとともに、該面の全面または前
記切溝方向と直交して部分的に粗目布、テープ状
紙布などの伸長可能な可撓性補強シートを貼着し
た無機質天井板を用い、該天井板の裏面に分布し
て貼着用接着剤を塗着した後、前記切溝方向を凹
曲又は凸曲する天井素地曲面の母線方向に一致せ
しめて、接着剤を塗布した裏面を天井素地に当接
圧着して天井板を素地曲面に沿つて彎曲し、釘止
めによつて天井素地に固着することを特徴とする
曲面天井施工方法を要旨とする第一の発明と、表
面に複数の直線状切溝を平行に凹設するととも
に、裏面の全面または前記の切溝方向と直交して
部分的に粗目布、テープ状紙布などの可撓性補強
シートを貼着した無機質天井板を用い、該天井板
の裏面に分布して貼着用接着剤を塗布した後、前
記表面の切溝方向を凹曲する天井素地曲面の母線
方向と一致せしめて接着剤を塗着した裏面を天井
素地面に当接圧着して天井板を素地曲面に沿つて
凹曲して前記切溝の切口が挾着閉止する彎曲を与
えた上、釘止めによつて天井素地に固着する曲面
天井施工方法を要旨とする第二の発明とよりなる
ものである。

上記において、天井素地の曲面とは、直線を曲
率半径が約300〜30cmの曲線に沿つて平行移動し
た軌跡により形成され凹または凸曲面を指し、母
線とは前記の直線を意味する。

天井板の表面または裏面に凹設される直線状の
切溝は、平板状の天井板の一面から他面に向つて
他面側に１〜２mmの連結部を残して切削形成され
るものであり、その切口巾が１〜２mmの間隔を有
するような断面が長方形または楔状をなす深溝で
ある。そして、この切溝は施工すべき曲面の曲率
半径に応じ、且つ仕上げ曲面に好ましい外観が得
られるように、適宜の間隔を置いて平行に複数凹
設される。

天井板の裏面に貼着される可撓性補強シート
は、切溝凹設による天井板の強度低下を補つて、
その取扱い時の破損を防止し、彎曲変形を安定容
易にするためのものであつて、粗目布、皺付けク
ラフト紙などの伸縮可能な薄シート材料が好まし
く、この可撓性補強シートは、複数の平行切溝に
よつて区画された部分相互の連結がなされるよう
に天井板の裏面の全面または前記切溝方向に直交
して部分的に貼着されるものであり、第１の発明
における凹曲面施工の場合には、切溝の切口間隔
の拡開に応じて伸長し得るものでなければならな
い。

天井板裏面には、その全面に分布して多数の小
面積部分に、通常の乾燥硬化あるいは自己架橋硬
化する液状接着剤を塗着し、釘止めは天井素地面
に沿つて当接した天井板の彎曲状態を保持固定す
るとともに、接着剤の良好な硬化接合状態を得る
ものである。

〔作用〕

本発明の曲面天井施工方法によれば、複数平行
する直線状切溝を設けた無機質天井板を用いるこ
とにより、各切溝の切口間隔を拡げまたは狭める
ように、それぞれの僅かな連結部において小角度
の曲折を与えて、凹曲または凸曲する天井素地面
に適合した天井板彎曲が、裏面に貼着した可撓性
補強シートによつて阻害されることなく、容易安
定にできる。そしてこのさい天井板内部に過大な
内部応力が生じないので、貼着用接着剤の使用
量、釘止め箇所などは従来の平板施工の場合と殆
んど同等として、良好強固な曲面仕上げ天井面が
得られる。

そして、第一の発明の方法によれば、切溝は天
井板表面に表れないので、天井面の外観を低下す
ることはなく、また第二の発明の場合において
も、切溝の切口間隔は完全に挟着閉止されるの
て、天井面の外観を殆んど低下することはない。

〔実施例〕

以下、本発明の曲面天井施工方法の実施例を図
面を参照して説明する。

第１図、第２図は第一の発明方法に用いる無機
質天井板の一例を示す裏面平面図並びに該図の
AA線矢視断面図である。

無機質天井板１は巾30cm長さ60cmの矩形板で、
その表面に長手方向に凹条５、凸条６が交互に複
数平行したストライプ模様が形成されている。そ
して凹条５に対応する板厚11mmの部分の裏面２側
から板長手方向に巾1.5mm深さ10mmの長方形をな
す直線状の切溝３が板巾を５等分するように４本
平行に凹設されている。

該切溝３を凹設した裏面２には、切溝方向と直
交して紙テープよりなる補強シート４が間隔を置
いて２枚貼着されている。該補強シート４の紙テ
ープは微細な皺を有する紙力の大きい伸長可能な
クラフト紙が望ましいが、その他の伸長可能な可
撓性フイルムテープや寒冷紗などの粗目布に代え
ることもでき、またこれらは天井板裏面の全面に
貼着してもよい。

切溝３、補強シート４を裏面２側に有する上記
の無機質天井板１は、該裏面２側に分布する多数
の部分に貼着用接着剤を点状に塗着した後、凹曲
または凸曲する天井素地面に当接圧着して貼着固
定される。

第３図は天井素地凹曲面に対する施工状態を示
す要部断面図であり、１１は天井架構１０に石膏
ボード等の下地材を釘止めにより捨貼りして形成
された曲率半径Ｒの凹曲面天井素地であり、前記
の接着剤を塗布した天井板１は、その切溝３方向
を天井素地１１の曲面母線方向（図の紙面に対し
直角方向）と一致せしめて、裏面２を素地１１面
に当接圧着することによつて、天井板１は各切溝
３の連結部７で曲折し、それぞれの切溝３の切口
間隔が該部の補強シート４を伸長しつつ拡開し素
地１１の凹曲面に沿つて適合彎曲した後、表面の
凹条５部分における複数の釘１７の打ち止めによ
つて、１枚の天井板１が素地１１の凹曲に適合彎
曲固定され、さらに同様にしてその上下に他の天
井板１′，１″を目地１５，１６を設けて連設し、
またその長手方向に他の天井板を衝合せ連設して
曲面天井面が形成され、これらの彎曲した天井板
裏面２と素地１１面との小間隙１４に介在した接
着剤が硬化接着することによつて、凹曲面天井施
工が完了する。

第４図は天井素地が凹曲面をなす場合の施工状
態を示す要部断面図であり、第１，２図に示した
前記と同じ無機質天井板１を用いて、これを天井
架構１０に固定した曲率半径Ｒの凸曲天井素地１
１に前記と同様にして貼着固定することによつて
凸曲面天井施工が行われる。

この場合には、天井板１は裏面切溝３の切口間
隔が挟着されて連結部７において前記と反対方向
に曲折され、該曲折部の補強シート４は皺縮し
て、天井素地１１と曲折部との間の小間隙１４′
に介在した接着剤とともに素地１１面に接着され
るものであり、また、上下に連設されるた天井板
１′，１″との当接衝合せを計るため、天井板１の
上下端面を僅かに面取りする。

上記の施工方法において、素地１１の曲面の曲
率半径Ｒが小さくなるに従い天井板１の連結部７
の曲折角度が増大するが、それに伴い屈曲押圧力
を高めることが必要となるとともに該曲折角度が
15゜以上になると連結部７に亀裂を生ずる危険性
があり、また形成曲面の円滑性も低下するので、
連結部７における曲折角度が10゜以下になる曲率
半径Ｒの曲面施工を行うことが好ましく、本実施
例は施工凹曲面の曲率半径が40cm以上である場合
に好適である。

なお、上記の天井板１に凹設する切溝３の数を
増やし、切溝間隔を小さくすれば、より小さい曲
率半径の曲面形成に対応できるが、切溝間隔を３
cm以下にすると天井自体の強度が著しく低下し、
補強シート貼着によつても取扱いに耐える強度を
維持することが困難となるので、本発明方法が適
用できる実用的な曲面の曲率半径は30cm以上であ
る。

つぎに、無機質天井板の表面に切溝を設け、こ
れを用いて凹曲天井面施工をなす第二の発明の実
施例を説明する。

第５図、第６図は用いる無機質天井板の一例を
示す裏面平面図並びに該図のBB線矢視断面図で
ある。

無機質天井板１は裏面の長手方向に２枚の補強
シート４，４が貼着され、表面には長手方向に凹
条５′、凸条６′が交互に平行したストライプ模様
を有し、該ストライプ模様と直交して表面から直
線をなす楔状の切溝３′が裏面に１〜２mmの連結
部７′を残す程度に深く凹設される。

該切溝３′の楔状切開角度は前実施例で説明し
た理由により10゜以下とすることが望ましく、そ
の切溝間隔も天井板１を所定の曲率半径の凹曲を
したさい切溝３′の対向壁面が密着し切口が封止
される条件によつて決定する。

本実施例では、切溝３′の楔状切開角度を6゜と
し、天井板１の長手方向を10分割して、切溝間隔
を６cmとした。

この天井板１を用いて前実施例と同様にして、
第７図に示すように曲率半径Ｒが60cmの凹曲天井
素地１１に圧着凹曲して貼着固定したところ、天
井板１の表面側の切溝３′は完全に密着閉止して
殆んど外観を損わない良好なストライプ模様凹曲
天井面が得られた。

ハ 発明の効果 以上説明したように、本発明によれば、凹曲ま
たは凸曲する天井素地面に対し、無機質天井板を
適合彎曲せしめて安定確実に貼着固定できるもと
ともに、天井板表面模様も良好に維持でき、従来
の特別な彎曲天井板の成形や、多数の狭巾天井板
を用いる曲面天井施工方法における複雑な準備工
程、多工程を要せずに能率的な曲面天井施工がな
し得る工業的効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例において用いる無機質天
井板並びにこれによつて施工形成された曲面天井
面を示すものであつて、第１図、第２図は天井板
の裏面平面図並びに該図のAA線矢視断面図、第
３図、第４図は施工された凹面天井並びに凸面天
井のそれぞれ要部断面図、第５図、第６図は別の
実施例に用いる天井板の裏面平面図並びに該図の
BB線矢視断面図、第７図はその天井板により施
工された凹曲天井の要部断面図である。 １……無機質天井板、２……裏面、３……切
溝、４……補強シート、５……凹条、６……凸
条、７……連結部、１０……天井架構、１１……
曲面素地、１２，１７……釘。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 裏面に複数の直線状切溝を平行に凹設すると
   ともに、該面の全面または前記の切溝方向と直交
   して部分的に粗目布、テープ状紙布などの伸長可
   能な可撓性補強シートを貼着した無機質天井板を
   用い、該天井板の裏面に分布して貼着用接着剤を
   塗着した後、前記切溝方向を、凹曲または凸曲す
   る天井素地曲面の母線方向に一致せしめて、接着
   剤を塗布した裏面を天井素地面に当接圧着して天
   井板を素地曲面に沿つて彎曲し、釘止めによつて
   天井素地に固着することを特徴とする曲面天井施
   工方法。 ２ 表面に複数の直線状切溝を平行に凹設すると
   ともに、裏面の全面または前記の切溝方向と直交
   して部分的に粗目布、テープ状紙布などの可撓性
   補強シートを貼着した無機質天井板を用い、該天
   井板の裏面に分布して貼着用接着剤を塗布した
   後、前記表面の切溝方向を凹曲する天井素地曲面
   の母線方向と一致せしめて、接着剤を塗布した裏
   面を天井素地面に当接圧着して天井板を素地曲面
   に沿つて凹曲して前記切溝の切口が挾着閉止する
   彎曲を与えた上、釘止めによつて天井素地に固着
   することを特徴とする曲面天井施工方法。