JPS637766Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は遠赤外線を食品等に照射して調理す
る遠赤外線調理器に関する。

（従来の技術） 近年、省エネルギーの見地から遠赤外線ヒータ
が開発され、その用途について種々研究されてい
る。この遠赤外線ヒータは、従来の金属ヒータや
石英管被覆ヒータと異なり、輻射による加熱であ
るためエネルギーの消費が少なく、物質の深部ま
で短時間で加熱できるという利点を有している。
このため、遠赤外線が塗装膜の乾燥等に一部実用
化され、調理器のエネルギー源として利用する研
究が進められている。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、遠赤外線を一般家庭用の調理器
のエネルギー源として使用しようとしても、遠赤
外線が直進性を有し、食品等の表面に照射された
遠赤外線はその表面で一部が反射され、残部の一
部は食品を透過してしまうため、食品の内部で吸
収されたエネルギーのみしか加熱調理に寄与しな
いという問題があり、加熱効率が悪いことから実
用化されていないのが現状である。

例えば、金属ヒータや石英管被覆ヒータを用い
た従来のオーブンや窯と同様の構造を有する調理
器に遠赤外線ヒータを装着した場合、即ち、被加
熱体を出し入れする開口部をオーブン等の側壁に
設け、その天井部と底部に棒状の遠赤外線ヒータ
を配設した場合、表面に光沢のあるアルミニウム
やステンレス鋼製の容器に被加熱体、例えば、パ
ン生地を入れて焼いても、全く焼き上げることが
できない。他方、ガラス製容器に入れて焼くと焼
き上げることが可能であるが、これでは他目的に
使用できず、しかもガラス表面からの放射ロスが
多く、焼き上げに長時間を要するという問題があ
る。

さらに、遠赤外線の照射エネルギーは距離の２
乗に反比例して減衰するため、大きさの異なる複
数の被加熱体を同時に焼くと、均一に焼き上げる
ことができず、遠赤外線ヒータから被加熱体まで
の距離が短い被加熱体、例えば、高さの低いパン
生地が焼き上がつても、高さの低いパン生地は入
れたままの状態と変わらないなど、調理の進行に
著しい差を生じる他、前記構造の調理器では加熱
中に発生する蒸気が調理器内に充満し、この蒸気
によつて放射エネルギーが著しく減衰するという
問題がある。

（問題点を解決するための手段） この考案は、基本的には、前記被加熱体に均一
にエネルギー照射を行うと共に、調理中に発生す
る蒸気により放射エネルギーが減衰するのを防止
するために、被加熱体を出し入れする開口部を調
理器本体の上部に形成する一方、調理器本体の側
壁内面に複数の遠赤外線ヒータを配設し、各遠赤
外線ヒータの背面側に反射板を配設するようにし
たものである。また、食品等の加熱調理を有効に
行うため、遠赤外線ヒータとして少なくとも下限
が2.5ミクロン以上、好ましくは２ミクロン以上
の波長の遠赤外線を放射するセラミツクスからな
る遠赤外線ヒータを使用するのが特に好適であ
る。これは、従来塗装膜乾燥に使用されている波
長の下限が５ミクロンの遠赤外線を放射する遠赤
外線ヒータでは肉塊、魚類、根菜などの食品を調
理するのが困難であるからである。

（作用） この考案に係る遠赤外線調理器は、遠赤外線ヒ
ータが調理に有効な下限が2.5ミクロン〜２ミク
ロン以上の波長の遠赤外線を放射し、この遠赤外
線は、各ヒータの背面側、即ち、調理器本体の側
壁内面に配設された反射板により反射、収束され
調理器本体の中央に集光され、調理器本体内に置
かれた被加熱体を加熱する。また、遠赤外線放射
により加熱された被加熱体から発生する蒸気は、
遠赤外線の照射方向と直交方向、即ち、上部に移
動するため、遠赤外線がヒータから被加熱体に到
達するまでの間に蒸気中を通る距離が短く、従つ
て開口部が蓋で閉鎖されていても、輻射エネルギ
ーの減衰が著しく低減される。

（実施例） 以下、この考案の一実施例を示す図面を参照し
てこの考案を具体的に説明する。

図において、１は調理器本体、２は開口部、３
は遠赤外線ヒータ、４は反射板で、調理器本体１
の側壁は、内壁６と外壁７とそれらの間に装填さ
れたガラス繊維等の断熱材８とで構成され、その
上部に被加熱体を出し入れするための開口部２が
形成されている。遠赤外線ヒータ３は波長２ミク
ロン以上の遠赤外線を放射するもので、本体１の
各側壁内面側に複数本づつ垂直に、かつ相互に平
行に配設され、それぞれ背面側にアルミニウムそ
の他の金属で形成された断面半楕円形状の反射板
４が配設されている。

また、調理器本体１の上部には、被加熱体また
は被加熱体を入れた容器を吊り下げるため、一対
の棒状支持体９が設けられ、該棒状支持体９に吊
り下げ棒１０が棒状支持体９の長手方向に沿つて
変位可能に配設してある。この吊り下げ棒１０に
Ｓ字形状フツクやその他の形状の金串を介して被
加熱体または被加熱体を入れた容器を吊り下げる
ようにしてある。

さらに、調理器本体１の一側壁の下部に形成さ
れた引き出し口１１には、液汁等により調理器本
体１の下部が汚れるのを防止するため、被加熱体
から落下する液汁等を受ける引き出し式の受け皿
５が装着され、調理器本体１から取り出して洗え
るようにしてある。また、調理器本体１の下部に
は持ち運びを簡便にするためキヤスター１２が装
着されているが、これは据え置き型にする場合は
必ずしも必要ではない。

前記構造の調理器のヒータとして、波長２〜20
ミクロンの遠赤外線を放射する遠赤外線ヒータを
用い、黒色の容器又はドイツ製焼袋（Broil
Follie）に各2.2Kgの鶏２羽（合計4.4Kg）を入れ
て、予熱することなくそのまま焼いたところ、い
ずれの場合も60分で鶏の丸焼きができた。なお、
焼き上がりは鶏の内部に２箇所熱電対式温度計を
差し込み、内部温度が85℃に達したときを焼き上
がりと判断した。ちなみに、同容積の市販のガス
オーブンを用い、１羽の重さが800gのごく小さ
な鶏を４羽同じ焼袋に入れ、約200℃に設定し、
15分予熱した後、丸焼きを行つたところ、１羽の
大きさが小さいにも拘わらず、焼き上がりまで90
分を要した。

なお、前記実施例では、調理器本体１を角形筒
状に形成しているが、円筒状、多角形状その他任
意の形状にすることができる。また、前記実施例
では、一対の棒状支持体と吊り下げ棒を用いて被
加熱体またはそれを入れた容器を吊り下げるよう
にしているが、調理器本体１の横断面形状に対応
する形状を有し、調理器本体１の内径より若干小
さな寸法の枠体を配設し、これに金串を吊り下げ
るようにしてもよい。

前記実施例においては、遠赤外線ヒータを複数
本垂直方向に立設しているが、調理器本体１の開
口部から底の方に向かつて末広がり状になるよう
に遠赤外線ヒータを傾斜させて配設するようにし
てもよい。特に、調理器本体が矩形の場合、四隅
に配置される遠赤外線ヒータを傾斜させると、小
電力でも効率を著しく向上させることができる。

さらに、遠赤外線ヒータを調理器本体１の側壁
内面全部に複数本づつ配列する代わりに、相対す
る一対の側壁面のみに配列してもよいし、水平方
向に複数本配列するようにしてもよく、また、調
理器本体が四角形形状、多角形形状の場合には各
コーナー部に垂直または傾斜させて配置してもよ
い。

また、この考案に係る調理器を用いてパン生地
等を焼き上げるための容器として金属製容器を使
用する場合、表面を黒色にした金属製容器を使用
するのが好適である。

（考案の効果） この考案によれば、被加熱体を出し入れする開
口部が調理器本体の上部に形成され、各遠赤外線
ヒータの背面側に反射板が配設されているため、
ヒータから放射された遠赤外線は反射板により反
射されて調理器中央に収束し、被加熱体の全周か
ら加熱することになり、加熱効率を著しく向上さ
せることができる。

また、遠赤外線は調理器本体の側方から中央に
向かつて放射されるため、被加熱体の数が多い場
合には、被加熱体または被加熱体を入れた容器や
台板等をフツク等で多段に吊して調理することも
できる。

さらに、遠赤外線ヒータとして２ミクロン以上
の波長の遠赤外線を放射するヒータを採用してい
るため、こげ色をつけるのに必要な近赤外線も放
射され、輻射エネルギーが大きく短時間で効果的
に食品の種類を問わず調理することができる。例
えば、この考案に係る遠赤外線調理器を用いる
と、豚その他の獣塊、シシカバブー、鶏の丸焼
き、もも焼き、羊、ローストビーフ、ソーセージ
等の肉塊焼き、あるいは魚介類、さらには唐もろ
こし、じやがいも、さつまいも（壷焼き）、焼き
栗、パン類や菓子類などを焼くことができる他、
たつくり、のり、茶の葉、わかめなどを掻き混ぜ
る必要なく焙り調理することができる。

また、この考案に係る調理器は、被加熱体を出
し入れする開口部が上部にあるため、被加熱体か
ら蒸気が発生しても、蒸気は開口部から排出さ
れ、また開口部が蓋で閉鎖されていても、遠赤外
線ヒータからの放射方向と直交方向に移動するた
め、使用時に輻射エネルギーの蒸気による減衰が
防止される。しかも、被調理物を出し入れする開
口部を調理器の上部に設けたため、蓋を開くため
のスペースが不要となり、設置スペースを狭くで
きる。さらに、本考案の調理器は、業務用から家
庭用まで、必要に応じて大きさを変えることがで
き、その場合でも加熱効率はほとんど変わらな
い。また、遠赤外線ヒータは調理器本体の側壁に
配設されているため、ヒータが被調理物からの油
脂や炭化等によつて汚れることが殆どなく非常に
清潔である、など優れた効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係る遠赤外線調理器の一実
施例を示す部分切り欠き斜視図、第２図はその横
断面図である。 １……調理器本体、２……開口部、３……遠赤
外線ヒータ、４……反射板、５……受け皿、６…
…内壁、７……外壁、８……断熱材、１１……引
き出し口。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 上部に開口部を有する調理器本体と、該調理
   器本体の側壁内側に配設され、下限が2.5〜２
   ミクロンの波長の遠赤外線を放射する複数の遠
   赤外線ヒータと、各ヒータの背面側に配設され
   た反射板とからなる遠赤外線調理器。 (2) 遠赤外線ヒータが２ミクロン以上の波長の遠
   赤外線を放射するヒータである実用新案登録請
   求の範囲第１項記載の遠赤外線調理器。 (3) 遠赤外線ヒータが相互に平行に垂直方向に配
   設されている実用新案登録請求の範囲第１項ま
   たは第２項記載の遠赤外線調理器。 (4) 遠赤外線ヒータが調理器の開口部側から底部
   側に向かつて末広がりになるように傾斜して配
   設されている実用新案登録請求の範囲第１項ま
   たは第２項記載の遠赤外線調理器。 (5) 反射板が断面半楕円形である実用新案登録請
   求の範囲第１項〜第４項のいずれか一項記載の
   遠赤外線調理器。 (6) 調理器本体がその一側壁の下部に引き出し口
   を有し、該引き出し口に受け皿が挿脱自在に装
   着されている実用新案登録請求の範囲第１項〜
   第５項のいずれか一項記載の遠赤外線調理器。 (7) 調理器本体が断熱材からなる実用新案登録請
   求の範囲第１項〜第６項のいずれか一項記載の
   遠赤外線調理器。