JPS636209Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案はガス加熱式の線材加熱炉に関する。

〔考案の技術的背景とその問題点〕

タングステン線などの長尺の線材を加熱する線
材加熱炉として、筒状の炉体内に線材を連続的に
連続走行させながらガス炎により加熱する加熱炉
がある。

この線材加熱炉においては、ガスバーナの噴射
ノズルよりガスを炉体の内部空間に線材を接触せ
しめずに線材を中心として旋回するように噴射す
る方式のものがある。この方式ではガス炎が線材
を囲んで炉体内壁面に沿つて旋回し、ガス炎と炉
体内壁面からの輻射熱により線材を平均的に加熱
できる利点がある。なお、ガスは炉体一端部に噴
射し、燃焼ガスは炉体他端部から排出する。

従来、この方式の線材加熱炉では、噴射ノズル
を炉体内部空間の周囲において炉体中心軸線に対
して直角に位置させ、ガスを旋回させる方向に向
けて設けている。

しかしながら、このように噴射ノズルを炉体中
心軸線すなわちガスが炉体一端部から他端部に向
けて進行する方向に対し直角に設けてあると、噴
射ノズルより炉体内部空間に噴射したガスは単に
遠心力しか保有せず炉体軸方向に対する力がな
い。このため、噴射されたガスは噴射ノズル近傍
に滞在する時間が長くノズル近傍で旋回する間に
完全燃焼して炉体壁部を加熱した後に、燃焼ガス
として炉体壁部に熱を奪われながら内壁面に沿つ
て炉体他端部側へ押し出されていく。つまり、ガ
ス炎に加熱される噴射ノズル近傍の炉体一端部の
みが高温となり、燃焼ガスを排出する炉体他端部
は低温となる。この温度差は長い炉体程顕著とな
る。このため、炉体内部の温度分布が不均一とな
り、炉体壁部に歪を生じて耐久性が低下するだけ
でなく、ガス炎の熱利用が悪く炉体の温度上昇も
遅くなり線材の加熱時間も長くなるという問題が
ある。また、炉体の軸方向に間隔を存して複数の
噴射ノズルを設けて炉体内部の温度を均一にする
方法があるが、この場合には炉体構造が大変複雑
となる。

〔考案の目的〕

本考案は前記事情に鑑みてなされたもので、噴
射ノズルからガスを炉体内部に旋回するように噴
射するものであつて、簡単な構成で噴射されたガ
スに進行する力を与えて炉体内部を全長にわたり
均一に加熱できる線材加熱炉を提供するものであ
る。

〔考案の概要〕

本考案の線材加熱炉は、噴射ノズルを炉体中心
軸線に対しガス進行方向前方に向け傾斜して位置
させ、ガスが旋回する方向に向けて設け、噴射ノ
ズルよりガスを進行方向前方への力をもたせなが
ら旋回するように噴射して炉体内部で螺旋状に進
行されることにより、ガス炎による炉体のノズル
近傍部の局部加熱を防止するものである。

〔考案の実施例〕

以下本考案を図面で示す実施例について説明す
る。

第１図は本考案の一実施例として線材加熱炉に
おける噴射ノズルを設けた一端部を示す縦断面図
であり、第２図は同横断面図である。

図中１は耐火材で形成された円筒状をなす炉体
で、この炉体１の一端部には線材３の送出口２が
設けられ、図示しない他端部には線材３の送入口
が設けてある。また、炉体１の他端部には図示し
ない排気口が設けてある。線材３は送入口から炉
体１内部に挿入されて炉体１内部の中心軸線上を
図示矢印方向に向けて連続的に搬送され、送出口
２より送出される。図中４は炉体１の一端部に壁
部周囲を囲んで設けられたガス室で、このガス室
４にはガス入口５を介して図示しないガス供給源
から空気を混合したガスが供給される。図中６は
炉体１一端部の壁部において炉体１内部を囲む等
間隔の位置に炉体１の外周側から内周側にわたつ
て設けられた複数の噴射ノズルで、これら噴射ノ
ズル６の基端部はガス室４の内周部に形成した連
通孔７に接続するとともに、先端部は炉体１の内
壁面にて炉体１内部に面して開口している。各噴
射ノズル６は第２図で示すように炉体１の横断面
において、ガスを炉体１内部に旋回して噴射でき
るようにそのガス旋回方向例えば炉体１内部の接
線方向に沿つて設けてある。また、各噴射ノズル
６は第１図で示すように炉体１の縦断面におい
て、炉体１の中心軸線に対しガス進行方向前方
（炉体１の他端部）に向け所定角度αで傾斜して
設けてある。この噴射ノズル６の炉体１の中心軸
線に対する傾斜角度αは、あまり大きいと噴射ノ
ズル６を炉体１に設ける構造が複雑になるととも
に、噴射されたガスが短時間で排気口に流れてし
まい、またあまり小さいとガスに進行方向前方へ
の力を与えることができなくなる。そこで、噴射
ノズル６と排気口との間の距離にもよるが、一般
的には噴射ノズル６の傾斜角度αを45〜75゜の範
囲に設定する。

しかして、この線材加熱炉において炉体１内部
を走行する線材３を加熱する場合には、ガス室４
内のガスを各噴射ノズル６から炉体１内部の一端
部に噴射し、噴射されたガスを図示しない点火装
置により点火してガス炎とする。ここで、各噴射
ノズル６がガス旋回方向に沿つて設けてあり、ガ
スは線材３に接触せずに炉体１の内壁面に沿つて
線材３を中心として旋回するように噴射される。
同時に噴射ノズル６が炉体１の中心軸線に対しガ
ス進行方向前方に向けて傾斜して設けてあり、ガ
スはガス進行方向前方に向けて噴射される。すな
わち、噴射ノズル６の位置が組合されることによ
り、ガスは進行方向（炉体１の他端部）に向けて
進行しながら旋回するように噴射される。このた
め、噴射ノズル６から噴射されたガスは遠心力と
前進力を与えられて、炉体内部４の一端部におけ
る噴射ノズル７の近傍に滞溜せずに旋回しながら
前進する。そして、ガスは火炎となつて徐々に燃
焼しながら炉体１内部を炉体１の内壁面に沿い旋
回しつつ炉体１の他端部に向けて進行し、最後に
炉体１他端部に設けた排気口から排出される。す
なわち、第３図で示すようにガスは螺旋状に流れ
て進行する。従つて、線材１は螺旋状に旋回する
ガス炎とガス炎によつて加熱された炉体１壁部か
らの輻射熱によつて均一に加熱される。

しかして、噴射ノズル６から炉体１内部に噴射
されたガスは噴射ノズル６の近傍に滞溜して完全
燃焼することがないので、炉体１のノズル近傍部
を局部的に加熱することがない。またガスは徐々
に燃焼しながら炉体１内部を螺旋状に進行するの
で、炉体１壁部を広い面積にわたり均一に加熱す
る。しかも、ガスが螺旋状に進行することによ
り、ガスの撹拌と循環が促進され、炉体１壁部へ
の伝熱効率が向上し炉体１壁部の温度上昇を早く
することができる。これらによつて炉体１壁部が
全長にわたり平均に加熱され温度分布が均一とな
る。

なお、噴射ノズルの数は複数に限定されず、１
個であつても良い。

〔考案の効果〕

本考案の線材加熱炉は以上説明したように、ガ
スを炉体内部に旋回するように噴射する噴射ノズ
ルをガス進行方向前方に向けて傾斜して設け、噴
射ノズルから噴射したガスを炉体内部で燃焼させ
ながら螺旋状に進行させることにより、炉体を全
長にわたり平均に加熱して温度差をなくすことが
でき、温度差による炉体の歪発生を防止できると
ともに、ガス炎の熱利用を高めて炉体の温度上昇
を早め線材加熱を良好に行なえる。しかも、噴射
バルブを炉体の軸方向の複数個所に設ける必要が
ないので、構成も簡単である。また、本考案の線
材加熱炉によれば、燃焼炎が炉内周面に沿つて進
行するため、炉の中心軸付近を進行する線棒材に
直接触れることがない。したがつて、タングステ
ン、モンブデンのように高温での酸化損耗の大き
い線材の加熱に有利である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の線材加熱炉の一実施例を示す
縦断面図、第２図は同横断面図、第３図はガスの
進行を示す説明図である。 １…炉体、３…線材、４…ガス室、６…噴射ノ
ズル。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 燃焼ガスを筒状炉体の内部空間に噴射するノ
   ズルを前記炉体の外周側から内周側に向けて設
   け、このノズルは前記炉体の中心軸線に対し、
   前記炉体内部空間でのガス進行方向に向けて傾
   斜させてなる線材加熱炉。 (2) 炉体中心軸線に対するノズルの傾斜角度が45
   〜75゜である実用新案登録請求の範囲第１項に
   記載の線材加熱炉。 (3) ノズルが炉体の内部空間の接線方向に沿つて
   設けてなる実用新案登録請求の範囲第１項に記
   載の線材加熱炉。