JPS6342813B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 本発明は、極細さや見易すさの向上を図つたカ
ラー受像管に関する。

〔発明の技術的背景とその問題点〕

第１図はカラー受像管の概略構成を示すもので
ある。この種のカラー受像管は、ガラス外囲器１
の所謂ネツク部２に、例えばインライン配列され
た複数の電子銃３を設け、この電子銃３に対向す
るフエース部４に、赤・青・緑に区分した螢光面
５を設けた構造を有する。そして、この螢光面５
に近接して多数のビーム開孔を有するシヤドウマ
スク６を、そのフレーム７に係止具８を用いて固
定配置している。またこのフレーム７には、地磁
気の悪影響を遮断する為のインナーシールド９が
取付けられている。尚、図中１０は偏向器であ
る。

しかして上記構成のカラー受像管では、電子銃
３から射出された電子ビーム１１が集束、加速さ
れ、前記偏向器１０によつて前記フエース部４に
対して偏向走査される。そして該電子ビーム１１
は前記シヤドウマスク６を介して螢光面５に衝突
し、所定の発色を呈することになる。

ところで従来、この種のカラー受像管における
シヤドウマスク６や、フレーム７およびインナー
シールド９等は、一般にFeを主成分とする金属
により構成され、その表面に黒色酸化皮膜を形成
した構造を有している。この酸化皮膜は、該部材
形成後の発錆防止、また動作時における放熱作用
の増大、更には電子ビーム反射の軽減等を図る為
のものである。然し乍ら、カラー受像管を動作さ
せたとき、上述した部材温度が30〜100℃程度上
昇する。この為、例えばシヤドウマスク６にあつ
ては、その熱膨脹によるドーミングによつてピユ
リテイードリフト（PD）が生じる。このピユリ
テイードリフトは、カラー画像の「極細かさ」
「見易すさ」を実現する為の大きな妨げとなる。

そこで最近では、シヤドウマスク６等の素材と
して前述したFeに代えて、高価ではあるがアン
バー等と称されるFe−Ni合金を用いることが試
みられている。このFe−Ni合金は、その熱膨脹
係数が小さく、また耐食性も良いことから、従来
のFeを素材とするものに比較して、前述した黒
色酸化皮膜を形成すること無しに、シヤドウマス
ク、フレーム、インナーシールド等として用いる
ことができると考えられている。

然し乍ら、本発明者らはFe−Ni合金を素材と
してシヤドウマスク等を形成しても、従来のFe
を素材として黒色酸化皮膜を形成したものに比し
てさほど期待される程の効果が奏せられないこと
を見出した。この原因としては、上記Fe−Ni合
金の熱伝導性が悪い為、その温度上昇がより高く
なる為であると考えられる。従つて、文字多重放
送、衛星放送等に対する所謂高品位テレビに対処
するべく、その改善要求が高まつてきている。

〔発明の目的〕

本発明はこのような事情を考慮してなされたも
ので、その目的とするところは、熱膨脹に起因す
る色ずれが少なく、しかも極細かく見易いカラー
画像を得ることのできるカラー受像管を提供する
ことにある。

〔発明の概要〕

本発明はカラー受像管を構成するシヤドウマス
ク、フレームあるいはインナーシールドのうちの
少なくとも１つを、FeおよびNiを主成分とする
素材で形成し、且つその素材の少なくとも一面
に、Cuを固溶したNi_xFe_3-xO₄（０＜ｘ＜３）を主
成分とする黒色酸化皮膜を皮膜形成したことを特
徴とするものである。

つまり、熱膨脹係数が低く、耐食性の良いFe
−Ni合金を基体とし、この基体の少なくとも一
面に（Cu_xNi_y）Fe_3-x-yO₄からなる皮膜を形成し
てその熱放散性を高めたシヤドウマスク、フレー
ム、またはインナーシールドを形成し、これを用
いてカラー受像管を構成したものである。

〔発明の効果〕

かくして本発明によれば、FeおよびNiを主成
分とする基材の熱膨脹率の小さい性質を活かしつ
つ、該素材の表面に被覆された（Cu_xNi_y）
Fe_3-x-yO₄の黒色酸化皮膜によつて放熱性を高め
ることができる。従つて、カラー受像管の動作時
における温度上昇によるドーミングを大幅に改善
し、シヤドウマスクと螢光面との相対的な位置ず
れに伴う色ずれを抑制し、ひいてはシヤドウマス
クの開孔の微細化を容易ならしめてカラー画像の
高品位化を図り得る等の効果が奏せられる。

〔発明の実施例〕

以下、図面を参照して本発明の実施例につき説
明する。

本発明は、カラー受像管を形成するシヤドウマ
スク、フレーム、インナーシールド等の部材のう
ちの少なくとも１つを、FeおよびNiを主成分と
する基材、例えば30〜40％Ni−Feおよび付随的
成分からなる合金によつて構成したものである。
また或いは上記基材を0.1〜７％Co、31〜40.0％
Ni、Feおよび付随的成分からなる合金等を用い
て構成したものである。

そして、その基材１１の表面に、例えば第２図
ａ，ｂにそれぞれ示すように皮膜２を形成したこ
とを特徴とするものである。

第２図ａに示すものは、Fe−Ni合金からなる
基体１１の表面に熱放散性の良い（Cu_x、Ni_y）
Fe_3-x-yO₄膜１２ａを皮覆形成したものである。
この場合、（Cu_xNi_y）Fe_3-x-yO₄膜１２ａ中にCu
が固溶することがあるが、その黒化度に問題を生
じることはない。またこの固溶が生じると膜１２
ａが硬くなるので、かえつて好ましいこともあ
る。尚、上記膜１２ａは、一般のNi_xFe_3-xO₄に
比較して製造コストが高いが酸化温度が低いので
製造が容易であると云う利点がある。

第２図ｂに示すものは、（Cu_xNi_y）Fe_3-x-yO₄
膜１２ａ上に、更にCuO膜１２ｂを形成したもの
である。

これらの膜１２ａ，１２ｂはいずれも黒色酸化
皮膜であり、熱放散性の改善に大きく寄与する。

このような構造であれば、上述した酸化膜１２
ａ，１２ｂが0.3以上の輻射率を有し、その熱放
散性の向上を図り得るので、基体１１であるFe
−Ni合金の低熱膨脹率、耐食性等と相俟つて、
シヤドウマスク、フレーム、インナーシールド等
として多大な効果が奏せられる。

次に本発明に係るカラー受像管の具体例につい
て説明する。

先ず36％NiとFeを主成分とし、付随的成分と
してＣ、Si、Mn、Ｐ、Ｓ、Cr、Al、Zr、Cuを
各々重量比で１％以下含む合金（アンバー）のイ
ンゴツトを用意した。このインゴツトを焼鈍、冷
間加工を繰返して、厚さ0.15mmの板材とした。し
かるのち、この板材に感光剤を塗布し、露光現
像、バーニングによるエツチングを施して多数の
孔を有するフラツトマスク素材を作製した。ひき
つづき、このフラツトマスク素材を洗浄し、剪断
したのち、1150℃で真空焼鈍を行つてプレス加工
し、シヤドウマスクの基材とした。

その後、この基材をトリクレン脱脂、温水洗浄
し、その表面に3μｍ厚程度にCuをメツキした。
このCuメツキ後、空気中で酸化処理して、該基
材を黒化つまりCu層を酸化させて黒色皮膜化し
た。

この黒色皮膜をＸ線回折法、およびXMA法に
より調べたところ、その表面からCuO、（Cu_x、
Ni_y）Fe_3-p-yO₄、36Ni−Feなる構造となつてい
ることが確認された。

また上記空気中における酸化処理時間を増加さ
せたところ、（Cu_x、Ni_y）Fe_3-x-yO₄層が支配的
になることが確認された。

またこの黒色皮膜について、90゜曲げ試験の後、
セロフアンテープの剥離試験を行つてその密着性
を調べたところ、剥離は生じなかつた。

以上の如き性質、構造を有するシヤドウマスク
を用いて第１図に示す如きカラー受像管を製作
し、動作させたところ、極めて安定な画像が得ら
れた。またこのカラー受像管のPD値を測定した
ところ、90μｍ以下であつた。ちなみに、黒色酸
化膜を形成しないFe−Ni合金のシヤドウマスク
を用いたカラー受像管におけるPD値は約120μｍ
であり、本構造のカラー受像管の方が優れている
ことが裏付けられた。またPDが生じてから元に
戻るまでの時間が、本発明によれば上述した従来
構造のものに比して約半分に減少することが確認
された。

このように本発明によれば優れた効果が発揮さ
れ、色ずれの改善を図り得る。そして将来の高品
位化テレビに十分対処し得ることが明らかとなつ
た。

【図面の簡単な説明】

第１図はカラー受像管の概略構成を示す図、第
２図ａ，ｂはそれぞれ本発明に係るシヤドウムマ
スク等の部材の実施例構造を示す図である。 １１……Fe−Ni合金からなる基材、１２ａ…
…（Cu_x、Ni_y）Fe_3-x-yO₄膜、１２ｂ……CuO
膜。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ FeおよびNiを主成分とする基体の少なくと
   も１つの表面に、Cuを固溶したNi_xFe_3-xO₄（０＜
   Ｘ＜３）を主成分とする黒色酸化皮膜を皮膜形成
   してなるフレーム、シヤドウマスクまたはインナ
   ーシールドを用いて形成してなることを特徴とす
   るカラー受像管。