JPS6337534Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案はデイスクブレーキにおける、いわゆ
る引きずり現象やシエイクバツク現象の発生を防
止するように形成したレールスライド式キヤリパ
ーに関する。

第１図はデイスクブレーキのシリンダー軸線を
含む断面説明図である。

デイスクブレーキは、回転するローター１をイ
ンナーパツド２とアウターパツド３で挾接して制
動するように構成されている。すなわちキヤリパ
ー４内にピストン５が設けられ、制動時には、ピ
ストン５がインナーパツド２をローター１に押し
つけ、その反力でキヤリパー４が移動し、アウタ
ーパツド３をローター１に押圧して制動力を発生
させる。この場合キヤリパー４は、第２図に示す
ように、アンカープレート６にリテイナー７によ
り保持され、アンカープレート６のレール面８を
スライドするように形成されている。またキヤリ
パー４のシリンダー壁部９とピストン５の摺動面
は、矩形形状の断面を有するシール１０によつて
封塞されており、制動時にはシリンダー５は、こ
のシール１０を弾性変形させつつ移動する。また
制動解放と同時に除圧されたピストン５はシール
１０の変形分だけ引き戻されて、ローター１とイ
ンナーパツド２並びにアウターパツド３との間に
適当な間隙を保持するように形成されている。さ
らにインナーパツド２およびアウターパツド３が
摩耗するとピストン５の移動量は多くなるが、シ
ール１０の変形分を越えた分がピストン５とシー
ル１０の間ですべり、ピストン５のみが移動する
自動調整式がとられている。しかし、この構造で
は制動解放時、つまり除圧されたピストン５の引
き戻しは、シール１０の弾性力と加圧作動油の除
圧力によるものであり、一方キヤリパー４とアン
カープレート６との保持力はリテーナー７のスプ
リング力によつているからリテーナー７の保持力
が高すぎると、ピストンの引き戻し時にその反力
で移動するキヤリパー４の移動量が小さく、制動
解放時に尚インナーパツド２並びにアウターパツ
ド３がローター１と接触しているいわゆる引きず
り現象が生ずる問題がある。またリテーナー７の
保持力を減少すると、車輛の走行中にキヤリパー
４が車軸方向（第２図におけるレール面８に沿つ
た方向）に振られ、キヤリパー４が移動し、ピス
トン５が過度に戻され、制動時にブレーキペタル
のストロークが異常に大きくなるいわゆるシエー
クバツク現象が生ずる問題がある。

この考案は上述の両問題を同時に解決したレー
ルスライド式キヤリパーを提供することを目的と
する。すなわち、キヤリパーの摺動面を含む摺動
部の全巾中の一部を別体の摺動案内部で形成し、
当該摺動案内部を強い保持力を有するリテーナー
スプリングで保持し、摺動案内部を除く摺動部を
弱い保持力を有するリテーナースプリングで保持
して形成し、制動解放時のキヤリパーの移動は、
摺動案内部を除く摺動部で司り、制動作動時のキ
ヤリパーの移動は摺動案内部が司どるように形成
したものである。

この考案を図示の実施例に基づいて詳細に説明
する。

第３図はアンカープレートとキヤリパーの摺動
部の一部を欠除した分解説明図である。

図中キヤリパーは４、アンカープレートは６、
８はレール面である。キヤリパー４はアンカープ
レート６のレール面８と摺動する摺動面１１を含
む摺動部１２の一部を別体の摺動案内部１３に形
成する。この摺動案内部１３はキヤリパー４の摺
動部１２と同一形状に形成する。つまり摺動部１
２の一部を切取つた状態に形成する。摺動案内部
１３を切取る位置は、キヤリパー４のレール面８
に沿う全巾のいずれの場所であつてもよいが、中
央部に形成することが望ましい。また摺動案内部
１３のレール面８に沿う長さも特に定めるもので
はないが、後述するように、当該摺動案内部１３
を保持するのに使用するリテーナースプリング２
０が取付け得る巾長に形成することが望ましい。
この場合摺動部１２の切取り後の両端面１４，１
５と摺動案内部１３の両端面１６，１７間のレー
ル面８に沿う長さにはピストン５の戻り量の２倍
に相当する長さの差を設けて形成する。つまりキ
ヤリパー４の切取り後の端面１４，１５間に摺動
案内部１３を挿入した場合にレール面８に沿う方
向にピストン５の戻り分に相当する長さの２倍の
ギヤツプが生ずるように形成する。このピストン
５の戻り量はほぼ１ミリメートル以内であり、こ
の実施例では２ミリメートル以内のキヤツプを生
ずるように摺動案内部１３を形成した。

このキヤリパー４と摺動案内部１３は、第４図
に示すように、隔接して平行なアンカープレート
６のレール面８にキヤリパー４の両側に設けられ
ている摺動部１２の摺動面１１を載置状にセツト
し、アンカープレート６上に固定したリテーナー
スプリング１９によつて、キヤリパー４を保持す
る。このリテーナースプリング１９は、ピストン
５がシール１０の変形量だけ戻り、同時にキヤリ
パー４がその反力で摺動する場合に容易に動き得
る荷重でセツトする。この荷重は普通数キログラ
ムの範囲であり、２キログラム乃至５キログラム
の範囲にあることが望ましい。

一方摺動案内部１３はアンカープレート６のレ
ール面８に摺動面１８を、キヤリパー４と同様
に、載置状にセツトする。この場合キヤリパー４
との位置関係は摺動案内部１３の一方の端面１６
とこの端面１６と対疇するキヤリーパー４の切取
り後の端面１４との間隙をピストン５の戻り分量
すなわち１ミリメートル以内にセツトする。同様
に摺動案内部１３の他の端面１７とキヤリパー４
の対応する端面１５との隔接間隙も同様とする。
つまり両端面間に同量の遊隙代を設けてセツトす
る。さらにこの摺動案内部１３はアンカープレー
ト６に固定された強いリテーナースプリング２０
によつて保持する。このリテーナースプリング２
０は100キログラム程度のスプリング荷重を有す
ることが望ましく、制動時に加圧作動油によるピ
ストン５の押圧力の反力にのみよつて摺動し得る
荷重となるように形成する。

しかして、キヤリパー４は弱いスプリング荷重
を有するリテーナースプリング１９によつて保持
されているから、摺動案内部１３との隔接間隙に
相当する距離は軽く摺動する。すなわち除圧時に
おけるピストン５の戻り量に相当する距離は、加
圧作動油の除圧圧力とシール１０の弾性力によつ
て容易にピストン５が移動する。またキヤリパー
４は摺動案内部１３との隔接間隙以上には簡単に
移動できなく、制動時における加圧作動油の押圧
力により移動されるピストン５の反力でのみ移動
する。従つてインナーパツド２とアウターパツド
３の摩耗に伴うキヤリパー４の移動には差しつか
えは生じないが車輛の走行中に生ずるアンカープ
レート６のレール面８に沿う方向の振れによつて
は容易に移動することがなくなる。

この考案は上述の実施例に基づいて、実用新案
登録請求の範囲のように形成したので、キヤリパ
ーは弱いリテーナーで保持されているのみであり
摺動案内部とのギヤツプでは軽く移動することが
できる。従つて制動解放時におけるいわゆる引き
ずり現象の発生を防止することが可能となる。ま
たキヤリパーは摺動案内部との接触後は、制動時
にのみ移動し得るので、車輛の走行中のキヤリパ
ーの振れによつて移動することがなくいわゆるシ
エイクバツクの問題の発生をなくすることができ
る。また、キヤリパーの摺動部の一部を別体に置
換ればよいので、製作が容易であり、既存のキヤ
リパーにも容易に適用することができる。さら
に、リテーナースプリングを一個追加することで
すむので、製作費の掛らない実用的なデイスクブ
レーキにおけるレールスライド式キヤリパーの提
供が可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図はデイスクブレーキのシリンダー軸線を
含む断面説明図、第２図はアンカープレートとキ
ヤリパーの摺動部断面説明図、第３図はこの考案
に係るアンカープレートとキヤリパーの摺動部の
一部を欠除した分解説明図、第４図はアンカープ
レートとキヤリパーの平面取付説明図である。 符号の説明、１……ローター、２……インナー
パツド、３……アウターパツド、４……キヤリパ
ー、５……ピストン、６……アンカープレート、
７……リテーナー、８……レール面、９……シリ
ンダー壁部、１０……シール、１１，１８……摺
動面、１２……摺動部、１３……摺動案内部、１
４，１５，１６，１７……端面、１９，２０……
リテーナースプリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. アンカープレートのレール面とキヤリパーの摺
   動面が接触し、アンカープレートに固定されたリ
   テーナースプリングの弾性力で保持されたキヤリ
   パーが、アンカープレートのレール面を移動する
   デイスクブレーキのレールスライド式キヤリパー
   において、キヤリパー４の摺動面１１を含む摺動
   部１２の全巾内の一部を別体の摺動案内部１３で
   形成し、摺動案内部１３を、アンカープレート６
   に固定し制動時におけるピストン５の反力でのみ
   移動し得るスプリング荷重を有するリテーナース
   プリング２０で保持し、摺動案内部１３を除くキ
   ヤリパー４の摺動部１２を、摺動案内部１３と、
   制動解放時におけるピストン５の戻り量に相当す
   る隔接間隙を設けて配置し、摺動案内部１３を除
   くキヤリパー４の摺動部１２を、アンカープレー
   ト６に固定し、制動解放時のピストン５が容易に
   戻り得るスプリング荷重を有するリテーナースプ
   リング１９を保持したことを特徴とするデイスク
   ブレーキにおけるレールスライド式キヤリパー。