JPS633495Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （考案の技術分野） この考案は、たとえば回転軸の外周面とその支
持体内周面との周面間にオイルを供給した場合
に、そのオイルの高圧保持部を定圧状態に保持す
るような油圧回転機器用の自封性シールリングに
関する。

（従来技術） 従来、この種のシールリングは、軸の外周面に
形成されたオイル高圧保持部を挟む両側位置に嵌
合溝がそれぞれ形成され、これらにシールリング
がそれぞれ嵌着されて、その中間位置のオイル高
圧保持部を定圧に保持すべく構成している。

（従来技術の問題点） しかし、上述のシールリングは、端面に冷却溝
を形成してその冷却溝よりオイルを若干流通させ
ることによつて、回転時に嵌合溝とシールリング
の端面間で潤滑機能と冷却機能との両機能を行な
わせて、回転時に発熱を抑制しつつオイル高圧保
持部を定圧にシールしているが、油圧回転機器の
圧力変動や回転状態によつては、シールリングの
外周面においても滑りが生じてシールリングの外
周面に焼付きや異常摩耗が発生して変形するな
ど、シールリング本来のシール機能を維持できな
くなる場合があつた。

これは特に、近年高能力を要求される高圧高速
回転化に伴つて発生しやすいという問題があり、
油圧回転機器の能力向上の妨げになつていた。

（考案の目的） 上述した従来技術問題点を解決すべくこの考案
は、オイルの圧力作用によつてシールリングの端
面と外周面とが相手部材に当接されて摺動する、
いわゆる自封性シールリングであり、油圧回転機
器の圧力変動や、回転状態によつて、焼付きや異
常摩耗等が発生することなく、又スプリング等に
よつて外周部から弾発付勢される補助部材を必要
としない油圧回転機器における自封性シールリン
グの提供を目的とする。

（考案の構成） 本考案の油圧回転機器用の自封性シールリング
は、軸に嵌着するための拡縮自在の段付き割り溝
を有する自封性シールリングの外周面軸線方向
に、両端面間にわたる外周面冷却溝を形成し、端
面径方向には内外周面間にわたる端面冷却溝を形
成したことを特徴とする。

（考案の効果） そしてこの考案によれば、自封性シールリング
の外周面と端面とに冷却溝を形成してあるため、
シールリングの外周面および端面のいずれの面に
おいても適切な滑りと冷却作用が得られる。

このようにシールリングの端面のみならず、外
周面には冷却溝を形成することにより、外周面に
おける滑り能力と冷却能力は非常にすぐれた効果
を発揮する。

したがつて、シールリング外周面の焼付きや異
常摩耗等は完全に解消できるのは勿論のこと、特
に耐高圧、耐高速回転化等に適し、どのような使
用状態にあつても常に最適なシール機能を維持す
るとこができる。

（実施例） このような特徴を有する考案の一実施例を以下
図面に基づいて詳述する。

図面は高圧高速回転の油圧回転機器に使用され
るオイルの圧力作用によつて、シールリングの端
面と外周面とが相手部材に当接されて摺動するタ
イプの、いわゆる自封性シールリングを示し、第
１図はその回転軸１に嵌着した一対のシールリン
グ２，２であつて、回転軸１の中央部に形成した
若干小径のオイル高圧保持部３を挟む軸線方向の
両側位置にシールリングの嵌合溝４，４が形成さ
れ、これらに各シールリング２，２が嵌合され
る。

そしてその回転軸１を支持するハウジング５の
支持孔６に上述の回転軸１を回転自在に挿入し、
オイル供給孔７とオイル高圧保持部３とを対応さ
せた状態に支持している。

上述のシールリング２は、テフロン、充填材入
りテフロン、ポリイミド等の耐熱性（100〜120
℃）を備えた合成樹脂によつて一体に形成され、
第２図および第３図に示すように、リングの一部
を切離してリングを拡縮自在にして、回転軸１の
嵌合溝４に嵌着するための段付き割り溝８を有
し、またリングの外周面軸線方向に、その両端面
間にわたるＵ形状の外周面冷却溝９が周方向に４
個等分形成され、これらと直交する一端面の各位
置には、端面径方向に内外周面間にわたるＵ形状
の端面冷却溝１０が、それぞれ形成されている。

なお、上述の両冷却溝９，１０は、周方向に４
等分して形成したが、径の大きさや圧力の大きさ
等に基づいて、適宜使用状態に応じた個数に形成
する。

このように構成された油圧回転機器用のシール
リング２は、第１図に示す如く、まず回転軸１に
嵌着する場合、端面冷却溝１０側を軸線方向の外
向き状態に設ける。

すなわち、オイル高圧保持部３側を中心とする
嵌合溝４の反対面側に位置させた状態にそれぞれ
嵌着し、そのシールリングの外周面は、回転軸１
の外径より若干大径の突出した状態で、ハウジン
グ５の支持孔６に挿入支持したときは、シールリ
ング２の外周面が支持孔６の内周面に接触した付
勢状態にあつて、外周面のシール機能を発揮す
る。

そして油圧回転機器を稼動してオイル供給孔７
よりオイル高圧保持部３に供給されたオイル１１
は、その両側位置の各シールリング２，２でシー
ルされる。

すなわち、オイルの流入圧によつて各シールリ
ング２，２は、それぞれ軸線方向の外向きに付勢
されると共に、径方向にも拡大し、端面冷却溝１
０側が嵌合溝４の外側端面と、外周面が支持孔６
にそれぞれ接触した状態にあつて、端面のシール
機能を発揮する。

そしてオイル１１の一部はシールリング２の外
周面冷却溝９および端面冷却溝１０の部分を介し
てそれぞれ外方へ定量流出する。

これによりオイル高圧保持部３は定圧状態に保
たれ、そして外方に流出したオイルは、再びオイ
ル高圧保持部３へと流入すべく循環利用される。

なお、上述に示したシールリング２は外周面と
端面の両冷却溝９，１０を合致させてこれら冷却
溝より流出するオイルの流出量をできるだけ少な
くし、オイル高圧保持部３における高圧化を図つ
ている。

第４図及び第５図はこの考案の他の実施例を示
すものであつて、外周面冷却溝９と端面冷却溝１
０との位置を適当間隔ずらせて設けた例である。

そこで、本考案品が従来品に比べて端面および
外周面において、摩耗量が少なく、優れた滑り能
力と冷却能力を有し、耐高圧、耐高速回転化に適
しているかを、第６図の摩耗試験データに示し
た。

この試験データで理解できるように、端面にの
み４条の冷却溝を設けた従来品では100Hrで外周
面の摩耗品は0.143mm、端面は0.06mmにもなつて、
オイルの洩れ量が増大して使えなくなつた。

しかし、本考案品では、外周面にも４条の冷却
溝を設けることによつて、外周面及び端面の摩耗
量がほぼ同一となり、200Hr経過しても0.02mm程
度であり、極めて厳しい実験条件下にかかわら
ず、1000Hr経過時間後のオイル洩れ量は毎分0.1
〜0.2lで、この種の自封性シールリングとしては
最適な結果が得られた。

なお、上述の一実施例においては軸を回転す場
合を示したが、軸は固定でハウジング側を回転す
るような油圧回転機器に用いても同様の作用効果
が得られる。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の一実施例を示し、第１図は高
圧高速回転の油圧回転機器用のシールリングの実
施態様を示す要部縦断面図、第２図はそのシール
リングの平面図、第３図はその正面図、第４図は
この考案の他の実施例を示すシールリングの平面
図、第５図はその正面図、第６図は本考案品と従
来品との比較実験図である。 ２……シールリング、８……段付き割り溝、９
……外周面冷却溝、１０……端面冷却溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 軸に嵌着するための拡縮自在の段付き割り溝を
   有する自封性シールリングの外周面軸線方向に、
   両端面間にわたる外周面冷却溝を形成し、端面径
   方向には内外周面間にわたる端面冷却溝を形成し
   た 油圧回転機器用の自封性シールリング。