JPS6327175Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は車両用歯車変速機の潤滑装置に関する
ものである。

歯車変速機は歯車箱の内部に充填された潤滑油
が歯車によつて掻上げられて、歯車軸の軸受、変
速歯車のボス部を支持する軸受や同期噛合機構の
摺動部へ供給されるようになつている。しかし、
近年車両の軽量化による省燃費を図るために、変
速機についても小型で能力の大きいものが要求さ
れるようになり、このため従来のものに比べて歯
車の歯幅を広く、同期噛合機構を大きくすると、
それだけ各部品の相互の隙間が狭くなる。このこ
とは入・出力軸の軸受、変速歯車の軸受や同期噛
合機構の摺動部へ潤滑油が流入しにくくなり、潤
滑不良が生じやすい。このような潤滑不良をなく
するためには、潤滑油の充填量を多くすればよい
が、これは油温の上昇を招くばかりでなく、歯車
の撹拌抵抗が増大し、動力損失を招くという問題
がある。

従来、このような潤滑不良を防止するために、
例えば、実開昭57−194951号公報などに示される
ように、歯車箱の底部から歯車によつて掻上げら
れた潤滑油が集中的に入力軸の軸受および同期噛
合機構の摺動部へ導くためのカバーを、入力歯車
の外周側を囲むように歯車箱の側壁にボルトをも
つて固定したものが提案されている。

しかし、カバーをボルトによつて歯車箱に取付
けることはその組付けに手数が掛るばかりでな
く、車体の振動などによつてボルトが弛み、歯車
の噛合部に脱落する恐れもあるので好ましくな
い。さらに、カバーは入力歯車の半周以上を囲む
ようになつているが、幅軸の歯車によつて掻上げ
られる潤滑油は、必ずしもカバーの内側にだけ跳
ね上げられるとは限らず、このカバーから逸れた
潤滑油は潤滑に供されない。

そこで、本考案の目的は、従来の歯車箱に簡単
に取付けることができ、歯車軸の軸受や歯車のボ
ス部などの潤滑を必要とする部分へ十分な潤滑油
が供給されるようにした歯車変速機の潤滑装置を
提供することにある。

このため、本考案の構成は細長い帯状の板の中
央部分を入力歯車の外周側を覆う円弧状に湾曲
し、この両端側を歯車箱の両側壁へ傾斜して折返
し、さらに両端部を互いに離隔する方向へほぼ水
平に折曲げ、該両端部を歯車箱の上端壁と該歯車
箱の上側に結合されるコードランドボツクスとの
間に挾持したものである。

本考案を実施例に基づいて説明する。第１図は
本考案が適用される５段歯車変速機の例を示す。
歯車箱２の左端壁に軸受３３をもつて入力軸３２
が支持され、この中空端部に軸受３５をもつて出
力軸４１の左端部が支持される一方、右端部は歯
車箱２の右端壁に軸受３７をもつて支持される。
出力軸４１と平行な副軸４２がこの左端部を軸受
４４をもつて、右端部を軸受４５をもつてそれぞ
れ歯車箱２の端壁に支持される。入力軸３２の端
部には歯車２１が一体に形成されるとともに、こ
れに常時噛合う歯車２７が中間軸４２に固定支持
される。

出力軸４１にはそれぞれ軸受をもつて遊回転可
能に歯車２２〜２６が支持され、各歯車２２，２
３，２４，２６にそれぞれ噛合う歯車２８，２
９，３０，３１が副軸４２に固定支持される。後
進用歯車２５は図示してない歯車を介して副軸４
２の歯車と噛合される。出力軸４１と平行な複数
個のシフトロツド３４に各別に支持されたシフト
アームによつて操作される公知の同期噛合機構３
８が歯車２１と２２の間に、また同期噛合機構３
９が歯車２３と２４の間に、さらに同期噛合機構
４０が歯車２５と２６との間に配設される。

そして、例えば同期噛合機構４０を図示の中立
位置から右方へ移動すると、出力軸４１と歯車２
６との回転結合が得られ、入力軸３２の回転は歯
車２１、これと噛合う歯車２７、副軸４２、歯車
３１およびこれと噛合う歯車２６を経て出力軸４
１へ伝達され、第１速段の変速が得られる。この
ような構成は、従来例のものとほぼ同様であるの
で、これ以上詳述しない。

歯車変速機は実際には出力軸４１の右端部が下
方へ傾いた状態に車両が搭載されるから、歯車箱
２の底部へ充填される潤滑油の油面は相対的に副
軸４２の歯車２７の方が低くなる。そして、潤滑
を必要とする部分、つまり、相対回転の機会の多
い軸受３３，３５、軸受３６および同期噛合機構
３８の摺動部などへ、副軸４２の歯車２７によつ
て掻上げられる潤滑油の量が不足する恐れがあ
る。

そこで、本考案は歯車２７によつて掻上げられ
た潤滑油が脇へそれないように歯車箱２の内部に
整流板６を設けたものである。この整流板６を取
付けるために、第２，３図に示すように、歯車箱
２の上端開口部から内方へ突出するリブ３の上に
整流板６の両端部５１，６２を載置し、これを挾
むようにコードランドボツクス１２を歯車箱２の
上端面に重合わせ、ボルトをもつて固定したもの
である。整流板６の端部５１には下方へ突出する
円筒部５２が成形され、この円筒部５２がリブ３
に設けた穴に嵌合される。

一方、整流板６の端部６２はこれを長手方向に
３条に切裂かれて中央にＳ字形に湾曲された板ば
ね６３が形成され、かつリブ３に設けた溝６５
（第６図）の内部へ係合される。

第４，５図に示すように、整流板６は細長い帯
状の板からプレス成形されるもので、中央部に歯
車２１の外周側を取り囲む円弧状の案内壁５８が
形成され、これに絞り成形により下方へ突出する
複数個の円筒状の穴５７が形成される。この案内
壁５８の両端側は斜め上方へ折り返されて、それ
ぞれ傾斜壁５５，６０が形成され、この折曲げ部
において整流板６の幅方向中央部に、長手方向に
延びかつ上方へ突出する隆起部５６，５９がそれ
ぞれ一体に形成され、これによつて補強される。

傾斜壁５５より先端側はほぼ水平に折曲げられ
てコードランドボツクスの上壁部に軽く衝合する
水平壁５３が設けられる。傾斜壁５５と水平壁５
３との折曲げ部は、この幅方向中央部に長手方向
に延びる溝５４を一体に成形して補強される。水
平壁５３よりも端部５１は幾分下方へ低くなるよ
うに階段状に折曲げられ、この端部５１に下方へ
突出する円筒部５２が成形される。

一方、傾斜壁６０の先端側は水平に折曲げられ
て端部６２が成形され、この折曲げ部に下方へ突
出する溝６１を成形して補強される。端部６２に
は長手方向に３条に引き裂かれ、中央の板片を断
面Ｓ字形に折曲げて板ばね６３が成形される。こ
の板ばね６３の下方へ突出する部分が第６図に示
すように、歯車箱２のリブ３の溝６５の内部へ係
合されるとともに、上方へ突出する部分コードラ
ンドボツクス１２の下壁面によつて押下げられる
ようになつている。

なお、整流板６を歯車箱２に位置決めするに
は、まず、端部５１の円筒部５２を歯車箱のリブ
３に設けた穴へ嵌合し、これを中心として整流板
６を僅かに回動しながら板ばね６３をリブ３の溝
６５へ押し込む。

本考案は上述のように構成したので、第３図に
示すように、歯車箱２の潤滑油の油面１８をでき
るだけ低くしても、油面１８が最も低くなる歯車
箱２の前端側では、歯車２７によつて掻き上げら
れる潤滑油が整流板６の案内壁５８によつて中央
部へ誘導され、この部分で第１図に示す軸受３
３，３５、歯車２２の軸受３６および同期噛合機
構３８などの摺動部へ効果的に滴下されることと
なり、少量の潤滑油で必要十分な潤滑を達するこ
とができる。

本考案によれば、整流板６が細長い帯板から成
形されるものであるから、この加工が簡単であ
り、この整流板６は両端部を歯車箱２の上端部と
コードランドボツクス１２との間に挟持されるも
のであるから、従来のようにボルトを用いる場合
に比べて組付けの手数と費用を節減することがで
きるばかりでなく、ボルトなどの脱落による事故
を回避することができる。

また、副軸４２の歯車によつて掻上げられた潤
滑油は、その大部分が整流板６に沿つて入力歯車
２１の外周側へ案内され、途中で滴下して入力軸
３２の軸受３３，３５、同期噛合機構３８の摺動
部および入力歯車２１へ供給される。また、整流
板６の側方へ逸れた潤滑油あるいは歯車２７と隣
接する歯車２８によつて整流板６の上側へ掻上げ
られた潤滑油は、整流板６に設けた穴５７から入
力歯車２１の上へ滴下される。

そして、従来よりも歯車箱に充填する潤滑油の
量を少なくしても、潤滑を要する歯車軸の軸受や
歯車のボス部などへ必要十分な潤滑油を供給する
ことができるから、油面の低下分だけ歯車の潤滑
油掻上げ抵抗による動力損失を軽減することがで
きる。

なお、本考案は歯車変速機に限らず、車両の終
減速機や中間変速機（トランスフア）にも適用す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案が適用される歯車変速機の要部
を示す側面断面図、第２図は本考案に係る潤滑装
置を取付けた状態を示す歯車箱の平面図、第３図
は同正面断面図、第４図は同整流板の正面図、第
５図は同平面図、第６図は整流板の取付端部を示
す正面断面図である。 ２……歯車箱、６……整流板、１２……コード
ランドボツクス、２１……入力歯車、３２……入
力軸、３８……同期噛合機構、５１……端部、５
２……円筒部、５７……穴、５８……案内壁、６
２……端部、６３……板ばね。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 細長い帯状の板の中央部分を入力歯車の外周側
   を覆う円弧状に湾曲し、この両端側を歯車箱の両
   側壁へ傾斜して折返し、さらに両端部を互いに離
   隔する方向へほぼ水平に折曲げ、該両端部を歯車
   箱の上端壁と該歯車箱の上側に結合されるコード
   ランドボツクスとの間に挾持したことを特徴とす
   る歯車変速機の潤滑装置。