JPS6324256Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、例えば自動車のトランスミツシヨン
等に採用されて好適な推力軸受装置の改良に関す
るものである。

技術上良く知られているように、自動車の自動
変速装置においては、トルクコンバータと一個以
上の遊星歯車装置とを組み合わせ、遊星歯車装置
のキヤリヤ及びリングギヤに複数の多板式クラツ
チ及び多板式摩擦ブレーキ（一種のデイスクブレ
ーキ）を組み合わせ、これらクラツチやブレーキ
を所定の態様で、係合させたり、解放したりする
ことにより所望の変速段を達成するように構成さ
れている。そして上記多板式クラツチ及びブレー
キは、通常油圧応動装置により制御されるように
なつており、油圧を受けているときは、クラツチ
デイスク及びブレーキデイスクには当然に軸線方
向の推力が発生する。従つて上記クラツチデイス
ク及びブレーキデイスクと相対回転を行なう他の
部材との間には、推力軸受を設置する必要があ
る。この為に、従来の自動変速装置には、多板式
クラツチ及びブレーキが存在する多数個所に、多
くはニードルベアリング及び協働するスラストレ
ースからなる複数の推力軸受が配置されている
が、上記ニードルベアリング及びスラストレース
からなる推力軸受は、変速装置の軸線方向に関す
る寸度が大きく、限られたスペース内での設置に
は不適当であり、かつ価格も高くなる不具合があ
つた。

本考案は、上記に鑑み創案されたもので、第１
軸上に嵌装された部材の軸線方向への変位を制限
するように上記軸上に嵌装された止め輪と、上記
止め輪の半径方向外側に囲設され上記第１軸と同
心の第２軸上の部材に作用する軸線方向の推力を
うける円環板状の軸受とを具え、上記円環板状軸
受に半径方向内方に突出した突起を設けて上記第
１軸及び止め輪に設けた対応する切欠部に係合せ
しめたことを特徴とする推力軸受装置を要旨とす
るものである。

以下本考案の一実施例を添付図面について具体
的に説明する。図示した装置は、本考案を自動車
用自動変速装置の最終段（例えばオーバドライ
ブ）に適用した一例であつて、図中１０は図示し
ないトルクコンバータのタービンに連結された入
力軸、１２は上記入力軸１０の外周に同心的にか
つ回転自在に支持された遊星歯車装置のキヤリヤ
軸、１４は上記キヤリヤ軸１２の外周に同心的に
かつ回転自在に支持された遊星歯車装置のリング
ギヤ軸、１６及び１８は上記リングギヤ軸１４を
ハウジング２０上に回転自在に支承する一対のボ
ールベアリング、２２は上記ボールベアリング１
６，１８間において上記リングギヤ軸１４の外側
にスプライン連結された出力ギヤであつて、同出
力ギヤは図示しないアイドラギヤを介し又は介さ
ずして直接にドリブンギヤに噛合し、更に同ドリ
ブンギヤは図示しないデイフアレンシヤルに連結
される。２４は上記キヤリヤ軸１２の軸端部にス
プライン連結されたクラツチハブであつて、その
外周には複数の円盤状摩擦板２６が装着され、同
摩擦板２６間に図示しない協働するクラツチ部材
上の同様の円盤状摩擦板が交互に挿入され、図示
しない油圧応動装置により両摩擦板が圧着される
ことによつてクラツチが係合し、又油圧が排除さ
れることにより、クラツチが非係合状態即ち解放
されるように構成されている。即ち上記クラツチ
ハブ２４は、上述したクラツチ作動に伴ない第１
図において矢印Ｔ方向の推力を受けることとな
る。

２８は上記リングギヤ軸１４をハウジング２０
に志承するため同リングギヤ軸の外周に嵌装（こ
の実施例の場合は圧入）されている上記ボールベ
アリング１６の軸線方向（図中右方）の変位を阻
止するため、同ベアリングのインナレースに接し
てリングギヤ軸１４上の外周凹溝内に嵌着された
止め輪、３０は上記止め輪２８の半径方向外側に
囲設された円環板状のスラスト軸受、３２は上記
スラスト軸受３０に設けられた半径方向内方に突
出した突起であつて、同突起は上記止め輪２８の
対応する半径方向の切欠部３４及びリングギヤ軸
１４上の対応する半径方向の切欠部３６内に係合
され、この結果、リングギヤ軸１４、止め軸２８
及び円環板状のスラスト軸受３０は、実質的に相
対回転しないように係止されている。なお上記ス
ラスト軸受３０のクラツチハブ２４に対向する側
面、即ちクラツチハブ２４が矢印Ｔ方向の推力を
受けたときこれと当接して摺動する側面３８に
は、当然のことながら、適宜の軸受合金属層が設
けられている。

上記構成によれば、第１軸即ちリングギヤ軸１
４上に嵌装された部材即ちボールベアリング１６
と、第２軸即ちキヤリヤ軸１２上に嵌装されて軸
線方向の推力を受ける部材即ちクラツチハブ２４
との間に介装される推力軸受３０が円環状をなし
た板状体であつて、それ自体の軸線方向寸度が小
さく、更にその半径方向内方に上記ボールベアリ
ング１６の軸線方向変位を制止する止め輪２８が
配置されているので（換言すれば、両者が軸線方
向に並設されていないので、全体として軸線方向
の寸度を、従来のニードルベアリングを用いた場
合より著しく縮少することができ、しかも安価で
ある。更に、半径方向外側の推力軸受３０から半
径方向内方に延びる突起３２を設けて止め輪２８
及び第１軸１４上の切欠部３４，３６に同時に係
合させる簡単な構成によつて三者を回転方向に関
し一体化することができ、又第１軸１４の高速回
転時に、止め輪２８が遠心力によつて拡開したと
きに、その外側にある推力軸受３０が、止め輪２
８の過度の変形を防止する作用を行ない、その脱
落を防止して装置の安全性を確保することができ
るのである。

なお、上記説明から容易に理解されるように、
本考案は自動車の自動変速装置等、軸線方向の寸
度に厳しい制約がある種類の装置に適用されて極
めて有利であるが、自動車の変速装置以外の各種
機械、装置にも広く適用することができるもので
ある。

叙上のように、本考案に係る推力軸受装置は、
第１軸上に嵌装された部材の軸線方向への変位を
制限するように上記軸上に嵌装された止め輪と、
上記止め輪の半径方向外側に囲設され上記第１軸
と同心の第２軸上の部材に作用する軸線方向の推
力をうける円環板状の軸受とを具え、上記円環板
状軸受に半径方向内方に突出した突起を設けて上
記第１軸及び止め輪に設けた対応する切欠部に係
合せしめたことを特徴とし、簡易かつ安価な構成
によつて推力方向における寸度を縮少し、同時に
止め輪の破損脱落を防止することができるこの種
の推力軸受装置を提供し得るので、極めて有益で
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す断面図、第２
図は第１図の−線に沿う部分的断面図であ
る。 １２……第２軸、１４……第１軸、１６，１８
……ボールベアリング、２０……ハウジング、２
４……クラツチハブ、２８……止め輪、３０……
円環板状の推力軸受、３２……突起。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 第１軸上に嵌装された部材の軸線方向への変位
   を制限するように上記軸上に嵌装された止め輪
   と、上記止め輪の半径方向外側に囲設され上記第
   １軸と同心の第２軸上の部材に作用する軸線方向
   の推力をうける円環板状の軸受とを具え、上記円
   環板状軸受に半径方向内方に突出した突起を設け
   て上記第１軸及び止め輪に設けた対応する切欠部
   に係合せしめたことを特徴とする推力軸受装置。