JPS6314188B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、圧電素子を用いたデイーゼルエン
ジンの噴射時期検知装置に関するものである。

従来から圧電素子を噴射時期検知に用いること
は広く公知であるが、この種の噴射時期検知装置
は圧電素子を噴射ノズルのばね座に装設し、ばね
座に加わる力を検知して針弁リフトを計るという
もので、圧電素子、リード線、絶縁筒、絶縁座金
などから構成されていた。

このような従来の噴射時期検知装置にあつて
は、検出素子が針弁の移動に応じて移動する針弁
側に装着されるものであるため、ばね座の移動に
応じてこれに固定されている検出素子（圧電素
子）も移動することになる。特に、針弁が着座す
るときには、大きな衝撃力が加わり、検出素子が
割れたり、摩耗が発生するという問題があつた。

また、着座時の衝撃が直接検出素子に作用する
ことになるので、開弁信号だけでなく、着座の信
号も発生されることとなる。この信号は不要であ
るので、ノズル発生源となつて、他の電子部品に
悪影響を及ぼしていた。

さらに、針弁が着座する際には、急激な加速度
変化に伴ない通常針弁は振動することになるが、
この振動時に検出素子にも力が加わることとな
り、信号が出力されることになる。この信号は同
じくノズルとなり、正確な開弁時期を検知するこ
とを妨げることとなつて、噴射特性を大幅に変化
させることになる。また、移動する針弁側に検出
素子を装着するということは、移動質量が増加す
ることであり、噴射弁自体の噴射特性が変化して
しまう。

さらに、圧電素子が不均一な面荷重を受けて破
損する、リード線の油密部で油がもれる、リード
線が振動の影響で断線する、構造が複雑で組立や
部品破損時の交換に多くの時間を要する、さらに
ばね座および針弁を介して接地回路を形成する場
合には針弁部において油膜を破つて電流が流れる
ことになり、針弁の一部に電蝕が発生する、等の
多くの問題点があつた。

この発明は、このような従来の問題点に着目し
てなされたもので、圧電素子の面荷重を均一にす
るため厚手で、かつ平面度の高い導電板で圧電素
子を挾み、リード線を使わず導電板を介して端子
棒より出力信号を取り出すようにし、かつ剛性の
高い絶縁体とオイルシールで油密機構を形成する
ことにより、上記問題点を解決することを目的と
している。

以下、この発明を図面に基づいて詳細に説明す
る。

第１図はこの発明の一実施例を示す燃料噴射弁
の構成縦断面図である。この図で、１はノズルナ
ツトで、外周ねじ部２を有し、先端内部にノズル
３が装着される。ノズル３は内部に中空部４が形
成され、この中空部４の先端にはテーパ部５を介
して燃料の噴射口６が形成される。さらに、テー
パ部５に臨んで開口する燃料通路７が設けられ
る。８は針弁で、中空部４中に摺動自在に装着さ
れ、その先端部はノズル３のテーパ部５に合致す
るテーパ部９を備えている。１０はノズルホルダ
で、ノズルナツト１に螺合され、先端でノズル３
を押圧固定する。ノズルホルダ１０には燃料の導
入口１１、流出口１２、燃料通路１３が形成さ
れ、燃料通路１３はノズル３の燃料通路７と連通
している。１４はばね座で、コイル状のばね１５
によつて常にばね力が加えられ、針弁８を押し下
げるように作用する。１６は噴射圧力を調整する
ためのシムである。ばね座１４の取付側の反対端
には針弁リフトを検知するリフトセンサ１７が取
り付けられ、このリフトセンサ１７には端子棒１
８が設けられて、針弁８のリフト量に応じた出力
信号を取り出すようになつている。以上で燃料噴
射弁１９が構成される。２０はエンジンヘツド
で、これに燃料噴射弁１９が螺合により固着され
る。

第２図は第１図のリフトセンサ１７部分の詳細
を示す拡大断面図である。この図において、２１
は圧電素子で、チタン酸、ジルコン鉛などで作ら
れるセラミツクス製素子である。この圧電素子２
１は針弁８（第１図）と反対側、つまりばね１５
の外端側に装着されている。そして、この圧電素
子２１は圧電気を集めるため上、下面は広く良導
体に接し集電効果を高める処理が施される。例え
ば圧電素子２１の両面に第３図ａ，ｂに示すよう
に電極となる銀蒸着層２１ａを形成するなどして
もよい。ただし、この場合、集電した電荷がノズ
ルホルダ１０に漏れないように銀蒸着層２１ａが
圧電素子２１の外周面に及ばないようにする必要
がある。２２は導電板で、圧電素子２１に接して
おり、圧電素子２１で発生した電荷を端子棒１８
を介して外部に導くもので、端子棒１８に第４図
にさらに拡大して示すように、かしめなどにより
固定され、生産性を高めるとともにコストの低減
をはかつている。なお、圧電素子２１はセラミツ
クスで形成されているため大きな荷重に耐えられ
る反面、不均一な荷重には脆い面があるため、シ
ム１６および導電板２２は平面度を十分に高く仕
上げ、圧電素子２１を保護している。

端子棒１８はガラス等の絶縁体からなる碍子２
３により絶縁状態に維持されると同時にノズルホ
ルダ１０との間はオイルシール２４と、また、端
子棒１８との間は接着剤などで燃料が外部に漏出
することのないように油密にされている。なお、
このオイルシール２４は碍子側に設けてもよく、
また、接着剤などでおきかえてもよいが、碍子破
損時には交換や組立工数などの点からＯリングを
用いるのが便利である。また、碍子２３はその材
質をガラスに限定するものではなく、硬質の絶縁
性樹脂などでもよい。

２５は接地板で、圧電素子２１の接地側回路を
形成するもので、第５図ａに示すような形状をし
ており、燐青銅板などで作られる。第５図ｂは接
地板２５をノズルホルダ１０のばね室に組み込ん
だ状態を示す概念図で、端子部２５ａがノズルホ
ルダ１０のばね室内径より大きく作られているた
め、その撓み分で強力に接地する。また、図示の
ような形状に撓むため、圧電素子２１が組立時や
ノズル交換時に脱落することがなくなり、破損や
紛失を防止することができる。２６は接地端子で
ある。

次に作用を第６図を参照して説明する。圧電素
子２１は、これに加えられた力の変化率に応じて
出力信号を発する。この圧電素子２１に加わる力
は、ばね１５が発する応力分だけで、ばね常数を
ｋ（Kg／mm）、針弁リフトをΔx（mm）、初期荷重を
W₀（Kg）とすれば、その応力Ｗ（Kg）は、 Ｗ＝W₀＋ｋ・Δx で表わされ、針弁リフトの動きに応じて応力Ｗが
変化するため、応力Ｗによつて針弁リフトを検知
できる。

一方、圧電素子２１の出力は応力Ｗの変化率に
応じたものとなるから、針弁８（第１図）の加速
度、減速度に応じたものとなり第６図ａに示すよ
うに針弁８が開き行程、および閉じ行程の時が大
きく、中でも開き行程の方が立上りが急なため最
大出力となり、かつ極性も互いに逆となる。

従つて、噴射開始時期としては、第６図ｂのス
ライスレベルＬとの交点であるイ点の部分を用い
ればよく、それ以下の低い出力をカツトするよう
にすれば、第６図ｃに示すような非常に処理しや
すい噴射時期信号が得られ、制御機への入力信号
として好適である。

そして、上記実施例においては圧電素子２１を
針弁８と反対側に装着したので、針弁８に加わる
筒内圧や弁閉止時のリバウンドの振幅などは、ば
ね１５で大部分吸収され雑音が入り難いと同時に
圧電素子２１は動かないため、針弁８に対する重
量の影響がなくなり、針弁８の動きやばね座１４
の摩耗等によつても何等悪影響をおよぼさない。

また、接地回路が圧電素子２１→接地板２５→
ノズルホルダ１０→接地端子２６となつているた
め、ばね１５→ばね座１４→針弁８→ノズル３→
ノズルナツト１→ノズルホルダ１０を流れる電流
は無視できるほど少なくなり、針弁８とノズル３
間の油膜を破壊して流れる電流も無視できるほど
少なくなる。そのため電流による腐蝕作用（一種
の電気溶接）がなくなり針弁部が保護される。

第７図は電子制御による噴射時期調整システム
のブロツク図で、第６図ａ，ｂ，ｃに示すような
針弁リフトに伴う信号の受渡しが行われる。すな
わち、噴射時期検知装置は燃料の供給により、
第６図ａのように針弁８（第１図）がリフトさ
れ、これに応じて第６図ｂのような信号を出力す
る。この出力信号のうちスライスレベルＬ以上の
出力信号は波形整形部において第６図ｃのよう
に処理しやすい波形に整形されて制御部に入力
される。制御部は第６図ｂのスライスレベルＬ
に達したイ点が予め定められた最適値に合致する
よう噴射時期調整部を制御する。

なお、波形整形部において修正される波形は
第６図ｃの波形に限らず、他にも公知の方法が多
くあるが、ここではその説明は省略する。

以上説明したようにこの発明は、ばね座に対し
て前記ばねを針弁とは反対側に配置されるととも
にノズルホルダに油密に絶縁支持された信号を取
り出すための端子棒と、この端子棒の内端に接触
導通する導電板と、この導電板に一方の電極が接
触する圧電素子と、この圧電素子の他方の電極に
接触導通するとともに前記ばねのばね座と反対側
の端部に位置し前記ノズルホルダに接触導通する
接地板と、前記ノズルホルダの前記端子棒近傍に
設けた接地端子とを有するので、検出素子は移動
しないノズルホルダ側に中間にばねを介して装着
され、針弁の振動や着座時の衝撃は直接受けるこ
とがなく、ノズルや破損等の影響を除去すること
ができる。特にノズルの影響を受けないため正確
な噴射時期信号を得ることができる。そして、接
地板を圧電素子とばねの間に介装するので、圧電
素子の脱落を防止することができるとともに、圧
電素子が万一破損したときの破片の脱落も防止で
きる。さらに、針弁の交換作業や、開弁圧調整が
圧電素子を取り外すことなくできるので、作業コ
ストを低減することができる。

また、従来のようにリード線を用いないので、
断線がなく、外部への結線が容易である。

さらに、針弁に対する条件を従来と全く変える
ことなく制御部へ安定した入力を送ることができ
るばかりでなく、電蝕摩耗等の新たな問題が発生
する恐れがない噴射時期検知装置が得られる等の
幾多の利点を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の一実施例を示す燃料噴射弁
の構成縦断面図、第２図はこの発明の要部の詳細
を示す拡大断面図、第３図ａ，ｂは圧電素子の表
面状態を説明するための平面図および側面図、第
４図は導電板の端子棒への取付け方法を示す側断
面図、第５図ａ，ｂは接地板の形状例を示す平面
図および装着状態を示す部分断面図、第６図ａ，
ｂ，ｃはこの発明による特性曲線を示すもので、
第６図ａは針弁リフトの特性図、第６図ｂは圧電
素子の出力信号の特性図、第６図ｃは第６図ｂの
スライスレベルより上方の出力信号を波形整形し
た状態の波形図、第７図は電子制御による噴射時
期調整システムのブロツク図である。 図中、１はノズルナツト、３はノズル、６は噴
射口、７，１３は燃料通路、８は針弁、１０はノ
ズルホルダ、１４はばね座、１５はばね、１６は
シム、１７はリフトセンサ、１８は端子棒、２１
は圧電素子、２１ａは銀蒸着層、２２は導電板、
２３は碍子、２４はオイルシール、２５は接地板
である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ノズルをノズルホルダとノズルナツトで保持
   し、前記ノズルホルダ内に設けたばねのばね力を
   ばね座を介して前記ノズル内に軸方向に摺動自在
   に収容された針弁に加えて前記ノズルを閉止し、
   燃料噴射時に燃料圧力によつて前記針弁を前記ば
   ね力に抗して移動させ、燃料を前記ノズルから噴
   射させるデイーゼルエンジンの燃料噴射装置にお
   いて、前記ばね座に対して前記ばねを針弁とは反
   対側に配置されるとともにノズルホルダに油密に
   絶縁支持された信号を取り出すための端子棒と、
   この端子棒の内端に接触導通する導電板と、この
   導電板に一方の電極が接触する圧電素子と、この
   圧電素子の他方の電極に接触導通するとともに前
   記ばねのばね座と反対側の端部に位置し前記ノズ
   ルホルダに接触導通する接地板と、前記ノズルホ
   ルダの前記端子棒近傍に設けた接地端子とを有す
   ることを特徴とする噴射時期検知装置。