JPS6311096B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はアルミニウムダイカスト等の高圧鋳造
において用いられる熱崩壊性砂中子に関するもの
である。

従来、アルミニウムダイカスト等の高圧鋳造は
生産性向上の面から広く利用されているが、形状
の一部に複雑な空洞部或いはアンダーカツト部を
有する鋳物を鋳造する場合には、中子として引抜
き中子を使用することができないので、これに代
えて一定圧に耐えると共に、崩壊性が良いという
全く相反する機能を同時に兼ね具えた崩壊性中子
を用いる必要がある。

然して、この高圧鋳造に用いる崩壊性中子に関
しては、従来から種々の研究、開発が行われ、各
種の提案がなされている。例えば、水溶性の溶融
塩を使用したもの、或いは比較的溶融点の低い合
金を使用したもの、さらには骨材と加工澱粉とに
よる混合物を使用したもの等がある。しかしなが
ら、これらの中子はいずれも鋳造時の高圧に耐え
られず破損したり、或いは溶湯が中子内に差し込
み、鋳造された鋳物から中子を完全に取り除くこ
とが困難となる等の欠点を有していた。

これに対し、最近、上記の如き鋳造時の中子内
への溶湯差し込みや中子割れを防止し、且つ鋳造
後の中子砂の除去を容易にするために、砂中子の
造型物に対し塗型剤を塗布、浸漬、含浸等の処理
を施した上で中子製品として使用することの研
究、開発が進められ、またそれに関する各種の提
案もなされている。この中子造型物に対し塗型剤
を用いる方法については、例えば (1) 骨材粉と粘土と水とを配合したもの。

(2) 粉末状耐火物と水溶性熱硬化樹脂とを混合し
たアルカリ性水溶液を一次塗布剤とし、合成雲
母水溶液（金属粉末からなる微粉状耐火物を含
む）を二次塗布剤としたもの。

(3) 直接塗布するものとしてアクリル樹脂或いは
エポキシ樹脂を用いたもの。

等がある。しかしながら、上記提案においては (1)の方法の場合、乾燥後焼成する必要がある。

(2)の方法の場合、塗布および乾燥の工程が２回
必要になる。

(3)の方法の場合、高温の乾燥工程が必要であ
る。

等の諸工程を要すると共に、これら塗型剤を処理
してなる砂中子についても、いずれも中子の表面
砂粒子間への溶湯差し込みを皆無にはできず、ま
た鋳造後の中子砂の除去も容易ではなかつた。そ
して、かかる欠点が高圧鋳造における崩壊性砂中
子の使用を実質的に困難にしていた。

本発明はかかる上記従来の欠点を除去するもの
で、鋳物砂を化学反応硬化性樹脂或いは熱硬化性
樹脂により結合硬化させて得られる中子造型物
に、潤滑性を有し且つ金属溶湯と親和性がなく熱
的、化学的にも反応しにくい物質である窒化硼素
の粉末をベース材とする塗型剤を塗布または浸透
した後、所定温度以下で乾燥させることによつ
て、焼成工程を必要とせず、差し込み層の生成を
防止し且つ鋳造後の中子砂の除去を容易にしてな
る高圧鋳造用崩壊性砂中子を提供するものであ
る。

以下、本発明の実施例を説明する。

今、アルミニウムダイカストによつて図に示す
ようなトランスミツシヨンケース１を鋳造しよう
とする場合、空洞部を形成するために斜線形状の
如き崩壊性砂中子（以下、砂中子と称す）２を金
型内に挿入することが必要である。そして、砂中
子の造形については、化学反応硬化性樹脂或いは
熱硬化性樹脂を用いて砂を結合硬化させて造型
し、このようにして成型した砂中子２の造型物に
塗型剤をコーテイングして所要の中子製品を得る
ものである。

即ち、化学反応硬化性樹脂を用いた砂中子の造
型の場合には、砂中子２の骨材をなす鋳物砂は例
えば耐火硅砂、粘結剤および硬化剤としての有機
バインダーは化学反応硬化性樹脂（例えば、種類
の異なるフエニール系レジン）を構成材として用
い、これらを混合したものを中子の型内にエアー
で吹き込み成形し、さらに砂粒子間にアミンガス
を吹き込むことによつてフエノール系レジンの硬
化化学反応により硬化させ、所要成形した中子造
型物を得るものである。

次に、塗型剤を上記砂中子２の造型物の表面に
塗布または浸透させる。この場合の塗型剤は、潤
滑性を有し且つ金属溶湯と親和性がなく熱的、化
学的にも反応しにくい物質である例えば窒化硼素
（Boron Nitride）の粉末をベース材とし、該ベ
ース材にメタノールまたはエタノールをその溶剤
として加え、更に、これらに高温下における熱で
加熱分解する液体レジン、例えば比較的分子量の
大きいレゾールタイプ樹脂を多量の金属水酸化物
により水溶性塩にしたもの等を配合した溶液であ
る。尚、この窒化硼素の粉末よりなるベース材に
対し、液体レジンはその配合する材料、種類を変
えても同様な性質を有するものであれば適用でき
る。この窒化硼素の粉末をベース材とする塗型剤
は砂中子２に塗布されると、中子における表面砂
粒子間には窒化硼素が入り込んで目止めを行うよ
うに作用する。また、その際にベース材の溶剤と
して使用するメタノールまたはエタノールが中子
の造型剤である有機バインダーを溶解させ中子を
軟化させるように作用するが、液体レジンの作用
により砂粒子間の結合を補強して軟化を防止する
ことになる。

しかる後、この塗型剤を塗布または浸透させた
砂中子２を乾燥させることにより、所要の中子製
品が得られる。その場合の乾燥温度は、中子の崩
壊温度をこえてしまうと乾燥中に中子が崩壊して
しまうので、それ以下の温度で乾燥する必要があ
るが、実際には砂中子の劣化温度以下の常温で乾
燥させるのが望ましい。

この後、以上の如くして得られた砂中子２を金
型にセツトし、アルミニウム合金をプランジヤー
射出圧力・80Kg／cm²乃至280Kg／cm²、注湯温度・
670℃の条件下でダイカスト鋳造した。そして、
この鋳造後湯口切断を行い、次いでサンドブラス
トで砂中子２に対する砂落しを行つた所、砂粒子
間に混入したアルミニウムと砂粒子とで形成する
差し込み層の発生は少なく、迅速且つ完全に中子
砂を除去することができた。また、上記湯口切断
後に炉中で所要時間砂焼きを行うと砂中子２にお
けるレジンが加熱分解され、上記同様にサンドブ
ラストを行うと中子砂および差し込み層の除去は
一層容易に行うことができ、極めて良好なダイカ
スト製品を得ることができた。

尚、上記実施例においては、バインダーに化学
反応硬化性樹脂を用いコールドボツクス法によつ
て得た中子造型物に、窒化硼素の粉末をベース材
とする塗型剤を付着・乾燥せしめて所要の中子製
品を得る場合について説明したが、本発明はこれ
に限定されることなく、熱硬化性樹脂を用いホツ
トボツクス法、シエルモールド法等によつて得た
中子造型物に対し、この窒化硼素の粉末をベース
材とする塗型剤を適用して中子製品を得る場合に
も、熱崩壊性の砂中子として同様な作用効果を奏
することができるものである。

以上の説明から明らかな如く、本発明は鋳物砂
にバインダーとして化学反応硬化性樹脂或いは熱
硬化性樹脂を用いて得られる中子造型物に、潤滑
性を有し且つ金属溶湯と親和性がなく熱的、化学
的にも反応しにくい物質である窒化硼素の粉末お
よびその溶剤としてメタノールまたはエタノール
を配合すると共に更に、これらに鋳造過程におけ
る熱で加熱分解する液体レジンを配合して液状と
してなる塗型剤を塗布または浸透させ、これを砂
中子の崩壊開始温度以下で乾燥せしめることによ
つて所要の中子製品を得るようになしたので、従
来困難であつたアルミダイカスト等の高圧鋳造に
適用して良好な熱崩壊性の砂中子が得られるもの
である。

即ち、本発明によつて得られる砂中子は、塗型
剤成分中の窒化硼素が塗布時に砂中子の表面砂粒
子間に入り込んで目をつぶすように作用する一
方、この窒化硼素はアルミニウム溶湯と親和性を
有しないので、鋳造時には上記目止め作用との相
乗効果によつて砂中子の表面砂粒子間への溶湯差
し込みを阻止することになり、高圧鋳造において
熱崩壊性砂中子の使用を可能にしたものである。

そして、この砂中子の表面砂粒子間への溶湯差
し込みを阻止する結果、鋳肌のきれいな鋳物が得
られると共に且つ寸法精度および面粗度の優れた
鋳物を得ることができるものである。

また、本発明によつて得られる砂中子において
は、塗型剤の塗布または浸透後は崩壊開始温度以
下で乾燥させるだけでよく、従来の砂中子の如き
焼成若しくは高温乾燥を行わないで済むので、砂
中子に塗布または浸透した塗型剤の成分になんら
影響を与えることなく、且つそれらの工程のため
の大規模な設備を必要とせず、製造工程を大幅に
簡略化してコスト低減に大きく寄与できる。

さらに、砂中子は塗型剤成分中の液体レジンの
作用によつて鋳造中はその形状を維持され、鋳造
後のアルミニウムの高温余熱によつてその成分が
殆ど分解されるので砂中子の崩壊性が良好とな
り、砂落し並びに鋳物に附着した塗型剤層の除去
が容易となるため、後工程が簡単になり低コスト
で良好な鋳物を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を説明するための製品
の概略断面図である。 図面中、１はアルミニウム合金製トランスミツ
シヨンケース、２は砂中子。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 鋳物砂を化学反応硬化樹脂或いは熱硬化性樹
   脂により結合硬化させて得られる中子造型物に、
   窒化硼素の粉末と、その溶剤としてのメタノール
   またはエタノールと、鋳造過程における熱で加熱
   分解する液体レジンとを配合して得られる塗型剤
   を塗布または浸透させた後、これを砂中子の崩壊
   開始温度以下で乾燥させてなる高圧鋳造用崩壊砂
   中子。