JPS6250320B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は平版印刷版材料に関し、特に紙基体の
両面にポリエチレン樹脂層を被覆した支持体上に
印刷画像形成層を有する平版印刷版に関する。 平版印刷版は一般にアルミニウム、亜鉛等の金
属板、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビ
ニル等のプラスチツクフイルム、紙等の支持体上
に印刷画像形成層を設けた構造からなつている。
これらの支持体のうち、金属板やプラスチツクフ
イルムは高価ではあるが、機械強度等に優れ、寸
法安定性が良好であり、耐刷枚数が多いことが望
まれる平版印刷版の支持体として使用されてい
る。一方紙は前述の支持体に比べ、機械強度、寸
法安定性等において劣つているが、コストが安価
なために耐刷枚数が少なくてもよい平版印刷板の
支持体として使用されている。 近年、平版印刷版用の支持体として紙基体の両
面にポリエチレン樹脂を被覆して耐水性表面とし
たいわゆるポリエチレン被覆紙が使用されるよう
になつた。この支持体を用いた平版印刷版材料は
通常の紙支持体を用いた平版印刷版に比べ耐刷性
がすぐれているが、裏面のポリエチレン樹脂層表
面を露出させた状態で用いると、裏面のスベリ性
が悪いため製版機内における印刷版材料の搬送性
が極めて悪く、又オフセツト印刷機のマスターシ
リンダーに装着した印刷版が、印刷機の回転によ
りフオームローラー、ブランケツトローラーの圧
力で回転方向に強い力を受けてズレ、印刷版裏面
のスベリ性が悪いためにこのズレが元に戻らず、
印刷版の取り付け穴が除々に伸びてついには破断
したり、印刷版にシワができ、耐刷性を損うとい
う欠点がある。この欠点をなくするために、従来
印刷版材料の裏面に無機微粉末層を設けて裏面を
粗面にしてスベリ性を良くする方法がとられてい
る。この方法は搬送性、耐刷性を向上させるのに
極めて有効である。 しかしながら、従来のこのような平版印刷版裏
面の粗面化法には欠点がある。例えば、このよう
な裏塗層の存在は、平版印刷版材料がシート状で
重ねられている場合、該材料の給送時に裏面に突
出している無機微粉末により、下の材料表面にス
リ傷が生じ、画像形成層が損われると共に印刷画
像形成層としてハロゲン化銀乳剤層が存在する場
合にはスレカブリが生じる。又平版印刷版は通常
長尺ロール状あるいは重ねシート状で保存される
が保存中に裏塗層中の水分や拡散性の物質の影響
で下に重なつている印刷画像形成層の保存性に悪
影響を与える。例えばハロゲン化銀乳剤層が存在
する場合には、その写真性が劣化する。又製版
後、印刷版が湿つている状態で複数枚の印刷版を
重ねて置いておくと、裏塗層中に残存する製版処
理液の影響で下に重ねられた印刷版のインキ受容
性と保水性のバランスがくずれ、満足な印刷特性
が得られなくなる等の種々の欠点がある。 本発明の目的はこれらの欠点をなくし、かつ製
版時の搬送性および耐刷性が従来技術と同等もし
くはそれ以上に優れた平版印刷版材料を提供する
にある。 本発明の他の目的は製造工程が簡略化でき、コ
ストの低減できる平版印刷版材料を提供するにあ
る。 本発明の目的は紙基体の両面にポリエチレン樹
脂層を被覆してなる支持体上に印刷画像形成層を
設けてなる平版印刷版材料において、印刷画像形
成層を有する側の反対側（すなわち裏面）のポリ
エチレン樹脂層に、高密度ポリエチレン樹脂を配
合し、かつ該ポリエチレン樹脂層表面を粗面とす
ることにより達成される。 本発明の知見によれば、裏面の樹脂層のポリエ
チレン樹脂が、従来から使用されている比重
0.925以下の低密度ポリエチレン樹脂のみからな
る場合には、該樹脂層の面を粗面化しても、従来
のような良好な搬送性を得ることができず、又、
印刷版をオフセツト印刷機のマスターシリンダー
に取りつけるための印刷版の取りつけ穴が印刷中
に伸びたりあるいは印刷版にシワが入つたりして
十分な耐刷性を得ることができない。 本発明における高密度ポリエチレン樹脂とは比
重0.926以上のものをいう。高密度ポリエチレン
樹脂の配合量は、裏面ポリエチレン樹脂層中の全
ポリエチレン樹脂の合計量に対し約20重量％以上
が好ましい。本発明のより好ましい態様において
比重0.926〜0.940の密度のポリエチレン樹脂の場
合の配合量は約50〜100重量％であり、比重0.941
以上の密度のポリエチレン樹脂の場合の配合量は
約20〜90重量％である。本発明の実施に際し比重
の高いポリエチレン樹脂の配合量を多くするに従
い良好な結果が得られるが、比重の高いポリエチ
レン樹脂は押出熔融塗布適性が劣ることがあるの
で、その配合量は必要にして且つ十分な量にとど
めるのがよい。特に比重0.941以上のポリエチレ
ン樹脂の場合、配合量が90重量％を越えると押出
塗布適性の劣化が起りやすくなる。本発明の最も
好ましい態様は比重0.941以上の高密度ポリエチ
レン樹脂を約40〜90重量％配合したものであり、
最も好ましい結果が得られる。本発明において比
重の異なる高密度ポリエチレン樹脂（例えば比重
0.926〜0.940のものと比重0.941以上のもの）を併
用してもよい。 本発明における印刷版裏面のポリエチレン樹脂
層面の粗面化法としては、特に限定されないが粗
面表面を有する金属ロールで型付けする方法が、
工業的に容易、かつ安定した粗面形成法として有
利である。形成される粗面の程度は、特に限定さ
れないが、通常、深さが２〜20ミクロン、山から
山までの距離は10〜100ミクロンのものが好まし
い。型付け粗面の形状はいわゆるマツト面、微粒
面、絹目等がその代表的なものであるが、マツト
面状が好ましい。又必要により樹脂層中に帯電防
止剤等の添加剤を含有させることも可能である。 印刷画像形成層を有する側のポリエチレン樹脂
層中にはカーボンブラツクの如きハレーシヨン防
止剤、帯電防止剤等が含有されていてもよく、又
該ポリエチレン樹脂層表面は、砂目を向上させる
目的で裏面と同様の方法により租面化されていて
もよい。 本発明におけるポリエチレン樹脂を被覆する紙
基体を形成する繊維としては、通常木材パルプが
用いられるが、合成パルプあるいはこれらの混合
パルプであつてもよい。 これら支持体の各構成層の厚みは特に限定され
ないが、通常紙基体は約70〜250μ、ポリエチレ
ン樹脂層は約20〜80μで支持体全体の厚みは約
100〜300μ程度である。 本発明における印刷画像形成層とは、印刷画像
が形成される側に設けられるすべての層を意味
し、印刷画像の形成に直接関与する層およびその
下引層、保護層等の補助層を包含する。 本発明におけるこれらの印刷画像形成層は水系
あるいは溶剤系塗液として支持体表面上に塗布さ
れるが、水系塗液の場合には支持体のポリエチレ
ン樹脂層表面をコロナ放電処理あるいは下引処理
等によつてあらかじめ親水化処理を施したのち塗
布するのがよい。コロナ放電処理は塗布直前に行
うのが好ましい。 本発明における印刷版としては種々のものが包
含される。例えば直描用平版印刷版、銀錯塩拡散
転写法を応用した銀画像をインキ受容体とする平
版印刷版、ジアゾ化合物、感光性樹脂等を用いる
平版印刷版、無機あるいは有機光導電体を用いた
電子写真用平版印刷版、その他ハロゲン化銀乳剤
層を用いた硬化現像法あるいはエツチングブリー
チ法等により得られる平版印刷版等を挙げること
ができる。 次に本発明の具体例を実施例にて説明するが本
発明はこれに限定されない。 実施例 １ 比重0.92の低密度ポリエチレン樹脂と比重0.96
の高密度ポリエチレン樹脂を表に示した割合で配
合したもの（試料No.1〜４）および比重0.93の高
密度ポリエチレン樹脂を100重量％配合したもの
（試料No.5）をそれぞれ150ｇ／m²の木材パルプ
繊維からなる紙基体の両面に30ミクロンの厚さに
押出し積層すると同時に、マツト面を有する型付
ロールで片面を粗面化した。粗面の程度は平均深
さ10ミクロンで、山から山までの平均距離は50ミ
クロンであつた。 次にこれら５種の支持体の粗面化しなかつたポ
リエチレン樹脂層表面をコロナ放電にて親水化処
理を行つた後、次の層を順次塗布し平版印刷版材
料を得た。 (1) カーボンブラツク、平均粒径７ミクロンのシ
リカ微粉末およびホルマリン含有ゼラチン層 (2) ホルマリン含有ゼラチン−ハロゲン化銀乳剤
層 (3) 微量のメチルビニルエーテル・無水マレイン
酸共重合体に分散された硫化パラジウムゾル 得られた平版印刷版材料を50℃、80％Ｒ・Ｈの
条件下で２日間放置し、ゼラチン層および乳剤層
のホルマリンによる硬化を促進させた。 以上のようにして得られた平版印刷版材料を像
露光した後、銀錯塩拡散転写現像処理して銀画像
を形成させ平版印刷版を得、この平版印刷版をオ
フセツト印刷機に装着し、版面を不感脂化液で処
理した後印刷をした。その結果を次表に示した。

【表】 上記表から明らかなように裏面のポリエチレン
樹脂層に高密度ポリエチレン樹脂を配合した本発
明の平版印刷版材料は、搬送性および耐刷性に優
れていることが分かる。これに対し比較の高密度
ポリエチレンを配合しない平版印刷版材料は本発
明と同様に裏面ポリエチレン樹脂表面を粗面にし
ているが、搬送性、耐刷性共に不良である。 実施例 ２ 実施例１の試料No.3と同一の本発明の平版印
刷版材料を作つた。比較として裏面のポリエチレ
ン樹脂層面を型付ロールで粗面化する代りに、平
滑なポリエチレン表面を次の組成液で塗布し粗面
とする以外はこれと同一の構成を有する平版印刷
版材料を作つた。 ゼラチン 50ｇ シリカ（平均粒径７μ） 10ｇ ホルマリン（12％水溶液） ６ｇ サポニン 2.5ｇ 水を加えて全量を１Kgにする。 得られた２種の平版印刷材料を実施例１と同様
にして処理し、製版し、印刷した結果、比較は (1) シート状の場合に下部の印刷版材料表面にス
リ傷を生じ、スレカブリが発生、 (2) 長尺ロール状及び重ねシート状で３カ月間保
存したところ、下部印刷版材料の写真特性が軟
調化、 (3) 製版後、湿つた状態で印刷版を複数枚重ねて
12時間放置したところ、下部の印刷版材料は印
刷時のインキ乗りが部分的に乗らなくなるかあ
るいは乗りが大変遅れるという不都合が生じ
た。 これに対し、本発明の平版印刷材料はこれらの
不都合がほとんどあるいは全くなく良好であつ
た。又、搬送性および耐刷性については本発明、
比較ともに同等であり、良好であつた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 紙基体の両面にポリエチレン樹脂層を被覆し
   てなる支持体上に印刷画像形成層を設けた平版印
   刷版材料において、印刷画像形成層を有する側の
   反対側のポリエチレン樹脂層に、 比重0.926以上の高密度ポリエチレン樹脂を該
   層中のポリエチレン樹脂の合計量に対し、約20重
   量％以上配合し、かつ該ポリエチレン樹脂層表面
   を粗面としたことを特徴とする平版印刷版材料。