JPS6242727B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は回転工具の径方向切込み制御方法及
び装置に関するもので、特にマシニングセンタの
ような数値制御工作機械において、寸法精度を必
要とする穴ぐり加工、穴内の溝切り加工、テーパ
穴加工等に極めて有用な中ぐり用回転工具の径方
向切込み制御方法及び装置に関するものである。

従来、例えばマシニングセンタのような数値制
御工作機械において、工具刃先の径方向切込みを
制御する場合には、主軸に偏心機構を内蔵し、こ
の偏心機構を介して工具刃先を径方向に移動させ
て、これを行つていたが、このような方式では、
主軸に大きな径の偏心内孔をほぼ全長に亘つてあ
けなければならないので、その機械加工が困難で
あることに加えて、主軸の剛性の低下を来たすの
で、剛性を維持するために主軸径を大きくしなけ
ればならないという難点が生ずる。

このような点にかんがみ、主軸内に偏心機構を
設けず、工具保持具内に偏心機構を設け、この工
具保持具を主軸の先端部に嵌着し、サーボモータ
により回転制御される主軸頭内に設けた差動機構
を介して主軸と同期回転しかつ切込み制御軸をこ
の工具保持具の基準角度位置（円周方向原点位
置）においてその偏心機構と係合し、サーボモー
タにより切込み制御軸及び偏心機構を介して工具
保持具に保持された工具の径方向の刃先位置を基
準角度位置からの回転角数値制御により制御可能
とした回転工具の径方向切込み制御方法をこの発
明の出願人が既に提案している。

しかし、従来の回転工具の径方向切込み制御方
法及び装置は差動歯車機構が主軸頭本体に取付け
られており設計上の制限があるため、装置が大き
くなる憾みがあり、径方向制御を必要としない場
合にも差動機構が回転しているため、軸受その他
の部分の寿命、機械の振動、熱の発生、精度、剛
性に悪影響を及ぼす難点があり、無駄なエネルギ
ーを必要とした。また工具刃先の切込み送り機構
が主軸内部又は工具保持具内に設けた偏心機構に
よるため切込み送り指令と工具刃先の径方向切込
み量とがリニアでない即ち切込み指令パルス数と
刃先の径方向移動量とが比例しないといううらみ
があつた。

この発明は以上にかんがみてなされたもので、
上記の従来のものの欠点を除去した回転工具の径
方向切込み制御方法及び装置を提供することを目
的とし、差動機構を主軸頭内ではなく、主軸に嵌
着される工具保持具内に遊星歯車機構として設け
ることにより、本機側の切込み送り制御機構を簡
単にし、径方向制御を必要としない場合本機側は
差動機構の影響を受けないようにし、省エネルギ
ーを図つたものであり、また切込み送り機構に偏
心機構でなく、単純なカム機構を用いることによ
り工具刃先の切込み制御がリニアとなるようにし
て、プログラミングの単純容易化を計つたもので
ある。

以下、この発明をその実施例を示す図面の第１
〜３図に基づいて説明する。

第１図に示すように、主軸頭１に回転可能に装
架され、慣用手段で加工のための回転を与えられ
る主軸２の先端穴２ａには工具保持具１０が嵌着
されるように、工具保持具本体１１は、主軸に嵌
着される後部には貫通穴を有するシヤンク１２と
プルスタツド１３を具えていると共に、前部先端
面にはスライダ１４を例えは第２図に示すように
あり溝形摺動部を介して径方向に摺動自在に装架
している。スライダ１４は図示のように先端にボ
ーリングバー１５を着脱可能に取付け、ボーリン
グバー１５の先端の穴ぐり工具刃先１５ａはスラ
イダ１４の径方向の移動によつて切込み送りをす
るようになつている。シヤンク１２及びプルスタ
ツド１３の軸心に設けた貫通穴を通つて工具保持
具本体１１の中心には後端に係合部１６ａを有す
る連結軸１６が回転可能に軸支され、連結軸１６
は先端にボールねじ１７をピンもしくはキー等を
利用して一体的に連結し、ボールねじ１７にはボ
ールナツト１８が螺合し、このナツト１８の外周
には先端に円錐部１９を回転可能に支持するスラ
イド歯車２０がキーにより嵌合して固着されてお
り、従つてこのスライド歯車２０はその回転が阻
止されると、ボールねじ１７の回転により軸方向
にナツト１８と共に移動し、その移動に伴つて円
錐部１９も一体となつて軸方向に移動されるよう
になつている。

スライダ１４の工具保持具本体１１の中心腔内
に延長した軸方向延長部１４ａは円錐部１９の外
側にまで延長し、スライドピン２１を介して円錐
部１９の外周に接し、この延長部１４ａは第３図
に示すように、本体１１に設けた例えば皿ばねの
ようなばね部材２２によつて常に径方向に求心的
に押され、円錐部１９の外周に押し着けられてい
る。

工具保持具本体１１内に連結軸１６と平行して
回転可能に軸支された回転軸２３の一端にスライ
ド歯車２０と噛合う小歯車２４が固着され、回転
軸２３の他端に固着された小歯車２５は小歯車２
４と同一歯数の歯車であり、工具保持具本体１１
に連結軸１６と同心に装架された歯車２６と噛合
つている。歯車２６はスライド歯車２０と同一歯
数を有し、工具保持具本体１１とは相対的に回転
可能な固定ケース２７に固着され、このケースと
共に回転可能に本体１１上に装架され、シヤンク
１２に近く位置しており、これらが全体として遊
星歯車機構を構成している。ばね２８ａにより軸
方向に押されたピン２８を装架し、工具保持具１
０が主軸２の先端穴２ａに嵌着された時、ピン２
８の先端が主軸頭１に設けた溝付係止金具２８ｂ
の溝と係合するようになつている錠止め機構２９
が固定ケース２７上に設けられ、ピン２８と共に
軸方向に平行して移動するロツクバー３０によつ
て、工具保持具が主軸から脱離した時は、固定ケ
ース２７は工具保持具本体１１にシヤンク１２の
フランジ部において切欠溝１２ａにロツクバー３
０の先端が嵌入することにより歯車２６をシヤン
ク１２に錠止めするようになつている。

このように構成された工具保持具１０は緊締機
構によつて、主軸２の先端穴２ａに緊締（クラン
プ）されるが、緊締機構は主軸貫通穴内に配置さ
れたドローバー３によつて移動されるボール４、
ドローバー３をナツトピース５を介して後方へ押
す多数の皿ばね６、主軸頭１に取付けられた工具
緊締用シリンダ７内を摺動してナツトピース５を
前方へ押す作用をするピストン８等の公知の部材
からなつている。

ドローバー３の貫通穴３ａ内には切込み制御軸
３１が設けられ、この切込み制御軸３１は回転可
能かつ軸方向へ移動可能に軸支され、先端に工具
保持具１０の連結軸１６の係合部１６ａに係脱可
能な係合部３１ａを有し、ドローバー３、ナツト
ピース５、ピストン８を貫通して後方に延長し、
切込み制御軸軸方向係脱駆動用シリンダ３２内を
摺動可能なピストン３３に取付けられ、更に後方
に延長して、この切込み制御軸３１の後端はサー
ボモータ３４によつて回転駆動されるように、こ
のサーボモータ３４に連結部材３４ａにより摺動
キー３４ｂを介して往復動可能に連結されてい
る。軸方向係脱駆動用シリンダ３２とサーボモー
タ３４との間には切込み制御軸３１の回転方向の
原点確認スイツチ３５、前進、後退位置確認近接
スイツチ３６，３７を設けている。

次ぎに、工具保持具１０の装着時の動作を説明
する。

工具交換指令が出されると、主軸２は主軸頭１
後部に設けられた回転角度基準位置検出器３８，
３９の検出信号によつて定位置に割出され、主軸
２の先端のキー４０が一定位置に位置決めされ
る。またサーボモータ３４により、切込み制御軸
３１は原点に位置決めされ、原点確認スイツチ３
５でこれが確認される。切込み制御軸３１は係脱
駆動用シリンダ３２により係合はずし位置にあ
る。すなわちピストン３３は第１図で見て右端に
後退して近接スイツチ３７が確認信号を出力して
いる。ドローバー３は工具緊締用シリンダ７のピ
ストン８が左端にくることによつて前方に押され
アンクランプの位置にある。主軸２に嵌着される
前の工具保持具１０においては固定ケース２７が
本体１１に係合し固定されていて工具刃先１５ａ
は径方向原点位置に錠止めされており、スライド
歯車２０は回転を阻止されている。

工具保持具１０は図示しない公知の自動工具交
換装置によつて自動的に主軸２の先端のキー４０
に工具保持具１０の溝４１が入るように位置決め
され、シヤンク１２、プルスタツド１３が主軸２
の先端穴２ａに嵌着される。ドローバー３はピス
トン８の右端への後退と、皿ばね６の弾力により
緊締状態になりボール４がプルスタツド１３を保
持し、工具保持具１０を緊締する。切込み制御軸
３１は係脱駆動用シリンダ３２のピストン３３が
左方に前進して係合状態（第１図の状態）にな
り、係合部３１ａと連結軸１６の係合部１６ａと
が係合連結され近接スイツチ３６より連結確認信
号が出力される。また錠止め機構２９はピン２８
の先端が主軸頭１に固着された溝付係止金具２８
ｂの溝に係合して後退し、固定ケース２７は工具
保持具本体１１との係合をロツクバー３０の左方
向移動により解かれ、主軸頭１と係合して回転を
阻止される。

この発明による径方向切込み制御は次のよう
に、円錐部１９のカム機構によつて行われる。サ
ーボモータ３４によつて切込み制御軸３１が回転
されると、係合部３１ａ，１６ａを介してこれに
連結された連結軸１６従つてボールねじ１７が回
転されるので、ボールねじ１７に螺合するボール
ナツト１８及びこれに固着されたスライド歯車２
０は遊星歯車機構によりその回転が阻止されてい
るのでねじの軸方向に移動される。従つてスライ
ド歯車２０に回転可能に装架された円錐部１９も
軸方向に移動し、これによりばね部材２２によつ
て円錐部の外周に押着けられているスライダ１４
が径方向に移動され、その移動量が直接工具切刃
１５ａの切込み送り量となる。円錐部１９が前方
に押されると、スライダ１４は径方向外向きにば
ね部材２２の力に抗して摺動され、円錐部が後方
に移動するとスライダはばね部材２２によつて押
されて、径方向内向きに摺動する。

小歯車２４，２５及びスライド歯車２０、歯車
２６からなる遊星歯車機構を介し、歯車２６が固
定ケース２７を介し主軸頭１に錠止め機構２９に
よつて係止されて回転を阻止（主軸の回転にかか
わらず）され、従つてスライド歯車２０も回転が
阻止され、サーボモータの回転により円錐部１９
は直接比例移動するので、ボールねじのピツチと
円錐部のテーパとを適宜に選定することにより、
サーボモータの回転に関してスライダ１４の径方
向の移動量すなわち回転工具の径方向切込み量が
全移動範囲に亘つて直線的に比例して制御される
ことになる。また、円筒穴の中ぐり加工のよう
に、中ぐり工具の回転送り中に径方向切込み制御
を行なわない場合には、サーボモータ３４は主軸
回転中静止しており、従つてボールねじ１７も静
止し、更に小歯車２４，２５は回転軸２３と共
に、スライド歯車２０及び歯車２６の周りに公転
しながら自転するが、歯車２６が前述のように錠
止めされているので、スライド歯車２０も静止さ
れ、ボールねじ１７との相対移動が生ぜず、従つ
て工具刃先は移動しない。

この発明によれば、先にも記載したように差動
歯車機構がスライド歯車錠止めのために工具保持
具内に設けられているだけで、数値制御工作機械
の本機内に設けられていないので、径方向切込み
制御装置を小型かつ安価に作ることができ、省エ
ネルギー効果も顕著である。また径方向送り機構
として偏心機構を用いないで円錐部によるカム機
構を用いているので回転工具刃先位置の径方向切
込み制御とサーボモータの回転とがリニアにな
り、切込み制御のためのプログラミングが極めて
簡単で容易になるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明による回転工具の径方向切込
み制御装置の一実施例である工具保持具を装着し
た主軸頭の軸方向断面図、第２図は第１図の矢印
方向に見たスライダの部分平面図、第３図は第
１図の線−における部分横断面図である。 １……マシニングセンタの主軸頭、２……主
軸、１０……工具保持具、１１……工具保持具本
体、１４……スライダ、１６……連結軸、１７…
…ボールねじ、１８……ボールナツト、１９……
円錐部、２０……スライド歯車、２２……ばね部
材、２９……錠止め機構、３１……切込み制御
軸、３２……係脱駆動用シリンダ、３３……ピス
トン、３４……サーボモータ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 先端部に交換可能に工具保持具を嵌着して回
   転する主軸を備え、回転工具と被加工物との相対
   的移動により加工を行う数値制御工作機械におい
   て、主軸から離脱している時には径方向原点に錠
   止めされており、主軸に嵌着される時には錠止め
   が解除されて径方向位置制御可能となる工具を保
   持している工具保持具を、所定角度位置に停止し
   た主軸の先端部に嵌着すると同時に、主軸貫通穴
   に設けた緊締機構により緊締し、サーボモータに
   より回転制御されかつ前記緊締機構の貫通穴に軸
   方向移動可能に設けた切込み制御軸を、前記所定
   角度位置において前記工具保持具の工具位置制御
   機構と係合し、主軸の停止中と回転中とにかかわ
   りなく、前記工具保持具に保持された工具の刃先
   位置を前記サーボモータの回転に比例して径方向
   に直線移動制御することを特徴とする回転工具の
   径方向切込み制御方法。 ２ 先端部に交換可能に工具保持具を嵌着して回
   転する主軸を備え、回転工具と被加工物との相対
   的移動により加工を行う数値制御工作機械におい
   て、主軸に嵌着される後部に貫通穴を有するシヤ
   ンクとプルスタツドを具え前部に工具を着脱自在
   に保持したスライダを径方向に摺動自在に支持す
   る工具保持具本体、この工具保持具本体の貫通穴
   に回転自在に軸支され後端に係合部を有し先端に
   ボールナツトと螺合するボールねじを一体的に連
   結した連結軸、前記ナツトに固着され先端に円錐
   部を回転可能に支持し遊星歯車機構を介して噛合
   回転が抑止されて軸方向に移動可能なスライド歯
   車、前記スライダを常時前記円錐部に求心的に押
   圧するばね部材、及び前記工具保持具本体の外側
   に設けられて前記主軸への工具交換動作により前
   記遊星歯車機構と係脱する錠止め機構よりなる工
   具位置制御機構を備えた工具保持具と、主軸貫通
   穴に設けた前記工具保持具の緊締機構の貫通穴に
   回転自在かつ軸方向移動可能に設けられ先端に前
   記連結軸の係合部と係脱可能な係合部を具えた切
   込み制御軸、主軸後端に近接して同心に配置され
   前記切込み制御軸を軸方向に往復移動させる駆動
   機構、前記切込み制御軸を往復動可能に連結して
   回転制御するサーボモータ、及び前記切込み制御
   軸の軸方向係脱位置並びに回転方向原点位置の検
   出装置を備えた切込み制御駆動部とから構成さ
   れ、主軸の停止中と回転中とにかかわりなく、前
   記工具保持具に保持された工具の刃先位置を前記
   サーボモータの回転に比例して径方向に直線移動
   制御することを特徴とする回転工具の径方向切込
   み制御装置。