JPS624136B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は長期に亘り使用する義手、義足等の常
用義肢及び常用義肢を装着するまでの期間使用す
る仮義肢、更にはコルセツト等の治療装具等の義
肢装具を作るのに用いる義肢装具用材料に関する
ものである。

従来、常用義肢はパラフイン、ろう、石膏等に
より型を作るか、アルミ等の軽金属を板金加工す
ることにより型取りを行ない、その後プラスチツ
ク、皮革等の材料により成形している。又仮義肢
は常用義肢を装着するまでの期間用いるものであ
るから、欠損した肢体等の形状が一定になるまで
石膏包帯等を用いて成形されている。コルセツト
等の治療装具類も同様に予め石膏包帯等により型
取りした後、プラスチツクス等の材料により成形
されている。しかし、従来より使用されているこ
れらの義肢装具は、使用する材質の関係から、一
般に製造時に採型を必要とすることおよび製品重
量が大となつて着用時に重いということの大きな
欠点を有していた。また採型が必要なために、採
型から製品が出来上るまでに長期間を要し、その
間患者に不都合を感じさせ、重いということによ
り患者に対して苦痛を強いるということになつて
いた。

更に、オキシカルボニルイソシアナート基含有
樹脂を用いる整形用固定材も知られているが、か
かる樹脂を義肢装具材料に応用しようとしても反
応時間が速すぎて、保存期間中に自己架橋を起こ
して硬化し、使用時には使えなくなる等の欠点を
有している。

本発明者等はこのような従来品の欠点を克服す
べく鋭意研究した結果、肢体のどのような箇所に
ても容易に成形できる柔軟性を有し、成形中は十
分に可塑性があり、成形後は速やかに硬化し、硬
化後のトリミング、穴あけ、ボルト締め等の加工
が容易であり、長期間の使用にも十分に耐え、し
かも軽く、通気性に富む義肢装具用材料を開発し
た。

即ち本発明は、ヒドロキシル基又は活性メチレ
ン基又は第一級又は第二級アミノ基を有する高分
子化合物とオキシカルボニルイソシアナートを含
まない多官能性イソシアナートとを反応させて得
られる―NCO基を有するプレポリマー10〜70重
量％と分子中に２個以上の―NCO基を有する低
粘度のイソシアナート単量体又はオリゴマー90〜
30重量％とからなる樹脂組成物を柔軟な支持体に
付着せしめてなる水で硬化しうる義肢装具用材料
に関する。

該材料は、ロール状に巻かれるか又はピース状
に成形されて義肢装具用材料として供されるが、
この状態でも十分に柔軟で可塑性を有している。
使用に際し該材料は、水又は温湯に浸されるが、
水に接触するとクリーム状になつて、極めて柔軟
となり、どのような形状にも容易に成形可能とな
る。クリーム状態は、―NCO基を有する重合体
と水とが発泡反応を開始したことを意味してお
り、続いて架橋反応が行われ、硬化が起る。従つ
て、本発明による義肢装具用材料は、発泡構造を
有する架橋反応した樹脂と支持体とが一体化され
て硬化するものである。故に軽く通気性に富み、
加工が容易であるばかりでなく、従来の材料と同
等以上の耐久性を発現させることができる。又水
との反応を、使用する重合体、樹脂組成、水の温
度、触媒等により制御することができるため、硬
化時間を任意に選択できる。成形品としての強度
は、該樹脂組成、該支持体の構成素材、三次構
造、該樹脂組成物の付着量、該材料の使用量等に
より任意に調整できる。

本発明で用いられるヒドロキシル基又は活性メ
チレン基又は第一級又は第二級アミノ基を有する
高分子化合物としてはポリエーテルポリオール、
ポリエステルポリオール、ポリアミン等の活性水
素を有する高分子化合物が挙げられ、単独又はこ
れらの混合物で用いられる。

本発明において上記高分子化合物は第三級アミ
ノ窒素を含む高分子化合物は適用されない。

本発明で用いられるオキシカルボニルイソシア
ナートを含まない多官能性イソシアナートとして
はヘキサメチレンジイソシアナート、トリレンジ
イソシアナート、キシリレンジイソシアナート、
４，4′―ジフエニルメタンジイソシアナート、
１，５―ナフタレンジイソシアナートなどが挙げ
られ、単独又はこれらの混合物が用いられる。

又、本発明で用いられる該多官能性イソシアナ
ートとしては、加熱等の後処理により簡単に―
NCO基を発現させることのできる保護剤で一部
の―NCO基を保護してある少なくとも一つの―
NCO基を有する上述のイソシアナート等の誘導
体を用いることができる。

前記高分子化合物と上記多官能性イソシアナー
トを反応させて得られるプレポリマーとしては前
記高分子化合物中のヒドロキシル基、活性メチレ
ン基、第一級又は第二級アミノ基の一部又は全部
が上記多官能性イソシアナートと反応して得られ
るポリウレタン系プレポリマー、尿素系プレポリ
マー等が挙げられ、少なくとも該プレポリマー中
に―NCO基又は保護剤で保護されたイソシアナ
ート基を有していることが必要である。

該プレポリマー中の―NCO基又は保護剤で保
護されたイソシアナート基の数は特に制限される
ものではなく用途に応じて上記高分子化合物及び
多官能性イソシアナートの種類、添加量等により
コントロールすることが出来るが、該プレポリマ
ー中に―NCO基又は保護剤で保護されたイソシ
アナート基の数は、該プレポリマー単位重量当り
のNCO重量換算で３〜70重量％が好ましく、特
に好ましくは４〜50重量％である。又、該プレポ
リマーの分子量が200〜10000の液体であるものが
好ましい。

本発明における、後処理により―NCO基を発
現せしめる保護剤は多官能イソシアナートの一部
の―NCO基あるいは前記プレポリマー中の―
NCO基を一時的に保護するもので、本発明で得
られた義肢装具用材料を使用する時に加熱等の簡
単な処理により容易に―NCO基を再生すること
ができる保護剤であるが、加熱等の処理により―
NCO基から解離すること及び解離した化合物の
毒性の点から保護剤としては第三級アルコール、
ラクタム、エノール等が好ましい。

本発明における前記プレポリマーあるいは前記
プレポリマー誘導体は親水性であることが、義肢
装具用材料としての機能を十分に発現させる意味
から好ましい。

本発明においては前記プレポリマーあるいは前
記プレポリマー誘導体に、分子中に２個以上の―
NCO基を有する低粘度のイソシアナート単量体
又はオリゴマーを添加するが、これにより該重合
体の粘度を低下させ、作業を改善することが可能
となるばかりでなく、該イソシアナート化合物を
適宜に選択することにより、生成する樹脂中の架
橋構造を選定することが可能となり、且つ製品の
強度を自由に制御することが可能となる。かかる
イソシアナート化合物としては、例えばヘキサメ
チレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナ
ート、４，4′―ジフエニルメタンジイソシアナー
トなどの単量体またはオリゴマー（好ましくは５
量体以内）をあげることができ単独又はこれらの
混合物が用いられる。

本発明の樹脂組成物は、前記プレポリマー又は
前記プレポリマー誘導体及び前記イソシアナート
単量体又はそのオリゴマーとからなるが、顔料、
充填剤、―NCO基の反応を制御するための触
媒、親水性を向上させるための界面活性剤等の添
加剤を必要に応じて加えることもできる。かかる
添加剤は樹脂組成物のポツトライフ等を考慮して
使用しなければならない。該樹脂組成物中に占め
る前記プレポリマー又は前記プレポリマー誘導体
の割合は、使用時の作業性及び最終成形品の性能
から10重量％以上であることが必要であり、特に
好ましくは30重量％である10重量％以下では硬化
時間が長くなりすぎたり、最終成形品に耐久性を
付与すること、即ち曲げ硬さにおいて10Kg／cm²以
上の強度を発現させることが困難となる。又、上
限は70重量％以下であることが必要で、それ以上
では発泡反応、硬化反応が急激に起り、高い発熱
を伴なうため使用が困難となる場合があり、更に
は最終成形品に可撓性が発現する場合があり好ま
しくない。

本発明に使用する柔軟な支持体は、前記樹脂組
成物を付着させることが出来、かつ患部の肢体等
を被覆するに十分な柔軟性を有していることが必
要であり、通常の編織物はもちろん、各種不織
布、フイルム等のシート状又は筒状の形態のもの
が用いられる。

このようなシート状物又は筒状物を構成する繊
維又はフイルムは木綿等の天然繊維、レーヨン等
の再生繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊
維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビ
ニルアルコール繊維等の合成繊維または重合体フ
イルムからなる。該支持体の目付は、本発明品の
使用用途、樹脂組成、支持体の組成、構造等によ
り適宜選定すればよいが、柔軟性を特に必要とす
る場合は1000〜20ｇ／m²のものが好適である。

該樹脂組成物を該支持体に付着させるには、通
常の方法、例えば含浸法、ロールコート法、転写
法が用いられる。該樹脂組成物の付着量は50％
owf〜1000％owfが最適であり、50％owf以下で
は、製品としての強度を発現できず、1000％owf
以上では作業が困難となる。こうして得られた義
肢装具材料はシート状あるいは筒状のまま又はそ
れらをロールに巻いて後、水分を遮断するように
密閉容器、袋等に保管され使用に供される。密閉
容器、袋等に保管された義肢装具用材料は、使用
時に取り出され水又は湯、好ましくは30〜45℃の
温湯に浸漬され、十分に水が浸透した後、軽く絞
り、義肢装具類の成形に供される。

この場合、―NCO基と水との反応を促進させ
るために、水又は湯中に、炭酸ナトリウム等の水
をアルカリ性にする物質、第三級アミン、スズ化
合物等イソシアナートの活性化剤を添加すること
もできる。

なお、分子中の―NCO基を保護し、イソシア
ナート再生体とした重合体を含む樹脂組成物を用
いて得た義肢装具用材料の場合には、使用前に加
熱し、分子中に―NCO基を発現せしめて後、水
又は温湯に浸漬して使用する。

下記実施例中、部は重量部を意味する。

実施例 １ 15cm巾にスリツトしたガーゼにEGH―401（三
井日曹ウレタン社製ポリエーテル系ポリウレタン
プレポリマー）60部、４，4′―ジフエニルメタン
ジイソシアナート40部からなる樹脂組成物を、デ
イツプ―ニツプ方式により500％owf付着させ、
ロール状に巻き、義肢装具用材料を得た。この材
料をポリエステルフイルム―アルミ箔―ポリエチ
レンフイルムの積層体からなる密閉袋に入れて保
管した。３ケ月後、義肢装具用材料を袋から取り
出し、40℃の温湯に１分間浸した後、軽く手で絞
り、仮膝義足の外ソケツトを該材料が13〜15層に
なるように内ソケツトにそつて巻きつけ作製し
た。この時の硬化時間は約10分であつた。

尚内ソケツト及び断端末受には通常使用されて
いるスポンジフエルトを使用し、下腿部にはアル
ミニウム合金を使用した。又足部は継手つき遊動
足部を使用した。作製した仮膝義足は従来品に比
較して約2/3程度の重量であり、耐久性も十分で
あつた。

尚参考までに、別途外ソケツト対応品を作成
し、厚さ、目付、曲げ硬さを測定した結果、それ
ぞれ5.0mm、3000ｇ／m²、9.0Kg／cmであつた。

実施例 ２ 1.5d×38mmのポリエステル繊維からなる、接着
剤を使用せず繊維を交絡させることにより十分な
強力を発現させた目付48ｇ／m²の有孔不織布に、
実施例１で用いたと同様の樹脂組成物をロールコ
ート方式にて300％owfになるように付着させ
て、ロール状に巻きつけ、実施例１で用いたのと
同じ袋に入れ密閉保管した。６ケ月後、この義肢
装具用材料を袋から取り出し、１％の炭酸ナトリ
ウムを含む30℃の温湯に約５秒間浸漬し、軽く絞
つた後、背椎矯正用のコルセツトを作製した。作
製にあたり、装具を必要とする箇所を予めサラン
ラツプ等で被覆し、その上から該材料が７〜８層
になるように巻きつけて硬化させたのち、２ケ所
で切開してトリミングし、脱着可能な装具を取り
付けてコルセツトを作製した。この時の硬化時間
は約８分であつた。

このものは型取りを必要とせず、従来のものに
比して約２割程軽量化でき、しかも通気性を有し
耐久性のあるものであつた。

実施例 ３ アジピル酸213部、テトラエチレングリコール
340部を、窒素置換しながら酸価が５以下になる
まで撹拌しつつ、常法により、エステル化反応を
行つた。得られたエステル化合物200部にトリレ
ンジイソシアナート17.4部を加えて反応を進行さ
せ、NCO価3.6％のポリエステル系ポリウレタン
プレポリマーを得た。

このポリエステル系ポリウレタンプレポリマー
30部、EGH―401 30部、４，4′―ジフエニルメ
タンジイソシアナート40部、プルロニツクＬ―64
（旭電化工業社製非イオン系界面活性剤）４部か
らなる樹脂組成物を、実施例２で用いたと同様の
目付60ｇ／m²の有孔不織布に、450％owfになる
ようにデイツプ―ニツプ方式にて付着させ、シー
ト状にて実施例１で用いたのと同じ袋に入れ密閉
保管した。６ケ月後、袋から取り出し、１％の炭
酸ナトリウムを含む40℃の温湯に、10秒間浸漬し
た後、軽く手で絞り、常用膝義足の外ソケツトを
作製した。内ソケツト及び断端末受にスポンジフ
エルトを使用し、その内ソケツト及び下腿部に使
用するアルミニウム合金にそつてシート状にした
義肢装具用材料を15層になるようにまきつけた。
硬化（約８分）後トリミングし、足部をつけて常
用膝義足を作製した。

このものは従来品の約3/5程度の重量しかなく
軽く丈夫であつた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ヒドロキシル基又は活性メチレン基又は第一
   級又は第二級アミノ基を有する高分子化合物とオ
   キシカルボニルイソシアナートを含まない多官能
   性イソシアナートとを反応させて得られる―
   NCO基を有するプレポリマー10〜70重量％と分
   子中に２個以上の―NCO基を有する低粘度のイ
   ソシアナート単量体又はオリゴマー90〜30重量％
   とからなる樹脂組成物を柔軟な支持体に付着せし
   めてなる水で硬化しうる義肢装具用材料。 ２ 多官能性イソシアナートが、後処理により―
   NCO基を発現せしめる保護剤で一部の―NCO基
   が保護された少なくとも一つ以上の―NCO基を
   有するイソシアナートである特許請求の範囲第１
   項記載の義肢装具用材料。