JPS6233053Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は車両用エンジンのクランクケース内
に漏出するブローバイガス主として、シリンダヘ
ツドカバーを経て吸気側に還流するブローバイガ
ス中のオイルを分離してこれをエンジンに戻すよ
うにした分離装置に関する。

車両用のエンジンでは排気処理の対策上、クラ
ンクケース内に生じるブローバイガスをそのまま
外部に放出することなくエアクリーナを介しまた
は介さず直接に吸気マニホールドに導き、吸入混
合気と共に再燃焼させると同時にガス中に含まれ
ているオイルを回収してオイルの損耗を防ぐよう
にしている。

そして、これまでにこの種の装置として、エン
ジンのブリーザ孔とエアクリーナまたは吸気マニ
ホールドとの間を結ぶ管路中に室を設け、この室
の内部に回転翼を設け、室の下部外周にはエンジ
ンのブリーザ孔に連通する入口管体を開口させる
と共に上部外周にはエアクリーナまたは吸気マニ
ホールドに連通する出口管を開口させ、室の外周
にはフイルターとオイル溜り室とを室を包囲する
ように配設し、オイル溜り室をオイルパンまたは
ストレーナ部に連通させたものが実開昭56−
25009号により提案されており、また、クランス
ケースに立設されたミストパイプの途中に、ミス
トの排出流により回転するフアンを備えると共に
このフアンの周囲においてパイプ内に開口する油
溜室を形成し、この室の底部とクランスケースと
の間には戻油管を接続し、かつパイプ中にはフア
ンと一体的に回転するドラムを設け、その周面に
は回転速度を識別するための模様を付すと共にパ
イプ側壁には監視窓を設けたものが実開昭−55−
94414号によつて提案されている。

ところで、前者の実開昭56−25009号の装置で
は、ブローバイガスの入口管体と出口管体が共に
室の外周に取付けられているが、回転翼が回転す
る室内は中心部が負圧に、周辺部は正圧になる筈
であるから、ともに正圧になる入口管体の部分か
ら出口管体の部分までブローバイガスを素直に導
くことは難しく、翼形や回転方向などを特別に配
慮する必要があり、そして、回転翼は板状のもの
なので、流入するガスはつれ回り状態になり、回
転翼に衝突する機会は少なくオイルの捕捉率が低
く、回転翼自体ではオイル粒子の大形化は図れ
ず、そのため、室の外周に特別のフイルタを必要
としている。また、室内のガスはエアクリーナ側
負圧で吸引排出されるのであるが、出口管体は室
の周辺部に設けられているため、回転翼によつて
生じる吸引力で相殺され、排出能力は低下してし
まい、しかも回転翼の中心部分はオイルの分離や
ガスの導出にほとんど役に立つていない。また、
後者の実開昭55−94414号の装置は、ミストパイ
プの途中にガス流で回転されるフアンを設けただ
けで、単にフアンに付着したオイル粒子を外方に
跳ね飛ばすにすぎないものであり、ガス流で回転
させられるフアンでは軸心部と周辺部間に圧力差
は生ぜず、パイプ中の圧力差を利用してガスとオ
イルを分離する機能は備えていない。そこで、こ
の考案はブローバイガスが羽根とつれ回りするこ
となく、オイルの衝突が確実で捕捉効率が高く、
しかもケース内に生じる圧力勾配を利用してガス
とオイルの分離を促進するように改良したブロー
バイガス中のオイルの分離装置を提供するもので
あり、下壁の一側中央部にブローバイガスの入口
パイプを設け、外端部にオイルの戻しパイプを備
えると共に上壁中心寄りの位置に出口パイプを設
けた中空円盤状のケースの内部に金網を張設した
複数の羽根を放射状に配設し、それらの基端部
を、ケースの中心部に回動自在に架設され下端部
が駆動機に連結された縦軸に取付け、上記入口パ
イプおよび戻しパイプをシリンダヘツドカバーに
設けた第１パイプおよび第２パイプにそれぞれ接
続すると共に上記出口パイプをエアクリーナに接
続したことを特徴としている。

そして、駆動機の始動により羽根が高速に回転
し、ケース内は中心部が負圧で周辺部が正圧の状
態になり、したがつて、クランクケースからシリ
ンダヘツドカバーに出た大気圧に近いブローバイ
ガスは第１パイプおよび入口パイプを通つてケー
スの中心部に向つて流入する。

その際、ガス中に含まれているオイル粒子は金
網羽根の回転により旋回するが、羽根とつれ回り
することなく、やや遅れぎみに網目をくぐり抜け
る状態になつて羽根によく衝突して捕捉され、捕
捉オイルは羽根の遠心作用で周辺部に向い、その
過程で凝集し大粒化して羽根先端から飛散し、外
周部の油路に入り戻しパイプおよび第２パイプを
通つてエンジンに戻る。

一方、オイルの除去されたブローバイガスは羽
根の回転とエアクリーナの影響で負圧になつてい
る中心部を通り抜け、出口パイプを通じてエアク
リーナ側に流れていく。

図面参照の上その実施例について説明すれば、
第１図および第２図において１は合成樹脂からな
り、中高な中空円盤状のケースであつて、その下
壁の片側には、中央部にブローバイガスの入口パ
イプ１ａが設けられると共に外端部にオリフイス
１ｄを備えたオイル戻し用のパイプ１ｂが設けら
れ、その反対側の上壁中心寄りの位置にはブロー
バイガスの出口パイプ１ｃが設けられ、また、下
壁の外周縁にはオイル戻しパイプ１ｂに向つて傾
斜した樋状の油路１ｅが形成されており、その内
部には線材の枠２ａに金網２ｂを張設した複数の
羽根２が放射状に配設され、それらの基端部はケ
ース１の中心部に軸受部材４を介して下方に貫通
させて回動自在に架設し縦軸３に定着されてい
る。

そして、ケース１は第３図のようにブラケツト
５を介してエンジンＥのシリンダヘツドカバーＣ
上に取付けられ、縦軸３の下端部はシリンダヘツ
ドカバーＣの側部に配設したモータなどの駆動機
６に連結されている。

一方、エンジンＥのシリンダヘツドカバーＣの
上壁にはブローバイガスの出口用の第１パイプ７
ａとオイル戻し用の第２パイプ７ｂとが設けら
れ、それらのパイプ７ａ，７ｂはホース８ａ，８
ｂを介してケース１の入口パイプ１ａおよび戻し
パイプ１ｂに接続され、また、ケース１上の出口
パイプ１ｃはホース８ｃを介してエアクリーナＡ
のダーテイーサイドに接続されている。

なお、９はエンジンＥのクランクケースａ内の
ブローバイガスの一部を制御弁９ａを介して吸気
管Ｋに直接還流するようにしたパイプである。

そこで、エンジンＥを作動し、かつ駆動機６を
駆動すれば、エンジンＥの作動によりクランクケ
ースａ中に漏出したブローバイガスの一部は上記
のパイプ９を介して直接吸気管Ｋ側に戻され、残
部はエンジンＥ中のポートｂを経てシリンダヘツ
ドカバーＣ中に入るが、この場合、ブローバイガ
スの圧力はほぼ大気圧程度になつており、したが
つて、シリンダヘツドカバーＣ上の第１パイプ７
ａ、これに連なるケース１の入口パイプ１ａ中も
これと同じ圧力を呈し、そして、ケース１中にお
いては縦軸３を介しての羽根２の高速回転（1000
〜2000r.p.m程度）により、旋回気流が成生され
その中心部は負圧で周辺部は正圧になつており
（ただし、これはオイル戻しパイプ１ｂ中のオリ
フイス１ｂによつてシリンダヘツドカバーＣ中に
は影響しない、そして、ケース内の正負の圧力勾
配はオリフイス１ｄによつて確実に維持され
る）、また、エアクリーナＡに連なるケース１上
の出口パイプ１ｃ内の圧力はエンジンＥの吸気作
用の影響で大気圧より若干低くなつている。

そのため、シリンダヘツドカバーＣ中に入つた
ブローバイガスは第１パイプ７ａを通つて入口パ
イプ１ａからケース１の中心部に向つて入ること
になり、その際、ガス中に含まれている比較的大
きなオイル粒子はそのまま旋回気流にのつて旋回
するから遠心力をうけて周辺部に移行し、また、
細かなオイル粒子は羽根２にぶつかつて金網２ｂ
に捕捉され、これが次第に凝集して羽根２の遠心
作用で外方に流動し、遂には羽根２の先端から飛
び散らされ、いずれもケース１の周辺壁に付着
し、油路１ｅを伝わつて戻しパイプ１ｂから出
て、シリンダヘツドカバーｃ上の第２パイプ７ｂ
を通つてエンジンＥ中に戻される。

一方、上記のようにしてオイル分の除去された
ブローバイガスは中心部の負圧とパイプ１ｃを介
してのエアクリーナの負圧によりケース１上の中
心寄りにある出口パイプ１ｃを通つてエアクリー
ナＡに流入し、適宜浄化作用を受けて再び吸気管
Ｋ側に送り込まれる。

この場合、金網を張設した羽根としたことによ
り、旋回するガス流は、羽根とつれ回りすること
なく遅れて網目をくぐり抜けながら追従すること
になり、浮遊オイル粒子の羽根に衝突する機会が
多く、それだけ捕捉効率が高まり、オイルの分離
が充分に行われる。また、この捕捉作用は羽根の
全面積にわたつて行われ、かつ捕捉されたオイル
粒子は順次に羽根の先端にまで伝わる間に充分に
大粒子化される。

なお、第４図はケース１の下壁を外側に向つて
下方に傾斜させると同時にその周縁部をオイル戻
し用のパイプ１ｂ側に向つて漸次傾くようにし
て、樋状の油路を設けることなく、周辺壁に付着
したオイルをパイプ１ｂ側に流れるようにした変
形例を示すものであるが、ブローバイガスからオ
イルを分離する機能は上述のものと変りがない。

この考案では上記のように、ブローバイガスの
入口パイプをケースの下壁中央部すなわち負圧状
態になるケース内中央部に連設したので、羽根の
回転により大気圧に近いブローバイガスは中心に
向わせ、オイル粒子は周辺部に向わせる機能を充
分に発揮させることができ、また、出口パイプを
上壁中央寄りの位置に設けたのでエアクリーナ負
圧とケース内の中心部負圧の相乗作用でガスの排
出を混乱なく円滑に行うことができ、そして、羽
根を金網としたので、ガス流は羽根とつれ回りせ
ず、旋回が遅れて網目をくぐりながら追従するこ
とになり、羽根との衝突回数が多くなつてオイル
粒子の捕捉効率が高く、しかも、フイルタ部材な
どを必要とせずオイル凝集させることができ、オ
イルの分離効果を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係る分離装置の断面図。第
２図はその平面図。第３図はこの考案の実施例の
側面図、第４図は分離装置の変形例の断面図。 図中、１……ケース、１ａ……入口パイプ、１
ｂ……戻しパイプ、１ｃ……出口パイプ、２……
羽根、２ａ……枠、２ｂ……金網、３……縦軸、
４……軸受部材、６……駆動機、７ａ……第１パ
イプ、７ｂ……第２パイプ、Ａ……エアクリー
ナ、ａ……クランクケース、ｂ……ポート、ｃ…
…シリンダーヘツドカバー、Ｅ……エンジン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 下壁の一側中央部にブローバイガスの入口パイ
   プ１ａを設け、外端部にオイルの戻しパイプ１ｂ
   を備えると共に上壁中心寄りの位置に出口パイプ
   １ｃを設けた中空円盤状のケース１の内部に金網
   ２ｂを張設した複数の羽根２を放射状に配設し、
   それらの基端部を、ケース１の中心部に回動自在
   に架設され下端部が駆動機６に連結された縦軸３
   に取付け、上記入口パイプ１ａおよび戻しパイプ
   １ｂをシリンダヘツドカバーｃに設けた第１パイ
   プ７ａおよび第２パイプ７ｂにそれぞれ接続する
   と共に上記出口パイプ１ｃをエアクリーナＡに接
   続してなるブローバイガスにおけるオイルの分離
   装置。