JPS6229180Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は消耗電極式自動溶接機において溶接開
始時に生じる電極の母材への突込み現象を防止し
円滑なる溶接を行えるようにした制御装置に関す
る。

更に詳細には、消耗電極式自動溶接機におい
て、溶接電源と電極との間にコンデンサと可変抵
抗から成る微分回路を介設することによつて、電
極の溶融速度と電極の送給速度とを近似的に一致
させ、溶接開始時に生じる電極の母材への突込み
現象を防止し円滑なる溶接を行えるようにした制
御装置に関するものである。

（従来の技術） 従来一般に使用されている消耗電極式自動溶接
機の制御装置としては、例えば第１図のブロツク
回路図に示すようなものが知られている。電源１
ａは、トランスとサイリスタと点弧パルスジエネ
レータからなる溶接電源調整装置２と同様の構成
からなる電極送給電源調整装置３にスイツチＳを
介して接続される。溶接電流用設定電源１ｂは可
変抵抗４で所定の値に設定され、溶接電源調整装
置２を介してチツプ５と母材６に接続される。チ
ツプ５の中央部をワイヤー状の電極７が接触通過
するため、電源１ｂの電圧は電極７と母材６との
間に印加される。設定用電源１ｃは電動機用のも
のであり、リレー接点８、可変抵抗９、ダイオー
ド１０及びリレー接点１１、可変抵抗１２、ダイ
オード１３の夫々のチヤンネルによつて電極送給
電源調整装置３を介して電動機１４に接続され
る。電動機１４は電源１ｃにより駆動され、ロー
ラー１５，１５によつて電極７を母材６方向へ送
給する。

次に上記溶接装置の作動について説明する。ス
イツチＳを閉成すると、調整装置２，３が作動状
態になり、溶接電流設定用電源１ｂの電圧を抵抗
４によつて所定の電圧に設定し、電極７の先端部
と母材６間に印加し、同時に送給設定用電源１ｃ
の電圧が抵抗９によつて所定の電圧に設定され、
この電圧が調整装置３を介して電動機１４に印加
され電動機１４を駆動する。従つて電極７は母材
６に接触すべくローラ１５，１５によつて送給さ
れる。電極７が母材６に接触すると同時に溶接電
流が通電しアークが発生する。溶接電流が通電す
ると調整装置２内に設けられた図示しないリレー
が溶接電流を感知して作動し、リレー接点８をオ
フし、リレー接点１１をオンせしめる。

次の段階では抵抗１２によつて設定される電圧
が電動機１４に印加され溶接が開始する。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、上述のような従来の消耗電極式
自動溶接機の制御装置にあつては、電極７の送給
速度が可変抵抗１２で、また、溶接電流が可変抵
抗４でそれぞれ別個に独立して設定されているた
め溶接開始時において、電極７の送給速度と溶融
速度とが均衡しない場合があり、電極７の母材６
への突込み現象を生じるおそれがあるという問題
点があつた。詳しく説明すると、溶融速度Vaは
溶接電流によつて決定され、送給速度Vbは電動
機１４に印加される電圧によつて決定される。す
なわち、溶接開始時においては過渡状態にあり、
定常状態に移行するまでの間、回路インピーダン
ス、ローラー１５，１５と電極７との間の摩擦等
のため、第２図の実線に示すように溶融速度Va
が送給速度Vbを下まわることがある。この場
合、溶融速度Vaと送給速度Vbとの間に速度差が
生じるため、電極７の余分が生じ母材６に突込み
現象が生じるおそれがあつた。

特にワイヤー状電極７を用いた溶接機において
は、溶接開始時にアーク発生直後のワイヤー状電
極７の溶融速度が電極７の送給速度を下まわり、
適正な溶接を維持できないという現実的な問題を
生じ、このためスパツタが発生し、又はスプレー
移行でのアーク溶接開始直後において電極の溶融
と送給のバランスの良否が溶接に極めて大きな影
響を与える等の欠点を有している。

この考案は、上述した問題点を鑑みてなされた
もので、溶接開始時に電極の母材への突込み現象
を防止した消耗電極式自動溶接機の制御装置を提
供し、円滑なる溶接が行なえるようにすることを
目的とする。

（問題点を解決するための手段） この考案にかかる消耗電極式自動溶接機の制御
装置は、溶接電流設定用電源と電極との間に微分
回路を介設することにより、微分回路によつて生
じる電圧を溶接電源調整装置への入力電圧に重畳
させ、かかる入力電圧を増加させる機能を有す
る。

（作 用） この考案にかかる消耗電極式自動溶接機の制御
装置によれば、溶接開始時に電極の溶融速度が電
極の送給速度を下まわる場合に、溶接電流設定用
電源と電極との間に介設されたコンデンサと可変
抵抗とから構成された微分回路によつて生じる電
圧を溶接電源調整装置への入力電圧に重畳させ、
かかる入力電圧を増加させることによつて溶融速
度を増加させ、溶融速度と送給速度とを近似的に
一致させることができる。したがつて溶接開始時
に溶融速度と送給速度との差から生じる電極の母
材への突込み現象を防止することができ、円滑な
溶接が行なえるようになる。

（実施例） 以下、この考案の実施例を図面に基づいて説明
する。

第３図ａは本考案に係る制御装置の回路図を示
している。第２図実線で示す送給速度Vbと溶融
速度Vaとの間で溶融速度Vaが送給速度Vbを下ま
わるため速度差が生じ、電極７の余分が生じ電極
７の母材６への突込み現象を防止するための回路
である。第１図に示した制御装置と基本的に同一
の構成をとるため同一部分には同一符号を示す。

１ａは電源スイツチＳを介して溶接電源調整装
置２と電動機用電源調整装置３に接続される。１
ｃは電動機による送給設定用電源８，１１は溶接
電流の通電を検知してオン・オフするリレー接
点、９，１２は可変抵抗、１４は電極送給電動
機、１５，１５はローラーである。１ｂは溶接電
流設定用電源、４は可変抵抗、５はチツプ、６は
母材、７は電極である。可変抵抗４と調整装置２
との間に本考案に係る微分回路１６を介設する。

第４図に微分回路１６の具体的な回路構成を示
す。第４図中のａ端子、ｂ端子、ｃ端子は第３図
中のａ，ｂ，ｃと夫々対応している。この回路で
はコンデンサ１７と可変抵抗１８とによつて微分
回路を構成している。又抵抗１９，１８は入力電
圧を低下させる分圧抵抗である。２０はリレー接
点で、リレー接点２０は、調整装置２内に設けら
れ、溶接電流の通電を検知して作動するリレーに
よつてオン・オフせしめられる。

次に以上の構成を有する制御装置の作動を説明
する。スイツチＳを閉成すると溶接電源１ｂによ
つて最初離間している電極７と母材６との間に所
定の電圧が印加される。又リレー接点８、可変抵
抗９のチヤンネルを介して電源１ｃに接続された
電動機１４はローラー１５，１５を駆動させ、低
速度で電極７を母材６方向へ送給する。電極７が
母材６と接触すると溶接電流を検知して調整装置
２内のリレーが作動しリレー接点８をオフし、リ
レー接点１１，２０をオンせしめるため、本来の
溶接が開始される。スイツチＳが閉成されると微
分回路１６のｃ−ｂ端子間には設定電圧E₀が入
力され、電極７が母材６に接触するまでの間、設
定電圧E₀は抵抗１９，１８によつて分圧される
ため、抵抗１９，１８の抵抗値を夫々R₁，R₂と
すると、ａ−ｂ端子間の出力電圧Ｅは Ｒ_２／Ｒ_１＋Ｒ_２E₀ となる。これをａ−ｂ端子間の出力電圧特性を示
したグラフ第５図の０＜ｔ＜t₀に示している。次
に溶接開始時には、電極７が母材６に接触しリレ
ーが作動してリレー接点２０がオンし、コンデン
サ１７と抵抗１８によつて構成された微分回路よ
つてａ−ｂ端子間には上記出力電圧の他に （コンデンサの容量をｃとする）なる電圧を生
じ、上記出力電圧に重畳されることになり、ａ−
ｂ端子間の出力電圧Ｅは となる。これをａ−ｂ端子間の出力電圧特性を示
したグラフ第５図中t₀≦ｔに示している。

上述のごとく、溶接開始時においては溶接電流
調整装置２を介してチツプ５と母材６に印加され
る電圧もコンデンサ１７と抵抗１８によつて構成
される微分回路より生じる出力電圧 に応じた分だけ増加することになり、溶融速度
Vaも第２図に示す破線Va′のごとく増加する。こ
れにより第２図に示すような立上りの遅い溶融速
度Vaを微分回路１６によつてVa′と増加せしめ、
立上りの速い送給速度Vbに近似的に一致させる
ことができ、溶接開始時に溶融速度Vaと送給速
度Vbとの速度差から生じる電極７の母材６への
突込み現象を防止することができ、円滑なる溶接
が行なえるようになる。

又溶接開始時におけるａ−ｂ端子間の出力電圧
Ｅの立上りの速さは可変抵抗１８の抵抗値R₂を
適宜に調整することによつて適切な送給速度に比
例せしめるべく一致させることができる。又微分
回路１６は第３図ｂに示すごとく電源１ｂの出力
に直接に接続し、ａ端子側に可変抵抗４を設けて
調整装置２に接続するように構成することも可能
である。

（考案の効果） 以上の説明で明らかなように本考案によれば、
溶接電流設定用電源と電極との間に微分回路を介
設することにより、微分回路によつて生じる電圧
を溶接電源調整装置への入力電圧に重畳させるこ
とにより、かかる電圧を増加させ溶接開始時にお
ける電極の溶融速度と電動機による電極の送給速
度との差異をなくし、両者の速度を近似的に一致
させることにより両者の速度差から生じる電極へ
の母材への突込み現象を防止し、円滑なる溶接が
行なえるようになる。

又上記効果は、従来の制御装置にコンデンサと
可変抵抗とから構成される微分回路を組込むだけ
で達成でき、このため安価に実現でき頗る有益で
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の制御回路図、第２図は溶融速度
と送給速度の関係を説明する図、第３図は本考案
に係る制御回路図、第４図は微分演算器の回路
図、第５図は微分回路の出力特性を示した図であ
る。 尚図面中、１は電源、７は電極、１４は電動
機、１６は微分演算器である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 溶接電流設定用電源によつて溶接電源調整装置
   を介し母材と電極の間に溶接電流を供給すると共
   に、電動機設定用電源によつて電極送給電源調整
   装置を介し電極送給電動機に駆動電圧を付与する
   如くした消耗電極式自動溶接機において、 上記溶接電流設定用電源の出力電圧を分圧する
   ための可変抵抗と定抵抗とを直列に接続し、該可
   変抵抗の両端を上記溶接電源調整装置に接続し、
   リレー接点とコンデンサとの直列回路を上記定抵
   抗に並列接続して成り、 アークスタート時に溶接電流を検知して上記リ
   レー接点をオンし上記コンデンサと上記可変抵抗
   から成る微分回路によつて生じる電圧を上記設定
   電圧に重畳するようにしたことを特徴とする消耗
   電極自動溶接機の制御装置。