JPS6226571Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は、気体の通路に設けられ、弁の往復
動によつて弁のシート面と該シート面に対向する
弁座のシート面との間に形成される上記通路を連
通・遮断するようにしたきのこ形の弁および弁座
の組合せにおいて、上記シート面に対して潤滑剤
を供給するための潤滑装置に関する。

このようなきのこ形の弁をそなえる装置とし
て、この考案が対象とする装置は内燃機関である
が、該機関のそなえるきのこ形の給排気弁は、扱
われる気体が高温高圧であること、気体中に燃焼
残渣などの固形粉粒体が混在すること、ならびに
作動の頻度が激しく、かつ作動時のシート面にお
ける衝撃が大きいことなどにより、上記シート面
の磨耗・焼損ないしは欠壊などの事故がおこりや
すく、そのため上記シート面に対して所要量の潤
滑剤の適切な供給が自動的に実施できれば、事故
の防止とともに衝撃の緩和にも効果的であること
は容易に理解できる。

しかし、作動環境が上記のようにきわめて苛酷
な状況下において、該部に対する潤滑剤の適切な
供給を、安定的に、しかも継続して行わしめるこ
とのできる潤滑装置としては、従来装置に見るべ
きものがきわめて少ないのが現状である。

（従来技術） 第４図および第５図は、かゝる従来技術の一つ
としての実願昭54−143682号（実開昭56−59916
号）のものを示し、また第６図は、かゝる従来技
術の他の例としての実願昭51−49854号（実開昭
52−139948号）のものを示す。まず、第４図およ
び第５図のものは、吸気弁１１の円錐面１２に対
応する弁座１３をそなえる弁座環１４をシリンダ
ヘツドＡに設け、シリンダヘツドＡに穿設した給
油路１５と弁座１３との間を複数個の分岐路１
６，１６…によつて連通し、給油路１５の途中に
逆止弁方式の開閉弁１７を介設し、吸気弁１１が
開いて吸気通路が負圧となるときは、開閉弁１７
が閉じて潤滑油の過度の流入を阻止し、吸気弁１
１が閉じたときは開閉弁１７が開いて円錐面１２
と弁座１３との接触面に対して潤滑油を供給する
ようにしたものである。なお、Ｂは潤滑油供給の
ための外部配管である。

しかし、かゝる従来装置のものは、多数の小径
の分岐路１６を弁座１３に開口せしめるための加
工の手間、ならびに之がスラツジなどの残渣によ
つて閉塞することに対する保守の手間、および逆
止弁方式の開閉弁という複雑な構造に起因する製
作の手間ならびに保守の手間などがあつて、信頼
性にも欠けるなど、使用に際しての致命的な問題
点がある。また第６図のものは、吸気弁１８に対
接する弁座１９に溝２０を設け、シリンダヘツド
２１に穿設した通気孔２２の一端を溝２０に連通
せしめ、その上流側に相当する他端をシリンダブ
ロツク２３に設けた通気孔２４に連通せしめるこ
とによつて、クランクケース内に発生したオイル
ミストを通気孔２４に誘導し、さらに通気孔２２
を経て溝２０に導き、吸気弁１８が開いたとき弁
座１９との対接面にオイルミスト粒を付着させて
潤滑を行わんとするものである。しかしこの従来
方式のものでは、オイルミストの発生の度合い、
あるいは長い道程を経て供給場所に到達するまで
の抵抗あるいは流れ工合いなどが、潤滑油の性
状、温度、もしくは機関速度などのあらゆる因子
によつて左右されることが不可避であり、結局潤
滑油の供給手段がきわめて消極的で、それに起因
して供給量が不安定であり、そのため前例のもの
と同様にやはり信頼性に乏しいという欠点があ
る。

（考案の目的） この考案は、上記従来装置の欠点にかんがみて
なされたもので、簡単な構成の附加によつて、弁
のシート部に対する潤滑剤の適切な供給を、きわ
めて確実に、弁の作動毎に安定して積極的に行わ
せることができ、信頼性の高い潤滑操作を自動的
に継続して行わせることのできる弁と弁座間の潤
滑装置を実現することを目的としてなされたもの
である。

（考案の構成） この考案は、上記の目的を達成するための構成
として、気体の通路に設けられ、弁の往復動によ
つて弁のシート面と該シート面に対向する弁座の
シート面との間に形成される上記通路を連通・遮
断するようにしたきのこ形の弁および弁座の組合
せにおいて、弁と弁座との相互のシート面の傾斜
角度に僅少の差を設けて対向する両シート面が接
触するときの接触線の位置をシート面の大径端縁
部とし、弁座のシート面の内側に該シート面上に
開口する潤滑剤封入用の溜りとしての環状の凹溝
を円周に沿つて刻設し、該凹溝の刻設によつて弁
座のシート面上に凹溝を包被する薄肉部を形成せ
しめ、上記薄肉部の厚さを弁の背面に燃焼圧力が
作用するごとに上記両シート面の接触線を支点と
して生じる弁の変形によつて両シート面の接触面
積が反復して増減することにより薄肉部が変位し
て凹溝の容積を増減せしめる厚さとしたことを特
徴とする。

（実施例） つぎにこの考案装置の構成につき、実施例を示
す図面に基いて具体的に説明する。第１図および
第２図において、１は弁であり、２は弁座であ
る。３は弁のシート面、４は弁座のシート面で、
シート面３とシート面４とは、弁１の軸線方向の
往復動によつてたがいに離間または接触し、気体
通路を連通または遮断する。一般にきのこ形の弁
では、シート面３とシート面４との関係形状を、
第２図に示すように、両者の円錐角に僅かの差を
持たせ、両シート面が接触したときの接触の態様
を線接触とすることによつて、両者の接触による
通路遮断の精度の向上を図るのがふつうである。
本考案では、接触線の位置を、シート面３の大径
端縁部の接触線６とされる。

５は、弁座２のシート面４に刻設した環状の凹
溝で、凹溝５は開口５ａおよび室５ｂよりなり、
いずれも円周に沿つて環状に設けられる。室５ｂ
は潤滑剤封入用の溜りとして機能し、開口５ａ
は、室５ｂに潤滑剤を封入するための口として、
および封入された潤滑剤をシート面４に排出せし
めるための口として機能する。

本装置に用いられる好適な潤滑剤としては、た
とえばグリース、二硫化モリブデン、またはその
両者を混和したものなどのように、比較的高粘度
であつて流動性に乏しく、かつ耐熱性のすぐれた
ペースト状の潤滑剤が選ばれる。これを弁の装着
以前に弁座２の凹溝５内に装入しておく。

７は潤滑剤補給用の通路で、必要に応じて設け
られる。通路７は、弁座の外周面８と凹溝５とを
連通して弁座２の体内に穿設されるもので、この
ように構成すると、凹溝５の潤滑剤保有容量に関
係なく、随時外部からの潤滑剤の充填補給が可能
である。

つぎに本案装置の作用について説明する。弁１
の作動に応じ、凹溝５の室５ｂ内の潤滑剤は、開
口５ａからシート面４の表面に少量づゝ流出して
シート面４とシート面３との間の潤滑作用を行
う。開口５ａの開口巾は、潤滑剤の流出量を必要
最小限度に抑えうるように僅かの巾とせられ、そ
のため、たとえ通路７をそなえない構造の場合に
おいても、室５ｂの広さを適切に選ぶことによつ
て、長時間に亘る潤滑剤の消費に充分対応せしめ
ることが可能である。

本案装置において、開口５ａからシート面４の
表面に流出せしめられる潤滑剤は、本案にかゝる
弁を内燃機関の給排気弁に適用することによつ
て、特に流出量の定量化ならびに流出動作の確実
性を保持し、きわめて安定した潤滑作用を行わし
めうるという特長を発揮するものであり、これに
ついて以下に説明する。

いま内燃機関の給排気弁が閉じた状態でシリン
ダ内の燃料が燃焼すると、弁１の背面に燃焼圧力
が矢印Ｐ（第１図）の方向に作用し、その結果、
弁１はシート面３とシート面４との接触線６を支
点として該背面の中央部を矢印Ｐの方向に押さ
れ、あたかも椀を伏せた形状を指向する変形を起
こす。

弁１のこのような変形によつて、弁のシート面
３と弁座のシート面４との接触面積が増大し、接
触の度合いが増加してその結果凹溝５の薄肉部５
ｃが室５ｂ側に押されるので、室５ｂの容積が、
燃焼行程ごとに僅かではあるが反復して増減し、
いわゆるポンピング作用を繰り返す。この作用に
よつて室５ｂ内の潤滑剤は、開口５ａからシート
面４上に少量づゝ規則正しく排出される。

シート面４上に凹溝５を形成するための好適な
加工要領が例えば第３図に示される。図によつて
加工手順を説明すると、まず図示要領の形状の凹
溝５をシート面４上に加工する。これは開口５ａ
の開口巾が広いから、きわめて容易に加工するこ
とができる。その後、回転ロールＲを回転させな
がらシート面４の傾斜に沿つて矢印Ｑの方向に移
動せしめ、薄肉部５ｃをシート面４に沿うように
倒して開口５ａの開口巾を第２図示の巾までせば
めたあと、シート面４の表面を全体に亘つて研磨
すればよい。

（考案の効果） この考案は以上のように構成されるので、簡単
な構成の付加によつてシート部に対する潤滑剤の
適切な供給をきわめて確実に、弁の作動毎に安定
して積極的に行わせることができ、信頼性の高い
潤滑操作を自動的に継続して行わせることが可能
となつて、そのためこの種の弁のシート面の磨
耗・焼損ないしは欠壊などの事故を防止するうえ
に顕著な効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかゝる弁と弁座との断面図、
第２図は第１図中の“”部の拡大断面図、第３
図は本考案にかゝる弁座の加工要領の説明図、第
４図、第５図および第６図はいずれも従来装置の
それぞれ異なる例を示す弁と弁座との近傍の断面
図である。 １……弁、２……弁座、３，４……シート面、
５……凹溝、５ａ……開口、５ｂ……室、５ｃ…
…薄肉部、６……接触線、７……通路、８……外
周面。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 気体の通路に設けられ、弁の往復動によつて弁
   のシート面と該シート面に対向する弁座のシート
   面との間に形成される上記通路を連通・遮断する
   ようにしたきのこ形の弁および弁座の組合せにお
   いて、弁と弁座との相互のシート面の傾斜角度に
   僅少の差を設けて対向する両シート面が接触する
   ときの接触線の位置をシート面の大径端縁部と
   し、弁座のシート面の内側に該シート面上に開口
   する潤滑剤封入用の溜りとしての環状の凹溝を円
   周に沿つて刻設し、該凹溝の刻設によつて弁座の
   シート面上に凹溝を包被する薄肉部を形成せし
   め、上記薄肉部の厚さを弁の背面に燃焼圧力が作
   用するごとに上記両シート面の接触線を支点とし
   て生じる弁の変形によつて両シート面の接触面積
   が反復して増減することにより薄肉部が変位して
   凹溝の容積を増減せしめる厚さとした弁と弁座間
   の潤滑装置。