JPS6224741Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、往復動型内燃機関のピストン冷却装
置に関するものである。

往復動型内燃機関のピストンはシリンダ内を高
速で往復運動して、混合気の吸入・圧縮を行な
い、爆発の際の圧力をコネクテイングロツド（以
下、コンロツドという。）を介してクランク軸に
伝達し、これによつてクランク軸を回転させると
共に、シリンダ内の排気をシリンダ内から排出す
る機能をはたす。そして、シリンダ内で圧縮され
た混合気が爆発する際には、混合気の燃焼によつ
て、ピストンのクラウン部は特に高温となり、ま
た同時に高圧を受けるので、この圧力と熱膨張と
によりクラウン部が変形をきたして、シリンダに
対するピストンの円滑な摺動が阻害されたり、ピ
ストンに割れを生じて焼損するという事態を生ず
るのである。また、ピストンのクラウン部の変形
によつて、ピストンのリング溝とピストンリング
との間隙に燃焼ガスが侵入して炭化し、この炭化
物がシリンダに対して“カジリ”を生じたり、ピ
ストンリングがリング溝内に焼付いたりする等の
不都合をも生ずる場合がある。

そこで、従来は、冷却用オイルをピストンのス
カート部内面に噴射することにより、ピストンの
クラウン部及びリング溝付近を間接的に冷却し、
これによつて、前記したピストンの変形を防止し
ようとしているが、十分に満足し得るだけの効果
が得られていない。

本考案の目的は、最も高温になるピストンのク
ラウン部及びリング溝付近を効果的に冷却するこ
とができる内燃機関のピストン冷却装置を提供す
ることにある。

本考案の構成上、特徴となるところは、最も高
温になるピストンのクラウン部から効果的に吸熱
するため、クラウン部の径方向にヒートパイプの
吸熱部を蛇行させて埋設し、このヒートパイプを
ピストンのリング溝付近を通してピストン内面に
沿つてピストンのスカート部付近まで伸設し、更
に、このヒートパイプをスカート部付近において
ピストンの内部方向に屈曲させて放熱部を形成
し、この放熱部に冷却用オイルを吐出し得る位置
に冷却用オイルの吐出口を配設したことにある。
そして、上記ヒートパイプの吸熱部は蛇行配置さ
れているから、ピストンのクラウン部全体からほ
ぼ均等に吸熱し得ると共に、ヒートパイプの放熱
部はピストンのスカート部付近からピストンの内
方に屈曲してピストンからは一定距離を隔てた位
置に配されているから、その放熱面積が大きいこ
とも相俟つて、十分な放熱効果をあげ得るのであ
る。

以下、本考案の実施例を図に基づいて説明す
る。

第１図ないし第４図は本考案の第一実施例を示
し、ピストン１はピストンピン２を介してコンロ
ツド３の小端部３ａに回転自在に連結されてい
る。コンロツド３の大端部３ｂはクランク軸４の
クランクピン部４ａに回転自在に連結され、クラ
ンク軸４はそのクランクジヤーナル部４ｂをシリ
ンダブロツクの軸受部５に回転自在に支持されて
いる。なお、４ｃは、クランク軸４に形成された
カウンタウエイトである。

ピストン１のクラウン部１ａ内には、ヒートパ
イプ６の吸熱部６ａがピストン１の径方向に蛇行
して埋設され、これによつて、吸熱部６ａはクラ
ウン部１ａのほぼ全域にわたつて配されているこ
ととなる。吸熱部６ａの両端部６a′，６a′はピス
トン１のリング溝１ｂ付近に位置し、ヒートパイ
プ６はこれらの両端部６a′，６a′からピストン１
の内面に沿つてスカート部１ｃ方向に伸長してい
る。そして、ヒートパイプ６はスカート部１ｃ付
近でピストン１の内部方向に屈曲して形成され、
この屈曲部前方に放熱部６ｂが形成されている。
放熱部６ｂが、第３図に示すように、その中央部
で湾曲している理由は、コンロツド３との干渉を
避けるために他ならない。以上の説明から明らか
なように、ヒートパイプ６は全体として一つの環
状体を構成し、その内部には、気化と液化とを繰
り返すことにより熱エネルギーを運搬する作動流
体（図示せず。）と、液化した作動流体を毛管現
象によつて吸熱部６ａに搬送するウイツク（図示
せず。）とが配されている。ウイツクは、通常、
ヒートパイプ６の内面に張設される。

一方、コンロツド３の大端部３ｂには、ヒート
パイプ６の放熱部６ｂ方向に開口する冷却用オイ
ルの吐出口３ｃ，３ｃが形成され、この吐出口３
ｃ，３ｃはコンロツド６の大端部３ｂのクランク
ピン部４ａとの接触面に形成された環状溝３ｄに
連結されている。環状溝３ｄは、また、クランク
軸４のクランクピン部４ａ内に径方向に形成され
たオイル通路４ｄに連通し、このオイル通路４ｄ
は、オイル通路４ｅを介して、シリンダブロツク
の軸受部５に形成された環状溝５ａに連通されて
いる。そして、この環状溝５ａはシリンダブロツ
ク内に形成されたメインギヤラリ（図示せず。）
に連通され、メインギヤラリから所定流量のオイ
ルを供給されることとなる。このオイルは潤滑油
とヒートパイプ冷却用との両用に供される。

以下、上記第一実施例の作用を説明する。

内燃機関が作動して、ピストン１が往復運動を
すると、ピストン１のクラウン部１ａは極めて高
温となり、ヒートパイプ６の吸熱部６ａに存する
作動流体はクラウン部１ａの熱エネルギーを吸収
して気化し、ヒートパイプ６の非ウイツク部を高
速で移動して低圧の放熱部に達する。放熱部６ｂ
は、冷却用オイルの吐出口３ｃ，３ｃから噴出さ
れる冷却用オイルによつて常時、冷却されている
から、気化して放熱部６ｂに至つた作動流体はこ
こで冷却用オイルに熱エネルギーを奪われて液化
する。そして、液化した作動流体は、気化が行わ
れている吸熱部６ａに向つて、ウイツク内を毛管
現象によつて移動するのである。このようにし
て、ヒートパイプ６はピストン１のクラウン部１
ａを効果的に冷却することとなる。

第５図は、本考案の第二実施例を示し、本実施
例の特徴とするところは、放熱部６ｂの放熱面積
を増大させることにより、放熱量を増大させるた
め、ヒートパイプ６の放熱部６ｂにフイン６ｃを
形成したことにある。その他の構成及び作用は前
述の第一実施例と同様であり、第５図中、第１図
ないし第４図と同一符号を付した構成要素は、同
一機能をはたす同一名称の構成要素を示す。

第６図は、本考案の第三実施例を示し、本実施
例の特徴とするところは、冷却用オイルの吐出口
をコンロツドの小端部に形成した点にある。すな
わち、コンロツド３の小端部３ａにはヒートパイ
プ６の放熱部６ｂ方向に開口した冷却用オイルの
吐出口３c′，３c′が形成され、これらの吐出口３
c′，３c′は環状のオイル通路３ｅを介して、コン
ロツド３の軸線方向に形成されたオイル通路３ｆ
に連結されている。そして、オイル通路３ｆは、
第１図の環状溝３ｄに連通し、オイル通路４ｄ，
４ｅ、環状溝５ａを介して、図示しないメインギ
ヤラリに連通することとなる。その他の構成及び
作用は前述の第一実施例と同様であり、第６図
中、第１図ないし第４図と同一符号を付した構成
要素は、同一機能をはたす同一名称の構成要素を
示す。

以上説明したように、本考案のピストン冷却装
置によれば、ピストンのクラウン部に埋設された
ヒートパイプの吸熱部がクラウン部のほぼ全域に
わたつて蛇行して配されているから、ピストンの
クラウン部全体からほぼ均等に吸熱し得る結果、
その吸熱面積の大きさとも相俟つて、大きな冷却
効果をあげ得ると共に、クラウン部の温度分布を
均一化し得るという効果を生ずる。

また、ヒートパイプの吸熱部の面積が極めて大
きいと共に、ピストンのリング溝近傍にもヒート
パイプが配されているから、リング溝にも直接又
は間接に大きな冷却結果が得られるという効果を
生ずる。

一方、ヒートパイプの放熱部はピストンの内部
に位置してピストンのスカート部からエアギヤツ
プを介して一定距離だけはなれているから、ピス
トンのクラウン部からの熱伝導の影響を受けにく
く、その放熱面積の大きさとも相俟つて、十分な
放熱効果を得ることができるという効果を生ず
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第一実施例の要部縦断面図で
あり、第２図の−線に沿つて切断された断面
図である。第２図は第１図のピストンの上面図で
ある。第３図は第１図のヒートパイプを下方から
見た平面図である。第４図は冷却用オイル通路を
表わすコンロツドの要部側面図である。第５図は
本考案の第二実施例のピストンの縦断面図であ
る。第６図は本考案の第三実施例のピストンの縦
断面図である。 １……ピストン、１ａ……クラウン部、１ｂ…
…リング溝、１ｃ……スカート部、２……ピスト
ンピン、３……コンロツド、３ａ……小端部、３
ｂ……大端部、３ｃ，３c′……冷却用オイルの吐
出口、４……クランク軸、６……ヒートパイプ、
６ａ……吸熱部、６ｂ……放熱部、６ｃ……フイ
ン。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) ピストンのクラウン部内の径方向にヒートパ
   イプの吸熱部を蛇行させて埋設し、該ヒートパ
   イプを前記ピストンの裏側内面に沿つて前記ピ
   ストンのスカート部方向に伸設すると共に、前
   記ヒートパイプを前記スカート部の下端部付近
   において前記ピストンの裏側でピストン半径方
   向内方に屈曲させてピストンの肉から露出され
   た放熱部を形成し、該露出された放熱部に直接
   冷却用オイルをふきかけ得る位置に冷却用オイ
   ルの吐出口を配設したことを特徴とする内燃機
   関のピストン冷却装置。 (2) 前記ヒートパイプを前記吸熱部の両端から前
   記ピストンの内面に沿つて前記スカート部方向
   にそれぞれ伸設し、前記ヒートパイプを前記ス
   カート部付近において前記ピストンの内部方向
   に屈曲させて共通の放熱部に連結した実用新案
   登録請求の範囲第１項記載の内燃機関のピスト
   ン冷却装置。 (3) 前記ヒートパイプの前記放熱部にフインを形
   成した実用新案登録請求の範囲第１項記載の内
   燃機関のピストン冷却装置。 (4) 前記冷却用オイルの吐出口をコネクテイング
   ロツドの大端部に形成した実用新案登録請求の
   範囲第１項記載の内燃機関のピストン冷却装
   置。 (5) 前記冷却用オイルの吐出口をコネクテイング
   ロツドの小端部に形成した実用新案登録請求の
   範囲第１項記載の内燃機関のピストン冷却装
   置。