JPS621435Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は主として車輛用空気調和装置に用いる
冷媒圧縮機に関し、特にその軸受をローラ軸受と
し、かつ潤滑油の供給を良好にしたベーン型圧縮
機に関する。

車輛用空気調和装置の冷媒圧縮機として一般に
構成が簡単で高速回転に適すベーン型圧縮機が用
いられている。まず第１図および第２図に基づき
従来の180゜対称複室式のベーン型圧縮機につい
て説明する。円筒形のケース１ａ内にカムリング
２ａ、フロントサイドブロツク２ｂ及びリヤサイ
ドブロツク２ｃとにより形成されたポンプハウジ
ング２が収容され、フロントサイドブロツク２ｂ
にフロントヘツド１ｂが外接されてケース１ａの
前面を密閉している。上記ポンプハウジング２内
には、回転軸３に嵌着され、半径方向に設けられ
た複数のスリツト４ａに板状のベーン４ｂが進退
自在に挿入された円筒形ロータ４が嵌装され、該
ロータ４とカムリング２ａの内周面に形成された
楕円形状のカム面２ｄとの間にポンプ作動室５が
形成されている。上記回転軸３はフロントサイド
ブロツク２ｂおよびリヤサイドブロツク２ｃに一
体に形成された前部および後部のプレーン軸受６
ａ、６ｂに支持されると共にフロントヘツド１ｂ
に形成されたシール室７内の軸シール部７ａに気
密を保持されて貫通し、上記ポンプハウジング２
と、これに嵌装されるロータ４を主要部として圧
縮機構Ａが構成される。

フロントヘツド１ｂの内面にはシール室７を囲
繞して円環状の前部吸入室８が形成され、該前部
吸入室８はフロントヘツド１ｂの上部に設けられ
た吸入口９に通じる一方、フロントサイドブロツ
ク２ｂに穿設された前部吸入孔１０によりポンプ
作動室５の吸入部に通じている。またポンプ作動
室５の吐出部は該部に開口する吐出孔１１から吐
出弁１１ａを介しポンプハウジング２の外周部と
ケース１ａとの間隙を通じてポンプハウジング２
後部の吐出圧室１２と連通し、また同時にケース
１ａの上面に設けられた吐出口１３に連通してい
る。

潤滑油系統はフロントサイドブロツク２ｂおよ
びリヤサイドブロツク２ｃに、この下面からプレ
ーン軸受６ａ，６ｂに通じる潤滑油供給孔１４
ａ，１４ｂと、また両プレーン軸受６ａ，６ｂを
軸方向に貫通する油路１５ａ，１５ｂとが夫々穿
設されている。一方ロータ４の前後側面には回転
軸３の外周に接する前部および後部環状溝１６
ａ，１６ｂが刻設され、この環状溝１６ａ，１６
ｂは共にベーン４ｂの背圧室４ｃに通じている。
そして前記フロントサイドブロツク２ｂの油路１
５ａはフロントヘツド１ｂのシール室７とロータ
４の前部環状溝１６ａとを通じ、リヤサイドブロ
ツク２ｃの油路１５ｂはリヤサイドブロツク２ｃ
のプレーン軸受６ｂの反ロータ側に被設した油室
１７とロータ４の後部環状溝１６ｂとを通じてい
る。

このように構成されるベーン型圧縮機におい
て、回転軸３が車輛の機関等と連繁して回転され
てロータ４が回転すると、ベーン４ｂが遠心力と
潤滑油による背圧でカムリング２ａ内周面のカム
面２ｄに摺接して進退しながら回転し、吸入行程
いおいて矢線で示すように冷媒を吸入口９から前
部吸入室８、前部吸入孔１０を通じてポンプ作動
室５の吸入部に吸入し、圧縮行程で吸入冷媒を圧
縮し、吐出行程で吐出部から吐出孔１１、吐出弁
１１ａを通じて吐出圧室１２に吐出し、上記行程
が繰返され圧縮冷媒は吐出圧室１２に蓄圧され吐
出口１３から冷凍回路に供給される。

吐出圧室１２で冷媒から分離し、ケース１ａの
下部に溜つた潤滑油は吐出圧室１２の圧力を受
け、フロントサイドブロツク２ｂの潤滑油供給孔
１４ａを上昇した潤滑油は前部のプレーン軸受６
ａと回転軸３との間の微小なクリアランスに浸入
し前後に分流して該プレーン軸受６ａを潤滑し、
一部はシール室７に、一部はロータ４の前部環状
溝１６ａに流れる。シール室７に流れ軸シール部
７ａを潤滑すると共に冷却した潤滑油は油路１５
ａを通じて前部環状溝１６ａに流れ、前部環状溝
１６ａの潤滑油はベーン４ｂの背圧室４ｃに入つ
てベーン４ｂに背圧を与え、更にロータ４とフロ
ントサイドブロツク２ｂとの摺動面を潤滑してポ
ンプ作動室５に入る。またリヤサイドブロツク２
ｃの潤滑油供給孔１４ｂを上昇した潤滑油は後部
のプレーン軸受６ｂと回転軸との間の微小なクリ
アランスに侵入し前後に分流して該プレーン軸受
６ｂを潤滑し、一部はロータ４の後部環状溝１６
ｂに直接流れ、一部は油室１７に流れた後油路１
５ｂを通じて後部環状溝１６ｂに入り、以後は前
部の潤滑油経路と同様にベーン４ｂの背圧室４ｃ
に入つてベーン４ｂに背圧を与え、更にロータ４
とリヤサイドブロツク２ｃとの摺動面に潤滑して
ポンプ作動室５に入る。ポンプ作動室５の潤滑油
はベーン４ｂとポンプハウジング２との摺動面を
潤滑した後冷媒と共に吐出圧室１２に吐出され、
冷媒と分離されて圧縮機ケース１ａの下部に溜り
上記潤滑のサイクルが繰返される。

以上述べた従来のベーン型圧縮機では、プレー
ン軸受と回転軸との間の微小なクリアランスによ
る流路抵抗を利用し、シール室７に付加する不要
な圧力を減じて軸シール部７ａからの油洩れを極
力抑えると共にベーン４ｂに適当な背圧を付与す
るように計つている。従つてベーン型圧縮機にお
けるプレーン軸受は機能的に必然性を有するもの
であるが、反面プレーン軸受は回転軸との間に微
小なクリアランスを保持するために加工および組
付けに高精度を要する。また潤滑不良や異物の噛
込みによる焼付きに対して弱く、かつ転動式の軸
受に比べ効率が低い等の欠点がある。そこで上記
圧縮機のプレーン軸受を転動軸受に代えた場合、
ローラ軸受にはプレーン軸受のような大きな流路
抵抗がないため減圧効果が生じず、シール室およ
びベーンの背圧室に適正に減圧された潤滑油圧力
が得られない不都合がある。

本考案は上記の問題に鑑みてなされ、ポンプハ
ウジングと、これに嵌装された円筒形のロータを
主要構成部とする圧縮機構が円筒形のケースとフ
ロントヘツドとにより密閉された圧縮機ケース内
に収容され、上記ポンプハウジングは内周面にカ
ム面が形成されたカムリングと、この両端面に接
合されたフロントサイドブロツクとリヤサイドブ
ロツクにより形成され、上記ロータはフロントサ
イドブロツクとリヤサイドブロツクとに夫々形成
された軸受部に両端を支持された回転軸に嵌着さ
れ、半径方向に設けられた複数のスリツトにベー
ンが進退自在に挿入され、フロントヘツドはフロ
ントサイドブロツクに外接し前記回転軸が貫通
し、該貫通部にシール室が設けられ、ポンプハウ
ジングの内周面とロータとの間に形成されるポン
プ作動室の吸入部は吸入室を介した吸入口に連通
し、ポンプ作動室の吐出部は吐出弁、吐出圧室を
通じて吐出口に連通し、更に前記ロータの両側面
にベーンの背圧室に通じる環状溝が刻設され、ま
た前記フロントサイドブロツクおよびリヤサイド
ブロツクに、軸受部、シール室およびロータの環
状溝に潤滑油を供給する潤滑油供給孔が夫々設け
られたベーン型圧縮機において、前記回転軸の両
端を支持する軸受部をローラ軸受とすると共に、
ロータの両側面に刻設されベーンの背圧室に通じ
る各環状溝の内周部にロータとフロントサイドブ
ロツクあるいはリヤサイドブロツクと接する摺接
面を形成せしめ、かつ前記潤滑油供給孔を上記摺
接面に開口したことにより、軸受の生産性、耐久
性および軸受効率を改善すると共にシール室およ
びロータの背圧室に通じる環状溝に適当な減圧効
果が生じる流路抵抗を付与したベーン型圧縮機を
提供することを目的とする。

以下本考案の一実施例を第３図および第４図を
参照して説明する。図中前述した従来の圧縮機と
共通の構成部分は同一の符号を付して示す。

本圧縮機では前述の圧縮機におけるフロントサ
イドブロツク２ｂおよびリヤサイドブロツク２ｃ
に形成されたプレーン軸受６ａ，６ｂの代りに該
部にローラ軸受１８ａ，１８ｂを嵌装する一方、
上記軸受部においてシール室７あるいは油室１７
とロータ４の環状溝１６ａ，１６ｂとを通じてい
た油路１５ａ，１５ｂは設けない。そしてロータ
４の両側面に刻設される環状溝１９ａ，１９ｂは
その内周部にロータ４とフロントサイドブロツク
２ｂあるいはリヤサイドブロツク２ｃと接する環
状の摺接面２０ａ，２０ｂを形成せしめ、潤滑油
供給孔２１ａおよび２１ｂはフロントサイドブロ
ツク２ｂおよびリヤサイドブロツク２ｃの各下面
から前記環状溝１９ａおよび１９ｂの内周部のロ
ータ４とフロントサイドブロツク２ｂあるいはリ
ヤサイドブロツク２ｃと接する環状の摺接面２０
ａおよび２０ｂのほぼ中央部に開口するように鉤
の手に設けている。その他の構成については前記
従来の圧縮機と同様であるので説明を省略する。

次に本ベーン型圧縮機の作用について説明す
る。回転軸３が車輛の機関等と連繁して回転さ
れ、吸入口９から冷媒が吸入され圧縮機構Ａで圧
縮され、吐出圧室１２に蓄圧され、吐出口１３か
ら冷媒回路に供給される吸入、圧縮、吐出作用は
従来の圧縮機と同様である。ここで吐出圧室１２
で冷媒から分離し、ケース１ａの下部に溜つた潤
滑油は吐出圧室１２の高圧力を受け、フロントサ
イドブロツク２ｂおよびリヤサイドブロツク２ｃ
の潤滑油供給孔２１ａおよび２１ｂを上昇し、
夫々ロータ４の両側面に刻設された環状溝１９
ａ，１９ｂの内周部に形成されたロータ４とフロ
ントサイドブロツク２ｂあるいはリヤサイドブロ
ツク２ｃと接する摺接面２０ａおよび２０ｂのほ
ぼ中央部に供給される。上記摺接面２０ａおよび
２０ｂは圧縮冷媒のリークを防ぐため極めて微小
なクリアランスで仕上げられているから、潤滑油
はここで大きな流路抵抗を高圧の吐出圧と低圧の
吸入圧との間の中間圧力に減圧されて一方はロー
ラ軸受１８ａあるいは１８ｂ側へ流れ、他方はロ
ータ４の環状溝１９ａあるいは１９ｂ側へ流れ
る。前部のローラ軸受１８ａに浸入した潤滑油は
ここでは流路抵抗を殆んど受けずほぼ中間圧力を
維持してシール室７に流れ軸シール部７ａを潤
滑、冷却し、後部のローラ軸受１８ｂに浸入した
潤滑油は同様に油室１７に溜る。他方ロータ４の
環状溝１９ａあるいは１９ｂからベーン４ｂの背
圧室４ｃに浸入した潤滑油はベーン４ｂにほぼ中
間圧力の適正な背圧を与え、ポンプ作動室５の吸
入側との差圧によりロータ４と両サイドブロツク
２ｂ，２ｃあるいはベーン４ｂとの摺動面を通つ
てポンプ作動室５の吸入側に導かれ、吸入冷媒に
混じつて最後に吐出圧室１２に吐出され、吐出圧
室１２で冷媒と分離された潤滑油は上記潤滑のサ
イクルが繰返される。

第５図および第６図は吸入口９′および吐出口
１３′を後部に設けたベーン型圧縮機に本考案を
適用した第２の実施例を示す。図中前述の圧縮機
と共通の構成部分は同一の符号を付して示す。本
圧縮機ではリヤサイドブロツク２ｃの後部に後部
吸入室８′を隣接させると共にフロントヘツド１
ｂの内面にも前部吸入室８を設け、前記吸入口
９′を後部吸入室８′に連通させ、後部吸入室８′
はリヤサイドブロツク２ｃに設けた後部吸入孔１
０′によりポンプ作動室５の吸入部に連通させ、
前部吸入室８はフロントサイドブロツク２ｂに設
けた前部吸入孔１０により同じくポンプ作動室５
吸入部に連通させ、後部吸入室８′と前部吸入室
８とは別途吸入通路２２で連通している。そして
前記第１の実施例と同様、回転軸３の両端を支持
する軸受部をローラ軸受１８ａ，１８ｂとすると
共に、ロータ４の両側面に刻設されベーン４ｂの
背圧室４ｃに通じる各環状溝１９ａ，１９ｂの内
周部にロータ４とフロントサイドブロツク２ｂあ
るいはリヤサイドブロツク２ｃと接する摺接面２
０ａ，２０ｂを形成せしめ、かつ潤滑油供給孔２
１ａ，２１ｂを上記摺接面２０ａ，２０ｂのほぼ
中央部に開口したもので、その作用は前記第１の
実施例と同様である。

以上詳述したように本考案では、ベーン型圧縮
機の回転軸の両端を支持する軸受部をローラ軸受
とすると共に、ロータの両側面に刻設されたベー
ンの背圧室に通じる各環状溝の内周部にロータと
フロントサイドブロツクあるいはリヤサイドブロ
ツクと接する摺接面を形成せしめ、かつ前記潤滑
油供給孔を上記掴接面に開口したことにより、シ
ール室およびベーンの背圧室に適正に減圧された
潤滑油圧力を付与し得て、生産性が良く、耐焼付
性に優れ、しかも軸受効率の高い転動式の軸受の
使用を可能としたものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の180゜対称複室式のベーン型圧
縮機の垂直縦断面図、第２図は第１図における
−線断面図、第３図は本考案の一実施例の垂直
縦断面図、第４図は第３図における−線断面
図、第５図は本考案の第２の実施例の垂直縦断面
図第６図は第５図における−線断面図であ
る。 １ａ……ケース、１ｂ……フロントヘツド、２
……ポンプハウジング、２ａ……カムリング、２
ｂ……フロントサイドブロツク、２ｃ……リヤサ
イドブロツク、２ｄ……カム面、３……回転軸、
４……ロータ、４ａ……スリツト、４ｂ……ベー
ン、４ｃ……背圧室、５……ポンプ作動室、６
ａ，６ｂ……軸受部、７……シール室、８……前
部吸入室、８′……後部吸入室、９，９′……吸入
口、１１ａ……吐出弁、１２……吐出圧室、１
３，１３′……吐出口、１４ａ，１４ｂ，２１
ａ，２１ｂ……潤滑油供給孔、１６ａ，１６ｂ，
１９ａ，１９ｂ……環状溝、１８ａ，１８ｂ……
ローラ軸受、２０ａ，２０ｂ……摺接面、Ａ……
圧縮機構。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ポンプハウジングと、これに嵌装された円筒形
   のロータを主要構成部とする圧縮機構が円筒形の
   ケースとフロントヘツドとにより密閉された圧縮
   機ケース内に収容され、上記ポンプハウジングは
   円周面にカム面が形成されたカムリングと、この
   両端面に接合されたフロントサイドブロツクとリ
   ヤサイドブロツクにより形成され、上記ロータは
   フロントサイドブロツクとリヤサイドブロツクと
   に夫々形成された軸受部に両端を支持された回転
   軸に嵌着され、半径方向に設けられた複数のスリ
   ツトにベーンが進退自在に挿入され、フロントヘ
   ツドはフロントサイドブロツクに外接し前記回転
   軸が貫通し、該貫通部にシール室が設けられ、ポ
   ンプハウジングの内周面とロータとの間に形成さ
   れるポンプ作動室の吸入部は吸入室を介して吸入
   口に連通し、ポンプ作動室の吐出部は吐出弁、吐
   出圧室を通じて吐出口に連通し、更に前記ロータ
   の両側面にベーンの背圧室に通じる環状溝が刻設
   され、また前記フロントサイドブロツクおよびリ
   ヤサイドブロツクに軸受部、シール室およびロー
   タの環状溝に潤滑油を供給する潤滑油供給孔が
   夫々設けられたベーン型圧縮機において、前記回
   転軸の両端を支持する軸受部をローラ軸受とする
   と共に、ロータの両側面に刻設されベーンの背圧
   室に通じる各環状溝の内周部にロータとフロント
   サイドブロツクあるいはリヤサイドブロツクと接
   する摺接面を形成せしめ、かつ前記潤滑油供給孔
   を上記摺接面に開口したことを特徴とするベーン
   型圧縮機。