JPS6113964B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は木材（竹材を含む。以下単に木材と称
す。）に木酢処理あるいは木タール処理、次いで
燻材処理を施し、木材に優れた特性を附与する木
材の処理方法に関するものである。 即ち本発明は、木材に木酢液を含浸せしめた
後、燻材処理を施すことを特徴とするものであ
り、木材の在来の性質に、有効な防腐、防徽、防
虫、防水、防湿性等を附与し、更に調色、調臭、
軽量化などにより、各種の構造材、器具材、工芸
用材、その他の加工材として優れた特性を与え、
更にこれを燃料、ガス化原料材として用いる場合
は、その貯蔵性、取扱性に優れ、水分含有量の少
ないことから発熱量の向上等優れた特長を有する
高品質化した木材を提供することにある。従来木
材を所謂木酢液で処理すること、又燻材処理を施
す個々の技術については、既に発明者等によつて
も公表した如く、公知の技術であるが、何れにも
実用上更に改善の余地のあるものであつた。 本発明は、これら夫々の有する難点を、有利に

【表】

【表】 林業技術ハンドブツク、林野庁編（全国林業
改良普及協会発行)、 p.684(1971)

【表】 木酢液のフエノール画分１ml当りに含まれる成
分 グアイアコール 152. mg フエノール 250. ２・６・ジメトキシフエノール 680. ホルムアルデヒド 13.20 メタノール 0.43 このような木酢液は腐朽菌の生育を阻害する性
質があつて木材に塗布、含浸すると防腐効果があ
るが、木酢液の含浸処理のみでは、水溶性のため
に、野外に放置すると降雨の降等に溶脱され、そ
の腐朽効果等を激減する。一方、木酢液は製炭の
際、容易に回収可能で、その量は製炭量と同程度
である。したがつて木酢液の利用は製炭者の収入
に大きな影響があつて木酢液による木材防腐処理
などは間伐材、小径木の利用等からも大いに期待
されるが、上記の欠点のために現在この種の目的
には殆んど利用されていない。 本発明方法は木酢液中の有効成分を材中に含浸
させた後これに燻材処理を施し木材表面のヘミセ
ルロースの一部を熱分解し、特にOH基を少なく
し、吸湿性を減少させ防水効果を増大せしめる。 本発明において木酢液（本発明では木タールを
含む）処理は、木材、竹材等をそのまま或は製材
後、塗布、浸漬、更に加圧装置、減圧装置を用い
る方法等適宜の方法、装置を用いて行うものであ
る。木酢液は前述の組成のものに、更に必要に応
じて、界面活性剤、その他不燃剤等を浸透をさま
たげない程度添加することも有効である。実用上
木酢液は、広葉樹、針葉樹、竹材等から得られる
木酢液の他、成型薪（オガライト：商品名）農林
業の剪定枝、桑根等の炭化に伴つて得られる木酢
液をそのまま、或は濃縮したものを用いるが、例
えば成型薪の木炭製造時に得られる木酢液は高濃
度で最も使用しやすい。 木酢液の木材への浸透は、例えば杉材にPH３、
比重1.035の木酢液を15℃で５〜10秒の瞬間浸漬
のみで小口面で13mm、板目面で３mm、平均５〜６
mm良好に浸透し、１分以上の浸漬で更に多く浸透
する。木タールは分子が大きいのでやや浸透しに
くいが、用材の使用目的に応じて適宜の手段によ
り浸透量を調整してもよい。表３、表４に塗布
量、浸透実験例を示す。

【表】

【表】 本発明における木酢液の被処理木材（竹材を含
む）への含浸は、表面より少なくとも１mm以上、
100mg/cm³（吸着量）以上とし、次工程である燻材
処理の有効な成果を計るものである。 燻材処理は例えば本発明者が「北方林業」
1980、Vol.32、No.12で既に発表した如く、薪を
150〜220℃に加熱し、その表面を幾分熱分解し吸
湿性を少くしたもので、防虫、防腐性をもち、熱
量も向上しカロリーアツプの効果はあるが、経済
性と汚れ性に難点があり、その改善が望まれてい
たものである。 本発明は上述の如く、木酢液を含浸せしめた被
処理材に、燻材処理を施す方法であり、この処理
は、150℃〜230℃で２時間以上処理するものであ
る。 この燻材処理により、木材ガスと燃焼煙の加熱
で木酢の防腐、防徽、防虫剤としての安定性の増
加と、乾燥と同時に木酢液成分と燻煙成分の固着
を計り、木材表面は手に触れてもベトつかず乾性
で、例えば１cm²当り100〜200mg固着する。この間
樹種によつて異なるがその差は少ない。木材は
140〜180℃の加熱により木材中のヘミセルロース
が煙中の酸と含浸木酢液の酸による加水分解反応
の一部が炉内および材中で行なわれ有機酸および
フルフラールなどフラン基が一部生成される挙動
が考えられ変質する。一方セルロース及びリグニ
ンはほとんど変化せず木材本来の強度は殆ど変化
しない。更に従来の燻材処理の一つの難点とし
て、加熱による割れの問題があつたが、本発明の
如く予め木酢液を含浸せしめることにより、燻材
処理による割れ発生が著しく改善される。 本発明における燻材処理方法によると木酢液の
有効成分は木材中の組織中に乾燥と同時に定着さ
れるため防腐、防徽、防虫性の安定度が高く、ば
く露試験によると木酢液処理のみを施した木材は
表６に示す如く、腐朽菌が繁殖し、その強度は低
下するが、本発明による処理材は腐朽菌（カワラ
タケなど）の繁殖が見られずほとんど強度の低下
が認められなかつた。

【表】 本発明の処理法によると木材表面は黒褐色に着
色するが、この色彩は安定していてばく露試験に
おいてもほとんど変化が認められなく、また、木
材表面に塗膜をつくることもなく、そのうえ含浸
が木材内部迄浸透し、これらが改質されているた
め、木材表面が損傷されても一般塗装の如く、木
地が現れることもなく、かんなかけ、切削等の加
工も自由にできる。更に本発明によつて得られる
木材は厚膜塗装が可能であり、本発明方法の特徴
の一つとなる。 次に本発明の燻材処理を具体的に説明する。 木酢液を含浸せしめた被処理材は含浸処理直後
では水分が多く、これを或る程度自然乾燥しても
水分が50％（湿量基準）位含有する場合は、これ
を例えば燃料として用いた場合1800kcal/Kg位と
低く、燃焼温度も低い。本発明は、これに150℃
〜230℃、２時間以上の燻材処理を施すことによ
り、例えば含有率を20％以下（湿量基準）に乾燥
し、改質し表面を褐色化し燻臭を与え、防湿、防
水性に優れ、防腐、防虫、防徽性が安定、長期化
し、一方軽量化するため各種の建材、土木用材、
器具材、工芸用材などとして、その条件を有利に
満す素材とするものであり、更に燃料とした場
合、燃え易く発熱量も含水率18％位で3800kcal/
Kgと増大するので、その貯蔵性の改善と相俟つて
燃料として極めて有利な条件を備えたものとな
る。 本発明において、燻竹製品を製造する場合は、
比較的加熱処理の程度を高くすることが好まし
く、燻竹の場合調色、調臭は、竹材の乾燥油抜き
などの前処理にもよるが、加熱用燃料の種類例え
ば竹類、広葉樹、針葉樹、モミガラ、藁など加熱
法の選択により調整する。 竹以外の処理木材の調色、調臭も同様、加熱法
の選択により適宜に行なう。このような燻材処理
は、次記の各種のカマによつて行われる。1.普通
製炭カマ（築窯材料が粘土、石製）、集煙筒内で
も燻煙処理、2.セメントブロツクカマ（ブロツク
製）、集煙筒内でも燻煙処理、3.移動炭化炉、簡
易伏焼ガマ（鉄、ステンレス製）、4.平窯製炭
（レンガ、石、ブロツク製）、集煙筒、煙道内で燻
煙処理、5.ロータリーキルン炭化装置（機械装
置）、6.高圧炭化カマ（機械装置）。 本発明における燻材処理は、150℃〜230℃の温
度範囲で２時間（累積時間も含む）以上処理する
ことが必要であり、例えば建材としては第１図に
斜線にて示す如く150℃〜230℃内の処理時間が累
積10〜20時間とすることが好ましいが、木酢液の
浸透区域を深くし、改質部が深く求める場合、又
処理材の種類によつては50〜100時間に及ぶ処理
を行なうこともある。 又目的が杭等の場合は、後述の実施例における
第２図に示す如く150〜230℃内の処理時間が２時
間で略その目的を達する。 得られた製品は、手で触れても汚れがつかず、
木酢液も有効に材中に定着する。

【表】 実施例 １ 杉角材を針葉樹木醋液（比重1.035、15℃）を
満した槽中に表４に示す如く、瞬間浸漬、１分浸
漬を行なつた。その結果前述の表４に示す木酢の
浸透結果が得られた。この木酢液を浸透せしめた
後、セメントブロツクカマにより、建材を目的と
して第１図に示す温度と処理時間の関係を保持し
てセメントブロツクカマによる燻材処理を施し
た。 得られた製品は、耐腐朽性が増大し、吸湿、防
水性に優れ、建材としての狂いが著しく低下し
た。材質は表面のみでなく内質部まで改質され耐
候性に優れた結果を示した。 色調は黒褐赤色系の調色材となる。杉材以外堅
木は一般に発色も着色もよいが、樹種により色調
は異つてくる。特に針葉樹は着色、発色がよく脱
色も少ない。燃料として使用する場合、特に貯蔵
性、取扱性に優れカロリーも著しく向上する。 実施例 ２ 実施例１と同様の木酢液の浸漬処理を施した
杉、松、欅材を径1200mmの移動炭化炉につめ込み
第２図に示す温度と時間の関係を保持して移動炭
化炉による燻材処理を施した。 得られた杭材は実用に当り、木酢液処理のみの
杭材、及び燻材処理のみの杭材と比較し、２〜３
倍の耐久性を示した。 実施例 ３ 実施例１と同様に木酢液の浸漬処理を施した
杉、松、ブナ、樫、欅、竹の各種の大きさの角
材、杭材、加工木彫品を準備した。又木タール浸
漬処理を施した上記の素材も準備し、短冊型天板
天井ブロツクカマに詰めた。詰め方は煙の循環を
よくするように考慮し、カマ口部の灰化を少なく
し、材の急激な温度上昇を避けるようにし、必要
に応じて細竹を材間に入れたり縄や紙型で材上に
模様を出す処置を施してもよい。燃材は詰込材重
量の10％程度が一応の目安となる。この短冊型天
板天井ブロツクカマによる燻材処理例の温度と時
間の関係を第３図に示す。この処理の累積時間は
目的、材質により選択する。取出しは完全に冷却
したことを確認して取出す。得られた製品は実施
例１と同様優れた特性を示し、表面は研磨により
美しい肌となり、硬木ほどつやがでてくる。 以上詳述した如く、本発明は、木材の熱分解に
よつて得られる木酢液を利用し被処理材に含浸せ
しめ、この処理材を木質系燃焼ガスと煙により
150〜230℃の温度範囲で加熱炉中で処理し、木材
中に木酢液の有効成分を材中に付加浸透せしめ、
同時に部分反応により一部を改質し、一方組織中
の水分を蒸発させると共に木酢成分を付加固定さ
せ、高品質を計るものである。即ち、ヘミセルロ
ースの分解と、加熱と煙による木酢成分の浸透固
定化により、木材本来の諸強度を損うことなく、
その防腐性、防徽性、防虫性を安定化し、防湿、
防水、防油性を向上せしめ、調色、調臭を計り、
更に軽量化により高発熱量化により、燃料等とし
ても著しく優れた高品質化木材を得ることがで
き、実用上極めて有益な発明である。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図、第３図は夫々本発明の実施例
における加熱温度と処理時間の関係を示す図であ
る。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 木材（竹材を含む）に木酢液あるいは木ター
   ルを含浸せしめた後、燻材処理を施すことを特徴
   とする木材（竹材を含む）の処理方法。