JPS6024889Y2 - 水平対向型内燃機関のシリンダ内オイル戻し装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、水平対向型内燃機関において水平な横向きに
配置されるシリンダの内部に溜まり易いオイルをクラン
ク室に戻すシリンダ内オイル戻し装置に関するものであ
る。

〔従来技術と問題点〕

一般に内燃機関のオイル消費経路を大別すると、ピスト
ン往復部のシリンダから油上り、動弁系からの油下り、
ブローバイガスによる吹出し、ガスケット類からの油漏
れなどであり、ピストン往復部のシリンダからの油上り
が最も多い。

ここで、シリンダ内ではピストンの冷却用およびピスト
ンの往復移動に要する潤滑用のオイルがコンロッド大端
部から遠心力により、または強制的に供給され、余分な
オイルは油掻きリングで掻き落されて適切な油膜を作る
ようになっている。

そしてこのオイル掻き落し作用を確実にすべく、従来か
ら種々のオイル戻し装置が提案されている（実開昭５４
−１７２１３８公報、実開昭５１−１９１４滑公報参照
）。

ところで、直立型の機関の場合はシリンダが直立してい
るので油掻きリングにより掻き落とされたオイルはクラ
ンク室内に戻り易いが、水平対向型の機関ではシリンダ
が横向きに配置されているので、油掻きリングで掻き落
とされたオイルは自重でクランク室に流下することがで
きず、シリンダ下側に溜まってクランク室に戻りにくい
。

このため、シリンダ下側におけるピストンリング近傍に
はオイルが常に充満し、油上り現象を生じ易く、オイル
消費増大の要因の一つとなっている。

〔問題点を解消するための手段〕

本考案はこのような事情に鑑みなされたもので、水平対
向型内燃機関ではクランク軸のセンタジャーナル受部を
境にしてその一方と他方にそれぞれクランク室が形成さ
れ、それらの各クランク室の左右に少なくとも２個の横
向きのシリンダと共に、そのシリンダ内に挿入されて同
時に上昇及び下降するピストンを有し、更に各クランク
室のピストンの上昇と下降が逆に関係になっていて、一
方のクランク室がピストンの下降により圧力上昇すると
他方のクランク室がピストンの上昇で圧力低下し、両ク
ランク室相互の間に圧力差を生じる点に着目したもので
ある。

そして、高圧側クランク室のシリンダにおける所定の個
所から低圧側クランク室へオイル戻し通路を設け、上記
クランク室相互の圧力差などを利用してオイル戻し通路
により各シリンダ内下側に溜まるオイルを強制的にクラ
ンク室に戻し、ピストンリングにより油上りを低減する
ようにして水平対向型内燃機関のシリンダ内オイル戻し
装置を提供するものである。

〔実施例〕

以下、図面を参照して本考案の一実施例を具体的に説明
すると、図において符号１ａ、１ｂは左右に２分割され
たクランクケースと右クランクシールであり、これらの
両クランクケースｌａ、ｌｄが一体的に接合して水平設
置され、クランクケース１ａ、１ｂ中心の合せ部にクラ
ンク軸２、ロッカアーム式動弁機構のカム軸３が回転可
能に軸支され、且つその下にオイルパン４が取付けられ
て潤滑用のオイルを貯溜している。

左クランクケース１ａには２個のシリンダ５ａ、５ｂが
横向きに形成されてこれらのシ′リンダ５ａ、５ｂ内に
挿入されるピストン６ａ、６ｂがコンロッド７等により
クランク軸２に連接しており、右クランクケース１ｂに
おいても同様に２個のシリンダ５Ｃ９５ｂが横向きに形
成されて、これらのシリンダ５ｃ、５ｄに挿入されるピ
ストン６ｃ、６ｄがコンロッド７等によりクランク軸２
に連接する。

ここで、第２図のようにピストン６ａが上死点に上昇し
て爆発行程に入るとき、隣りのピストン６ｂは下死点に
下降して圧縮行程に入り、ピストン６ａと同じ側のピス
トン６ｃは同様に上昇して吸入行程に入り、ピストン６
ｂと同じ軸のピストン６ｄは同様に下降して排気行程に
入るようになっている。

また、クランク軸２のセンタージャーナル２ａを軸支す
る受部８でクランクケースｌａ、ｌｂ内の中心部が前後
に仕切られ、この受部８の一方にシリンダ５ａ、５ｃと
連通ずるクランク室９ａが、その他方にシリンダ５ｂ、
５ｄと連通ずるクランク室９ｂが形成される。

これにより、クランク室９ａの側のシリンダ５ａ、５ｃ
におけるピストン６ａ、６ｃｓ クランク室９ｂの側の
シリンダ５ｂ、５ｄにおけるピストン６ｄ、６ｄはいず
れも同時に上昇及び下降し、更に一方が上昇するとき他
方が下降するように逆に関係になる。

従って、第２図のようにピストン６ｄ、６ｃが上昇して
いるクランク室９ａでは圧力低下するのに対し、ピスト
ン６ｂ、６ｄが下降しているクランク室９ｂでは圧力上
昇して両クランク室９ａ、９ｂ相互の間に圧力差を生じ
、逆の関係になるとクランク室９ａの方が高くなるよう
に圧力差を生じ、このことが繰り返して行われる。

このような構成において本考案によると、例えばクラン
ク室９ｂの側のシリンダ５ｂにおいてオイルが溜まり易
い下側で、ピストン６ｂ下死点位置の場合の油掻きリン
グ１０を有する溝１１が一致する箇所から他のクランク
室９ａに向い第１図のように下り傾向でオイル戻し通路
１２ｂが設けられる。

また同じクランク室９ｂの側のシリンダ５ｄでもクラン
ク室９ａに向って同様にオイル戻し通路１２ｄが設けら
れ、クランク室９ａの側のシリンダ５ａ、５ｃからはク
ランク室９ｂに向ってオイル戻し通路１２ａ、１２ｃが
設けられる。

尚、これらのオイル戻し通路１２ａないし１２ｄは左右
のクランクケースｌａ、ｌｂの合せ両側が開口している
ので、そこからドリル等を入れて穿設することができる
。

本考案はこのように構成されているから、例えば第２図
のようにクランク室９ｂの側のピストン６ｂ、６ｄのよ
うに、それらが下降するときシリンダ５ｂ、５ｄの内壁
の余分なオイルが油掻きリング１０で掻き落されるので
あるが、シリンダ５ｃ、５ｄは水平な横向きに設置され
るという構造上の理由でその内部下側にオイルが溜まる
。

ところで、このときシリンダ５ｂ、５ｄの側のクランク
室９ｂはピストン６ｂ、６ｄの下降で圧力が高く、これ
に対して他方のクランク室９ａはピストン６ａ、６ｃの
上昇で圧力が低いため、この圧力差によりシリンダ５ｂ
、５ｄの下側のオイルが油掻きリング１０で下死点側に
寄さられた後オイル戻し通路１２ｂ、１２ｄを経て低圧
側のクランク室９ａの方へ強制的に流れる。

また、オイル戻し通路１２ｂ、１２ｄは下り傾斜である
ので、シリンダ５ｂ、５ｄの下側のオイルは自重でもク
ランク室９ａの方へ流れる。

次いでクランク軸２の回転によりクランク室９ａの側の
ピストン６ａ、６ｃが下降し、同時にクランク室９ｄの
側のピストン６ｂ、６ｄが上昇する場合は、クランク室
９ａの圧力が高くなってクランク室９ｂの圧力が低くな
ることで、シリンダ５ａ、５ｃの内部下側のオイルがオ
イル戻し通路１２ａ、１２ｃを経て同時にクランク室９
ｂの方に強制的、及び自重で流れる。

こうして機関運転時に、シリンダ５ａ、５ｃと５ｂ、５
ｄの下側のオイルがそれぞれ交互にクランク室９ａまた
は９ｂの方に流れ、シリンダ内に溜まることなく戻され
るのである。

〔考案の効果〕

このように本考案によると、水平対向型内燃機関におい
て水平な横向きに配置されたシリンダ５ａないし５ｄで
はピストン側の油掻きリング１０のみならず、強制的及
び自重で溜まり易い内部下側のオイルがクランク室側に
戻されるので、シリンダ内の余分なオイルがなくなって
、ピストン往復部からの油上りと共にオイル消費が著し
く減じ、この外にも種々の効果を奏する。

オイル戻し作用にクランク室９ａ、９ｂの圧力差を巧妙
に利用すと共に自重落下方式を併用するもので、構造が
簡単であると共に円滑且つ確実に行われる。

尚、実施例では４気筒について説明したが、本考案はこ
のような実施例のみに限定されるものでなく、６気筒以
上にも同様に適用し得ることは勿論である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による装置の一実施例を示す縦断面図、
第２図は同水平断面図である。 ｌａ、ｌｂ・・・・・・クランクケース、２・・・・・
・クランク軸、２ａ・・・・・・センタジャーナル、５
ａないし５ｄ・・・・・・シリンダ、６ａないし６ｄ・
・・・・・ピストン、８・・・・・・受部、９ａ、９ｂ
・・・・・・クランク室、１１・・・油掻きリングの溝
、１２ａないし１２ｄ・・・・・・オイル戻し通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランクケース中心部に設置されるクランク軸のセンタ
   ジャーナル受部を境にしてその一方に第１のクランク室
   を、その他方に第２のクランク室をそれぞれ形成し、該
   第１のクランク室の左右に少なくとも２個の横向きのシ
   リンダと共に、該シリンダ内に挿入されて同時に上昇及
   び下降するピストンを有し、上記第２のクランク室の左
   右にも少なくとも２個の横向きのシリンダと共に、該シ
   リンダ内に挿入された上記ピストンを逆の関係で同時に
   下降及び上昇するピストンを有する水平対向型内燃機関
   において、上記第１のクランク室側のシリンダのピスト
   ン下死点位置における油掻きリング溝と一致する箇所か
   ら上記第２のクランク室へ、該第２のクランク室側のシ
   リンダのピストン下死点位置における油掻きリング溝と
   一致する箇所から上記第１のクランク室へそれぞれオイ
   ル戻し通路を設けたことを特徴とする水平対向型内燃機
   関のシリンダ内オイル戻し装置。