JPS5831170B2 - 海藻養殖用付着基材の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、海藻胞子の付着および発育に理想的な特殊表
面形態を有する海藻養殖用付着基材の製造方法に関する
。

海藻胞子は、複雑な固形状突起物を有する表面形態で、
適度の親水性のあるしかも水中で剛性の入きい基材によ
く付着し、かつ著しく成長が促進される。

反面、海藻も陸上作物と同じく胞子が過密に付着すると
、その収穫量や品質が低下し病気も発生しやすい。

従って、付着基材には生物が付着し難い適度な領域をも
兼備することが要求される。

従来、この種付着基材の表面形態を改良する方法として
は、特公昭３４−６８８０号公報、実公昭３４−１９０
５８号公報、特公昭３５−１６９６９号公報、又は実公
昭４５−２８３００号公報のごとく海苔網用糸について
、撚糸表面に枝糸条を突出させたり、糸条の房を形成さ
せたり、オたは網糸を構成する糸条の一部を弛緩させる
などの工夫が提案されているが、水中での網糸には剛性
が不足し、筐たその枝糸条および弛緩された糸条は柔軟
であるがために流れに対し泳動しやすく、その泳動範囲
内に付着している胞子を脱落させたり、海苔摘み機によ
る採集時には枝糸条等の一部が切られて海苔内に混入し
海苔製品の品質を低下させる等の欠点があったっさらに
、その製造に際しては、一般の海苔網の場合より、多く
の工程を要したり、合糸、加熱２編網工程では原糸釦よ
び撚糸の引揃え方法において、又熱処理工程では温度条
件において管理上の難しさがあり、安定した品質を得難
い難点があった。

発明者等は合成繊維製のこの種付着基材の表面形態を改
良する方法について研究し、合成繊維の周囲に適度の硬
さを有する固形状の突起物を生じさせる方法を開発し本
発明を完成した。

すなわち、この発明は比較的低融点の合成繊維と比較的
高融点な合成繊維とから成る撚糸により繊維構造体（網
、總織物等）を構成した後、低融点の合成繊維を熱によ
り断片的に跡ぎらせ、高融点の合成繊維の周囲に固形状
の突起物を生ぜしめるようにして、良好な環境下で海藻
を育成させるための胞子の過剰付着を防止する性能を付
与した理想的なアマノリ、アオノリ、ワカメ、モズク。

コンブ等の海藻養殖用付着基材の製造方法を提供するこ
とを目的とするものである。

次にこの発明にかかる海藻養殖用付着基材の製造方法の
実施例を図面にもとづいて述べる。

まず、第１図は海藻養殖用付着基材を示すものであるが
、図面において、１は複数の繊維２により構成された下
糸３を、さらに撚って構成した撚糸であり、４はこの撚
糸１を構成する前記繊維２の一部を断片状に跡ぎらせて
形成した繊維の突起物である。

さて前記海藻養殖用付着基材を製造するには、第２図に
示すように比較的融点の低い合成繊維２ａと比較的融点
の高い合成繊維２ｂとを２種以上複数本抱き合わせて合
糸したものに、下撚を加えた下糸３をさらに２本以上合
わせて下撚とは逆方向の上撚を加え、撚糸１をつくり、
この撚糸１にて、第３図のように所定網目の網を編製し
たり、第４図のように所定太さの網へ積巻きしたり、第
５図のように経糸、緯糸の片方か双方に分けて織布を織
り、あるいは前記下糸３を用いて製綱したのち、これら
網、綱、織布等に対し、前記低融点合成繊維２ａの融点
範囲で熱処理を施すことにより、融点の低い繊維２ａの
みを軟化させ、跡ぎれさせ、収縮を発生させ、融点の高
い繊維の周囲に複雑な固形状の断片的な突起物４を発現
させるのである。

前記低融点の合成繊維２ａは、その融点７０℃以上１１
５°Ｃ以下の範囲にあるものが良く、具体的には、低密
度ポリエチレン樹脂又はエチレン・酢酸ビニール共重合
体樹脂を溶融紡糸し、モノフィラメント・フィルム等に
繊維化されたものとするが、胞子の付着性および熱処理
の温度条件からしてエチレン・酢酸ビニール共重合体樹
脂が最適である。

さらに前記の低融点の樹脂に５〜４０重量多重量率で吸
湿性のあるポリビニールアルコール系樹脂、ポリアミド
系樹脂等を添加、混合することにより基材の胞子付着性
をより向上せしめることができた。

筐た前記高融点の合成繊維２ｂは、その融点が１３０℃
以上であることが構成上好ましい。

具体的には高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
アミド、ポリエステル、ポリビニールアルコール樹脂等
を溶融紡糸し繊維化されたものとするが、耐久性および
生物の付着難領域を意図的に形成させるためには疎水性
である高密度ポリエチレン。

ポリプロピレン樹脂が有効であり、その繊維の形態は発
泡糸・エンボス加工糸を含むモノフィラメント、フィル
ム、スプリットファイバー等剛さのある低伸度のものが
良好である。

さらに合糸時の高融点繊維２ｂに対する低融点繊維２ａ
の配合比率は各用途に応じ製品設計がなされるため一定
ではないが、付着性能を満足させるためには少なくとも
１０重重量板上が好ましいことが判明した。

なお熱処理方法は、一般的な網、綱等の熱処理装置をそ
の１オ使用することができ、その温度条件は低融点繊維
２ａの融点範囲を中心とし捷た処理時間は２分以上１５
分以内が適当である。

次にこの発明の応用例を示す。

応用例 １ （アマノリ養殖を対象とした海苔網） モノフィラメント押出成形機５０鬼、成形温度２２０〜
２６０’Ｃ，ノズル１駕ψ・３０ホール。

延伸温度６０℃、湿式、延伸倍率３．５．原糸繊度１５
００デニールの成形条件により、エチレン・酢酸ビニー
ル共重合体樹脂６７重景気 ポリビニールアルコール系
樹脂３０重景気添加剤少量の混合樹脂を溶融紡糸して得
た低融点モノフィラメント糸４本と通常公知の方法によ
り得た高密度ポリエチレンモノフィラメント糸（４００
７’ −１−−／ｌ／）８本とを抱き合わせて合糸し、
これにリング撚糸機で２６０回／ｍを加熱（右撚）して
得た下糸をさらに３本合わせ、リング撚糸機により１３
９／ｍの上撚（左撚）をかけて製作した撚糸を経糸、緯
糸に分け１．２５インチ型の有結節編網機で網目２ｓｓ
、％ｏ網地を編んだのち、６０℃・１多延伸の縦曳工程
、９５℃・５分間・４％延伸の横曳工程、目数・切断工
程、耳・口すき工程、仕上セット工程および検査工程を
経て製造されたアマノリ養殖を対象とした海苔網を製造
した（第３図参照）。

このようにして製造した海苔網（試料Ａ）と従来多用さ
れているポリビニールアルコール樹脂製モノフィラメン
ト糸（５００デニール）３６本合せの撚糸にて編製され
た海苔網（試料Ｂ）との比較試験例の結果は下表の通り
である。

ただし試験方法は下記による。

（イ）網糸結節強力・・・・・・ＪＩＳＬ１０３３−１
９５９−５． １０． １ （ロ）繰返し屈曲疲労・・・弊社製屈曲疲労試験機使用
条件−曲げ角度１２０度、・曲げ速度１８０ｒ−ｐ、ｍ
屈曲点曲率半径０．８ｍ／ｍ、荷重 １２００ｇｒ。

屈曲回数５０００回、湿時 ←→ 抱水率・・・ＪＩＳＬ１０３３−１９５９−５．
３に）海苔胞子付着数・・・顕微鏡１００倍７視野合計
数 上表の結果より、この応用例１は次の長所が認められた
。

（イ）強力が大きい。

（ロ）特に海苔網類の主要性能である屈曲疲労が小さい
。

（ハ）適度な抱水性があり胞子の付着が良好である。

応用例 ２ （ワカメの養殖を対象とした網） 応用例１で得た低融点モノフィラメント糸６本と、公知
の方法により得たポリプロピレン特殊モノフィラメント
糸（１０００デニール）９本とを抱き合わせて合糸し、
これに合せ機（４スピンナー）で５４回／ｍを加熱（左
撚）して作った下糸（ヤーン）をさらに１５本合わせて
ストランダ−機により４５ｍ１／ｒ１１ リードのロー
プストランド（右撚）を作り、これを３本合わせクロツ
サー機でピッチ４９ｒｒｙｍ、太さ１６ｒ］３／ｍの網
を製作したのち、９０℃・５分間・１％延伸の熱処理工
程、検査工程を経て製造されたワカメ養殖を対象とした
網を製造した。

応用例 ３ （ワカメの養殖を対象とした網） １４ｍ／ｒ１１太さの汎用ポリプロピレンロープに応用
例１で得た撚糸をピッチｌＯｍ／ｍで積巻きしたのち９
０℃、２分間、０．５％延伸の熱処理工程を経て製造さ
れたワカメの養殖を対象とした網を製造した。

応用例 ４ （モズクの養殖を対象とした織布） モノフィラメント押出成形機５０ｍ／ｍ、成形温度２４
０〜２７０℃、／ 、ｌ： ル１ ｍ／ ｍψ、３０ホ
ール、延伸温度８０℃湿式、延伸倍率４．５、原糸繊度
１５００デニールの成形条件により低密度ポリエチレン
樹脂９０重量俤、ポリアミド系樹脂８重量多、添加剤少
量の混合樹脂を溶融紡糸して得た低融点モノフィラメン
ト糸３本と公知の方法により得た高密度ポリエチレンモ
ノフィラメント糸（４００デニール）６本とを抱き合わ
せて合糸し、これにリング撚糸機で２８０回／ｍを加熱
（右撚）して作った下糸を、さらに３本合わせてリング
撚糸機により１５０回／ｍ（左撚）をかけて製作した撚
糸を密度５メツシュ／インチの経糸に、また公知の方法
により得た高密度ポリエチレンモノフィラメント撚糸（
４００デニール、三つ撚３０本）を密度５メツシュ／イ
ンチの緯糸にそれぞれ使用し、レピア織機にて製織した
のち１０５℃、１０分間、２％延伸の熱処理工程、検査
工程を経て製造されたモズクの養殖を対象とした織布を
製造した。

前記のように、この発明にかかる海藻用付着基材の製造
方法によれば、表面に複雑、かつ適度の硬さを有する固
形状の突起物を海藻養殖用付着基材に容易に形成させる
ことができるので、海藻胞子の付着性が良好となり、か
つ、基材の水中での剛性が著しく増加するので基材周辺
の換水性が向上し、付着胞子の生長を促進させるこυＳ
可能となる。

また、この発明にかかる海藻養殖用付着基材の製造方法
によれば、通常の網、綱等の製造工程の中で成し得るも
のでありその管理面でも何ら難しさを伴わず、簡単かつ
能率的であるという効果を生ずるのである。

【図面の簡単な説明】

図面は、この発明にかかる海藻養殖用付着基材の製造方
法の実施例を示すもので、第１図は海藻養殖用付着基材
の拡大正面図、第２図は製造途中の拡大正面図、第３図
は網状にした正面図、第４図は積巻ロープ状にした正面
図、第５図は織布状にした正面図、１は撚糸、２は繊維
、２ａは低融点の合成繊維、２ｂは高融点の合成繊維、
３は下糸、４は突起物である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 比較的低融点な合成繊維と比較的高融点な合成繊維
   とを２種以上複数本抱き合わせて合糸して撚糸を構成し
   、これで網、綱、織物等の繊維構造体を製作した後、前
   記低融点の合成繊維の融点範囲で熱処理を施して、低融
   点の合成繊維のみを断片的に跡ぎらせ、高融点の合成繊
   維の周囲に固形状の突起物を生ぜしめるようにしたこと
   を特徴とする海藻養殖用付着基材の製造方法。 ２ 比較的低融点な疎水性熱可塑性合成樹脂に５〜４０
   重量多重量率で吸湿性のあるポリビニールアルコール系
   又はポリアミド系樹脂を添加混合した混合樹脂を溶融紡
   糸して得た低融点合成繊維と、比較的高融点な疎水性合
   成樹脂を溶融紡糸して得た比較的高融点な合成繊維とを
   ２種以上複数本抱き合わせて合糸して撚糸を構成し、こ
   れで網、綱。 織物等の繊維構造体を製作した後、前記低融点の合成繊
   維の融点範囲で熱処理を施して、低融点の合成繊維のみ
   を断片的に跡ぎらせ、高融点の合成繊維の周囲に固形状
   の突起物を生ぜしめるようにしたことを特徴とする海藻
   養殖用付着基材の製造方法。