JPS582588B2 - ガス浸炭の前処理方法および装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はガス浸炭の前処理方法およびその装置、詳しく
はガス浸炭をすべき被処理物に付着した切削油剤を脱脂
する方法およびその装置に関する。

従来ガス浸炭の前処理として、例えばミッションギャ等
の被処理物に付着した切削油剤を脱脂する場合、有機溶
剤を主成分とする脱脂剤により脱脂し、次に付着した脱
脂剤を取り除く方法が用いられていた。

しかしながらかかる前処理方法では有機溶剤による環境
汚染が発生し、これが対策のためには多くの費用、時間
を要していた。

又脱脂剤による脱脂工程後に、水洗、エヤブロ一工程等
脱脂剤を除去するための諸工程を要し、被処理物をガス
浸炭炉に装入する迄にかなりの時間を要するため、被処
理物が錆びやすいという欠点があった。

また一般に火炎空焼きにより直接的に油脂類を焼失させ
て脱脂する方法も知られているが、この方法では燃焼残
留物の付着、鋼材組織の変化等の問題があり、ガス浸炭
の前処理方法として採用できないものである。

本発明は叙上の諸点に鑑みてなされたものであり、その
目的とする処は有機溶剤を使用することなくしかも被処
理物に有害な酸化皮膜を発生させずに被処理物に付着し
た切削油剤を脱脂することにあり、その特徴とする処は
脱脂炉を用い、該脱脂炉内の雰囲気を制御しつつ、この
雰囲気中にて被処理物を加熱してこれに付着した油を燃
焼させることなく気化させ、次に加熱された被処理物を
直ちにガス浸炭炉へ送入して、脱脂工程で加えられた熱
を有効に利用するようにしたことを特徴とするガス浸炭
の前処理方法およびその装置にある。

以下本発明の実施例を図面に基き説明する。

第１図はガス浸炭の前処理装置のレイアウト図であり、
同図に於で１はガス浸炭炉２に隣接して設けた脱脂炉３
と該脱脂炉により脱脂された被処理物を前記ガス浸炭炉
２に送入する送入手段４とからなるガス浸炭の前処理装
置である。

切削油剤の付着したミッションギャ等の被処理物はチャ
ージカー或いは鋼製パレット内に収納されて搬送用テー
ブル５上に載置されプッシャー６により脱脂炉３内に送
りこまれる。

次に脱脂炉３により後述するように脱脂された前記被処
理物を送入手段４により、詳しくはローラーコンベヤ７
、ターンテーブル８、ローラーコンベヤ９上を順次プッ
シャー１０、プツシャ−１１により搬送してガス浸炭炉
２へ送入する。

１２はガス浸炭炉２の出口側に連接した焼入れ槽、１３
は焼入れ槽からの被処理物の搬出装置である。

第２図は第１図における脱脂炉３のＩＩ−ＩＩ断面図で
あり、同図に於て１６は前述したようにして被処理物を
収納して脱脂炉本体２０内に収容されたパレット、２２
は炉本体２０内に熱ガスを送給する都市ガス燃焼用の直
火式のガスバーナー、２３は前記ガスバーナーの点火器
、２４は前記ガスバーナーへの空気を予熱する間接加熱
式熱交換器であり、該熱交換器は空気供給管２６を介し
て流入する前記空気をガス浸炭炉２の排気により加熱す
るようにしてあり、２８はこの排気の熱交換器への導入
管である。

ガス浸炭炉の排気は還元性を呈し、熱交換器の入口で８
００〜８５０℃の温度であり、これによって前記空気を
２００℃（熱交換器出口空気温度）程度に加熱し、この
加熱された空気を流量制御弁３６を経てファン２９によ
りガスバーナー２２のガス噴出孔部３０に圧送させる。

また前記熱交換器によりガス浸炭炉の排気を後述するよ
うに脱脂炉３へ送入するに際し適温（例えば４００℃程
度）まで低下させることができる。

３２は都市ガスを前記ガスバーナー２２に供給するガス
供給管、３３はこの供給管に設けた流量制御弁である。

３４は炉内雰囲気温度を検知棒３５により検知して、こ
の検知温度を電気信号として制御器３７にフィードバッ
クする温度センサーであり、前記制御器３７は前記フィ
ードバック信号を受けてこれに設定した温度と前記検知
温度との偏差の量に比例した量の制御信号をガスの流量
制御弁３３と前記空気の流量制御弁３６とに発信しこれ
等の弁の開度を前記制御信号に応じて調節してガスバー
ナー装置２２の発熱量を制御することにより炉本体２０
内の雰囲気温度を設定温度に保持する。

ここで前記設定温度は被処理物１６に付着した切削油剤
の当該雰囲気下における発火点以下の温度とし、この温
度範囲は通常使用される切削油剤において５００±２０
℃程度である。

また熱交換器２４に流入した浸炭用ガスの排気を管路２
７を介してファン３８により炉本体２０内に送入し、こ
の送入された排気とガスバーナ２２からの熱ガスとを炉
内においてファン４０により混合し、これを強制流動さ
せながら、炉内４４の雰囲気を前述した５００±２０℃
にするものであり、この炉内雰囲気中で被処理物１６を
適宜設定した時間加熱することによりこれに付着した切
削油剤を燃焼させることなく完全に気化させて脱脂する
。

この脱脂条件としては被処理物に切削油剤が通常の状態
で付着している場合この被処理物が前記雰囲気温度まで
加熱された後１０分程度炉内におくのが適当である。

すなわち加熱中にたとえ被処理物の表面に酸化鉄系の初
期皮膜が形成されても次の工程であるガス浸炭工程でこ
の皮膜が還元されて消失するので、これが本発明を可能
にする所以であるが、炉内時間が永すぎると酸化被膜が
過度に成長するので好ましくない。

また４５０℃以下の条件では被処理物例えば前記ギヤ等
の四所にたまった油が気化しない内にスラツジ状になっ
て残留するため不適である。

尚、前述したようにしてガス浸炭炉２の還元性を呈する
排気を炉内４４Ｋ送入すれば酸化膜の生成が更に抑制さ
れて時間制御が容易になり、また熱交換器２４において
前記排気を利用してガスバーナ２２への空気を予熱する
ことにより熱経済を計りうると共にガスバーナ２２の燃
焼効率を高め得、従って余剰空気を減少させることがで
きるから炉内４４の酸素分圧も低下し、これによって更
に酸化膜の生成を抑制し得る。

但し前記排気は急燃性に富むのでガスバーナ２２の火炎
に直接接触させるのは好ましくなく、３９はこのために
設けたバツフルである。

前述したようにして気化油剤と前記可燃性の排気を含ん
だ炉内雰囲気ガスは通孔４６を通って燃焼室４７に流入
し、該燃焼室４７において別のガスバーナー４８から燃
焼熱と酸素との供給をうけて前記気化油剤等が燃焼し、
この燃焼ガスは管路４９を通過しつつ管壁５０を介して
燃焼熱を炉内雰囲気に伝え、次に管路５１を介して図外
の熱交換器に導かれ、例えばガス浸炭炉のバーナ給気を
加熱する。

前述した様にして被処理物の脱脂が終了すると図外の油
圧シリンダー装置が作動し、そのピストンロツド５４，
５４が上動して出口側扉５６を開き、直ちにパレット１
６を前記送入手段４（第１図）によりガス浸炭炉２に送
入する。

これにより送人工程での酸化膜の生成が抑制されまた脱
脂炉で受けた熱をガス浸炭炉へ持ちこませることでこの
浸炭炉での処理時間を短縮することができ、小型自動車
用ミッショ塔ギヤについての本発明のトライアル結果に
よればガス浸炭炉における昇温時間を従来の２．７時間
から１．５時間に短縮し得た。

以上の操作によりガス浸炭の前処理は終了する。

本発明は以上のように構成したので、有害な有機溶剤を
用いることなく被処理物の脱脂をおこないうるとともに
、脱脂炉内における加熱中にたとえ被処理物表面に初期
酸化皮膜が形成されたとしても、次工程でのガス浸炭炉
内雰囲気を利用してこの酸化皮膜を除去させることがで
きる。

更に脱脂炉を加熱するだめのバーナ燃焼用空気を予熱し
バーナーの燃焼効率を高めて余剰空気の量を減量するこ
とにより該脱脂炉内雰囲気を酸化膜が生成され難いもの
とすることができるほか、前記予熱用熱ガスとしてガス
浸炭炉の排気を用いるとともに熱交換を終えて適温とし
た前記排気を脱脂炉へ送入するようにすれば熱経済が計
られるとともに更にまた脱脂炉内雰囲気を改善しうるも
のである。

そして加熱脱脂処理を終えた被処理物を直ちにガス浸炭
炉へ送入するようにしたのでその送入過程での酸化皮膜
生成を抑制しうるとともに、脱脂炉で加熱した熱をガス
浸炭炉において有効に利用することができるものである
。

【図面の簡単な説明】

第１図はガス浸炭の前処理装置のレイアウト（上面図）
、第２図は第１図における脱脂炉３のＩＩ−ＩＩ断面図
。 １・・・・・・ガス浸炭の前処理装置、２・・・・・・
ガス浸炭炉、３・・・・・脱脂炉、４・・・・・・送入
手段、５・・・・・・搬送用テーブル、６・・・・・・
プツシャー，７，９・・・・・・ローラーコンベヤ、８
・・・・・・ターンテーブル、１０，１１・・・・・・
プツシャー、１２・・・・・・焼入れ槽、１３・・・・
・・搬出装置、１６・・・・・・パレット、２０・・・
・・・脱脂炉本体、２２・・・・・・ガスバーナー、２
３・・・・・・点火器、２４・・・・・・間接加熱式熱
交換器、２６・・・・・・空気供給管、２７，２８・・
・・・・管路、２・９・・・・・・ファン、３０・・・
・・・ガス噴出孔部、３２・・・・・・ガス供給管、３
３・・・・・・流量制御弁、３４・・・・・・温度セン
サー、３５・・・・・・検知棒、３６・・・・・・流量
制御弁、３７・・・・・・制御器、３８・・・・・・フ
ァン、３９・・・・・・バツフル、４０・・・・・・フ
ァン、４１・・・・・・都市ガス炎、４４・・・・・・
炉内、４６・・・・・・ガス通孔、４７・・・・・・燃
焼室、４８・・・・・・別のガスバーナー、４９・・・
・・・管路、５０・・・・・・管壁、５１・・・・・・
管路。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 脱脂炉を用い、該脱脂炉内に雰囲気ガスを流しつつ
   その雰囲気温度を被処理物に付着している油の当該雰囲
   気下における発火点以下に制御し、この制御された雰囲
   気ガス中に被処理物を置いて該被処理物を加熱すること
   により付着油を気化させ、次に加熱された被処理物を直
   ちにガス浸炭炉へ送入することを特徴とするガス浸炭の
   前処理方法。 ２ 雰囲気ガスがガス浸炭炉の排気を含むことを特徴と
   する特許請求の範囲第１項記載のガス浸炭の前処理方法
   。 ３ ガス浸炭炉に隣接されて被処理物を収容できる脱脂
   炉本体と、該脱脂炉本体内に熱ガスを送給するためのバ
   ーナーと、該バーナーへの燃料および空気を調量する弁
   手段と、前記空気を加熱する熱交換器と、脱脂炉本体内
   の雰囲気温度を検知して前記弁手段の開度調節をするこ
   とにより該雰囲気温度を前記被処理物に付着している油
   の当該雰囲気下における発火点以下に制御する制御手段
   と、ガス浸炭炉と脱脂炉本体との間に介装されて該本体
   からの被処理物をガス浸炭炉へ送入する送入手段とを設
   けて構成したことを特徴とするガス浸炭の前処理装置。 ４ 前記熱交換器の熱源として前記ガス浸炭炉の排気を
   用いて前記脱脂炉内に導き、かつ前記バーナーへの空気
   を前記ガス浸炭炉の排気により予熱する構成にしたこと
   を特徴とする特許請求の範囲第３項に記載のガス浸炭の
   前処理装置。