JPH119715A - 多段ブーム式消防車 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 短時間にしかも少ない水もしくは消火剤での
消火を可能にする。 【解決手段】 水平旋回座１２に下部ブーム１３の下端
を回動自在に支持し、下部ブーム１３に上部ブーム１４
及び伸縮ノズル管１７を回動自在に設け、建物の一部を
破壊して通路を形成する破壊装置と破壊装置により形成
された通路に挿入され水や消火剤を円盤状に噴霧する噴
霧装置を伸縮ノズル管１７に設け、破壊装置により形成
された通路から噴霧装置を挿入して水や消火剤を円盤状
に噴霧することで、水膜により酸素を遮断して室内を満
遍なく放水・消火し極少ない水量で短時間に機械的に消
火し、短時間にしかも少ない水もしくは消火剤での消火
を可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は多段ブーム式の消防
車に関し、短時間にしかも少ない水もしくは消火剤での
消火を可能にしたものである。

【０００２】

【従来の技術】火災が発生した場合、火災中の部屋の窓
付近にはしご車のはしごの先端部を臨ませ、はしごの先
端部に消防隊員が陣取って建屋内部に向かって放水を行
なうようにしている。この時、フラッシュオーバが生じ
て火炎が爆発的に拡大すると、消防隊員が重大な危険に
さらされてしまうことになる。

【０００３】このため、消防隊員が火炎に接近すること
なく消火活動が行なえるように、屈曲式の放水塔を備え
た消防車が用いられるようになってきている。屈曲式の
放水塔を備えた消防車は、遠隔操作で窓ガラス等を突き
破り、放水ノズルを火災中の室内に覗かせて放水を行な
うものである。

【０００４】図４に基づいて屈曲式の放水塔を備えた消
防車の構成を説明する。図４には屈曲式の放水塔を備え
た消防車の全体状況を示してある。

【０００５】図４に示すように、車両１には鉛直軸回り
で回動自在に水平旋回座２が設けられ、水平旋回座２に
は下部ブーム３の基端が水平軸回りで回動自在に支持さ
れている。下部ブーム３の先端には上部ブーム４の基端
が水平軸回りで回動自在に支持され、上部ブーム４の先
端には放水銃５及び破壊装置６が設けられている。破壊
装置６としては、ばね力によってスチール製の矢を発射
して窓ガラス等を突き破るもの等が使用される。

【０００６】水平旋回座２と下部ブーム３とにわたって
油圧シリンダー７が設けられ、油圧シリンダー７の駆動
によって水平旋回座２に対して下部ブーム３を基端部を
中心に回動させる。下部ブーム３と上部ブーム４とにわ
たって油圧シリンダー８が設けられ、油圧シリンダー８
の駆動によって下部ブーム３に対して上部ブーム４を基
端部を中心に回動させる。水平旋回座２の旋回、下部ブ
ーム３及び上部ブーム４の回動により放水銃５及び破壊
装置６を所望の位置に移動させる。尚、図３中の符号で
９はアウトリガーで、アウトリガー９を伸展させること
により車両１を所定位置に安定させる。

【０００７】上述した消防車では、アウトリガー９を伸
展させて車両１を火災現場近傍の所定位置に安定させ、
水平旋回座２を旋回させると共に、油圧シリンダー７，
８の駆動により下部ブーム３及び上部ブーム４を回動さ
せ、上部ブーム４の先端の放水銃５及び破壊装置６を火
災発生箇所に対向させる。破壊装置６によりガラス窓や
壁等を突き破り、そこから放水銃５の先端を火災発生箇
所に覗かせて大量放水する。これにより、消防隊員が火
災発生箇所に近づくことなく消火活動を実施することが
でき、消防隊員の安全性が高まる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】従来の消防車では、以
下に示した問題が生じていた。

【０００９】消火活動できる空間が狭いことが多い。市
街地等は狭い道路が多く、また、地上には違法駐車や自
動販売機が存在し、空中には電柱や電線等が存在してい
る。このため、屈曲式の放水塔を備えた大きな車体の消
防車は路地等に入りにくく、例え火災現場に到着できて
も、はしごや屈曲式の放水塔を自由に動かして使用する
ことは実際上制約がある火災現場が多い。そこで、場所
的に制約がある火災現場では比較的小型の消防車で出動
し、消防隊員が走り回って消防ホースを引回し、火炎や
煙の危険に曝されながら放水を行なっているのが現状で
ある。近年は、人家が密集している地域に木造３階建て
等の簡易耐火建物が急増しており、消防隊員の肉体的負
担は益々過酷になり、危険度合いも増加している。

【００１０】消火に使用する水量が多い。屈曲式の放水
塔を備えた消防車では、突き破った開口部近傍の建屋内
部に放水銃５から確実に放水できるが、鎮火に至るまで
に使用される放水量及び放水流量が多い。また、火災中
の建屋に向かって消防隊員が外側から放水しても、建屋
内の火災部分に直接水がかかりにくく、鎮火に至るまで
に使用される放水量及び放水流量が多い。

【００１１】消火用水により、焼けなかった場所まで水
浸しになる。屋内への放水には死角が生じ、鎮火までに
大量の水を必要とする。上階に放水した場合階下に大量
の水が流れるため、上階が首尾よく鎮火しても階下には
大量の水が漏れてしまう。このため、家具や建屋を必要
以上に、時には使用できない程に損傷し、水による被害
を与えてしまう。

【００１２】本発明は上記状況に鑑みてなされたもの
で、短時間にしかも少ない水もしくは消火剤での消火を
可能にした多段ブーム式消防車を提供することを目的と
する。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の多段ブーム式消防車は、複数のブームが互いに
回動自在に連結された複数ブームの初段ブームの開放端
を前後左右に回動自在に車両に設置し、建物の一部を破
壊して通路を形成する破壊装置を前記複数ブームの最終
段ブームの開放端に設け、前記破壊装置により形成され
た前記通路に挿入され水や消火剤を円盤状に噴霧する噴
霧装置を前記最終段ブームに設け、前記複数ブームの前
記ブームをそれぞれ回動させる回動手段を備えたことを
特徴とする。

【００１４】そして、前記複数ブームの前記最終段ブー
ムを伸縮自在としたことを特徴とする。また、前記複数
ブームの全ての前記ブームを伸縮自在としたことを特徴
とする。

【００１５】

【発明の実施の形態】図１には本発明の一実施形態例に
係る多段ブーム式消防車の全体状況、図２には放水ノズ
ルの断面、図３には図２中のIII-III 線矢視を示してあ
る。

【００１６】図１に示すように、車両１１には鉛直軸回
りで回動自在に水平旋回座１２が設けられ、水平旋回座
１２には初段ブームとしての下部ブーム１３の開放端と
しての基端が水平軸回りで回動自在に支持されている。
下部ブーム１３の先端には上部ブーム１４の基端がリン
ク１５を介して水平軸回りで回動自在に支持され、上部
ブーム１４の先端にはリンク１６を介して最終段ブーム
としての伸縮ノズル管１７が水平軸回りで回動自在に支
持されている。

【００１７】伸縮ノズル管１７は図示しない伸縮手段に
より軸方向に伸縮自在となり、伸縮ノズル管１７の開放
端としての先端には破壊装置及び噴霧装置としての放水
ノズル１８が設けられている。車両１１には水（消火
剤）が蓄えられるタンク１９が備えられ、送水管２０を
介してタンク１９内の水（消火剤）が放水ノズル１８に
供給される。

【００１８】下部ブーム１３、上部ブーム１４及び伸縮
ノズル管１７により３本のブームが互いに回動自在に連
結された複数ブームが構成され、水平旋回座１２の旋回
及び水平旋回座１２に対する下部ブーム１３の回動によ
り下部ブーム１３は車両１１に対して前後左右に回動自
在に設置された状態になっている。車両１１にはアウト
リガー１０が設けられ、アウトリガー１０を伸展させる
ことにより車両１１を所定位置に安定させる。

【００１９】水平旋回座１２には下部ブーム１３を回動
させる回動手段（図示省略）が設けられている。また、
下部ブーム１３には回動手段としての油圧シリンダー２
１の本体２１ａが設けられ、油圧シリンダー２１のロッ
ド２１ｂはリンク１５に連結されている。上部ブーム１
４には回動手段としての油圧シリンダー２２の本体２２
ａが設けられ、油圧シリンダー２２のロッド２２ｂはリ
ンク１６に連結されている。

【００２０】油圧シリンダー２１，２２の駆動により、
本体２１ａ，２２ａに対してロッド２１ｂ，２２ｂがそ
れぞれ伸縮し、下部ブーム１３に対して上部ブーム１４
及び上部ブーム１４に対して伸縮ノズル管１７がそれぞ
れ回動する。尚、下部ブーム１３及び上部ブーム１４を
伸縮ノズル管１７と同様に伸縮管によって形成し、複数
アームの全てを伸縮自在とすることも可能である。

【００２１】水平旋回座１２の旋回、下部ブーム１３、
上部ブーム１４及び伸縮ノズル管１７の回動、伸縮ノズ
ル管１７の伸縮によって破壊装置及び噴霧装置としての
放水ノズル１８を所望の位置に移動させる。

【００２２】図２、図３に基づいて放水ノズル１８を説
明する。放水ノズル１８は、建物の一部を破壊して通路
を形成する部位と、通路に挿入されて水（消火剤）を円
盤状に噴霧する部位とが一体に形成されている。

【００２３】図に示すように、上部ブーム１４の先端に
延びる送水管２０の先端には、軸受２３を介して先端が
尖った硬い刃物となった破壊刃２４が回転自在に支持さ
れている。上部ブーム１４を伸長させることにより、破
壊刃２４の先端で窓ガラス等の建物の一部を破壊して通
路を形成する。破壊刃２４は中空状をなし、周方向の４
箇所には斜めに延びて外部に開口する噴出孔２５が形成
されている。送水管２８から破壊刃２４の内部に水が圧
送されると、噴出孔２５から斜め放射状に水が噴出す
る。この時、噴出の反動で破壊刃２４が回転し、円盤状
の水膜が発生するようになっている。

【００２４】一方、図１に示すように、車両１１には制
御盤２６が設けられ、水平旋回座１２旋回、下部ブーム
１３の回動、油圧シリンダー２１，２２の駆動（上部ブ
ーム１４及び伸縮ノズル管１７の回動）、伸縮ノズル管
１７の伸縮、水の供給等を制御する。ブームの位置制御
や水の供給制御は、消防隊員２７が火災の状況を判断し
ながらマスタスレーブ式等の機側操縦装置２８や無線操
縦装置２９を操作することにより実施され、遠隔操作で
消火活動が行なわれるようになっている。

【００２５】尚、上述した消防車の複数ブームは、下部
ブーム１３、上部ブーム１４及び伸縮ノズル管１７とで
構成したが、４本以上のブームまたは２本のブームによ
って複数ブームを構成することも可能である。

【００２６】上記構成の多段ブーム式消防車による消火
状況を図１に基づいて説明する。以下の操作は、機側操
縦装置２８もしくは無線操縦装置２９によって遠隔で行
なわれる。

【００２７】火災現場の建屋３１の近傍に車両１１を接
近させる。伸縮ノズル管１７を縮めた状態で水平旋回座
１２を旋回させると共に、油圧シリンダー２１，２２の
駆動により下部ブーム１３、上部ブーム１４及び伸縮ノ
ズル管１７を回動させ、放水ノズル１７の位置を火災中
の窓の外側に位置決めする。この位置でアウトリガー１
０を伸展して車両１１を安定させる。

【００２８】伸縮ノズル管１７を伸長させ、硬い刃物に
なった破壊刃２４の先端で窓ガラスや壁等の建物の一部
を破壊して通路を形成する。更に、伸縮ノズル管１７を
伸長させて破壊刃２４を通路から建物の内部に挿入し、
送水管２０から破壊刃２４の内部に水を圧送する。これ
により、噴出の反動で破壊刃２４が回転し、室内に円盤
状の水膜が噴霧される。

【００２９】円盤状の水膜を形成した状態で伸縮ノズル
管１７を伸長させ、室内に窓側から水膜を形成してい
く。水膜により酸素が遮断され、窓から吹き出している
火炎は一瞬のうちに白煙となる。次に、床、天井、壁面
に連続した閉じた線状に満遍なく放水・消火され、ごく
短時間に煙の量が減少して鎮火にいたる。

【００３０】上述した多段ブーム式消防車では、極少な
い水量で短時間に機械的に消火することができる。この
ため、車両に搭載した水（消火剤）だけでの初期消火が
可能になり、家具等の水漏れ損害の被害を最小限に止め
ることができると共に、消防車を小型化でき進入の規制
が大幅に減少する。また、人が火元に近づけない火災で
あっても接近して消火を行なうことが可能となる。この
ため、消火活動に当たる人の人数及び作業量を減らし、
安全性を高めることが可能となる。

【００３１】また、伸縮ノズル管１７を備えたことによ
り、複雑なブームの操作をすることなく容易な操作で水
膜を室内に走査させることができる。また、ブームに付
属する油圧シリンダー２１，２２等が直接炎ににさらさ
れることがない。更に、屋外の下部ブーム１３、上部ブ
ーム１４が動かずに伸縮ノズル管１７が伸縮するだけな
ので、電柱３２や電線３３が消火活動の妨げになること
がなく、放水ノズル１８の動きが予測し易く容易に狙い
をつけることができる。

【００３２】

【発明の効果】本発明の多段ブーム式消防車は、複数の
ブームが互いに回動自在に連結された複数ブームの初段
ブームの開放端を前後左右に回動自在に車両に設置し、
建物の一部を破壊して通路を形成する破壊装置を前記複
数ブームの最終段ブームの開放端に設け、前記破壊装置
により形成された前記通路に挿入され水や消火剤を円盤
状に噴霧する噴霧装置を前記最終段ブームに設け、前記
複数ブームの前記ブームをそれぞれ回動させる回動手段
を備えたので、破壊装置により形成された通路から噴霧
装置を挿入して水や消火剤を円盤状に噴霧することで、
水膜により酸素を遮断して室内が満遍なく放水・消火さ
れる。この結果、極少ない水量で短時間に機械的に消火
することができると共に、人が火元に近づけない火災で
あっても接近して消火を行なうことが可能となり、家具
等の水漏れ損害の被害を最小限に止めることができると
共に、消火活動に当たる人の人数及び作業量を減らし、
安全性を高めることが可能となる。

【００３３】また、前記複数ブームの前記最終段ブーム
もしくは前記複数ブームの全ての前記ブームを伸縮自在
としたので、複雑なブームの操作をすることなく容易な
操作で水膜を室内に走査させることができ、ブームに付
属する回動手段等が直接炎ににさらされることがない。
また、消火中は屋外の複数ブームが動かずに最終段ブー
ムが伸縮するだけなので、電柱や電線が消火活動の妨げ
になることがなく、噴霧装置の動きが予測し易く容易に
狙いをつけることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態例に係る多段ブーム式消防
車の全体状況図。

【図２】放水ノズルの断面図。

【図３】図２中のIII-III 線矢視図。

【図４】屈曲式の放水塔を備えた消防車の全体状況図。

【符号の説明】

１１ 車両 １２ 水平旋回座 １３ 下部ブーム １４ 上部ブーム １５，１６ リンク １７ 伸縮ノズル管 １８ 放水ノズル １９ タンク ２０ 送水管 ２１，２２ 油圧シリンダー ２１ａ，２２ａ 本体 ２１ｂ，２２ｂ ロッド ２３ 軸受 ２４ 破壊刃 ２５ 噴出孔 ２６ 制御盤 ２７ 消防隊員 ２８ 機側操縦装置 ２９ 無線操縦装置 ３１ 電柱 ３２ 電線

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数のブームが互いに回動自在に連結さ
   れた複数ブームの初段ブームの開放端を前後左右に回動
   自在に車両に設置し、建物の一部を破壊して通路を形成
   する破壊装置を前記複数ブームの最終段ブームの開放端
   に設け、前記破壊装置により形成された前記通路に挿入
   され水や消火剤を円盤状に噴霧する噴霧装置を前記最終
   段ブームに設け、前記複数ブームの前記ブームをそれぞ
   れ回動させる回動手段を備えたことを特徴とする多段ブ
   ーム式消防車。
2. 【請求項２】 請求項１において、前記複数ブームの前
   記最終段ブームを伸縮自在としたことを特徴とする多段
   ブーム式消防車。
3. 【請求項３】 請求項１において、前記複数ブームの全
   ての前記ブームを伸縮自在としたことを特徴とする多段
   ブーム式消防車。