JPH1194040A - 遊星ローラ式変速機の組立方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】遊星ローラ式変速機の組立方法において、簡単
かつ迅速に組み立てできるようにし、生産性の向上を図
ること。 【解決手段】円形の固定輪１を、遊星ローラ３の使用数
に応じて略多角形状に弾性変形させ、この弾性変形させ
た固定輪１の内周に、太陽軸２と複数の遊星ローラ３と
を軸方向片側から挿入してから、固定輪１を略多角形状
から円形に弾性的に復元させる。このように、固定輪１
を弾性変形させるのに要する時間は、従来の焼き嵌め形
態のように加熱や冷却を行う時間に比べて遥かに短くて
済む。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、遊星ローラ式変速
機の組立方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、遊星ローラ式変速機を組み立
てるとき、一般的に、いわゆる焼き嵌め方法が用いられ
ている。つまり、固定輪を加熱してその内径を膨張させ
ておいて、遊星ローラ、キャリア、太陽軸を組み込むよ
うにしている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来例
のように、固定輪に対して遊星ローラ、キャリア、太陽
軸を焼き嵌めにより組み込む形態では、固定輪に対する
加熱と、組み込み後の冷却とに多大な時間を要するな
ど、生産性が悪いことが指摘される。

【０００４】したがって、本発明は、遊星ローラ式変速
機の組立方法において、簡単かつ迅速に組み立てできる
ようにし、生産性を向上することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１の遊星
ローラ式変速機の組立方法は、固定輪と、その内周に同
心状に挿通される太陽軸との間に、複数の遊星ローラが
圧接状態に介装され、これら各遊星ローラの中心に遊星
軸が挿入され、これら各遊星軸の一端が太陽軸と同軸状
に配設される軸体に支持される構造の遊星ローラ式変速
機を組み立てる方法であって、円形の固定輪を、遊星ロ
ーラの使用数に応じて略多角形状に弾性変形させ、この
弾性変形させた固定輪の内周に、太陽軸と複数の遊星ロ
ーラとを軸方向片側から挿入してから、固定輪を略多角
形状から円形に弾性的に復元させる。

【０００６】本発明の請求項２の遊星ローラ式変速機の
組立方法は、上記請求項１の遊星ローラ式変速機の組立
方法において、前記固定輪を弾性変形させるときに、互
いの向き合う側に固定輪の約半分が嵌まりかつ互いを近
づける側に変位させて固定輪を略多角形状に弾性変形さ
せる凹部を有する２つ一対の治具を用いる。

【０００７】本発明の請求項３の遊星ローラ式変速機の
組立方法は、上記請求項２の遊星ローラ式変速機の組立
方法において、前記治具が、ほぼＶ字形の凹部を有する
ものとされる。

【０００８】このような本発明では、単に固定輪を弾性
変形させてから、復元させるだけであるので、従来例の
ように多大な時間を要する加熱や冷却を行う形態に比べ
て遥かに簡単かつ迅速に組み立てできるようになる。

【０００９】特に、請求項２の方法のように、２つ一対
の治具を用いて固定輪を弾性変形させれば、固定輪の弾
性変形状態を一定に保ちやすくなるなど、太陽軸や遊星
ローラの組み込み作業をより簡単に行えるようになる。

【００１０】さらに、請求項３の方法のように、前記治
具の凹部の形状をほぼＶ字形にしたものを用いれば、固
定輪を略正方形状に弾性変形させることができ、４個の
遊星ローラを用いる場合に適したものとなる。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の詳細を図１ないし図８に
示す実施形態に基づいて説明する。

【００１２】図１ないし図５は本発明の一実施形態にか
かり、図１は、遊星ローラ式変速機の上半分を断面にし
た側面図、図２は、図１の遊星ローラ式変速機の正面
図、図３ないし図５は、遊星ローラ式変速機の組立方法
を示す工程図である。

【００１３】図例の遊星ローラ式変速機は、固定輪１
と、固定輪１の内周に同心状に軸端が挿通される太陽軸
２と、太陽軸２の軸端と固定輪１の内周との間に圧接状
態で介装される複数の遊星ローラ３と、各遊星ローラ３
の公転と同期回転するキャリア４とを具備している。

【００１４】前述のキャリア４は、いわゆるピンタイプ
と呼ばれるもので、太陽軸２と同心状に設けられる軸体
５と、軸体５が中心に圧入嵌合される環状板６と、環状
板６の外周側の円周数カ所に設けられる貫通孔６ａに圧
入嵌合される複数の遊星軸７とを備える構成である。こ
の遊星軸７が、転がり軸受８を介して遊星ローラ３の中
心孔に挿通される。この転がり軸受８は、針状ころおよ
び保持器からなるケージアンドローラとされる。

【００１５】なお、９は遊星ローラ３の軸方向位置規制
用のプレート、１０，１１は転がり軸受８の軸方向位置
規制用の止め輪、スリーブ、１２は太陽軸２とキャリア
４の軸体５との間に設けられるボールである。

【００１６】次に、上記構成の遊星ローラ式変速機の組
み立て方法を説明する。ここでの遊星ローラ式変速機
は、４個の遊星ローラ３を用いるタイプを例に挙げる。
そして、この組立方法では、２つ一対の治具２０，３０
を用いる。これらの治具２０，３０は、それぞれ、互い
を合わせた状態でほぼ正方形の空間を形成するようなＶ
字形の凹部２１，３１が設けられており、上下に互いに
遠近移動自在に支持されている。

【００１７】まず、太陽軸２、遊星ローラ３、キャリア
４を組み立てておき、固定輪１の単体を、図３に示すよ
うに、第１治具２０の凹部２１の内面上に載せる。この
固定輪１の外周面に対して第２治具３０の凹部３１の内
面をあてがう。そして、図４に示すように、両治具２
０，３０を近接させる向きに押圧することにより、円形
の固定輪１をほぼ正方形に弾性変形させる。これによ
り、正方形に弾性変形した固定輪１の対角間隔が、円形
であった固定輪１の内径寸法よりも大きく広がることに
なる。この状態で、太陽軸２、遊星ローラ３、キャリア
４を組み立てたユニットを、固定輪１の内周部分に嵌め
入れてから、図５に示すように、両治具２０，３０を引
き離す。これにより、固定輪１の形状が正方形から円形
に弾性的に復元して、固定輪１と太陽軸２とに対して遊
星ローラ３が径方向で圧接されることになる。なお、図
４では固定輪１の変形状態が分かりやすいように、変形
量を実際よりも大きく誇張して記載している。実際に
は、固定輪１は、固定輪１と遊星ローラ３との間のしめ
しろがなくなる程度に、ごくわずかに変形する程度であ
る。また、前述の２つの治具２０，３０の移動について
は、プレス機を用いて行うことができる。

【００１８】このように、固定輪１を弾性変形させるだ
けのきわめて簡単かつ迅速な作業でもって組み立てを完
了することができる。つまり、上記実施形態の組み立て
方法では、従来の焼き嵌め方法のような加熱や冷却とい
った多大な時間がかかる工程のすべてを排除できるの
で、この従来例に比べて、組み立てに要する手間や時間
を大幅に短縮できるようになり、生産性の向上に大きく
貢献できるようになる。なお、本発明は上記実施形態の
みに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考え
られる。

【００１９】（１） 上記実施形態では、弾性変形させ
た固定輪１に対して、太陽軸２、遊星ローラ３、キャリ
ア４を組み立てたユニットを、組み込むとしているが、
太陽軸２と複数の遊星ローラ３とを組み入れてから、こ
の遊星ローラ３に対してキャリア４を組み込むようにし
てもよい。この場合、複数の遊星ローラ３を組み込むと
きに、遊星ローラ３を１つずつ組み入れてもよいし、あ
るいはキャリア４に近似した形状の治具を用いて、複数
の遊星ローラ３を一度に組み入れるようにしてもよい。

【００２０】（２） 上記実施形態では、４個の遊星ロ
ーラ３を用いる場合を例示しているが、３個の遊星ロー
ラ３を用いる場合には、図６ないし図８に示すような治
具２０Ａ，３０Ａを用いればよい。この片方の治具３０
Ａは、上述したような凹部を備えておらず、平坦になっ
ており、Ｖ字形の凹部２１Ａを備える残り片方の治具２
０Ａと組み合わせれば、ほぼ三角形の空間を形成するこ
とができる。この場合の組み立ての手順については上記
実施形態で説明したものと同一であるので、ここでの説
明は割愛する。なお、図７も、図４と同様に固定輪１の
変形を誇張して記載している。

【００２１】（３） 上記実施形態で説明した遊星ロー
ラ式変速機の細部における構成については、任意に変更
することができる。

【００２２】

【発明の効果】請求項１ないし３の発明では、固定輪を
弾性変形させるだけで、従来の焼き嵌め形態のように加
熱や冷却に要する時間を省略できるので、組み立てに要
する手間や時間を大幅に短縮できるようになるなど、生
産性の大幅な向上に貢献できるようになる。

【００２３】特に、請求項２の発明では、２つ一対の治
具を用いて固定輪を弾性変形させるから、固定輪の弾性
変形状態を一定に保ちやすくなるなど、太陽軸や遊星ロ
ーラの組み込み作業をより簡単に行うことができるよう
になる。

【００２４】さらに、請求項３の発明のように、治具の
凹部の形状をほぼＶ字形にしたものを用いれば、固定輪
を略正方形状に弾性変形させることができ、４個の遊星
ローラを用いる場合に適したものとなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態の遊星ローラ式変速機の上
半断面を示す側面図

【図２】図１の遊星ローラ式変速機の正面図

【図３】上記実施形態の遊星ローラ式変速機の組立方法
の第１工程図

【図４】上記実施形態の遊星ローラ式変速機の組立方法
の第２工程図

【図５】上記実施形態の遊星ローラ式変速機の組立方法
の第３工程図

【図６】本発明の他の実施形態の遊星ローラ式変速機の
組立方法の第１工程図

【図７】上記他の実施形態の遊星ローラ式変速機の組立
方法の第２工程図

【図８】上記他の実施形態の遊星ローラ式変速機の組立
方法の第３工程図

【符号の説明】

１ 固定輪 ２ 太陽軸 ３ 遊星ローラ ４ キャリア

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定輪と、その内周に同心状に挿通され
   る太陽軸との間に、複数の遊星ローラが圧接状態に介装
   され、これら各遊星ローラの中心に遊星軸が挿入され、
   これら各遊星軸の一端が太陽軸と同軸状に配設される軸
   体に支持される構造の遊星ローラ式変速機を組み立てる
   方法であって、 円形の固定輪を、遊星ローラの使用数に応じて略多角形
   状に弾性変形させ、この弾性変形させた固定輪の内周
   に、太陽軸と複数の遊星ローラとを軸方向片側から挿入
   してから、固定輪を略多角形状から円形に弾性的に復元
   させる、ことを特徴とする遊星ローラ式変速機の組立方
   法。
2. 【請求項２】 請求項１の遊星ローラ式変速機の組立方
   法において、前記固定輪を弾性変形させるときに、互い
   の向き合う側に固定輪の約半分が嵌まりかつ互いを近づ
   ける側に変位させて固定輪を略多角形状に弾性変形させ
   る凹部を有する２つ一対の治具を用いる、ことを特徴と
   する遊星ローラ式変速機の組立方法。
3. 【請求項３】 請求項２の遊星ローラ式変速機の組立方
   法において、前記治具が、ほぼＶ字形の凹部を有するも
   のとされる、ことを特徴とする遊星ローラ式変速機。