JPH11925A - 成形用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】スライドコアを備えた成形用金型においては、
スライドコアが結合されるコア受け凹部内の凹部綾線を
放電加工するので、この加工に長時間かかり、加工機に
乗せ替える作業が大変である。 【解決手段】コア受け凹部５３を型板本体４５とは別体
の嵌込ブロック４７に形成し、嵌込ブロック４７を型板
本体４５のポケット５１に収め、型板本体４５と嵌込ブ
ロック４７を貫通した通し孔６１にフランジ７３付きの
カラー６７を装着し、カラー６７にアンギュラピン６９
を挿通した。従って、型板本体４５をそっくり放電加工
機に乗せ替える必要が無く、カラー６７を利用して嵌込
ブロック４７を型板本体４５に固定でき、嵌込ブロック
４７やカラー６７の装着等をいずれも一方向から行うこ
とができるので、金型の製作所要時間を短縮でき、嵌込
ブロック４７の取外しも容易である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、成形用金型に係
り、特に、スライドコアを備えた成形用金型に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】合成樹脂の射出成形等に用いられる成形
用金型において、成形する製品の形状に所謂アンダーカ
ット部がある場合は、通常、型板の中にスライドコアが
設けられる。この場合、型板本体にはスライドコアと協
働してアンダーカット部を形成するためのコア受け凹部
が設けられると共に、型板本体を貫通したアンギュラピ
ン挿通孔にアンギュラピンが摺動自在に挿通され、この
アンギュラピンの両端部がスライドコアと押出しプレー
トに各別に連結され、押出しプレートの移動に従ってス
ライドコアがコア受け凹部に対して結合、離間される。

【０００３】このスライドコアとコア受け凹部との結合
には高い精度が要求されるので、スライドコアに関わる
各部の加工は高精度で行う必要があり、当然、コア受け
凹部の内面の加工にも高い精度が要求され、このことは
コア受け凹部の内面の凹部綾線についても例外では無
い。

【０００４】成形用金型を切削加工により形成する場
合、凹部稜線を作ろうとしても、その隅角部には、どう
しても切削工具の切れ刃の半径と同じ曲率の曲面が残っ
てしまう。この切り残しについては、一般に、放電加工
によって処理するが、既知の通り、放電加工は切削加工
のように高速で処理することが困難であるため、この凹
部稜線の処理だけで型板全体の加工時間の凡そ半分を占
めてしまうことも珍しく無い。

【０００５】また、コア受け凹部の内部を放電加工する
ためには、ワークに対する切削加工が終了した後、その
ワークを切削加工機から降ろして放電加工機に乗せ替え
る必要があり、この乗せ替えに多くの手間がかかってし
まう。特に、大きな製品を成形するための成形用金型の
ようにワーク自体が大型であるときは、この乗せ替え作
業だけでも大変であり、その上、放電加工する部位が多
数ある場合は、一つ一つその部位を替えるための作業も
大変なものになって来る。このことが、この種の成形用
金型の製作所要時間を長くしてしまう原因の一つになっ
ていた。

【０００６】そこで、コア受け凹部については型板本体
とは別体の嵌込ブロックに切削加工し、この嵌込ブロッ
クを、型板本体に設けたポケットに嵌め込むようにする
ことを考えてみた。そのような成形用金型の一例１を図
４に示す。同図において、３は下型板を、５は上型板を
それぞれ示し、下型板３は型板本体７と、型板本体７に
形成したポケット９に嵌め込んだ嵌込ブロック１１等か
ら構成され、この嵌込ブロック１１にコア受け凹部１３
が形成されている。１５は型板本体７と嵌込ブロック１
１を貫通した通し孔を示し、この通し孔１５にアンギュ
ラピン１７が摺動自在に挿通され、アンギュラピン１７
の両端部はスライドコア１９と押出しプレート２１に各
別に連結されている。従って、下型板３の要求形状面２
３は型板本体７と嵌込ブロック１１とスライドコア１９
に分割して形成される。２５は型板本体７のポケット９
から下の肉を貫通したボルト挿通孔を示し、このボルト
挿通孔２５に取付ボルト２７が挿通され、取付ボルト２
７の先端部を嵌込ブロック１１に螺合することで嵌込ブ
ロック１１が型板本体７に固定される。

【０００７】このような成形用金型１によれば、コア受
け凹部１３の加工を下型板３の加工と切り離して行うこ
とができるので、これらの加工を同時進行させることが
できるし、コア受け凹部１３に対する放電加工を軽易に
行うことができ、これらによって、金型の製作スピード
を大幅に早めることができる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
構造によると、ボルト通し孔２５を形成するために、型
板本体７を裏返す必要があるため、折角コア受け凹部１
３を嵌込ブロック１１に形成するようにしたにも拘ら
ず、型板本体７を切削加工する作業に型板本体７を動か
す工程が残ってしまう。また、嵌込ブロック１１の固定
は型板本体７の下側から行うことになるため、組立てが
面倒であり、更には、成形用金型１が組み立てられた後
に嵌込ブロック１１を取り外す必要が生じた場合は成形
用金型１の略全体を分解しなければならないという問題
がある。

【０００９】尚、嵌込ブロック１１を型板本体７に固定
する手段としては、型板本体７と嵌込ブロック１１に跨
るネジ孔２９を要求形状面２３に形成し、このネジ孔２
９にネジ３１をねじ込むことも考えられる。しかしなが
ら、この構造は、ネジ３１の取付後にその頭部を削り取
るという面倒な作業が必要になる上に、一旦取り付けた
後は、嵌込ブロック１１の取外しが事実上不可能になっ
てしまうという問題がある。

【００１０】本発明は上記した問題点に着目してなされ
たものであり、型板本体を切削加工機から降ろさなくて
もコア受け凹部に対する放電加工等の処理を行うことが
できると共に、組立てや分解を簡単に行うことができる
成形用金型を提供することを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明成形用金型は、ス
ライドコアと協働して所定のアンダーカット部を形成す
るためのコア受け凹部を型板本体とは別体の嵌込ブロッ
クに形成し、型板本体には前記嵌込ブロックが収まるポ
ケットを形成し、前記ポケットに前記嵌込ブロックが収
まった状態で互いに連続する通し孔を型板本体と嵌込ブ
ロックに形成し、少なくとも型板本体側の通し孔に螺溝
を設け、前記通し孔にフランジ付きのカラーを嵌込ブロ
ック側から挿入して前記螺溝に捩じ込むことで嵌込ブロ
ックを型板に固定し、前記カラーにアンギュラピンを摺
動自在に挿通したことを特徴とするものである。

【００１２】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態に係る成形用
金型３３を図１から図３に従って説明する。尚、この成
形用金型３３は、自動車のドアにおけるドアパネルを成
形するための成形用金型であり、図面にはその一部のみ
を示してある。

【００１３】符号３５は下側取付板３７にスペーサブロ
ック３９を挾んで固定された下型板を示し、４１は上側
取付板４３に固定された上型板を示す。下型板３５は型
板本体４５と、嵌込ブロック４７と、スライドコア４９
等から構成されている。型板本体４５には嵌込ブロック
４７がぴったり収まる大きさのポケット５１が形成さ
れ、このポケット５１に嵌込ブロック４７が収まってい
る。５３は嵌込ブロック４７に形成されたコア受け凹部
を示し、このコア受け凹部５３にスライドコア４９が結
合離間自在に収納されている。５５はキャビティ形成面
としての要求形状面を示し、この要求形状面５５は型板
本体４５と嵌込ブロック４７とスライドコア４９の各上
面に分けて設けられている。

【００１４】５７と５９はそれぞれ部分通し孔を示し、
一方の部分通し孔５７は型板本体４５のうちポケット５
１から下の肉を斜めに貫通しており、他方の部分通し孔
５９は嵌込ブロック４７のうちコア受け凹部５３から下
の肉を斜めに貫通している。そして、嵌込ブロック４７
がポケット５１に所定の向きで収められると、２つの部
分通し孔５７と５９とが互いに連続されて１つの通し孔
６１を形成する。型板本体４５側の部分通し孔５７の略
上半部にはネジ溝６３が形成され、嵌込ブロック４７側
の部分通し孔５９の上端部はその余の部分より内径が大
きい大径部６５になっている。

【００１５】６７はカラーを示す。このカラー６７はア
ンギュラピン６９の支持手段と嵌込ブロック４７の固定
手段とを兼ねるものであり、円筒状をした主部７１と、
主部７１の一端部外周面から張り出した円板状のフラン
ジ７３とが一体に形成されて成り、主部７１の外周面に
はネジ山が形成されている。このカラー６７は通し孔６
１に嵌込ブロック４７側から挿入されてネジ溝６３に螺
合され、フランジ７３は部分通し孔５９の大径部６５に
収まる。従って、このカラー６７により、嵌込ブロック
４７と型板本体４５とが締め合って嵌込ブロック４７が
型板本体４５に固定される。尚、フランジ７３の厚みは
通し孔６１の大径部６５の深さより稍小さくしてあるの
で、フランジ７３がコア受け凹部５３の内底面７５から
突出することは無い。また、カラー６７の主部７１の内
周面は高い精度で仕上げられている。

【００１６】アンギュラピン６９はカラー６７の主部７
１に摺動自在に挿通され、その一端部はスライドコア４
９の下面に形成されているネジ孔にねじ込まれ、他端は
型板本体４５よりある程度下方まで延びたところで押出
しプレート７７のレール部に摺動自在に連結されてい
る。

【００１７】このように構成された成形用金型３３のう
ち、型板本体４５や嵌込ブロック４７等の製作は、例え
ば、次のように行う。型板本体４５は、ＣＡＤ／ＣＡＭ
システムを利用した高速切削法によって所望のワークを
切削加工することにより製作する。この場合の切削工程
は−要求形状面５５−ポケット５１−部分通し孔５７の
順で一貫して行えば良い。そして、最後に部分通し孔５
７にネジ溝６３を切る。また、嵌込ブロック４７につい
ては、コア受け凹部５３や部分通し孔５９を高速切削法
によって加工した後、放電加工機に移して凹部稜線等の
処理を行う。これらの加工は、可能な限り同時進行する
と良い。そして、必要な加工を終了した後、嵌込ブロッ
ク４７をポケット５１に収めてカラー６７を装着する。

【００１８】以上、本発明の実施の形態について詳述し
てきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設
計の変更などがあっても本発明に含まれる。特に、スラ
イドコアやカラーの形状等が実施の形態に示したものに
限られることは無い。

【００１９】

【発明の効果】本発明においては、スライドコアと協働
して所定のアンダーカット部を形成するためのコア受け
凹部を型板本体とは別体の嵌込ブロックに形成するよう
にしたので、コア受け凹部の切削加工や凹部稜線の放電
加工等による処理を、型板本体となるワークに対する切
削加工とは切り離して行うことができる。従って、これ
ら２つの作業を同時に進行することが可能であり、しか
も、嵌込ブロックは型板本体に較べればかなり小さいた
めに、放電加工等の処理を軽易且つ迅速に行うことがで
きる。そして、多くの場合、嵌込ブロックの大きさは数
種類用意しておけば殆どのスライドコアに対応できるた
め、嵌込ブロックとポケットの寸法を規格化することが
でき、それにより嵌込ブロック等を一種の共通部品とし
て扱うことができる。これらにより、この種の成形用金
型の製作所要時間を大幅に短縮することができる。

【００２０】また、本発明にあっては、アンギュラピン
を摺動自在に支持するためのカラーのフランジと型板本
体とが締め合うことで嵌込ブロックが型板本体に固定さ
れる。従って、嵌込ブロックを型板本体に固定するため
の特別な部材が不要であるため、この固定に専用のボル
ト等を使用する構造と較べて、構造を簡素にすることが
できると共に、要求形状の切削を終えたワークを裏返し
てボルト挿通孔を掘るといった面倒な処理を省くことが
でき、少なくとも嵌込ブロックをポケットに収めたりカ
ラーを装着する作業等はいずれも一方向から行うことが
できるので、これらによっても製作所要時間を短縮する
ことができる。

【００２１】そして、カラーは嵌込ブロックの内側から
カラー装着孔に装着されるので、成形用金型が組み立て
られた後にコア受け凹部等の形状変更等が生じた場合
は、スライドコアやカラー等を外すことで嵌込ブロック
を容易に取り外すことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態に係る成形用金型の要部断
面図である。

【図２】図１に示す成形用金型の型板の要部を示す断面
図である。

【図３】図１に示す成形用金型の嵌込ブロックの断面図
である。

【図４】コア受け凹部を型板本体とは別体の嵌込ブロッ
クに形成した成形用金型の一例を示す断面図である。

【符号の説明】

３３ 成形用金型 ４５ 型板本体 ４７ 嵌込ブロック ４９ スライドコア ５１ ポケット ５３ コア受け凹部 ６１ 通し孔 ６３ 螺溝 ６７ カラー ６９ アンギュラピン ７３ フランジ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】スライドコアと協働して所定のアンダーカ
   ット部を形成するためのコア受け凹部を型板本体とは別
   体の嵌込ブロックに形成し、型板本体には前記嵌込ブロ
   ックが収まるポケットを形成し、前記ポケットに前記嵌
   込ブロックが収まった状態で互いに連続する通し孔を型
   板本体と嵌込ブロックに形成し、少なくとも型板本体側
   の通し孔に螺溝を設け、前記通し孔にフランジ付きのカ
   ラーを嵌込ブロック側から挿入して前記螺溝に捩じ込む
   ことで嵌込ブロックを型板に固定し、前記カラーにアン
   ギュラピンを摺動自在に挿通したことを特徴とする成形
   用金型。