JPH1187748A - 化合物半導体膜の製造方法および太陽電池 - Google Patents

化合物半導体膜の製造方法および太陽電池

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JPH1187748A
JPH1187748A JP9241550A JP24155097A JPH1187748A JP H1187748 A JPH1187748 A JP H1187748A JP 9241550 A JP9241550 A JP 9241550A JP 24155097 A JP24155097 A JP 24155097A JP H1187748 A JPH1187748 A JP H1187748A
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film
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cadmium
compound
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JP9241550A
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Kuniyoshi Omura
邦嘉 尾村
Takeshi Hibino
武司 日比野
Takeshi Nishio
剛 西尾
Satoshi Shibuya
聡 澁谷
Mikio Murozono
幹夫 室園
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Matsushita Battery Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大面積の化合物半導体薄膜を、安価で再現性
良く工業的に製膜する方法を提供する。 【解決手段】 少なくとも一つのカドミウム−硫黄結合
を有する有機カドミウム化合物の有機溶媒溶液を超音波
振動により微粒子化し、加熱によって溶媒を気化した
後、さらに有機カドミウムを気体状態にして基板上に接
触させ、硫化カドミウムからなる化合物半導体膜を形成
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光電変換素子に使
用される化合物半導体膜の製造方法とこの製造方法によ
って得られる化合物半導体膜を用いた太陽電池に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】化合物半導体薄膜、特に硫化カドミウ
ム、硫化亜鉛、硫化鉛、硫化銅等の硫化物薄膜は、光電
変換素子材料として光電子産業分野で幅広く用いられて
いる。これらの化合物半導体薄膜の多くは、減圧下でソ
ースを蒸発させて、基板上に膜を形成するスパッタリン
グ法または蒸着法などによって製造されており、このよ
うな方法で製膜された薄膜は、光電変換素子材料として
所望される膜質を有している。しかし、何れの方法でも
真空装置を必要とするため、均質な膜を大面積に、かつ
高速で連続して製膜することが困難であり、さらに装置
が非常に高価になる問題があった。
【0003】より安価に大面積の薄膜を形成する方法と
して、ソースを溶解させた溶液中に基板を浸漬させた
後、基板上でソースを熱分解することにより基板表面に
化合物半導体膜を形成する溶液法と呼ばれる方法があ
る。しかし、この手法では、得られる薄膜の膜質の均一
性および再現性に大きな問題があった。そこで、大面積
の化合物半導体薄膜を安価な装置で再現性よく製膜する
方法として、塗布焼結法が提案された。これは、化合物
半導体の微粉末を分散したペーストを基板上にスクリー
ン印刷した後、連続ベルト炉で焼結するものである。こ
の方法は、硫化カドミウム焼結膜とテルル化カドミウム
焼結膜を積層したテルル化カドミウム太陽電池を製造す
るのに利用されている(特公昭56−28386号公
報)。
【0004】塗布焼結法は、安価な装置で、大面積の化
合物半導体薄膜を、均一でかつ再現性よく連続して製膜
でき、さらに製膜と同時にパターンニングが可能である
という極めて優れた特徴があった。しかし、焼結温度が
約700℃と高温であるため、基板に低価格の並ガラス
が使えないという問題があった。また、2時間以上とい
う長時間の焼結反応を必要とするため、高速・大量生産
に不向きであり、さらに焼結時に融点降下剤の蒸発を制
御するためのセラミック製の高価な焼結ケースが必要で
あった。焼結時に窒素等の不活性雰囲気が必要であると
いう問題もあった。また、得られる薄膜の膜厚が、2〜
4μmという原材料の粒径に依存するため、これよりも
薄い膜を製膜することが困難であった。さらに、焼結膜
中には多数の空隙が存在し、膜質を均一にすることがで
きなかった。塗布焼結法におけるこれらの問題は、原材
料に用いる金属化合物の微粉末に起因することであり、
解決が極めて難しいものである。
【0005】このように塗布焼結法によって得られた化
合物半導体薄膜は、膜厚が厚く、さらに薄膜内に多数の
空隙が存在するため、光線透過率が低い。そのため、こ
の薄膜を太陽電池の窓材料として用いても、得られる太
陽電池は、優れた性能を発揮することができない。ま
た、最近、基板に塗布した有機金属化合物を熱分解する
ことにより、化合物半導体薄膜を形成する手法が考案さ
れているが、基板への印刷塗布工程が必要であり、さら
に膜厚が均一な薄膜を大面積で製造することは困難であ
った。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記課題に鑑み、本発
明は、大面積の化合物半導体薄膜を、安価でしかも膜質
の再現性よく製造する工業的な方法を提供することを目
的とするものである。さらに、この製造方法によって得
られた化合物半導体膜を用い、低コストで製造でき、か
つ変換効率の優れた太陽電池を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による化合物半導
体膜の製造方法は、少なくとも一つのカドミウム−硫黄
結合を有する有機カドミウム化合物の有機溶媒溶液を微
粒子化する工程、得られた微粒子を加熱して前記有機溶
媒を気化する工程、さらに加熱して前記有機カドミウム
化合物を気体状態にする工程、および前記気体状態の有
機カドミウム化合物を加熱された耐熱性基板上に接触さ
せ、基板上に硫化カドミウムからなる化合物半導体膜を
形成する工程を有するさらに、本発明によって作製され
た硫化カドミウムからなる化合物半導体膜をn型半導体
層に利用して太陽電池を構成することにより、優れた性
能を有する太陽電池を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】上記のように、有機カドミウム化
合物の有機溶媒溶液を微粒子化し、この微粒子を加熱し
て溶媒を気化して分離し、さらに加熱して有機カドミウ
ム化合物からなる微粒子を液体を経て気化、または直接
昇華させて気体状態にし、このまま、有機カドミウム化
合物が熱分解するように加熱した基板上に吹き付けて、
有機カドミウム化合物を熱分解させるので、不純物を介
在させずに化合物半導体膜を形成することができ、高品
質な硫化カドミウム膜を得ることができる。
【0009】また、有機カドミウム化合物を気体状態で
膜形成用基板表面と接触させるため、基板表面温度が低
下することがない。そのため、有機カドミウム化合物の
分解温度を高い精度で制御することができるので、得ら
れる化合物半導体膜は、分子状に分離した硫化カドミウ
ムが基板上に規則的に配列した極めて緻密で膜厚の均一
な高品質薄膜となる。しかも、このような薄膜を低価格
で形成できる。有機カドミウム化合物溶液を微粒子化さ
せるには、超音波振動による方法と、スプレー噴射によ
る方法が好ましい。
【0010】超音波振動による方法を用いると、超音波
エネルギーの量を調整することにより微粒子の中心粒径
を自由に制御することができる。超音波振動の周波数を
10kHz〜3MHzの範囲にすることが好ましい。周
波数がこの範囲内にあれば、粒子分離エネルギーを制御
することができ、微粒子の中心粒径を均一化することが
できる。微粒子の粒径を一定にすることができれば、基
板表面での有機カドミウム化合物の反応速度を均一化す
ることができ、化合物半導体膜の形成速度と膜質を安定
化することができる。
【0011】超音波振動の周波数が3MHz以上の場
合、微粒子の粒径は小さくなるが、超音波振動子に高出
力のものがないため溶液の微粒子化量が少なくなり、化
合物半導体膜の製膜速度が減少する。また、超音波振動
の周波数が10KHz以下の場合、微粒子の粒径が20
μmより大きくなるため、基板表面での有機カドミウム
化合物の分解反応が不均一となり、形成された化合物半
導体膜の膜質の均質性が低下する。スプレー噴射による
方法を用いると、低価格の装置で溶液を微粒子化するこ
とができる。また、高濃度の有機カドミウム化合物溶液
を微粒子化することができるため、高速度で化合物半導
体膜を形成することができる。
【0012】上記したいずれの方法で有機カドミウム化
合物溶液を微粒子化したとしても、得られる微粒子の中
心粒径は、1〜20μmであることが好ましい。中心粒
径がこの範囲内であれば、均質な膜質の化合物半導体膜
を高速に形成することが可能である。中心粒径が1μm
よりも小さいと、基板表面に有機カドミウム化合物が達
する前に熱分解反応が生じ、化合物半導体膜を形成する
ことができない。また、20μmよりも大きいと、基板
表面での有機カドミウム化合物の分解反応が不均一とな
り、形成された化合物半導体膜の膜質の均一性が低下す
る。
【0013】さらに、化合物半導体薄膜を形成する基板
の表面温度を300〜500℃にすることが好ましい。
基板の表面温度がこの範囲内であれば、短時間に良質な
半導体薄膜を形成できる。また、耐熱温度が比較的低い
基板を用いることができ、基板材料の選択幅が広がる。
基板の表面温度が300℃よりも低いと、基板表面で有
機カドミウム化合物の熱分解反応が生じないため、化合
物半導体膜が形成できない。また、500℃を超える
と、急激な分解反応が生じるため、均質で、かつ良質な
化合物半導体膜が生成しない。
【0014】有機カドミウム化合物としては、カドミウ
ムのメルカプチド、チオ酸塩、ジチオ酸塩、チオカルボ
ナート塩、ジチオカルボナート塩、トリチオカルボナー
ト塩、チオカルバミン酸塩またはジチオカルバミン酸塩
から選択することができる。これらは、カドミウムと硫
黄が結合した基が1分子当たり少なくとも1つ含まれる
化合物か、カドミウムおよび硫黄以外に少なくとも炭素
と窒素を含む化合物である。また、これらの有機カドミ
ウム化合物は、500℃以下の温度での熱分解によっ
て、良質で、薄い硫化カドミウム膜を形成する性質を有
している。
【0015】有機カドミウム化合物の溶媒には、1−メ
チル−2−ピロリドン、キシレン、トルエン、γ−ブチ
ロラクトン、テトラリン、ジメチルホルムアミド、ジメ
チルスルホキシド、クロロホルム、あるいはメチルアル
コール、エチルアルコール、多価アルコールなどのアル
コール類を用いることができる。これらを2種以上混合
したものを溶媒として用いてもよい。例えば、1−メチ
ル−2−ピロリドンとメチルアルコールをモル比8:2
で混合したものをジベンジルジチオカルバミン酸カドミ
ウムの溶媒に用いることができる。これらの溶媒は、有
機カドミウム化合物を高濃度に溶解することができるた
め、高効率に化合物半導体膜を形成することができる。
【0016】さらに、本発明によって作製された硫化カ
ドミウム膜をn型半導体層に利用して太陽電池を構成す
ると、硫化カドミウム薄膜の光線透過率が高く、また膜
質も優れていることから、変換効率の優れた太陽電池を
得ることができる。例えば基板の片面に、酸化錫とイン
ジウム酸化物や、酸化亜鉛等の金属酸化物からなる透明
導電膜を形成し、前記透明導電膜上に上記した方法で製
造した硫化カドミウムからなる化合物半導体膜をn型半
導体の窓層として形成し、さらにこの化合物半導体膜上
にp型半導体層としてテルル化カドミウム膜を形成して
p−n接合を形成する。そして、p型半導体膜上に集電
体を形成し、この集電体と電気的に接続された+側電極
を形成し、n型半導体膜と電気的に接続された−側電極
を形成することにより化合物半導体太陽電池を構成する
ことが好ましい。
【0017】また、導電性と耐熱性を有する基板上に+
側電極を形成し、この電極上にテルル化カドミウムまた
は銅インジウムセレン化物からなるp型半導体層を形成
し、さらにこのp型半導体層上に上記した方法で製造し
た硫化カドミウムからなる化合物半導体膜をn型半導体
の窓層として形成してp−n接合を形成する。そして、
n型半導体膜と電気的に接続された−側電極を形成する
ことにより化合物半導体太陽電池を構成してもよい。こ
の導電性と耐熱性を有する基板には、銅板、または銅、
鉄、ステンレス鋼、アルミ等の金属板の片面に、銅、
銀、白金、パラジウム、モリブデン等でメッキしたも
の、あるいは電気絶縁性シートに形成された導電性電極
を用いることができる。
【0018】
【実施例】図1は、基板表面に硫化カドミウム膜を形成
する装置の構成例を示す。1は耐熱性基板を表す。この
基板1の表面に透明導電膜2が形成されている。基板1
は、基板加熱用ヒータ10の上に設置され、このヒータ
10によって有機カドミウム化合物が熱分解をおこす温
度に加熱されている。この透明導電膜2上に硫化カドミ
ウム膜3が形成される。
【0019】基板1とは隔離された位置に容器4が設置
され、有機カドミウム化合物の有機溶媒溶液9が入れら
れている。容器4内の上方空間部には、キャリアガス導
入口13からのびる管が連結され、また底部には超音波
振動子5が設置されている。容器4と基板1は管8で連
結されている。管8の基板側は、基板を覆う程度の幅に
広がり、この幅広い部分には、有機溶媒を気化させる第
1加熱ゾーン6と、有機カドミウム化合物を気体状態に
する第2加熱ゾーン7がある。第1加熱ゾーンの管の周
りには、第1加熱ゾーン用ヒータ11が設けられ、この
ヒータ11によって、第1加熱ゾーンを有機溶媒が気化
する温度に設定することができる。また、第2加熱ゾー
ンの管の周りには、第2加熱ゾーン用ヒータ12が設け
られ、このヒータ12によって、第2加熱ゾーンを有機
カドミウム化合物を気体状態にすることができる温度に
設定することができる。
【0020】超音波振動子5を振動させると、有機カド
ミウム化合物溶液9は微粒子化され、容器4の上部空間
部に充満する。そして、キャリアガス導入口13から導
入されたキャリアガスによって、微粒子は管8を流れて
第1加熱ゾーンに到達し、有機溶媒が気化して分離さ
れ、さらに第2加熱ゾーンに到達して、有機カドミウム
化合物が気体状態になる。そして、あらかじめ加熱され
た基板1に吹き付けられて基板表面またはその近傍で有
機カドミウム化合物が分解し、基板1上の透明導電膜2
上に化合物半導体膜3を形成する。
【0021】有機カドミウム化合物溶液は、噴出口を有
するノズルを用いて微粒子化することもできる。このノ
ズルに有機カドミウム化合物溶液を導入し、さらにノズ
ルの噴出口に向けてキャリアガスを流すことによって微
粒子化する。キャリアガスとしては、空気、あるいは窒
素、Ar、He、Neなどの不活性ガスを用いることが
できる。
【0022】第1加熱ゾーン6の温度は、使用する溶媒
の沸点付近の温度にあわせるのが好ましい。また、有機
カドミウム化合物の熱分解温度より高い温度にすると、
第1加熱ゾーン6で熱分解が生じ、膜形成基板表面で熱
分解反応が生じないため、第1加熱ゾーン6の温度は、
有機カドミウム化合物の熱分解温度よりも低くする必要
がある。第2加熱ゾーンの温度は、用いる有機カドミウ
ム化合物の気化温度近傍に設定するのがよい。有機カド
ミウム化合物の熱分解温度以上にするのは適さない。膜
形成基板1には、ガラス基板やこの上に透明導電膜を形
成したものを用いることができる。
【0023】以下に、具体的な例を挙げて本発明をより
詳細に説明する。 《実施例1》キシレンにジベンジルジチオカルバミン酸
カドミウムを2.0mol/l溶解した溶液を遠心分離
または濾過し、残留物または沈殿物を除去して、粘度約
50センチポアズの溶液を作製した。この溶液を図1の
容器4に注入した。そして、超音波振動の周波数を2M
Hz、第1加熱ゾーン6の温度を100〜200℃、第
2加熱ゾーン7の温度を200〜300℃、膜形成基板
1の温度を450℃にし、キャリアガスとしてN2を用
いて硫化カドミウム膜3を形成した。超音波振動によっ
て発生した微粒子の平均粒子径は6μmであった。膜形
成基板にはガラス基板を用い、その大きさは、35×3
5cm2であった。得られた硫化カドミウム膜を図2に
示すように9等分し、それぞれの領域での厚みを測定し
た。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】表1に示すように、ガラス基板内の硫化カ
ドミウムの膜厚は、500〜520オングストロームの
範囲であった。
【0026】《比較例1》実施例1と同じ大きさの基板
上に、従来法である蒸着法によって、硫化カドミウム膜
を作製した。得られた硫化カドミウム薄膜を図2に示す
ように9等分し、それぞれの領域での厚みを測定した。
その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】表2に示すように、ガラス基板内の硫化カ
ドミウムの膜厚は、400〜700オングストロームの
範囲にばらつき、膜厚を均一にすることは困難であっ
た。
【0029】《実施例2》各種の有機カドミウム化合物
を用い、実施例1と同様にして、硫化カドミウム膜を作
製した。得られた硫化カドミウム膜をX線光電子分光法
で分析したところ、薄膜中のカドミウム−硫黄の結合状
態が、単結晶硫化カドミウムのカドミウム−硫黄の結合
状態と同じであることがわかった。また、得られた硫化
カドミウム膜をX線回折したところ、(002)の反射
を示すピークが観察され、硫化カドミウムが六方晶系硫
化カドミウムであることが示された。さらに、得られた
硫化カドミウム膜のバンドギャップを光学的に測定し
た。その結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】表3より、得られた硫化カドミウム薄膜の
光学的バンドギャップの測定値は、2.40〜2.44
eVの範囲であり、標準値の2.42eVとほぼ一致し
ていた。したがって、得られた硫化カドミウム薄膜は格
子欠陥が少ない良質な膜であった。
【0032】《実施例3》実施例1で得られた硫化カド
ミウム薄膜を用いて太陽電池を作製した。図3は、その
縦断面図である。ガラス基板21の片面に、透明導電膜
22を形成し、その面上に窓層として、500オングス
トロ−ムの硫化カドミウム膜23を実施例1と同様にし
て形成し、この硫化カドミウム膜23上に、近接昇華法
によりテルル化カドミウム膜24を形成してある。さら
に、テルル化カドミウム膜24上に、炭素電極25を取
り付け、硫化カドミウム膜23および炭素電極25上に
AgIn電極26を取り付けて太陽電池を作製してあ
る。
【0033】作製した太陽電池のIV特性を、AM1.
5、100mW/cm2、25℃のソーラシュミレータ
光を用いて測定した。その結果、開放電圧830mV、
短絡電流密度24.7mA/cm2で最大動作出力(P
max)は、14.8mW/cm2であった。得られた
太陽電池の光電変換効率は、14.8%と高い値であっ
た。これは、硫化カドミウム薄膜が、非常に薄く、かつ
空隙の無い緻密な膜であるため、短波長光感度が増し、
短絡電流が増加したことによるものである。
【0034】《比較例2》従来の塗布焼結法により得ら
れた硫化カドミウム膜を用いて太陽電池を作製した。図
4は、その縦断面図である。ガラス基板21上に、塗布
焼結法を用いて、約20μの硫化カドミウム焼結膜2
3’を形成し、さらにこの硫化カドミウム焼結膜23’
上に、テルル化カドミウム焼結膜24’を形成してあ
る。このテルル化カドミウム焼結膜24’上に炭素電極
25を形成し、さらにAgIn電極26を形成して太陽
電池を作製してある。作製した太陽電池のIV特性を、
実施例3と同様にして測定した。その結果、開放電圧7
50mV、短絡電流密度22.5mA/cm2で最大動
作出力は、11.3mW/cm2であった。光電変換効
率は、11.3%であり、これは硫化カドミウム焼結層
23’の厚みが約20μmと厚いためである。
【0035】《実施例4》銅インジウムセレン化物膜と
硫化カドミウム膜を用いて太陽電池を作製した。図5
は、その縦断面図である。ソーダライムガラス基板31
の片面に蒸着膜法によりモリブデン電極32を形設し、
さらに銅、インジウム、セレンをソースとした多元蒸着
法により銅インジウムセレン化物(CIS)膜33を形
成した。ソーダライムガラス基板31の温度を300℃
にし、実施例1と同様にして、銅インジウムセレン化物
膜33上に、硫化カドミウム膜34を形成し、次いで、
酸化亜鉛膜35、透明電極36、フッ化マグネシウム膜
37を順次形成させて、薄膜太陽電池を作製した。作製
した太陽電池のIV特性を、実施例3と同様にして測定
した。その結果、開放電圧550mV、短絡電流密度3
9.5mA/cm2、100mW/cm2の光源下で、電
変換効率η=13.6%という優れた特性を有した。な
お、本実施例ではCIS膜に、銅インジウムセレン化物
膜を用いたが、これにゲルマニウムを加えた銅インジウ
ムゲルマニウムセレン化物膜を用いてもよい。
【0036】
【発明の効果】以上ように、本発明によると、化合物半
導体膜として高品質のカドミウム硫化物薄膜を極めて容
易にかつ安価に基板表面に形成することができる。ま
た、大量生産が可能である。さらに、基板温度、微粒子
濃度、製膜時間等の製膜条件を変化させることにより、
空隙の少ない高品質の化合物半導体薄膜を、任意の厚み
で作製することができる。また、このような化合物半導
体膜を用いることにより、大幅に特性が向上した太陽電
池を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に用いた化合物半導体膜の製
造装置の構成を示す縦断面略図である。
【図2】本発明の一実施例として得られた硫化カドミウ
ム膜を9等分した平面図である。
【図3】本発明の一実施例により作製した硫化カドミウ
ム膜を用いたCdS/CdTe太陽電池の縦断面図であ
る。
【図4】塗布焼結法により作製した硫化カドミウム膜を
用いたCdS/CdTe太陽電池の縦断面図である。
【図5】本発明により作製した硫化カドミウム膜を用い
たCIS太陽電池の縦断面図である。
【符号の説明】
1 耐熱性基板 2 透明導電膜 3 化合物半導体膜 4 容器 5 超音波振動子 6 第1加熱ゾーン 7 第2加熱ゾーン 8 管 9 有機カドミウム化合物溶液 10 基板加熱用ヒータ 11 第1ゾーンヒータ 12 第2ゾーンヒータ 13 キャリアガス導入口 21 ガラス基板 22 透明導電膜 23 硫化カドミウム膜 23’硫化カドミウム焼結膜 24 テルル化カドミウム膜 24’テルル化カドミウム焼結膜 25 炭素電極 26 AgIn電極 31 ガラス基板 32 モリブデン電極 33 CIS膜 34 硫化カドミウム膜 35 酸化亜鉛膜 36 透明電極(ITO) 37 フッ化マグネシウム膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 澁谷 聡 大阪府守口市松下町1番1号 松下電池工 業株式会社内 (72)発明者 室園 幹夫 大阪府守口市松下町1番1号 松下電池工 業株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一つのカドミウム−硫黄結合
    を有する有機カドミウム化合物の有機溶媒溶液を微粒子
    化させる工程、得られた微粒子を加熱して前記有機溶媒
    を気化させる工程、さらに加熱して前記有機カドミウム
    化合物を気体状態にする工程、および前記気体状態の有
    機カドミウム化合物を加熱された膜形成用基板上に接触
    させ、基板上に硫化カドミウムからなる化合物半導体膜
    を形成する工程を有することを特徴とする化合物半導体
    膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記溶液を微粒子化する工程が、超音波
    振動により溶液を微粒子化することからなる請求項1記
    載の化合物半導体膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記超音波振動の周波数が、10kHz
    〜3MHzである請求項2記載の化合物半導体膜の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 前記溶液を微粒子化する工程が、スプレ
    ー噴射により溶液を微粒子化することからなる請求項1
    記載の化合物半導体膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記微粒子の中心粒径が1〜20μmで
    ある請求項1記載の化合物半導体膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記加熱された膜形成用基板の温度が、
    300〜500℃である請求項1記載の化合物半導体膜
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記有機カドミウム化合物が、カドミウ
    ムのメルカプチド、チオ酸塩、ジチオ酸塩、チオカルボ
    ナート塩、ジチオカルボナート塩、トリチオカルボナー
    ト塩、チオカルバミン酸塩およびジチオカルバミン酸塩
    からなる群より選ばれた少なくとも1つである請求項1
    記載の化合物半導体膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記有機溶媒が、1−メチル−2−ピロ
    リドン、キシレン、トルエン、γ−ブチロラクトン、テ
    トラリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシ
    ド、クロロホルムおよびアルコール類からなる群より選
    ばれた少なくとも1つである請求項1記載の化合物半導
    体膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 基板上に形成された金属酸化物からなる
    透明導電膜、前記透明導電膜上に形成されたn型半導体
    膜、前記n型半導体膜上に形成されたテルル化カドミウ
    ムからなるp型半導体膜、前記p型半導体膜上に形成さ
    れた集電体、前記集電体と電気的に接続された+側電
    極、および前記n型半導体膜と電気的に接続された−側
    電極を具備し、前記n型半導体膜が、請求項1〜8のい
    ずれかに記載の方法で形成された硫化カドミウム膜であ
    る太陽電池。
  10. 【請求項10】 導電性と耐熱性を有する基板上に形成
    された+側電極、前記電極上に形成されたテルル化カド
    ミウムまたは銅インジウムセレン化物からなるp型半導
    体膜、前記p型半導体膜上に形成されたn型半導体膜、
    および前記n型半導体膜と電気的に接続された−側電極
    を具備し、前記n型半導体膜が、請求項1〜8のいずれ
    かに記載の方法で形成された硫化カドミウム膜である太
    陽電池。
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